説明

非水電解液電池

【課題】生産性に優れた非水電解液電池を提供する。
【解決手段】捲回群102の捲回軸芯L1方向の異なる端部に正極タブ群405及び負極タブ群406を有する扁平形捲回式の捲回群102と、正極タブ群405及び負極タブ群406を介して捲回群102と電気的に接続される正極集電板104及び負極集電板105と、捲回群102と正極集電板104及び負極集電板105を内蔵する電池缶101と、を備える非水電解液電池100であって、正極タブ群405及び負極タブ群406は、正極集電板104及び負極集電板105のそれぞれの被接合部に対して捲回群102の対向する扁平面へ向かう方向の同じ側に配置され、その姿勢で正極集電板104及び負極集電板105のそれぞれの被接合部に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液電池に関し、特に車両等に使用される高出力、高容量の非水電解液電池であって、扁平形や角形の扁平形捲回式リチウムイオン電池に適用される非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウム電池等の二次電池は、高い体積効率(エネルギ密度)と優れた充電受入性を有することから、例えばVTRカメラやノート型パソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源等に広く使用されてきた。また、自動車産業界においては、環境負荷低減を目的として、動力源を電池のみとする電気自動車(PEV)や、内燃機関と電池との両方を動力源とするハイブリッド電気自動車(HEV)への二次電池の適用が進められ、一部は既に実用化されている。
【0003】
ところで、PEVやHEVの電源には、単電池を多数個(例えば、40〜100個)直列ないし直並列に接続した電池モジュールが用いられている。この電池モジュールに使用される二次電池(単電池)は、一般に円柱形を呈しており、正極と負極をセパレータを介して捲回した電極群とこの電極群を浸潤する電解液とが円筒状電池容器に収容されて構成されている。また、この種の二次電池は、耐振性を向上させるために、電極群の捲回中心に中空円筒状の捲芯が配置され、この捲芯を捲回軸にして上記正極、負極、及びセパレータが捲回されている。さらに、大電流充放電を確保するために、正極及び負極の多数のタブは電極群の長手方向の異なる側面に形成されている。
【0004】
しかしながら、円柱形二次電池を単電池として電池モジュールを構成する場合には、二次電池同士の周面間に空隙が発生し、体積効率(エネルギ密度)を向上させることができない。
【0005】
そこで、近年、扁平状の電極群を電解液に浸潤させて扁平状の電池容器に収容する扁平形二次電池が提案されている。扁平形二次電池は、円柱形二次電池と比較して、積層配設可能な平面部(扁平面)を備えることから高い体積効率を有すると共に、同体積の円柱形二次電池と比べて表面積が大きくなることから放熱性能にも優れているという利点を有している。このような扁平形二次電池においては、正負極集電部材を平板状に構成して捲芯に固定すると共に、この平板状の正負極集電部材に正負極のタブをそれぞれ接合して、捲回群の正負極と正負極集電部材とを電気的に接続している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−146872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、扁平形二次電池を製造する際に、正負極集電部材に対する正負極のタブの位置によっては、正負極集電部材に対する正負極タブの接合時に捲回群を反転させる必要があり、生産効率が低下するといった問題が生じる。特許文献1に開示されている扁平形二次電池においても、正負極集電部材と正負極タブとの位置関係については一切考慮されておらず、例えば溶接等によって正負極集電部材に正負極のタブを接合する際に製造工数が増加してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、生産性に優れた非水電解液電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記する課題を解決するために、本発明に係る非水電解液電池は、捲回軸芯方向の両端部に正極リード及び負極リードを有する扁平形捲回式の電極捲回群と、前記正極リード及び前記負極リードを介して前記電極捲回群と電気的に接続される正極集電板及び負極集電板と、前記電極捲回群と前記正極集電板及び前記負極集電板を内蔵する電池缶と、を備える非水電解液電池であって、前記正極リード及び前記負極リードは、前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの被接合部に対して前記電極捲回群の対向する扁平面へ向かう方向の同じ側に配置され、その姿勢で該正極集電板及び該負極集電板のそれぞれの被接合部に接合されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正負極のリードが正極集電板及び負極集電板のそれぞれの被接合部に対して電極捲回群の対向する扁平面へ向かう方向の同じ側に配置されることで、例えば溶接等によって正極リード及び負極リードをそれぞれ正極集電板及び負極集電板に接合する際に、捲回群を反転等させることなく、正負極双方の集電体と集電板を接合することができる。また、正負極双方の集電体と集電板を一時に接合することができ、非水電解液電池の生産性を向上させることができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る非水電解液電池の実施例1の外観を示す全体斜視図。
