説明

非接触加工機

【課題】一方の駆動軸の動作開始時の移動誤差分が生じさせずに、高精度に制御する。
【解決手段】加工ヘッド(40)を被加工物(W)上で走査させて被加工物を加工する非接触加工機(1)は、加工ヘッドを被加工物の加工領域全体よりも小さい領域において走査させる第一駆動機構部(10)と、第一駆動機構部を加工領域全体にわたって移動させる第二駆動機構部(20)と、加工ヘッドの加工経路を走査する座標軸方向の移動について、速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部(71)と、座標軸移動指令部からの座標軸移動指令に基づき、速度指令に加えて加減速指令を伴う移動指令を第二駆動機構部への移動指令として指令する第二駆動機構部移動指令部(73)と、座標軸移動指令と第二駆動機構部への移動指令との差分を、第一駆動機構部への移動指令として指令する第一駆動機構部移動指令部(72)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線、流体またはエネルギービームなどをノズルから出力して各種加工を行う加工ヘッドを備えた非接触加工機、例えばレーザ加工機、プラズマ加工機、ウォータージェット加工機、インクジェット塗装機などに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機、プラズマ加工機、ウォータージェット加工機、インクジェット塗装機などの非接触加工機は、平面状ワークに対して加工を行う。光線、流体またはエネルギービームなどを出力する非接触加工機のノズルには、通常は、各種センサ、冷却配管、調整装置などが付属する。これらノズルおよび関連する部品はまとめて加工ヘッドと呼ばれており、一般的な加工ヘッドの重量は数百グラムから数十キログラムである。
【0003】
ワークに対する加工を高速に行うためには、加工ヘッドをワークに対して走査することが多い。しかしながら、平面状ワークが大きい場合には、加工ヘッドがカバーする範囲も広くなるので、加工ヘッドを駆動する駆動機構部自体が大型化する傾向にある。このため、非接触加工機の加工処理速度は、駆動機構部の動作速度に応じて定まることになる。
【0004】
そこで、非接触加工機の少なくとも一つの駆動方向に対して二つ以上の駆動機構部を備えることが提案されている。例えば一つの駆動方向に対して高加速可能な小型の駆動機構部と、低加速(低い加速度)のみ可能な大型の駆動機構部とを準備し、小型の駆動機構部を大型の駆動機構部に搭載することが提案されている。この場合には、加工ヘッドを高加速度で走査させられると共に、広範囲にて走査させることが可能となる。あるいは、低加速のみ可能な台車にワークを載置し、高加速可能な小型の駆動機構部に備えられた加工ヘッドにより同様な加工を行っても良い。
【0005】
このような二つ以上の駆動機構部を備える構成の加工機においては、低加速のみ可能な駆動機構部を一旦停止させた後で、高加速可能な小型の駆動機構部を動作させている。この場合には、ワークの形状に合致した座標系を高加速可能な小型の駆動機構部に対して再定義するのみで足り、特別の制御技術は必要とされない。
【0006】
しかしながら、この方法は、ワークが高加速可能な駆動機構部の移動範囲よりも大きい場合には不利である。これに対し、特許文献1から特許文献5には、高加速可能な小型の駆動機構部と低加速のみ可能な駆動機構部とに対して、移動指令量を調整して配分する技術が提案されている。
【0007】
これら特許文献1から特許文献5に開示される技術は、低加速のみ可能な駆動機構部で追随できない移動誤差分を検出して、高加速可能な駆動機構部に与えるものである。低加速のみ可能な駆動機構部の移動と高加速可能な駆動機構部の移動とを組合わせることにより、高加速可能な駆動機構部による狭い可動範囲での高い加速性能と、低加速のみ可能な駆動機構部による広範な可動範囲での動作とを備えた非接触加工機を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2006−514334号公報
【特許文献2】特開平10−506211号公報
【特許文献3】特開平4−19043号公報
【特許文献4】特表2006−514334号公報
【特許文献5】特開平10−506211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら特許文献1から特許文献5においては、低加速のみ可能な駆動機構部を動作させてその移動量を検出した後で、高加速可能な駆動機構部のための制御系に入力するようになっているために、低加速のみ可能な駆動機構部の移動量の検出から高加速可能な駆動機構部の移動量への帰還が高速で行われない場合には、指令移動量と実際に合成された移動量との間に誤差が生じる。つまり、高加速駆動軸は低加速駆動軸の移動が開始した後でその動作を開始するので、低加速駆動軸の動作開始時の移動誤差分が発生する。
【0010】
ここで、従来技術の非接触加工機において、高加速度または大きな加加速度の移動指令を直接入力した場合を考える。この場合には、はじめに低加速のみ可能な駆動機構部に移動指令が加えられるので、低加速のみ可能な駆動機構部が新たな移動指令に追随しようとして、オーバーシュートが生じたり、制御系に振動を生じさせることがある。
【0011】
また、従来技術においては、移動指令の低速分を分離するために周波数成分における低域通過フィルタを使用しているので、移動開始直後における高速移動軸の動作は位置的にも速度的にも大きく、その後指数関数的に低下する。このため、高速移動軸の可動範囲、速度範囲を大きくする必要がある。
