説明

非水電解質二次電池

【課題】電池の落下衝撃時において、電池内部で電極群が移動し、電極群と封口板との間に形成された空間が狭くなることで、局所的な内圧上昇が生じ、封口板に具備された電流遮断弁や防爆弁が誤作動を起こす可能性があった。
【解決手段】電極群から延出された電極リードの延出基部と溶接部との距離を、延出基部と電池ケースの底面中央部との距離より短くする。それにより、電極群の移動を抑制し、封口板に具備された安全機構の誤作動を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、特に落下衝撃時における非水電解質二次電池の信頼性を向上するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形電池は、一般に、有底円筒形の金属製の電池ケースに発電要素を電解質とともに収容し、その開口部を封口板(組立封口体を含む)により封口して密閉し構成される。リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の発電要素となる電極群は、例えば正極と負極との間にセパレータを配して渦巻き状に巻回して構成される。セパレータは、正極と負極との間を絶縁するとともに、電解質を保持する機能を有している。また、封口板と電池ケースには、それぞれ正極又は負極から導出された正極リード又は負極リード(電極リード)が接続され、正極又は負極の外部端子となっている。さらに、電池ケースに挿入された電極群と封口板との間には上部絶縁板が設けられ、電極群と電池ケースとの間には下部絶縁板が設けられることで、電極群は封口板や電池ケースと電気的に絶縁されている。
【0003】
このような非水電解質二次電池(以下、単に「電池」と称すこともある)では、落下等によって外部から強い衝撃が加えられることで、電池ケースと電極リードとの接続が外れるおそれがあった。
【0004】
上記問題に対して、例えば、複数の正極リード(又は負極リード)を電極群の端面から導出し、1点で重ねて、電池ケースと溶接する方法が提案されている。この構造によれば、電極リードと電池ケースとの接続が強固になるため、電池ケースから電極リードが外れることを防ぐことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−335232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構造では、電極リードと電池ケースとの接続が外れることを防ぐことができるものの、落下衝撃によって、電極群が電池ケースの上部に移動してしまうことがある。そのような場合、電極群と封口板との間に形成された空間が狭くなり、局所的な内圧上昇が生じることで、封口板に具備された圧力作動する安全機構が誤作動し、電池が使用不能となる可能性があった。
【0007】
一般的に、電極群から延出させた電極リードを電池ケースの底面に溶接した電池では、落下衝撃時において、電池ケースに固定されている電極リードの溶接部が支点となり、電極群が移動する。したがって、電極群から延出する電極リードの延出基部から溶接部までの距離が長いほど、電極群が上部へ移動しやすくなる。
【0008】
しかしながら、従来の電池では、電極リードを電池ケースの底面に溶接する際、巻回した電極群の中央に形成された空洞部に、一方の溶接用電極棒(内部溶接用電極棒)を挿入して電極リードを電池ケースの底面に押さえ付け、その位置と対応する電池ケースの外部に他方の溶接用電極棒(外部溶接用電極棒)を、押し当てて電圧を印加する。そのため、電極リードの溶接部は電池ケースの底面中央部となり、電極リードの延出基部から溶接部(電池ケースの底面中央部)までの距離は、電極リードの延出基部の位置によって決まっ
てしまい、延出基部がより外周側になるほど、その距離は長くなり、電極群の移動を抑制することが困難となっていた。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、落下衝撃時の電極群の移動を抑制することで、信頼性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部を圧力作動する安全機構を具備した封口板で封口した非水電解質二次電池であって、前記正極及び前記負極のいずれか一方に接続された電極リードは、前記電極群から延出されて、前記電池ケースの底面と少なくとも1つの溶接部により接続されており、前記電極群から延出された前記電極リードの延出基部と前記溶接部との距離は、前記延出基部と前記電池ケースの底面中央部との距離より短いことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、電極リードは、延出基部と溶接部との距離が、延出基部と電池ケースの底面中央部との距離より短くなる位置で溶接される。すなわち、電極リードの延出基部から溶接部までの距離を短くすることで、落下衝撃時における、電極群の移動を抑制することが可能となる。したがって、封口板に備えられた圧力作動する安全機構の誤作動を防ぎ、信頼性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池の落下衝撃時において、電極群の移動を抑制することで、封口板に具備され圧力作動する安全機構の誤作動を防ぎ、信頼性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の概略断面図