【図2】実施例1の非水電解液電池の全体構成を示す分解斜視図。
【図3】実施例1の非水電解液電池の構成を示す図であり、(a)はその横断面図、(b)は図3(a)のA−A矢視図。
【図4】実施例1の非水電解液電池と正極集電板及び負極集電板の構成を示す図であり、(a)は実施例1の非水電解液電池の縦断面図、(b)は実施例1の正極集電板の正面図、(c)は実施例1の負極集電板の正面図。
【図5】実施例1の正極集電板の捲芯への取付工程を説明する拡大部分斜視図であり、(a)は正極集電板の回動前の状態を示す図、(b)は正極集電板の回動後の状態を示す図。
【図6】実施例1の非水電解液電池に適用される捲回群の基本構成を示す部分展開図。
【図7】実施例1の非水電解液電池の捲回群の基本構成を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその側面図。
【図8】実施例1の非水電解液電池の捲回群と正極集電板及び負極集電板の接合工程を説明する側面図。
【図9】本発明に係る非水電解液電池の実施例2に適用される捲回群の基本構成を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその側面図。
【図10】実施例2の正極集電板の捲芯への取付工程を説明する拡大部分斜視図であり、(a)は正極集電板の取付前の状態を示す図、(b)は正極集電板の取付後、且つ正極集電板に正極未塗工部を溶接した状態を示す図。
【図11】図10(b)のB−B矢視図であって、集電板の突出部に未塗工部を溶接した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る非水電解液電池の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[実施例1]
まず、図1〜9を参照して、本発明に係る非水電解液電池の実施例1について詳細に説明する。
【0015】
図1は、実施例1の非水電解液電池100の外観を示したものである。
【0016】
図示する非水電解液電池100は、電池缶101と該電池缶101に溶接された正極側封口板116を備えている。また、正極側封口板116は、注液栓107と開裂弁108Aを備え、正極側封口板116から突出した正極端子109はナット113Aによって該正極側封口板116に固定されている。なお、非水電解液電池100は、電池缶101の正極側封口板116とは反対側に負極側封口板103を備えている(図2参照)。
【0017】
図2は、実施例1の非水電解液電池100の全体構成を分解して示したものである。以下、実施例1の非水電解液電池100の組立工程の一例について、図2を参照して説明する。
【0018】
まず、横断面形状が扁平な長方形、長円形もしくは角形の電池缶101を予め作製する。また、正極集電板104と負極集電板105に、それぞれ正極電極端子109と負極端子110を溶接等で接続しておく。なお、正極集電板104と負極集電板105にはそれぞれ開口部602A,602Bが形成されており、これがセルの内圧上昇時の排気経路となっている。
【0019】
次いで、正極集電板104と負極集電板105に、捲回群(電極捲回群)102の正極タブ群405と負極タブ群406をそれぞれ溶接し、正極集電板104と負極集電板105を所定の軸芯の周りに回動させ、捲芯404の捲回軸芯方向の異なる端部に形成された捲芯開口部407に正極集電板104と負極集電板105の集電板凸部603,604を嵌合して、捲回群102が捲回された捲芯404に正極集電板104及び負極集電板105を固定する(図5参照)。
【0020】
次に、正負極双方において、電極用開口部303A,303Bとガス放出用開口部302A,302Bを備え、樹脂成型によって作製された絶縁カバー111A,111Bを正極集電板104と負極集電板105に載置し、捲回群102と正極集電板104及び負極集電板105と絶縁カバー111A,111Bとを一体として電池缶101の内部に挿入する。
【0021】
次に、正極側封口板116の内側に正極端子109の樹脂製ガスケット112Aを取り付け、負極側封口板103の内側に負極端子110の樹脂製ガスケット112Bを取り付けて、正極側封口板116と負極側封口板103にて電池缶101の両端部を封口し、この正極側封口板116と負極側封口板103を電子ビーム又はレーザで電池缶101に溶接して固定する。ここで、負極側封口板103には、電極端子用開口部304Bが形成されると共に、その中央部には開裂弁108Bが形成されている。また、正極側封口板116には、負極側封口板103に形成されたのと同様の電極端子用開口部304Aや開裂弁108Aが形成されると共に、電解液注入用の注液孔301が形成されている。