【0012】
さらに、従来技術においては、高速移動軸に対する移動指令遅延時間は低域通過フィルタのデータ処理時間を補償する時間として設けられている。つまり、従来技術における移動指令遅延時間は、高速移動軸の可動範囲および速度範囲を最小化するように最適化されているわけではない。
【0013】
さらに、従来技術においては、高速移動軸の移動量を演算し制御するために低速移動軸の移動量検出信号を使用しているので、各軸の制御アルゴリズムが複雑となる、という問題もある。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、一方の駆動軸の動作開始時の移動誤差分が生じることなしに、高精度な制御が可能な非接触加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、加工ノズルを有する加工ヘッドを被加工物上で走査させて前記被加工物を加工する非接触加工機において、前記加工ヘッドを前記被加工物の加工領域全体よりも小さい領域において走査させる第一駆動機構部と、前記第一駆動機構部を前記加工領域全体にわたって移動させる第二駆動機構部と、前記加工ヘッドの加工経路を走査する座標軸方向の移動について、速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部と、前記座標軸移動指令部からの座標軸移動指令に基づき、速度指令に加えて加減速指令を伴う移動指令を前記第二駆動機構部への移動指令として指令する第二駆動機構部移動指令部と、前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を、前記第一駆動機構部への移動指令として指令する第一駆動機構部移動指令部と、を備えることを特徴とする非接触加工機が提供される。
【0016】
すなわち1番目の発明においては、高加速可能な第一の駆動機構部への移動指令と低加速の第二の駆動機構部への移動指令とを同時に作成でき、従って、これら駆動機構部の間でタイミングのズレが生じないようにできる。本発明では、一方の駆動機構部を動作させた結果として検出された移動量を他方の駆動機構部の制御信号として用いるわけでないので、軸移動または移動検出に要する遅れ時間が生じることはない。従って、一方の駆動軸の動作開始時の移動誤差分が生じることなしに、高精度な制御を行うことが可能である。なお、第一の駆動機構部のサーボシステムと第二の駆動機構部の制御システムを独立して移動指令を与えて制御するので、広範に使用される従来技術のサーボフィードバックシステムを使用することができ、簡便な構成にできる。
【0017】
2番目の発明によれば、加工ノズルを有する加工ヘッドを被加工物上で走査させて前記被加工物を加工する非接触加工機において、前記加工ヘッドを前記被加工物の加工領域全体よりも小さい領域において走査させる第一駆動機構部と、前記第一駆動機構部を前記加工領域全体にわたって移動させる第二駆動機構部と、前記加工ヘッドの加工経路を走査する座標軸方向の移動について、速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部と、前記座標軸移動指令部からの座標軸移動指令としての加速度指令、速度指令、位置指令の何れかを一定時間積算した上で時間平均を求める移動指令平均化処理部と、前記移動指令平均化処理部で平均化処理された移動指令を、前記第二駆動機構部への移動指令として指令する第二駆動機構部移動指令部と、前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を、前記第一駆動機構部への移動指令として指令する第一駆動機構部移動指令部と、を備えることを特徴とする非接触加工機が提供される。
【0018】
すなわち、2番目の発明においては、1番目の発明と同様な効果が得られることに加えて、簡便なアルゴリズムによって、座標軸移動指令を第一の駆動機構部への移動指令量と、第二の駆動機構部への移動指令量とに容易に分けることができる。なお、座標軸移動指令が、加速時と減速時とにおいて速度、加速度および加加速度が対称的に変化する場合には、平均化処理されて分配された第一の駆動機構部への移動指令量および第二の駆動機構部への移動指令量は、対称的に変化する速度、加速度および加加速度を有することになる。
【0019】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を演算する際に、前記座標軸移動指令を一定時間保持遅延したものと前記第二駆動機構部への移動指令との差分を求め、これを前記第一駆動機構部への移動指令とした。
すなわち3番目の発明においては、高加速で駆動する第一の駆動機構部の動作位置範囲、速度範囲、加速度範囲を必要最小限に抑えることが可能となる。従って、第一の駆動機構部をより軽量に製作することができ、第一の駆動機構部を第二の駆動機構部に搭載した場合に、第二の駆動機構部に係る負担を軽減することもできる。特に、3番目の発明が2番目の発明に係る場合には、積算する時間の半分の時間にわたって遅延することで、低速駆動機構部が座標軸移動指令に達する時間の半分とすることができ、3番目の発明の効果を簡単明瞭に発揮できる。
