説明

非脱湿潤性多孔質膜

非脱湿潤性の微孔質膜複合材料が開示される。これらの微孔質膜複合材料は、メタノールと水との溶液で湿潤され、水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性である。微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体を含み、この微孔質膜支持体は、親水性基を含む架橋イオノマーで被覆されている。微孔質膜支持体と比較して、微孔質膜複合材料は、82%未満の平均イソプロピルアルコール流動損失を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、出願人整理番号200800038Pの2009年4月6日に出願された米国仮特許出願第61/166,879号明細書の利益を主張しており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、種々の液体および気体を濾過し、これらの流体から汚染物質、例えば、粒子、組織断片、細胞、微生物、気泡、ゲル粒子などを除去するために使用されている。こうした多孔質膜は、ポリマー組成物、金属、セラミックおよび/または生物学的組成物から形成され得、制御された適度な多孔度、細孔径および細孔径分布、ならびに規定厚さを有し得る。多孔質膜は、単独でも使用され得、または流体流れ中に挿入されてその流体からの粒子などの除去をもたらし得るフィルターデバイス、例えば、カートリッジに組み込まれることもあり得る。
【0003】
多孔質膜は、濾過する流体に対して耐薬品性があり、濾過の間、膜の強度、多孔度、化学的完全性、および清浄度を維持する。例えば、超小型電子回路の製造において、ポリマー多孔質膜で作られたフィルターは、種々の腐食性のまたは化学的に活性な処理流体(液体、超臨界流体、および気体)を精製して、粒子状汚染物質が欠陥および回路の故障の原因となるのを予防するために使用される。流体の濾過または精製は、通常、多孔質膜に処理流体を、多孔質膜の上流側のより高い圧力の帯域から多孔質膜の下流側のより低い圧力の帯域の方に通過させることによって行われる。従って、このようにして濾過される液体、気体、さらには超臨界流体も、多孔質膜フィルターを横切っての圧力降下を被る。
【0004】
液体については、多孔質膜を横切ってのこの圧力降下または差圧は、多孔質膜の下流側の液体よりも高いレベルの溶存気体を多孔質膜の上流側の液体が有するという結果をもたらし得る。空気などの気体は、より低い圧力の液体に比べ、より高い圧力の液体に、より高い溶解度を有するため、液体における気体溶解度および/または気体圧縮率に変化が生じる。液体が膜フィルターの上流側から下流側に進むにつれて、溶存気体は気泡を形成し、粒子または表面欠陥上に核を形成するか、または膜中の溶液から出てきて液体のガス発生をもたらし得る。ガスを発生させ得る液体、すなわちガス発生性液体は、半導体および超小型電子デバイスの製造において一般的に使用されており、例えば、水、過酸化水素、SC1およびSC2洗浄浴、オゾン化水、アルコールなどの有機溶媒、フォトレジストおよび反射防止膜、現像液、必要に応じて酸化剤を含有し得る他の水性の酸および塩基、ならびに緩衝化酸化物エッチ液(BOE)などの塩含有溶液が挙げられ得る。
【0005】
疎水性多孔質膜は、直接的に水では湿潤されず、多孔質膜上の水滴について90°より大きい接触角を有する。疎水性多孔質膜でのガス発生性液体の濾過は、内部細孔表面および外部または幾何学的表面を含めた疎水性膜上の部位および表面で溶存気体が液体から出てくるという結果をもたらし得る。疎水性多孔質膜は、液体よりも気体に対してより大きな親和力を有する。その液体から出てくる気体は、蓄積され、ガスポケットを形成し得、これが、疎水性多孔質膜の表面および細孔に付着する。こうしたガスポケットは、継続的な液体ガス発生により大きさが大きくなると、疎水性多孔質膜の細孔から液体を押し退け始め、最終的に、その疎水性多孔質膜の有効濾過領域を低減する。この現象は、疎水性多孔質膜の流体湿潤部分、すなわち流体充満部分が徐々に流体非湿潤部分、すなわち気体充満部分へと変えられていくことから、一般に、疎水性多孔質膜の脱湿潤(dewetting)と呼ばれる。疎水性多孔質膜において脱湿潤が起こる場合、膜のこの部分での濾過ができなくなり、その結果フィルターの全体的な濾過効率が低下することになる。
【0006】
Teflon(登録商標)のような化学的に不活性なフィルター材料が、腐食性の化学的に活性な流体中での膜の劣化を防止するために使用され得る。そのような流体に対して不適合性のフィルター膜は、膜組成物の化学分解に繋がり得る劣化を被り得る。膜劣化は、使用中に抽出物がフィルターから放出される、したがって、濾過される流体の純度、完全性および清浄度が損なわれるという結果をもたらし得る。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPFA(ポリテトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロアルコキシビニルエーテル)などのフッ素含有ポリマーで作られた膜フィルターが、こうした用途において利用され得る。フッ素含有ポリマーは、その化学的不活性および優れた耐化学薬品性でよく知られている。フッ素含有ポリマーの1つの不利な点は、それが疎水性であることであり、したがって、そのようなポリマーで作られた多孔質膜は、水性液またはその膜の表面エネルギーよりも大きい表面張力を有する他の流体で濡れにくいことである。疎水性膜の表面を水または水性流体で濡らすために現在行われているのは、まず低表面張力の、例えばイソプロピルアルコールなどの有機溶媒で膜表面を濡らし、続いて、多孔質膜表面と水および有機溶媒の混合物とを接触させ、次いで、この交換された膜と水または水性流体とを接触させるというやり方である。この方法は、処分されねばならない大量の溶媒廃棄物を生じ得、フィルターカートリッジの水での付加的な流水洗浄のせいで大量の水を消費し得る。あるいは、疎水性膜は、圧力下にて水で濡らされ得る。この加圧押込法(pressure intrusion process)は、密細孔膜には、時間がかかり、費用がかかって有効ではなく、薄い多孔質膜の破壊をもたらし得る。さらに、この方法は、膜中の細孔の実質的部分への完全な水の浸入を確実にするものではない。
【0007】
疎水性多孔質膜とは対照的に、親水性多孔質膜は、水性液に接触すると自然に濡れるため、膜表面を濡らすための処理方法は使用されない。つまり、有機溶媒もしくは加圧押込での前処理、または、例えば攪拌などによる機械的エネルギーが、親水性膜表面を水で濡らすために使用されることはない。
【0008】
Moyaは、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,354,443号明細書において、表面全体を非脱湿潤性にするために結合ペルフルオロカーボンコポリマー組成物で変性されたポリペルフルオロカーボン膜などの多孔質膜の変性および特性決定を開示している。多孔質膜基体または支持体が、溶媒または希釈剤中のペルフルオロカーボンコポリマー組成物と接触される。過剰なペルフルオロカーボンコポリマー組成物は、このコポリマーのための溶媒または希釈剤で表面から除去される。この溶媒または希釈剤は、膜表面に結合したペルフルオロカーボンコポリマー組成物を除去しない。このコポリマー組成物を表面に結合させた膜は、次いで、膜基体と表面変性用ペルフルオロカーボンコポリマー組成物との間の結合を向上させるために熱処理される。ペルフルオロカーボンコポリマー組成物は、膜細孔の実質的な封鎖または閉塞を回避しながら膜表面が完全に変性されるような濃度および量で利用される。表面変性多孔質膜は、未変性膜を横切っての圧力降下と比較して、25%超の増加を上回らない圧力降下を有する。完全な表面変性は、メチレンブルー染料での染色により決定され得る。
【0009】
Steuckは、米国特許第4,618,533号明細書において、フッ素化されていない架橋ポリマーで直接的に被覆された多孔質ポリマー膜から形成される複合材料多孔質膜を開示している。この複合材料多孔質膜は、多孔質ポリマー膜の多孔度を保持する。この複合材料多孔質膜は、あるモノマーから形成されヒドロキシアルキルアクリレートで架橋されたポリマーで直接的に被覆された多孔質ポリフッ化ビニリデン膜から形成される。
【0010】
Moyaは、米国特許第5,928,792号明細書において、ペルフルオロカーボンコポリマー組成物で表面が完全に変性された多孔質膜生成物を生成するための方法を開示している。多孔質膜基体が、ペルフルオロカーボンコポリマー組成物を含有する溶液と接触して、その組成物を基体表面上に結合させる。この基体は、過剰なペルフルオロカーボンコポリマー組成物を除去するために機械力に供され、次いで熱処理される。
【0011】
Moyaは、米国特許第6,179,132号明細書において、ペルフルオロカーボンポリマー組成物で表面が変性された多孔質ポリペルフルオロカーボン膜基体から形成される多孔質膜を開示している。この変性された表面は、直接的に水で湿潤される。
【0012】
Moyaは、米国特許第7,094,469号明細書において、未変性基体と比較して改善された親水特性を有する表面を提供するために、親水性官能基を有する、例えば、架橋および/またはグラフトによって固定化されたフルオロカーボンで表面が変性されたフッ素含有ポリマー基体から形成される、多孔質もしくは非多孔質の膜または物品を開示している。この変性された表面は、水性流体で湿潤後に非脱湿潤性である、または直接的に水性流体によって湿潤される。このフッ素含有ポリマー基体は、多孔質膜とすることもでき、または非多孔質物品とすることもできる。固定化されたフルオロカーボンは、式:[T−SOY−SOT’][式中、TおよびT’は、同一または異なり、少なくとも1つの活性な重合官能基、例えば、不飽和または開環可能な環などを有する有機ラジカルを含み;−Mは、無機カチオンを含む]を有するモノマーから形成される。
【0013】
Moyaは、米国特許第7,112,363号明細書において、未変性基体と比較して改善された親水特性を有する表面を提供するために、親水性官能基を有する架橋または分岐したフルオロカーボンポリマー組成物で表面が変性されたフッ素含有ポリマー基体から形成される、多孔質もしくは非多孔質の膜または物品を開示している。このフッ素含有ポリマー基体は、多孔質膜とすることができ、または非多孔質物品とすることもできる。親水性官能基を有する架橋フルオロカーボン、例えば、ペルフルオロカーボンなどのポリマー組成物を含む表面が提供され、この架橋フルオロカーボンポリマー組成物は、スルホニルもしくはカルボニル含有基を有し重合鎖を連結する連結橋または架橋を有する。
【0014】
Moyaは、米国特許第7,288,600号明細書において、フルオロカーボンポリマー前駆体から形成される、フッ素化架橋基で架橋された、親水性官能基を有する架橋フルオロカーボンポリマー組成物であって、熱的および化学的に安定であり、そのフルオロカーボンポリマー前駆体よりも親水性が高められ得る架橋フルオロカーボンポリマー組成物を開示している。過フッ素化架橋基で架橋された架橋ペルフルオロカーボンポリマー組成物は、例えば、水酸化アンモニウムなどの塩基、過酸化水素またはオゾンなどの酸化剤などの反応性の高い試薬、および水を含有する、約9より大きいpHを有する液体組成物(例えば、電子部品の製造の間に使用されるSC1などの特殊洗浄(SC)溶液)との接触による分解に対して安定である。米国特許第7,288,600号明細書によれば、非過フッ素化有機基を含有する架橋部分がこうした試薬との接触により分解された状態になり、これらの非過フッ素化化学架橋が破壊される結果、架橋ポリマーはその元の架橋度を失う。親水性官能基を有する当該架橋フルオロカーボンポリマー組成物は、重合鎖の部分を連結するループを含み得るスルホニルもしくはカルボニル含有基を有し重合鎖を連結する連結橋または架橋を有することが開示されている。
【0015】
参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,902,676号明細書は、水により湿潤され得る多孔質親水性膜を開示している。この親水性膜は、非晶質イオノマーを含浸させた多孔質不活性支持体を含み、この親水性膜は、それが1L/(時間 m atm)より高い、場合によっては500L/(時間 m atm)より高い透水度を有すること;そのイオノマーが非晶形であるかまたは5%未満の結晶化度を有し、かつ酸性型の親水性基を有することを特徴とする。0.2ミクロンの多孔度および40ミクロンの厚さを有する二軸延伸(bistretched)PTFEベースのGoretex膜が使用される。高い透過性を有する膜(支持体+イオノマー)は、0.5〜10重量%の含浸イオノマー量を含有する。20重量%イオノマー〜30重量%イオノマーが使用される場合には、気体を部分的に吸蔵した膜および完全に吸蔵した膜の両方が見られる。この特許は、(過)フッ素化イオノマーは架橋され得るが、架橋を行うことによって得られ得る膜は多孔質の非架橋の膜よりも低い透水性を示し、これが架橋エンティティ(crosslinking entity)に依存することを開示している。さらに、架橋は支持体壁を被覆するイオノマー量を増加させることが開示されている。この特許における2つの実施例は、含浸微孔質膜の総質量の16重量%イオノマーおよび33重量%イオノマーを含むフッ素化溶媒を使用した架橋多孔質膜の調製を記載している。
【0016】
Benezraは、米国特許第4,470,859号明細において、分散ペルフルオロカーボンコポリマーから、例えば網状電極またはフィルターなどの多孔質基体上に親水性コーティングを形成するための方法を開示している。このコーティングは架橋されない。Benezraによれば、そのようなコーティングにおいて使用されるペルフルオロカーボンコポリマーは、多孔質または微孔質の基体に親水特性を付与するのに十分なスルホニルおよび/またはカルボニルベースまたは由来の官能基の存在を合理的に確保するためには、約1500を超えない当量重量を有するべきである。さらに、Benezraは、コポリマーペルフルオロカーボン1単位当たりに過多の官能基が存在する場合には、多孔質または微孔質の基体に塗布されたコーティングは、例えば水性流体に、過度に可溶であり得、またはそのコーティングと接触している材料により浸食的に攻撃されることもあり得ることを開示している。Benezraは、使用されるペルフルオロカーボンポリマーの当量重量は、コポリマーペルフルオロカーボンのペンダント官能基が、カルボニルベースまたは由来の場合は約900以上であり、ペンダント官能基がスルホニルベースまたは由来の場合は約950以上であることを開示している。
【0017】
Benezraは、さらに、コーティング分散体は、分散媒が除去されて微孔質基体の基礎構造(infrastructure)の実質的に全ての表面にペルフルオロカーボンコポリマーコーティングを残す間、その微孔質基礎構造内に比較的容易に保持されるのに十分なほど粘性であるべきであることを開示している。Benezraによれば、粘性または他の理由で、連続微孔質(openly microporous)基体内の分散体または溶液が、分散媒除去の間に流出し得るような場合には、分散媒または溶媒の除去の間にタンブリング技術を利用すると、基礎構造内にペルフルオロカーボンコポリマーを保持するのを助け得る。別の選択肢として、Benezraは、微孔質基体の基礎構造の表面へのペルフルオロカーボンコポリマーの付着を、その基礎構造中インサイチューでコポリマーペルフルオロカーボンを沈殿させることによって向上させ得ることを開示している。このような多量のコーティングの膜表面での保持は、特に0.2ミクロン以下の細孔径を有する微孔質膜については、低透水性に繋がり得る。
【0018】
米国特許第6,576,100号明細書は、少なくとも1つのエチレン不飽和を含有する1種以上のフッ素化モノマーに由来するモノマー単位、および示された当量重量を与えるような量でスルホン基−SOFを含有するフッ素化モノマー単位を含む、380〜1300g/当量の当量重量を有する架橋スルホンフッ素化イオノマーを開示している。この開示によれば、一般に、より低い当量重量を有するイオノマーであるスルホン基の量が多くなるほど、電気化学的用途におけるイオン交換容量および触媒用途における触媒活性の両方に関して、その適用におけるイオノマーの効率が向上する。この開示によれば、例えば燃料電池などの電気化学的用途において、イオノマーの伝導性とイオノマーの水の保持力との間には直接的な相関関係がある。この特許によれば、イオン基の存在率を高めると、イオン伝導性が増し、ある一定の限度内で、ポリマーが維持し得る水の量が増大した。
【0019】
Bacinoは、米国特許第7,306,729号明細書において、例えば膜に対する支持または保護を提供し得る1つ以上の追加層で膜を層状化することにより、複合材フィルターまたは複合材通気孔として構築され得る多孔質PTFE膜を開示している。この1つもしくは複数の追加層は、最終用途要件に応じて、膜に結合されてもされなくてもよい。Bacinoによれば、これらの膜は、それらを、例えば水性流体の濾過を含む、液体濾過用途において使用可能にする種々の技術によって親水性(圧力をほとんどまたは全くかけない状態で水濡れ性)にされ得る。この明細書によれば、多孔質PTFE膜は、それを親水性にするために、イソプロピルアルコール/脱イオン水の50/50混合物中1%ポリビニルアルコール(PVA)の溶液への浸漬によって処理された。多孔質膜上のPVAコーティングは、半導体加工に使用される洗浄浴において予想される、酸化、強アルカリおよび高温による腐食環境において、安定ではないであろう。したがって、PVA被覆多孔質膜は、そのような浴中での長時間にわたる使用の間に脱湿潤し、疎水性になると予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,354,443号明細書
【特許文献2】米国特許第4,618,533号明細書
【特許文献3】米国特許第5,928,792号明細書
【特許文献4】米国特許第6,179,132号明細書
【特許文献5】米国特許第7,094,469号明細書
【特許文献6】米国特許第7,112,363号明細書
【特許文献7】米国特許第7,288,600号明細書
【特許文献8】米国特許第6,902,676号明細書
【特許文献9】米国特許第4,470,859号明細書
【特許文献10】米国特許第6,576,100号明細書
【特許文献11】米国特許第7,306,729号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、有機溶媒含量を減少させた水溶液で湿潤され、良好な流動特性を有する、改善された非脱湿潤特性を有する微孔質膜に対する継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
イオノマーおよび架橋剤を含有するフルオロカーボン液体組成物の、例えばロールコーターを用いることによる微孔質膜支持体内への塗布は、微孔質膜上のそのイオノマーの架橋コーティングが、同じフルオロカーボン液体組成物を含浸させた微孔質膜支持体のある液体の流動損失と比較して、その同じ液体のより低い流動損失を有するという結果をもたらすことが見出された。さらに、フルオロカーボン液体組成物の塗布によって被覆された微孔質膜支持体の流動損失は、フルオロカーボン溶媒中のイオノマー濃度によって確実に変えられ得る。さらに、本発明の変形例(version)における微孔質膜支持体上に塗布された架橋イオノマーコーティングは、当量重量が低いものほど湿潤性が劣るが、より高い当量重量の架橋イオノマーを用いて作製された、微孔質支持体上に塗布された類似のコーティングと比較して、より優れた流動損失特性を有することが見出された。
【0023】
本発明の変形例は、微孔質膜支持体の流体接触表面に塗布され硬化された、フッ素化イオノマー、ラジカル開始剤、および架橋剤を含むフルオロカーボン液体組成物のコーティングを有する微孔質膜複合材料を包含する。微孔質膜支持体は、イオノマーの変換可能な官能基を親水性基に転化するために活性化され得る。微孔質膜複合材料は、水オートクレーブ後に非脱湿潤性であり、380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する少なくとも1種の架橋非晶質イオノマーが塗布された微孔質膜支持体を含む。イオノマーは、フルオロカーボン溶媒、フッ素化イオノマーおよび/またはフッ素化イオノマー前駆体、ラジカル開始剤、ならびに架橋剤を含むコーティング溶液から塗布される。コーティング溶液中のイオノマー前駆体は、最終の微孔質膜複合材料が、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤され、非脱湿潤性で、かつ微孔質膜支持体と比較して82%以下の流動損失を有するものとなるように、架橋性イオノマーまたは架橋性イオノマー前駆体で微孔質膜支持体表面および微孔質膜支持体細孔を被覆する量で存在する。本発明の一部の変形例において、この微孔質膜複合材料は、22.5℃にて1000L/時間 m atm以上の透水度を有する。
【0024】
本発明の1つの変形例は、水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性である、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な高表面積微孔質膜複合材料を含む。この微孔質膜複合材料は、流体接触表面上にコーティングを有する微孔質膜支持体を含み、このコーティングは、イオノマーおよび架橋基を含む。この微孔質膜複合材料コーティングは、微孔質膜支持体の定格細孔径が0.45ミクロン以下である場合に、一部の変形例においては、微孔質膜支持体の細孔径が0.2ミクロン以下である場合に、被覆されていない微孔質膜についての平均イソプロピルアルコール流動時間に基づき82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を微孔質膜複合材料が有することになる厚さを有する。一部の変形例において、この微孔質膜支持体は、多層構造を有する。
【0025】
本発明の別の変形例は、微孔質膜支持体の流体接触細孔および表面に、非晶質フッ素化イオノマーを含む架橋コーティングを有する微孔質膜複合材料である。この微孔質膜支持体上の薄い架橋コーティングは、水中でのオートクレーブ試験によると非脱湿潤性であり、22.5℃または約22.5℃にて1000L/atm×時間×mより高い透水度によって特徴付けられ得る微孔質膜複合材料をもたらす。この被覆微孔質膜複合材料は、水中にメタノールを含有する溶液で湿潤され得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、水中に、80重量%未満のメタノール、一部の変形例においては60重量%未満のメタノール、さらに他の変形例においては35重量%未満のメタノール、なおさらに他の変形例においては15重量%未満のメタノールを有する、水中にメタノールを含有する溶液により湿潤される。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体の表面上のコーティングの質量は、微孔質膜複合材料の、約25重量%〜約30重量%の間であり得る。本発明の他の変形例において、微孔質膜支持体の表面上のコーティングの質量は、微孔質膜複合材料の約2重量%〜約30重量%の間であり得る。本発明の変形例において、被覆微孔質膜複合材料は、60nmol/cmより高い、一部の変形例においては95nmol/cmより高いイオン交換容量を有し得る。微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングの均一性は、デンシトメトリー読取り値が0.4以下の相対標準偏差を有する、メチレンブルー染料で染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均によって特徴付けられ得る。本発明の一部の変形例において、架橋フッ素化イオノマーコーティングは、5000ppmの3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有する熱IPAとの接触後にメチレンブルー染料で染色された、被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均によって特徴付けられ得る。一部の変形例において、この平均は、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有する熱IPAとの接触前にメチレンブルー染料で染色された被覆微孔質膜複合材料の平均デンシトメーター読取り値と比較して、95%の信頼限界で異ならない。本発明の一部の変形例において、フルオロ界面活性剤を含有する熱イソプロピルアルコールでの処理前後のデンシトメトリー平均間の差異は、−9%〜+9%の間である。
【0026】
本発明の別の変形例は、0.45ミクロン以下の細孔径、場合によっては0.2ミクロン以下の細孔径、さらに他の場合には0.1ミクロン以下の細孔径の微孔質膜支持体の濾過表面を被覆する、架橋部分が親水性基を含有しない、架橋フッ素化イオノマーのコーティングを含む非脱湿潤性の微孔質膜複合材料である。微孔質膜支持体は、1つ以上の支持体および/または保持層を含む。本発明の一部の変形例において、このコーティングは、微孔質膜複合材料の2重量%〜30重量%であり、本発明の他の変形例において、微孔質膜支持体の表面上のコーティングの質量は、微孔質膜複合材料の約25重量%〜約30重量%の間であり得る。微孔質膜複合材料は、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、被覆されていない微孔質膜支持体についての平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して、82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有する。本発明の一部の変形例において、非脱湿潤性の微孔質膜複合材料は、被覆微孔質膜の直径47mm試料に対し、500mLのイソプロピルアルコールについて、4700秒未満の、約14.2ポンド毎平方インチ(97905.6Pa)の圧力でのイソプロピルアルコール流動時間を有することによって特徴付けられる。コーティングの均一性は、メチレンブルーで染色された微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値が、相対標準偏差が0.4未満となる、平均デンシトメーター値を有するようなものである。熱IPAと5000ppmフルオロ界面活性剤との浴中での少なくとも4時間にわたる処理後の、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値の平均が、処理前のそのメチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均と異ならない。本発明の一部の変形例において、フルオロ界面活性剤を含有する熱イソプロピルアルコールでの処理前後のデンシトメトリー平均間の差異が、−9%〜+9%の間である。
【0027】
本発明の変形例は、フッ素化イオノマーを溶解または分散させて含有するフルオロカーボン液状媒体を含むフルオロカーボン液体組成物であって、そのフッ素化イオノマーの少なくとも90重量%が、200ナノメートル(nm)未満、一部の変形例においては125nm未満、他の変形例においては40nm未満、なおさらに他の変形例においては15nm未満の粒度の粒子からなる、フルオロカーボン液体組成物を包含する。本発明の一部の変形例において、フッ素化イオノマーは、380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する。フッ素化イオノマーは、エチレン性基と親水性基に変換可能な官能基とを含有するフッ素化モノマー単位を含み、その変換可能な基は、−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである。フッ素化イオノマーは、さらに、式(OF−1)、(OF−2)、(OF−3)またはそれらの組み合わせの間で選択されるビス−オレフィンに由来するモノマー単位を含み、ここで、(OF−1)は、構造:
【化1】

