説明

非接触式位置検出センサ

【課題】 精度の高い非接触式位置検出センサを安価に製作することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る非接触式位置検出センサは、可動部23が固定部21に対して一定方向に移動すると、磁束検出素子30が検出する磁束密度が変化することで、固定部21に対する可動部23の相対位置が求められる構成の非接触式位置検出センサ20であって、磁石43には、磁束を誘導するためのヨーク41,42が接続されており、ヨーク41,42には磁束を誘導する部分の途中に隙間Gが設けられており、磁束検出素子30は、固定部21に対して可動部23が移動することにより、ヨーク41,42の隙間G内を一定方向に相対移動する構成であり、ヨーク41,42の隙間Gを構成する部分は、磁束検出素子30が検出する磁束密度を予め決められたパターンに基づいて変化させることが可能な形状に加工されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部あるいは固定部の一方に装着されている磁石と、前記可動部あるいは固定部の他方に装着されており、磁束密度を測定可能な磁束検出素子とを備え、前記可動部が前記固定部に対して一定方向に移動すると、前記磁束検出素子が検出する磁束密度が変化することで、前記固定部に対する前記可動部の位置が求められる構成の非接触式位置検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の非接触式位置検出センサが特許文献1に記載されている。
非接触式位置検出センサ90は、図6に示すように、可動部であるシャフト92の基端部に取付けられた磁石アッセンブリ93を備えている。磁石アッセンブリ93は、略扁平V字形の上磁石93uと下磁石93dとから構成されている。磁石アッセンブリ93は、固定部である上磁極片95uの先端部と下磁極片95dの先端部との間に配置されており、その上磁極片95uの基端部と下磁極片95dの基端部との間に磁束センサ98が配置されている。
上記構成により、磁石アッセンブリ93がシャフト92と共に軸方向に移動すると、その移動量に応じて上磁極片95u及び下磁極片95dを通る磁束の密度が変化し、その磁束密度の変化が磁束センサ98によって検出される。したがって、磁束センサ98の磁束密度検出値から上磁極片95u及び下磁極片95dに対する磁石アッセンブリ93の位置を求めることが可能になる。
【0003】
【特許文献1】特表2004−508562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した非接触式位置検出センサ90では、略扁平V字形に加工された上磁石93uと下磁石93dとからなる磁石アッセンブリ93を使用する。一般的に、磁石は金属紛を型内に圧入して焼結することにより成形されるため、金属を切削等して所定形状に加工する場合と比べて加工精度が低い。このため、希望する加工精度を得るためには、後行程で磁石アッセンブリ93の仕上げ加工を行う必要があり、製作コストが高くなる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、磁石の代わりに精密加工が可能なヨークを加工できるようにして、精度の高い非接触式位置検出センサを安価に製作できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、可動部あるいは固定部の一方に装着されている磁石と、前記可動部あるいは固定部の他方に装着されており、磁束密度を測定可能な磁束検出素子とを備え、前記可動部が前記固定部に対して一定方向に移動すると、前記磁束検出素子が検出する磁束密度が変化することで、前記固定部に対する前記可動部の位置が求められる構成の非接触式位置検出センサであって、前記磁石には、磁束を誘導するためのヨークが接続されており、前記ヨークには磁束を誘導する部分の途中に隙間が設けられており、前記磁束検出素子は、前記固定部に対して前記可動部が移動することにより、前記ヨークの隙間内を一定方向に相対移動する構成であり、前記ヨークの隙間を構成する部分は、前記磁束検出素子がその隙間内を一定方向に相対移動する際に、前記磁束検出素子が検出する磁束密度を予め決められたパターンに基づいて変化させることが可能な形状に加工されていることを特徴とする。
【0006】
