説明

非結晶固体医薬物質の共沈物の調製方法

本発明は、(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルおよびその溶媒和物のような非結晶固体医薬物質の共沈物を調製するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非結晶固体医薬物質の共沈物の調製方法および該調製方法によって調製される共沈物を含んでなる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
共沈物は、医薬物質の固体分散物の一つの形態であり、これは溶液から例えばポリマーなどの担体と一緒に医薬物質を共沈殿させることで生成される。共沈物は、難溶性医薬物質の経口バイオアベイラビリティを改善するために、製薬工業において用いられてきた(Ohm, European J. Pharmaceutics and Biopharmaceutics 49:183-189(2000))。ニフェジピン(ADALAT T10(登録商標))はこのアプローチの一つの例である。共沈物を形成させる一つの方法は、有機溶媒中に医薬物質と担体(例えばポリビニルピロリドン(PVP))とを溶解させ、次に溶媒を除去して医薬物質と担体の共沈殿を起こさせることを含む。この手法によれば、典型的には、最終生成物中に医薬物質と担体との緊密混合物が得られる。製薬工業における共沈物の例は、欧州特許第828479号(Glaxo)、PCT公開第WO02/038127号(Bradford)、およびPCT公開第WO01/03821号(Bradford)に記載されている。
【0003】
共沈物は医薬物質の経口バイオアベイラビリティを改善するために用いられてきたが、取扱性がよくない医薬物質の物理特性または取扱性を改善することができる共沈技術については、文献に記載されている方法は存在しないと思われる。例えば、ワックス様医薬物質のような非粒子状非結晶固体医薬物質の物理特性を改善するための方法を提供すること、また慣用の医薬製剤化技術を用いてより簡便に取り扱える自由流動性粒子状物質の形態で医薬物質を提供することが望ましいものと思われる。
【0004】
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル、その調製方法およびその使用ならびにそれを含有する医薬製剤が1998年8月20日発行のPCT公開第98/35966号および米国特許第6,355,646号(Daluge ら)に開示されている。この化合物はワックス状の固体である。
【非特許文献1】Ohm, European J. Pharmaceutics and Biopharmaceutics 49:183-189(2000)
【特許文献1】欧州特許第828479号(Glaxo)
【特許文献2】PCT公開第WO02/038127号(Bradford)
【特許文献3】PCT公開第WO01/03821号(Bradford)
【特許文献4】PCT公開第98/35966号
【特許文献5】米国特許第6,355,646号(Daluge ら)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様として、本発明は、粒子状形態の非結晶固体医薬物質の調製方法を提供する。その方法は、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤(co-precipitating excipient)とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤(core excipient)を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
b) 該共沈物を単離するステップ;
を含む。
【0006】
第2の態様として、本発明は、非結晶固体医薬物質の物理特性を改善する方法を提供する。その方法は、非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製することを含み、この場合、該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である。
【0007】
第3の態様として、本発明は、非結晶固体医薬物質の共沈物の調製方法を提供する。その方法は、非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えることを含み、この場合、該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である。
【0008】
第4の態様として、本発明は、コアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物を提供する。該コアはコア賦形剤よりなる。該医薬層は医薬物質と共沈性賦形剤とからなる。該共沈物は、非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えることにより調製し、この場合、該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である。
【0009】
第5の態様として、本発明は、コア賦形剤からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物を提供し、ここで該医薬層は(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物と共沈性賦形剤とを含んでなる。
【0010】
第6の態様として、本発明は、水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤の調製方法を提供する。その方法は以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
b) 該共沈物を単離するステップ;および
c) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
b) 該共沈物を単離するステップ;
を含む方法によって生成される固体粒子状医薬物質を提供する。
【0012】
別の態様として、本発明は、粒子状形態の非結晶固体医薬物質の別の調製方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;および
d) 該共沈物を単離するステップ;
を含む。
【0013】
別の態様として、本発明は、非粒子状固体医薬物質の物理特性を改善する別の方法を提供する。その方法は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
を含む。
【0014】
別の態様として、本発明は、非結晶固体医薬物質の共沈物の別の調製方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えるステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
を含む。
【0015】
別の態様として、本発明は、医薬物質からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の共沈層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物を提供し、ここで該共沈層は共沈性賦形剤からなり、且つ該共沈物は以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えるステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