によって示され、この(OF−1)の構造において、jは、2〜10の間、好ましくは4〜8の間の整数であり、R1、R2、R3、R4は、同一または互いに異なり、H、FまたはC〜Cアルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である。(OF−2)は、構造:
【化2】

によって示され、この(OF−2)の構造において、各Aは、同一または互いに異なり得、そして各出現で独立して、F、ClおよびHから選択され;各Bは、同一または互いに異なり得、そして各出現で独立して、F、Cl、HおよびORBから選択され、ここで、RBは、部分的に、実質的にまたは完全に、フッ素化または塩素化され得る分枝状もしくは直鎖状のアルキルラジカルであり;Eは、エーテル結合で挿入され得る、必要に応じてフッ素化されている、2個〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくは、Eは、−(CF−基であり、ここで、mは3〜5の整数であり;(OF−2)型のビス−オレフィンの1つの変形例は、FC=CF−O−(CF−O−CF=CFである。(OF−3)は、構造:
【化3】

によって示され、この(OF−3)の構造において、E、AおよびBは、上に規定された同じ意味を有し;R5、R6、R7は、同一または互いに異なり、H、FまたはC〜Cアルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である。本発明の一部の変形例において、ビス−オレフィンは、式:
C=CH−(CF−CH=CR
を有し、式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である。
【0028】
フッ素化イオノマーは、さらに、ヨウ素および/または臭素原子を含む。本発明の一部の変形例において、このヨウ素および/または臭素原子は、イオノマー主鎖の末端位にあり、このヨウ素および/または臭素原子は、式:
(CF)
のフルオロカーボン連鎖移動剤に由来し、式中、XおよびXは、I、Brおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明の一部の変形例において、このヨウ素および/または臭素原子の含有量は、イオノマーに基づき、0.1重量%〜5重量%の間である。
【0029】
本発明の一部の変形例において、フッ素化イオノマーは、テトラフルオロエチレンを含むモノマー単位、エチレン性基と親水性基に変換可能な官能基とを含有するフッ素化モノマー単位を含み、この親水性基に変換可能な官能基は、−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである。このフッ素化イオノマーは、さらに、式:
C=CH−(CF−CH=CR
のビス−オレフィンに由来するモノマー単位を含み、式中:mは、2〜10の間の整数であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である。このフッ素化イオノマーは、さらに、主鎖の末端位にヨウ素および/または臭素原子を含み、このヨウ素および/または臭素原子は、式:
(CF)
のフルオロカーボン連鎖移動剤に由来し、式中、XおよびXは、I、Brおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0030】
本発明の一部の変形例において、エチレン性基と親水性基に変換可能な官能基とを含有するフッ素化モノマー単位は、式:
CF=CF−O−CFCFSO
を有する。
【0031】
本発明の変形例において、フルオロカーボン液体組成物は、追加的に、架橋剤およびラジカル開始剤を含み得る。本発明の一部の変形例において、架橋剤は、式:
C=CH−(CF−CH=CR
のビス−オレフィンであり得る、またはそのビス−オレフィンであり、式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である。ラジカル開始剤は、有機ジアルキルペルオキシドであり得る、または有機ジアルキルペルオキシドであり、好ましくは、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンである。
【0032】
フルオロカーボン液体組成物の一部の変形例において、フッ素化イオノマーの少なくとも95重量%が、200ナノメートル(nm)未満の粒度の粒子から、他の変形例においては125nm未満の粒度の粒子からなり得、さらに他の変形例において、フッ素化イオノマー粒度は40nm未満であり、なおさらに他の変形例において、この粒度はより小さいか、または15nm未満である。この液体組成物の他の変形例において、フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、200ナノメートル(nm)未満の粒度の粒子から、他の変形例においては125nm未満の粒度の粒子からなり得、さらに他の変形例において、この粒度は40nm未満であり、なおさらに他の変形例において、この粒度はより小さいか、または15nm未満である。本発明のさらに他の変形例において、この液体組成物は、少なくとも99重量%が125nm未満の粒度の粒子からなるフッ素化イオノマーを有する。この液体組成物のなおさらに他の変形例において、フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、40nm未満の粒度の粒子からなる。この液体組成物のなおさらなる変形例において、フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、15nm未満の粒度の粒子からなる。
【0033】
本発明の別の変形例は、架橋性フッ素化イオノマーを溶解または分散させて含有するフルオロカーボン液状媒体を含むフルオロカーボン液体組成物であり、その架橋性フッ素化イオノマーの少なくとも90重量%が、200nm未満、好ましくは125nm未満、より好ましくは40nm未満、なおより好ましくは15nm未満の粒度の粒子からなる。この液体組成物の一部の変形例において、液体組成物は、追加的に、架橋剤およびラジカル開始剤を含む。
【0034】
本発明の変形例は、フルオロカーボン液体組成物で被覆された多孔質膜支持体を包含する。本発明の別の変形例は、膜上でフッ素化イオノマーおよびビス−オレフィンを架橋させるように硬化されたフルオロカーボン液体組成物で被覆された多孔質膜支持体である。本発明のさらに別の変形例において、硬化され架橋されたイオノマーをその表面および細孔上に有する微孔質膜支持体は、その変換可能な基が塩基および酸で活性化されて親水性基を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施例9に記載された微孔質膜複合材料を被覆するために使用されたイオノマー濃度に対する(微孔質膜複合材料を湿潤させる溶液についての)水中メタノールパーセントのグラフを図示している。
【図2】図2は、総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の33%〜総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の16%の間の588g/当量EWのイオノマーを含む米国特許第6,902,676号明細書における架橋被覆多孔質膜についての予測透水度(y軸の単位はL/atm×時間×m)を示している(矢印はこれらの点を示す)。
【図3】図3は、実施例22からの、各々メチレンブルー染料で染色された、上流側支持層、コア層および下流側支持層の写真の線画図を示している。陰影均一性および陰影濃度(より濃い灰色の陰影は高濃度であり、元の写真のより濃い青色色調を示す)は、写真中のこれらの層についての青色色調を描写している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な組成物および方法が記載されるが、記載された特定の分子、組成物、手法またはプロトコールは変わり得るので、本発明はこれらに限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の変形例または実施形態を記載することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「この、その(the)」は、文脈が明らかに別のことを指示しない限り、複数形への言及を包含することも留意されなければならない。したがって、例えば、ある「フッ素化イオノマー」への言及は、1種以上のフッ素化イオノマーおよび当業者に知られたその等価物などへの言及である。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験において使用され得る。本明細書において言及される全ての刊行物が、参照により援用される。本明細書における何物も、先行発明を理由としてそうした開示に先行する権利が本発明に与えられないということの承認と解釈されるべきではない。「必要に応じた」または「必要に応じて」とは、続いて記載される事象または状況が起こることもあるが、起こらないこともあり、そう記載することで、その事象が起こる場合と、それが起こらない場合とを包含することを意味している。本明細書に開示される全ての数値は、明示的に示されていようといまいと、用語「約」または「実質的に」によって修飾され得る。用語「約」または「実質的に」は、一般に、記載された値と等価である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と当業者であれば見なすであろう範囲の数に言及している。一部の実施形態において、用語「約」または「実質的に」は、述べられた値の±10%に言及し、他の実施形態において、用語「約」または「実質的に」は、述べられた値の±2%に言及する。組成物および方法は、種々の成分または工程を「含む(comprising)」(「含む(including)が、これらに限定されない」を意味すると解釈される)という用語で記載されるが、これらの組成物および方法はまた、その種々の成分および工程「から実質的になる」または「からなる」こともでき、そのような用語は、本質的に排他的な構成要素群または排他的な構成要素群を規定するものと解釈されるべきである。
【0038】
フッ素化イオノマーまたはフッ素化イオノマー前駆体、ラジカル開始剤、ビス−オレフィン由来の架橋剤、およびフルオロカーボン溶媒を含む溶液での微孔質膜支持体の被覆の間に、細孔径の小さい支持体上であっても非脱湿潤性であり、高い透水性を有する、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な架橋微孔質膜複合材料が作製され得ることを発見した。これらの微孔質膜複合材料は、微孔質支持体上にイオノマーおよび架橋剤を塗布することによって作製され得た。架橋コーティングが微孔質膜支持体の表面上により多くのコーティング材料をもたらすことが報告されており、透水性を低下させることが予想されることから、これは予想外であった。コーティング溶液中の1種以上のイオノマーの量および当量重量が、微孔質膜支持体と比較して高い透水性および82%以下のイソプロピルアルコール流動損失を有する微孔質膜複合材料を規定した。さらに、溶媒、イオノマーまたはイオノマー前駆体の濃度、およびイオノマーまたはイオノマー前駆体の粒度が、微孔質膜支持体と比較して高い透水性および82%以下のイソプロピルアルコール流動損失を有する湿潤可能な微孔質複合材料を作製するのに重要であることを発見した。本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、非脱湿潤性であり、それらを多様な製造環境における濾過用途に有用にするような流動損失または透水性を有する。
【0039】
本発明の変形例は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な、非脱湿潤性の、微孔質膜複合材料を含む。この微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体の流体接触表面および細孔上に架橋コーティングを有し、このコーティングは、親水性基を含んだ非晶質フッ素化イオノマーを含む。一部の変形例において、フッ素化イオノマーは、非晶質である部分が大半で、結晶質または部分的に結晶質である部分を僅かに有する。微孔質膜支持体上のコーティング中のイオノマーは、疎水性基で架橋される。微孔質膜複合材料は、水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であり、27dyn/cm以上の表面エネルギーを有する。
【0040】
本発明の1つの変形例は、0.45ミクロン以下の細孔径、一部の変形例においては0.1ミクロン以下の定格細孔径を有する微孔質膜支持体と、微孔質膜支持体の細孔を含めた表面を被覆する非晶質架橋フッ素化イオノマーを含むコーティングとを含む、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料である。微孔質膜支持体上の架橋コーティングは、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、被覆されていない微孔質膜支持体についての平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して、82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有する微孔質膜複合材料をもたらす。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、多層であり、1つ以上の保持層および1つ以上の支持層を含む。架橋フッ素化イオノマーは、テトラフルオロエチレンを含むフッ素化モノマー単位;エチレン性不飽和と親水性基に変換可能な官能性前駆体基とを含有するフッ素化モノマー単位から形成され得る。この前駆体基は、−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである。
【0041】
架橋フッ素化イオノマーは、親水性基がない架橋基により形成され得、本発明の一部の変形例において、架橋剤は、式(I):
C=CH−(CF−CH=CR
(式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一もしくは異なる、またはHもしくはC〜Cアルキル基である)のビス−オレフィンに由来するか、このビス−オレフィンを含むか、またはこのビス−オレフィンからなる。
【0042】
フッ素化イオノマーは、式:
(CF)
(式中、XおよびXは、I、Brおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される)のフルオロカーボン連鎖移動剤に由来するヨウ素および/または臭素基を含み得る。
【0043】
本発明の一部の変形例において、エチレン性不飽和と親水性基に変換可能な官能基とを含有するフッ素化モノマー単位は、CF=CF−O−CFCFSOF単位を含むか、この単位からなるか、またはこの単位から実質的になり得る。本発明の変形例における、微孔質膜の表面および細孔を被覆する、親水性基を有するフッ素化架橋イオノマーコーティングは、60nmol/cmより高い、一部の変形例においては95nmol/cmより高いイオン交換容量を有する、メタノールと水とを含有する溶液において湿潤可能な、微孔質膜複合材料をもたらす。有利なことに、本発明の変形例における架橋フッ素化コーティングは、従来の親水性化された(hydrophilization)表面コーティング(例えば、微孔質膜上のポリビニルアルコールコーティング)よりも、酸化環境において、安定である。
【0044】
フッ素化化合物またはフルオロカーボン化合物は、フッ素により置換された少なくとも1つの炭素水素結合または少なくとも1つの炭素結合水素を有する、化合物、ポリマー、イオノマー、連鎖移動剤、架橋剤、溶媒などをいう。本発明の一部の変形例において、フッ素化化合物またはフルオロカーボン化合物は、炭素結合水素の全てまたは実質的に全てはフッ素により置換されていない、化合物、ポリマー、イオノマー、連鎖移動剤、架橋剤、溶媒などをいう。過フッ素化化合物またはペルフルオロカーボン化合物は、全てのまたは実質的に全ての炭素結合水素がフッ素により置換されている化合物(ポリマー、イオノマー、架橋基、連鎖移動剤などを含む)をいう。例えば、過フッ素化とは、存在する特性基の性質にその置換が実質的に影響を及ぼすような水素原子を除く、全ての水素原子が、フッ素原子により置換されている化合物に言及し得る。一部の残留水素化物、例えば、過フッ素化生成物の2重量%未満、場合によっては過フッ素化生成物の0.25重量%未満が、過フッ素化組成物中に存在し得る。例えば、ポリフッ化ビニリデンは、過フッ素化ポリマーではなくフルオロポリマーの一例であり、PFA、MFA、FEP、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらのブレンドなどは、過フッ素化ポリマーの例である。多孔質膜に有用な過フッ素化熱可塑性ポリマーとしては、ペルフルオロアルコキシ(DupontのTeflon(登録商標)PFA、DaikinのNeoflon(登録商標)PFA、DupontのTeflon(登録商標)PFA Plus)、ペルフルオロメチルアルコキシ(Solvay SolexisのHyflon(登録商標)MFA)、フッ素化エチレンプロピレン(Dupontの(Teflon(登録商標))FEP)およびこれらのコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの過フッ素化熱可塑性物質は、耐薬品性でかつ熱安定性であり、その結果、それらで作られた多孔質膜は、化学安定性および熱安定性がより低いポリマーと比較して、明白な利点を有し得る。使用され得る他の有用な熱可塑性フルオロポリマーとしては、必要に応じて1種以上の他の非フッ素化モノマーと組み合わせて、フッ素化モノマー、例えば、とりわけ、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、およびテトラフルオロエチレン(TFE)に由来するモノマー単位を含むホモポリマーおよびコポリマーが挙げられ得る。
【0045】
フルオロ界面活性剤は、界面活性剤の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている、または界面活性剤が1つ以上のフッ素原子を含有する、界面活性剤をいう。本発明の一部の変形例において、5,000重量百万分率(ppm)のイソプロピルアルコール中のフルオロ界面活性剤は、3M(商標)Novec(商標)FC4432である。Novec(商標)FC4432は、3M(商標)より入手可能な非イオン性ポリマーフルオロ界面活性剤である。
【0046】
微孔質膜支持体の外部表面および細孔表面上の、本発明の一部の変形例におけるフッ素化コーティング、または本発明の他の変形例における過フッ素化コーティングは、被覆、硬化および活性化の工程または操作の後の微孔質膜複合材料の試料を湿潤させ、次いで、メタノールと水とを含有する様々な溶液での湿潤試験の間に、半透明の被覆微孔質膜中の不透明箇所を探すことによって特徴付けられ得る。本発明の1つの変形例において、このコーティングは、被覆微孔質膜複合材料のメチレンブルー染色された試料中に不透明箇所を探すことによって特徴付けられ得る。あるいは、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値の差異が、微孔質支持体の液体接触表面を被覆する架橋イオノマーの均一性を特徴づけるために使用され得る。一部の実施形態において、架橋イオノマーコーティングは、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値の相対標準偏差(平均で除した標準偏差)が、0.40未満であることによって特徴付けられる。他の実施形態において、架橋イオノマーコーティングは、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値の相対標準偏差が、0.30未満であることによって特徴付けられる。さらに他の実施形態において、架橋イオノマーコーティングの均一性は、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値の相対標準偏差が、0.06未満であることによって特徴付けられる。
【0047】
本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、硬化され活性化された(−SOFおよび/または−COFのような変換可能な官能性前駆体基が−SOHおよび/または−COOHに転化された)微孔質膜複合材料試験試料を、イソプロパノール(IPA)に浸漬して、その微孔質膜複合材料を湿潤させることにより、メチレンブルーで染色され得る。湿潤された微孔質膜複合材料試験試料は、次いで、その微孔質膜複合材料試験試料表面の染色が影響を受けるまで、メチレンブルー染料の0.1%水溶液に浸漬され得る。次いで、染色された試料は、順次、水、IPA、および水中で、膜から過剰な染料を除去するように攪拌されながら洗浄され得る。次いで、このメチレンブルー染色された微孔質膜複合材料は乾燥され、デンシトメトリーによって評価され得る。
【0048】
本発明の変形例は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤される微孔質膜支持体の表面および細孔上に架橋非晶質イオノマーコーティングを含む非脱湿潤性の微孔質膜複合材料を包含する。本発明の変形例において、微孔質膜複合材料は、27dyn/cm以上(水中約80重量%MeOHで湿潤される)または約27dyn/cm以上の表面エネルギーを有し得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、40dyn/cm以上(水中約30重量%MeOHで湿潤される)の表面エネルギーを有し得る。さらに一部の他の変形例において、微孔質膜複合材料は、50dyn/cm以上(水中約15重量%MeOHで湿潤される)の表面エネルギーを有し得る。なおさらに他の変形例において、微孔質膜複合材料は、40dyn/cm〜50dyn/cmの間の表面エネルギーを有し得る。有利なことに、こうした表面エネルギーを有する本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、多くの処理化学物質で直ちに湿潤され得るので、そのような微孔質膜複合材料を含有するフィルターを乾燥状態で梱包し、最終使用者に向けて発送することが可能となる。乾燥状態の微孔質膜複合材料を含有するフィルターは、製造業者にとっては予備湿潤(prewetting)およびオートクレーブ工程を無くすことにより製造費の削減となり得、予備湿潤されたより重い含水フィルターと比較して輸送費を削減し得る。最終使用者は、運転停止時間および関連費用、ならびに溶媒交換および予備湿潤フィルターのコンディショニングより生じる廃棄物を無くし得るため、乾燥状態の微孔質膜複合材料を含有するフィルターから利益を得る。
【0049】
本発明の変形例において、微孔質膜複合材料は、水でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であり、さらに言うと、水オートクレーブ前よりも水オートクレーブ後の方が微孔質複合材料膜の水流動時間が短く、その微孔質膜複合材料が非脱湿潤性のままであるようなコーティング構造を有する。
【0050】
本発明の変形例における微孔質膜支持体の液体接触表面上に架橋イオノマーを含むコーティングは、FTIRなどの分光技術によって、または反射率などの光学的方法によって特徴づけられ得る。例えば、本発明の1つの変形例において、被覆微孔質膜支持体は、そのコーティング中の親水性基を表示する染料で染色され、デンシトメーターでの反射率読取りが、微孔質膜複合材料上の様々な点で行われる。微孔質膜複合材料の変形例における微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングは、化学処理後のその特性によってさらに特徴付けられ得る。例えば、この処理は、微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000重量百万分率(ppm)の3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールと、メチレンブルー染色された微孔質膜複合材料との、4時間以上の貫流接触を含み得る。次いで、処理された被覆微孔質膜複合材料および処理されていない被覆微孔質膜複合材料についてのデンシトメーター読取り値または他の分光特性が比較され得る。本発明の一部の変形例において、被覆微孔質膜複合材料は、熱界面活性剤処理前の被覆微孔質膜複合材料の特性の平均と比較して、当該処理後の平均の差異が±9%未満である、デンシトメーター読取り値または他の特性(例えば、親水性基のFTIR透過強度)を有する。本発明の微孔質膜複合材料の一部の変形例において、これらの平均(熱界面活性剤処理前後の特性)は、スチューデントt検定により95%の信頼限界(CL)で異ならない。本発明のさらに一部の他の変形例において、これらの平均は、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならず、デンシトメーター読取り値または他の特性が、熱界面活性剤処理前の被覆微孔質膜複合材料の特性の平均と比較して、当該処理後の平均の差異が±9%未満である。被覆微孔質膜複合材料の一部の変形例は、処理前の被覆微孔質膜複合材料の特性の平均と比較して、処理後の平均の差異が±4%未満である、デンシトメーター読取り値または他の特性を有する。一部の変形例において、これらの平均は95%の信頼限界で異ならず、特性は、処理前の被覆膜の特性の平均と比較して、処理後の平均の差異が±4%未満である。
【0051】
本発明の変形例における、メタノールと水との混合物を含有する溶液で湿潤可能であり、かつ非脱湿潤性である、微孔質膜複合材料は、高い透水性を有し得る。特に水オートクレーブ処理後に直径47mmの微孔質膜複合材料試料について測定された水流動時間に基づく本発明の変形例における微孔質膜複合材料についての計算透水度は、22.5℃で1000L/atm×時間×mを超え得る。本発明の一部の変形例において、直径47mmの微孔質膜複合材料試料について測定された水流動時間に基づく計算透水度は、22.5℃で1200L/atm×時間×mより高い。本発明のさらに他の変形例において、微孔質膜複合材料は、直径47mmの微孔質膜複合材料試料について測定された水流動時間に基づき、22.5℃で1800L/atm×時間×mより高い計算透水度を有する。理論により拘束されることを望むものではないが、本発明の微孔質膜複合材料の変形例において達成されるより高い透水性およびより短い流動時間は、本発明の変形例における微孔質膜表面が、他の被覆膜と比較してより薄い架橋コーティングを有することを示唆している。さらに、本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、メチレンブルー染色された複合材料についての0.4未満のデンシトメーター読取り値の相対標準偏差、および水中でのオートクレーブ試験に基づくこれらの複合材料の非脱湿潤特性により特徴付けられる架橋イオノマーコーティングを有する。
【0052】
米国特許第6,902,676号明細書および米国特許第6,576,100号明細書に開示されている、フッ素化イオノマー、フッ素化モノマー、連鎖移動剤、ラジカル開始剤および架橋剤が、本発明の変形例において、多孔質膜を被覆するために使用され得、これら2つの米国特許明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本発明の一部の変形例において、−SOFおよび/または−COF型の同じもしくは異なる当量重量の1種以上のイオノマー、ならびに溶媒が、イオノマーを含むコーティング溶液を形成するために使用され、一部の変形例において、この溶媒は、フルオロカーボン溶媒を含む。本発明の一部の変形例において、このコーティング溶液は、イオノマーの溶液および離散粒子を含み得、さらに他の変形例において、このコーティング溶液は、イオノマーの離散粒子を含み得る。これらのコーティング溶液は、微孔質膜支持体を被覆するために使用される。
【0053】
200nm以下の小さいイオノマー粒子を含有するコーティング溶液は、フルオロカーボン溶媒にフッ素化イオノマーまたはフッ素化イオノマー前駆体を攪拌しながら溶解させ、続いて濾過または遠心処理を行うことによって得られ得る。遠心処理は、高速で(例えば、10,000rpm以上で)約2時間にわたって行われ得る。したがって、結果として生じるイオノマー残留物は分離されており、小さいイオノマー粒子を含む透明液体組成物が得られる。使用されるフルオロカーボン溶媒に依存して、溶液中のコポリマーおよび不溶性残留物の当量重量に関する分別効果が生じ得る。
【0054】
結果として生じるイオノマー液体溶液は、微孔質膜支持体表面上にイオノマーまたはイオノマー前駆体を塗布する過程で、改善されたコーティング特性を提供する。そうした有利な効果には、とりわけ、流動損失の低減、細孔の閉塞なしにフロースルーコーティング(flow−through coating)を行う可能性、および膜外部表面の被覆に加えての内部細孔表面の被覆が含まれ、結果として優れた非脱湿潤特性をもたらす。この調製方法を適用することによって得られるフルオロカーボン液体組成物コーティング溶液は、架橋性フッ素化イオノマーを含み、そのイオノマーの少なくとも90重量%が、200ナノメートル(nm)未満の粒度のイオノマー粒子、本発明の一部の変形例においては125nm未満の粒度のイオノマー粒子、本発明の他の変形例においては40nm未満の粒度のイオノマー粒子、本発明のなおさらに他の変形例においては15nm未満の粒度のイオノマー粒子を含むか、そのようなイオノマー粒子からなるか、またはそのようなイオノマー粒子から実質的になる。
