説明

非接触給電システム

【課題】受電側の車両を送電側の装置に対して受電効率上良好な位置に誘導できる非接触給電システムを提供する。
【解決手段】非接触給電システムでは、非接触の給電を行うために車両10が送電コイル21に対して駐車するときに、受電コイル121で受電する目標受電電圧を算出し、駐車動作中に、受電コイル121で受電する受電電圧が目標受電電圧に近づくように車両10を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の電源から車載の蓄電装置へプラグ接続等によらず非接触で給電が行われる非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術によると、地上側に設けられた輪止めに内蔵された給電コイルが、電動車の運転操作により、輪止めに当接する電動車の車輪に付勢されて水平面内にて姿勢変更し、この状態で電動車を停止すると、給電コイルは電動車に対して一定の姿勢をとるようになる。例えば、電動車の後退方向が電動車の基準後退方向とずれている場合、電動車の一対の後輪の片方が先に輪止めに当接し、電動車の後退に応じて当接している方の後輪が輪止めを回動させ、その後、一対の後輪の両方が輪止めに当接すると、電動車の後退が制止される。このようにして給電コイルと受電コイルの位置合わせ動作が行われる。この輪止めの回動によって、輪止め内の給電コイルは、受電コイルと上下に重なり、その結果、両コイル間の送電効率が向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−227007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、給電コイルは、受電コイルとの電磁変換効率が良好になるように、輪止めに当接する電動車に付勢されて姿勢変更することにより位置合わせを行う。したがって、給電を受ける電動車の大きさ、車種等によっては、受電コイルの搭載位置、地上からの高さ等の諸条件が異なるため、受電コイルが輪止めの姿勢変更可能な範囲内に位置しない場合には、受電コイルを給電コイルに対して良好な電磁変換効率をもつように位置決めすることができないという問題がある。また、様々な車種に対して、良好な電磁変換効率をもつように受電コイル及び給電コイルを予め配置しておくことは現実的には困難である。また、特許文献1のような機械式の位置合わせ構造では、数多くの車種について、良好な電磁変換効率を満足することは実現困難といわざるを得ない。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、受電側の車両を送電側の装置に対して受電効率上良好な位置に誘導できる非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、車両(10)に設けられる受電コイル(121)と車両外部の送電設備装置(1)に設けられる送電コイル(21)との間で電磁界を発生して非接触の給電を行う非接触給電システムに係る発明であって、
非接触の給電を行うために車両が送電コイルに対して駐車するときに、受電コイルで受電する目標受電電圧を算出し、駐車動作中に受電コイルの受電電圧が目標受電電圧に近づくように車両を誘導することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、車両が非接触給電を行うための駐車位置に停止しようとするときに、目標受電電圧を算出し、駐車動作中に、受電コイルの受電電圧が当該算出した目標受電電圧に近づくように車両を誘導するため、駐車動作中の車両の動きが、受電効率が良好となる目標受電電圧を満たす駐車位置に近づくように案内されることになる。非接触給電システムがこの車両誘導に係る制御を有していれば、送電設備装置と車両との間の送電量に対する受電量の効率が良好になるように車両が誘導されるので、車種の違いによる受電コイルの位置の違い等に関わらず、高効率の給電運転を実現できる汎用性の高いシステムが得られる。したがって、受電側の車両を送電側の送電設備装置に対して受電効率上良好な位置に誘導できる非接触給電システムを提供することができる。なお、車両の誘導とは、車両を運転するドライバーの運転操作に影響を及ぼして車両の進行を誘導すること、自動駐車運転が行われる場合には、自動駐車運転を司る制御装置によって誘導が行われること等を含むものである。
【0008】
請求項2によると、請求項1に記載の発明において、目標受電電圧は、少なくとも、送電設備装置(1)側のコイルインダクタンス、車両(10)側のコイルインダクタンス、共振コンデンサの特性値を用いて算出されることを特徴とする。この発明によれば、高効率の給電運転を実現する駐車位置に車両を誘導できるように高精度の目標受電電圧を算出することができる。
【0009】
請求項3によると、請求項1または請求項2に記請の発明において、目標受電電圧を算出する際には、送電設備装置(1)が備える高周波インバータ(5)の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出することを特徴とする。この発明によれば、高い受電効率を実現できるように目標受電電圧を設定することができる。
【0010】
請求項4によると、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、駐車動作中に車両を誘導するときに、非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する車両の現在位置を報知する報知手段(50,51)を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、報知手段によって最適駐車位置に対する車両の現在位置を報知することにより、車両のユーザーがあとどれくらいで駐車を完了することができるのかを認識することができる。したがって、駐車動作中にユーザーに対して安心感を与えることができ、本システムへの信頼感を高めることができる。
【0012】
請求項5によると、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、送電コイル(21)と受電コイル(121)の距離を検出する距離検出手段(30,40)を備え、当該距離と受電電圧との間に成立する特性を示したマップを予め記憶し、距離検出手段によって検出された当該距離と当該マップとから、受電電圧を求めることを特徴とする。この発明によれば、距離検出手段によって検出された詳細な距離情報を用いて受電電圧を求めるため、駐車精度を向上させることができる。