【0020】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記第一駆動機構部と第二駆動機構部は、直交座標または極座標による軸構成であって対応する軸同士が互いに平行ではなく、前記第一駆動機構部への移動指令は、前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分をベクトル分解して指令される。
すなわち4番目の発明においては、直交座標軸を備えた加工機だけでなく、ロボット、パイプ加工機などの、非直交座標系を有する加工機にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく非接触加工機を示す斜め下方から見た略斜視図である。
【図2】図1と同様な構成の非接触加工機の側面図である。
【図3】本発明に基づく非接触加工機の基本動作を示すフローチャートである。
【図4】制御装置およびサーボシステムを示す第一のブロック図である。
【図5】制御装置およびサーボシステムを示す第二のブロック図である。
【図6】(a)時間と速度との間の関係を示す図である。(b)時間と加速度との間の関係を示す図である。
【図7】加減速処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】速度、位置、加速度および加加速度と時間との関係を示す図である。
【図9】制御装置およびサーボシステムの第三のブロック図である。
【図10】速度、位置、加速度および加加速度と時間との関係を示す他の図である。
【図11】制御装置およびサーボシステムの第四のブロック図である。
【図12】遅延バッファを説明するための図である。
【図13】(a)積算平均化処理部を説明するための図である。(b)メモリセルの番号と元の指令値および積算平均値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく非接触加工機を示す斜め下方から見た略斜視図であり、図2は図1と同様な構成の非接触加工機の側面図である。これら図面においては、非接触加工機1の例としてレーザ加工機が示されている。以下においては、非接触加工機1が、金属板からなるワークW(図1には示されていない)を切断加工するレーザ加工機である場合について説明する。ただし、他の非接触加工機、例えばプラズマ加工機、ウォータージェット加工機、インクジェット塗装機であっても概ね同様の構成であるものとする。
【0023】
図1および図2に示されるように、非接触加工機1は、レーザを出力する加工ノズル41等を備えた加工ヘッド40をX軸方向に駆動する第一駆動機構部10と、第一駆動機構部10をY方向に駆動するY軸方向駆動機構部30と、Y軸方向駆動機構部30をX軸方向に駆動する第二駆動機構部20とを主に含んでいる。
【0024】
なお、非接触加工機1は、例えばX軸およびY軸の両方に対して垂直なZ軸に関する追加の駆動機構部を備えていてもよい。また、図2に示されるように、ワークWはテーブル9上に載置されている。或る実施形態においては、ワークWは、1.5m×3mの金属板である。
【0025】
図1などから分かるように、本発明の非接触加工機1においては、第一駆動機構部10および第二駆動機構部20が互いに協働して加工ヘッド40を所望の位置に移動させる。ここで、第一駆動機構部10は、高加速動作が可能であるものの動作領域は小さい。これに対し、第二駆動機構部20は、高加速動作はできないものの動作領域は大きい。
【0026】
図1に示されるように、第一駆動機構部10は可動テーブル19を備えており、X軸方向に延びる第一レール16(X2軸)と、第一レール16に対して平行に延びるボールネジ15とが可動テーブル19上に配置されている。モータ11によりボールネジ15を駆動させると、加工ヘッド40は第一レール16を高加速度、例えば20m/sで摺動するようになる。以下、加工ヘッド40の移動を適宜、X2軸方向の移動などと呼ぶ場合がある。また、モータ11には、出力軸の位置を検出するパルスコーダ12、例えば回転型パルス発生器が備えられている。なお、高加速動作が可能な第一駆動機構部10が二軸以上の構成であってもよい。
【0027】
また、Y軸方向駆動機構部30は可動テーブル39を備えており、Y軸方向に延びる二つのY軸方向レール36と、これらY軸方向レール36の間においてY軸方向レール36に対して平行に延びるボールネジ35とが可動テーブル39上に配置されている。モータ31によりボールネジ35を駆動させると、第一駆動機構部10はY軸方向レール36を摺動するようになる。なお、モータ31には、出力軸の位置を検出するパルスコーダ32が備えられている。
【0028】
さらに、第二駆動機構部20はフレーム29を備えており、X軸方向に延びる第二レール26(X1軸)と、第二レール26に対して平行に延びるボールネジ25とがフレーム29上に配置されている。モータ21によりボールネジ25を駆動させると、Y軸方向駆動機構部30(および第一駆動機構部10)は第二レール26を摺動するようになる。第二レール26におけるY軸方向駆動機構部30の許容加速度は10m/sである。なお、モータ21には、出力軸の位置を検出するパルスコーダ22が備えられている。以下、第二レール26におけるY軸方向駆動機構部30の移動を適宜、X1軸方向の移動などと呼ぶ場合がある。
【0029】
なお、第一駆動機構部10の軸が第二駆動機構部20の軸に対して必ずしも直交する必要はなく、第一駆動機構部10の軸と第二駆動機構部20の軸とが互いに或る角度をなしていてもよい。さらに、第一駆動機構部10および第二駆動機構部20が直交座標系(図1を参照されたい)である必要はなく、極座標であってもよい。