【図2】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の電極リードの接続を示す図
【図3】従来の非水電解質二次電池の電極リードの接続を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部を圧力作動する安全機構を具備した封口板で封口した非水電解質二次電池であって、前記正極及び前記負極のいずれか一方に接続された電極リードは、前記電極群から延出されて、前記電池ケースの底面と少なくとも1つの溶接部により接続されており、前記電極群から延出された前記電極リードの延出基部と前記溶接部との距離は、前記延出基部と前記電池ケースの底面中央部との距離より短いことを特徴とする。
【0015】
ここで「延出基部」とは、電極群から延出する電極リードにおいて、電極群の端面の延長線上に位置する部分をいう。上述したように、本発明によれば、電極リードの延出基部と溶接部との距離を短くすることで、落下衝撃時における電極群の移動を抑制することができ、内圧上昇による安全機構の誤作動を防ぎ、信頼性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【0016】
また、本発明において、電極リードは、複数の溶接部を有することが好ましい。複数の溶接部で電極リードを固定することで、より強固に電極リードを固定することができ、落下衝撃等によって電極リードの溶接部が外れることを防ぐことができる。
【0017】
また上記構成において、複数の溶接部には、電池ケースの底面中央部が含まれているこ
とが好ましい。電池ケースの底面中央部に溶接部を形成する場合、巻回した電極群の中央に形成された空洞部に挿入した内部溶接用電極棒によって、溶接部の上部を電池ケース底面へ押し付けることができるため、より確実に容易に溶接することができる。
【0018】
また、本発明において、電池ケースの底面に配置された電極リードの上部には、金属板が配されていることが好ましい。このような構成とした場合、電極群の中央に形成された空洞部に挿入した内部溶接用電極棒で、上記金属板を押圧し、電池ケースの底面に配置された電極リード全体を電池ケース底面に当接することが可能となる。すなわち、電極リードは、内部溶接用電極棒で押圧された部分以外も、この金属板によって底面に押さえ付けられる。よって、外部溶接用電極棒を、内部溶接用電極棒の位置と対応させる必要はなく、延出基部に近い位置に当接させて電極リードと電池ケース間に電圧を印加することで、延出基部と溶接部との距離を短くすることができる。したがって、本構成によれば、従来の電池に対して、金属板を追加するのみで、容易に信頼性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【0019】
ここで、上記の金属板は、電池ケースの底面に配置された電極リード全体を電池ケース底面に当接させて導通を確保する必要がある。したがって、内部溶接用電極棒による押圧によって変形することなく、電極リード全体を均等に電池ケース底面に押し付けられる強度を持っていることが好ましい。したがって、ニッケル、又はニッケルと銅とのクラッド材等から構成されることが好ましく、またその肉厚は50μm以上300μm以下とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明において、電池ケースの底面に溶接される電極リードは、負極と接続されていることが好ましい。一般的に、非水電解質二次電池では、電気化学的な安定性の観点から、負極リードには、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金等が用いられ、正極リードには、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が用いられる。したがって、電池ケースの底面との接続強度を上げる観点から、より硬度の大きい材料で構成される負極リードを電池ケースの底面に溶接する方が好ましい。また、溶接強度及び生産性の観点から、これらの電極リードの肉厚は、50μm以上300μm以下とすることが望ましい。
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る円筒形のリチウムイオン二次電池の概略断面図である。正極1と、負極2と、それらの間に介在するセパレータ3とを渦巻き状に巻回して構成された電極群4を備えている。電極群4は、非水電解質(不図示)とともに有底円筒型の金属製の電池ケース5に収納される。電池ケース5の開口部は、アウターガスケット7を介して封口板19により封口され、これにより電極群4および非水電解質は電池ケース5の内部に密閉される。
【0023】
電極群4の上側には上部絶縁板10が載積され、電極群4の下側には下部絶縁板16が、配設される。ここで、上部絶縁板10は電池ケースの溝部17で支持され、電極群4は上部絶縁板10により固定される。