【0013】
請求項6によると、請求項5に記載の発明において、駐車動作中に車両を誘導するときに、非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する車両の現在位置として、距離検出手段によって検出された距離を報知する報知手段(52)を備えることを特徴とする。この発明によれば、距離検出手段によって検出された距離情報を報知することにより、車両のユーザーが詳細な距離情報を認識することができるため、駐車動作中のユーザーの安心感や、本システムへの信頼感をさらに向上することができる。
【0014】
請求項7によると、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、駐車中の車両の誘導に使用する情報として、少なくとも、送電設備装置(1)側のコイルインダクタンス情報、共振コンデンサの特性値情報、及び入力電圧情報を、送電設備装置(1)から前記車両(10)に対して送信することを特徴とする。この発明によれば、車両の誘導に関わる情報を送電設備装置から車両に送信することにより、車両側で車両の誘導に関わる処理を総括的に実施することができる。
【0015】
なお、前述の各手段における括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【図2】第1実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【図3】車両における給電運転に係る処理手順を示したフローチャートである。
【図4】送電設備装置における給電運転に係る処理手順を示したフローチャートである。
【図5】給電開始前に報知を行う場合の第1の表示例を示した図である。
【図6】給電開始前に報知を行う場合の第2の表示例を示した図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【図8】第2実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明を適用した第3実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【図10】第3実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【図11】本発明を適用した第4実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【図12】第4実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【図13】本発明を適用した第5実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【図14】第5実施形態の給電運転開始前の制御で使用される距離と受電電圧に係る特性マップである。
【図15】第5実施形態に係る給電運転開始前の制御において報知を行うときの表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の非接触給電システムを適用する第1実施形態について図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。
【0019】
図1に示すように、非接触充電システムは、主に車両10の外部に設置された送電設備装置1と、車両10に搭載される受電設備装置11と、を備えて構成されている。
【0020】
非接触給電システムは、例えば電気自動車、およびハイブリッド自動車等のメインバッテリに充電する場合に適用することができる。非接触給電システムは、蓄電装置15と車両10の外部に設置される外部電源の一例である系統電源20との間で、磁気的に結合された状態、例えば、電磁誘導を利用した電力の授受によって非接触で電力を伝送する電力授受ステムである。この電磁誘導方式は、送電側で発生する磁束を受電側に鎖交させて電力を送る方式のことである。
【0021】
車両10には、受電設備装置11、蓄電装置15、負荷機器16、走行用インバータ17、モータジェネレータ18等が搭載されており、例えば電磁結合により受電コイル121に電流が流れることによって蓄電装置15が充電可能になる。受電設備装置11は、例えば、受電コイル121、整流回路110、昇降圧回路111、充電制御装置13、通信機14、共振コンデンサ112、スイッチ113、負荷114、スイッチ115等を含む装置であり、車両10において系統電源20から供給される電力を充電する際に動作する装置である。
【0022】
車両10には、負荷機器16が搭載され、負荷機器16は蓄電装置15に蓄えられた電力、または系統電源20から供給される電力を使用して駆動されるようになっている。蓄電装置15の蓄電力によって駆動される負荷機器16には、空調装置、ナビゲーション装置、照明、電動パワーステアリングユニット、その他の補機類等を適用することができる。車両の走行に用いられるモータジェネレータ18は、車両10に搭載された車両制御装置による走行用インバータ17の作動制御によって動作する。蓄電装置15として用いられる二次電池は、その端子電圧が高圧となるように設定されている。この二次電池は、充放電可能に構成された電池であり、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池等を使用することができる。
【0023】
ハイブリッド自動車の場合、モータジェネレータ18は、電動機および発電機の両機能を有する三相交流の回転電機である。モータジェネレータ18の回転軸の一方の端部は、内燃機関(図示せず)の出力軸に直結されており、他方の端部は、変速装置(図示せず)を介して駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ18は、回転数および駆動トルクが制御されて、駆動輪に必要とされる駆動力を与える電動機として機能する。またモータジェネレータ18は、減速時において駆動輪からの駆動力によって回転駆動されると、交流の回生電力を発生する発電機として機能する。
【0024】