【0030】
図2から分かるように、非接触加工機1は制御装置2を含んでいる。前述したパルスコーダ12、22、32の全ては制御装置2に電気的に接続されている。制御装置2はデジタルコンピュータであり、CPU61と記憶装置62とを主に含んでいる。
【0031】
CPU61は、加工ヘッド40の加工経路を走査する座標軸方向の移動について速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部71と、第一駆動機構部10に対する移動指令を指令する第一駆動機構部移動指令部72と、第二駆動機構部20に対する移動指令を指令する第二駆動機構部移動指令部73としての役目を果たす。なお、移動指令に基づいて速度、加速度および加加速度を容易に算出できることから、本願明細書における「移動指令」は速度、加速度および加加速度を含む概念であることが理解されるであろう。
【0032】
さらに、CPU61は、座標軸移動指令としての加速度指令、速度指令、位置指令の何れかを一定時間積算した上で時間平均を求める積算平均化処理部74としての役目を果たす。また、記憶装置62は、非接触加工機1の加工プログラムおよび各種データを記憶している。
【0033】
図3は、本発明に基づく非接触加工機の基本動作を示すフローチャートである。また、図4および図5は、それぞれ制御装置およびサーボシステムを示す第一および第二のブロック図である。以下、これら図面を参照しつつ、非接触加工機1の基本動作について説明する。
【0034】
はじめに、図3におけるステップ101において、記憶装置62から加工プログラムを読込む。次いで、ステップ102においては、この加工プログラムを解読して、加工ヘッド40が移動する加工経路が算出される。
【0035】
次いで、ステップ103において補間前加減速処理を行う。加工プログラムに記述される移動指令は線分または円弧に相当するので、各指令をブロックと呼ぶことができる。ステップ103においては、制御装置2は、隣接するブロックの位置関係、円弧半径および/または送り速度に基づいて、加工ヘッド40の加工経路における送り速度を補間周期毎に順次算出する。
【0036】
ここで、本願明細書における「補間」とは、補間周期毎の送り速度をX軸方向およびY軸方向に分配することであり、次のステップ104において行われる。さらに、「加減速処理」については以下の通りである。物体、例えば加工ヘッド40が移動するときには、物体は常に等しい速度で移動するわけではない。通常、物体は、移動開始時に或る加速度で加速し、移動停止時には他の加速度で減速する。このような移動開始時および移動停止時に対して加減速指令を付与することを加減速処理と呼ぶ。
【0037】
ここで、図6(a)は時間と速度との間の関係を示す図である。図6(a)においては、加工プログラムにおける速度指令値vp、加減速処理により得られる実際の速度指令値vs、およびこれらの中間値である速度指令中間値vfが表されている。また、図6(b)は時間と加速度との間の関係を示す図である。図6(b)においては、加速度指令中間値afおよび実際の加速度指令値asが示されている。
【0038】
図6(a)に示されるように、加工プログラムから得られる速度指令値vpはステップ状に変化する。制御装置2における補間周期は、例えば0.5msから8msであり、補間周期毎の移動量は速度指令値vpに相当する。このため、移動指令を速度と読み替える場合がある。しかしながら、加工ヘッド40を瞬時にこの速度指令値vpで実際に移動させることはできないので、一定の制限加速度内で加速するように実際の速度指令値vsを作成する。
【0039】
また、加工経路が折曲がっている場所において急激な方向転換を行うと、機械的振動が生じる。従って、加速度指令値asは自動的に減速され、次のブロックにて再加速されるように、移動指令が送出される。
【0040】
また、送り速度が順次変化することは、加工ヘッド40等が異なる加速度で移動することを意味する(図6(b)を参照されたい)。従って、本願明細書における移動指令は、単に移動後の位置に関する指令だけでなく、速度指令(送り速度の指令)および加速度指令なども含む概念である。それゆえ、本発明においては、位置、速度、加速度または加加速度のいずれかを用いて、移動量の差分を演算してよい。
【0041】
指令された加速度で駆動機構部を駆動するためには、駆動される物体の質量と指令された加速度との積に応じた力を与える必要がある。モータにより生じる力は、モータに流れる電流に概ね比例するので、加工機を大きい加速度で駆動するためには、電流をモータに瞬時に流す必要がある。
【0042】
しかしながら、モータへの電流を急激に増加させると逆起電力が生じるので、実際には、電流をモータに瞬時に流すのは困難である。このため、駆動機構部の加速度を急激に増加させるのは困難であり、加加速度を制限しつつ加速度を増大させる必要がある。また、加加速度が大きい場合には、非接触加工機1に大きな機械的衝撃が加えられる。なお、加速度および加加速度については、加工経路接線方向および加工経路法線方向の両方において制限されるものとする。従って、補間周期毎に算出された送り速度は、その加速度および加加速度が制限されている。
【0043】
図7は加減速処理の詳細を示すフローチャートである。以下、図7を参照して、図3のステップ103における加減速処理の内容を説明する。はじめに、図7のステップ201において、加工プログラムを順次読込む。そして、この加工プログラムにおける速度指令中間値vf、加速度指令中間値af、加加速度指令中間値Df、実際の加速度指令値asおよび速度指令値vsのそれぞれに対してゼロを入力する。