を含む方法によって調製される。
【0016】
別の態様として、本発明は、(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の共沈層とを有する共沈物を含んでなる別の医薬組成物を提供する。
【0017】
別の態様として、本発明は、水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤の別の調製方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
d) 該共沈物を単離するステップ;および
e) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む。
【0018】
別の態様として、本発明は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;および
d) 該共沈物を単離するステップ;
を含む方法によって生成される固体粒子状医薬物質を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の上記態様および他の態様を以下の詳細な説明および実施例においてさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明は、粒子状形態の非結晶固体医薬物質を調製するための方法を提供する。また、本発明は、非結晶固体医薬物質を粒子状形態に変換する方法を提供することによって、非結晶固体医薬物質の物理特性、特に取扱性を改善するための方法を提供するものである。
【0021】
本発明の方法を用いることで、種々の非結晶固体医薬物質の共沈物を調製することができる。特に、本発明の方法は、粘着性もしくはワックス様の医薬物質または無定形の医薬物質を、より自由流動性のある粒子状形態に変換するのに有用である。
【0022】
本発明の方法は、医薬物質がワックス様医薬物質である場合に特に有用である。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、この医薬物質は、式(I):
【化1】

【0024】
[式中、
Xは、-O-または-NH-であり;
Qは、(-CH2-)p、(-CH=CH-)p、または(-C≡C-)であり[ここでpは1〜4の整数である];
R1は、Hまたはメチルであり;
R2およびR3は、独立にOまたはSであり;
nは、1〜50の整数であり;そして
Rは、Hまたはメチルである]
で表される化合物またはその溶媒和物である。
【0025】
式(I)で表される化合物の具体的な例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸デカエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-3-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルアミド;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)安息香酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸トリエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=7.2)メチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸テトラエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ペンタエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ヘキサエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ヘプタエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸オクタエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=11.7)メチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ヘキサエチレングリコールエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=23.9)メチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=41.5)メチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=15)メチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=32.2)エステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=18.9)エステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ポリエチレングリコール(n=13)エステル;
(E)-3-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)安息香酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-2-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)安息香酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-オキソ-2-チオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステル;
およびこれらの溶媒和物。
【0026】
本発明のある特定の実施形態では、医薬物質は(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物である。
【0027】
本発明の方法はさらに、空気酸化による分解を受け易い化合物の安定性を改善するために有利である。特に、式(I)で表される化合物は、空気酸化による分解の対象となることが知られている。この化合物の空気酸化に対する感受性は、本発明に従って調製される共沈物によって低減する。なぜなら、この共沈物の中に医薬物質が密接に取り込まれて、空気酸化に曝露される表面積が少なくなるからである。
【0028】
式(I)で表される化合物は、米国特許第6,355,646号(Daluge)に記載の方法に従って調製することができる。この文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
医薬物質は、2種以上の治療上有効な薬剤を組み合わせて含んでもよいが、但しそれらの薬剤は適合性がある(すなわち、それらの薬剤が、本発明の方法において互いに悪影響を及ぼすものででない)ものとする。
【0030】
方法1
本発明の1つの実施形態では、粒子状形態の非結晶固体医薬物質は、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
b) 該共沈物を単離するステップ;
を含む方法によって調製することができる。
【0031】