【0055】
本発明の一部の変形例において、フッ素化イオノマーまたはフッ素化イオノマー前駆体は、コーティング溶液溶媒に、コロイド粒子として、または懸濁、分散もしくは溶解させたゲル粒子として存在する。このコロイド粒子またはイオノマー粒子は、約200nm以下、一部の変形例においては約40nm以下、およびさらに他の変形例においては約15nm以下の粒度を有し得る。小さいイオノマー粒子は、微孔質膜支持体細孔の閉塞を最小限に抑え、より低い流動損失を有する微孔質膜複合材料をもたらす。本発明の一部の変形例におけるフッ素化イオノマーまたはフッ素化イオノマー前駆体粒子は、10nm〜40nmの間の粒度、または約10nm〜約40nmの間の粒度を有し得る。本発明の他の変形例において、本発明の一部の変形例におけるフッ素化イオノマーまたはフッ素化イオノマー前駆体粒子は、10nm〜600nmの間の粒度、または約10nm〜約600nmの間の粒度を有し得る。
【0056】
本発明の一部の変形例において、フッ素化モノマー単位が、ビス−オレフィン由来のモノマー単位、ラジカル開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤と、部分的に反応して、イオノマーまたはイオノマー前駆体を形成し得る。これらのイオノマーまたはイオノマー前駆体が、さらに、さらなるビス−オレフィンおよびラジカル開始剤と反応して、微孔質膜支持体上に架橋イオノマーコーティングを形成し得る。特許請求の範囲および明細書における用語「イオノマー」の使用は、フッ素化イオノマーばかりでなくフッ素化イオノマー前駆体をも包含する。
【0057】
本発明の変形例において、本発明の一部の変形例においてフルオロカーボン液体組成物であり得るコーティング溶液が、微孔質膜支持体の液体接触表面上に塗布される。その本発明の一部の変形例におけるコーティング溶液またはフルオロカーボン液体組成物は、フルオロカーボン溶媒、フッ素化イオノマーまたはイオノマー前駆体粒子、ラジカル開始剤、ビス−オレフィン架橋剤、および必要に応じて連鎖移動剤を含み得る。このフッ素化イオノマーは、エチレン性基と親水性基に変換可能な官能基とを含有するフッ素化モノマー単位を含み、このフッ素化イオノマーは、フッ素化イオノマーの少なくとも90重量%が、本発明の一部の変形例においては200ナノメートル(nm)未満、一部の変形例においては125nm未満、他の変形例においては40nm未満、なおさらに他の変形例においては15nmの粒度の粒子からなるように、フルオロカーボン溶媒中に溶解または分散される。このフッ素化イオノマーは、380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する。膜支持体の液体接触表面上に塗布されると、このコーティング溶液またはフルオロカーボン液体組成物は、官能基を親水性基に変換するために、硬化され、続いて活性化され得る。
【0058】
コーティング溶液、遠心分離、およびフルオロカーボン液体組成物のための、本明細書においては液状フルオロカーボン媒体とも呼ばれる溶媒としては、フッ素化イオノマー粒子、架橋剤、ラジカル開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤を溶媒和または分散させ、かつ微孔質膜支持体を湿潤させもする溶媒が挙げられ得る。この溶媒または液状フルオロカーボン媒体は、フルオロカーボン溶媒、ならびに必要に応じて、イオノマー、架橋剤、およびラジカル開始剤を溶媒和または分散させかつ微孔質膜を湿潤させる1種以上の他の溶媒を含み得る。溶媒または液状フルオロカーボン媒体の例としては、Novec(商標)HFE−7100(メトキシノナフルオロブタン、表面張力13dyn/cm、3M(商標)より入手可能)、Galden(登録商標)SV90(ペルフルオロポリエーテル、表面張力16dye/cm、Solvay Solexisより入手可能)、および他の類似のフッ素化低表面張力溶媒、これらの組み合わせ、またはこれらの溶媒を含有する混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明の一部の変形例において、フルオロカーボン液状媒体は、メトキシノナフルオロブタン異性体(CFCFCF−O−CHおよび/またはCFCFCFCF−O−CHを、場合によっては、99%w/wより優れた累積純度で含む。
【0059】
本発明の一部の変形例において、フルオロカーボン液状媒体は、ペルフルオロポリエーテルを含むか、またはペルフルオロポリエーテルの混合物からなる。本発明の変形例において、このペルフルオロポリエーテルは、一般式FC−O−[CF−CF(CF)−O]−[CF−O]−CFを有し得、式中、mおよびnは、n>0かつm≧0の整数である。このペルフルオロポリエーテルは、各々、300amu〜600amuの間の分子量および20℃〜150℃の間の沸点を有する。本発明の他の変形例において、フッ素化液状媒体は、上記式を有するペルフルオロポリエーテルの混合物を含有し、この混合物は、55℃〜135℃の間に含まれる一般的(「平均的」)沸点および0.05未満の添字mとnとの間の平均比率(m/n)を有する。液状フルオロカーボン媒体組成物の1つの変形例は、上記式を有するペルフルオロポリエーテルの混合物を含有し、各ペルフルオロポリエーテルは、400amu〜600amuの間の分子量を有し、この混合物は、80℃〜100℃の間に含まれる一般的(「平均的」)沸点および0.05未満の添字mとnとの間の平均比率(m/n)を有する。
【0060】
本発明の一部の変形例において、フルオロカーボン液状媒体は、水素化フルオロポリエーテルを含むか、または水素化フルオロポリエーテルの混合物からなる。本発明の変形例において、この水素化フルオロポリエーテル(HFPE)は、一般式R−O−R’−R’(式中:−RおよびR’は、同一または互いに異なり、−C2m+1基と−C2n+1−h基との間で独立して選択され、ここで、m、nは、1〜3の整数であり、hは、h≦2n+1となるように選択される≧1の整数であるが、但し、RおよびR’のうちの少なくとも一方は、上で規定されたとおりの−C2n+1−h基である)を有し得、
−R’は、以下の間で選択される:
(1)−(CFO)−(CFCFO)−(CF−(CFz’−CFO)−、ここで、a、bおよびcは、10まで、好ましくは50までの整数であり、z’は、1または2の整数であり、a≧0、b≧0、c≧0かつa+b>0であり;好ましくは、aおよびbは、各々、>0であり、b/aは、0.1〜10の間に含まれる;
(2)−(CO)c’−(CO)−(CFXO)−、ここで、Xは、各出現で独立して、−Fおよび−CFの間で選択され;b、c’およびtは、10までの整数であり、c’>0、b≧0、t≧0であり;好ましくは、bおよびtは、>0であり、c’/bは、0.2〜5.0の間に含まれ、(c’+b)/tは、5〜50の間に含まれる;
(3)−(CO)c’−(CFXO)−、ここで、Xは、各出現で独立して、−Fおよび−CFの間で選択され;c’およびtは、10までの整数であり、c’>0、t≧0、好ましくはt>0であり、c’/tは、5〜50の間に含まれる。R’は、好ましくは、上に詳述される構造(1)および(2)の間で選択される。
【0061】
微孔質膜支持体に適用されるコーティング溶液としてのフルオロカーボン液体組成物中のイオノマーまたはイオノマー前駆体の濃度は、微孔質膜複合材料の液体接触表面がオートクレーブ試験により非脱湿潤性であり、かつこの微孔質膜複合材料がメタノールと水とを含有する溶液で完全に湿潤され得ることとなるように、微孔質膜支持体の表面および細孔上に活性化された架橋コーティングを提供するのに十分な程度である。この溶液中のイオノマーの濃度は、0.4以下の、デンシトメーター測定値の相対標準偏差を有する微孔質膜複合材料を提供する。本発明の一部の変形例における不活性微孔質膜支持体を被覆するためのフルオロカーボン液体組成物溶液において使用されるイオノマー濃度は、0.1重量%イオノマー〜4重量%イオノマーの範囲内、または約0.1重量%〜約4重量%の範囲内にあり得る。本発明の他の変形例において、本発明の一部の変形例における不活性微孔質膜支持体を被覆するためのフルオロカーボン液体組成物溶液において使用されるイオノマー濃度は、0.1重量%イオノマー〜3.5重量%イオノマーの範囲内、または約0.1重量%〜約3.5重量%の範囲内にあり得る。0.25%未満(例えば、0.1%)のイオノマー濃度が使用され、コーティングが、湿潤性およびデンシトメーター測定値によって評価され得る。低すぎるイオノマー濃度は、疎水性の箇所を有し、メタノールと水とを含有する溶液で完全に湿潤されず、必要に応じて、相対標準偏差が0.4超となるデンシトメーター読取り値を有する、不完全に被覆された微孔質膜支持体をもたらすことになる。約3.5重量%より高いまたは約4重量%より高いイオノマー濃度は、イソプロピルアルコールを用いて測定され、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき計算される場合に、82%より高い流動損失を有する微孔質膜複合材料をもたらし得る。
【0062】
本発明の変形例において、微孔質膜複合材料は、架橋フッ素化イオノマーを含む薄いコーティングを有する。本発明の一部の変形例において、コーティング重量パーセントは、高表面積微孔質膜複合材料の総質量の2重量%〜50重量%であり得る。本発明の他の変形例において、コーティング重量パーセントは、高表面積微孔質膜複合材料の総質量の2重量%〜30重量%であり得る。本発明のさらに一部の変形例において、コーティング重量パーセントは、高表面積微孔質膜複合材料の総質量の25重量%〜30重量%、または約25重量%〜約30重量%である。本発明のさらに他の変形例において、コーティング重量パーセントは、高表面積微孔質膜複合材料の総質量の2重量%〜25重量%、または約2重量%〜約25重量%であり得る。コーティング重量パーセント(支持体およびコーティングに対する%)は、開示されたコーティング重量パーセントに限定されるものではなく、微孔質膜支持体の表面積によって変わり得る。コーティング重量パーセントは、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき平均82%以下または約82%以下である流動損失(圧力約14.2psi(約97905Pa)での500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)によって特徴付けられる非脱湿潤性の微孔質膜複合材料をもたらすように選択される。
【0063】
本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングの厚さは、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき平均82%以下である流動損失(圧力約14.2psi(約97905.5Pa)で微孔質膜複合材料を通る500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)によって特徴付けられる。本発明の他の変形例において、微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングの厚さは、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき平均46%以下である流動損失(圧力約14.2psi(約97905.5Pa)で微孔質膜複合材料を通る500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)によって特徴付けられる。本発明のさらに一部の他の変形例において、微孔質膜支持体上の薄い架橋コーティングの厚さは、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき平均30%以下である流動損失(圧力約14.2psi(約97905.5Pa)で微孔質膜複合材料を通る500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)によって特徴付けられる。本発明のなおさらに他の変形例において、微孔質膜支持体上の薄い架橋コーティングの厚さは、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づき平均24%〜82%の間である流動損失範囲(圧力約14.2psi(約97905.5Pa)で微孔質膜複合材料を通る500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)によって特徴付けられる。
【0064】
本発明の変形例におけるコーティングにおいて使用されるフッ素化イオノマーまたは過フッ素化イオノマーは、非晶質とすることができ、または参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,902,676号明細書に開示されているような非晶質イオノマーと少しの結晶質イオノマーとを含む混合物とすることもできる。本発明の変形例におけるイオノマーおよびイオノマー前駆体は、約380g/当量〜約620g/当量の、一部の変形例においては約400g/当量〜約620g/当量の当量重量を有し得、さらに一部の他の変形例において、イオノマーは、約460g/当量〜約600g/当量の当量重量、または460g/当量〜600g/当量の間の当量重量を有し得る。イオノマーは、場合によっては平均当量重量付近の、当量重量の分布を含み得るが、特許請求の範囲および明細書の目的のために、特定の指定された当量重量のイオノマーとして表され得る。限定することなく、例えば、460g/当量の当量重量を有するものとして指定されたイオノマーは、平均当量重量が約460g/当量である400g/当量〜520g/当量の範囲にわたるイオノマーを含み得る。本明細書において実施例により示されるように、微孔質膜複合材料の湿潤性は、コーティング溶液中のイオノマーの当量重量が減少するにつれて低下するが、流動損失は、イオノマーの当量重量の増加するにつれて増大する(例えば、実施例6、5および4における、それぞれ、458g/当量についての2重量%イオノマー(流動損失44%)、512g/当量についての2重量%イオノマー(流動損失68%)、597g/当量についての2重量%イオノマー(流動損失77%)参照)。したがって、本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料における低い流動損失および優れた湿潤性の組み合わせは、約400g/当量〜約620g/当量の、本発明の一部の変形例においては約460g/当量〜約600g/当量の範囲内の当量重量を有するイオノマーを用いて達成される。コーティング溶液中のイオノマー重量パーセントは、約0.1%〜約3.5%の範囲にわたり得る。
【0065】
異なる当量重量を有する1種以上のイオノマーもしくはイオノマー前駆体の混合物、または各々平均当量重量付近の当量重量の分布を有する1種以上のイオノマー組成物の混合物もまた、微孔質膜支持体を被覆するために使用され得る。このイオノマーまたはイオノマー前駆体は、フッ素化され得る。低当量重量イオノマーと高当量イオノマーとの混合物または組み合わせは、例えば、約460g/当量を中心とする当量重量を有するイオノマーと、約600g/当量を中心とする当量重量を有するイオノマーとの混合物を示し得るが、これに限定されない。1種以上のイオノマーが、1種以上の架橋剤、1種以上の連鎖移動剤、および1種以上のラジカル開始剤とともに使用されて、微孔質膜支持体の液体接触表面および濾過表面上に薄い架橋コーティングを形成し得る。コーティング中で使用される1種以上のイオノマーの当量重量は、不活性微孔質膜支持体の覆われてない表面および細孔上にコーティングをもたらすと同時に、メタノール含有水溶液で湿潤可能な非脱湿潤性の微孔質膜複合材料をもたらす量で選択され得る。必要に応じて、このイオノマー組成物は、存在し得る、不活性微孔質膜支持体中の細孔を封鎖または閉塞し得るイオノマー粒子および/またはイオノマーゲル粒子を除去するために、濾過または遠心分離され得る。
【0066】
イオノマーは、本発明の変形例においてフッ素化ポリマーであり、−SOHおよび/もしくは−COOH官能基を含み得る、または−SOHおよび/もしくは−COOH官能基からなり得る。本発明の一部の変形例において、フッ素化ポリマーは、−SOH基を含む、または−SOH基からなる。一部の変形例において、これらのイオノマーは、非晶質ポリマーをもたらす当量重量を有し、一部の変形例において、多孔質膜表面を変性するために利用されるフッ素化イオノマーは、米国特許第6,902,676号明細書に開示されているような非晶質および結晶質両イオノマーの混合物を含み得る。イオノマーは:(A)少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含有する1種以上のフッ素化モノマーに由来する、もしくはそのようなフッ素化モノマーを含むモノマー単位;(B)親水性基に変換可能な官能基−SOFおよび/もしくは−COOR、−COF[ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである]を、非晶質イオノマーをもたらす当量重量を与えるような量で含有するフッ素化モノマー単位であって、この官能基は、親水性基に転化され、好ましくは、この官能基が−SOFおよび/もしくは−COOR、−COFであった場合、最終の膜において−SOHおよび/もしくは−COOH基に転化されている、フッ素化モノマー単位からなり得る、またはそれらを含み得る。本発明の変形例において使用されるイオノマーは、米国特許第7,094,469号明細書に開示されているような式:[T−SOY−SOT’]のイオノマーではない。
【0067】
(A)型のフッ素化モノマーは:フッ化ビニリデン(VDF);C〜Cペルフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE);C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン(例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレン);CF=CFOR(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)[ここで、Rは、C〜C(ペル)フルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピル)である];CF=CFOXペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[ここで、Xは、1つ以上のエーテル基を有するC〜C12ペルフルオロ−オキシアルキル(例えば、ペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル)である]から選択され得る。
【0068】
架橋は、イオンおよびラジカル経路の両経路によって起こり得る。混合架橋も使用され得る。一部の変形例において、架橋は、ペルオキシ経路により起こり、したがってイオノマーは、高分子の鎖中および/または末端位にラジカル攻撃部位(例えば、ヨウ素および/または臭素原子)を含有する。ラジカル架橋は、ビス−オレフィンの炭素原子上でも、イオノマーがこの単位を含有する場合は、起こり得る。本発明の一部の変形例においては、イオン型の架橋が起こる。例えば、スルホン基イオノマー架橋(sulphonic ionomer crosslinking)については、2つの−SOF基の間の反応を可能にする架橋剤が加えられ得る。参照によりその全体が本明細書に援用される特許出願国際公開99/38,897号パンフレットを参照されたい。本発明の他の変形例において、架橋はイオン型によるものではなく、2つの−SOF基または2つの−SOH基の間の架橋は起こらない。本発明の変形例において、微孔質膜支持体壁または表面および細孔を被覆するイオノマー量が本明細書に記載されるように82%以下のイソプロピルアルコール流動損失を生じるような非脱湿潤性コーティングが、架橋によりもたらされる。本発明の変形例におけるコーティングおよびフルオロカーボン液体組成物中の架橋剤は疎水性であり、親水性基を含有していないもしくは親水性基なし、またはスルホニルもしくはカルボニル含有基を有する架橋基(例えば、米国特許第7,112,363号明細書に開示されているもの)なしである。本発明の一部の変形例において、架橋剤は、式(OF−1)、(OF−2)、(OF−3)の構造もしくはこれらの組み合わせから選択されるビス−オレフィンを含み得る、またはそのようなビス−オレフィンからなり得る。
【0069】
本発明の一部の変形例において、本発明のフッ素化イオノマーは、TFE由来のモノマー単位;CF=CF−O−CFCFSOF由来のモノマー単位;式(I):
C=CH−(CF−CH=CR (I)
[式中:m=2〜10、一部の変形例においてはm=4〜8であり;R、R、R、Rは、互いに同一もしくは異なる、またはHもしくはC〜Cアルキル基である]のビス−オレフィンに由来する0.01mol%〜5mol%の量のモノマー単位を含む。本発明の一部の変形例において、このイオノマーは、フルオロカーボン連鎖移動剤(例えば、式R(I)(Br)[式中、Rは、1個〜8個の炭素原子を有するフルオロアルキルもしくは(ペル)フルオロアルキルまたは(ペル)フルオロクロロアルキル基であり、xおよびyは、0〜2の間に含まれ1≦x+y≦2となる整数である]のフルオロカーボン連鎖移動剤(例えば、米国特許第4,243,770号明細書および米国特許第4,943,622号明細書参照))からのヨウ素および/または臭素原子を末端位に含有する。米国特許第5,173,553号明細書によれば、アルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ素および/または臭素を連鎖移動剤として使用することも可能である。
【0070】
本発明の一部の変形例において、ラジカル型の架橋は、式(I)のビス−オレフィンの単位を含有し、かつ高分子鎖の終端または末端位にヨウ素を含有するイオノマーを使用する。
【0071】
そのようなヨウ素および/または臭素原子の鎖への導入に関し、これは、最終生成物中の「硬化部位」コモノマーの含有量が一般に他の基本モノマー単位100mol当たり0.05mol〜他の基本モノマー単位100mol当たり2molの範囲内となるような量の、臭素化および/またはヨウ素化された「硬化部位」コモノマー(例えば、2個〜10個の炭素原子を有するブロモおよび/またはヨードオレフィン(例えば、米国特許第4,035,565号明細書および米国特許第4,694,045号明細書に記載されるようなもの)またはヨードおよび/またはブロモフルオロアルキルビニルエーテル(米国特許第4,745,165号明細書、米国特許第4,564,662号明細書および欧州特許第199,138号明細書に記載されるようなもの))を加えることにより、反応混合物において行われ得る。
【0072】
不飽和の数が単位より多い式(I)のビス−オレフィンのコモノマーとしての導入は、そのコモノマーが重合の間にイオノマーを予備架橋させる機能を有するため有利である。式(I)のビス−オレフィンの導入は、最終的なコーティングを構成する主鎖の長さを増すのに有利である。
【0073】
本発明のイオノマーがラジカル経路によって架橋される場合、微孔質膜支持体および使用される過酸化物開始剤の種類に応じて、100℃〜300℃の範囲内の架橋または硬化温度がモノマーを硬化させるために使用され得る。硬化は、薄いコーティングが微孔質膜支持体に結合された状態になるという結果をもたらす。一般に、過酸化物開始剤は、イオノマーに対して0.1重量%〜5重量%の範囲内の量であり得る。好ましいラジカル開始剤は、ジアルキルペルオキシド(例えば、ジ−テルブチル−ペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(テルブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジテルブチルペルベンゾエート;ジ−1,3−ジメチル−3−(テルブチルペルオキシ)ブチルカルボネートなど)が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の過酸化物系は、例えば欧州特許第136,596号明細書および欧州特許第410,351号明細書に記載されている。溶液に典型的に加えられるビス−オレフィンの量は、約0.1重量%〜約5重量%であり、一部の変形例においては約0.1重量%〜3重量%である。
【0074】
微孔質膜支持体の種々の表面(例えば、これらに限定されないが、外部表面、内部表面、濾過表面、流体接触表面、細孔表面など)上のコーティング溶液の塗布に続き、例えばフッ素化イオノマー、ラジカル開始剤、フルオロカーボン溶媒および架橋剤を有する過剰なコーティング溶液が、不活性微孔質膜支持体から除去され得る。溶媒が、この被覆された微孔質膜支持体から除去され得る。架橋は、本発明の一部の変形例において、密閉容器中で、約140℃〜約180℃の温度にて、約10分〜60分または約60分にわたって行われ得る。本発明の1つの変形例は、微孔質膜支持体であって、その液体接触表面および細孔上に架橋イオノマーのコーティングを有する微孔質膜支持体である。
【0075】
フッ素化イオノマーの変換可能な前駆体基の親水性基への(例えば、スルホニル基−SOFの酸性スルホン酸基SOHへの)転化または活性化は、公知の方法で行われ得る。例えば、活性化は、硬化および架橋されたイオノマーで被覆された中間製品微孔質膜を、例えばこれに限定されないが約10重量%濃度の、KOH溶液などの強塩基水中で、約65℃〜約85℃の温度にて約4時間〜約8時間にわたって処理し、この塩基処理された硬化被覆微孔質膜を脱塩水中で洗浄し、この塩基処理された硬化被覆微孔質膜を、例えばこれに限定されないが20重量%の、HClまたは硝酸などの強酸水中で、室温にて、約2時間〜約16時間にわたって処理し、最後にこの活性化された硬化微孔質膜複合材料を脱塩水または脱イオン水で洗浄することによって起こり得る。−COFおよび/または−COOR基の類似の変換が行われ得る。硬化および活性化された、本明細書に開示されるイオノマーまたはイオノマー前駆体で被覆された微孔質膜支持体は、本発明の変形例における微孔質膜複合材料と呼ばれる。
【0076】
本発明の1つの変形例は、親水性基に変換可能な基を有する硬化フッ素化架橋イオノマーコーティングで被覆された濾過表面を有する高表面積または多層の微孔質膜支持体を含む中間製品複合材料を包含する。
【0077】
硬化ならびにその後の強塩基および強酸での処理による活性化に続き、微孔質膜複合材料は、さらに、微孔質膜支持体が完全なままであるような温度の、熱水などの溶媒で抽出処理され得る。本発明の変形例において使用される一部の多層微孔質膜支持体について、沸騰水でのそうした抽出処理が微孔質膜複合材料の離層をもたらすことを見出した。抽出溶媒の沸点より低い温度を使用することにより、多層微孔質膜複合材料の完全性が保持され得、低抽出物が達成され得た。例えば、微孔質膜支持体上の架橋フッ素化イオノマーコーティングは、約80℃〜約90℃の範囲にわたる温度の熱水中で、約30分、または下にある微孔質膜支持体を離層させることのない、アニオンおよびカチオンを含む望まれない残留汚染物質を膜から除去するのに十分な時間にわたって処理することにより、洗浄することができた。本発明の変形例は、非沸騰溶媒で抽出処理された、場合によっては非沸騰水で抽出処理された、完全な多層微孔質膜複合材料である、メタノール含有水溶液で湿潤される非脱湿潤性多層微孔質膜複合材料を包含する。
【0078】
引用文献に記載されるような親水性コーティングを有する多孔質膜は、その外部表面上が直接的に水で湿潤可能であるが、こうしたコーティング多孔質膜は、そのコーティングが全ての微孔質膜表面(例えば、内部細孔表面および膜の外部または幾何学的表面)を濡らさず付着しない場合は、135℃での水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性でないことがあり得る。
【0079】
本発明の変形例において、微孔質膜支持体は、その微孔質膜支持体の液体接触表面である表面および細孔が、水を用いた135℃でのオートクレーブ処理後に脱湿潤し得る覆われてない露出した微孔質膜表面が全く存在しないように、架橋フッ素化イオノマーコーティング組成物または架橋過フッ素化イオノマーコーティング組成物によって被覆されている。このコーティング組成物は、微孔質膜支持体の流体接触表面である外部表面および細孔表面を被覆する様々な方法によって適用され得る。本発明の一部の変形例において、浸透が、微孔質膜支持体の濾過表面または液体接触表面を被覆するために使用される。本発明の他の変形例において、コーティングは、微孔質膜支持体表面および細孔表面に塗布される。コーティングの塗布は、機械的方法(例えば、これらに限定されないが、ロールコーティング、1つ以上のスクィーズバーを用いたウェブコーティングなど)、加圧押込、および他の関連技術(例えば、重力流および圧力)によって可能であり、それにより、コーティング材料が微孔質膜細孔および液体接触表面に接触して濡らして、フッ素化イオノマーを含む溶液で微孔質膜支持体を被覆する。フルオロカーボン溶媒含有溶液にフッ素化イオノマーを含む組成物の塗布は、覆われていない微孔質膜表面をイオノマーおよび架橋剤のコーティングで濡らす。微孔質膜支持体上および微孔質膜支持体内へのこのコーティング溶液の塗布はまた、コーティング溶液中のイオノマーパーセントにより比例的に変化し得る流動損失構造を有した非脱湿潤性の微孔質膜複合材料の調製を可能にする。コーティングの厚さは流動損失パーセントに比例するのであるが、微孔質膜支持体上へのこのコーティングの塗布は、高表面積微孔質膜支持体上に薄い架橋フッ素化イオノマーコーティングを均一に付着させるという課題を克服する。