【0022】
次に、正極側封口板116と負極側封口板103の外側に樹脂製のガスケット115A,115Bを取り付けて、ナット113A,113Bによって固定する。
【0023】
最後に、低湿度環境下で正極側封口板116の注液孔301から所定量の電解液を電池内部に注入した後、注液栓107で注液孔301を封止して非水電解液電池の組立を完了する。
【0024】
図3は、非水電解液電池100の内部構造図(展開図)を示したものである。図3(a)はその捲回群102の捲回中心平面P1における横断面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A矢視図であって、平面P1に垂直な平面における縦断面図である。
【0025】
図3(a)に示すように、非水電解液電池100は、横断面形状が扁平な長方形、長円形もしくは角形の電池缶101の内部に電解液と共に捲回群102を収容し、電池缶101の両端部を正極側封口板116と負極側封口板103で封口して構成されている。ここで、電池缶101と正極側封口板116と負極側封口板103は、アルミニウム製もしくはステンレス製のものが使用されている。
【0026】
また、電池100の幅方向(捲回群102の捲回方向)の同じ側の電池缶101の両端部には、アルミニウム製の正極端子109及び銅製の負極端子110が、正極側封口板116及び負極側封口板103から突出して形成されている。この正極端子109と負極端子110は、それぞれアルミニウム製の正極集電板104及び銅製の負極集電板105に溶接等で接続されており、さらに、この正極集電板104と負極集電板105は、捲回群102が捲き付けられた筒状又は板状の捲芯404に嵌合されている(図5参照)。この捲芯404は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いて樹脂成型によって作製される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等を適用することができ、熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等を適用することができるものの、これらは高熱耐久性を有する樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0027】
また、負極側封口板103には、その中央部に開裂弁108Bが形成されている。さらに、正極側封口板116には、負極側封口板103に形成されたのと同様の開裂弁108Aに加えて注液孔301が形成され、この注液孔301は注液栓107によって封止されている。
【0028】
正極側封口板116と正極集電板104との間には、正極端子109および開裂弁108Aに対応する位置が開口している絶縁カバー111Aが、正極集電板104を覆うようにして配置されている。また、負極側封口板103と負極集電板105との間には、負極端子110および開裂弁108Bに対応する位置が開口している絶縁カバー111Bが、負極集電板105を覆うようにして配置されている。また、樹脂製のガスケット112A,112Bがそれぞれ、正極端子109及び負極端子110の電池缶101の内側(正極側封口板116及び負極側封口板103の内側)に設けられ、ガスケット115A,115Bがそれぞれ、正極端子109及び負極端子110の電池缶101の両側の外側(正極側封口板116及び負極側封口板103の外側)に設けられており、ナット113A,113Bによってそれらは正極側封口板116及び負極側封口板103の外側から固定されている。ここで、絶縁カバー111A,111Bおよび2種類のガスケット112A,112B,115A,115Bは樹脂成型によって作製されることが好ましく、その形成素材は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等を適用することができ、熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等を適用することができるものの、捲芯404と同様、これらの形成素材も高熱耐久性を有する樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0029】
さらに、正極タブ群405と負極タブ群406は、図3(b)に示すように、扁平形の捲回群102の両端部、且つ捲回群102の捲回中心平面P1で分割される領域の同じ側の領域(図中、下方の領域)に突出して形成されており、正極集電板104と負極集電板105の平板部204,205にそれぞれ束ねて溶接されている。なお、正極タブ群405と負極タブ群406が形成された領域とは反対側の領域(図中、上方の領域)には、電池内のガスを排出するガス排出経路114A,114Bが形成されている。