【0024】
封口板19は、端子板11、PTC(positive temperature coefficient:正温度係数)サーミスタ板12、防爆弁13、電流遮断弁14、フィルター6、及びインナーガスケット15により構成される。端子板11、PTCサーミスタ板12、及び防爆弁13は、それらの周縁部で接続している。また、防爆弁13と電流遮断弁14とはそれらの中央部で接続されている。さらに電流遮断弁14とフィルタ
ー6とはそれらの周縁部で接続している。以上の結果、端子板11とフィルター6とは導通している。
【0025】
正極1は、正極リード8を介してフィルター6と接続され、端子板11が正極の外部端子となっている。一方、負極2は、負極リード9を介して電池ケース5の底面に接合され、電池ケースが負極の外部端子となっている。
【0026】
防爆弁13と電流遮断弁14には、環状の溝が中央部に形成されおり、その溝が破断すると、そこに弁孔が形成される。例えば、電池30において、内部短絡等の異常によるガスが発生して、電池30内部の圧力が上昇すると、電流遮断弁14が作動し、溝が押し破られることで、電流遮断弁14とフィルター6との接続が断たれて、電流経路が遮断される。さらに電池30内の圧力が上昇すると、防爆弁13が作動し、溝が破断することで弁孔が形成される。これによって、電池30内に発生したガスは、フィルター6の貫通孔6a、電流遮断弁14及び防爆弁13の弁孔、そして、端子板11の開放部11aを通って、電池外部へ排出される。
【0027】
このような構成の電池では、落下等により、激しい衝撃が電池ケースの外部から加わった場合、上部絶縁板10が変形して電極群4が上部に移動し、電極群4と封口板19との間の空間が急激に狭くなることで、内圧が上昇する危険性がある。また、その内圧上昇により、封口板19に具備された電流遮断弁14や防爆弁13が作動してしまい、電池が使用不能になる可能性がある。
【0028】
本発明では、電極群から延出した電極リード(図1では負極リード9)は、電池ケースの底面中央部より外周側で溶接されている。したがって、負極リード9の延出基部9bと溶接部との距離は、延出基部9bと電池ケースの底面中央部との距離より短くなっている。よって、電池の落下衝撃時において、電極群の移動を抑制することができ、安全機構の誤作動を防ぐことが可能となり、信頼性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【0029】
なお、本発明において、電池30内に発生したガスを外部に排出する安全機構は、図1に示した構造に限定されず、他の構造のものであってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態に係る非水電解質二次電池の電極リードの接続を模式的に示した図であり、図3は従来例の非水電解質二次電池の電極リードの接続を模式的に示した図である。以下、本実施形態に係る電極リードの接続について、従来例と比較しつつ、さらに詳細に説明する。
【0031】
まず、従来例に係る電極リードの接続について図3を参照しながら説明をする。正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群104は、開口部を有する有底円筒形の電池ケース105内に挿入され収容される。そして、負極に導通固定された電極リード(負極リード109)が、電極群104から延出し、電池ケース105の底部で折り曲げられ、さらに底面中心部まで延出している。また電池ケース底面と当接する負極リード109の上部には、下部絶縁板116が設置され、負極リード109及び電池ケース105の底面と、電極群104との接触を防いでいる。
【0032】
次に、従来例に係る負極リード109と電池ケース105との溶接方法について説明する。巻回された電極群104の中央部には、巻回開始時に形成される空洞部が存在している。また下部絶縁板116には、この空洞部に対応する位置に、貫通孔が形成されている。内部溶接用電極棒120は、この電極群104の空洞部、及び下部絶縁板116の貫通孔を通して挿入され、負極リード109を電池ケース105の底面中央部に押し付ける。
そして、内部溶接用電極棒120と対応する位置(底面中央部)に、外部溶接用電極棒121を電池ケース105の外部から押し付ける。その状態で、内部溶接用電極棒120、外部溶接用電極棒121間に高電圧を印加し、負極リード109は、溶接部122aで電池ケース105と溶接される。その結果、この溶接部122aにより、電極群104の負極の電位と電池ケース105の電位が同電位となり、電池ケース105は負極の外部端子となる。
【0033】
それに対し、本実施形態に係る電池を図2に示す。電極群4の負極に導通固定された負極リード9は、電極群4から延出し、電池ケース5の底部で折り曲げられ、さらに底面中心部まで延出している。そして、負極リード9の上部には、金属板18が配置され、さらにその上部に、従来例と同様、下部絶縁板16が設置されている。
【0034】