本発明によると、固定部に対して可動部が一定方向に移動することにより、磁束検出素子はヨークの隙間内を一定方向に相対移動する構成である。さらに、ヨークの隙間を構成する部分は、磁束検出素子がヨークの隙間内を一定方向に相対移動する際に、その磁束検出素子が検出する磁束密度を予め決められたパターンに基づいて変化させることが可能な形状に加工されている。一般的に、ヨークは鉄片等から構成されるため、切削加工やプレス加工が可能であり、高精度の加工を比較的に安価に行える。本発明では、磁石を加工せずにヨークの隙間を構成する部分を加工する構成のため、高精度の非接触式位置検出センサを安価に製作できるようになる。
【0007】
請求項2の発明は、磁石のN極側に接続された第1ヨークと、前記磁石のS極側に接続されており、前記第1ヨークと対向して設けられた第2ヨークとを備え、前記第1ヨークと第2ヨークとの間の隙間は、前記磁石から離れて各々のヨークの先端に近づくにつれて広くなるように構成されており、磁束検出素子は、前記隙間内を前記磁石の近傍から前記ヨークの先端近傍まで相対移動可能に構成されていることを特徴とする。
このため、固定部に対して可動部を移動させる際の磁束密度の変化パターンが比較的簡単なグラフで表せるようになる。例えば、磁束検出素子が第1ヨークと第2ヨークとの隙間内を磁石から離れる方向に(ヨークの先端方向に)相対移動すると、その移動量に応じて磁束検出素子が検出する磁束密度は小さくなる。
【0008】
請求項3の発明によると、磁束検出素子は乗用車のシフトレバーのハウジングに固定された固定部に装着されており、磁石及び第1ヨーク、第2ヨークは乗用車のシフトレバーに連結された可動部に装着されており、前記シフトレバーと可動部との間には、そのシフトレバーの回動運動を可動部の直線運動に変換するための運動変換機構が設けられていることを特徴とする。
このため、非接触式位置検出センサを使用してシフトレバーのシフトポジションを検出可能になる。ここで、シフトレバーが回動運動をしても、運動変換機構がその回動運動を直線運動に変換するため、可動部は固定部に対して直線運動を行うようになる。このため、シフトポジションと磁束密度との関係づけが容易になる。
【0009】
請求項4の発明によると、固定部と可動部との間には、その可動部を前記固定部に対して一定方向に移動可能にガイドするためのガイド部材が設けられていることを特徴とする。このため、ガイド部材の働きにより、可動部は固定部に対して安定した状態で一定方向に移動するようになる。
請求項5の発明によると、複数個の磁束検出素子が一組で使用されていることを特徴とする。このため、複数個の磁束検出素子の出力を比較することにより異常を検出することが可能になり、非接触式位置検出センサの信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、磁石を加工せずにヨークを加工する構成のため、高精度の非接触式位置検出センサを安価に製作できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図5に基づいて、本発明の実施形態1に係る非接触式位置検出センサについて説明する。本実施形態に係る非接触式位置検出センサは、乗用車のシフトレバーの位置検出に使用されるセンサである。図1は本実施形態に係る非接触式位置検出センサの磁石及びヨークとホール素子との関係を表す側面図等、図2は非接触式位置検出センサの外形図等、図3は非接触式位置検出センサの磁石及びヨークを表す側面図等である。図4は非接触式位置検出センサをシフトレバー装置に装着した状態を表す斜視図等、図5はその縦断面図である。ここで、シフトレバー装置の幅方向をX方向、前後方向をY方向、高さ方向をZ方向として図示する。
【0012】
本実施形態に係る非接触式位置検出センサ20の説明を行う前に、先ず、シフトレバー装置10の概略説明を行う。
シフトレバー装置10は、図4、図5に示すように、シフトレバー16と、そのシフトレバー16を前後回動可能に支持するハウジング14と、ハウジング14の上部を覆う表面カバー12とから構成されている。ここで、図5は図4(B)のV-V矢視断面図を表している。
図5に示すように、シフトレバー16の基端部(下端部)には、そのシフトレバー16に対して直角に短管16xが固定されており、その短管16xに回転中心軸14pが通されている。回転中心軸14pは、ハウジング14の下端部を幅方向(X方向)に横断しており、その回転中心軸14pの両端部が前記ハウジング14の両側板によって支持されている。このため、シフトレバー16は、回転中心軸14pの回りをハウジング14の前後方向(シフトレバー装置10の前後方向)に回動可能となる。
【0013】