【0030】
このように、正極タブ群405と負極タブ群406の双方が、捲回群102の捲回中心を通る平面P1で分割される領域の同じ側の領域に存在する捲回群102の捲回部202の平面部(扁平面)202C側に設けられることで、正極タブ群405と負極タブ群406のそれぞれを正極集電板104と負極集電板105のそれぞれの被接合部に溶接する際に、正負極双方の集電体(タブ群)と集電板を一時に溶接することができ、非水電解液電池100の生産性を高めることができる。
【0031】
ここで、実施例1に適用される正極集電板104と負極集電板105の構成について、図4を参照して具体的に説明する。図4(a)は実施例1の非水電解液電池の縦断面図を示したものであり、図4(b)は実施例1の正極集電板の正面図、図4(c)は実施例1の負極集電板の正面図を示したものである。
【0032】
まず、図4(b)に示すように、正極集電板104は略長円形を呈しており、この平板部204の外形は捲回群102の捲回部202の長円形の端面202Aの外形よりも小さく、捲芯404の端面404Aの外形よりも大きく、さらに、その厚さは0.5〜5mmである。また、正極集電板104の端部には正極端子109が溶接等によって接合されている。さらに、正極集電板104の平板部204の捲回群102に対向する面には、二つの集電板凸部603が設けられている。また、この正極集電板104には開口部602Aが形成されており、この開口部602Aは、電池セルの開裂弁108Aに対して30%〜200%の開口面積を有している。
【0033】
上記正極集電板104は、図4(a)に示すように、捲回群102の捲回中心を通る平面P1に対して平板部204が略垂直となるように配置されており、正極集電板104に設けられた二つの集電板凸部603が捲芯404と嵌合される。なお、正極タブ群405は、正極集電板104の開口部602Aの下方(正極集電板104の幅方向の側部のうち開口部602Aが形成された側部とは反対側の側部)に設けられたタブ溶接部601Aに溶接等によって接合されている。
【0034】
上記正極集電板104と同様、図4(c)に示すように、負極集電板105も略長円形を呈しており、この平板部205の外形は捲回群102の捲回部202の長円形の端面202Bの外形よりも小さく、捲芯404の端面404Bの外形よりも大きく、さらに、その厚さは0.5〜5mmである。また、負極集電板105の端部には負極端子110が溶接等によって接合されている。さらに、負極集電板105の平板部205の捲回群102に対向する面には、二つの集電板凸部604が設けられている。なお、この負極集電板105には開口部602Bが形成されており、この開口部602Bは、電池セルの開裂弁108Bに対して30%〜200%の開口面積を有している。
【0035】
上記負極集電板105は、図4(a)に示すように、捲回群102の捲回中心を通る平面P1に対して平板部205が略垂直となるように配置されており、負極集電板105に設けられた二つの集電板凸部604が捲芯404と嵌合される。なお、負極タブ群406は、負極集電板105の開口部602Bの下方(負極集電板105の幅方向の側部のうち開口部602Bが形成された側部とは反対側の側部)に設けられたタブ溶接部601Bに溶接等によって接合されている。
【0036】
図5は、図3及び図4で示す正極集電板104の捲芯404への取付工程を説明したものであり、図5(a)は正極集電板の回動前の状態、図5(b)は正極集電板の回動後の状態を示したものである。なお、負極側においても、以下と同様の工程を行うことにより、負極集電板を捲芯に取り付けることができる。
【0037】
まず、図5(a)に示すように、正極集電板104の平板部204を捲回群102の捲回部202の平面部(扁平面)202Cと略平行となるように配置して、正極タブ群405の一部と正極集電板104の平板部204を溶接する。
【0038】
次いで、正極集電板104の長手方向に伸びる所定の軸芯の周りに正極集電板104を略90°回動させ、図5(b)に示すように、正極集電板104の平板部204を捲回群102の捲回部202の平面部(扁平面)202Cに対して略垂直に配置する。そして、正極集電板104の開口部602Aの両端近傍に配置された集電板凸部603を捲芯404の開口部407に嵌合させて、正極集電板104を捲芯404に接続固定する。
【0039】
このようにして、捲回群102の一方の端部には正極タブ群(正極電極箔)405が束ねて溶接され、他方の端部には負極タブ群(負極電極箔)406が束ねて溶接されると共に、一方の集電板の溶接部は、捲回群102の捲回中心を通る平面P1に対して一方の側の捲回群102の平面部(扁平面)202C側に形成され、他方の集電板の溶接部は、捲回群102の捲回中心平面P1に対して一方の側と同じ側の捲回群102の平面部(扁平面)202C側に形成される。
【0040】
なお、本図においては、理解を明確とするために正極タブ群405を設計値よりも長く描いているが、この正極タブ群405の長さは、正極集電板凸部603を捲芯404の開口部407に嵌合できれば適宜変更することができ、即ち図示よりも短くてもよい。
