説明

非水系微粒子分散体の製造法及び該分散体を用いた反射防止板及び反射防止フィルム

【課題】液晶ディスプレイに代表される反射防止組成物、粉体特性を生かした塗料、インキ、プラスチック、紙、繊維加工、化粧品、医薬品等の多くの分野で平均粒子径500nm以下の安定な非水系微粒子分散体の安価な製造法であり、得られた分散体を用いた反射防止板、反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】水系乳化重合法により平均粒子径30〜500nmの水性ラテックスを製造し、その微粒子表面を疎水性にする処理を施した後、非水溶媒を加えて相転移させる事により一次粒子を保持した非水系微粒子分散体の製造、及びその非水系微粒子分散体をバインダーと共に基板上又はフィルム上に塗布又は積層した反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系乳化重合法により平均粒子径30〜500nmの水性ラテックスを製造し、その微粒子表面を疎水性にする処理を施し、非水溶媒を加えて相転移させる一次粒子を保持した非水系微粒子分散体の製造法に関するものである。
具体的には、先ず水系乳化重合法により平均粒子径30〜500nmの水性ラテックスを製造し、その微粒子表面をカチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤のAl、Ba、Ca、Mg塩と接触させて微粒子表面のイオン性物質を除去又は被覆して微粒子表面を疎水化する、またはアジピン酸系ポリエステル及びトリメリット酸トリアルキルと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のAl、Ba、Ca、Mg塩又は、カチオン性活性剤の化合物で疎水化し、必要によりさらに水性ラテックスの脱イオン及び/又は脱乳化剤処理を行い、微粒子を溶解しない非水溶媒を加えて微粒子を相転移させ、一次粒子を保持したままの非水系微粒子分散体の製造法に関する。更にまた、得られた非水系微粒子分散体をバインダーと共に基板上またはフィルム上に塗布又は積層した反射防止板及び反射防止フィルムの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細樹脂粒子は、液晶ディスプレイに代表される反射防止板、反射防止フィルム、粉体特性を生かした塗料、インキ、プラスチック、紙、繊維加工、化粧品、医薬品等の多くの分野で様々なものが用いられている。
【0003】
このような微細樹脂粒子はその光学的特性を生かした光散乱剤、他物質との付着防止剤、表面処理加工剤、伸展性による使用感触の向上剤等、微細球状粒子特有の機能を発揮させた様々な用途に使用されている。
【0004】
しかしながら粒子の大きさがミクロンレベルからサブミクロンレベルの大きさになると、光学的にも、感触的にも粒子の性質が変化し、ミクロンレベルの粒子には見られなかった新しい機能が出現してくる。
【0005】
ところが、サブミクロンレベルの粒子径は粒子同士の凝集力が強く現れ、複数の粒子が集合して塊状の粒子となり、球状粒子としての特性が失われるという現象が起こる。その結果、使用時に安定した単粒子として配合することができないことが多い。
【0006】
このため、近年、非水系分散体(NAD)として、剤型成分に対して混和性に優れた有機溶剤系に微細樹脂粒子が均一に分散した非水系微粒子分散体の開発が進められてきた。
【0007】
しかしながら、これらのNADは溶剤に不溶な分散粒子相ポリマーと高分子分散安定剤からなる非水系分散重合法により得られるものであり、製造過程での重合時、あるいは粒子内架橋時に粒子間架橋が進行して、巨大粒子が生成し、ひいては系全体がゲル化するなど、微細粒子の製造には極めて制御が難しい問題を有していた(特許文献1)。
【0008】
また、架橋樹脂非水分散体の製造において、相転移乳化が生じない程度の水を加えて、該樹脂を架橋させる方法(特許文献2)があるが、これでは大量に製造するときには、添加する水の制御及び混合する際の攪拌翼の回転数の制御では液全体を均一にすることが困難な為に、製造した架橋樹脂の粒子径が均一になりにくいという欠点があった。
【特許文献1】特開昭59−161431
【特許文献2】特開平10−152564
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて、粒子径30〜500nmの微細樹脂粒子が均一に単粒子として分散され、使用時にも安定な真球状単粒子として存在する非水系微粒子分散体の製造法及び得られた分散体を用いた反射防止板、反射防止フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、粒子間凝集の強い微細樹脂粒子をいろいろに応用される製品の剤型へ、均一単粒子として配合することができるサブミクロンレベルの微細樹脂粒子を水系乳化重合法により合成し、粉体化の過程を経ずに、非水溶媒相に単一粒子として水系乳液における一次粒子を保持したまま相転移させることによる非水系微粒子分散体の製造法を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、