また、シフトレバー16の側面には、図5に示すように、短管16xの上方に連結ピン16cが左方向に突出形成されており、その連結ピン16cの先端が後記する非接触式位置検出センサ20の可動板23の突起部25と係合している。前記連結ピン16cは、図4(B)に示すように、シフトレバー16が回転中心軸14pの回りを前後方向に回動する際に、その回転中心軸14pを中心に円弧運動をするようになる(矢印参照)。
シフトレバー装置10のハウジング14には、左側面に非接触式位置検出センサ20が装着された状態で、上方から表面カバー12が被せられる。表面カバー12には前後に長い開口12hが形成されており、その開口12hの右端縁にシフトポジション(P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2(セカンド)及びL(ロー))が順番に刻印されている。シフトレバー16は、表面カバー12の開口12hに通されており、そのシフトレバー16が各シフトポジションの位置まで回動した時に、乗用車の変速機が各シフトポジションの状態に切替わるように構成されている。なお、シフトレバー16の把手16tは、そのシフトレバー16が表面カバー12の開口12hに通された後に取付けられる。
【0014】
次に、非接触式位置検出センサ20の説明を行う。
非接触式位置検出センサ20は、シフトレバー16が上記したシフトポジション(P,R,N,D,2,L)のうちどのポジションにあるかを検出するためのセンサであり、前述のように、ハウジング14の左側面に取付けられている。
非接触式位置検出センサ20は、図1(A)等に示すように、浅い箱形に形成されたセンサケース21を備えている。ここで、図1(A)はセンサケース21の内部を表しており、図2(A)はセンサケース21の外形図を表している。また、図1(B)は図1(A)のB−B矢視断面図、図2(B)は図2(A)のB−B矢視断面図である。
センサケース21は、その長手方向がシフトレバー装置10の前後方向(Y方向)と一致するように立てられた状態で、例えば、ボルト等により、そのシフトレバー装置10のハウジング14の左側面に固定される。センサケース21の底板21e(ハウジング14側の壁板)には、Y方向に延びる中心線C上のほぼ中央位置に長孔状の開口21hが形成されており、その開口21hの前方にホール素子30が二台一組で設置されている。
ホール素子30は、ホール効果を利用して磁束密度を検出するための素子であり、センサケース21の底板21eの裏側(ハウジング14側)に設けられた電気回路(図示省略)に接続されている。
即ち、ホール素子30が本発明の磁束検出素子に相当する。
【0015】
センサケース21の内側には、そのセンサケース21の内壁面に沿って前後方向(Y方向)に移動可能な可動板23が収納されている。可動板23は、図1(A)、図2(A)に示すように、略長方形状に形成されており、前辺23fから中央部にかけて中心線Cに沿って一定幅の切欠き23kが形成されている。
可動板23の表面側(ハウジング14と反対側)には、図1(A)に示すように、切欠き23kの上側に板状の第1ヨーク41が固定されており、その切欠き23kの下側に同じく板状の第2ヨーク42が固定されている。そして、第1ヨーク41の基端部と第2ヨーク42の基端部とが、切欠き23kの後側(図1(A)において右側)に固定された角形の磁石43に接続されている。なお、磁石43は、第1ヨーク41側がN極、第2ヨーク42側がS極となるように、可動板23に取付けられている(図3(A)参照)。
【0016】
第1ヨーク41及び第2ヨーク42は磁石43の磁束を誘導するための部材であり、強磁性体である鉄片を機械加工することにより形成されている。第1ヨーク41と第2ヨーク42とは中心線Cに対して対称となるように成形されており、第1ヨーク41の下端面41tと第2ヨークの上端面42tとが切欠き23kを挟んで対向している。第1ヨーク41の下端面41tは先端側で高くなるように傾斜しており、第2ヨークの上端面42tは先端側で低くなるように傾斜している。このため、第1ヨーク41の下端面41tと第2ヨークの上端面42tとの間の隙間Gは、磁石43から離れて各々のヨーク41,42の先端に近づくにつれて広くなるように構成されている。
【0017】
可動板23の裏面側(ヨーク41,42、磁石43と反対側)には、図1(A)(B)に示すように、突起部25が形成されており、その突起部25がセンサケース21の底板21eの開口21hを通ってハウジング14側に突出している。突起部25は、図1(A)の点線に示すように、断面逆U字形に形成されて、その内側に縦長の凹部25eが形成されている。そして、可動板23の突起部25の凹部25eにシフトレバー16の連結ピン16cの先端が係合している。上記構成により、シフトレバー16が後退限位置から前方に回動させられると、そのシフトレバーの連結ピン16cが前方に円弧運動しながら突起部25を前方に押圧する。突起部25は前後方向(Y方向)の移動のみを許容されているため、シフトレバー16の連結ピン16cは突起部25の凹部25e内で上方あるいは下方に移動しながら、その突起部25を前方(図1において左方向)に押圧するようになる。