【0044】
次いで、ステップ202において、加工プログラムにおける速度指令値vpと速度指令中間値vfとの間の差分の絶対値|vp−vf|が所定の速度許容幅Tvよりも大きいか否かを判定する。絶対値|vp−vf|が速度許容幅Tvよりも大きい場合には、ステップ203に進んで、加速度指令中間値afにsign(vp−vf)×Aを入力する。なお、sign(x−y)=(x−y)/|x−y|(ただし、x=yのときはゼロ)であり、Aは設定された加速度許容値である。一方、絶対値|vp−vf|が速度許容幅Tvよりも大きくない場合には、ステップ204に進んで、加速度指令中間値afにゼロを入力する。
【0045】
次いで、ステップ205において、加工プログラムにおける加速度指令中間値afと実際の加速度指令値asとの間の差分の絶対値|af−as|が所定の加速度許容幅Taよりも大きいか否かを判定する。絶対値|af−as|が加速度許容幅Taよりも大きい場合には、ステップ206に進んで、加加速度指令中間値Dfにsign(ap−as)×Dを入力する。なお、Dは設定された加加速度許容値である。一方、絶対値|af−as|が加速度許容幅Taよりも大きくない場合には、ステップ207に進んで、加加速度指令中間値Dfにゼロを入力する。
【0046】
次いで、ステップ208において、以下の式を用いて実際の速度指令値vs、実際の加速度指令値as、および速度指令中間値vfを設定する。
vs←vs+as
as←as+Df
vf←vf+af
【0047】
その後、ステップ209において実際の速度指令値vsをサーボシステム(図4等を参照)に入力し、ステップ210においてプログラムが最後まで到達したか否かを判定する。そして、プログラムが終了していれば、処理自体を終了し、プログラムが終了していなければ、ステップ202に戻ってプログラムが終了するまで、処理を繰返す。このようにして、実際の速度指令値vsを取得し、加減速処理を終了する。このようにして得られた速度指令値vsから、座標軸移動指令部71は座標軸移動指令を作成する。
【0048】
なお、他の手法により、補間前加減速処理を行っても良い。例えば、指令された送り速度に到達するまで、一定の加速度で加速するようにしてもよい。このことを、補間前直線加減速と呼ぶ。あるいは、或る加速度に到達するまで或る加加速度でもって加速度を大きくし、次いで、指令された送り速度に到達する直前において他の加加速度でもって加速度を小さくしてもよい。このことを、補間前ベル形加減速と呼ぶ。
【0049】
再び図3を参照すると、ステップ104において、座標軸移動指令部71が補間処理を行い、速度指令値を補間周期毎に分配し、X座標軸移動指令およびY座標軸移動指令を作成する。この補間処理は、加工プログラムから解読される補間周期毎の加工ヘッド40の位置に基づいて容易に行うことができる。
【0050】
図4に示される実施形態においては、補間後におけるY座標軸移動指令は、Y軸方向駆動機構部30を制御するサーボシステムに供給される。そして、Y軸方向駆動機構部30のモータ31はこの移動指令に追従するようにフィードバックシステムで駆動される。Y軸方向に関するサーボシステム(図4等を参照されたい)においては、移動指令を積算する。そして、実際にモータを駆動してパルスコーダ32により得られる帰還信号と積算された移動指令との差分に応じて、サーボアンプ31’に指令してモータ31を追加駆動する。
【0051】
なお、パルスコーダ32の代わりに、リニアスケールを採用することも可能である。また、図面には示さないものの、Y座標軸移動指令について、補間後加減速処理(後述する)を行うことも可能である。
【0052】
次に、ステップ105において、第二駆動機構部移動指令部73が、X座標軸移動指令に基づいて、第二駆動機構部20をX1軸に沿って移動させるX1軸移動指令を作成する。具体的には、X1軸についての加速度許容値A’、および加加速度許容値D’を予め設定し、これら加速度許容値A’、および加加速度許容値D’に基づいて、図7に示した処理を行う。そして、この処理により得られる実際の速度指令値vsからX1軸移動指令を作成する。
【0053】
次いで、ステップ106において、第一駆動機構部移動指令部72が、X座標軸移動指令からX1軸移動指令を減算し、その差分からX2軸移動指令を作成する。なお、X2軸移動指令は、第一駆動機構部10の加工ヘッド40をX2軸に沿って移動させる指令である。図から分かるように、X1軸移動指令およびX2軸移動指令は、それぞれのサーボシステムに与えられてフィードバック制御される(図4を参照されたい)。
【0054】
図4から分かるように、本発明においては、X座標軸移動指令をX1軸移動指令およびX2軸移動指令に分配する際に、X1軸およびX2軸のサーボシステムのパルスコーダ11、12からの帰還信号を必要としない。このため、本発明においては、高加速の第一駆動機構部10へのX1軸移動指令と低加速の第二駆動機構部20へのX2軸移動指令とを同時に作成できる。また、補間分配の際に帰還信号を必要としないことから、本発明のシステムを構築するのが容易であることが理解されよう。
【0055】
その結果、本発明においては、制御装置2からの移動指令の伝達、サーボアンプからのモータ11、21、31への電流印加、およびモータ11、21、31の回転のパルスコーダ12、22、33による検出などの動作に遅れが生じることはない。それゆえ、X1軸とX2軸との間の協調動作に悪影響が及ぶのを回避するのが可能となる。従って、本発明においては、一方の駆動軸の動作開始時の移動誤差分が生じることなしに、高精度な制御を行うことが可能である。
