説明

非接触識別デバイスおよびそれを用いた非接触識別システム

【課題】限られた大きさの太陽電池を用いながらも太陽電池のみで駆動電力を賄うことができる非接触識別デバイスおよびそれを用いた非接触識別システムを提供する。
【解決手段】非接触識別デバイス1は、識別情報を有する情報保持部2と、相手側装置と非接触通信を行う通信機能部3と、少なくとも通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4とを備え、情報保持部2内の識別情報を、通信機能部3を介して相手側装置に送信する機能を有する。電源部4は、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池5を有している。非接触識別デバイス1は、太陽光に比べて低照度となる屋内においても太陽電池5で十分な電力を生成可能とするため、増感作用を持つ色素を担持した半導体が付着された作用極電極と、半導体に対向配置された対極電極と、作用極電極と対極電極との間に充填された電解質層とを有する色素増感太陽電池を太陽電池5として用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側装置との間において非接触で通信を行う非接触識別デバイスおよびそれを用いた非接触識別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが携帯可能な薄型の非接触識別デバイスを用いて、識別情報を非接触識別デバイスからリーダ装置(相手側装置)に非接触通信(無線通信)にて送信することにより自動改札機やゲートの通行可否を判断する非接触識別システムが普及している。この非接触識別システムでは、リーダ装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を非接触識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、リーダ装置に非接触識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0003】
これに対して、非接触識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を非接触識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた非接触識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べてリーダ装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、リーダ装置に非接触識別デバイスをかざす行為が不要となり、非接触識別デバイスを所持(携帯)しているユーザがリーダ装置に近づくだけでリーダ装置−非接触識別デバイス間の通信が可能になる。
【0004】
ただし、非接触識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合がある。この点については、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることで改善できると考えられる(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また、非接触識別デバイスに電源として太陽電池を備え、非接触識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開2004−24551号公報
【特許文献2】特開2002−32728号公報
【特許文献3】特開平10−240873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した非接触識別システムのような一般的に普及している非接触識別デバイスの使用形態においては、太陽電池のみで非接触識別デバイスの駆動電力を賄うことは困難である。その主な理由としては、太陽電池が非接触識別デバイスの使用環境において十分な電力を発生するだけの光電変換能力を有していないことが挙げられる。
【0007】
すなわち、上述した非接触識別デバイスは屋内(室内)で使用される機会が多く、太陽電池に入射する光は主として太陽光ではなく蛍光灯などからの室内光となることが多いにもかかわらず、太陽電池としては、一般的な結晶シリコン太陽電池や多結晶シリコン太陽電池や化合物半導体太陽電池を用いることが考えられている。これらの太陽電池は、太陽光の下では十分な発電能力(つまり、光電変換能力)を発揮するが、太陽光に比べて低照度となる室内光の下では十分な発電能力を発揮することができず、結果的に非接触識別デバイスの駆動電力を賄うだけでの十分な電力が得られないという問題がある。
【0008】