共振コンデンサ112及び共振コンデンサ7は、効率よく電力伝送するため、高周波インバータ5の出力電力の電圧と電流との位相を一致するように変換し整流回路110に与える。整流回路110は、ダイオード及びコンデンサから構成されており、ダイオードにより、受電コイル121から供給された高周波電力を整流し、コンデンサで平滑化した後、昇降圧回路111に供給する。昇降圧回路111は、整流回路110からの電力の電圧を所定電圧まで昇降圧し、蓄電装置15に供給する。
【0025】
受電パッド12は、非接触で電力を受電する受電コイル121を内部に有し、車両10に設けられる。受電コイル121は、送電コイル21との間で非接触による電力の受け渡しを行う。受電コイル121には、送電コイル21が発生した磁界を受電コイル121に鎖交させ、受電コイル121に誘導電流を発生させる。受電コイル121は、発生した高周波電力を、共振コンデンサ112を介して整流回路110に与える。
【0026】
受電設備装置11は、車両10において、外部の系統電源20から供給される電力を充電する際に動作する受電回路を備えている。受電回路は、受電パッド12に内蔵される受電コイル121から送電された電力を直流電圧として出力し、蓄電装置15を充電する。また、通信機14は、充電制御装置13によって制御され、送電設備側の通信機4を介して送電設備装置1と通信し、通信した各種情報は送電制御装置3に入力される。
【0027】
送電設備装置1は、送電回路を有し、例えば、家庭、集合住宅、コインパーキング等の駐車設備、商業施設、公共施設等に設けられ、プラグ8が接続された系統電源20から、車両10に対して電力を送電する装置である。送電設備装置1は、非接触で電力を送電する送電コイル21を覆い地上に露出する送電パッド2、整流回路6、高周波インバータ5、送電制御装置3、通信機4、共振コンデンサ7等を含む送電回路を有し、車両10の受電コイル121に送電する際に動作する。
【0028】
送電制御装置3は、送電設備装置1の各部を制御し、送電の開始および停止などを制御する。高周波インバータ5は、系統電源20から供給された電力を高周波の電力に変換し、共振コンデンサ7に与える高周波変換回路である。共振コンデンサ7は、効率よく電力伝送するため、高周波インバータ5から与えられた電力の電圧と電流との位相を一致するように変換し、送電パッド2に与える。通信機4は、送電制御装置3によって制御され、車両10の通信機14を介して受電設備装置11と通信し、通信した各種情報は、充電制御装置13に入力される。
【0029】
送電コイル21は、設備側コアに巻回されるコイルであり、駐車設備に画成された駐車スペース内に各々設置または埋設され、所定の通電によって電磁界を発生するように構成されている。この送電コイル21は、駐車スペースへの車両の進入を検知するとともに、車両10側に設けられた受電コイル121との間で非接触による電力の受け渡しを行う。送電コイル21に高周波電流が流れると、右ねじの法則にしたがった所定の向きに磁束が発生する。そして、給電時に、電流が流れる送電コイル21から車両側の受電コイル121に鎖交する磁束の向きに対して、受電コイル121が適切な向きになるように停車された場合には、受電コイル121には誘導電流が流れる。このように送電コイル21は、電流が流れることにより、磁束を発生し、高周波電力を電磁誘導によって、受電コイル121が搭載される車両10に対して送電する。
【0030】
なお、設備側コア及び車両側コアは、透磁率が高い材料からなり、たとえばフェライトで成形される。送電コイル21及び受電コイル121は、電気抵抗が少ない材料からなり、例えばリッツ線が用いられる。
【0031】
第1実施形態は、車両10が備える受電回路において、共振コンデンサ112が受電コイル121等と並列に接続されており、送電設備装置1が備える送電回路において、共振コンデンサ7が送電コイル21等と直列に接続されているモデル例である。このような共振コンデンサ7及び共振コンデンサ112の接続状態により、第1実施形態に示す非接触給電システムを直列−並列共振接続モデルとする。
【0032】
第1実施形態に示す非接触給電システムでは、非接触の給電を行うために車両10が送電コイル21に対して駐車するときに、受電コイル121で受電される目標受電電圧を算出し、駐車中において、受電コイル121で受電する受電電圧が当該算出された目標受電電圧に近づくように車両10を誘導する。このように給電開始前に車両10を給電のために適切な駐車位置に誘導する制御は、送電制御装置3と充電制御装置13とによって実行されることにより、受電側の車両10を送電設備装置1に対して受電効率上良好な位置に誘導することができる。
【0033】
目標受電電圧の算出は、図2を参照して後述する。車両10が実際に検出する受電電圧を求める方法は、以下のとおりである。スイッチ113は、車両10が送電設備装置1から給電を得ようとする場合に送電コイル21に対して停止する前に、ONされるようになっている。スイッチ113がONされると、特性値として所定の抵抗値を有する抵抗体である負荷114は、共振コンデンサ112と並列に接続され、受電コイル121と直列に接続される。なお、このときスイッチ115は、OFFされており、受電コイル121と整流回路110は通電する関係にない。このように、蓄電装置15等への給電開始前に、共振コンデンサ112が負荷114と並列に接続されることにより、負荷114にかかる電圧を検出し、充電制御装置13は、検出された電圧を用いて、受電コイル121が受電する受電電圧を計測することができる。
【0034】
本実施形態では、送電側の装置から受電側の装置へ、1次側コイルインダクタンス、1次側共振コンデンサの特性値、1次側共振コンデンサの送電回路における接続状態(送電コイルに対して並列接続か直列接続か)、車両10を誘導するときの入力電圧(10V、100V、200V等)等に係る情報が送られ、目標受電電圧の算出に用いられることになる。図2は目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。第1実施形態の直列−並列共振接続モデルの場合、図2に示す電気回路図を構成し、各部のインピーダンスは、図2の右枠内に示すとおりである。図2の電気回路図にしたがい、目標相互インダクタンス及び目標電圧を算出する手順を説明する。図2の電気回路図では、インバータ出力電圧Vとインバータ出力電流Iの間に満たされる関係から、下記の数1、数2に示す関係式が導き出せる。
【数1】