【0056】
次いで、ステップ107において、補間後加減速処理を行う。つまり、図7を参照して説明した加減速処理を分配されたX1軸移動指令に対して再度行う。ステップ107においては、X1軸に関する限界加速度に応じた加速度で加速または減速するように、補間周期毎の移動指令量を抑える。これにより、円弧の経路が歪むのを回避して、円滑な動作が可能となる。なお、X2軸およびY軸に関しても、前述したのと同様な補間後加減速処理を行っても良い。
【0057】
また、図5に示される実施形態においては、補間後加減速処理の代わりに、X2軸移動指令について積算平均化処理を行うようにしている。具体的には、積算平均化処理部74は、X2軸移動指令について、加速度指令、速度指令または位置指令のいずれかを一定時間積算して、その平均値を算出する。そして、第二駆動機構部移動指令部73は、算出された平均値を第二駆動機構部20に対する移動指令として指令する。その後、前述したのと同様に、X座標軸移動指令からX1軸移動指令を減算して、X2軸移動指令を作成する。このような場合にも前述したのと同様な効果が得られることに加えて、より簡便なアルゴリズムによりX1軸移動指令およびX2軸移動指令のそれぞれが得られるのは明らかであろう。
【0058】
さらに、図5に示される実施形態において、座標軸移動指令が、加速時と減速時とにおいて速度、加速度および加加速度が対称的に変化する場合には、平均化処理されて分割された第一の駆動機構部への移動指令量および第二の駆動機構部への移動指令量は、対称的に変化する速度、加速度および加加速度を有することになる(図10を参照されたい)。
【0059】
ところで、図8は、図3の処理によって得られる速度v、位置p、加速度aおよび加加速度a’と時間との関係を示す図である。これらの単位は、それぞれm/s、m、m/s、m/sであり、時間sの単位は秒である。図8においては、実線はX軸に関する位置などを示しており、一点鎖線はX1軸に関する位置などを示しており、破線はX2軸に関する位置などを示している。
【0060】
図8から分かるように、移動開始直後における速度vについては、X座標軸移動指令(図8のvXに相当)が急速に増加するものの、X1軸移動指令(図8のvX1に相当)の増加は比較的小さい。X座標軸移動指令とX1軸移動指令との間の差分はX2軸に与えられる。X座標軸移動指令が加減速指令を伴うものであるので、X2軸移動指令は不連続ではなく、加工ヘッド40は大きい加速度aX2、大きい加加速度a’X2で駆動する。このようなX1軸移動指令およびX2軸移動指令によって、Y軸方向駆動機構部30および加工ヘッド40をX軸方向に適切に移動させられる。
【0061】
次いで、X1軸指令速度vX1がX座標軸指令速度vXに追いつくと(時刻0.07秒付近)、X2軸指令速度vX2はゼロになり、第二駆動機構部20のみがX1軸に沿って移動するようになる。さらに、移動停止前においては、前述したのとは反対の現象が生じる。すなわち、はじめにX2軸が加速時と逆方向に動いて加工ヘッド40を停止させ、次いでX1軸が徐々に停止するようになる。
【0062】
移動停止時には、加工ヘッド40の位置は加速時と減速時とで相殺されるので、X2軸における加工ヘッド40の位置は移動開始前の位置まで戻る。そして、図8から分かるように、X2軸における加工ヘッド40の位置は、Y軸方向駆動機構部30がX1軸上を移動するときに、その移動方向に偏っている。
【0063】
さらに、図8に示されるように、X軸に関する加速度aX、加加速度a’Xと比較すると、X1軸に関する加速度aX1、加加速度a’X1は小さく抑えられている。このようにして、本発明においては、X1軸およびX2軸の両方はその加加速度、加速度、速度の限界を越えない範囲で、遅れを伴うことなしに、X座標軸移動指令に基づいてY軸方向駆動機構部30および加工ヘッド40をX軸方向に適切に移動させられる。
【0064】
ところで、図8において移動開始直後におけるX2軸に関する加速度aX2はX1軸に関する加速度aX1よりも大きい。このため、等速度で移動するとき(図8においてvXが水平である領域)であっても、X2軸の位置は移動方向に偏っている(図8における位置pX2がゼロよりも大きくなっている)。その結果、X2軸における移動については、本来であれば不要な動作を含むことになる。このため、本発明においては、等速度で移動する際に、加工ヘッド40をX2軸における中心位置に保持することが望まれる。
【0065】
このように加工ヘッド40をX2軸における中心位置に保持した場合には、X2軸におけるストロークを低減でき、それにより、X2軸自体を軽量かつ短縮化できることになる。その結果、Y軸およびX1軸に要求される駆動力も低くでき、非接触加工機1をさらに高速動作させることが可能となる。さらに、この場合には、非接触加工機1全体の動作も円滑になるのが分かるであろう。
【0066】
図9は、そのような場合における非接触加工機1の制御装置およびサーボシステムを示す第三のブロック図である。図9においても、図3を参照して説明したのと概ね同様な処理が行われるので、相違点について主に記載する。図9においては、作成されたX1軸およびY軸に関する移動指令に関し、遅延バッファ51、52が遅延処理を行う。
【0067】