次に、本実施形態に係る負極リード9と電池ケース5との溶接方法について説明する。内部溶接用電極棒20は、電極群4の中央部に形成される空洞部、及び下部絶縁板16の貫通孔を通して挿入され、金属板18を押圧することで、負極リード9を電池ケース5の底面に押し付ける。そして、内部溶接用電極棒20と対応する位置(底面中央部)に、外部溶接用電極棒21を電池ケース5の外部から押し付ける。その状態で、内部溶接用電極棒20、外部溶接用電極棒21間に高電圧を印加し、負極リード9は、溶接部22aで電池ケース5と溶接される。さらに、外部溶接用電極棒21を、電極リードの延出基部9b方向にずらし、同様の作業により、複数の溶接部22b、22cを形成する。これらの溶接部22a、22b、22cにより、電極群4の負極の電位と電池ケース5の電位が同電位となり、電池ケース5は負極の外部端子となる。
【0035】
ここで、金属板18を配置していない従来例では、溶接時において、電極リード109は、内部溶接用電極棒120のみによって押圧される。そのため、それ以外の部分は、負極リード109と電池ケース105の底面との間に、空間が存在する。したがって、外部溶接用電極棒121の位置を、電極リードの延出基部109b方向にずらして高電圧を印加しても、電流が流れず、溶接することはできない。よって、電極群104に対して、電池ケース上部方向へ移動する力が作用した場合には、負極リード109は溶接部122aを支点とし、延出基部109bまでの部分が浮き上がり、電極群104の移動を効果的に抑制することができなかった。
【0036】
一方、本実施形態の電池においては、負極リード9の上部に金属板18を配置し、内部溶接用電極棒20で、この金属板18を電池ケース底面に押し付けるため、金属板18の下側に配置される負極リード9全体を、電池ケース5の底面に押し付けることができる。したがって、外部溶接用電極棒21の位置を、電極リードの延出基部9b方向へずらした場合であっても、電池ケース5の底面と負極リード9との間に電流を流すことが可能となり、溶接を行うことができる。
【0037】
このような本実施形態の電池では、落下衝撃により、電極群4に対して電池ケース5の上部方向へ移動する力が作用した場合、負極リード9は、延出基部9aと最も近い溶接部22cを支点として、延出基部9bまでの部分が浮き上がる。しかしながら、溶接部22cと延出基部9aとの距離が短いため、電極群の移動を抑えることが可能となる。よって、安全機構の誤作動を防ぎ、信頼性の高い非水電解質二次電池を得ることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、電極リードの溶接部の位置及び個数は限定されるものではない。しかしながら、電極リードにおいて複数の位置で溶接を行うことにより、その溶接強度を強固にすることが可能となる。また、電極リードを電極群の外周側から延出させた場合は、電池ケースの底面と当接する電極リードを長く設定でき、溶接箇所を増やすことが可能となるため、より電極群の固定強度を上げることができる。
【0039】
本発明の非水電解質二次電池が、リチウムイオン二次電池の場合は、構成材料として以下のものを用いることができる。
【0040】
正極1は、正極集電体上に正極活物質層を形成することで構成することができる。正極集電体は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等を用いることができるが、中でもアルミニウムまたはアルミニウム合金とすることが電気化学的な溶出等が起こりにくいことから好ましい。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属化合物、例えばコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムから選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用できる。また、正極活物質層は、正極活物質、結着剤、および導電剤を、分散媒とともに混練して分散させたスラリー状の合剤を調製し、この合剤を正極集電体に付着させることにより形成できる。
【0041】
負極2は、負極集電体上に負極活物質層を形成することで構成することができる。負極集電体は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いることができるが、中でも銅、銅合金、ニッケルまたはニッケル合金とすることが電気化学的な溶出等が起こりにくいことから好ましい。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る黒鉛型結晶構造を有する材料、例えば、天然黒鉛や球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などの炭素材料や、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物材料、ケイ素、シリサイドなどのケイ素含有化合物などを用いることができる。負極活物質層は、負極活物質、結着剤、および分散媒、必要により導電材を含んだスラリー状の合剤を負極集電体に付着させることにより形成できる。
【0042】
