説明

非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法

【課題】正極電極が負極電極とを重ね合わせる非水電解質二次電池について,負極電極から析出する金属の発生又は負極電極から析出する金属の成長又は負極電極から析出する金属と正極電極の接触を防止することのできる,非水電解質二次電池,及びその製造方法を提供する。
【解決手段】負極活物質層の形成された負極電極と,少なくとも一部で前記負極電極とセパレータを介して対向する正極電極とを具備し,前記正極電極は,前記負極電極と対向し,正極活物質層と負極活物質層が対向している領域である対向領域と,前記正極電極から対向領域の外部へ向かって延びる正極タブ領域とを備え,前記正極電極と前記負極電極とは,前記正極活物質層が必ず前記対向領域となるように,重ねられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非水電解質二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能な二次電池として,非水電解質二次電池が知られている。特に,リチウムイオン二次電池は,高エネルギー密度,高電池容量を有することから注目を集めている。非水電解質二次電池は,少なくとも一部の正極集電体上に正極活物質層が設けられた正極電極と,少なくとも一部の負極集電体上に負極活物質層が設けられた負極電極とが,セパレータを介して対向した構造を有している。
【0003】
非水電解質二次電池において,充電中には,電解質中の金属イオンが負極電極上に析出することがある。例えば,リチウムイオン二次電池では,樹枝(デンドライト)状のリチウムとして析出することがある。負極電極上に析出した金属(例えば,樹枝状リチウム)が対向する正極電極に接触すると,内部短絡や化学反応により電池が発熱する。この発熱により,電池の温度が上昇し,最悪な場合は電池が破裂・発火に至る可能性がある。
【0004】
内部短絡の防止を目的とした技術が特許文献1(特開平1−128371号公報)に記載されている。特許文献1の非水電解液二次電池は,負極板の幅が正極板の幅よりも大であることを特徴としている。この特許文献1には,負極板の幅を正極板の幅よりも大きくすることにより,負極板表面から脱離するリチウムのデンドライト発生が抑制されて内部短絡が防止される,と記載されている。
【0005】
また,特許文献2(特開平3−129678号公報)には,正極の幅がリチウム負極の幅よりも広く形成されるとともに,リチウム負極の縁部に対面する正極の縁部を,その厚みと同じ厚みの絶縁性の部材で被覆したことを特徴とする非水電解液二次電池が記載されている。この特許文献2には,リチウム負極の縁部には実質的に正極が存在しないのと同様の状態となり,この結果,この部分は充電時における反応に利用されず,これによってデンドライトの発生が抑制される,と記載されている。
【0006】
また、特許文献3(特開平3−152881号公報)には、負極の周縁部が相対する正極の周縁部よりも必ず外側にあることを特徴とする角型リチウム二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−128371号公報
【特許文献2】特開平3−129678号公報
【特許文献3】特開平3−152881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常,非水電解質二次電池中において,正極電極と負極電極とは,概ね一致する形状に作成され,概ね電極末端同士の位置を揃えて対向している。但し,完全に位置を揃えて対向しているのではなく,正極電極が負極電極からはみ出し正極電極が負極電極と対向していない領域を有していることもある。このような非水電解質二次電池を充電する場合,正極電極から供給される金属イオンが負極電極の許容する電気容量に対して部分的に過剰となり,負極電極に金属が析出することがある。
【0009】