なお、太陽電池を大型化することにより太陽電池の発電量を増やすことも考えられるが、非接触識別デバイスをユーザに携帯させることを考慮すると、非接触識別デバイスのサイズは制限されるので、太陽電池の大きさも制限されることとなり、太陽電池の大型化によって非接触識別デバイスの駆動電力を賄うだけの発電量の増加を図ることは困難である。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、限られた大きさの太陽電池を用いながらも、屋内等の低照度環境下において太陽電池のみで駆動電力を賄うことができる非接触識別デバイスおよびそれを用いた非接触識別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明では、識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池は、増感作用を持つ物質と電子輸送部と正孔輸送部とを有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、通信機能部に駆動電力を供給する電源部に含まれている太陽電池が、増感作用を持つ物質と電子輸送部と正孔輸送部とを有するので、太陽電池として一般的な結晶シリコン太陽電池を用いる場合に比べて、屋内等の低照度環境下での発電量が増加する。したがって、非接触識別デバイスを屋内で使用する機会が多い場合でも、限られた大きさの太陽電池を用いながらも太陽電池のみで駆動電力を賄うことができ、電池交換等のメンテナンスが不要になる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記太陽電池が、前記増感作用を持つ物質として色素を用い、当該色素が担持され前記電子輸送部として機能する半導体が付着された作用極電極と、半導体に対向配置された対極電極と、作用極電極と対極電極との間に充填され前記正孔輸送部として機能する電解質層とを有する色素増感太陽電池であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、太陽電池として一般的な結晶シリコン太陽電池を用いる場合に比較して、太陽電池の製造コストを低く抑えることが可能である。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記電解質層がガンマブチロラクトンを溶媒として用い少なくともヨウ素を含んでおり、電解質層中において電荷を輸送する酸化体Iの濃度が0mol/dmを超え0.02mol/dm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電解質層に含まれる酸化体Iの濃度を低くしているので、電解質層が可視光領域の光を吸収することを防止でき、電解質層による光吸収に起因した太陽電池の発電効率低下を抑制できる。したがって、低照度環境下での発電量の更なる増加を図ることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、視覚的に伝達される情報を前面に表示可能であって透光性を有する表示プレートを備え、前記太陽電池が、板状に形成されており、表示プレートの背後に位置するように表示プレートと厚み方向に重ねて配置されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、表示プレートにたとえばユーザの氏名等を表示させることによって、非接触識別デバイスを名札として兼用することができる。また、太陽電池と表示プレートとを厚み方向に直交する同一平面内に並べて配置する場合に比べて、太陽電池と表示プレートとのそれぞれの表面積を大きく確保することができる。したがって、太陽電池の発電量を向上させながらも、表示プレートの視認性を高めることができるという利点がある。なお、表示プレートは、たとえば表示する情報が印刷された印刷物や、液晶、エレクトロクロミックディスプレイ等の表示デバイスからなる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、視覚的に伝達される情報を前面に表示可能な表示プレートを備え、前記太陽電池が、可視光領域の光に対して透明であって、板状に形成されるとともに、表示プレートの前方に位置するように表示プレートと厚み方向に重ねて配置されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、表示プレートにたとえばユーザの氏名等を表示させることによって、非接触識別デバイスを名札として兼用することができる。また、太陽電池と表示プレートとを厚み方向に直交する同一平面内に並べて配置する場合に比べて、太陽電池と表示プレートとのそれぞれの表面積を大きく確保することができる。したがって、太陽電池の発電量を向上させながらも、表示プレートの視認性を高めることができるという利点がある。さらに、太陽電池が表示プレートの背後に位置する場合に比べ、表示プレートを透過する際の光の損失がない分だけ太陽電池への光の照射光率が高くなり、発電量の更なる向上を図ることができる。なお、表示プレートは、たとえば表示する情報が印刷された印刷物や、液晶、エレクトロクロミックディスプレイ等の表示デバイスからなる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の非接触識別デバイスと、非接触識別デバイスと非接触通信可能なリーダ装置とを備え、非接触識別デバイスとリーダ装置との通信時に非接触識別デバイスからリーダ装置に前記識別情報を送信することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、非接触識別デバイスが電源部を備えているので、非接触識別デバイス自身に電源がない場合と比較して、非接触識別デバイスとリーダ装置との間の通信距離を長くとることができる。したがって、非接触識別デバイスを所持しているユーザがリーダ装置に近づくだけで、非接触識別デバイスをリーダ装置にかざすことなく非接触識別デバイスの識別情報をリーダ装置で読み出すことが可能となり、利便性が向上する。