【0080】
本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、微孔質膜支持体表面および細孔の覆われていない部分はイオノマーおよび架橋剤で被覆されるが、微孔質膜表面および細孔の他の覆われた部分はイオノマーおよび架橋剤で被覆されないように、マスキングによってパターン形成され得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜の縁部分は被覆されず、それにより縁疎水性膜領域を形成する一方で、微孔質膜の中央部分は本明細書に記載されるフッ素化イオノマーおよび架橋剤で被覆されて、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料領域を形成する。そのようなパターン形成された微孔質膜複合材料は、例えば、気体は微孔質膜複合材料の被覆されていない部分を通過し得るが微孔質膜複合材料の被覆部分を通過し得ないような、ガス抜き能力を有する濾過膜として有用であろう。水性液は、微孔質膜複合材料の被覆部分を通過し得るが、微孔質膜複合材料の被覆されていない部分を通過し得ない。
【0081】
本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体の液体接触表面および濾過表面(すなわち、細孔表面および外部幾何学的表面)上に、親水性基を有するフッ素化イオノマーの架橋コーティングを有する。微孔質膜複合材料を構成する本体マトリックス材料の液体接触表面への架橋イオノマーのコーティングは、被覆された表面を、脱湿潤性(水中135℃でのオートクレーブ後)にし、かつ水とメタノールとの混合物で湿潤可能にする。微孔質膜支持体の表面上のイオノマーコーティングは、架橋により、または機械的結合、物理的結合、化学的結合、もしくは硬化によるこれらの任意の組み合わせにより、結合され得る。
【0082】
微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングは、ガス発生性液体を濾過する際の微孔質膜複合材料の脱湿潤を防止する。架橋イオノマーコーティングは、本発明の変形例における微孔質膜複合材料を含むフィルターデバイス全体にわたる均一な濾過および均一な非脱湿潤特性を促進する。本発明の変形例における微孔質膜支持体上への架橋イオノマーのコーティングは、メチレンブルー染料染色および0.4以下のデンシトメーター読取り値の相対標準偏差、ならびに微孔質膜複合材料の水オートクレーブ後の非脱湿潤挙動によって、測定または特徴付けられ得る。本発明の変形例におけるイオノマーおよび架橋剤を含む組成物は、流動損失パーセント、または微孔質膜複合材料を横切る精製水もしくはイソプロピルアルコールの貫流の間の流動時間を測定することによって決定されるように、微孔質膜支持体が実質的に封鎖または閉塞されないような量および濃度で利用される。本発明の微孔質膜複合材料は、被覆されていない微孔質支持体の平均流動時間および微孔質膜複合材料の平均流動時間に基づき82%以下の数個の微孔質膜複合材料試料の平均流動損失を有する。本発明の他の変形例において、数個の微孔質膜複合材料試料の平均流動損失は、被覆されていない微孔質支持体の平均流動時間および微孔質膜複合材料の平均流動時間に基づき60%以下である。本発明のさらに他の変形例において、数個の微孔質膜複合材料試料の平均流動損失は、被覆されていない微孔質支持体の平均流動時間および微孔質膜複合材料の平均流動時間に基づき50%以下である。本発明のなおさらに他の変形例において、数個の微孔質膜複合材料試料の平均流量損失は、被覆されていない微孔質支持体の平均流動時間および微孔質膜複合材料の平均流動時間に基づき40%以下である。微孔質膜複合材料についての流動損失パーセントをより低くすることで、より少ない膜が使用されることおよびより小さい濾過デバイスが作製されることが可能となり、費用およびそのようなフィルターを収容するために使用される空間の削減となる。
【0083】
微孔質膜支持体に結合されたコーティングを特徴付けるために流動損失特性を使用することに加え、微孔質膜複合材料を変性するコーティングは、光学的方法によって特徴付けられ得る。微孔質複合材料から得られた光学的読取り値の相対標準偏差は、コーティングの均一性と関係付けられ得る。本発明の一部の変形例において、このコーティング均一性は、0.4以下の、光学的読取り値の測定相対標準偏差を有する。例えば、本発明の変形例において、微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングは、メチレンブルーで染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均が、0.4以下の相対的標準偏差を有することによって特徴付けられる。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングは、メチレンブルーで染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均が、0.3以下の相対標準偏差を有することによって特徴付けられ、本発明のさらに他の変形例において、微孔質膜支持体上の架橋イオノマーコーティングは、メチレンブルーで染色された被覆微孔質膜複合材料のデンシトメトリー読取り値の平均が、0.06以下の相対標準偏差を有することによって特徴付けられる。デンシトメーター読取り値のより小さい相対標準偏差は、ガス発生性流体の濾過の間の微孔質膜複合材料面積のより有効な利用に繋がり得る、微孔質膜複合材料のより均一なコーティングを示す。
【0084】
微孔質膜支持体は、被覆処理の硬化および活性化工程に対して化学的に不活性なポリマーまたは熱可塑性物質から形成され得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体ポリマーは、被覆処理の硬化および活性化工程に対して化学的に不活性なポリフルオロカーボンまたはポリペルフルオロカーボンである。硬化および活性化工程に耐え得る微孔質膜支持体の例は、フッ素含有ポリマーを含み得、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)コポリマー、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA、ペルフルオロアルコキシポリマーとも呼ばれる)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、およびこれらのうちのいずれかを含むポリマー組成物が挙げられ得るが、これらに限定されない。微孔質膜支持体は、例えばポリテトラフルオロエチレンから形成され得、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマーまたはペルフルオロアルコキシポリマーとしては、E.I.Dupont de Nemours and Company,Inc.によりTeflon(登録商標)PTFE、Teflon(登録商標)FEPおよびTeflon(登録商標)PFAの名称で市販されているフルオロカーボンとして一般に知られているフルオロポリマーまたは非晶質形態のTeflon(登録商標)ポリマー(例えば、Teflon(登録商標)AFポリマー)の群が挙げられ得る。微孔質膜支持体のための他のフルオロカーボンとしては、Daikinより入手可能なNeoflon(登録商標)−PFAおよびNeoflon(登録商標)−FEPなどのフルオロカーボン、またはSolvay Solexisより入手可能な様々なグレードのHyflon(登録商標)−PFAおよびHyflon(登録商標)−MFAが挙げられ得るが、これらに限定されない。フルオロポリマーは、優れた耐薬品性および耐熱性を有しており、一般に疎水性である。発泡多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ポリマーは、優れた強度特性を有している。したがって、様々な形態の発泡多孔質ポリテトラフルオロエチレンが、それが過酷な化学環境における使用のための有機溶媒用濾過材として有用であるという理由から、本発明の変形例における微孔質膜支持体として使用され得る。
【0085】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、微孔質膜支持体という用語は、超多孔質膜(ultraporous membrane)、ナノ多孔質膜、およびミクロ多孔質膜などの用語によっても記載され得る多孔質膜を包含するために使用される。こうした微孔質膜は、微孔質膜の細孔より大きい供給流成分(保留物(retentate))(例えば、これらに限定されないが、ゲル、粒子、コロイド、細胞、ポリ−オリゴマーなど)を保持し、一方でその細孔より小さい成分は細孔を通過して透過物流(permeate stream)に入る。微孔質膜による供給流中成分の保持力は、作業条件(例えば、面速度および界面活性剤の使用)に依存し得、かつ、膜細孔の大きさ、構造および分布に対する、粒子の大きさおよび構造に依存し得る。
【0086】
多孔質媒体は、多くの分離および吸着技術(例えば、濾過)において有用である。多孔質媒体の1つの特定の種類である微孔質膜は、様々な用途に使用されている。微孔質膜は、第1の多孔質表面、第2の多孔質表面、ならびに第1の多孔質表面から第2の多孔質表面まで膜全体にわたって延びる連続多孔質構造を有するものとして記載され得る。この連続多孔質構造は、本体材料マトリックスおよび細孔の網状組織を含む。本体マトリックスと細孔体積とを隔てる境界面(すなわち、内部細孔網状組織の表面)は、間隙表面と呼ばれ得る。
【0087】
本発明の変形例における多孔質支持体として有用な微孔質膜としては、被覆されて、被覆されていない微孔質膜支持体と比較して82%以下のイソプロピルアルコール流動損失を有する微孔質複合材料膜を形成し得る微孔質膜が挙げられ得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、10ミクロン以下であり得る細孔径を有し得、他の変形例において、微孔質膜支持体の細孔径は、0.45ミクロン以下であり得、本発明の一部の他の変形例において、微孔質膜支持体の細孔径は、0.2ミクロン以下であり得、本発明のさらに一部の他の変形例において、微孔質膜支持体の細孔径は、0.1ミクロン以下であり得る。本発明の他の変形例において、微孔質膜支持体の細孔径は、約0.001ミクロン〜0.45ミクロンの範囲にわたり得、なおさらに他の変形例において、微孔質膜支持体についての定格細孔径は、約0.005ミクロン〜約0.1ミクロンの範囲にわたり得る。一部の変形例において、微孔質膜支持体は、分子量カットオフ(MWCO)によって特徴付けられ得、約2kDa(1kDa=1000g/mol)〜約20,000kDaのMWCOを有する膜を包含し得る。より小さい細孔径を有する微孔質膜は、より大きい細孔径の微孔質膜と比較して、液体中のより小さい粒子の保留を篩分け保持により可能とし、微孔質膜支持体は、総厚さを有し得、微孔質膜は、その総厚さが約4ミクロン〜約75ミクロンの範囲となり得るように、一部の変形例においてはその総厚さが約14〜約25ミクロンの範囲となり得るように、1つ以上の保持層および必要に応じて1つ以上の支持層を含む。より薄い微孔質膜支持体は、より厚い微孔質膜よりも小さい圧力降下を有する。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、1つ以上の保持層および1つ以上の支持層を含む多層構造を有する。本発明の一部の変形例において、多層微孔質膜支持体は、0.1ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜であり;一部の変形例において、多層微孔質膜は、0.05ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜であり;本発明の一部の変形例において、多層微孔質膜は、0.03ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜であり;本発明の一部の変形例において、この多層膜は、0.02ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜である。多層PTFE複合材料膜は、Goreより入手可能であり、米国特許第7,306,729号明細書および米国特許出願公開第2007/0012624号明細書に記載されている。これらの文献の内容は、参照によりその全体が本明細書において本開示に援用される。より小さい定格細孔径の膜は、小さい粒子のみを得るためのより優れた篩い分け保持力を有しており、粒子、ゲル、コロイドなどが処理純度および処理収率を低減し得るような、化学物質、半導体、薬剤および他の工業的製造環境における使用に有利である。
【0088】
本発明の変形例において被覆された微孔質支持体の定格細孔径、公称細孔径、または細孔径は、米国特許第7,306,729号明細書に開示されている方法によって特徴付けられる微孔質膜に言及し得る。この米国特許明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。場合によっては、微孔質支持体の定格細孔径、公称細孔径、または細孔径は、その膜細孔径もしくはMWCOにある粒子の少なくとも90%以上の保持、またはその膜細孔径もしくはMWCOより大きい粒子の少なくとも90%以上の保持を意味する。一部の変形例において、微孔質支持体の定格細孔径、公称細孔径、または細孔径は、その膜細孔径もしくはMWCOにある粒子の少なくとも99%以上の保持、またはその膜細孔径もしくはMWCOより大きい粒子の少なくとも99%以上の保持を意味する。保持力は、光学的方法、または溶媒蒸発後の保留物および透過物粒子のTEM分析によって測定され得る。
【0089】
多孔質膜基体または多孔質膜支持体は、化学的に不活性であり、フルオロカーボンポリマー組成物のための溶媒によって溶媒和または分解されず、微孔質膜支持体上の非晶質フッ素化コーティングの硬化および活性化に使用される条件および試薬によって分解されることもないポリマー組成物から形成される。微孔質膜支持体は、任意の好都合な幾何学的形状(フラットシート、波形またはひだ状シート、中空糸などを含む)を有し得る。微孔質膜支持体は、ウェブ、ネット、ケージなどによって支持されているものであり得、または支持されていないものでもあり得る。微孔質膜支持体は、等方性もしくは異方性、外皮で覆われている(skinned)もしくは外皮で覆われていない(unskinned)、対称もしくは非対称、これらの任意の組み合わせとすることもでき、または1つ以上の保持層および1つ以上の支持層を含む複合膜とすることもできる。本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、1つ以上の保持層の小さい細孔径定格の故に高表面積を有し、必要に応じて、1つ以上の多孔質支持層を有する。本発明の一部の変形例において、高表面積膜は、0.45ミクロン未満の保持層細孔径を有し、1つ以上の支持層を有する。本発明の変形例において、微孔質膜支持体は、1つ以上の微孔質保持層のいずれか一方の側に多孔質支持層があるために、全体として非対称の構造を有し得る。
【0090】
本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体のみならず、微孔質膜複合材料も、10m/g以上の質量値当たりの表面積を有し、本発明の一部の変形例において、微孔質膜支持体は、20m/g以上の質量値当たりの表面積を有する。多孔質膜支持体および微孔質膜複合材料の表面積は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第7,306,729号明細書に開示されているような、BET法によって測定され得る。より高い表面積の微孔質膜支持体は、微孔質膜複合材料の精製用途に有利であり得るより高いイオン交換容量のみならず改善された湿潤性をも有するより高い表面積の微孔質膜複合材料をもたらし得る。
【0091】
本発明の変形例における架橋イオノマーのコーティングを有する微孔質膜支持体の非脱湿潤特性は、液体で湿潤させた微孔質膜複合材料試料を、オートクレーブ中でその液体の沸点より上に加熱することによって測定され得る。微孔質膜複合材料試料が非脱湿潤性である場合は、この試料は、オートクレーブ処理後に湿潤されたままであり、半透明のままである。例えば、本発明の変形例における非脱湿潤性の微孔質膜複合材料は、40分〜60分または約60分にわたって水中での約135℃以上の温度での水中オートクレーブ処理に供される場合に脱湿潤しない微孔質膜複合材料をいう。微孔質膜複合材料試料は、まずメタノールと水とを含有する溶液で試料を湿潤させ、次いでそのメタノールと水との溶液を流水洗浄によって水と交換することにより、オートクレーブ試験のために調製され得る。水で交換された試料は、オーブン中で、水を含むシール容器中でオートクレーブ処理され得る。微孔質膜支持体が十分な架橋イオノマーで被覆されていない場合は、そのような不完全に被覆された試料を水中でのオートクレーブ処理に供することは、その不完全に被覆された試料がオートクレーブ処理後に脱湿潤し、不透明に見える原因となる。非脱湿潤性は、微孔質膜の表面エネルギーの接触角測定値とは異なる。なぜなら、非脱湿潤性は、微孔質膜の外部表面だけではなく、膜の厚さおよび細孔の全体にわたる、すなわち膜の液体接触表面および濾過表面の全体にわたる、微孔質膜の湿潤特性をいうからである。
【0092】
微孔質膜複合材料の変形例は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤され、その微孔質膜複合材料は、直接的に水で湿潤されない。用語「湿潤可能」または「湿潤性」は、メタノールと水とを含有する溶液またはメタノールおよび水から実質的になる溶液を、熱、圧力、機械的エネルギー、界面活性剤または他の予備湿潤剤(prewetting agent)の使用なしに、約5秒以内に、実質的にその被覆された微孔質構造の全体に、直ちに吸い込むおよび/または吸収する、乾燥状態の微孔質膜複合材料をいうために使用される。本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、たとえ架橋イオノマーコーティングが親水性基を有し、水を用いたオートクレーブ処理後にその微孔質膜複合材料が非脱湿潤性であっても、直接的に水で湿潤可能でない。湿潤性は、微孔質膜複合材料試料の一部分の上にメタノールと水との溶液を一滴、約5cm以下の高さから直接その試料の上に落とすことによって測定され得る。次いで、その試料の細孔にその液滴が浸透する時間が測定される。その液滴が試料の細孔に5秒以内で浸透し、試料が透明に見えれば、その試料は、そのメタノールと水との溶液の液滴によって湿潤されたと見なされる。その液滴が微孔質膜複合材料試料に浸透しない場合は、より高い重量パーセントのメタノールを含有するメタノールと水との溶液が、その試料を再試験するために使用される。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、95重量%以下のメタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、80重量%以下のメタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明の他の変形例において、微孔質膜複合材料は、50重量%以下のメタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明のさらに他の変形例において、微孔質膜複合材料は、30重量%以下のメタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明のなおさらに他の変形例において、微孔質膜複合材料は、20重量%メタノール〜0重量%超メタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明の別の変形例において、微孔質膜複合材料は、水中20重量%メタノール〜水中60重量%メタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。本発明のさらに別の変形例において、微孔質膜複合材料は、水中20重量%メタノール〜水中30重量%メタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤され得る。より少ないメタノールを含有するメタノールと水との溶液で湿潤される微孔質膜複合材料は、より高い表面エネルギーを有し、脱湿潤に対してより一層の耐性がある。様々なメタノールと水との溶液の表面張力が、参照により本明細書に援用される米国特許第6,835,480号明細書の図3に開示されている。この引用文献における図3に基づけば、80重量%、50重量%、25重量%および10重量%というおおよその水中メタノール重量パーセントについて、それらの溶液についての対応するおおよその表面張力は、それぞれ、約27dyn/cm、約32dyn/cm、約43dyn/cm、および約55dyn/cmである。
【0093】
こうしたメタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、水性濾過用途に使用され得、その場合、水性液は、その微孔質膜複合材料を、膜を脱湿潤させることなく支障なく貫流し得る。「水性液」とは、水、水ベースの液体(例えば、半導体産業において使用される種々の水性製品(例えば、SC1またはSC2洗浄浴)、酸化剤(例えば、過酸化水素またはオゾン)を含むまたは含まない濃硫酸、濾過を必要とする他の水ベースの液体(例えば、塩の水溶液(緩衝化酸化物エッチ液)、塩基または酸の水溶液)が挙げられるが、これらに限定されない)を包含することを意味する。
【0094】
微孔質膜上の架橋過フッ素化イオノマーのコーティングは、吸収、透過、または反射分光法(例えば、FTIR分光法、固体状態NMR、またはUV/VIS分光法)によって特徴付けられ得る。本発明の一部の変形例において、デンシトメトリーが、本明細書に記載されるようにメチレンブルー染料で染色した後の微孔質膜複合材料を特徴付けるために使用される。反射デンシトメーターは、表面の光学濃度を測定するために使用される計器であり、表面から反射される光に感受性または応答性がある。反射光の強度が、微孔質膜複合材料のような基体上のステインまたはインクの濃度を測定するために使用され得る。光学濃度は、表面がより濃い色にされるにつれて増加する。したがって、黒い表面は、灰色の表面よりも濃度が高く、濃黄色の表面は、淡黄色の表面よりも濃度が高い。
【0095】
デンシトメーターでの読取りは、メチレンブルー染色された微孔質膜複合材料上の任意の点もしくは領域で、またはメチレンブルー染色された微孔質膜複合材料上の、グリッド上の点もしくは領域で行われ得る。
【0096】
本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量、場合によっては約100mL/分〜約120mL/分の流量での、5000重量百万分率(ppm)の3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコール溶液との4時間以上の貫流接触後に行われる、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取りによって決定される平均デンシトメーター値の±9%の範囲内にある、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメーター読取りによって決定される平均デンシトメーター値を有する。
【0097】
本発明の他の変形例において、微孔質膜複合材料は、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染色された試料についてのデンシトメーター読取り値の平均が、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000重量百万分率(ppm)の3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触の処理後の、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された同じ試料のデンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値と、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならない、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメーター読取りによって決定される平均デンシトメーター値を有する。
【0098】
メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料の一部の変形例は、処理前の被覆微孔質膜複合材料の特性の平均と比較して、5000重量百万分率(ppm)のフルオロ界面活性剤を含有する先に記載した熱イソプロピルアルコール浴での処理後の平均読取り値の差異が±4%未満である、平均デンシトメーター読取り値または他の特性(例えば、親水性基のFTIR透過強度)を有する。本発明の一部の変形例において、処理前および処理後の平均は、95%の信頼限界(CL)で異ならない。一部の変形例において、これらの平均は95%のCLで異ならず、特性は、処理前の微孔質膜複合材料の特性の平均と比較して、5000重量百万分率(ppm)のフルオロ界面活性剤を含有する熱イソプロピルアルコールでの処理後の平均の差異が±4%未満である。
【0099】
微孔質膜支持体上の結合コーティングはまた、微孔質膜複合材料が、微孔質膜複合材料の乾燥を引き起こすのに十分に長い時間にわたって曝露されない限り、微孔質膜複合材料の気体(例えば、空気)への曝露の間の膜の脱湿潤を防止する。濾過処理における使用の間(例えば、濾過される液体の交換の間)、フィルターは、そのフィルターを横切っての小さい差圧の下で空気に曝露され得る。さらに、本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、化学的に活性な水性液(例えば、酸または塩基)(ガスを発生させる酸化剤を含有し得るまたは高濃度の溶存気体を含有し得る水性液を包含する)を濾過するのに特に有用である。これらの例において、微孔質膜支持体および架橋イオノマー組成物は、その両方が、化学分解に対する耐性が高く、流動損質を最小限に抑え、そして非脱湿潤性の微孔質膜複合材料を提供する。
【0100】
本発明の変形例における微孔質膜複合材料は、フィルターデバイスにおいて、種々の支持体とともに、様々な構成で使用され得る。この微孔質膜複合材料は、1つ以上の支持層またはネットとともにひだをつけられ、ケージ、支持体、およびエンドキャップ構造物を用いて詰められて、種々のフィルターカートリッジを形成し得る。このカートリッジは交換可能であってもよく、それらがハウジング内に結合されていてもよい。微孔質膜複合材料が中空糸である場合は、1本以上の中空糸が詰められて、デバイスを形成し得る。
【0101】
以下の非限定的な実施例に関して、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0102】
一般的合成方法と試験手順
実施例2の表3に記載されるような約380g/当量〜約620g/当量の当量重量を有する1種以上のフッ素化イオノマーを約0.4重量%〜約4重量%含有するフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体を被覆するために使用した。フッ素化イオノマーは、CF=CF−O−CFCFSOFモノマー単位、テトラフルオロエチレン、式CH=CH−(CF−CH=CHのビス−オレフィン単位、およびヨード化連鎖移動剤I−(CF−Iから誘導されたものであった。イオノマーは、メチルペルフルオロブチルエーテル(Novec(商標)HFE7100)のようなフルオロカーボン溶媒、Galden(登録商標)SV90のようなペルフルオロポリエーテル溶媒、またはこれらの組み合わせに溶解されていた。これらのイオノマー溶液は、Solvay Solexisから入手したものであり、使用前に、必要に応じて、0.45ミクロン、0.2ミクロン、またはさらに小さい定格細孔径のフィルター微孔質膜で濾過することもあった。HFE溶媒とともに被覆する際に使用することのあった、イオノマー、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンの組み合わせの非限定的な例を、表1に示す。各液体フルオロカーボン溶液は、希釈後に、0.6重量%Luperoxを含有した。
【0103】
【表1】