図1A,図1B,図1C,図2A,図2B及び図2Cは,非水電解質二次電池が正極電極と負極電極とが対向していない領域を有している場合に負極電極上に金属が析出する様子を説明するための説明図である。図1A〜図1Cに示されるように,この非水電解質二次電池中においては,正極電極101と負極電極102とがセパレータ103を介して対向して配置されている。尚,正極電極101と負極電極102との間は非水電解質で満たされている。正極電極101は少なくとも一部で負極電極102からはみ出ており,負極電極102と対向する対向領域と,負極電極102と対向していない非対向領域とを有している。このような非水電解質二次電池を充電すると,正極電極から電解質中へ金属イオンが供給され,非水電解質中の金属イオンは負極電極102側へ移動する。この際,負極電極の少なくとも一部では負極容量に対して金属イオンが過剰になり,負極電極102の端部に金属104が析出することがある。そのため,負極電極102の端部では金属104が発生又は成長し易い。その結果,図2A,図2B及び図2Cに示されるように,金属104がセパレータ103を貫通して正極電極101と接触してしまうことがある。負極電極102に析出した金属104が正極電極101と接触すると,既述のように発熱する。
【0010】
また、正極電極や負極電極には、電力を外部へ取り出すために、タブが設けられることがある。正極電極と負極電極とは、通常、タブ同士が重ならないように、重ねられる。このタブは、その大部分が、正極集電体だけによって形成される。但し、タブの一部には、製造上の都合により、正極活物質層が形成されることがある。そのため、このタブの一部において、正極電極が負極電極からはみ出してしまうことがある。
【0011】
従って,本発明の目的は,負極電極から析出する金属の発生,又は負極電極から析出する金属の成長,又は負極電極から析出する金属と正極電極の接触を防止することのできる,非水電解質二次電池,及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に,[発明を実施するための形態]で使用する括弧付き符号を用いて,課題を解決するための手段を説明する。これらの符号は,[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであり,[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0013】
本発明に係る非水電解質二次電池は,負極電極(2)と,セパレータ(3)を介して,少なくとも一部において負極電極(2)と対向する正極電極(1)とを具備する。正極集電体(1−1)上の正極活物質層(1−2)は,セパレータ(3)を介して負極集電体(2−1)上の負極活物質層(2−2)と対向する対向領域(1−3)を有している。正極集電体(1−1)は,対向領域(1−3)の外部へ向かって延びる正極タブ(11)を有している。正極タブ(11)の少なくとも一部には、正極活物質層(1−2)が設けられている。正極活物質層(1−2)は必ず対向領域(1−3)となるように,重ねられている。この発明によれば,全ての正極活物質層(1−2)が負極活物質層(2−2)と対向しているので,正極電極が負極電極からはみ出す領域は存在しない。従って,充電時に,負極電極(2)から析出する金属(4)の発生を防止することができる。
【0014】
正極活物質層(1−2)の端部と負極活物質層(2−2)の端部とが対向するか,又は,正極活物質層(1−2)の端部が負極活物質層(2−2)の端部の内側に対向するように,重ねられている。
【0015】
更に,少なくとも一部において負極活物質層(2−2)の端部と対向する正極活物質層(1−2)と,正極電極(1)の一部を被覆する電気絶縁体又は非イオン導電体(6)を具備することが好ましい。
この発明によれば,万が一,正極活物質層(1−2)の端部が負極活物質層(2−2)の端部からはみ出したとしても,電気絶縁体又は非イオン導電体(6)により一部分の負極電極が許容する電気容量に対して過剰の金属イオンが供給されることを防止できる。
【0016】
上記の非水電解質二次電池が,更に,正極電極(1)と負極電極(2)との間に介する空孔を有するセパレータ(3)を具備する。このとき,セパレータ(3)は正極タブ(11)に対向する部分の全域で,空孔が閉塞されていることが好ましい。
この発明によれば,負極電極(2)の端部に金属(4)が析出したとしても,析出した金属(4)がセパレータ(3)の空孔が閉塞されている部分により遮断される。従って,万が一,正極活物質層(1−2)の端部が負極活物質層(2−2)の端部からはみ出したとしても,負極電極(2)から析出する金属(4)の成長と負極電極(2)から析出する金属(4)と正極電極(1)の接触を防止できる。
【0017】