(1)
水系乳化重合法により平均粒子径30〜500nmの水性ラテックスを製造し、その微粒子表面を疎水性にする処理を施した後、非水溶媒を加えて相転移させる一次粒子を保持した非水系微粒子分散体の製造法、
(2)
水性ラテックスの微粒子表面を疎水性にする処理を施すと共に、水性ラテックスの脱イオン及び/又は脱乳化剤処理を行う(1)記載の非水系微粒子分散体の製造法、
(3)
微粒子表面を疎水性にする処理が、微粒子にカチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤のAl、Ba、Ca、Mg塩を接触させる方法である(1)又は(2)記載の非水系微粒子分散体の製造法、
(4)
微粒子表面を疎水性にする処理が、微粒子にアジピン酸系ポリエステル及びトリメリット酸トリアルキルと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のAl、Ba、Ca、Mg塩を接触させる処理である(1)または(2)記載の非水系微粒子分散体の製造法、
(5)
微粒子がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ハロゲン化ビニル及び酢酸ビニルからなる単量体の少なくとも1種の単独重合体もしくは共重合体微粒子である(1)または(2)記載の非水系微粒子分散体の製造法、
(6)
微粒子の表面が親水性アミノ基又はカルボキシル基を有するものである(1)または(2)記載の非水系微粒子分散体の製造法、
(7)
非水溶媒が脂肪族鎖状、環状又は芳香族の炭化水素系、エステル、ケトン及びシリコーン系溶媒から選ばれた少なくとも1種である(1)または(2)記載の非水系微粒子分散体の製造法、および
(8)
(1)〜(7)のいずれかに記載された非水系微粒子分散体をバインダーと共に基板上またはフィルム上に塗布又は積層した反射防止板及び反射防止フィルムである。
【0012】
本発明の平均粒子径30〜500nmというサブミクロンレベルの微細樹脂粒子は、従来の水系乳化重合法では比較的容易に製造することができたが、非水系分散重合法によってその平均粒子径を有する単一粒子からなる分散液は製造することが来なかった。
そこで、本発明の方法においては先ず水系乳化重合法により平均粒子径が30〜500nmの水性ラテックスを調製し、得られた微粒子を非水溶媒に相転移させる。
この水系乳化重合法による平均粒子径30〜500nmというサブミクロンレベルの微細樹脂粒子を含む水性ラテックスの調製は、従来から知られている方法を用いて行うことができる。すなわち、水を分散媒として、撹拌下に非水溶性単量体と界面活性剤を加えて乳濁液とし、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、レドックス系重合開始剤などの水溶性重合開始剤によりラジカル重合を行う。
非水溶性単量体としては、ヨウ化ビニル、塩化ビニル、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化ビニル類、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、4−メチルスチレン等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、スチレン及びその誘導体など、アクリル酸やビニル系の単量体が挙げられる。樹脂はこれらの単独重合体や共重合体である。また樹脂のガラス転移温度を向上させ、融着を防ぐため、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの架橋性ビニル単量体を併用することもできる。重合により得られる重合体のガラス転移温度は、−30〜180℃、好ましくは40〜130℃である。本発明で実施する水系乳化重合法は、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合等の通常知られている水系乳化重合の手段を適宜選択することができる。
【0013】
水性ラッテックスは、その平均粒子径がミクロンレベル以上になると白色のラテックスが得られ、粒子径が小さくなるに従って青味のある乳白色から半透明、更には透明感のあるラテックスとなる。本発明が目的としている粒子域はこの透明感の出るサブミクロン域の乳液であり、平均粒子径は、30〜500nm、好ましくは50〜300nm、更に好ましくは、70〜200nm、最も好ましくは100〜150nmである。この平均粒子径を有する乳液を調製するには、重合時の攪拌条件として30〜500r/min、好ましくは100〜200r/min、重合温度50〜80℃、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン界面活性剤をラテックス全体に対して0.005〜0.3%、好ましくは0.01〜0.1%の存在下に行うのが好ましい。
【0014】