都合のよいことに、共沈性賦形剤としては、慣用の製薬上許容される賦形剤ならばどのようなものを用いてもよい。但し、該賦形剤は、溶液中で医薬物質と適合性があるものとする。好適な共沈性賦形剤としては、限定するものではないが、糖類、糖アルコール、ポリマー、デンプン、塩、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な共沈性賦形剤の特定の例は、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン、サッカリン、スターチ1500、塩化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される。1つの実施形態では、この共沈性賦形剤は、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、およびこれらの混合物から選択される。ある特定の実施形態では、この共沈性賦形剤はソルビトールである。
【0032】
医薬物質と共沈性賦形剤を溶解する非水性溶媒としては、医薬物質と共沈性賦形剤の両方が実質的に完全に溶解するいずれの好適な非水性溶媒でもよい。必要であれば、あるいは望ましいのであれば、高められた温度を用いて、非水性溶媒中の医薬物質および/または共沈性賦形剤の可溶化を促進または助長することもできる。本発明の方法で使用する好適な非水性溶媒の例としては、限定するものではないが、有機酸、アルコール、極性非プロトン性溶媒、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
1つの実施形態では、非水性溶媒は、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、およびこれらの混合物から選択される。ある特定の実施形態では、非水性溶媒は酢酸である。
【0034】
本発明の1つの実施形態では、共沈溶液はさらに、医薬組成物中の医薬物質の貯蔵寿命を長くするのに十分な量の医薬物質安定化剤を含んでなる。製薬上許容される医薬物質安定化剤は当技術分野では公知であり、かかる目的のためにそれらを用いることができる。特定の医薬物質安定化剤の選択は、その特定の医薬物質によって決まる。1つの実施形態では、医薬物質が上記式(I)で表される化合物である場合、特に医薬物質が(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物である場合、医薬物質安定化剤はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0035】
医薬物質安定化剤を共沈溶液中に用いると、医薬物質安定化剤は、得られる共沈物中に取り込まれる。
【0036】
取り込まれるべき医薬物質安定化剤の量は、選択された特定の医薬物質と医薬物質安定化剤によって決まるものであり、医薬開発技術分野における当業者には明らかであると思われる。1つの実施形態では、医薬物質安定化剤の量は、医薬物質に対して約1ppm〜約1000ppmである。1つの実施形態では、医薬物質安定化剤の量は、医薬物質に対して約1ppm〜約750ppmである。ある特定の実施形態では、医薬物質安定化剤は、医薬物質の量に対して約10ppm〜約500ppmの量で存在する。
【0037】
次にこの共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加える。コア賦形剤は、製薬上許容される固体賦形剤ならどのようなものでもよい。好適なコア賦形剤の例としては、限定するものではないが、糖類、糖アルコール、デンプン、塩、およびこれらの混合物が挙げられる。好適なコア賦形剤の特定の例は、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、サッカリン、塩化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される。1つの実施形態では、コア賦形剤はソルビトールである。
【0038】
本明細書で使われている「逆溶媒」とは、医薬物質および共沈性賦形剤が実質的に完全に不溶である液体を意味する。逆溶媒は、それが非水性溶媒と混和性であり、且つ共沈物の高い回収(>85%)を可能とするように選択するべきである。本明細書で用いる場合、用語「混和性」は、互いの中に溶解して、非水性溶媒と逆溶媒との組み合せから単一相溶液が得られる溶媒の特性を意味する。好適な逆溶媒は共沈の技術分野では公知であり、例えばアルカン溶媒が挙げられる。好適な逆溶媒の具体的な例としては、限定するものではないが、シクロヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、およびこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、逆溶媒はイソオクタンである。
【0039】
本発明の共沈物を調製するのに用いる医薬物質、共沈性賦形剤およびコア賦形剤の量は、選択されたその特定の医薬物質および賦形剤によって決まる。一般的には、医薬物質、共沈性賦形剤およびコア賦形剤の量は、医薬物質と複合賦形剤(すなわち、共沈性賦形剤 + コア賦形剤)との比が約1:100〜約50:50である共沈物(すなわち、生成物)を与えるのに十分なものであろう。1つの実施形態では、共沈生成物中の医薬物質と複合賦形剤(すなわち、共沈性賦形剤 + コア賦形剤)との比は約15:85〜約40:60である。1つの実施形態では、医薬物質と複合賦形剤(すなわち、共沈性賦形剤 + コア賦形剤)との比は約25:75である。
【0040】
都合のよいことに、スラリーへの共沈溶液の添加は、周囲条件の下で行ってもよい。しかしながら、添加は、所望ならば低温で行ってもよい。共沈溶液は、場合によっては撹拌しながら、ゆっくりスラリーに加える。1つの実施形態では、共沈溶液は、場合によっては撹拌しながら、滴下でスラリーに加える。
【0041】
逆溶媒中にコア賦形剤を含んでなるスラリーに共沈溶液を加えると、医薬物質、共沈性賦形剤およびコア賦形剤を含んでなる共沈物が形成される。特定の理論に縛られるのを望むものではないが、現時点では、得られる共沈物は、図1に示されているように、賦形剤のコア1と、その上に分散されている医薬物質3と共沈性賦形剤4とからなる一層以上の医薬層2とから構成されていると考えられる。
【0042】
コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層は、典型的には厚みが均一ではなく、ばらつくことがある。得られる共沈物は、特に取扱性の点で、改善された物理特性を呈す。この共沈物は微細に分断された物質で、共沈性賦形剤の流動特性に似た流動特性を有する。より具体的には、結果として得られる共沈物は、自由流動性粒子状物質または粉末である。ワックス様医薬物質の場合、得られる共沈物はもはや、元の医薬物質の、粘着性でワックス様の特徴はもたない。つまり、別の態様では、本発明は、非結晶固体医薬物質の物理特性を改善するための方法を提供するものである。
【0043】
本発明の1つの具体的な実施形態によれば、該共沈物の調製方法は、イソオクタン中に分散したソルビトールを含んでなるスラリーに、酢酸中に溶解した(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物とソルビトールとを含んでなる共沈溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製することを含む。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