【0041】
次いで、図6〜8を参照して、正負極のタブ群と正負極の集電板との接合工程について説明する。
【0042】
図6及び図7は、実施例1の非水電解液電池に適用される捲回群102の基本構成を示したものである。
【0043】
図6で示す捲回群(電極捲回群)102は、アルミニウム箔の両面に正極合剤を塗布した帯状の正極板401と銅箔の両面に負極合剤を塗布した帯状の負極板402を2枚のセパレータ403を介して重ね合わせ、これらを捲芯404に捲回して構成されている。
【0044】
また、正極板401の幅方向の片側端部では、正極合剤が塗布されずにアルミニウム箔が露出しており、さらにその片側端部には、複数の短冊状の正極タブ(正極リード片)からなる正極タブ群405が形成されている。一方で、負極板402の幅方向の片側端部でも、負極合剤が塗布されずに銅箔が露出しており、その片側端部には、複数の短冊状の負極タブ(負極リード片)からなる負極タブ群406が形成されている。すなわち、捲回群102の捲回軸芯L1方向の一方の端部に正極タブ群405が突出して形成され、他方の端部に負極タブ群406が突出して形成されている。なお、正極タブ群405及び負極タブ群406それぞれのタブの幅は2mm〜10mmであることが好ましく、長さは15mm〜50mmであることが好ましい。
【0045】
図7は、図6で示す捲回群102の捲回後の基本構成を示したものであり、図7(a)は捲回群102の上面図、図7(b)は捲回群102の側面図を示したものである。
【0046】
図7(a)に示すように、捲回群102の一方の端部(図中、左側)には、正極タブ群405が突出して形成され、他方の端部(図中、右側)には、負極タブ群406が突出して形成されている。なお、捲回群102の捲回部202の平面部(扁平形捲回群の扁平面)202Cから捲回軸芯L1方向へ突出する正極タブ群405の幅A1と負極タブ群406の幅A2は、捲芯404の幅Bよりも相対的に狭くすることが好ましい。
【0047】
また、上記正極タブ群405及び負極タブ群406は、図7(b)に示すように、捲回群102の捲回中心を通る平面P1上に位置する捲芯404に対して、前記平面P1で分割される領域の同じ側(図中、下側の領域)に設けられている。
【0048】
図8は、図7で示す捲回群102と正極集電板104及び負極集電板105の接合工程を説明したものである。
【0049】
ここで、正極集電板104と負極集電板105のそれぞれの平板部(被接合部)204,205の外形は、捲回群102の捲回部202の長円形の端面202A,202Bの外形よりも小さく、捲芯404の端面404A,404Bの外形よりも大きい(図5参照)。また、正極集電板104と負極集電板105それぞれの厚さは0.5〜5mmであり、それぞれ略長円形の板から構成されている。なお、正極集電板104の端部には正極端子109が溶接等で固定され、負極集電板105の端部には負極端子110が溶接等で固定されている(図2参照)。
【0050】
捲回群102と正極集電板104及び負極集電板105を接合するに当たり、図8に示すように、まず、正極集電板104と負極集電板105の平板部(被接合部)204,205が捲回群102の平面部(扁平面)202Cと略平行となるように、溶接アンビル502A,502Bの上に正極集電板104及び負極集電板105を配置する。次いで、正極タブ群405と負極タブ群406の一部(被接合部)が、正極集電板104と負極集電板105の平板部204,205の上に配置されるように捲回群102を配置する。次いで、タブ溶接部601A,601Bをそれぞれ、正極タブ群405と負極タブ群406の被接合部の上に配置する。そして、溶接ホーン501Aにて正極集電板104の裏面側に配置されたタブ溶接部601Aを正極タブ群405と正極集電板104に押し付けて溶接する。また負極側においても、負極集電板105の裏面側に配置されたタブ溶接部601Bを溶接ホーン501Bにて負極タブ群406と負極集電板105に押し付けて溶接する。
【0051】
このように、正極タブ群405と負極タブ群406は、捲回群102の捲回中心を通る平面P1上に位置する捲芯404に対して、前記平面P1で分割される領域の同じ側で形成されており、正極タブ群405と負極タブ群406はそれぞれ、正極集電板104と負極集電板105のそれぞれの平板部204,205に対して捲回群102の扁平面に向かう方向の同じ側に配置されて正極集電板104及び負極集電板105と溶接される。すなわち、正負極双方において、溶接ホーン501Aと溶接ホーン501Bを捲回群102の捲回中心を通る平面P1に対して同じ側からタブ溶接部601A,601Bに当接させることができ、溶接アンビル502Aと溶接アンビル502Bを捲回群102の捲回中心平面P1に対して同じ側から正極集電板104と負極集電板105に当接させることができる。したがって、捲芯404の平面(捲回群102の捲回中心を通る平面P1)に平行な平面内で捲回群102を回転又は移動させることによって、正負極双方で集電体(タブ群)と集電板とを溶接することが可能となり、非水電解液電池の生産性を向上させることができる。さらに、溶接ホーン501Aと溶接ホーン501B、溶接アンビル502Aと溶接アンビル502Bとが一体として構成されていれば、正負極双方において集電体(タブ群)と集電板とを一時に溶接することが可能となり、より一層非水電解液電池の生産性を向上させることができる。