しかも、太陽電池として、屋内等の低照度環境下での発電量が多いものを用いているから、非接触識別デバイスを屋内で使用する機会が多い場合でも、限られた大きさの太陽電池を用いながらも太陽電池のみで駆動電力を賄うことができ、電池交換等のメンテナンスが不要になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、非接触識別デバイスを屋内で使用する機会が多い場合でも、限られた大きさの太陽電池を用いながらも太陽電池のみで駆動電力を賄うことができ、電池交換等のメンテナンスが不要になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の実施形態で説明する薄型の非接触識別デバイスは、専用のリーダ装置(相手側装置)と通信するものであって、リーダ装置から送出された電波を受信すると、リーダ装置に対して所定の情報をデータとして返信する。この非接触識別デバイスは、たとえば建造物などの出入口扉、自動ドア、自動改札機等において個人の認証をリーダ装置との間の非接触通信により行う非接触識別システムに用いられる。すなわち、非接触識別デバイスには、各個人(非接触識別デバイスの所有者)を識別するための識別情報(ID)が格納された情報保持部が搭載されており、部屋の出入口等に設置されたリーダ装置との通信時に、当該識別情報をリーダ装置に送信する。そのため、上記非接触識別システムを用いれば、ユーザに非接触識別デバイスを所持させておくだけで部屋の入退室管理等が可能となる。
【0024】
本実施形態の非接触識別デバイス1は、図1に示すように上記情報保持部(メモリ)2と、リーダ装置との間で非接触通信(無線通信)を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4とを備えている。この非接触識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して相手側装置(リーダ装置)に発信する機能を有する。
【0025】
電源部4は、リーダ装置との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。
【0026】
また、電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電部、あるいは一次電池を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行うことができる。特に蓄電部を用いる場合、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電部を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電部に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できるという利点がある。
【0027】
ところで、本実施形態の非接触識別デバイス1は、太陽光が照射する屋外のみならず、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても太陽電池5で十分な電力を生成可能とするため、太陽電池5として、増感作用を持つ物質と電荷を輸送する電子輸送部および正孔輸送部とを有したものを用いている。
【0028】
増感作用を持つ物質は、光を吸収することにより電子(負の電荷)と正孔(正の電荷)とを別々の物質に振り分ける機能を持ち、このことが光電変換効果の発現の要因となる。ここで、増感作用を持つ物質より電子を受け取る材料部が電子輸送部であり、増感作用を持つ物質より正孔を受け取る材料部が正孔輸送部である。
【0029】
さらに、以下では具体例を示すことにより、増感作用を持つ物質と電子輸送部と正孔輸送部とについて詳しく説明する。
【0030】
増感作用を持つ物質としては、色素、量子ドット材料などが挙げられる。色素としては、RuL(HO)タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体(ここで、Lは、4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンを示す)、または、ルテニウム−トリス(RuL)、ルテニウム−ビス(RuL)、オスニウム−トリス(OsL)、オスニウム−ビス(OsL)などのタイプの遷移金属錯体、または亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニン、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。一方、量子ドット材料としては、PbS、CdSなどが挙げられる。
【0031】
電子輸送部としては、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属の酸化物、SrTiO、CaTiOなどのペロブスカイト、または、CdS、ZnS、In、PbS、MoS、WS、Sb、Bi、ZnCdS、CuSなどの硫化物、CdSe、InSe、WSe、HgSe、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd、Zn、InP、AgBr、PbI、HgI、BiIなどが好ましい。さらには、上記半導体材料から選ばれる少なくとも1種以上を含む複合体、たとえば、CdS/TiO、CdS/AgI、AgS/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdS/CdSe1−x、CdS/Te1−x、CdSe/Te1−x、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO/Cd、CdS/CdSeCdZn1−yS、CdS/HgS/CdSなどが好ましい。または、電子輸送機能を発現する有機物、n型有機材料なども好ましい。