水系乳化重合法で得られた微細樹脂ラテックスの粒子表面は、重合開始剤やイオン性界面活性剤の吸着により親水性となっている。
【0015】
本発明の方法においては、水系乳化重合法により得られた水性ラテックスを、単粒子の状態を保持したまま、すなわち粒子相互の凝集を起こさせないで非水相に相転移させるために、ラテックスの媒体、即ち水の中の親水性物質や粒子表面の過剰な親水性吸着層を取り除き、微粒子表面を疎水性にする処理を施す。
【0016】
水性ラテックス中の親水性物質を除去する方法としてはたとえば、半透析膜または適切な細孔をもつ膜を使用し、水溶解性成分を膜外の水中へ溶出させる方法、イオン交換樹脂層を通して親水イオン性物質を除去させる方法、電気泳動の原理を応用した電気的な方法により脱着する方法、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水可溶性塩類により塩析して非イオン性吸着層を脱着し、その後適切な細孔を有する膜等で親水性物質を粒子分散体から分離させる方法などがあげられる。
【0017】
水分散体の微粒子表面から親水性物質を除去した後、さらに、ラテックスに疎水化剤を添加し、微粒子表面を疎水性に変換させることができる。疎水化剤としては1〜3級脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩、アミド結合アミン類、アジピン酸系ポリエステル及びトリメリット酸トリアルキルと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の塩又は、カチオン性活性剤があげられる。なかでも効果的なものは第4級アンモニウムの塩酸またはブロム塩及びアジピン酸系ポリエステル/トリメリット酸トリアルキルである。これらカチオン性物質以外に、脂肪族及びロジン酸、ナフテン酸のカルボン酸塩類の石けん、油脂類の硫酸化物の高級アルコール硫酸エステル塩類、直鎖及び分岐アルキルベンゼン硫酸化塩類、オレフィン硫酸化ナトリウム塩、アルカンスルフオン酸ナトリウム塩などのアニオン性物質のアルミニウム、バリウム、カルシウム又はマグネシウム塩で吸着させ疎水性表面にすることが出来る。これらの疎水化剤は使用した重合開始剤や界面活性剤100部に対して0.1〜10部、好ましくは1〜5部程度用いるのがよい。
【0018】
透析膜や他の方法により、水性ラテックス中のイオン性物質を除去し、粒子表面の親水性吸着層を除去した後、上記疎水化剤の水溶液を適量添加して、粒子表面に吸着させる。第1〜4級アミン等のカチオン性物質は、塩素塩や臭素塩として水可溶性の塩として直接添加することができる。
【0019】
また、透析膜や他の方法により、水性ラテックス中のイオン性物質や可溶性活性剤、粒子表面の過剰親水性吸着層を除去した後、上記疎水化剤を適量添加して、粒子表面に吸着させる。
【0020】
更に、親水性のアミノ基を有する単量体、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピリジン、3級−ブチルアミノエチルアクルレートや、親水性の不飽和カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸等の単量体を共重合させ、樹脂粒子表面に官能基を付与することにより、官能基に反応性または反対荷電のイオン性物質で被覆して表面を疎水化することができる。この場合においても、水中及び粒子表面の過剰な親水性物質をある程度除去することが望ましい。
【0021】
脂肪族カルボン酸塩やアルキルベンゼン硫酸化塩等のアニオン性物質は、Na、K、アンモニウム等の塩として水溶性の状態で添加し、その後Al、Ba、Ca、Mgの塩化物の水溶液を適量追加添加するか又は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩ではAl、Ba、Ca、Mgの塩に置換した後に添加する。粒子分散体の中でこれらのイオン性物質と金属塩類が複分解反応を起こし、樹脂粒子表面に疎水性吸着層を形成させてもよく、また直接樹脂粒子表面に吸着させて疎水性吸着層を形成させてもよい。
【0022】
水系乳化重合法により、直鎖アルキルまたは、アルキルベンゼンの硫酸化塩を乳化剤として用いていた場合は、前記の過剰親水性吸着層をある程度除去してから、直接Al、Ba、Ca、Mg等の塩水溶液を添加することにより、微粒子表面を疎水化することもできる。
【0023】
ただし、これらの疎水化吸着剤の添加は、過剰に添加すると疎水化層の上に疎水基を内側にした吸着剤の層(2重膜構造)が形成されるため疎水性にはならなくなるので適切な配合量で行なうことが好ましい。
【0024】
上記疎水性処理は使用する非水有機溶媒の極性にも関係するが、撥水性を示す程の疎水化吸着層を形成し、水分散系の上部に排出することは不要であり、親水性がある程度の疎水性に変化するだけでも充分である。実際には、これらの条件が満たされることで個々の粒子は単一粒子として水中に分散している。
【0025】