【0104】
LUPEROX(登録商標)101は、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(CAS 78−63−7)であり、Arkemaより市販されている。ビス−オレフィン架橋剤は、1,9−デカジエン,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,−ドデカフルオロ(CH=CH−(CF−CH=CH)(CAS 1800−91−5)であり、例えばApollo Scientific,Ltd.より市販されている。場合によっては、フッ素化イオノマー溶液を、追加のビス−オレフィン(イオノマー重量に基づき3重量%)および開始剤(Luperox(登録商標)101、イオノマー重量に基づき3重量%)と組み合わせ、HFE7100溶媒および/またはGalden(登録商標)SV90溶媒で希釈して、その溶液を被覆のために適切なイオノマー重量パーセント(0.4〜4%)にした。
【0105】
このイオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との溶液を用いて、ポリマー微孔質膜支持体を被覆した。場合によっては、微孔質膜支持体を、米国特許第6,902,676号明細書に記載されているように含浸によって、そのイオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との溶液で被覆した。場合によっては、微孔質膜支持体を、ロールを用いた機械的塗布によって、そのフッ素化イオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤溶液との溶液で被覆した。機械的塗布に関して、そのフッ素化イオノマーと、ラジカル開始剤と、ビス−オレフィン架橋剤との過剰な溶液を、例えばロール、スクィーズバー、またはスキージバーを用いて、不活性微孔質膜支持体から除去した。被覆微孔質膜から溶媒を除去し、密閉容器において、約140℃〜約180℃の温度にて、約10分〜約60分にわたり架橋/硬化を行った。
【0106】
ポリマースルホニル基(−SOF)の酸性スルホン酸基(−SOH)への変換を、硬化された被覆微孔質膜支持体を、約10重量%KOHのKOH水溶液中で、約70℃〜約85℃の温度にて約4時間〜約8時間またはそれ以上にわたって処理し、続いてこの被覆微孔質膜を脱塩水中で洗浄し、次いでこの被覆微孔質膜を、20重量%のHCl溶液または20重量%の硝酸のような強酸水中で、室温にて、約2時間〜約16時間にわたって処理することにより行った。次いで、この硬化され、活性化された微孔質膜複合材料を、脱塩水で洗浄した。
【0107】
次いで、この硬化され、活性化された微孔質膜複合材料を、約80℃〜約90℃の範囲にわたる温度の熱水中で、約30分間、または不要なアニオンおよびカチオンを膜から除去するのに充分な時間にわたって抽出した。
【0108】
イオノマー含有溶液で被覆された微孔質膜支持体は、厚さが約14〜約20ミクロンの範囲にわたり、製造(Gore)から得られたままで約0.02ミクロン〜約0.1ミクロンの範囲にわたる細孔径を含む。これらのPTFE微孔質膜は多層であり、0.1ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.05ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.03ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜;0.02ミクロン細孔径の微孔質PTFE膜を含んだ。
【0109】
一部の多層膜について、沸騰、または熱水が約100℃の、清浄または抽出工程の間に、離層が生じるのが観察された。理論により拘束されることを望むものではないが、被覆膜において沸騰中に生じる水蒸気が、離層の原因であったのであろう。抽出液の温度をその沸点よりも低い温度に下げることにより、離層なしに多層微孔質複合材料膜を作製し得ることを発見した。
【0110】
流動時間および流動損失。流動時間は、所与の圧力、通常は14.2psi、すなわち97,905.5パスカルで、500mLのイソプロピルアルコール(IPA)または水などの他の液体が、微孔質膜支持体の直径47mm試料または微孔質膜複合材料の直径47mm試料を貫流する時間(秒)である。これらの結果は、微孔質膜複合材料の透過度に換算され得る。例えば、直径47mm微孔質複合材料膜試料について、14.7psi/atmの換算率を用い、透過度の単位をL/(時間×m×atm)とすると、11.5psiで670秒という水についての流動時間を有した0.02ミクロン定格PTFE膜は、約1979.6L/時間×m×atmの透過度と計算される。この微孔質膜は、1.3重量%イオノマーコーティング濃度の597g/当量EWのイオノマーで被覆された場合、水流動時間は725秒であったので、1829.4L/時間×m×atmの透水度と計算される。IPA流動損失試験については、Swinnexハウジング(Millipore Corp.)を、直径47mm微孔質膜支持体試料および微孔質膜複合材料試料のために使用した。水流動損失試験については、直径47mmのSavillexハウジングを、微孔質複合材料膜および微孔質膜支持体試料のために使用した。流動損失は、式:
流動損失=100×[1−((被覆されていない膜の平均流動時間)/(被覆された膜の平均流動時間))]
を用いて計算した。
【0111】
非脱湿潤性試験を、微孔質膜複合材料の非脱湿潤特性を特徴付けるために使用した。非脱湿潤性試験は、水を含むシール容器中で微孔質膜複合材料の試料をオートクレーブ処理することを含む。被覆微孔質膜複合材料試料をPFAホールダーに取り付け、IPAで予備湿潤した。被覆微孔質膜試料の水流動時間は、約11.5psi(79289.7Pa)で測定した。水温補正のために水温を測定し、結果を22.5℃での水流動時間として報告した。
【0112】
次に、温度を135℃に設定したオーブン中で、被覆微孔質膜複合材料試料をオートクレーブする。オートクレーブを、水中で1時間にわたって行い、次いで冷却させた。オートクレーブ処理した試料ディスクを、疎水性について検査する。微孔質膜複合材料が非脱湿潤性であれば、透明であるはずである。
【0113】
オートクレーブ処理した微孔質膜複合材料試料の水流動時間を、圧力約11.5psi(79289.7Pa)で測定する。水温補正のために水温を測定し、結果を22.5℃または約22.5℃の温度での水流動時間として報告した。
【0114】
湿潤性試験を、微孔質膜複合材料の表面エネルギーを特徴付けるために使用した。微孔質膜複合材料の表面を濡らすために使用した液体の組成を、微孔質膜複合材料の表面エネルギー(dyn/cm)に遡って関連付け得た。秤を用いて様々な重量パーセントのメタノールと水との溶液を作製する。これらのメタノール(MeOH)/水溶液の液滴を、微孔質膜複合材料の47mm試験試料に、試料の上方5cm以下の高さから適用する。試験試料膜が5秒以内に不透明から半透明に変化し、それにより膜がMeOH/水溶液で湿潤されたということが示される場合、微孔質膜複合材料は、その溶液で湿潤可能である。その微孔質膜複合材料試料の湿潤が生じなかった場合には、より多くの量のMeOHを含有する溶液を用いた。湿潤が生じた場合には、より少ない量のMeOHを含有する溶液を用いた。試料微孔質膜複合材料を、メタノールと水とを含有する様々な溶液を用いて評価した。試料を湿潤させた溶液中のメタノールの重量パーセントを報告した。
【0115】
デンシトメトリーを、約70℃〜約80℃の間の温度における、5000百万分率の3M(商標)Novec(商標)FC4432フルオロ界面活性剤を含有する熱イソプロピルアルコール浴と複合材料との貫流接触の前後の微孔質膜複合材料上のコーティングを特徴付けるために使用した。微孔質膜複合材料と、Solvay Solexisより入手可能なイオノマー当量重量850の非架橋フッ素化コーティングで被覆された比較の微孔質膜支持体とを、それらの被覆微孔質膜試料をメチレンブルー染料の0.1%水溶液中に膜表面の染色が生じるまで浸漬することにより、メチレンブルーで染色した。次いで、これらのメチレンブルー染色された、イオノマーの非架橋フッ素化コーティングを有する微孔質膜支持体、または微孔質膜複合材料試料を、順次、水、イソプロピルアルコール、次いで水中で、全て、その染色された微孔質膜試料から過剰な染料を除去するように撹拌しながら洗浄した。
【0116】
コントロールデンシトメーター読取りを、熱フルオロ界面活性剤含有IPAでの貫流処理の前に、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料の直径47mm試料上の任意の点で行った。デンシトメーターでの読取りは、DensiEye 700デンシトメーターを用いて行った。デンシトメーター読取り値の平均、標準偏差、および相対標準を計算した。デンシトメトリー読取りのためにサンプリングされた点の数(N)は限定されておらず、実施例において、読取りの数は、N=10程度〜N=20程度の範囲にわたった。
【0117】
メチレンブルー染色された被覆微孔質膜の直径47mm試料を、約17.4cmのディスク面積の、ステンレス鋼膜ホールダーに取り付けた。5000百万分率の3M(商標)Novec(商標)からのフルオロ界面活性剤FC4432を含有する、約70℃〜約80℃の温度の熱イソプロピルアルコール浴を、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料を通って再循環させた。この界面活性剤含有浴は、約200mLの容量のIPA/フルオロ界面活性剤浴から、4〜10時間にわたり、少なくとも80mL/分の流量で再循環させた。この流れは、細孔径によって、約80mL/分〜約120mL/分の範囲にわたり得た。いくらかの浴の減容が蒸発により生じたが、これは4時間で約11%であった。
【0118】
熱IPA/フルオロ界面活性剤の貫流後、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜試料をIPAで洗浄し、乾燥させた。DensiEye 700デンシトメーターを使用し、メチレンブルー染色された被覆微孔質膜複合材料または試料の直径47mm試料上の任意の点で、デンシトメトリー測定を再度行った。接触または処理後のデンシトメーター読取り値の平均を計算した。
【0119】
熱IPAおよびフルオロ界面活性剤の浴との接触(処理)前のデンシトメーター読取り値の平均と、接触(処理)後のデンシトメーター読取り値の平均とを、スチューデントt検定により、従来から化学分析に用いられている限界である95%の信頼限界で統計的に比較し、両平均間の差異も決定した。
【0120】
実施例1
コポリマーは、米国特許第6,902,676号明細書に開示されている乳化重合手順に従い、TFEと式CF=CF−O−CFCF−SOFのビニルエーテルとを共重合させること、および予備架橋剤(pre−crosslinker)として式CHCH−C12−CHCHのビス−オレフィン、連鎖移動剤としてI−C−I、そしてラジカル開始剤として過硫酸カリウムを用いることによって得た。次の表2に示される条件下で、コポリマーC1、C2、C3およびC4を得た。
【0121】
【表2】