本発明に係る非水電解質二次電池の製造方法は,正極集電体(1−1)上に,正極活物質層(1−2)を形成する工程と,当該工程の後に,正極集電体(1−1)を、正極集電体(1−1)と正極集電体(1−1)から外部へ向かって延びる正極タブ(11)とを含む形状となるように切断して,正極電極(1)を作成する工程と,負極集電体上に、負極活物質層を形成する工程と、当該工程の後に、負極活物質層と負極集電体と負極タブとを含む形状に切断して負極電極(2)を作製する工程と、正極電極(1)と負極電極(2)とがセパレータを介して対向するように交互に積層する工程とを具備する。正極電極(1)を作製する工程は、正極タブの少なくとも一部に正極活物質層が設けられるように、切断する工程を含む。積層する工程は,正極集電体(1−1)上の正極活物質層(1−1)が,セパレータを介して負極集電体上の負極活物質層と対向する対向領域となるように,正極電極(1)と負極電極(2)を,重ねる工程を備えている。
【0018】
積層する工程は,正極活物質層(1−2)の端部と負極活物質層(2−2)の端部とが,対向するか,又は,正極活物質層(1−2)の端部が負極活物質層(2−2)の端部の内側に対向するように,重ねる工程を備えている。
【0019】
正極電極(2)を作製する工程は,第1辺(41)と第2辺(42)の間に正極活物質層(1−2)が設けられた領域である余剰領域(1−5)が被覆されるように,電気絶縁体又は非イオン導電体(6)を配置する工程を備えていることが好ましい。
【0020】
上述の非水電解質二次電池の製造方法は,更に,負極電極(2)の両面に空孔を有するセパレータ(3)を配置し,セパレータ(3)と負極電極が対向していない領域の少なくとも一部を空孔が閉塞されるように熱溶解,熱溶着又は溶剤塗布して空孔閉塞部(32)を形成する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,正極電極が負極電極からはみ出した部分から負極電極の一部分における電気容量に対して金属イオンが過剰に電解液中に供給されることを抑制し,負極電極から析出する金属の発生又は負極電極から析出する金属の成長又は負極電極から析出する金属と正極電極の接触を防止することができる,非水電解質二次電池,及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】負極電極からの金属の析出を説明するための説明図である。
【図1B】負極電極からの金属の析出を説明するための説明図である。
【図1C】負極電極からの金属の析出を説明するための説明図である。
【図2A】負極電極と正極電極とが金属の析出により接触することを説明するための説明図である。
【図2B】負極電極と正極電極とが金属の析出により接触することを説明するための説明図である。
【図2C】負極電極と正極電極とが金属の析出により接触することを説明するための説明図である。
【図3A】電極積層体を示す斜視図である。
【図3B】電極積層体を示す斜視図である。
【図3C】電極積層体を示す斜視図である。
【図3D】電極積層体を示す斜視図である。
【図4A】負極電極とセパレータとを概略的に示す平面図である。
【図4B】負極電極とセパレータとを概略的に示す平面図である。
【図4C】負極電極とセパレータとを概略的に示す平面図である。
【図5A】正極電極を概略的に示す平面図である。
【図5B】正極電極を概略的に示す平面図である。
【図5C】正極電極を概略的に示す平面図である。
【図6A】正極電極の製造方法を説明するための説明図である。
【図6B】正極電極の製造方法を説明するための説明図である。
【図6C】正極電極の製造方法を説明するための説明図である。
【図7A】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図7B】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図7C】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図8A】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図8B】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図8C】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図9A】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図9B】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図9C】正極活物質層と負極活物質層との位置関係を示す説明図である。