b) 該共沈物を単離するステップ;
を含む方法によって生成される固体粒子状医薬物質を提供する。
【0045】
方法2
別の実施形態により、該共沈物は第2の方法によって生成することができ、この第2の方法は以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;および
d) 該共沈物を単離するステップ;
を含む。
【0046】
医薬用溶媒の選択は、選択されたその特定の医薬物質によって決まるものである。一般的には、医薬物質は医薬用溶媒に実質的に完全に可溶であるべきである。例えば、医薬物質最大約1gが医薬用溶媒約5〜10mLに可溶であるべきである。医薬用溶媒への医薬物質の溶解を促進または加速するために加熱を行ってもよい。さらに、医薬用溶媒は逆溶媒と混和性であるべきである。水性媒体中への溶解度が低い薬剤(例えば式(I)の化合物)のための好適な医薬用溶媒の具体的な例としては、限定するものではないが、塩素化溶媒、極性溶媒、極性非プロトン性溶媒、アルコール、およびこれらの混合物が挙げられる。より具体的には、好適な医薬用溶媒としては、限定するものではないが、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、医薬用溶媒はジクロロメタンである。
【0047】
医薬溶液は、上述のような医薬物質安定化剤をさらに含んでもよい。
【0048】
好適な逆溶媒は上述したとおりである。
【0049】
医薬懸濁液の形成を促進するため、医薬溶液と逆溶媒とを、撹拌しながら混合するのが望ましい。医薬溶液と逆溶媒とを混合するステップは都合よくは周囲温度または周囲圧で行うことができるが、加熱および/または加圧を採用してもよい。望ましい場合は、医薬物質懸濁液の調製中に、逆溶媒を除去して、新鮮な逆溶媒で置換することもできる。
【0050】
医薬懸濁液に添加する賦形剤溶液は、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる。好適な共沈性賦形剤は上述したとおりである。非水性溶媒は、それが医薬用溶媒と逆溶媒の両方と混和性であって、その結果この三つの溶媒の組み合せが単一相溶液を生じるように選択するべきである。したがって、医薬用溶媒、逆溶媒および非水性溶媒のそれぞれの選択は互いによって決まる。本発明のこの方法で使用するのに好適な非水性溶媒は上で述べられている。
【0051】
本発明の共沈物を調製するのに用いる医薬物質および共沈性賦形剤の量は、選択されたその特定の医薬物質および賦形剤によって決まるものである。一般的には、医薬物質と共沈性賦形剤の量は、医薬物質と共沈性賦形剤との比が約1:100〜約50:50である共沈物(すなわち、生成物)を与えるのに十分なものであろう。1つの実施形態では、共沈生成物中の医薬物質と共沈性賦形剤との比は約15:85〜約40:60である。1つの実施形態では、医薬物質と共沈性賦形剤との比は約25:75である。
【0052】
都合のよいことに、医薬懸濁液への賦形剤溶液の添加は周囲条件の下で行うことができる。しかしながら、望ましいのであれば、添加は低温でも行うことができる。必要であれば、または望ましいのであれば、この反応を撹拌しながら行うこともできる。医薬懸濁液への賦形剤溶液の添加はゆっくりと行うべきであり、1つの実施形態では、添加は滴下で行われる。
【0053】
医薬懸濁液への賦形剤溶液の添加は、医薬物質と共沈性賦形剤とからなる共沈物の形成をもたらす。特定の理論に縛られるのを望むものではないが、現時点では、得られる共沈物は、図2に示されているように、医薬物質のコア1と、その上に分散されている共沈性賦形剤からなる一層以上の層2とから構成されていると考えられる。この共沈性賦形剤の層は、典型的には均一な厚みではなく、ばらつくことがある。結果として得られる共沈物は、特に取扱性の点で、改善された物理特性を呈す。この共沈物は微細に分断された物質で、共沈性賦形剤の流動特性に似た流動特性を有する。より具体的には、結果として得られる共沈物は、自由流動性粒子状物質または粉末である。ワックス様医薬物質の場合、得られる共沈物はもはや、元の医薬物質の、粘着性でワックス様の特徴はもたない。つまり、別の態様では、本発明は、非結晶固体医薬物質の物理特性を改善するための別の方法を提供するものである。
【0054】
本発明の1つの具体的な実施形態では、該共沈物を調製するための方法は、以下のステップ:
a) (E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物をジクロロメタン中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液とイソオクタンとを混合してジクロロメタンとイソオクタンとの混合物中に懸濁された(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ;および
c) 該医薬懸濁液に、酢酸中に溶解したソルビトールを含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ;
を含む。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;および
d) 該共沈物を単離するステップ;
を含む方法によって生成した固体粒子状医薬物質を提供する。
【0056】
上述の方法により生成した共沈物はいずれも、非水性溶媒と逆溶媒との混合物から共沈物を分離するいずれかの適切な手段により単離することができる。例えば、共沈物は、濾過により単離することができる。濾過が採用される場合、後に共沈物を乾燥させて残留の溶媒または逆溶媒を除去するのが望ましいと考えられる。この任意的な乾燥ステップは、周囲温度と周囲圧、または加熱温度および/または減圧下で行うことができる。別の実施形態では、共沈物を、非水性溶媒および逆溶媒を蒸発除去することで単離する。
【0057】
上述の方法により生成した共沈物は、医薬組成物として単独で用いることもできるし、または一種以上の製薬上許容される賦形剤または担体を含んでなる医薬組成物中に組み込むこともできる。ある特定の実施形態では、本発明は、コア賦形剤からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物を提供し、この場合この医薬層は(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物と共沈性賦形剤とからなる。
【0058】
別の特定の実施形態では、該医薬組成物は、(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の共沈層とを有する共沈物を含んでなる。
【0059】
本発明の方法により調製される共沈物の医薬組成物は、慣用の医薬製剤化技術により、都合よく調製することができる。考えられる製剤としては、経口投与、舌下投与、頬腔内投与、非経口(例えば、皮下、筋内、または静脈内)投与、直腸投与、経皮、経鼻も含めた局所投与、および吸入投与に適した製剤が挙げられる。ある特定の患者のための最も適切な投与方法は、処置される病気の性質および重症度によって、またその活性化合物の性質によって決まるものであるが、投与の最適な経路は担当医師の裁量の範囲内である。
【0060】
経口投与に適した製剤は、所定量の活性化合物をそれぞれ含有する個別単位(例えば、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ロゼンジ剤)として、粉末もしくは顆粒として、水性もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油型エマルジョンもしくは油中水型エマルジョンとして提供することができる。