本発明により得られる非水系微粒子分散体は反射防止板、塗料、インキ、プラスチック、紙、繊維加工等の配合は、球状粒子形状や光学特性に関係するつや消し剤、顔料分散性向上、鱗片状粉体の粒子配向性制御、アンチブロッキング性、コンシステンシー、透明性、平滑性、接着性の制御等の目的で配合することができるが、その効果を明確に発揮させるためにこの微細樹脂粒子が実質的に一次粒子を保持し、かつ安定した単粒子として分散されていることが要求される。
【0026】
また、上記記載の微細樹脂粒子を化粧用粉体の表面改質剤として用いるには、細密充填状態で配列されるような配慮が望ましい。
【0027】
非水系微粒子分散体を構成する非水媒体としては、平均粒子径30〜500nmの微細樹脂粒子を単粒子として安定的に保持させるものであることが重要であるが、その非水溶媒としては、常温(25℃)で液体であり、水と実質的に相溶せず、使用剤型へ容易に混和できるものであることが望ましい。
【0028】
非水媒体としては、鎖状及び環状炭化水素系、エステル系、ケトン系、エーテルアルコール系及び低分子直鎖及び環状シリコーン系溶媒が挙げられ、場合によりこれら1種又は2種以上の混合溶媒が用いられる。
【0029】
これらのうち、用途別の共通性から、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、低分子流動パラフィン、ケロシン等の炭化水素、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル、エチルメチルケトン、イソブチルケトンなどケトン系及び環状又は直鎖低分子シリコーン系が好ましい。
【0030】
非水系有機溶媒を目的に応じて選択し、水性ラテックスに全体の1/3〜1/2容量に相当する量を添加し、比較的弱い撹拌条件下に混合する。微細樹脂粒子表面の疎水化度と使用する非水系有機溶媒の親和性が適合すると、水中に分散していた粒子は溶媒へ相転移し、水系分散体から非水系微粒子分散体に変化する。その時点で上部または下部に透明な水の相が分離してくる。非水系有機溶媒を添加後余り強く撹拌すると、粒子の相転移と同時に、機械的力によるO/WまたはW/Oのエマルションの生成が起こり、充分な非水系微粒子分散体を得ることができないので、攪拌条件は慎重に行う必要がある。
【0031】
本発明の方法により得られ非水系微粒子分散体は前述の各種用途に有利に使用することが出来るが、低屈折率バインダーと共に、例えば屈折率1.6以上の高屈折率基板上またはフィルム上に塗布又は積層することにより高い透明性と反射防止能を備えた反射防止板及び反射防止フィルムとすることができる。低屈折率バインダーとしては、熱硬化性含フッ素ポリマー、UV硬化性含フッ素ポリマー等のフッ素系バインダーが好ましく、高屈折率基板、高屈折率フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)等が挙げられる。フィルムの膜厚は通常30〜300μm、好ましくは70〜200μmである。塗布、積層方法はディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法等の一般的な精密薄膜塗工が可能なコーティング方式をとることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の方法によれば、水系乳化重合法により得られた平均粒子径30〜500nmの微粒子をその一次粒子を保持したまま非水系微粒子分散体とすることができる。従って、使用する製品形態や剤型処方に容易に混和又は分散出来る親溶媒を選択することにより製品及び使用時、さらには最終用途においても粒子の凝集体の形成が起こることなく、粒子の均一配合が可能である。
又本発明の方法により製造される平均粒子径30〜500nmの一次粒子を維持した非水系微粒子分散体を無機微粒子の代わりに使用することで、従来よりも高い透明性を有する反射防止組成物を容易且つ経済適に有利に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下実施例や比較例をあげて本発明を具体的に説明する。尚、実施例や比較例における「部」断りない限り重量部を意味する。
【実施例1】
【0034】
攪拌機、温度計,還流冷却器及び窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水84.6部に苛性ソーダー0.042部を溶解し、これに、ドデシル硫酸ナトリウム0.15部を溶解させた。さらに、スチレン8.92部とジビニルベンゼン0.46部の混合モノマーを添加し、ホモジナイザーで撹拌乳化した。内容物を150回転/分で撹拌しながら窒素ガスを導入して加熱を開始し70℃とした後、5.0部の脱イオン水に溶解した過流酸ナトリウム0.155部を添加し重合を開始した。反応開始から約80〜100分で発熱ピークが出現したら反応が終了とし、反応液温度を98℃まで上げて、3時間還流して重合を終了した。加熱、撹拌、窒素ガスを停止し放置冷却した後ろ過し、水系ラテックスA−1)を得た。
【0035】