【図10】第1の実施形態の非水電解質二次電池を充電したときの充電時間と温度との関係を示すグラフである。
【図11】比較用の非水電解質二次電池を充電したときの充電時間と温度との関係を示すグラフである。
【図12】第2の実施形態の非水電解質二次電池を概略的に示す断面図である。
【図13A】二枚のシートの接着部分を拡大して示す図である。
【図13B】二枚のシートの接着部分を拡大して示す図である。
【図14A】第3の実施形態におけるセパレータの空孔閉塞部を拡大して示す図である。
【図14B】第3の実施形態におけるセパレータの空孔閉塞部を拡大して示す図である。
【図14C】第3の実施形態におけるセパレータの空孔閉塞部を拡大して示す図である。
【図15A】第3の実施形態において金属が遮断される様子を説明するための説明図である。
【図15B】第3の実施形態において金属が遮断される様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下に,図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。本実施形態に係る非水電解質二次電池は,非水電解質(図示略)と接している電極積層体を備えている。図3A〜図3Dは,その電極積層体の構造の一例を概略的に示す斜視図である。その電極積層体は,複数の正極電極1と,複数の負極電極2とが交互に積層された構造体である。負極電極2と正極電極1とはセパレータ3を介して対向している。複数の正極電極1の各々には,正極タブ11が設けられている。複数の負極電極2の各々には,負極タブ21が設けられている。正極タブ11及び負極タブ21は,電極積層体の電力を外部に取り出すために設けられている。この電極積層体は,セパレータ3を介して正極電極1と負極電極2とを,交互に重ねて積層することにより得られる。
【0024】
正極電極1は,正極集電体1−1と,少なくとも一部の正極集電体上に形成された正極活物質層1−2とを備えている。正極集電体1−1の少なくとも一部において正極活物質層1−2の設けられたものを,以下,正極電極1と定義する。正極集電体1−1としては,例えばアルミニウム,クロム,モリブデン,ニッケル,鉄,チタン又はステンレス鋼などのこれらを含む合金が用いられる。また,正極活物質層1−2としては,例えば,LiCoNi1−x(0≦x≦1),LiNiO,LiMnNiCo1−x−y,LiCoNiAl1−x−y,LiFePO,LiVPOF,LiMnPO,LiCoPO,LiTiPO,LiAlO,LiMnO,LiMn,MnO,LiCoO,V,V13,Li,Cr,Cr,LiFeO,FeF,FeVOなどの金属酸化物,TiS,MoSなどの金属硫化物,有機硫黄系化合物,ポリアニリン,ポリピロール又はこれらが含まれる物質などが用いられる。
負極電極2は,負極集電体と2−1と,少なくとも一部の負極集電体上に形成された負極活物質層2−2とを備えている。負極集電体2−1の少なくとも一部において負極活物質層2−2の設けられたものを,以下,負極電極2と定義する。負極集電体2−1としては,例えば,銅や銅を含む合金が用いられる。負極活物質2−2としては,例えば,黒鉛系材料,易黒鉛化性炭素,難黒鉛化性炭素,CNTなどの炭素質材料,Nb,LiTi,スズ複合酸化物,SiOなどの酸化物,TiSi,Sn,Si,Li,Cu,Ni,La,Ce,Pr,Nb,Co又はこれらを含む合金などが用いられる。
【0025】
図4A〜図4Cは,負極電極2とセパレータ3の構成を示す平面図である。負極電極2は,外部へ向かって延びる負極タブ21を有している。セパレータ3の端部は負極電極2からはみ出すように配置されており,そのはみ出し部で溶着されている。但し,負極タブ21に対応する部分では,溶着されていない。
【0026】