【0032】
また、正孔輸送部としては、酸化体と還元体とからなる一対の酸化還元系構成物質が溶媒中に含まれていればよく、その種類は特に限定されない。本実施形態における酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において、可逆的に酸化体および還元体の形で存在する一対の物質をいう。ここで、酸化体とは酸化状態の電解質(例えば、I)をいい、還元体とは還元状態の電解質(例えば、I)をいう。その他に、正孔輸送部としては、ヨウ化銅などのp型半導体、トリフェニルアミン等のアミン誘導体や、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子、p型有機材料などが挙げられる。
【0033】
増感作用を持つ物質と電荷輸送部(電子輸送部および正孔輸送部)とを有した太陽電池5としては、色素増感太陽電池、量子ドット増感太陽電池、色素増感有機太陽電池等が知られているが、本実施形態では色素増感太陽電池を太陽電池5として採用することとする。
【0034】
色素増感型の太陽電池5は、図2に示すように、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる作用極電極6が形成された作用極基板7と、ガラス基板からなり一表面上に透明導電体層(透明電極)からなる対極電極8が設けられた対極基板9とを互いに電極6,8が対向する形で配置した構成を有する。ここで、作用極基板7側の作用極電極6上には、光を受けて電子を放出する色素(図示せず)が担持された電子輸送部としての半導体からなる半導体層10を備えている。作用極電極6−対極電極8間は正孔輸送部として機能する電解質層(電解液)11で満たされており、さらに、半導体層10の周囲には、両電極6,8と共に電解液を密封する封止材12が半導体層10の全周を包囲する形で設けられている(参考文献1:グレッツェル(Gratzel) 外1名、「ネイチャー(Nature)」、(英国)、1991年10月24日、第353巻、p.737-740)。
【0035】
この構成によれば、太陽電池5に照射した可視光領域の光は、作用極基板7および作用極電極6を透過して、半導体層10中の色素に吸収される。光を吸収した色素は電子を放出し、当該電子が電子輸送部である半導体層10に移動して半導体粒子間を通り作用極電極6に到達する。さらに、電子は、作用極電極6−対極電極8間に導線等で接続された負荷(ここでは通信機能部3)を通って対極基板9側の対極電極8に移動する。色素は正孔輸送部である電解質層11に含まれる還元状態の電解質(還元体)Iから電子を受け取ることで基底状態の色素へと戻り、酸化された電解質(酸化体)Iは対極基板9側の対極電極8から電子を受け取って還元体Iへと戻る。その結果、太陽電池5への光照射時には、太陽電池5から負荷(ここでは通信機能部3)に電流が流れることとなる。
【0036】
また、色素増感型の太陽電池5は、作用極基板7および対極基板9を透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができ、さらに、作用極基板7および対極基板9を可撓性のある樹脂フィルム等で形成すれば全体として可撓性を有した構成とすることが可能である。
【0037】
ここにおいて、色素としてはRu錯体を採用することが好ましい。さらには、図3に示すK19、図4に示すK77、図5に示すZ907等の疎水性の高い色素とすることがより望ましい。つまり、疎水性が高ければ、水の接近を妨げ、加水分解による色素の脱離を抑制するため、耐久性の向上を図ることができる。
【0038】
電解質層11に含まれる酸化体Iの濃度に関しては、0mol/dmを超え0.02mol/dm以下とすることが好ましい。これは、上記濃度を余り高くすると、電解質層11が可視光領域の光を吸収することとなり、電解質層11による光吸収分が太陽電池5の発電効率低下につながるからである。
【0039】
酸化体Iの濃度の下限値については、0mol/dmを超えていれば特に制限はないが、通常、10×10−9mol/dmであることが好ましい。10×10−9mol/dmは、酸化体Iの供給源(たとえば、ヨウ素I)を溶媒等に添加せず、還元体Iの供給源(たとえば、ヨウ化物塩)のみを溶媒等に添加して得た電解質層11を吸光光度法にて測定したときに検出される酸化体Iの濃度である。なお、このように酸化体Iの供給源を溶媒等に添加していないにもかかわらず、10×10−9mol/dm程度の酸化体Iが存在するのは、1つ目の原因として、ヨウ化物塩中に含まれる不純物の存在により酸化体Iが生成されるため、2つ目の原因として、ヨウ化物塩を有機溶媒等に溶解させた際になんらかの平衡反応が生じて酸化体Iが生成されるためであると考えられる。
【0040】
電解質層11を構成する溶媒としては、ガンマブチロラクトン、ポリエチレングリコール、メトキシプロピオニトリル溶媒等が好ましい。中でも、ガンマブチロラクトン、ポリエチレングリコール(分子量200)とすることが特に望ましい。
【0041】
さらに、本発明の非接触識別デバイス1に用いる太陽電池5の具体例を以下の実施例1〜3に示す。