【0122】
実施例2
本実施例は、本発明の変形例において使用されるコーティングフッ素化イオノマー溶液の調製を開示するものである。ヨウ素鎖末端を有する実施例1において調製された予備架橋ペルフルオロイオノマーを、部分的にフッ素化または過フッ素化された溶媒に、約4重量パーセントの最終濃度が得られるように溶解させた。次いでこの混合物を、10,000rpmで2時間にわたり遠心分離した。さらに、溶液の一つS2*は、20,000rpmでさらなる2時間にわたり遠心分離した。不溶性残留物を除去した後、次の表3に要約されるような物性を示す、澄んだ透明な液体を得た。
【0123】
【表3】

【0124】
40mgのコポリマーを0.6mLのヘキサフルオロベンゼンに溶解させた後、NMRによるコモノマーのモル百分率の決定後に、当量重量を計算した。
【0125】
イオノマーのヨウ素含量を、X線蛍光(XRF)により測定し、固有粘度を、Ubbelohde粘度計を使用して、30℃にて、Novec(商標)HFE−7100において測定した。粒度は動的光拡散法の適用により決定し、流体力学的半径を、ともにBrookhaven Instrument Co.の商業用計器であるゴニオメーターBI−200SMおよび相関器BI−9000ATによって構成される計器で測定した。レーザー源は、Spectra−Physics 2000シリーズ 2020モデル/Ar 15Wであった。明確な散乱信号を得るために、0.22ミクロンで濾過された高純度のNovec(商標)HFE−7100で、溶液を予め約10倍に希釈した。この構成により、光拡散係数を決定し、次いでこれを、Stokes−Einsteinの関係(Stokes−Einstein−Sutherlandの式としても知られる)により平均粒径と相互に関係付ける。上記の表に示されたような平均粒径をもたらす全ての測定を、ISO規格#13321に従って行った。さらに、これらの測定は、重み付き平均粒径に相当する「Z平均」平均値を提供する。それゆえに、得られた平均は、より大きい粒子画分によって支配され、したがって、溶液中の最大の粒子画分の信頼性の高い同定であると見なされ得る。
【0126】
実施例3
本実施例は、遠心分離後に観察される分別を開示するものである。575g/当量の初期EWを有し、溶解前に0.71重量%のヨウ素含量を有した、予備架橋されたコポリマーC2を、室温にて20時間にわたり、Galden SV90中で撹拌した。こうして得られた混合物を、10,000rpmで、20℃にて、2時間にわたり遠心分離し、次いで、20,000rpmで、20℃にて、さらに2時間にわたり遠心分離した結果、透明溶液S2*および固体残留物が得られ、それらを別個に分析した。当量重量(EW)およびヨウ素含量の決定に使用した方法は、実施例2の場合と同様であった。その分析の結果を、次の表4に要約する。
【0127】
【表4】

【0128】
溶解するコポリマーの当量重量は、不溶性残留物として分離されるコポリマーの当量重量よりもかなり低いということが指摘され得る。しかしながらヨウ素含量は、これら2つの相においてほぼ同じままである。
【0129】
実施例4
本実施例は、実施例2に記載されたようなフッ素化イオノマー(S1)溶液からの、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および4重量%のイオノマー含量を含有するHFEベースのコーティング溶液で被覆された、Goreからの0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜についての、イソプロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。このコーティング溶液は、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含有した。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。この被覆された微孔質膜支持体を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHで活性化し、続いて室温にてHNO処理を行い、次いで90℃の熱脱イオン(DI)水で洗浄した。流動損失試験を、微孔質膜複合材料の47mmディスクに対して行った。それを表5に要約する。
【0130】
【表5】