セパレータ3としては、ポリオレフィン系材料を用いることができ、ポリオレフィン系材料と耐熱性材料を組み合わせたものを用いることが好ましい。ポリオレフィン多孔膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体の多孔膜などが例示できる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。耐熱性材料としては、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂からなる膜、または、耐熱性樹脂と無機フィラーの混合体を用いることができる。
【0043】
また電解質は、非水溶媒にリチウム塩を溶解することにより調製される。非水溶媒は、例えば、環状カーボネートとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなど、また鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなど、が用いられる。また、リチウム塩としては、電子吸引性の強いリチウム塩、例えば、LiPF、LiBF、LiClOなどが使用される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下のようにして、リチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。
【0045】
(実施例1)
(1)正極の作製
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Al0.05を使用した。正極活物質100重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンフルオライド1.7重量部、及び導電剤としてアセチレンブラック2.5重量部を、液状成分に混合させて正極合剤ペーストを調製した。
【0046】
その正極合剤ペーストを、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、正極リードの
接続部分を除いて塗布し、乾燥することで、正極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して正極を得た。このとき、厚みが128μmとなるように正極の前駆体を圧延した。また、正極集電体として使用したアルミニウム箔の長さは667mm、幅は57mm、厚さは15μmであった。
【0047】
(2)負極の作製
負極活物質としてグラファイトを使用した。負極活物質100重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンフルオライド0.6重量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1重量部と、適量の水とを、双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤ペーストを得た。
【0048】
その負極合剤ペーストを、銅箔からなる負極集電体の両面に、負極リードの接続部分を除いて塗布し、乾燥することで、負極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して負極を得た。このとき、厚みが155μmとなるように負極の前駆体を圧延した。また、負極集電体として使用した銅箔の長さは745mm、幅は58.5mm、厚さは8μmであった。
【0049】
(3)非水電解質の調整
非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1対1の体積比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
【0050】
(4)電池の組立
上述のようにして作製した正極および負極を、それらの間にセパレータを介在させて積層し、積層体を得た。セパレータは、厚さが20μmであるポリエチレン製の多孔膜を使用した。得られた積層体の正極の巻き始めの部分に正極リードを接続し、負極の巻き終わりの部分に負極リードを接続した。その状態で、上記積層体を渦巻き状に巻回して電極群を得た。
【0051】
得られた電極群の底部に、中心に貫通孔を有するポリプロピレン製の下部絶縁板を配置し、さらにその底部に、厚み100μmのニッケル製の円状の金属板を配置した後、電極群から延出する負極リードを、折り曲げて金属板の底部に配置し、その状態で、鉄製の電池ケースに収納した。ここで、電池ケースは、直径(外径)が18mm、高さが65mm、厚みが0.15mmであるものを使用した。この電池ケースの厚みは、通常市販されている円筒形のリチウムイオン二次電池の電池ケースの厚みに近いものである。
【0052】
次に、負極リードを電池ケースの底面に抵抗溶接法によりスポット溶接した。内部溶接用電極棒を、電極群の中央の空洞部及び下部絶縁板の貫通孔に挿入し、金属板を押さえることによって、金属板の下部に位置する負極リード全面を電池ケースの底面に押し当てた。
【0053】
そして、外部溶接用電極棒を電池ケースの底面中央部、底面中央部から延出基部方向に向かい3mmの位置、及び6mmの位置、の3箇所に当接させ、高電圧を印加することで、スポット溶接を行った。