セパレータ3は,正極電極1と負極電極2とを接触させないために設けられている。但し,非水電解質中の金属イオンは,セパレータ3を透過できなければならない。そのため,セパレータ3としては,微細な空孔を有する多孔性のものが用いられる。また,セパレータ3は,熱溶融性を有するものが用いられる。このようなセパレータ3の材質としては,例えば,ポリプロピレン,ポリエチレンなどの有機樹脂又はこれらの混合物や,前記有機樹脂や前記有機樹枝の混合物中にセラミックスなどの無機化合物を混合したものなどを用いることができる。
【0027】
図5A〜図5Cに示されるように,正極電極1には正極タブ11が設けられている。正極タブ11には,正極活物質層1−2が形成されている余剰領域1−5が設けられている。余剰領域1−5は,第1辺41と第2辺42との境界部分に設けられている。
【0028】
ここで,余剰領域1−5が形成される理由について説明するため,図6A〜図6Cを参照しつつ正極電極1の製造過程を説明する。
正極電極1を作成するにあたっては,まず,正極集電体1−1を用意する。そして,この正極集電体1−1の両面に正極活物質層1−2を形成する。図6A〜図6C中,正極活物質層1−2の設けられた部分が,正極電極予定部12と記載されている。また,正極集電体1−1上において正極活物質層1−2を設けられていない部分が,タブ予定部13と記載される。さらに,正極電極予定部12とタブ予定部13との境界が,第2辺42と記載される。
正極電極予定部12の形成後,正極タブ予定部13と正極電極予定部12を含む領域を切断し,正極電極1が得られる。ここで,正極タブ11には正極活物質層1−2が形成されている必要はない。逆に,対向領域1−3では確実に正極活物質層1−2が設けられている必要がある。従って,切断する際には,正極電極1の第1辺41が,第2辺42に重なるように切断することが理想的である。しかしながら,正極活物質層1−2を正極集電体1−1の両面の全く同じ位置に形成することは難しく,切断位置を精度良く制御することも難しい。そのため,これらの位置ずれ量を考慮して,第1辺41が,若干(例示;0〜5mm),正極電極予定部12の端部よりも正極活物質層1−2が設けられている側に位置するように,切断する。すなわち,第2辺42が正極タブ11を横切るように切断する。これにより,形成された正極電極1では,正極タブ11の一部にまで正極活物質層1−2が設けられていることになる。この正極タブ11において正極活物質層1−2の形成されている領域が,余剰領域1−5となる。すなわち,余剰領域1−5は,対向領域1−3に確実に正極活物質層を設けるためのマージンとして形成された領域である。
【0029】
尚,負極電極2も,正極電極2と同様に,負極集電体2−1上に負極活物質層2−2が形成された後,所定領域が打ち抜かれることによって製造される。
【0030】
続いて,図7A〜図7C,図8A〜図8C及び図9A〜図9Cを参照して,正極電極1と負極電極2との位置関係について説明する。図7A〜図7C,図8A〜図8C及び図9A〜図9Cは,正極電極1と負極電極2との位置関係を説明するための平面図である。尚,図7A〜図7C,図8A〜図8C及び図9A〜図9Cでは,説明の便宜上,セパレータの図示は省略されている。
【0031】
上述したような形状の正極電極1と負極電極2とを積層する場合,通常であれば,図7A〜図7Cに示されるように,正極タブ11以外の正極電極1と負極タブ21以外の負極電極2との端部同士が概ね揃えられる。また,正極タブ11と負極タブ21とは,互いに重ならないように配置される。従って,正極タブ11上に形成された余剰領域1−5は,負極集電体2−1上の負極活物質2−2と非対向になってしまう。このため,既述したように,充電時に,正極電極1から供給される金属イオンが負極電極2の許容する電気容量に対して部分的に過剰となり,負極電極2の端部に金属4が析出し,既述のように発熱する恐れがある。
【0032】
そこで,本実施形態では,図8A〜図8Cに示されるように,余剰領域1−5が負極活物質層2−2と対向し対向領域1−3の一部となるように,正極電極1と負極電極2とが重ねられている。この図8A〜図8Cの例では,第2辺42が,負極電極2の端部に合わさるように,正極電極1と負極電極2とが重ねられている。
【0033】
尚,正極電極1と負極電極2とは,正極集電体1−1上の正極活物質層1−2が完全に負極集電体2−1上の負極活物質層2−2と対向するように重ねられていればよい。例えば,図9A〜図9Cに示されるように,正極活物質層1−2の端部が,負極活物質2−2の内側の位置と対向していてもよい。
【0034】