図9から分かるように、本実施形態においては、X軸に関する移動指令を一定時間保持する。そして、X1軸移動指令と一定時間保持されたX座標軸移動指令との間の差分を算出して、X2軸移動指令を作成する。X座標軸動指令の保持時間(遅延時間)は、例えばX1軸に関する移動速度がX軸に関する移動速度に到達するのに必要な時間の半分である。この場合には、X2軸に関する動作位置範囲、速度範囲、加速度範囲を必要最小限に抑えることが可能となる。
【0068】
また、図9においては、前述した積算平均化処理部74’が示されている。例えばX座標軸移動指令の保持時間(遅延時間)を積算時間の半分の時間にしてもよい。これにより、第二駆動機構部20の移動速度vX2がX軸に関する速度vXに到達する時間を半分にすることが可能となる。本実施形態においては、速度、加速度および加加速度を対称的に増減させるのが有利である。
【0069】
ここで、図10は速度、位置、加速度および加加速度と時間との関係を示す他の図であり、図8と同様の図である。図10を参照して分かるように、移動開始直後には、遅延バッファ51によりX2軸に関する移動指令は入力されない。そして、積算平均化処理された移動指令が差分として与えられるので、X2軸はX1軸とは反対方向で且つ同じ加速度で移動し始める。このため、非接触加工機1の移動開始時であっても、加工ヘッド40自体は移動しない。
【0070】
そして、所定の遅延時間が経過した後で、遅延されたX座標軸移動指令がX2軸側に入力され、X2軸は減速開始する。次いで、X2軸に関する速度は反転して、X1軸と同方向になる。図10から分かるように、Y軸方向駆動機構部30がX1軸において等速運動するときには、X2軸において加工ヘッド40は停止する。なお、加工ヘッド40が減速して停止する場合も概ね同様の動作である。
【0071】
図9および図10に示される実施形態においては、加工ヘッド40が実際に動作開始する前に、X2軸に沿って逆方向に移動するような動作を行う。従って、X2軸に必要とされるストロークが最小限になる。このことは、図8および図10を比較することによって明らかであろう。さらに、この実施形態においては、速度、加速度および加加速度のいずれであっても、X1軸移動指令およびX2軸移動指令がX座標軸移動指令を越えることはない。これに対し、図8に示される実施形態においては、X軸に関する速度vX1がX1軸に関する速度vXよりも大きい場合などがある。
【0072】
つまり、図9および図10に示される実施形態においては、第一駆動機構部10の動作位置範囲、速度範囲、加速度範囲を必要最小限に抑えることが可能である。従って、第一駆動機構部10をより軽量に製作でき、第一駆動機構部10を第二駆動機構部20に搭載した場合に、第二駆動機構部20に係る負担を軽減することもできる。すなわち、本実施形態においては、非接触加工機1を極めて効率的に動作させられることが分かるであろう。
【0073】
さらに、本実施形態においては、加減速時間の半分の時間にわたって、X座標軸移動指令を遅延保持することが行われる。従って、本発明においては、加速時の各波形が、加減速時間の半分の時間に対して対称的であることが必要であり、このことが、また上記効果を確かなものにしている。
【0074】
ところで、図11は非接触加工機1の制御装置およびサーボシステムの第四のブロック図である。図11に示される実施形態においては、図1に示される加工ヘッド40に対してU軸およびW軸が設定されている。これらU軸およびW軸は、それぞれX軸およびY軸に対して45度の角度をなしている。従って、図11を参照して分かるように、X軸およびY軸に関する移動指令に1/√2を乗算することにより、U軸およびW軸に関する移動指令をそれぞれ作成する。
【0075】
本実施形態においては、X軸およびY軸などの直交座標の代わりに、回転軸と半径軸とからなる極座標軸を使用することも可能である。極座標軸に基づいて高加速度機構を構成した場合には、ワークWを円弧に沿って極めて高速で加工することが分かるであろう。
【0076】
ところで、図12は遅延バッファを説明するための図であり、以下、遅延バッファ51、52、53の一つの態様を説明する。遅延バッファは、例えばFIFOバッファであり得る。図12に示されるように、遅延バッファは、遅延時間に対応するメモリセル81と、メモリセル81のそれぞれと関連して指令値を記憶可能な記憶セル82とを含んでいる。図から分かるように、メモリセル81には、アドレスを示す番号(例えば#1〜#15)が付されている。
【0077】
メモリセル81の番号は補間周期毎に「1」を加算し、メモリセル81の番号が最大(#15)になったら、最初の番号(#1)のメモリセル81に戻る。そして、ポインタセル80が指す番号に対応するメモリセル81に関連づけて指令値を記憶セル82に格納する。そして、ポインタセル80が指す番号に「1」を加算した番号に対応するメモリセル81の値を出力する。
【0078】
さらに、図13(a)は積算平均化処理部74を説明するための図である。積算平均化処理部74は時間に対応するメモリセル91と、メモリセル91のそれぞれと関連して元の指令値、ならびに第一および第二の積算平均値を記憶可能な記憶セル92〜94とを含んでいる。ここで、記憶セル93には、指定時間の積算平均値(一段目)が記憶される。そして、図13(a)からわかるように、記憶セル94には、積算平均化処理を二段行った値が記憶される。
【0079】