【0042】
(実施例1)
本実施例の太陽電池5を作製に当たっては、まず、平均1次粒子径が20nmの高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させ、スクリーン印刷用の第1のペーストを作製する。一方、平均1次粒子径が20nmの高純度酸化チタン粉末と平均1次粒子径が400nmの高純度酸化チタン粉末とをエチルセルロース中に分散させ、スクリーン印刷用の第2のペーストを作製する。
【0043】
次に、作用極電極6を設けた作用極基板7となる導電性ガラス基板(旭硝子社製、一表面がフッ素ドープSnOにてコーティングされることにより導電性が付与されたガラス基板、表面抵抗10Ω/sq、厚さ1mm、1.6cm×3.6cm)上に、第1のペーストを1cm×3cm角に塗布して乾燥させ、得られた乾燥物を500℃で30分間空気中で焼成して、導電性ガラス基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成する。さらに、多孔質酸化チタン膜上に第2のペーストを塗布して乾燥させ、得られた乾燥物を500℃で30分間空気中で焼成することで、厚さ10μmの前記多孔質酸化チタン膜上にさらに厚さ4μmの酸化チタン膜を形成して、受光面積が3cmの半導体層10を得る。
【0044】
次いで、半導体層10を、図3で示される色素を含む溶液に浸漬した後、上記溶液から取り出し室温で24時間暗所にて静置することで、半導体層10に色素を吸着させる。ここで前記溶液には、アセトニトリルとt−ブタノールとを容積比50:50で混合して得た混合溶媒に、上記色素を濃度が3×10−4mol/dmとなるように溶解したものを用いる。
【0045】
一方、別の導電性ガラス基板(旭硝子社製、一表面がフッ素ドープSnOにてコーティングされることにより導電性が付与されたガラス基板、表面抵抗10Ω/sq、厚さ1mm、1.6cm×3.6cm)に、5mmol/dmのHPtCl溶液(溶媒イソプロピルアルコール)を5×10−6l/cm塗布した後、450℃で15分間熱処理して対極電極8を設けた対極基板9を作製する。
【0046】
そして、色素を担持した半導体層(酸化チタン膜)10を設けた作用極基板7と対極基板9との間には、封止材12の基礎となる厚さ20μmの熱可塑性樹脂(デュポン社製「バイネル」)を半導体層10の周囲に配設し、250℃で30秒間加熱しながら厚み方向に加圧することで、熱可塑性樹脂を介して作用極基板7と対極基板9とが貼り合わせられる。
【0047】
ここで、作用極基板7−対極基板9間への電解液の注入は、封止部(熱可塑性樹脂)12に設けた1mm幅の開口部より減圧注入方式によって行い、注入後、開口部は紫外線硬化樹脂によって封止される。上記電解質層11としては、ガンマブチロラクトンに、メチルトリプロピルアンモニウムを0.5mol/dm、ヨウ素を0.005mol/dm、ヨウ化リチウムを0.05mol/dm、N−メチルベンゾイミダゾールを0.5mol/dmそれぞれ溶解したものからなる電解液を用いる。
【0048】
(実施例2)
本実施例の太陽電池5は、電解質層11としてヨウ素を0.05mol/dm溶解したものを用いる点以外は、実施例1の太陽電池5と同様の方法により作製されるものである。
【0049】
(実施例3)
本実施例の太陽電池5は、色素として図6に示す色素を用いる点以外は実施例1の太陽電池5と同様の方法により作製されるものである。なお、図6(a)中の「TBA」は図6(b)に示すテトラブチルアンモニウムを意味する。
【0050】
以上説明した各実施例の太陽電池5を電源部4に用いることにより、太陽光が照射する屋外のみならず屋内(室内)においても太陽電池5で十分な電力を生成可能となるから、非接触識別デバイス1は、太陽電池5からの電力供給のみでリーダ装置との通信等に必要な駆動電力を賄うことが十分可能となる。
【0051】
ところで、電源を搭載した非接触識別デバイス1に関しては、前述した非接触識別システムに使用した場合に、通常の使用状況であればリチウム電池CR2032(ボタン型電池)を電源として1年程度の寿命となることが報告されている。ここで、電池容量と寿命との関係から1日当たりの消費電力量を求めると、1.8mWh/日程度であると見積もることができる。この消費電力量を太陽電池5で賄えるか否かを検証した結果を表1に示す。検証に際しては、屋内(室内)での使用を想定して蛍光灯を光源として照度1000Lxの環境下に太陽電池5を6時間晒した場合の太陽電池5の受光量を1日当たりの受光量と定義した。ここでは、比較例としてのシリコン系太陽電池(結晶シリコン太陽電池)および実施例1〜3の太陽電池5を対象とし、いずれも受光面積を10cmとして評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
すなわち、比較例1の結晶シリコン太陽電池では、1日当たりの非接触識別デバイス1の消費電力量1.8mWhを太陽電池のみで賄うことはできず、太陽電池を一次電池と併用することで0.09mWh/日の分だけ電池寿命を延命できるに過ぎない。その理由として、シリコン系太陽電池は低照度環境下では発電効率が低下すること、また、蛍光灯からの光のような特定波長域の光に対する感度が低いことが考えられる。これに対して、本発明に係る実施例1〜3の太陽電池5では、いずれも1日の発電量が1日当たりの非接触識別デバイス1の消費電力量1.8mWhを上回り、太陽電池5の発電した電力のみで非接触識別デバイス1の駆動電力を賄うことが可能である。したがって、本実施形態の非接触識別デバイス1によれば、電池交換等のメンテナンスを行うことなく継続的に使用することが可能となる。