【0052】
なお、上記実施例1においては、複数のリード片(タブ)を用いて正極タブ群405及び負極タブ群406を形成する形態について説明するが、正極リード及び負極リードはこれに限定されるものではなく、例えば捲回群の扁平面に平行、且つ分割されていない(一連の)リード片を用いることもできる。
【0053】
[実施例2]
次に、図9〜11を参照して、本発明に係る非水電解液電池の実施例2について詳細に説明する。実施例2は、実施例1とは異なる集電構造を有するものの、実施例2の集電構造以外の構造については実施例1と同様であるため、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0054】
図9は、実施例2の非水電解液電池に適用される捲回群の基本構成を示したものであり、図9(a)はその上面図、図9(b)はその側面図を示したものである。
【0055】
図9(a)及び図9(b)に示すように、実施例2においては、実施例1の正極タブ群405及び負極タブ群406に代えて、捲回群1100の一方(図中、左側)の端部に、正極合剤が塗工されていない正極未塗工部1101が突出して設けられ、他方(図中、右側)の端部に、負極合剤が塗工されていない負極未塗工部1102が突出して設けられている。
【0056】
図10は、実施例2の非水電解液電池に適用される正極集電板1103の捲芯404への取付工程を説明したものであり、図10(a)はその正極集電板の取付前の状態、図10(b)は正極集電板の取付後、且つ正極未塗工部を正極集電板に溶接した状態を示したものである。なお、負極側においても、以下と同様の工程を行うことにより、負極集電板を捲芯に取り付けることができる。
【0057】
図10(a)に示すように、正極集電板1103は、厚さが0.5〜5mmのアルミ製の略長円形の平板部1203と、この平板部1203の略中央部から平板部1203に対して垂直方向に突出する略長方形の突出部1204とから大略構成されている。また、突出部1204の両端部には、捲芯404に設けられた開口部407と嵌合される二つの凸部1104が設けられている。また、実施例1と同様に、正極集電板1103の端部には正極端子109が溶接等で固定され、その長手方向の略中央部には、電池セル内のガスを排出するための開口部602Aが形成されている。
【0058】
正極集電板1103を捲芯404に取り付けるに当たり、まず、図10(a)に示すように、正極集電板1103の平板部1203が捲回群1100の捲回部1200の端面1200Aと略平行になるように正極集電板1103を配置する。
【0059】
次いで、正極集電板1103を矢印X方向に移動させ、図10(b)に示すように、正極集電板1103の二つの凸部1104を捲芯404の開口部407に嵌合させて固定する。このとき、正極未塗工部1101と負極未塗工部1102のそれぞれの被接合部は、正極集電板1103と負極集電板1105それぞれの突出部(被接合部)1204,1206に対して捲回群1100の扁平面1200Cに向かう方向の同じ側に配置されている(図11参照)。そして、捲回中心となる平面P1に対して片側の正極未塗工部1101を正極集電板1103の突出部(被接合部)1204側に押し付け変形して正極集電板1103の突出部1204に接触させ、正極未塗工部1101の一部と正極集電板1103の突出部1204をレーザ溶接等で接合する。負極側においても同様に、捲回中心平面P1に対して正極側と同じ側の負極未塗工部1102と負極集電板1105の突出部(被接合部)1206を接合する。
【0060】
このように、捲回群1100の捲回軸芯方向の異なる端部で正極未塗工部1101と負極未塗工部1102がそれぞれ束ねて溶接される場合において、正負極双方の溶接部が捲回群1100の捲回中心を通る平面P1で分割される領域の片側に配置され、すなわち、正極未塗工部1101と負極未塗工部1102のそれぞれの被接合部が、正極集電板1103と正負極集電板1105それぞれの突出部(被接合部)1204,1206に対して捲回群1100の扁平面1200Cに向かう方向の同じ側に配置されることで、図11に示すように、正極未塗工部1101と正極集電板1103、負極未塗工部1102と負極集電板1105とが、捲回群1100の捲回中心平面P1で分割される領域の片側で接合されることとなる。したがって、溶接等によって正極未塗工部1101と負極未塗工部1102を正極集電板1103と負極集電板1105のそれぞれの被接合部に接合する際に、正負極双方の集電体(未塗工部)と集電板を一時に接合することができ、非水電解液電池の生産性を効果的に高めることができる。
【0061】