【数2】

【0035】
上記の数1、数2から、V/Iを算出し、その虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める。つまり、虚数部が0となるZの解を求めることになる。
【0036】
次に、目標受電電圧Vとインバータ出力電圧Vの間に満たされる関係から、下記の数3、数4に示す関係式が導き出せる。
【数3】

【数4】

【0037】
上記の数3に数4及び上記の目標相互インダクタンスの解(Zの解)を代入することにより、目標受電電圧Vを算出することができる。このように、虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める手法は、送電設備装置1が備える高周波インバータ5の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出することになる。
【0038】
次に、本実施形態の非接触給電システムが実施する給電運転に係る作動について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、主に車両10における給電運転開始前の処理手順を示したフローチャートである。図4は、送電設備装置1における給電運転開始前及び給電運転終了の処理手順を示したフローチャートである。図3及び図4に示すように、車両10と送電設備装置1は、互いに情報を通信し、一方が他方から受信した情報を用いて後の処理を実行する。例えば、情報の通信は、通信機4と通信機14のデータの送受信により実施する。
【0039】
送電設備装置1では、送電制御装置3は、ステップ50で、送電対象の車両10を検知したか否かを判定する。この車両検知の判定処理では、例えば、互いの通信機4及び通信機14が通信を認識した場合、車両10から受信した「送電要求」の情報、送電設備装置1に対して車両10が所定のエリア内(送電を受け得る範囲内)に進入したこと等を検知したときに、「車両検知」と判定する。送電制御装置3は、ステップ50で、車両10を検知したと判定すると、ステップ52で、送信設備装置1の各種情報を当該車両10に対して送信する。送信する情報は、後述するステップ28またはステップ30で必要とする目標受電電圧の算出に用いられる情報であり、例えば、1次側コイルインダクタンス、1次側共振コンデンサの特性値、1次側共振コンデンサの送電回路における接続状態(送電コイルに対して並列接続か直列接続か)、車両10を誘導するときの入力電圧(10V、100V、200V等)等である。
【0040】
車両10では、充電制御装置13は、ステップ10で、送信設備装置1の各種情報を受信したか否かを判定する。充電制御装置13は、送信設備装置1の各種情報を受信した場合には、次にステップ12で、上述した手法により目標相互インダクタンスを算出する処理を実行し、さらにステップ14で目標受電電圧を算出する処理を実行する。そして、充電制御装置13は、送電設備装置1に対して、送電準備の要求を送信する。
【0041】
送電設備装置1では、ステップ54で、車両10から送電準備の要求を受信したか否かを判定する。送電準備の要求受信の判定をした場合には、車両10からの「送電準備要求」の情報に対して、ステップ56で送電設備装置1における給電運転に必要な送電準備を完了するとともに、「送電準備完了」の情報を車両10に対して送信する。
【0042】
車両10では、送電設備装置1から「送電準備完了」の情報を受信すると、ステップ16で、送電設備装置1から「送電準備完了」の情報を受信したか否かを判定する。送電準備完了の情報を受信したと判定した場合には、ステップ18で、給電運転の実施のために、車両10が送電設備装置1に対して停止する駐車が開始されたか否かを判定する。この駐車開始の判定処理では、車両10において、シフトレバーポジションが「リバース」に設定された場合、ハザードランプが点灯した場合、ブレーキが解除された場合、自動駐車誘導制御システムを搭載している車両では車両搭載の「駐車ボタンスイッチ」が操作された場合等において、駐車開始であると判定する。
【0043】
充電制御装置13は、ステップ18で駐車開始と判定した場合には、送電設備装置1に対して、送電開始の要求を送信し、ステップ20で受電準備を開始する。この受電準備は、上述したように、車両10が送電設備装置1から給電を得ようとする場合に送電コイル21に対して停止する前に、行われる準備であり、受電回路のスイッチ113をONし、スイッチ115をOFFすることにより、負荷114を共振コンデンサ112に並列に接続する処理である。
【0044】
送電設備装置1では、ステップ58で「送電開始要求有り」の情報を受信したか否かを判定する。車両10からの送電開始の要求を受信すると、ステップ60で送電を開始する処理を実行する。この送電開始時の送電入力電圧は、充電時の入力電圧と異なる電圧であってもよく、例えば省電力のため、10Vの低入力電圧とすることもできる。また、車両10から、給電開始指示の旨の情報が送信された後、送電入力電圧を給電用の入力電圧に増加させて、本格的に給電運転を開始するようにしてもよい。
【0045】
車両10では、ステップ22で、異常状態であるか否かを判定する。この異常状態の判定ステップでは、送電設備装置1側からの異常信号を受信した場合、または車両10内において発生した現象に伴う異常を検知した場合に「異常有り」と判定する。送電設備装置1側での異常は、例えば、送電パッド2及びその周辺での異物検知、過電圧状態または過電流状態の検知、通信異常等に伴うものである。車両10側での異常は、例えば、過電圧状態または過電流状態の検知、通信異常等に伴うものである。
【0046】
充電制御装置13は、ステップ22で異常有りと判定すると、ステップ24で受電停止処理を実行するとともに、送電設備装置1に対してその旨を送信し、本フローチャートを終了する。ステップ22で異常なしと判定すると、ステップ26で、上述した手法によって、駐車の最中に受電コイル121が受電する受電電圧を測定する処理を実行する。このステップ26は駐車動作中に所定の周期で継続して実行される。そして、ステップ28で、「ステップ26で測定した受電電圧」が「ステップ14で算出した目標受電電圧」に近づいているか否かを判定する。この判定処理では、具体的には目標受電電圧と受電電圧の差が予め設定した所定値α以内である場合にはYESと判定する。両者の差が所定値αを超える場合はNOと判定し、測定された受電電圧の目標受電電圧に対する不足分が所定値αを超えているため、受電電圧は小さいとみなされる。所定値αは、例えば5Vとする。
【0047】
ステップ28でNOと判定すると、さらにステップ30で、目標受電電圧と受電電圧の差が予め設定した所定値β以内であるか否かを判定する。所定値βは、所定値αよりも大きい値に設定され、αが5Vの場合にはβは30Vとする。すなわち、ステップ30でNOと判定されると、測定された受電電圧は目標受電電圧に対して、30Vを超える値で大きくかけ離れており、車両10の受電コイル121は、送電コイル21とはかなり離れているとみなされる。したがって、ステップ30でNOと判定されると、ステップ22に戻り以降の処理を実行していくことになる。
【0048】
ステップ30でYESと判定されると、測定された受電電圧は目標受電電圧に対して、5Vを超えて30V以内の値で離れており、車両10の受電コイル121は、送電コイル21に対して少し離れていることになる。この場合、受電コイル121と送電コイル21の位置関係は、給電運転を開始するための適切な位置関係ではないが、両者があともう少し近づくことで、給電運転を開始可能な駐車位置になることを示している。したがって、ステップ30でYESと判定されると、ステップ32に進み、ドライバー等のユーザーに対して報知Aの処理を実行した後、ステップ22に戻り以降の処理を実行していくことになる。
【0049】
報知Aは、車両10が送電設備装置1に対して最適駐車位置から近い状態にあることを示す報知状態である。この報知により、ドライバー等のユーザーに対して、給電運転開始前に必要な適切な駐車位置が近づいていることを認識させることができる。ユーザーはこのままの進行方向をあとどのくらい進めばいいのかを確認できるため、安心感を得ることができる。報知Aは、例えば、図5に示すように、表示画面50において「近いこと」を示すLEDを点灯することによって実施する。また、図6に示すように、メーター等の表示画面51において「駐車最適位置まであと30cm以内です」と表示することによって実施してもよい。表示画面は、例えば、ハンドルの前方またはダッシュボードの中央部に配された計器表示盤の一部に配置される液晶ディスプレイ等である。