【0131】
これらの結果は、微孔質膜支持体上に塗布されるイオノマーのパーセントが増加するにつれて、微孔質膜複合材料についての流動損失パーセントが増加すること、および4%イオノマーの濃度においては、この多層多孔質膜を通るIPAの流動が全くないことを示している。4重量%のイオノマーを用いては、1つの例で、85%の流動損失が観察された(下記参照)。
【0132】
これらの結果は、被覆されていない微孔質膜支持体と比較して、71%以下または約71%以下のIPAに基づく流動損失パーセントを有する微孔質膜複合材料を、1.3重量%以下または約1.3重量%以下のコーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度を用いて作製し得たということを示している。これらの結果はまた、ベース膜と比較して、77%以下または約77%以下のIPAに基づく流動損失パーセントを有する被覆微孔質複合材料膜を、2重量%以下または約2重量%以下のコーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度を用いて作製し得たということも示している。これらの結果は、コーティング溶液中で用いられたイオノマーの濃度が減少するにつれて、微孔質膜複合材料の流動時間が減少したことを示している。
【0133】
表6の結果は、0.02ミクロン細孔径の微孔質膜支持体上にロールを用いてコーティング溶液を塗布することによって作製された微孔質膜複合材料について得られたものである。この微孔質膜は、多層PTFE膜(Gore)であり、コーティング溶液は、597g/当量イオノマー(S1)溶液を1.3重量%のイオノマー濃度で含んでいた。コントロール試料は、被覆されていない0.02ミクロン細孔径の微孔質膜であった。
【0134】
【表6】

【0135】
これらの結果は、0.02ミクロンの細孔径を有する微孔質膜を、その膜上にイオノマー溶液を塗布することにより被覆して、水中約40重量%メタノール〜水中約50重量%メタノールの間を有するメタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を提供し得るということを示している。この微孔質膜複合材料は、水流動時間および47mmのディスク直径に基づき、両方のディスク試料について、1800L/atm×時間×mより高い計算透水度を有する。小さい細孔径の微孔質膜複合材料の高い透水性は、フィルターデバイス中で使用されるまたは必要とされる微孔質膜複合材料の領域を最小限にし、それにより濾過デバイスの費用および全体の大きさを削減し得るため、当該微孔質膜複合材料は濾過用途において有益である。
【0136】
実施例5
本実施例は、実施例2の(S3)溶液からの、1.3重量%および2重量%のイオノマー含量を含むHFE溶媒ベースのフルオロカーボン液体組成物コーティング溶液で被覆された、0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜(Gore)についての、イソロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。このコーティング溶液はまた、一般的合成方法において記載されたように、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含有した。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。この被覆膜を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHで活性化し、周囲温度にてHNOで処理し、90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、被覆され硬化された微孔質膜支持体の直径47mmディスクに対して行った。その結果は表7にある。
【0137】
【表7】

【0138】
本実施例は、微孔質膜支持体の液体接触表面および細孔上にロールを用いて塗布されるイオノマー濃度が増加するにつれて、IPA流動損失パーセントが増加するということを示している。
【0139】
これらの結果は、2重量%以下のフルオロカーボン液体組成物中イオノマー含量を用い、フルオロカーボン溶媒からのイオノマーのコーティングを微孔質膜支持体上に塗布することによって、69%(すなわち、82%未満)のIPA流動損失が達成され得たことを示している。百分率として同じイオノマー含量での流動損失パーセントは、実施例4におけるイオノマー(S1)についてよりも、イオノマー(S3)についての方が低かった。
【0140】
実施例6
本実施例は、実施例2の(S4)溶液を含み、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および3.5重量%のイオノマー含量を含有するGalden溶媒ベース(溶媒の大部分はGalden SV90であるがLuperoxラジカル開始剤からの少量のHFE溶媒が存在する)のフルオロカーボン液体組成物で被覆された、0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜(Gore)についてのイソプロピルアルコール(IPA)の流動時間および(流動損失)測定値を記載するものである。一般的合成方法に記載されたように、開始剤およびビス−オレフィンを、このコーティング溶液に加えた。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン細孔径の微孔質膜支持体を被覆した。この被覆膜を、コーティングを架橋するために、約30〜60分にわたって175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃のKOHおよび周囲温度のHNOで活性化し、次いで90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、微孔質膜複合材料および微孔質膜支持体の47mmディスクに対して行った。その結果は表8にある。
【0141】
【表8】

【0142】
本実施例は、コーティングを塗布することによって微孔質膜支持体内に適用されるイオノマー含量パーセントが増加するにつれて、IPA流動損失パーセントが増加することを示している。これらの結果はまた、コーティング溶液中1重量%のイオノマー含量を用いて、複数の試料について達成された流動損失についての良好な反復性(3%差)も示している。
【0143】
これらの結果は、3.5重量%のイオノマー濃度で微孔質膜を被覆することによって、51%(すなわち、82%未満)のIPA流動損失を達成し得たということを示している。同じイオノマー濃度パーセントにおける流動損失パーセントは、(S3)または(S1)のイオノマー溶液を含むフルオロカーボン組成物についてよりも、(S4)イオノマー溶液を含むフルオロカーボン液体組成物についての方が低かった。
【0144】
実施例7
本実施例は、0.03ミクロン細孔径の多層PTFE微孔質膜支持体を被覆するために用いられた、様々な当量重量イオノマーおよびイオノマー濃度についての湿潤性範囲、すなわち水中メタノール重量パーセントの範囲を示すものである。本実施例における架橋された被覆微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例1〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0145】
【表9】

【0146】
表9は、例えば、0.75重量%のイオノマー濃度を有する溶液で被覆された0.03ミクロン微孔質膜支持体を含む微孔質膜複合材料が、水中30重量%〜40重量%メタノールで湿潤可能な微孔質膜複合材料を提供するということを示している。同様の記載が、表9における他の結果についてもなされ得る。比較のために、0.785重量%の濃度の非架橋イオノマーで被覆された微孔質膜の湿潤性は約80〜85%MeOHであった。
【0147】
意外なことに、本実施例の結果は、微孔質膜支持体を被覆するために用いられた同じ重量パーセントのコーティング溶液中のイオノマーについて、イオノマーの当量重量が低いほど、微孔質膜複合材料を湿潤させそれを半透明にするために使用される必要がある、水中MeOHの量がより多くなるということを示している。
【0148】
0.5重量%〜少なくとも3.5重量%、または約0.5重量%イオノマー〜約3.5重量%イオノマーの範囲にわたり得るコーティング溶液中のイオノマーの濃度(重量%)、および458g/当量〜597g/当量、または約460g/当量〜約600g/当量の範囲にわたり得るイオノマーの当量重量に依存して、メタノールのパーセントが10重量%〜80重量%、場合によっては10重量%〜70重量%、他の場合においては20重量%〜60重量%、さらに他の場合においては20重量%から30重量%の範囲にわたるメタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を作製した。
【0149】
本実施例の結果は、微孔質膜複合材料が水では直接的に湿潤されないということを示している。さらに、これらの結果は、コーティング溶液中のイオノマーのパーセント濃度が所与の当量重量について上昇するにつれて、膜を湿潤させるために使用される水中メタノールのパーセントも低下するということを示している。水溶液中のメタノールが少なくなるということは、イオノマー濃度が上昇するにつれて、被覆された微孔質膜複合材料の表面エネルギーが増加したということを示している。
【0150】
実施例8
本実施例は、含浸技術(米国特許第6,902,676号明細書)によってフッ素化イオノマーで被覆された多孔質膜の調製物と、ロールコーティングによって機械的に非晶質フッ素化イオノマーを多孔質膜全体にわたって塗布することにより調製した調製物とを比較するものである。これらの微孔質膜複合材料試料は、実施例2および実施例4において記載された、(S1)のフッ素化イオノマー前駆体と、架橋剤と、ラジカル開始剤とのコーティング溶液を用いて調製した。試料を、一般的合成方法における条件を用いて硬化させ、活性化させた。本実施例において、微孔質ベース膜支持体は、厚さ35ミクロンの、0.1ミクロン定格細孔径を有する、Goreより入手可能なPTFE微孔質膜であった。本実施例における被覆微孔質膜複合材料を、IPA流動時間および流動損失パーセントを測定することによって比較する。その組成および結果は表10にある。
【0151】
【表10】

【0152】
表10のデータは、含浸法が、フルオロカーボン液体組成物コーティングにおいてより低い重量パーセントのイオノマー濃度(イオノマー含量)を用いても、被覆された微孔質膜は流動損失パーセントの改善を平均してほとんど示さない結果となるということを示している。2重量%イオノマーおよび1重量%イオノマーで被覆された試料の間には平均流動損失においてわずか7%の差異しかなかった。4重量%イオノマー濃度での1つの例において、被覆微孔質膜上に疎水性箇所が観察された。
【0153】
【表11】

【0154】
微孔質膜中へのロールでのフッ素化イオノマー含有溶液の塗布は、表11に示されるように、コーティング中2重量%のイオノマーについては約55%の流動損失を、そしてコーティング中1重量%のイオノマーについては約36%の流動損失をもたらした。コーティング中4重量%のイオノマー濃度における1つの例で、85%の流動損失が観察されたが、他の試料においては、流動は全く観察されなかった。2重量%イオノマーコーティング溶液と1重量%イオノマーコーティング溶液との間の流動損失の差は19%であった。コーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが減少するにつれて、湿潤性が低下した。
【0155】
表10および表11中のデータは、ロールでの微孔質膜支持体全体にわたるイオノマーの塗布が、概してより低い流動損失をもたらすこと、すなわち、1重量%のイオノマーを含有するコーティング溶液について、含浸法については58%となるのに対し、ロールコーティングについては36%となることを示している。さらに含浸法と比較して、ロール法については、流動減少パーセントがイオノマー濃度によってより激しく変化した。ロールでコーティング溶液を塗布することによって、より流動損失の低い被覆微孔質膜複合材料を作製し得た。両方法は、同様な湿潤性を有する微孔質膜をもたらした。
【0156】
実施例9
本実施例は、メタノール湿潤性(水中メタノール重量パーセント)と0.03ミクロン細孔径のPTFE微孔質膜支持体(Goreより入手可能)上のコーティングにおいて用いられたイオノマー濃度またはイオノマー含量(重量パーセント)との間の非線形の関係を説明するものである。微孔質膜支持体を、実施例2において記載されるような異なる当量重量の非晶質イオノマー(S1)597g/当量、(S3)512g/当量、および(S4)458g/当量を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆した。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例4〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0157】
図1に示されるように、(S3)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料の湿潤性は、(S4)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料と、(S1)を含有するフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料との間の中間にある。使用されるイオノマー濃度が減少するにつれて、(S3)イオノマーを用いて作製された微孔質膜複合材料を湿潤させるために用いられる水中メタノールの重量パーセントが増加することが予想される。
【0158】
本実施例の結果は、微孔質膜支持体を被覆するために用いられるコーティング溶液中のイオノマー濃度またはイオノマー含量(重量パーセントとして)が減少するにつれて、非線形的に湿潤性が低下するということを示している。
【0159】
図1の結果はまた、イオノマー当量重量が減少するにつれて、湿潤性が低下することも示している。例えば2重量%のイオノマー含量において、(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜は、(S3)溶液(水中約30重量%MeOHで湿潤可能)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜よりも、優れた湿潤性(水中約12重量%MeOHで湿潤可能)を有し、(S3)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜は、(S4)溶液(水中約45重量%MeOHで湿潤可能)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微細孔膜よりも湿潤性が高い。理論により拘束されることを望むものではないが、より低い当量重量イオノマーは、より高い密度の親水性基を有することが予想され、したがって親水性はより高いはずであるから、このことは意外である。
【0160】
実施例10
本実施例は、1.3重量%のイオノマー含量を有するように希釈された(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物についての流動損失パーセントを記載するものである。この液体組成物は、架橋剤およびラジカル開始剤を含む。このフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体の表面および細孔表面上に塗布する。本実施例における微孔質複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例2からの溶液とともに、実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。IPA流動損失試験に関しては、47mm多孔質膜試料用のSwinnexハウジング(Millipore Corp.)を、試料微孔質膜複合材料を保持するために使用した。
【0161】
0.03ミクロン細孔径の多層微孔質膜に関しては、微孔質複合材料膜についての約3700秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約1085秒の流動時間に基づき計算すると、その微孔質膜複合材料のIPA流動損失パーセントは、71%または約71%であった。また、この微孔質膜複合材料試料は、水中約24重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0162】
0.05ミクロン細孔径の多層微孔質膜支持体に関しては、500mLのIPAについての、微孔質膜複合材料についての約1300秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約600秒のIPA流動時間から計算すると、その微孔質膜複合材料についてのIPA流動損失は、約55%であった。また、この微孔質膜複合材料試料は、水中約22重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0163】
単一保持層である、0.1ミクロン定格細孔径の微孔質膜支持体に関しては、微孔質膜複合材料についての約600秒のIPA流動時間、および被覆されていない微孔質膜支持体についての約350のIPA流動時間から計算すると、IPA流動損失は、約42%であった。また、この微孔質複合材料試料は、水中約18重量%のMeOHで湿潤可能であった。
【0164】
本実施例の結果は、流動損失が約71%以下であり、約25重量%以下のMeOHを有する水溶液中MeOHで湿潤可能な微孔質膜複合材料を、1.3重量%のイオノマー濃度で(S1)イオノマー溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製し得るということ、およびこの微孔質膜複合材料を、約0.03ミクロン〜0.1ミクロンの範囲の細孔径を有する微孔質膜支持体を用いて作製し得るということを示している。
【0165】
実施例11
本実施例は、架橋フッ素化イオノマーで被覆された0.1ミクロン微孔質膜支持体および0.03ミクロン微孔質膜支持体を含む微孔質膜複合材料に対して行った水流動損失および非脱湿潤性試験について詳述するものである。非脱湿潤性試験方法は、SavillexからのPFAホールダーに微孔質膜複合材料の直径47mm試料を取り付けることを含み、この微孔質膜複合材料を、IPAで予備湿潤させた。
【0166】
微孔質膜複合材料からIPAを流水洗浄した後、圧力約11.5psi(79289.7Pa)で水流動時間を測定した。温度補正のために水温を測定し、22.5℃での流動時間を下記の表に報告した。
【0167】
次に、微孔質膜複合材料試料を、シール容器中、水中でオートクレーブ処理した。このオートクレーブに用いられるオーブンを135℃の温度に設定し、試料を1時間にわたってオートクレーブ処理し、次いで冷却した。
【0168】
オートクレーブ処理された微孔質膜複合材料ディスクを疎水性について検査し、次いで、Savillexホールダーに取り付けた後、約11.5psi(79289.7Pa)で水流動時間を再測定した。温度補正のために水温を測定し、22.5℃での流動時間を報告した。
【0169】
水オートクレーブ前後の水流動時間、および非脱湿潤性結果を、様々な微孔質膜支持体細孔径、イオノマーコーティング溶液、および膜を被覆するために用いられたイオノマーの濃度(重量%)について、下記の表に要約する。本実施例における微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例2からの溶液を用いて実施例4および6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0170】
1重量%イオノマーを用いて被覆された(硬化、活性化および予備湿潤後の)直径47mmの0.1ミクロン細孔定格の微孔質膜試料の、11.5psi/22.5℃/500mL容量の水で測定された水流動時間は、465秒であった。これは、約2852L/atm×時間×mの透水度と計算される。
【0171】
表12の結果は、0.5重量%、0.75重量%、および1重量%の濃度のイオノマーが得られるように実施例2からの(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で、微孔質の0.03ミクロン細孔径の多層PTFE膜(Gore)を被覆することによって作製された微孔質膜複合材料について得たものである。非架橋は、架橋されていないイオノマーで被覆された微孔質膜であることを示す。
【0172】
【表12】

【0173】
表12の結果は、(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製された0.03ミクロン細孔径の多層微孔質膜複合材料が水オートクレーブ試験により非脱湿潤性であること、水流動時間がオートクレーブ後に架橋試料について減少し、計算透水度もオートクレーブ処理後に上昇するということを示している。水流動時間に基づく、これらの被覆微孔質膜複合材料についての計算透水度は、1000L/atm×時間×mより高く、場合によっては1200L/atm×時間×mより高い。
【0174】
表13の結果は、0.75重量%、1重量%、1.3重量%、2重量%、および3.5重量%のイオノマー濃度を有する組成物が得られるように(S4)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で、微孔質の0.03ミクロン細孔径の多層PTFE膜(Gore)を被覆することによって作製された微孔質膜複合材料について得たものである。非架橋は、架橋されていないイオノマーで被覆された微孔質膜であることを示している。
【0175】
【表13】

【0176】
表13の結果は、(S4)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物を用いて作製された被覆微孔質膜複合材料がオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であることを示している。計算透水度は、特にオートクレーブ処理後の試料について、1000L/atm×時間×mより高い。場合によっては、水流動時間に基づく計算透水度は、1200L/atm×時間×mより高い。
【0177】
実施例12
本実施例は、異なる当量重量を有する異なるイオノマーの混合物を用いて調製された微孔質膜複合材料についての、メタノール湿潤性、イソプロピルアルコール流動時間、および流動損失を説明するものである。本実施例は、平均0.03ミクロンの細孔径を有するGoreからの多層PTFE微孔質膜支持体を使用する。フルオロカーボン液体組成物には、実施例2におけるフッ素化イオノマー溶液(S4)および(S1)からの、それぞれ約460g/当量および約600g/当量の当量重量を有するフッ素化イオノマーの、50:50の組合せまたは混合物が含まれる。微孔質膜支持体を、実施例4ならびに一般的方法および材料における方法により、ロールコーティングした。下記の表14は、(S4)および(S1)溶液の50重量%:50重量%混合物を含んだ1.3重量%のイオノマー混合物を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜支持体の湿潤性およびIPA流動時間を、同じく0.03μm細孔径の微孔質膜支持体(厚さ16ミクロン、4層)上に(S4)溶液および(S1)溶液からの1.3重量%のイオノマー含量を有する実施例4〜6において別個に調製された微孔質膜複合材料と比較している。(14.4psi=99284.5Pa)。
【0178】
【表14】