なお、実施例2においては、分割されていない(一連の)正極未塗工部1101及び負極未塗工部1102をそれぞれ正極リード及び負極リードとする形態について説明するが、正極リード及び負極リードはこれに限定されるものではなく、複数のリード片(タブ)を用いて正極リード(正極タブ群)及び負極リード(負極タブ群)を形成してもよい。
【0062】
なお、本発明は上記した実施例1,2に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例1,2は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例1,2の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0063】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 非水電解液電池
101 電池缶
102,1100 捲回群(電極捲回群)
103 負極側封口板
104,1103 正極集電板
105,1105 負極集電板
107 注液栓
108A,108B 開裂弁
109 正極端子
110 負極端子
111A,111B 絶縁カバー
112A,112B ガスケット
113A,113B ナット
114A,114B ガス排出経路
115A,115B ガスケット
116 正極側封口板
202,1200 捲回部
204,205 平板部(被接合部)
301 注液孔
302A,302B ガス放出用開口部
303A,303B 電極用開口部
304A,304B 電極用開口部
401 正極板
402 負極板
403 セパレータ
404 捲芯
405 正極タブ群(正極リード)
406 負極タブ群(負極リード)
407 捲芯開口部
501A,501B 溶接ホーン
502A,502B 溶接アンビル
601A,601B タブ溶接部
602A,602B 開口部
603,604 集電板凸部
1101 正極未塗工部(正極リード)
1102 負極未塗工部(負極リード)
1104 凸部
1203,1205 平板部
1204,1206 突出部(被接合部)
L1 捲回軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲回軸芯方向の両端部に正極リード及び負極リードを有する扁平形捲回式の電極捲回群と、前記正極リード及び前記負極リードを介して前記電極捲回群と電気的に接続される正極集電板及び負極集電板と、前記電極捲回群と前記正極集電板及び前記負極集電板を内蔵する電池缶と、を備える非水電解液電池であって、
前記正極リード及び前記負極リードは、前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの被接合部に対して前記電極捲回群の対向する扁平面へ向かう方向の同じ側に配置され、その姿勢で該正極集電板及び該負極集電板のそれぞれの被接合部に接合されていることを特徴とする非水電解液電池。
【請求項2】
前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの被接合部は、該正極集電板及び該負極集電板の平板部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液電池。
【請求項3】
前記正極集電板及び前記負極集電板のそれぞれの被接合部は、該正極集電板及び該負極集電板の平板部の中央部から突出する突出部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液電池。
【請求項4】
前記正極リード及び前記負極リードは、それぞれ電極捲回群の捲回軸芯方向の異なる端部に設けられた複数のリード片として形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の非水電解液電池。
【請求項5】
前記正極リードは、電極捲回群の捲回軸芯方向の一方の端部に設けられた正極未塗工部として形成され、前記負極リードは、電極捲回群の捲回軸芯方向の他方の端部に設けられた負極未塗工部として形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の非水電解液電池。
【請求項6】
前記正極未塗工部及び前記負極未塗工部は、前記正極集電板及び前記負極集電板の前記突出部側に押し付け変形して接合されていることを特徴とする請求項3に従属する請求項5に記載の非水電解液電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−230846(P2012−230846A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99142(P2011−99142)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代自動車用高性能蓄電システム(高出力可能な高エネルギー密度型リチウムイオン電池の研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】