【0050】
ステップ28でYESと判定すると、目標受電電圧と受電電圧の差が所定値α以内であるため、車両10が送電設備装置1に対して最適駐車位置にあるとみなす。ステップ32に進み、ドライバー等のユーザーに対して報知Aの処理を実行した後、この場合、ステップ34に進み、ドライバー等のユーザーに対して報知Bの処理を実行する。ステップ34の報知Bの処理実行後は、ステップ36で給電運転開始指示処理を実行するとともに、送電設備装置1に対してその旨を送信して本フローチャートを終了する。なお、給電運転開始指示処理では、受電回路において、スイッチ115をONして、受電電力を整流回路110に突入させるように制御する。
【0051】
報知Bは、車両10が送電設備装置1に対して最適駐車位置にあることを示す報知状態である。報知Bは、例えば、図5に示すように、メーター等の表示画面において「最適駐車位置」を示すLEDを点灯することによって実施する。また、図6に示すように、メーター等の表示画面において「駐車最適位置です」と表示することによって実施してもよい。
【0052】
このように、ステップ22、ステップ26、ステップ28、ステップ30、ステップ32における処理が繰り返されることにより、車両10は、給電運転開始前の最適な駐車位置に徐々に近づいていくようになる。そして、最適駐車位置が満たされると、ステップ28からステップ34、ステップ36を経て、給電運転が開始するようになる。
【0053】
一方、送電設備装置1では、ステップ60での送電開始処理の後、ステップ62で、異常状態であるか否かを判定する。この異常状態の判定ステップでは、車両10側からの異常信号を受信した場合、または送電設備装置1内において発生した現象に伴う異常を検知した場合に「異常有り」と判定する。すなわち、前述のステップ22と同様の処理が実行されることになる。
【0054】
送電制御装置3は、ステップ62で異常有りと判定すると、ステップ63で受電停止処理を実行するとともに、車両10に対してその旨を送信し、本フローチャートを終了する。ステップ62で異常なしと判定すると、ステップ64で給電終了条件が成立したと判定するまで給電運転を継続する。給電終了条件が成立する場合とは、例えば、充電終了SOCの条件が成立することである。
【0055】
ステップ64で給電終了条件が成立していないと判定すると、ステップ62に戻る。ステップ64で給電条件が成立していると判定すると、ステップ66で車両10への送電を停止する処理を実行し、本フローを終了する。
【0056】
本実施形態の非接触給電システムがもたらす作用効果について説明する。非接触給電システムでは、非接触の給電を行うために車両10が送電コイル21に対して駐車するときに、受電コイル121で受電する目標受電電圧を算出し(ステップ14)、駐車動作中に、受電コイル121で受電する受電電圧が目標受電電圧に近づくように車両10を誘導する(ステップ22,26,28,30,32,34)。
【0057】
この制御によれば、車両10が非接触給電を行うための駐車位置に停止しようとするときに、目標受電電圧を算出し、駐車動作中に、受電コイル121の受電電圧が当該算出した目標受電電圧に近づくように車両10を誘導する。このため、駐車動作中の車両10の動きが、受電効率が良好となる目標受電電圧を満たす駐車位置に近づくように案内される。このように非接触給電システムが当該車両誘導に係る制御を有していれば、送電設備装置1と車両10との間の送電量に対する受電量の効率が良好になるように車両10が誘導される。このため、車種の違いによる受電コイル121の位置の違い等に関わらず、高効率の給電運転を実現可能な汎用性の高いシステムが得られる。したがって、受電側の車両10を送電側の送電設備装置1に対して受電効率上良好な位置に誘導できる非接触給電システムを提供できる。
【0058】
また、目標受電電圧は、少なくとも、送電設備装置1側のコイルインダクタンス、車両10側のコイルインダクタンス、共振コンデンサ112,7の特性値を用いて算出される。これによれば、高効率の給電運転を実現する駐車位置に車両10を誘導できるように高精度の目標受電電圧を算出することができる。
【0059】
また、目標受電電圧を算出する際には、送電設備装置1が備える高周波インバータ5の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出する。これによれば、高い受電効率を実現できるように目標受電電圧を設定することができる。
【0060】
また、本実施形態の非接触給電システムによれば、駐車動作中に車両10を誘導するときに、非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する車両10の現在位置を報知する報知手段(表示画面50,51)を備えている。この構成によれば、報知手段によって最適駐車位置に対する車両10の現在位置を報知することにより、車両10のユーザーがあとどれくらいで駐車を完了することができるのかをおおよそ認識することができる。したがって、駐車動作中にユーザーに対して安心感を与えることができる。また、本システムへの信頼感を高めることができる。
【0061】
また、送電設備装置1は、ステップ10において、駐車中の車両10の誘導に使用する情報として、少なくとも、送電設備装置1側のコイルインダクタンス情報、共振コンデンサの特性値情報、及び入力電圧情報を車両10に対して送信する。この処理によれば、車両10の誘導に関わる情報を送電設備装置1から車両10に送信することにより、車両10側で車両の誘導に関わる処理を総括的に実施することができる。したがって、車両誘導制御に関わるプログラムを車両10側の制御装置に一括してもたせておけばよく、当該プログラムの標準化、量産化を促進することにも寄与する。
【0062】
また逆に、車両10が駐車中の車両10の誘導に使用する情報として必要な各種情報を送電設備装置1に対して送信するように構成してもよい。この構成によれば、車両10の誘導に関わる情報を車両10から送電設備装置1に送信することにより、送電設備装置1側で車両の誘導に関わる処理を総括的に実施することができる。したがって、車両誘導制御に関わるプログラムを送電設備装置1側の制御装置に一括してもたせておけばよく、様々な車種に対して当該プログラムを搭載する必要がない。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムに対して、送電設備装置1Aの送電回路の構成が異なる形態となっている。第2実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、例えば、構成、各部の作動、給電開始前及び給電運転時のフローチャート、作用効果等については第1実施形態と同様である。図7は、第2実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。図8は、第2実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【0064】
第2実施形態の非接触給電システムでは、車両10の受電回路における共振コンデンサ112は、第1実施形態と同様に受電コイル121等と並列に接続されているが、送電設備装置1Aの送電回路における共振コンデンサ7は、第1実施形態と異なり、送電コイル21等と並列に接続されているモデル例である。このような共振コンデンサ7及び共振コンデンサ112の接続状態により、第2実施形態に示す非接触給電システムを並列−並列共振接続モデルとする。
【0065】
図8は目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。第2実施形態の並列−並列共振接続モデルの場合、図8に示す電気回路図を構成し、各部のインピーダンスは、図8の右枠内に示すとおりである。図8の電気回路図にしたがい、目標相互インダクタンス及び目標電圧を算出する手順を説明する。図8の電気回路図では、インバータ出力電圧Vとインバータ出力電流Iの間に満たされる関係から、下記の数5、数6及び数7に示す関係式が導き出せる。
【数5】