【0061】
舌下投与や頬腔内投与に適した製剤としては、活性化合物と、典型的には糖とアラビアガムもしくはトラガカントのような香味基剤とを含んでなるロゼンジ剤、およびゼラチンとグリセリンもしくはスクロースアラビアガム(sucrose acacia)のような不活性基剤中に活性化合物を含んでなるトローチ剤が挙げられる。
【0062】
非経口投与に適した製剤は、典型的には所定濃度の活性化合物を含有する無菌水性溶液からなる。この溶液は好ましくは対象レシピエントの血液と等浸透圧とする。この溶液は好ましくは経静脈的に投与されるが、皮下注射または筋内注射によっても投与することができる。
【0063】
直腸投与に適した製剤は、好ましくは、坐剤ベースを形成する一種以上の固体担体(例えばカカオバター)中に活性成分を含んでなる単位用量坐剤として提供する。
【0064】
局所投与または経鼻投与に適した製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ジェル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、およびオイル剤が挙げられる。このような製剤に適した担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの組み合せが挙げられる。活性成分は、典型的には、かかる製剤中に0.1〜15%(w/w)の濃度で存在する。
【0065】
本発明の製剤はいずれの適切な方法によっても調製することができ、典型的には、活性化合物と、液体もしくは微細に分断された固体担体またはこの両者とを、必要とされる割合で均一且つ緊密に混合し、必要とされる場合は、その後、得られた混合物を所望の形状に成形することで調製することができる。
【0066】
例えば錠剤は、活性成分の粉末または顆粒と、一種以上の付加的成分(例えば結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、または表面活性分散剤)とを含んでなる緊密混合物を圧縮成型することにより、あるいは粉末活性成分と不活性液体希釈剤との緊密混合物を型成形することにより調製することができる。
【0067】
吸入による投与に適した製剤としては、微細粒子のダストまたはミストが挙げられ、これは、各種タイプの計量式加圧エアロゾル器、ネブライザ器、または吸入器によって発生させることができる。
【0068】
口を介した肺への投与については、気管支樹への送達を確実なものとするために、粉末または液滴の粒子径は典型的には0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmの範囲内とする。経鼻投与については、鼻腔内での保持を確実なものとするために、粒子径は10〜500μmであるのが好ましい。
【0069】
計量式吸入器は、典型的には液化噴射剤中の活性成分の懸濁液製剤または溶液製剤を含有する加圧エアロゾル放出器である。使用に際しては、これらのデバイスは、ある計量用量(典型的には10〜150μL)を送達するようにつくられたバルブから製剤を送出して、活性成分を含有する微細粒子スプレーを生じさせる。好適な噴射剤としては、ある種のクロロフルオロカーボン化合物、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびこれらの混合物が挙げられる。かかる製剤は、一種以上の共溶媒(例えばエタノール界面活性剤(例えばオレイン酸またはソルビタントリオレエート))、抗酸化剤、および適切な香味剤をさらに含んでいてもよい。
【0070】
ネブライザ器は市販の装置であり、狭いベンチュリオリフィスを通る圧縮ガス(典型的には空気または酸素)の加速により、もしくは超音波撹拌により、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エアロゾルミストに変換するものである。ネブライザで使用される好適な製剤は、液体担体中に活性成分を含んでなり、該活性成分が製剤の最大40%(w/w)、好ましくは20%(w/w)未満を占める。担体は典型的には水または希水性アルコール溶液であり、好ましくは例えば塩化ナトリウムを加えることにより体液と等浸透圧とする。付加的な添加剤としては、製剤が無菌的に調製されない場合の防腐剤(例えばメチルヒドロキシベンゾエート)、抗酸化剤、香味剤、揮発性オイル、緩衝剤、および界面活性剤が挙げられる。
【0071】
吸入(insufflation)による投与に適した製剤としては、微細に粉砕された粉末剤が挙げられ、粉末剤は吸入器(insufflator)により送達することができ、または鼻から吸い込む方法によって鼻腔に取り込むことができる。吸入器では、粉末剤が、典型的にはゼラチンまたはプラスチックでできたカプセルまたはカートリッジに収容されており、これがin situ(その場)で穿孔または開口され、粉末剤が、吸入の際に装置の中に引き込まれる空気によって送達されるか、または手動式ポンプによって送達される。吸入器で使用する粉末剤は、活性成分のみからなるか、または活性成分、適切な粉末状希釈剤(例えばラクトース)、および場合により界面活性剤を含んでなる粉末混合物からなる。活性成分は、典型的には、製剤の0.1〜100%(w/w)を占める。
【0072】
本発明の方法に従って生成される共沈物は、水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤を調製するのに特に適している。本発明の1つの実施形態によれば、そのような医薬物質の水ベースの医薬製剤を、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
b) 該共沈物を単離するステップ;および
c) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む方法によって調製する。
【0073】
別の実施形態では、水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤の調製方法は、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して医薬用溶媒と逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
d) 該共沈物を単離するステップ;および
e) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む。
【0074】
好適な水性媒体としては、水、生理食塩液、シクロデキストリン水溶液、グルコース水溶液、およびこれらの混合物のような慣用の製薬上許容される水性溶媒が挙げられる。このような水性製剤は、場合により、一種以上のpH緩衝剤および/または他の慣用の製薬用添加剤を含有してもよい。
【0075】
本発明の方法に従って調製される共沈物およびそれを含有する医薬組成物は、薬物治療における用途を有する。特に、医薬物質が式(I)の化合物である共沈物および医薬組成物は、炎症性組織への白血球の浸潤を伴う炎症性の病気および免疫障害の治療に、特に米国特許第6,355,646号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の病気の治療に有用である。特に、そのような共沈物および組成物は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性消化不良、歯周病、湿疹、関節リウマチ、および喘息の治療に有用である。