図13(b)はメモリセルの番号と元の指令値および積算平均値との関係を示す図である。図13(b)に示されるように、一段目の積算平均値は線形に変化しており、二段目の積算平均値は曲線状に変化している。ここで、積算平均値が補間周期毎の移動量の指令値、つまり速度指令であると考えると、一段目は直線形加減速であり、二段目はベル形加減速に相当する。図13(b)から分かるように、一段目においては加速度が有限であり、二段目においては、加速度および加加速度の両方が有限である。加速度および加加速度を制限する場合には、指令速度から積算する時間を算出して変更すれば良い。
【0080】
このような積算平均化処理を用いた場合には、加減速時の時間的中間点を境にして、速度、加速度および加加速度の推移が軸対称または点対称になる。これに対して、一般的なローパスフィルタまたはハイパスフィルタによる処理は、速度などを含む移動指令は、指数関数的に変化する。
【0081】
本発明のような二段駆動機構部の非接触加工機1の制御において、指数関数的に変化する移動指令を与えると、加速開始時に高加速度で駆動される軸に異常に大きな加速度、加加速度の指令が与えられる。さらに、等速運動に移行する直前においては、高加速度で駆動されるべき軸が小さな加速度でしか駆動されなくなる。
【0082】
このため、本発明のように積算平均化処理を行うことによって、加速開始時と等速運動到達時に同等の加速度、加加速度を高加速度駆動軸に与えることができ、加工機の性能を十分に引出すことが可能となる。なお、このような積算平均化処理を補間前加減速の代わりに行うようにしてもよい。そのような場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 非接触加工機
2 制御装置
9 テーブル
10 第一駆動機構部
11、21、31 モータ
12、22、33 パルスコーダ
15、25、35 ボールネジ
16 第一レール
19 可動テーブル
20 第二駆動機構部
26 第二レール
29 フレーム
30 Y軸方向駆動機構部
36 Y軸方向レール
39 可動テーブル
40 加工ヘッド
41 加工ノズル
51、52、53 遅延バッファ
62 記憶装置
71 座標軸移動指令部
72 第一駆動機構部移動指令部
74 積算平均化処理部
80、90 ポインタセル
81 メモリセル
82 記憶セル
91 メモリセル
92〜94 記憶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ノズルを有する加工ヘッドを被加工物上で走査させて前記被加工物を加工する非接触加工機において、
前記加工ヘッドを前記被加工物の加工領域全体よりも小さい領域において走査させる第一駆動機構部と、
前記第一駆動機構部を前記加工領域全体にわたって移動させる第二駆動機構部と、
前記加工ヘッドの加工経路を走査する座標軸方向の移動について、速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部と、
前記座標軸移動指令部からの座標軸移動指令に基づき、速度指令に加えて加減速指令を伴う移動指令を前記第二駆動機構部への移動指令として指令する第二駆動機構部移動指令部と、
前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を、前記第一駆動機構部への移動指令として指令する第一駆動機構部移動指令部と、を備えることを特徴とする非接触加工機。
【請求項2】
加工ノズルを有する加工ヘッドを被加工物上で走査させて前記被加工物を加工する非接触加工機において、
前記加工ヘッドを前記被加工物の加工領域全体よりも小さい領域において走査させる第一駆動機構部と、
前記第一駆動機構部を前記加工領域全体にわたって移動させる第二駆動機構部と、
前記加工ヘッドの加工経路を走査する座標軸方向の移動について、速度指令に加えて加減速指令を伴う座標軸移動指令を指令する座標軸移動指令部と、
前記座標軸移動指令部からの座標軸移動指令としての加速度指令、速度指令、位置指令の何れかを一定時間積算した上で時間平均を求める移動指令平均化処理部と、
前記移動指令平均化処理部で平均化処理された移動指令を、前記第二駆動機構部への移動指令として指令する第二駆動機構部移動指令部と、
前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を、前記第一駆動機構部への移動指令として指令する第一駆動機構部移動指令部と、を備えることを特徴とする非接触加工機。
【請求項3】
前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分を演算する際に、
前記座標軸移動指令を一定時間保持遅延したものと前記第二駆動機構部への移動指令との差分を求め、これを前記第一駆動機構部への移動指令とした、請求項1または2に記載の非接触加工機。
【請求項4】
前記第一駆動機構部と第二駆動機構部は、直交座標または極座標による軸構成であって対応する軸同士が互いに平行ではなく、
前記第一駆動機構部への移動指令は、前記座標軸移動指令と前記第二駆動機構部への移動指令との差分をベクトル分解して指令される請求項1乃至3の内、いずれか一項に記載の非接触加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−282419(P2010−282419A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135159(P2009−135159)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】