【0054】
ところで、本実施形態の非接触識別デバイス1は太陽電池5を電源に用いているため、太陽電池5に対して光が照射するような形態で使用されることが必要である。要するに、非接触識別デバイス1が衣服のポケットや鞄や引き出し等に収納され、非接触識別デバイス1に光が届かない状況では、どのような太陽電池5を用いたとしても十分な電力を生成することはできない。また、ユーザに対して、非接触識別デバイス1(における少なくとも太陽電池5の受光部)を故意に光にかざす行為を求めると、非接触識別デバイス1をリーダ装置にかざすことなく非接触識別デバイス1を所持(携帯)したユーザがリーダ装置に近づくだけで非接触識別デバイス1−リーダ装置間の通信が可能になる、という能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用した非接触識別デバイス1の利便性を大きく損なうこととなる。したがって、非接触識別デバイス1に搭載した太陽電池5を電源として有効に活用するためには、非接触識別デバイス1の通常の使用形態において太陽電池5に光が照射されることが求められる。
【0055】
そこで、本実施形態では、以下に説明する構成を非接触識別デバイス1に採用することで、太陽電池5への十分な光照射を確保するものとする。
【0056】
すなわち、非接触識別デバイス1は視覚的に情報を伝達するための情報伝達手段を備え、この情報伝達手段が周囲の人に視認されやい形態でユーザに所持されるものとする。情報伝達手段を周囲に晒すことで、太陽電池5に光が照射される環境をつくることが可能である。
【0057】
具体的には、非接触識別デバイス1は、図7および図8に示すように情報伝達手段としての表示プレート13を、通信機能部3および太陽電池5と共に透明材料からなるカバー14内に収納した構成を有する。表示プレート13は、表面に文字や図柄等の伝達すべき情報(図示例では「abcde」)が印刷された印刷物、あるいは液晶やエレクトロクロミックディスプレイ等の表示デバイスからなる。表示デバイスを採用した場合には、表示内容の書き換えが容易で利便性が高いという利点がある。つまり、表示デバイスには情報保持部2に格納された情報を表示する構成とし、非接触識別デバイス1との非接触通信時において情報保持部2内の情報を書き換え可能なリーダライタ装置(図示せず)を用いることにより、表示デバイスの表示内容を書き換えることが可能である。なお、図示は省略するが、識別情報を格納した情報保持部2は矩形板状に形成された通信機能部3内に収められている。
【0058】
ここで、太陽電池5と表示プレート13とを通信機能部3の前面に沿って並べて配置する構成では、表示プレート13の表面積を大きくして表示プレート13の視認性を高めると太陽電池5の表面積が小さくなって発電量が減少し、一方、太陽電池5の表面積を大きくして発電量を増加させると表示プレート13の表面積が小さくなって表示プレート13の視認性が低下する。そこで、図9に示すように可視光に対して透光性を有する材料(透明プラスチック等)で表示プレート13を形成し、表示プレート13の背後に太陽電池5が位置するように表示プレート13と太陽電池5とを重ねて配置してもよい。この構成では、太陽電池5と表示プレート13との両方において表面積を大きく確保することができ、太陽電池5による発電量と表示プレート13の視認性とを両立することができる。
【0059】
また、太陽電池5として色素増感太陽電池を用いることで、太陽電池5自体を可視光に対して透明とすることも可能であるから、この場合には、太陽電池5の背後に表示プレート13が位置するように表示プレート13と太陽電池5とを入れ替えて配置してもよい。この場合、図9のように表示プレート13が最前面に位置する構成に比べて、太陽電池5への光の入射効率が高くなり、発電効率の向上を図ることができるという利点がある。なお、ここでいう太陽電池5が透明とは、太陽電池5を通して表示プレート13の表示を明瞭に視認できる程度の透明度を太陽電池5が有することを意味しており、太陽電池5が可視光領域の光を全く吸収せずに透過させることを意味するものではない。すなわち、太陽電池5は可視光領域の光の一部を吸収して発電を行いながらも、太陽電池5越しに表示プレート13を見たときに表示プレート13の視認性が確保できる状態にあればよく、太陽電池5は、無色透明に限らず有色透明あるいは若干の光拡散性を有するものであってもよい。
【0060】
カバー14には紐体15を通す透孔16が形成されており、この紐体15をユーザの首に掛けることによって非接触識別デバイス1を首から提げるようにしてユーザに保持させることができる。このとき、非接触識別デバイス1はユーザの着衣上に位置するようにする。この場合に、太陽電池5の受光面をカバー14の一面側(表示プレート13の表面側)のみに設けていると、首から提げたカバー14が裏返ることで太陽電池5の受光面に光が十分に照射しなくなるおそれがある。そこで、カバー14の厚み方向の両面側に太陽電池5を設置したり、あるいは厚み方向の両面側から受光して発電することができる構成の太陽電池5を採用したりすることが望ましい。また、非接触識別デバイス1は、紐体15によって首から提げる構成に限らず、ピンやフックや紐体によってユーザの着衣に保持される構成、あるいは衣服への一体化、貼り付け、縫い付けなどの方法によってユーザの着衣に固定される構成とすることも考えられる。