【0054】
電極群の上部には、ポリプロピレン製の上部絶縁板を配置した。また、電池ケースの開口部には、電流遮断弁及び防爆弁を具備した封口板を配置し、正極リードを、その封口板のフィルターにレーザー溶接法により溶接した。封口板には、その周縁部にポリプロピレン製のアウターガスケットが取付けられていた。
【0055】
電池ケース内に非水電解質を注入した後、電池ケースの開口端部より5mm下側の位置
において、電池ケースを周方向に一周するように、内側に突出する溝部を形成し、これにより電極群を電池ケースの内部に上部絶縁板を介して固定した。
【0056】
その後、この溝部の上に、アウターガスケットを取付けた封口板を配置し、電池ケースの開口部を内側に曲げるようにかしめて、電池ケースを封口した。以上のようにして、直径が18mm、高さが65mmである円筒形のリチウムイオン二次電池からなる試験体を10個作製した。このリチウムイオン二次電池の設計容量は2900mAhであった。
【0057】
(比較例1)
電極群の底部に金属板を配することなく、負極リードと電池ケースとの溶接を電池ケースの底面中央部の1箇所だけ行ったこと以外は、実施例1と同様にして10個のリチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。
【0058】
(落下衝撃試験)
作製された各10個の試験体に対して、以下のような条件で落下衝撃試験を実施した。まず、25℃の環境の下で1500mAの電流により電池電圧が4.2Vとなるまで充電した。充電後の試験体を、封口板を下方向にして2mの高さからコンクリート上に落下させた。そして、電流遮断弁、防爆弁が作動した試験体の個数をカウントした。結果を(表1)に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
比較例1においては、10個のうち5個の試験体において電流遮断弁が作動していた。これは、落下衝撃によって、電極群が上部方向に移動し、電極群と封口板との間に形成された空間が狭くなることで、局所的な内圧上昇が生じ、封口板に備えられた電流遮断弁が作動してしまったものと考えられる。一方、実施例1では、10個の試作体、全てにおいて、電流遮断弁、防爆弁ともに作動したものは無かった。
【0061】
以上のように、本発明によれば、落下衝撃時の電池内での電極群の移動が抑制され、電流遮断弁や防爆弁の誤作動を防ぐことが可能となり、落下衝撃時の電池の信頼性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、落下衝撃時の信頼性を向上した非水電解質二次電池を提供することができる。このような本発明の非水電解質二次電池は、特にパーソナルコンピュータ、携帯機の駆動を補助する電源としても有用である。また、電動工具、掃除機、およびロボット等の駆動用電源としても有用であり、プラグインHEVの動力源としても有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 フィルター
6a 貫通孔
7 アウターガスケット
8 正極リード
9 負極リード
10 上部絶縁板
11 端子板
11a 開放部
12 PTCサーミスタ板
13 防爆弁
14 電流遮断弁
15 インナーガスケット
16 下部絶縁板
17 溝部
18 金属板
19 封口板
20 内部溶接用電極棒
21 外部溶接用電極棒
22a、22b、22c 溶接部
30 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部を圧力作動する安全機構を具備した封口板で封口した非水電解質二次電池であって、
前記正極及び前記負極のいずれか一方に接続された電極リードは、前記電極群から延出されて、前記電池ケースの底面と少なくとも1つの溶接部により接続されており、
前記電極群から延出された前記電極リードの延出基部と前記溶接部との距離は、前記延出基部と前記電池ケースの底面中央部との距離より短いことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電極リードは、複数の溶接部を有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記複数の溶接部には、前記電池ケースの底面中央部が含まれることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記電池ケースの底面に配置された電極リードの上部には、金属板が配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記電池ケースの底面に溶接される前記電極リードは、前記負極と接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69611(P2013−69611A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208587(P2011−208587)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】