本実施形態によれば,余剰領域1−5が負極活物質2−2と対向しているので,正極電極1が負極電極2からはみ出している部分を無くすことができる。これにより,負極電極が許容する電気容量に対して過剰に供給された金属イオンが負極電極2の端部に析出することもなく,負極電極2から析出する金属4の発生を防止される。
【0035】
また,本実施形態においては,正極電極1と負極電極2とが概ね矩形状である場合について説明した。但し,正極電極1と負極電極2との形状は矩形状に限定されず,その他の形状であってもよい。
【0036】
また,本実施形態では,複数の正極電極1と複数の負極電極2とが交互に積層された積層型の非水電解質二次電池について説明した。しかし,本発明を,正極電極と負極電極とを重ねて捲回した捲回型の非水電解質二次電池や,正極電極と負極電極とを積層して更に折りたたんだ折り畳み型の非水電解質二次電池に対して適用しても,既述した作用を奏することができる。
【0037】
続いて,本実施形態の作用をより具体的に説明するため,本発明者らによって実施された実験結果について説明する。図10は,本実施形態で説明した非水電解質二次電池における充電時間と電池温度との関係を示している。図10の非水電解質二次電池では,余剰領域1−5が負極活物質2−2と対向している。一方,図11は,比較用に作成した非水電解質二次電池についての結果である。この比較用の非水電解質二次電池においては,正極活物質層1−2と負極活物質層2−2とが対向していない部分が存在する。尚,充電条件は,図10と図11で用いた非水電解質二次電池で同じである。
【0038】
図11に示されるように,比較用の非水電解質二次電池では,充電を開始すると電池温度が急激に上昇している。これは,負極電極2に析出する金属4の発生,負極電極2に析出した金属4の成長及び負極電極2に析出した金属4と正極電極1の接触が生じたからであると考えられる。実際に,実験終了後に比較用の非水電解質二次電池を分解し,セパレータ3と負極電極2の様子を観察したところ,正極電極1の余剰領域1−5に対応する位置において金属4が観察され,セパレータ3を貫通していることが確認された。
これに対して,図10に示される実験を実施した非水電解質二次電池では,電池温度の急激な上昇は見られず,比較用の非水電解質二次電池と比較して温度上昇が抑制された。更に,比較用の非水電解質二次電池と同様に,実験終了後に電池を分解してセパレータ3と負極電極2を観察したところ,余剰領域1−5に対応する位置でも負極電極2に金属4が析出しておらず,余剰領域1−5が負極活物質2−2と対向することによる効果が確認された。
【0039】
(第2の実施形態)
続いて,本発明の第2の実施形態について説明する。図12は,本実施形態に係る非水電解質二次電池を概略的に示す正極タブ11部を通る断面図である。図12に示されるように,本実施形態では,第1の実施形態に対して電気絶縁体又は非イオン導電体6が追加されている。その他の点については,第1の実施形態と同様とすることができるので,詳細な説明は省略する。
【0040】
電気絶縁体又は非イオン導電体6は,正極集電体1−1の上に形成されて少なくとも一部の正極活物質層1−2の端部とその周縁部に設けられており,この電気絶縁体又は非イオン導電体6によって余剰領域1−5が被覆されている。
電気絶縁体又は非イオン導電体6の材質としては,電気絶縁性又は非イオン導電体を有していれば特に限定されず,有機化合物でも無機化合物でも用いることができる。また,有機化合物と無機化合物との混合物であってもよい。具体例を挙げると,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリイミド,セラミックス又はこれらの混合物などを用いることができる。
【0041】
また,正極電極1上に電気絶縁体又は非イオン導電体6を配置する方法についても特に限定されない。例えば,電気絶縁体又は非イオン導電体6として二枚の粘着シート状の絶縁物を用意し,この二枚のシート状絶縁物により正極電極1の外周部両面を挟み込む。これにより,正極活物質層1−2の端とその周縁部51の全周に電気絶縁体又は非イオン導電体6が配置される。また,電気絶縁体又は非イオン導電体6を粘着剤を介して正極電極1上に貼り付けてもよい。さらには,電気絶縁体又は非イオン導電体6をスラリ化し,正極電極1上に塗布することで,電気絶縁体又は非イオン導電体6を形成してもよい。
【0042】