【0018】
これによって、突起部25と共に可動板23、及び第1ヨーク41、第2ヨーク42と磁石43とが前方(Y方向)に移動し、ホール素子30は第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って磁石43に近づく方向(後方)に相対移動するようになる。また、シフトレバー16が前進限位置から後方に回動させられると、上記とは逆に、ホール素子30は第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って磁石43から離れる方向(前方)に相対移動するようになる。
即ち、センサケース21に収納された可動板23が本発明の可動部に相当し、そのセンサケース21が本発明の固定部に相当する。また、可動板23の突起部25の凹部25eとシフトレバー16の連結ピン16cとが本発明の運動変換機構に相当する。さらに、センサケース21の内壁面が本発明のガイド部材に相当する。
【0019】
図3(A)は、第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って相対移動するホール素子30の各々の位置(y3〜−y3)を表している。また、図3(B)は、ホール素子30の位置(横軸)と磁束密度(縦軸)との関係を表すグラフである。ここで、図3(B)おいて×で表すグラフは雰囲気温度が約−40℃におけるホール素子30の位置と磁束密度との関係を表しており、□で表すグラフは常温下(20℃)でのホール素子30の位置と磁束密度との関係を表している。また、△で表すデータは約80℃下でのホール素子30の位置と磁束密度との関係を表している。なお、ホール素子30が接続される電気回路には温度補償回路が設けられており、温度変化で磁束密度の検出値が変化しないように配慮されている。
例えば、常温下(20℃)で、ホール素子30が隙間Gの中央位置y0にあるとき、そのホール素子30によって検出される磁束密度はb0(mT)(以下、単位省略)となる。また、ホール素子30が中央位置y0よりも前側(磁石43から離れる側)の位置y1、y2、y3にあるときは、そのホール素子30によって検出される磁束密度は減少してb1、b2、b3(b0>b1>b2>b3)となる。さらに、ホール素子30が中央位置y0よりも後側(磁石43に近づく側)の位置−y1、−y2、−y3にあるときは、前記磁束密度が増加してb10、b20、b30(b0<b10<b20<b30)となる。
【0020】
ホール素子30の位置(y3〜−y3)はシフトレバー16のシフトポジションと対応している。即ち、ホール素子30の位置y0はシフトポジションN(ニュートラル)に対応しており、位置−y3はシフトポジションP(パーキング)、位置−y1はシフトポジションR(リバース)に対応している。また、ホール素子30の位置y1、y2、y3はそれぞれシフトポジションD(ドライブ)、2(セカンド)、L(ロー)に対応している。このため、シフトレバー16がシフトポジションPの位置にあるときは、ホール素子30が位置−y3にあり、磁束密度の値はb30となる。このため、ホール素子30により検出された磁束密度の値からシフトレバー16がシフトポジションPの位置にあることが分かる。
【0021】
シフトポジションP(前進限位置)からシフトレバー16が後方に回動すると、そのシフトレバー16の連結ピン16cが可動板23の突起部25を後方に押圧し、可動板23はセンサケース21内を後方(図1中右方向)に移動する。これによって、第1ヨーク41、第2ヨーク42と磁石43は可動板23と共に後方(右方向)に移動し、センサケース21のホール素子30は第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って相対的に前進(左方向に移動)する。これによって、図3(B)に示すように、磁束密度が徐々に減少し、シフトレバー16がシフトポジションRまで回動した段階でホール素子30は位置−y1に到達し、磁束密度の値はb10となる。この磁束密度の値b10からシフトレバー16がシフトポジションRの位置にあることが分かる。
【0022】