【0061】
このようにしてユーザに保持される非接触識別デバイス1は、たとえばユーザの氏名、所属(部署名)等を表示プレート13に表示することで名札として兼用することができる。また、名札に類した使用形態として、肩章、腕章、たすき、バッチ、タグなどに本実施形態の非接触識別デバイス1を用いることも可能である。
【0062】
このような使用形態をとる非接触識別デバイス1において、携帯性の面から考えて望ましい厚み寸法は10mm以下である。また、着衣に保持するという面から考えると厚み寸法を5mm以下に抑えることが望ましい。さらにまた、非接触識別デバイス1に従来の名札のネームプレートと同様の使い勝手(携帯性)を求めると、厚み寸法を2mm以下とすることが好ましい。非接触識別デバイス1の重量については、長時間携帯することを想定すると200g以下とすることが望ましく、着衣に取り付ける場合には100g以下とすることが望ましい。
【0063】
以下に、上記実施形態の非接触識別デバイス1を用いた非接触識別システムの具体例について、図10を参照して説明する。ここでは、非接触識別システムを部屋の入退室管理に用いる場合を例として説明する。
【0064】
すなわち、部屋の出入口に設置されたリーダ装置100は、LF帯(長波帯:30〜300kHz)の第1の通信方式にて非接触識別デバイス1と通信するためのLF帯送信部101およびLFアンテナ102と、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の第2の通信方式にて非接触識別デバイス1と通信するためのRF送受信部103およびRFアンテナ104と、LF帯送信部101およびRF送受信部103を制御する制御部105と、制御部105に接続された液晶ディスプレイ等からなる表示部106およびブザー107とを具備する。
【0065】
ユーザに所持される非接触識別デバイス1は、上記第1の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのLF帯受信部31およびLFアンテナ32と、上記第2の通信方式にてリーダ装置100と通信するためのRF送受信部33およびRFアンテナ34と、LF帯受信部31およびRF送受信部33を制御する制御部35とを通信機能部3に備えている。ここで、LFアンテナ32はたとえば通信機能部3の基板(図示せず)上に形成されたループアンテナからなり、RFアンテナ33は前記基板上に形成されたパッチアンテナからなる。
【0066】
次に、上述した非接触識別システムの動作例を示す。
【0067】
リーダ装置100は、制御部105で生成した起動信号を、LF帯送信部101において誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ102から第1の通信方式(LF)にて、一定周期で間欠的に発信する。これにより、リーダ装置100の周囲(部屋の出入口付近)には前記起動信号が届く範囲内で認証エリアが形成される。
【0068】
非接触識別デバイス1を所持したユーザが上記認証エリア内に入ると、非接触識別デバイス1は、リーダ装置100からの起動信号をLFアンテナ32で受信した後に、LF帯受信部31が制御部35を起動し、制御部35にて情報保持部2内の識別情報を含む応答信号を生成し、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して第2の通信方式(UHF)にて応答信号をリーダ装置100に返信する。ここにおいて、非接触識別デバイス1は、起動信号を受信するまでは、通信機能部3のうちLF帯受信部31のみに電源部4から電力供給を行いLF帯受信部31以外の各部(RF送受信部33、制御部35)への電力供給を行わない低消費電力モードで動作しており、起動信号を受信することで初めてLF帯受信部31以外の各部にも電力供給が行われる通常モードで動作する。
【0069】
リーダ装置100は、応答信号をRFアンテナ104を介してRF送受信部103で受信し、制御部105から図示しない上位装置に転送する。上位装置では識別情報の照合が行われ、正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、リーダ装置100の制御部105は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)をRF送受信部103からRFアンテナ104を介して非接触識別デバイス1に送信する。また、リーダ装置100の制御部105は、識別情報の認証が正常に完了すれば表示部106やブザー107によってその旨を報知するとともに、部屋の出入口扉を解錠するための制御を行なう一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、表示部106やブザー107によって警告を行うとともに、部屋の出入口扉の施錠を維持するための制御を行う。
【0070】
非接触識別デバイス1は、前記確認信号をRF送受信部33で受信すると、応答信号の送信を終了する。なお、リーダ装置100からの確認信号の送信に代えて、認証完了した識別情報を次回の起動信号に含むようにしてもよく、この場合、非接触識別デバイス1は自己の識別情報を含む起動信号をLF帯受信部31にて受信することで、応答信号の送信を終了する。
【0071】