上記で合成した水系ラテックス(A−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移しこれに脱イオン水100Lを外液として加え透析・脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、固形分38.5%、平均粒子径120nm、屈折率1.592のポリスチレン・ジビニルーベンゼン樹脂粒子水分散液(A−2)が得られた。
【0036】
得られた樹脂水分散液(A−2)をセルロース透析チューブから撹拌付きタンクに移し、別の容器でメチルイソブチルケトン5.05部とヘキサン70%・キシロール30%の混合溶剤2.15部、カチオン性活性剤(テトラブチルアンモニウムブロミド)の脱イオン水の20%分散液2.4部、アジピン酸/マレイン酸系ポリエステル50%・トリメリット酸トリアルキル50%混合液6.0部の混合液の半分を撹拌付きのタンクに添加した。室温下30分撹拌後更に残りの混合液を添加し、水が分離してきたので水を容器下部から抜き取るようにして分離しながら、キシロール25.3部を添加した。この操作により、固形分50%、平均粒子径120nm、屈折率1.592の非水系微粒子分散体(A−3)77.0部が得られた。
【実施例2】
【0037】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.4部およびPH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.08部を仕込み攪拌しながら70℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2部を添加し、10分後に0.98部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.02部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート45部、トリフルオロエチルメタクリレート40部、エチレングリコールジメタクリレート13部、脱イオン水60部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.7部、重炭酸ナトリウム0.2部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(B−1)を得た。生成物(B−1)は固形分34.1%、平均粒子径103nm、微細樹脂粒子の屈折率は1.463であった。
【0038】
上記で合成された水系ラテックス(B−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2,Rohm and Haas社製))25部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(B−2)を得た。
【0039】
この精製された水系ラテックス(B−2)に、7.35部の脱イオン水に溶解したテトラブチルアンモニウムブロミド0.15部を攪拌しながら添加し、添加10分後、メチルイソブチルケトン150部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、一次粒子を維持した非水系微粒子分散体(B−3)を得た。生成物(B−3)は固形分40.0%であった。
【実施例3】
【0040】
ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウムを0.2部、重炭酸ナトリウム0.03部用いた外は、実施例2と同様の操作により、固形分34.1%、平均粒子径351nm、微細樹脂粒子の屈折率は1.458の水系ラテックス(C−1)を得、同様にイオン性不純物除去処理を施した後、有機溶媒への転相処理を行って非水系微粒子分散体(C−3)を得た。生成物(C−3)の固形分は40.0%、平均粒子径353nm、屈折率1.457であった。
〔比較例1〕
【0041】
実施例2と同様に合成した生成物B−1(平均粒子径103nm)をスプレードライにより凝集した粉体として取り出し、メチルイソブチルケトンに固形分40.0%になるように調整し添加した。その後ホモジナイザーにより分散させ非水系微粒子分散体Dを得た。得られた非水系微粒子分散体の平均粒子径は225nmであり、顕微鏡で観察すると、単粒が2個以上凝集した塊状粒子がかなりの割合で存在するのが確認され、且つ1000nm以上の粒子径を有する粒子が、少量混入していた。
〔比較例2〕
【0042】
SiO(平均粒子径98nm、屈折率1・463)をメチルイソブチルケトンに固形分40.0%になるように調整し添加した。その後ホモジナイザーにより完全に分散させ非水系微粒子分散体Eを得た。
【実施例4】
【0043】
反射防止組成物の形成