本実施形態のように,電気絶縁体又は非イオン導電体6を余剰領域1−5に設けると,余剰領域1−5からは金属イオンが電解液中に供給されない。従って,万が一,正極電極1と負極電極2とを積層する際に余剰領域1−5が負極活物質層2−2からはみ出してしまったとしても,過剰の金属イオンが電解液中に供給されてしまうことはない。その結果,負極電極2に金属4が析出してしまうことを防止できる。
【0043】
(第3の実施形態)
続いて,本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では,既述の実施形態に対して,負極電極2を覆うセパレータ3の構成が更に工夫されている。尚,セパレータ3以外の点については,記述の実施形態と同様であるので,詳細な説明は省略する。
【0044】
負極電極2の両面を覆うセパレータ3は,二枚のシートの外周部が熱溶着されている。ここで,通常であれば,シワ発生を防止する目的などから,二枚のシートの接着部分が間欠的に位置するように,熱溶着が行われる。例えば,図13Aや図13Bに示されるように,接着部分が網目状となるように,二枚のシートが溶着される。これにより,部分的に非接着部分が形成され,接着によるシワ発生が防止できる。
【0045】
これに対して,本実施形態では,図14Aに示されるように,二枚のシートが,接着部がセパレータ外周部の全域となるように,熱溶着される。すなわち,非接着部分は存在していない。これは,外周部の全域を接着して空孔を閉塞することにより,負極電極2に析出したリチウムが空孔を突き抜けることを防止するためである。尚,空孔閉塞部32は,図14B〜図14Cに示されるように,少なくとも余剰領域1−5に対向する部分に設けられていてもよい。空孔閉塞部32により,万が一,負極電極2に金属4が析出してもセパレータ3により遮断される。従って,図15Aや図15Bに示されるように,万が一,余剰領域1−5が負極活物質層2−2と対向していなかったとしても,金属4がセパレータ3を貫通してしまうことがなく,負極電極2から析出する金属4の成長又は負極電極2から析出する金属4と正極電極1の接触を防止できる。
【0046】
尚,空孔が閉塞されている位置は,必ずしもセパレータ3の外周部の全周である必要はない。少なくとも正極タブ11に対応する部分の全域で空孔が閉塞されていれば,余剰領域1−2が負極2からはみ出したとしても内部短絡を防止することができる。
【0047】
以上,第1〜第3の実施形態について説明した。これらは,矛盾のない範囲内で組み合わせて適用することも可能である。すなわち,余剰領域1−5が負極活物質2−2と対向することにより,負極電極2からの金属4析出を防止できる上,万が一,金属4が負極電極2から析出した場合でも,電気絶縁体又は非イオン導電体6で金属イオンの供給が妨げられた上,空孔閉塞部32により析出した金属4が遮断されるので,負極電極2から析出する金属4と正極電極1の接触が発生する可能性を相乗的に低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 正極電極
1−1 正極集電体
1−2 正極活物質
1−3 対向領域
1−5 余剰領域
2 負極電極
2−1 負極集電体
2−2 負極活物質
3 セパレータ
4 金属
6 電気絶縁体又は非イオン導電体
11 正極タブ
12 正極電極予定部
13 タブ予定部
21 負極タブ
31 空孔部
32 空孔閉塞部
41 第1辺
42 第2辺
51 正極電極末端及び外周部の全周
101 正極電極
102 負極電極
103 セパレータ
104 金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の正極集電体上に正極活物質層が設けられた正極電極と少なくとも一部の負極集電体上に負極活物質層が設けられた負極電極とが交互に積層された非水電解質二次電池において,
前記正極電極は少なくとも一部において前記負極電極とセパレータを介して対向しており,
前記正極集電体上の前記正極活物質層は,前記セパレータを介して前記負極集電体上の前記負極活物質層と対向する対向領域を有し,
前記正極集電体は,前記対向領域の外部へ向かって延びる正極タブを有しており,
前記正極タブの少なくとも一部には、正極活物質層が設けられており、
前記正極電極と前記負極電極とは,前記正極活物質層が必ず前記対向領域となるように、重ねられている