【数6】

【数7】

【0066】
上記の数5、数6及び数7から、V/Iを算出し、その虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める。つまり、虚数部が0となるZの解を求めることになる。
【0067】
次に、目標受電電圧Vとインバータ出力電圧Vの間に満たされる関係から、下記の数8、数9に示す関係式が導き出せる。
【数8】

【数9】

【0068】
上記の数8に数9及び上記の目標相互インダクタンスの解(Zの解)を代入することにより、目標受電電圧Vを算出することができる。このように、虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める手法は、送電設備装置1Aが備える高周波インバータ5の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出することになる。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムに対して、車両10Aにおける受電設備装置11Aの送電回路の構成が異なる形態となっている。第3実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、例えば、構成、各部の作動、給電開始前及び給電運転時のフローチャート、作用効果等については第1実施形態と同様である。図9は、第3実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。図10は、第3実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【0070】
第3実施形態の非接触給電システムでは、送電設備装置1の送電回路における共振コンデンサ7は、第1実施形態と同様に、送電コイル21等と直列に接続されているが、受電設備装置11Aの受電回路における共振コンデンサ112は、第1実施形態と異なり、受電コイル121等と直列に接続されているモデル例である。このような共振コンデンサ7及び共振コンデンサ112の接続状態により、第3実施形態に示す非接触給電システムを直列−直列共振接続モデルとする。
【0071】
図10は目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。第3実施形態の直列−直列共振接続モデルの場合、図10に示す電気回路図を構成し、各部のインピーダンスは、図10の右枠内に示すとおりである。図10の電気回路図にしたがい、目標相互インダクタンス及び目標電圧を算出する手順を説明する。図10の電気回路図では、インバータ出力電圧Vとインバータ出力電流Iの間に満たされる関係から、下記の数10に示す関係式が導き出せる。
【数10】