(1)熱硬化性含フッ素ポリマーであるオプスターJN7228(JSR(株)製、屈折率1.42)180部に、一次粒子を維持した非水系微粒子分散体B−3を10部、メチルイソブチルケトン150部を添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、低屈折率層用コーティング剤を調製した。透明な基板として高屈折率素材(屈折率1.65)であるポリエチレンテレフタレート(PET)を使用し、先に調製した低屈折率層用コーティング剤をスピンコートにより塗布し、110℃、10分の条件で硬化し、反射防止組成物を形成した。
(2)実施例2の非水系微粒子分散体B−3に換えて同量の比較例1、比較例2の非水系微粒子分散体D、非水系無機微粒子分散体Eを使用し、上記の方法により反射防止組成物を形成した。
【0044】
上記の通り形成した反射防止層の光学的性質を以下の方法で測定した。
【0045】
1.反射率
正反射ユニットを可視紫外分光器U−3410((株)日立製作所製)に装着し、550nmにおける片面反射率を測定した。
【0046】
2.光透過性
可視紫外分光器U−3410((株)日立製作所製)により、空気をリファレンスとして550nmにおける透過率を測定した。
【0047】
3.膜厚
反射防止層を被覆した基板を凍結破断した後、断面を走査電子顕微鏡により観察した。上記の測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、一次粒子を維持した非水系微粒子分散体を使用することで、水系ラテックスをスプレードライして一旦乾燥粉体とした後非水分散体とした試料D及び無機微粒子を使用した試料Eに比して優れた光透過性と低い反射率を有する反射防止組成物を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られる平均粒子径30〜500nmの非水系微粒子分散体は反射防止組成物、塗料、インキ、プラスチック、紙、繊維加工等へ、球状粒子形状、光学特性に関係するつや消し剤、顔料分散性向上、鱗片状粉体の粒子配向性制御、アンチブロッキング性、コンシステンシー、透明性、平滑性、接着性の制御等の目的で配合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系乳化重合法により平均粒子径30〜500nmの水性ラテックスを製造し、その微粒子表面を疎水性にする処理を施した後、非水溶媒を加えて相転移させる一次粒子を保持した非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項2】
水性ラテックスの微粒子表面を疎水性にする処理を施すと共に、水性ラテックスの脱イオン及び/又は脱乳化剤処理を行う請求項1記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項3】
微粒子表面を疎水性にする処理が、微粒子にカチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤のAl、Ba、Ca、Mg塩を接触させる方法である請求項1又は2記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項4】
微粒子表面を疎水性にする処理が、微粒子にアジピン酸系ポリエステル及びトリメリット酸トリアルキルと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のAl、Ba、Ca、Mg塩を接触させる処理である請求項1又は2記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項5】
微粒子がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ハロゲン化ビニル及び酢酸ビニルからなる単量体の少なくとも1種の単独重合体もしくは共重合体微粒子である請求項1又は2記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項6】
微粒子の表面が親水性アミノ基又はカルボキシル基を有するものである請求項1又は2記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項7】
非水溶媒が脂肪族鎖状、環状又は芳香族の炭化水素系、エステル、ケトン及びシリコーン系溶媒から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の非水系微粒子分散体の製造法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載された非水系微粒子分散体をバインダーと共に基板上またはフィルム上に塗布又は積層した反射防止板及び反射防止フィルム。


【公開番号】特開2007−177009(P2007−177009A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374661(P2005−374661)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【出願人】(594053590)日本光研工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】