【0076】
したがって、別の実施形態では、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおけるこれらの病気または疾患の治療方法を提供する。その方法は、本発明の方法の共沈物の治療上有効量を投与するステップを含む。本明細書で使用する場合、用語「治療」は、特定の病気を緩和すること、病気の症状を解消または軽減すること、病気の進行を減速または解消すること、および前に病気に罹った患者においてその病気が再発するのを抑制または遅延させることを意味する。
【0077】
該共沈物の正確な治療上有効量は様々な要因、例えば、限定するものではないが、その医薬物質と治療を受けている病気または疾患、治療を受けている患者の年齢と体重、治療を受けている病気または疾患の重症度、その製剤の性質、投与の経路などによって決まるものであり、最終的には担当の医師または獣医師の裁量による。式(I)の化合物の適切な用量は、米国特許第6,355,646号の開示に基づき当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0078】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明するが、これにより限定されるものではない。この実施例では、「化合物1」は、(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルを意味する。また「イソオクタン」は、2,2,4-トリメチルペンタンとしても知られている。
【0079】
実施例 1: ソルビトールでの共沈 1
酢酸(12mL、6容量)中の化合物 1(2.0g、1重量)およびソルビトール(3g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のソルビトール(3g、1.5重量)とイソオクタン(150mL、75容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(3×10mL、3×5容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:7.5g、3.75重量であった。
分析:化合物のソルビトールへの22%(w/w)付加を示した(すなわち:1gの化合物 1が4.48gの共沈物中に含有されている)。
【0080】
実施例 2: ソルビトールでの共沈 2
酢酸(12mL、4容量)中の化合物 1(3g、1重量)およびソルビトール(3g、1重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のソルビトール(3g、1重量)とイソオクタン(200mL、67容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×15mL、2×5容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:8.4g、2.8重量であった。
分析:化合物 1のソルビトールへの32%(w/w)付加を示した(すなわち:1gの化合物 1が3.16gの共沈物中に含有されている)。
【0081】
実施例 3: キシリトールでの共沈 1
酢酸(6mL、6容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびキシリトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のキシリトール(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと加える。得られる混合物を室温にて20分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×15mL、2×15容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.7g、3.7重量であった。
分析:この生成物は微細に分断された固形物であって、同様のソルビトールでの生成物よりも若干、より「粘着性」であることが観察された。
【0082】
実施例 4: キシリトールでの共沈 2
変性アルコール(IMS、7.5mL、7.5容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびキシリトール(1.5g、1.5重量)の温(85〜90℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のキシリトール(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×25mL、2×25容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.7g、3.7重量であった。
分析:この実施例では実施例3と非常に類似した生成物が得られた。
【0083】
実施例 5: ソルビトールおよびマルトデキストリンでの共沈
酢酸(7.5mL、7.5容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびソルビトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のマルトデキストリン(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×10mL、2×10容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.7g、3.7重量であった。
分析:化合物 1のソルビトール/マルトデキストリンへの22%(w/w)付加を示した(すなわち:1gの化合物 1が4.5gの共沈物中に含有されている)。
【0084】
実施例 6: キシリトールとマルトデキストリンでの共沈
酢酸(7.5mL、7.5容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびキシリトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のマルトデキストリン(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×10mL、2×10容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.7g、3.7重量であった。
分析:化合物 1のキシリトール/マルトデキストリンへの22%(w/w)付加を示した(すなわち:1gの化合物 1が4.5gの共沈物中に含有されている)。
【0085】
実施例 7: ソルビトールおよびキシリトールでの共沈
酢酸(7mL、7容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびソルビトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のキシリトール(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×25mL、2×25容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.6g、3.6重量であった。
分析:物理特性は、実施例1および2のソルビトール共沈物に非常に類似したものであった。
【0086】