【0072】
上記の数10から、V/Iを算出し、その虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める。つまり、虚数部が0となるZの解を求めることになる。
【0073】
次に、目標受電電圧Vとインバータ出力電圧Vの間に満たされる関係から、下記の数11に示す関係式が導き出せる。
【数11】

【0074】
上記の数11に上記の目標相互インダクタンスの解(Zの解)を代入することにより、目標受電電圧V2を算出することができる。このように、虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める手法は、送電設備装置1が備える高周波インバータ5の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出することになる。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムに対して、送電設備装置1Aの送電回路の構成と受電設備装置11Aの受電回路の構成がともに異なる形態となっている。第4実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、例えば、構成、各部の作動、給電開始前及び給電運転時のフローチャート、作用効果等については第1実施形態と同様である。図11は、第4実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。図12は、第4実施形態における目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。
【0076】
第4実施形態の非接触給電システムでは、第1実施形態と異なり、車両10Aの受電回路における共振コンデンサ112が受電コイル121等と直列に接続され、かつ、送電設備装置1Aの送電回路における共振コンデンサ7が送電コイル21等と並列に接続されているモデル例である。このような共振コンデンサ7及び共振コンデンサ112の接続状態により、第4実施形態に示す非接触給電システムを並列−直列共振接続モデルとする。
【0077】
図12は目標受電電圧の算出方法を説明するための説明図である。第4実施形態の並列−直列共振接続モデルの場合、図12に示す電気回路図を構成し、各部のインピーダンスは、図12の右枠内に示すとおりである。図12の電気回路図にしたがい、目標相互インダクタンス及び目標電圧を算出する手順を説明する。図12の電気回路図では、インバータ出力電圧Vとインバータ出力電流Iの間に満たされる関係から、下記の数12及び数13に示す関係式が導き出せる。
【数12】

【数13】

【0078】
上記の数12及び数13から、V/Iを算出し、その虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める。つまり、虚数部が0となるZの解を求めることになる。
【0079】
次に、目標受電電圧Vとインバータ出力電圧Vの間に満たされる関係から、下記の数14に示す関係式が導き出せる。
【数14】