シフトレバー16がさらに後方に回動すると、上記したようにホール素子30は第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って相対的に前進する。これによって、図3(B)に示すように、磁束密度が徐々に減少し、シフトレバー16がシフトポジションNまで回動した段階でホール素子30は位置y0に到達し、磁束密度の値はb0となる。さらに、シフトレバー16がシフトポジションDまで回動した段階でホール素子30は位置y1に到達し、磁束密度の値はb1となる。また、シフトレバー16がシフトポジション2(セカンド)まで回動した段階でホール素子30は位置y2に到達し、磁束密度の値はb2となる。そして、シフトレバー16がシフトポジションLまで回動した段階(後退限位置)でホール素子30は位置y3に到達し、磁束密度の値はb3となる。このように、磁束密度の値からシフトレバー16のシフトポジションが分かるようになる。
【0023】
シフトレバー16がシフトポジションL(後退限位置)から前方に回動すると、そのシフトレバー16の連結ピン16cが可動板23の突起部25を前方に押圧し、可動板23はセンサケース21内を前方(図1中左方向)に移動する。これによって、第1ヨーク41、第2ヨーク42と磁石43は可動板23と共に前方(左方向)に移動し、センサケース21のホール素子30は第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間G内を中心線Cに沿って相対的に後進(右方向に移動)する。これによって、図3(B)に示すように、磁束密度が徐々に増加する。そして、磁束密度の値からシフトレバー16のシフトポジションが分かるようになる。
【0024】
上記したように、本実施形態に係る非接触式位置検出センサ20によると、第1ヨーク41と第2ヨーク42との隙間Gを構成する部分は、ホール素子30がそれらのヨーク41,42の隙間G内を一定方向に相対移動する際に、そのホール素子30が検出する磁束密度を予め決められたパターン(図3(B)参照)に基づいて変化させることが可能な形状に加工されている。ここで、第1、第2ヨーク41,42は鉄片等から構成されているため、切削加工やプレス加工が可能であり、高精度の加工を比較的に安価に行える。本実施形態に係る非接触式位置検出センサ20では、磁石43を加工せずに第1、第2ヨーク41,42との隙間Gを構成する部分を加工する構成のため、高精度の非接触式位置検出センサ20を安価に製作できるようになる。
【0025】
また、第1ヨーク41と第2ヨーク42との間の隙間Gは、磁石43から離れて各々のヨーク41,42の先端に近づくにつれて広くなるように構成されており、ホール素子30は、隙間G内を磁石43の近傍から各ヨーク41,42の先端近傍まで相対移動可能に構成されている。このため、センサケース21に対して可動板23を移動させる際の磁束密度の変化パターンが比較的簡単なグラフ(直線に近い状態)で表せるようになる。
また、シフトレバー16が回動運動をしても、運動変換機構(突起部25の凹部25eと連結ピン16c)がその回動運動を直線運動に変換するため、可動板23はセンサケース21に対して直線運動を行うようになる。このため、シフトポジションと磁束密度との関係づけが容易になる。
また、複数個(二個)のホール素子30が一組で使用されているため、二個のホール素子30の出力を比較することにより異常を検出することが可能になり、非接触式位置検出センサ20の信頼性が向上する。
【0026】
なお、本実施形態では、隙間Gを構成する第1ヨーク41の下端面41tと第2ヨーク42の上端面42tとを傾斜面状に形成する例を示したが、下端面41tと上端面42tとの形状は磁束密度の変化パターンに対応して適宜変更可能である。
また、可動板23に第1ヨーク41、第2ヨーク42及び磁石43を取付け、センサケース21にホール素子30を取付ける例を示したが、そのホール素子30を可動板23に取付け、第1ヨーク41、第2ヨーク42及び磁石43をセンサケース21に取付けることも可能である。
また、鉄片を機械加工することにより第1ヨーク41及び第2ヨーク42を製作する例を示したが、第1ヨーク41及び第2ヨーク42を金属樹脂成形品により成形することも可能である。ここで、金属樹脂成形品とは、樹脂と金属紛とを混合することにより得られる成形品である。金属樹脂成形品を利用することにより、磁石を型内にインサートした状態で、ヨークを型成形する際に両者を一体化することが可能になる。さらに、第1ヨーク41及び第2ヨーク42を複雑な形状に加工することも可能になる。