このように、非接触識別デバイス1がLF帯の起動信号で起動し、UHF帯の応答信号を返信させることにより、前記認証エリアをたとえば1.5〜2mの範囲に正確に規定することができる。また、UHF帯の無線通信を行うRF送受信部33においては、消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯の無線通信を行うLF帯受信部31においては、数μA程度の微弱な電力で起動するので、待機状態にてRF送受信部33への電力供給を行わない低消費電力モードを採用することによって、非接触識別デバイス1の待機電力を低く抑えることが可能である。
【0072】
ところで、以上説明した構成の非接触識別デバイス1は、自動車のエンジン始動やコンピュータの起動や、各種設備機器の起動に際して個人認証を行う非接触識別システムにも用いることができる。また、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口にリーダ装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には非接触識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設、学校、会社、団体旅行等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に非接触識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態の非接触識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図2】同上に用いる太陽電池を示す概略図断面である。
【図3】同上の太陽電池に用いる色素(K19)の化学式である。
【図4】同上の太陽電池に用いる色素(K77)の化学式である。
【図5】同上の太陽電池に用いる色素(Z907)の化学式である。
【図6】同上の実施例3の太陽電池に用いる色素の化学式である。
【図7】同上の非接触識別デバイスを示す概略正面図である。
【図8】同上の非接触識別デバイスを示す概略分解斜視図である。
【図9】同上の非接触識別デバイスの他の構成例を示す概略分解斜視図である。
【図10】同上の非接触識別デバイスを用いた非接触識別システムを示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0074】
1 非接触識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
4 電源部
5 太陽電池
6 作用極電極
7 作用極基板
8 対極電極
9 対極基板
10 半導体層
11 電解質層
13 表示プレート
100 リーダ装置(相手側装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報を担持する情報保持部と、相手側装置との間で非接触通信を行うことで前記識別情報を相手側装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部とを備え、太陽電池は、増感作用を持つ物質と電子輸送部と正孔輸送部とを有することを特徴とする非接触識別デバイス。
【請求項2】
前記太陽電池は、前記増感作用を持つ物質として色素を用い、当該色素が担持され前記電子輸送部として機能する半導体が付着された作用極電極と、半導体に対向配置された対極電極と、作用極電極と対極電極との間に充填され前記正孔輸送部として機能する電解質層とを有する色素増感太陽電池であることを特徴とする請求項1記載の非接触識別デバイス。
【請求項3】
前記電解質層はガンマブチロラクトンを溶媒として用い少なくともヨウ素を含んでおり、電解質層中において電荷を輸送する酸化体Iの濃度は0mol/dmを超え0.02mol/dm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2記載の非接触識別デバイス。
【請求項4】
視覚的に伝達される情報を前面に表示可能であって透光性を有する表示プレートを備え、前記太陽電池は、板状に形成されており、表示プレートの背後に位置するように表示プレートと厚み方向に重ねて配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の非接触識別デバイス。
【請求項5】
視覚的に伝達される情報を前面に表示可能な表示プレートを備え、前記太陽電池は、可視光領域の光に対して透明であって、板状に形成されるとともに、表示プレートの前方に位置するように表示プレートと厚み方向に重ねて配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の非接触識別デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の非接触識別デバイスと、非接触識別デバイスと非接触通信可能なリーダ装置とを備え、非接触識別デバイスとリーダ装置との通信時に非接触識別デバイスからリーダ装置に前記識別情報を送信することを特徴とする非接触識別システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−67086(P2010−67086A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233892(P2008−233892)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】