【0080】
上記の数14に上記の目標相互インダクタンスの解(Zの解)を代入することにより、目標受電電圧Vを算出することができる。このように、虚数部を0としたときの目標相互インダクタンスを求める手法は、送電設備装置1Aが備える高周波インバータ5の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて目標受電電圧を導出することになる。
【0081】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムに対して、送電設備装置1B及び車両10Bの両方に距離検出手段を有している点で相違する。第5実施形態は、以下に特に説明しない実施形態、例えば、構成、各部の作動、給電開始前及び給電運転時のフローチャート、作用効果等については、以下に説明する内容以外は第1実施形態と同様である。図13は、第5実施形態に係る非接触給電システムの構成図である。図14は、給電運転開始前の制御で使用される距離と受電電圧に係る特性マップである。図15は、給電運転開始前の制御において報知を行うときの表示例を示した図である。
【0082】
第5実施形態の非接触給電システムは、距離検出手段として、送電設備装置1Bにセンサ受電部30を備え、車両10Bにセンサ送信部40を備えている。距離検出手段は、例えば音波、レーザーを用いた計測媒体の送受信により、送電設備装置1Bと車両10Bとの距離、具体的には送電コイル21と受電コイル121との距離を検出することができる。
したがって、車両10Bのセンサ送信部40から発信された音波、レーザー等の計測媒体が送電設備装置1Bのセンサ受信部30で反射して戻ってくるまでに要する時間、センサ送信部40から発光された基準信号とセンサ受信部30で反射して戻ってきた受光信号の位相差等によって、送電コイル21及び受電コイル121の2点間距離を計測することができる。
【0083】
本実施形態のように、距離検出手段によって、送電コイル21と受電コイル121との距離を検出する形態では、非接触給電システムは、例えば、図14に示すような距離と受電電圧に係る特性マップを記憶している。このような特性マップは、充電制御装置13または送電制御装置3に記憶されている。図14には、上記の第1実施形態〜第4実施形態の各モデル例に対応した特性曲線が示されている。充電制御装置13及び送電制御装置3は、前述のように互いに通信することにより、どのモデル例についての特性曲線を使用すべきかを選択する。
【0084】
本実施形態の非接触給電システムは、前述する図3のフローチャートにおいて、駐車開始判定(ステップ18)、受電準備(ステップ20)、異常なし判定(ステップ22)を順に実行すると、所定時間経過する毎に、距離検出手段によって、送電コイル21と受電コイル121間の距離を検出していく。そして、検出された距離を図14から選択された特性曲線に適用し、受電電圧を求める。つまり、本実施形態では、前述の図3に示すフローチャートにおけるステップ26の処理の代わりに、図14に示す特性マップと距離検出手段とを用いて受電電圧を求めるのである。この受電電圧を求める処理は、充電制御装置13、送電制御装置3のいずれが実行してもよい。充電制御装置13は、このようにして求められた受電電圧を用いて、図3のステップ28及びステップ30の判定処理を実行するのである。
【0085】
また、本実施形態の非接触給電システムは、図3のステップ32における報知Aの処理において、図15に示すような表示をナビゲーション装置画面52に表示する。つまり、距離検出手段による詳細な距離検出を実施するため、詳細な距離(図15に示す例では、「最適駐車位置まであと30cmです」)を明確に表示することができる。
【0086】
本実施形態の非接触給電システムは、送電コイル21と受電コイル121の距離を検出する距離検出手段(センサ送信部40及びセンサ受信部30)を備え、当該距離と受電電圧との間に成立する特性を示したマップ(例えば図14参照)を予め記憶し、距離検出手段によって検出された当該距離と当該マップとから、受電電圧を求める。この制御によれば、距離検出手段によって検出された詳細な距離情報を用いて受電電圧を求めることにより、車両10Bの駐車精度をさらに向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態の非接触給電システムによれば、駐車動作中に車両10Bを誘導するときに、非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する車両の現在位置として、距離検出手段によって検出された距離を報知する報知手段(ナビゲーション装置画面52)を備える。この構成によれば、距離検出手段によって検出された距離情報を報知することにより、車両10Bのドライバー等が詳細な距離情報を認識することができるため、駐車動作中のユーザーの安心感や、本非接触給電システムに対するユーザーの信頼感をさらに向上することができる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0089】
上記の各実施形態における車両の誘導については、ドライバーによる駐車運転及びドライバーによらない自動駐車運転を含む。したがって、車両の誘導とは、車両を運転するドライバーの運転操作に影響を及ぼして車両の進行を誘導すること、自動駐車運転が行われる場合には、自動駐車運転を司る制御装置によって誘導が行われること等を含むものである。
【0090】
上記の第1実施形態では、ステップ28やステップ30で、受電電圧が目標受電電圧にどの程度近づいているかを、車両10側で判定するが、送電設備装置1側で判定するようにしてもよい。また、目標受電電圧の算出についても送電設備装置1側で算出するようにしてもよい。
【0091】
上記の第1実施形態及び第5実施形態においては、ステップ34またはステップ32での報知処理において、メーター、ナビゲーション装置等の表示画面に表示することとしているが、この形態に限定するものではない。例えば、報知A、報知Bは、音声案内によるものであってもよい。例えば、報知Aでは、「あと30cm以内です。」と音声案内し、報知Bでは、「駐車できました。シフトをパーキングに入れてください。」と音声案内することができる
上記の第5実施形態の非接触給電システムは、第1実施形態の非接触給電システムの構成に、距離センサを送電設備側及び車両側の両方に備えるものであるが、この形態は一例であり、この実施形態に限定するものではない。例えば、送電設備側及び車両側の両方に距離センサを備える構成は、第2実施形態〜第4実施形態のいずれの形態にも適用することは可能である。
【0092】
上記の実施形態では、各コアは、フェライト以外の磁性体材料、例えば、ダストコアや珪素鋼板など交流損失の少ない強磁性体を用いて形成してもよい。また、各コイルは、リッツ線以外の線で構成してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1A,1B…送電設備装置
5…高周波インバータ
10,10A,10B…車両
21…送電コイル
30…センサ受信部(距離検出手段)
40…センサ送信部(距離検出手段)
50,51…表示画面(報知手段)
52…ナビゲーション装置画面(報知手段)
121…受電コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)に設けられる受電コイル(121)と前記車両外部の送電設備装置(1)に設けられる送電コイル(21)との間で電磁界を発生して非接触の給電を行う非接触給電システムであって、
前記非接触の給電を行うために前記車両が前記送電コイルに対して駐車するときに、前記受電コイルで受電する目標受電電圧を算出し、前記駐車動作中に前記受電コイルの受電電圧が前記目標受電電圧に近づくように前記車両を誘導することを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記目標受電電圧は、少なくとも、前記送電設備装置(1)側のコイルインダクタンス、前記車両(10)側のコイルインダクタンス、共振コンデンサの特性値を用いて算出されることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記目標受電電圧を算出する際には、前記送電設備装置(1)が備える高周波インバータ(5)の入力力率が1となる解、または1に近似する値となる解を求め、当該解を用いて前記目標受電電圧を導出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記駐車動作中に前記車両を誘導するときに、前記非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する前記車両の現在位置を報知する報知手段(50,51)を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記送電コイル(21)と前記受電コイル(121)の距離を検出する距離検出手段(30,40)を備え、
前記距離と前記受電電圧との間に成立する特性を示したマップを予め記憶し、
前記距離検出手段によって検出された前記距離と前記マップとから、前記受電電圧を求めることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記駐車動作中に前記車両を誘導するときに、前記非接触の給電を行うための最適駐車位置に対する前記車両の現在位置として、前記距離検出手段によって検出された前記距離を報知する報知手段(52)を備えることを特徴とする請求項5に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
前記駐車中の前記車両の誘導に使用する情報として、少なくとも、前記送電設備装置(1)側のコイルインダクタンス情報、共振コンデンサの特性値情報、及び入力電圧情報を、前記送電設備装置(1)から前記車両(10)に対して送信することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の非接触給電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−5539(P2013−5539A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132595(P2011−132595)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】