非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載された非水電解質二次電池であって,
前記正極活物質層の端部と前記負極活物質層の端部とが,対向するか,又は,前記正極活物質層の端部が前記負極活物質層の端部の内側に対向するように,重ねられている
非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された非水電解質二次電池であって,
更に,
前記正極電極の一部を被覆する電気絶縁体又は非イオン導電体を具備し,
前記電気絶縁体又は非イオン導電体は少なくとも前記正極活物質層の端部を含む領域を覆うように設けられている
非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された非水電解質二次電池であって,
更に,
前記電気絶縁体又は非イオン導電体は,少なくとも一部の前記正極活物質層の端部とその周縁部を被覆するように設けられている
非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された非水電解質二次電池であって,
更に,前記セパレータは多孔質であって,
前記セパレータは,少なくとも前記正極活物質層の端部と対向している部分とその周縁部で空孔が閉塞されている
非水電解質二次電池。
【請求項6】
正極集電体上に,正極活物質層を形成する工程と,
当該工程の後に,前記正極集電体を、前記正極集電体と前記正極集電体から外部へ向かって延びる正極タブとを含む形状となるように切断して正極電極を作製する工程と,
負極集電体上に,負極活物質層を形成する工程と,
当該工程の後に,前記負極活物質層と前記負極集電体と負極タブとを含む形状に切断して負極電極を作製する工程と,
前記正極電極と前記負極電極とがセパレータを介して対向するように交互に積層する工程とを具備し,
前記正極電極を作製する工程は、
前記正極タブの少なくとも一部に正極活物質層が設けられるように、切断する工程を含み、
前記積層する工程は,
前記正極集電体上の前記正極活物質層が,前記セパレータを介して前記負極集電体上の前記負極活物質層と対向する対向領域となるように,前記正極電極と前記負極電極を,重ねる工程を備えている
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された非水電解質二次電池の製造方法であって,
前記積層する工程は,前記正極活物質層の端部と前記負極活物質層の端部とが,対向するか,又は,前記正極活物質層の端部が前記負極活物質層の端部の内側と対向するように,重ねる工程を備えている
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された非水電解質二次電池の製造方法であって,
更に,
前記正極電極を作製する工程は,少なくとも前記正極活物質層の端部を含む領域が被覆されるように,前記正極部電極上に電気絶縁体又は非イオン導電体を配置する工程とを備えている
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載された非水電解質二次電池の製造方法であって,
更に,
前記電気絶縁体又は非イオン導電体を配置する工程は,前記電気絶縁体又は非イオン導電体を,少なくとも一部の前記正極活物質層の端部とその周縁部を被覆するように配置する工程を含む
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載された非水電解質二次電池の製造方法であって,
更に,
前記セパレータは少なくとも前記正極活物質層の端部と対向している部分とその周縁部の空孔が閉塞されるように熱溶着,熱溶解又は溶剤塗布して空孔閉塞部を形成する工程,
を工程を具備し,
前記積層する工程は,前記空孔閉塞部を形成する工程の後に,少なくとも前記正極活物質層の端部を含む領域が前記空孔閉塞部と対向するように,前記セパレータが配置される工程を含む
非水電解質二次電池の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2012−204334(P2012−204334A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71147(P2011−71147)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】