実施例 8: サッカリンでの共沈
テトラヒドロフラン(7.5mL、7.5容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびサッカリン(1.5g、1.5重量)の溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のサッカリン(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(100mL、100容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×25mL、2×25容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.6g、3.6重量であった。
分析:化合物 1のサッカリンへの25%(w/w)付加を示した。
【0087】
実施例 9: ソルビトールおよび塩化ナトリウムでの共沈
酢酸(7mL、7容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびソルビトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中の塩化ナトリウム(1.5g、1.5重量)とイソオクタン(75mL、75容量)との混合物にゆっくりと20分かけて加える。添加している間に共沈物が集塊し始めたらイソオクタンをデカンテーションにより除去し、新鮮なイソオクタンで置換する。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×25mL、2×25容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:2.9g、2.9重量であった。
分析:化合物 1のソルビトール/塩化ナトリウムへの19%(w/w)付加を示した。
【0088】
実施例 10: ソルビトールでの共沈 3
酢酸(4mL、8容量)中の化合物 1(0.5g、1重量)およびソルビトール(0.75g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を室温(20〜25℃)にて撹拌中のヘプタン(75mL、150容量)中のソルビトール(1.5g、3重量)の混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をヘプタンで洗浄し(2×25mL、2×50容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:2.6g、2.6重量であった。
分析:化合物 1のソルビトールへの16%(w/w)付加を示した。
【0089】
実施例 11: 低温におけるソルビトールでの共沈
酢酸(7.5mL、7.5容量)中の化合物 1(1g、1重量)およびソルビトール(1.5g、1.5重量)の温(30〜40℃)溶液を0℃〜-3℃にて撹拌中のイソオクタン(75mL、75容量)中のソルビトール(1.5g、3重量)の混合物にゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を0℃〜-3℃にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(2×25mL、2×25容量)、40℃にて減圧下で乾燥させる。回収:3.9g、3.9重量であった。
分析:化合物 1のソルビトールへの22%(w/w)付加を示した。
【0090】
実施例 12: 共沈法 2
ジクロロメタン(10mL、1.9容量)と2-プロパノール(5mL、0.9容量)との混合物中の化合物 1(5.3g、1重量)の溶液を室温にて撹拌中のイソオクタン(300mL、57容量)にゆっくりと20分かけて加える。次に酢酸(30mL、5.7容量)中のソルビトール(15g、2.8重量)の溶液を室温にてゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(3×10mL、3×1.9容量)、45℃にて減圧下で乾燥させる。
回収:17.9g、3.4重量であった。
分析:顕微鏡分析により化合物 1がソルビトールでコートされていることが明らかになった。
【0091】
実施例 13: 共沈法 2
ジクロロメタン(10mL、2容量)と2-プロパノール(5mL、1容量)との混合物中の化合物 1(5g、1重量)の溶液を室温にて撹拌中のイソオクタン(400mL、80容量)にゆっくりと20分かけて加える。次に酢酸(50mL、10容量)中のソルビトール(25g、5重量)の溶液を室温にてゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(3×10mL、3×1.9容量)、45℃にて減圧下で乾燥させる。
【0092】
実施例 14: キシリトールでの共沈法 2
ジクロロメタン(10mL、2容量)と2-プロパノール(5mL、1容量)との混合物中の化合物 1(5g、1重量)の溶液を室温にて撹拌中のイソオクタン(300mL、60容量)にゆっくりと20分かけて加える。次に酢酸(30mL、6容量)中のキシリトール(15g、3重量)の溶液を室温にてゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(3×10mL、3×1.9容量)、45℃にて減圧下で乾燥させる。
【0093】
実施例 15: 共沈法 2
ジクロロメタン(10mL、2容量)と2-プロパノール(5mL、1容量)との混合物中の化合物 1(5g、1重量)の溶液を室温にて撹拌中のヘプタン(300mL、60容量)にゆっくりと20分かけて加える。次に酢酸(30mL、6容量)中のソルビトール(15g、3重量)の溶液を室温にてゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をヘプタンで洗浄し(3×10mL、3×1.9容量)、45℃にて減圧下で乾燥させる。
【0094】
実施例 16: BHT使用の共沈法 2
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(1g、0.2重量)を含有するジクロロメタン(10mL、2容量)と2-プロパノール(5mL、1容量)との混合物中の化合物 1(5g、1重量)の溶液を室温にて撹拌中のイソオクタン(300mL、60容量)にゆっくりと20分かけて加える。次に酢酸(30mL、6容量)中のソルビトール(15g、3重量)の溶液を室温にてゆっくりと20分かけて加える。得られる混合物を室温にて30分間撹拌し、固形物を濾過により分離する。この固形生成物をイソオクタンで洗浄し(3×10mL、3×1.9容量)、45℃にて減圧下で乾燥させる。
【0095】
実施例 17:懸濁液製剤
実施例1〜16のうちのいずれかにより調製される化合物 1共沈物を含有する懸濁液剤は、典型的な範囲で示されている以下の機能成分から構成される。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0096】
* 医薬/ソルビトール比 1:3と仮定する。API懸濁物濃度2.5%(w/w)に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の方法に従って生成した共沈物粒子の説明図である。
【図2】本発明の方法に従って生成した共沈物粒子の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状形態の非結晶固体医薬物質の調製方法であって、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