また、本実施形態では、シフトレバー装置10のシフトポジション検出用に非接触式位置センサ20を使用する例を示したが、例えば、アクセルペダルの位置検出用に非接触式位置センサ20を使用することも可能である。さらに、スロットル制御装置におけるスロットルバルブの位置検出や、車両の車高測定用に非接触式位置センサ20を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の本実施形態1に係る非接触式位置検出センサの磁石及びヨークとホール素子との関係を表す側面図(A図)及び平断面図(A図のB-B矢視断面図)(B図)である。
【図2】非接触式位置検出センサの外形図(A図)及び縦断面図(AのB-B矢視断面図)(B図)である。
【図3】非接触式位置検出センサの磁石及びヨークを表す側面図(A図)及びホール素子の位置と磁束密度との関係を表すグラフ(B図)である。
【図4】シフトレバー装置の表面カバーを表す斜視図(A図)及び非接触式位置検出センサをシフトレバー装置に装着した状態を表す斜視図(B図)である。
【図5】シフトレバー装置の縦断面図(図4のV-V矢視断面図)である。
【図6】従来の非接触式位置検出センサを表す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 シフトレバー装置
16 シフトレバー
16c 連結ピン(運動変換機構)
20 非接触式位置検出センサ
21 センサケース(固定部)
23 可動板(可動部)
25 突起部
25e 凹部(運動変換機構)
30 ホール素子(磁束検出素子)
41 第1ヨーク
42 第2ヨーク
43 磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部あるいは固定部の一方に装着されている磁石と、前記可動部あるいは固定部の他方に装着されており、磁束密度を測定可能な磁束検出素子とを備え、前記可動部が前記固定部に対して一定方向に移動すると、前記磁束検出素子が検出する磁束密度が変化することで、前記固定部に対する前記可動部の位置が求められる構成の非接触式位置検出センサであって、
前記磁石には、磁束を誘導するためのヨークが接続されており、
前記ヨークには磁束を誘導する部分の途中に隙間が設けられており、
前記磁束検出素子は、前記固定部に対して前記可動部が移動することにより、前記ヨークの隙間内を一定方向に相対移動する構成であり、
前記ヨークの隙間を構成する部分は、前記磁束検出素子がその隙間内を一定方向に相対移動する際に、前記磁束検出素子が検出する磁束密度を予め決められたパターンに基づいて変化させることが可能な形状に加工されていることを特徴とする非接触式位置検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された非接触式位置検出センサであって、
磁石のN極側に接続された第1ヨークと、
前記磁石のS極側に接続されており、前記第1ヨークと対向して設けられた第2ヨークとを備え、
前記第1ヨークと第2ヨークとの間の隙間は、前記磁石から離れて各々のヨークの先端に近づくにつれて広くなるように構成されており、
磁束検出素子は、前記隙間内を前記磁石の近傍から前記ヨークの先端近傍まで相対移動可能に構成されていることを特徴とする非接触式位置検出センサ。
【請求項3】
請求項2に記載された非接触式位置検出センサであって、
磁束検出素子は乗用車のシフトレバーのハウジングに固定された固定部に装着されており、
磁石及び第1ヨーク、第2ヨークは乗用車のシフトレバーに連結された可動部に装着されており、
前記シフトレバーと可動部との間には、そのシフトレバーの回動運動を可動部の直線運動に変換するための運動変換機構が設けられていることを特徴とする非接触式位置検出センサ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の非接触式位置センサであって、
固定部と可動部との間には、その可動部を前記固定部に対して一定方向に移動可能にガイドするためのガイド部材が設けられていることを特徴とする非接触式位置センサ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の非接触式位置センサであって、
複数個の磁束検出素子が一組で使用されていることを特徴とする非接触式位置センサ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−138753(P2006−138753A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328891(P2004−328891)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】