b) 該共沈物を単離するステップ;
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記医薬物質が(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共沈性賦形剤が、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、スターチ1500、塩化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非水性溶媒が、有機酸、アルコール、極性非プロトン性溶媒、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コア賦形剤が、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記逆溶媒がアルカン溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
非結晶固体医薬物質の共沈物の調製方法であって、非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えることを含み、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である、上記方法。
【請求項8】
コア賦形剤からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物であって、該医薬層が医薬物質と共沈性賦形剤とからなり、且つ該共沈物が、非水性溶媒中に溶解した該医薬物質と該共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を逆溶媒中に分散した該コア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えることにより調製され、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である、上記医薬組成物。
【請求項9】
コア賦形剤からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の医薬層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物であって、該医薬層が(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物と共沈性賦形剤とからなる、上記医薬組成物。
【請求項10】
水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤の調製方法であって、以下のステップ:
a) 非水性溶媒中に溶解した医薬物質と共沈性賦形剤とを含んでなる共沈溶液を、逆溶媒中に分散したコア賦形剤を含んでなるスラリーにゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
b) 該共沈物を単離するステップ;および
c) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む方法。
【請求項11】
粒子状形態の非結晶固体医薬物質の調製方法であって、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;および
d) 該共沈物を単離するステップ;
を含む、上記方法。
【請求項12】
前記医薬物質が(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬用溶媒が、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記逆溶媒がアルカン溶媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記共沈性賦形剤が、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、キシリトール、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、スターチ1500、塩化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記非水性溶媒が、有機酸、アルコール、極性非プロトン性溶媒、およびこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
非結晶固体医薬物質の共沈物の調製方法であって、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えるステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
を含む、上記方法。
【請求項18】
医薬物質からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の共沈層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物であって、該共沈層は共沈性賦形剤からなり、且つ該共沈物が以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;および
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えるステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
を含む方法によって調製されるものである、上記医薬組成物。
【請求項19】
(E)-4-(1,3-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-9H-プリン-8-イル)桂皮酸ノナエチレングリコールメチルエーテルエステルまたはその溶媒和物からなるコアと該コアの周囲を取り囲む一層以上の共沈層とを有する共沈物を含んでなる医薬組成物。
【請求項20】
水性媒体への溶解度が低い非結晶固体医薬物質を含んでなる水ベースの医薬製剤の調製方法であって、以下のステップ:
a) 医薬物質を医薬用溶媒中に溶解させて医薬溶液を調製するステップ;
b) 該医薬溶液と逆溶媒とを混合して該医薬用溶媒と該逆溶媒との混合物中に懸濁された該医薬物質を含んでなる医薬懸濁液を調製するステップ、ここで該医薬用溶媒と該逆溶媒とは混和性である;
c) 該医薬懸濁液に、非水性溶媒中に溶解した共沈性賦形剤を含んでなる賦形剤溶液をゆっくりと加えて共沈物を調製するステップ、ここで該非水性溶媒は該医薬用溶媒および該逆溶媒と混和性である;
d) 該共沈物を単離するステップ;および
e) 該共沈物と製薬上許容される水性媒体とを混合して水ベースの医薬製剤を提供するステップ;
を含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508388(P2007−508388A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535582(P2006−535582)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033521
【国際公開番号】WO2005/037253
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】