【0179】
表14の結果は、(S4)および(S1)からのフッ素化イオノマーの50:50混合物を含有する1.3%wt/wtコーティング濃度が、水中30%メタノールを含有する溶液での湿潤性および1880秒のIPA流動時間をもたらすことを示している。1.3重量%(S1/S4)微孔質膜複合材料は、水溶液中30重量%のメタノールで湿潤され、これは、(S1)のみを含む液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料を湿潤させるために用いられた溶液についての20重量%メタノール〜30重量%メタノールの範囲内にあり、(S4)のみを含む液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料の湿潤性(50重量%MeOH〜60重量%MeOH)よりも優れている。1.3%(S1/S4)微孔質膜複合材料についての流動損失パーセントは44%であり、これは、(S4)ベースの微孔質膜複合材料の流動損失(33%)より高く、単独の(S1)ベースの被覆微孔質膜複合材料の流動損失(71%)より低かった。
【0180】
これらの結果はまた、高表面積の微孔質膜支持体上のより低い当量重量の架橋イオノマーコーティングは、より高い当量重量の架橋イオノマーコーティングを用いて作製された同様のコーティングと比較して、湿潤性はより劣るが、より優れた流動損失特性を有することを示している。これは意外なことであった。低い当量重量の架橋イオノマーコーティングが濾過用途に適していた一方で、1種以上の低当量イオノマーおよび1種以上の高当量イオノマーの組合せを含む薄い架橋コーティングもまた、イソプロピルアルコール流動損失が82%以下の、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤された、かつオートクレーブ試験により非脱湿潤性である、被覆微孔質膜複合材料をもたらした。
【0181】
実施例13
本実施例は、微孔質膜支持体上で架橋されたフッ素化イオノマーのパーセントに伴う透水度の変化を示すものであり、この微孔質膜は、米国特許第6,902,676号明細書の実施例4および5の、40ミクロンの厚さを有するものである。この引用文献の実施例4は、厚さ40ミクロンの膜を0.2ミクロンの細孔径により特定した。この引用文献の実施例5は、厚さ40ミクロンの膜を多孔質であると特定しただけで、細孔径については開示しなかった。この引用文献における実施例2、7、11および比較実施例Dが、0.2ミクロンの多孔度を有する厚さ40ミクロンの膜を使用していることから、米国特許第6,902,676号明細書の実施例5についての細孔径もまた0.2ミクロンであったと、本実施例について想定した。
【0182】
図2に示されたこのグラフは、総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の33%〜総重量(イオノマーおよびPTFE支持体)の16%の間の588g/当量EWのイオノマーを含む米国特許第6,902,676号明細書における架橋された被覆多孔質膜について、予測透水度(y軸の単位はL/atm×時間×m)が、約25L/atm×時間×m〜250L/atm×時間×mの範囲にわたるであろうことを図示している(矢印はこれらの点を示す)。
【0183】
意外なことに、コーティングとして総重量(イオノマーおよび支持体、実施例13参照、下記参照)の約25%〜コーティングとして総重量の30%の間を有する本発明の一部の変形例における微孔質膜複合材料は、1000L/atm×時間×m(水流動時間に基づく)以上の透水度を有する。1000L/atm×時間×m以上の透過度は、それらの実施例における微孔質膜の細孔径が米国特許第6,902,676号明細書において使用された多孔質膜の0.2ミクロンの細孔径より小さいもの(0.1ミクロン〜0.02ミクロン)であっても、このグラフに示された線よりも上の点としてあるであろう。理論により拘束されることを望むものではないが、本発明において使用される高表面積の微孔質膜支持体上の架橋フッ素化イオノマーの薄いコーティングは、米国特許第6,902,676号明細書において使用された多孔質膜および方法と比較して、同様の重量付加量ではあるが、より高い透水性をもたらす。
【0184】
実施例14
本実施例は、約70℃〜約80℃の温度にて、80mL/分〜120mL/分の間の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触の前後における、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料のデンシトメーター読取り値を比較するものである。この流量は、膜細孔径および温度に応じて可変であった。フルオロ界面活性剤溶液の貫流接触を、メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の47mm試料に対して行った。デンシトメーター測定は、微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料上の様々な点で行った。これらの測定値を、70℃〜80℃の間の温度の熱イソプロピルアルコール中に3M(商標)Novec(商標)からの5000ppmのフルオロ界面活性剤FC4432を含有する浴での染色試料の、貫流接触または処理の前後において記録した。架橋されていない過フッ素化イオノマーで被覆された微孔質膜もまた、デンシトメトリーにより評価した。
【0185】
微孔質膜複合材料試料は、ステンレス鋼の膜ホールダー内に保持した。使用した試料のディスク面積は、17.35cm(47mm)であった。界面活性剤を含む熱イソプロピルアルコール(IPA)を、約100mL/分〜約120mL/分の流量で、約200mLのレザバから膜試料を通って再循環させた。処理時間は、概して4時間であったが、1つの例で10時間の長さであった。
【0186】
本実施例における微孔質膜複合材料は、先の実施例4〜6において作製されたもの、あるいは実施例4〜6における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0187】
デンシトメーター読取りは、DensiEye 700反射率計を用いて行った。デンシトメーター読取り値を、スチューデントt検定により統計的に評価した。その結果を表15に示す。
【0188】
表15において、(S1)イオノマー含量(1.3重量%)を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された微孔質膜複合材料についてのデンシトメーター読取り値平均における−8.39%の差異は、熱IPA/フルオロ界面活性剤を用いた貫流後に測定されたデンシトメーター読取り値の平均が、熱IPA/フルオロ界面活性剤を用いた貫流なしのコントロール微孔質膜複合材料試料のデンシトメーター読取り値の平均と比較してより高かったということを示している。この試料は、記されたように、10時間にわたって処理されたものである。
【0189】
表15の結果は、非架橋の850g/当量の当量重量のイオノマーで被覆された微孔質膜について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異なっており、これらの平均間の差異が、±9%より大きかったということを示している。
【0190】
【表15】

【0191】
表15の結果は、表15において597(S1)/(0.75)、597(S1)/(1),597(S1)/(1.3)10時間、597(S1)/(1.3)、597(S1)/(1.3)、および512(S3)/(2)の微孔質膜複合材料について示されているように、架橋フッ素化イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均との間の差異は、−9%〜9%の間であったということを示している。
【0192】
本実施例の一部の例においては、この表において597(S1)/(0.75)、597(S1)/(1)、597(S1)/(1.3)、および512(S3)/(2)の微孔質膜複合材料により示されるように、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、±4%未満の差異を有していた。
【0193】
これらの結果は、597(S1)/(0.5)、597(S1)/(1.3)、512(S3)/(2)、および458(S4)/(1)の微孔質膜複合材料について示されているように、架橋イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均とは、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならなかったということを示している。
【0194】
これらの結果はまた、架橋イオノマーで被覆された微孔質膜複合材料について、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触前の試料のデンシトメーター読取り値の平均と、熱いフルオロ界面活性剤およびイソプロピルアルコールの浴との接触後の試料のデンシトメーター読取り値の平均との間の差異は、例えば512(S3)/(2)および597(S1)/(1.3)の試料について、−9%〜9%の間であり、これらの平均は95%の信頼限界で異ならなかったということを示している。
【0195】
平均デンシトメーター読取り値の相対標準偏差を、微孔質膜複合材料上のイオノマーコーティングの均一性を特徴付けるために使用した。相対標準偏差は、標準偏差を平均で除することによって算出した。例えば、熱IPAおよび界面活性剤での処理前の、597(S1)/(0.05)試料についての相対標準偏差は0.29であり、458(S4)/(1)試料についての相対標準偏差は0.39であり、そして597(S1)/(1)試料についての相対標準偏差は0.054であった。これらの相対標準偏差は0.4未満である。
【0196】
実施例15
本実施例は、SC1浴中での処理前後の微孔質膜複合材料のイオン交換容量(IEC)を示すものである。微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体と、(Gore)からの0.03ミクロン細孔径の多層微孔質PTFE膜と、その微孔質膜支持体の細孔を含めた表面上に非晶質の架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングとを含んだ。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって作製されたものであった。
【0197】
複合材料膜のIECを、SC1溶液への曝露前に測定した。次いで、微孔質膜複合材料試料を、80℃にて30分間(水:水酸化アンモニウム:過酸化水素の5:1:1 SC1溶液)中に浸漬した。約30分後に、その使用されたSC1溶液を、新しいSC1混合物と交換した(2半減期)。この手順を6回繰り返した。
【0198】
このSC1溶液中での処理に続いて、微孔質膜複合材料を、洗浄し、再生し、そして乾燥させた。イオン交換容量を、再度測定した。
SC1浴曝露前のIEC 158nM/cm
SC1浴曝露後のIEC 161nM/cm
【0199】
これらの結果は、膜のイオン交換容量が、SC1溶液中での処理前後で本質的に同じ、すなわち実験誤差の範囲内であったことを示している。理論により拘束されることを望むものではないが、0.03ミクロン微孔質膜支持体のより高い表面積が、次の実施例における0.1ミクロン膜に比べてより高いイオン交換容量(IEC)の理由であると考えられる(下記参照)。
【0200】
実施例16
本実施例は、実施例2からの(S1)溶液およびラジカル開始剤(3重量%)を含むフルオロカーボン溶液で被覆された微孔質膜複合材料についての、泡立ち点、イオン交換容量、および重量付加量を特徴付けるものである。表16に詳述されているように、コーティング溶液を含むこのフルオロカーボンは、0重量%〜4重量%の異なるイオノマー含量を有した。微孔質膜支持体上の架橋コーティングの効果を、不活性微孔質膜支持体の質量増加の変化(付加重量パーセント)、不活性微孔質膜支持体のIPA泡立ち点の上昇(泡立ち点は多孔質複合材料膜による粒子保持と相関関係にあり、より高い泡立ち点は同じ大きさの粒子に対するより高い保持力を示す)、および被覆微孔質膜支持体のイオン交換容量(IEC)により測定する。本実施例における複合材料膜は、先の実施例4において作製されたもの、あるいは実施例4における方法ならびに/または一般的合成方法および試験手順によって、実施例2における(S1)溶液を用い、約35ミクロンの総厚さを有する0.1ミクロン定格細孔径のPTFE微孔質膜上へのロールコーティングにより作製されたものであった。
【0201】
【表16】

【0202】
これらの結果は、微孔質膜支持体を被覆するためのコーティング溶液中で用いられるフッ素化イオノマーのパーセント濃度が上昇するにつれて、エアフローポロシメトリー(air flow porosimetry)による微孔質膜複合材料のIPA泡立ち点が上昇することを示している。上昇するIPA泡立ち点は、コーティング溶液中のイオノマーの濃度が上昇するにつれて、被覆された微孔質膜複合材料の細孔径が減少したことを示している。
【0203】
イオン交換容量(IEC)は、微孔質膜複合材料の直径47mmディスク試料に対する電位差滴定により決定した。本実施例における多孔質膜複合材料を作製するために用いられた(S1)からの1重量%〜4重量%のイオノマーを含むフルオロカーボン液体組成物について、IECは、約95nmol/cm〜約125nmol/cmの範囲内にあった。このIECは、実施例12におけるより小さい細孔径の膜についてよりも低い。
【0204】
この非晶質コーティングにより微孔質膜支持体に付加された重量パーセントは、約25重量パーセント〜約30重量パーセント、または25重量パーセント〜30重量パーセントである。
【0205】
実施例17
本実施例は、約40〜51dyn/cmの間の表面エネルギーを有した本発明の変形例における架橋微孔質膜複合材料の湿潤性と、約28〜32dyn/cmの表面エネルギーを有した非架橋イオノマーで被覆された表面変性0.03ミクロン微孔質膜の湿潤性とを比較するものである。架橋微孔質膜複合材料は、ビス−オレフィンおよび実施例2からの(S1)溶液を含むフルオロカーボン液体組成物で被覆された0.03ミクロンPTFE微孔質膜支持体から調製した。フルオロカーボン溶液は、一般的合成方法および試験手順に従って、1.3重量%のイオノマー含量が得られるように溶媒で希釈した。
【0206】
【表17】

【0207】
表17の結果は、41dyn/cm以上の表面エネルギーを有する微孔質膜複合材料を、ある範囲の表面エネルギーを有する種々の処理化学物質で直接的に湿潤させ得るということを示している。場合によっては、湿潤はより遅かったが(5分以下)、この膜複合材料を、予備湿潤および溶媒廃棄物の発生なしに使用し得た。微孔質膜複合材料の表面エネルギーおよび適用液体の表面張力に依存して、本発明の変形例における微孔質膜複合材料を含有するフィルターは、水分を含まずに、または有機溶媒での予備湿潤の必要なしに、使用に向けて乾燥状態で梱包され、輸送され得る。これは、オートクレーブを無くすことおよび水分を含んで梱包されたフィルターにかかわる輸送費を無くすことによって製造費を削減し得、フィルター設置後の湿潤、流水洗浄および溶媒交換手順の間に生じる溶媒廃棄物を低減し得る。
【0208】
実施例18
本実施例は、0.75重量%、1重量%、1.3重量%の濃度の557g/当量の当量重量のイオノマー(S2)溶液を含むGalden(登録商標)SV90溶媒ベース(溶媒の大部分はGalden SV90であったがLuperox(登録商標)からの少量のHFE溶媒が存在した)のフルオロカーボン液体組成物で被覆された、Goreからの0.03ミクロン定格細孔径の多層微孔質PTFE膜についてのイソプロピルアルコール(IPA)流動時間および湿潤性を記載するものである。このコーティング溶液はまた、一般的合成方法に記載されるように、ラジカル開始剤およびビス−オレフィンも含んだ。このコーティング溶液を、ロールを用いて機械的に適用して、0.03ミクロン定格細孔径の微孔質膜を被覆した。被覆された微孔質膜を、コーティングを架橋させるために、約30分〜約60分間、175℃まで加熱した。このコーティングを、変換可能な基を親水性基に転化するために、80℃KOHおよび室温HNO処理により活性化し、次いで90℃の熱DI水で洗浄した。流動損失試験を、被覆膜の47mmディスクに対して行った。
【0209】
被覆されていないベース微孔質膜支持体の3つの試料の平均流動時間は、1050秒であった。これを用いて流動損失パーセントを計算し、その結果を表18に示した。
【0210】
【表18】

【0211】
表18の結果は、コーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが増加するにつれて流動時間が増加するということ、およびコーティング溶液中のイオノマー重量パーセントが増加するにつれて微孔質膜複合材料の湿潤性がより高くなるということを示している。流動損失パーセントはコーティング溶液中に用いられているイオノマーのパーセントによって決まり、0.75重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均67%の流動損失から、1重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均74%の流動損失、1.3重量%の557当量重量イオノマー(S2)についての平均82%の流動損失の範囲にわたった。
【0212】
実施例19
本実施例は、多孔質多層膜支持体を被覆する非架橋イオノマーの、イオン交換容量をはじめとする特性を示すものである。
【0213】
アンモニウム型の0.79重量%に希釈されたAquivion(商標)溶液(非架橋性イオノマー)を、Solvay Solexisから受け取ったままで使用した。この希釈コーティング溶液を、スクィーズバーを使用して、Goreからの0.05ミクロン細孔径のPTFE膜上に被覆した。このコーティングを、175〜180℃にて硬化させた。
【0214】
この被覆多孔質膜の水オートクレーブ処理された試料は、透明に見えた。この被覆多孔質膜の乾燥させた試料は、水中70重量%〜75重量%メタノールの溶液で湿潤される。
【0215】
正圧11.5psi、22.5℃、500mL容量の水でのオートクレーブ前後の水流動時間は、465秒および487秒であった。オ−トクレーブ後の流動時間に基づき、平均脱湿潤は5.4%であった。
【0216】
平均イオン交換容量は、59.6nmol/cmまたは0.03601mmol/gであった。
【0217】
実施例20
本実施例は、イオノマーおよび架橋剤を含む溶液で微孔質膜を含有するフィルターデバイスをコーティングし、デバイス中の微孔質膜支持体表面および細孔上で架橋させるためにそのコーティングを硬化させ、活性化させることを説明するものである。
【0218】
Entegris Inc.(Chaska,MN)からの4インチChemline(登録商標)Iフィルターデバイスを、被覆のために使用した。Chemline(登録商標)I微孔質膜支持体は、20nm細孔径のPTFE膜であった。この微孔質膜支持体を、一般的合成手順に記載されたように、Solvay Solexisからの約557g/当量の当量重量を有するイオノマー(S2)で被覆した。コーティング溶液は、250g(150mL)の4重量%架橋性イオノマー557g/当量溶液(S2)およびビス−オレフィン;100gのHFE−7100中Luperox 101ラジカル開始剤(94% Arkema)18.6g、Galden SV90溶媒−2150g(1360mL)を含み、最終フルオロカーボン液体組成物コーティング溶液中のイオノマー含量は、0.4重量%であった。このコーティング溶液を、フィルターハウジング内の膜に重力流下で適用し、次いで、20ポンド毎平方インチの圧力の空気をこのデバイスに通して排水口から出すことを1分間行った。硬化を、175℃の温度に設定したオーブン中で、シールされたデバイスに対し2.5時間にわたって行った。IPAで予備湿潤させたデバイスに対する活性化は、重力流下で供給される1Lの10%KOHからなった。このデバイスを塞ぎ、80℃の温度に設定したオーブン中で16時間にわたって加熱する。冷却し、KOHを排出させ、pHが11より小さくなるまで重力流下で、水で流水洗浄する。20%HNOを重力流下でデバイス内に流入させ、2時間にわたり室温にて浸透させる。フィルターデバイスおよび膜を、pHが3より大きくなるまで水で洗浄および流水洗浄する。デバイスに水1Lを貫流させる。このデバイスを塞ぎ、90℃の温度に設定したオーブン中で4時間にわたって加熱する。冷却し、排水する。このフィルターデバイス中の被覆された膜、すなわち微孔質膜複合材料の流量を測定する。排水し、105℃の温度に設定したオーブン中で、デバイスを2日間にわたって乾燥させる。
【0219】
コーティング変性前のフィルターデバイス中の微孔質膜支持体(20nm細孔径)の水流動試験は、1.0ガロン毎分/ポンド毎平方インチ(GPM/psi)(1.02psid/GPM)であった。フィルター中の微孔質膜支持体を、この水流動試験の前に、IPAで予備湿潤させ、水で流水洗浄した。
【0220】
イオノマーを含む溶液での被覆、硬化、活性化、および抽出後のフィルターデバイス中の微孔質膜複合材料の、水流動試験を行った。このデバイスを、IPAで予備湿潤させ、水で流水洗浄した。測定された水流動は、0.6GMP/psi(1.6psid/GPM)であった。このフィルターデバイスユニットを、この試験後に乾燥させた。
【0221】
湿潤性/コーティング均一性を、微孔質膜複合材料を含有する乾燥したデバイスについて測定した。50重量%メタノール/水混合液を含有する1.0Lの溶液を、乾燥したデバイス中に流す。排水し、約3Lの水で流水洗浄し、水流動を測定する。50%MeOH/水で湿潤させた後の水流動は、0.6GPM/psiであった。これは、IPAで予備湿潤させた被覆デバイスからのものとほぼ同じ水流動であり、コーティングが、微孔質膜支持体全体にわたって均一であったということを示している。もし被覆されていないまたは疎水性の箇所があれば、それは50重量%MeOH/水溶液によって湿潤されないだろうし、0.6GPM/psiより低い水流動値に繋がっていたであろう。
【0222】
これらの結果は、0.4重量パーセントのイオノマー含量が得られるように(S2)溶液から生成されたフルオロカーボン液体組成物を使用して、フィルターデバイス中の膜支持体を均一に被覆し得たということを示している。イオノマーの他のコーティング重量パーセント、例えば0.3重量%イオノマーまたは0.2重量%イオノマーもまた、フィルターデバイス中の膜支持体を被覆するために用い得、そのコーティング均一性を、本実施例において示された試験手順によって証明し得る。
【0223】
実施例21
本実施例は、イオノマー、ラジカル開始剤、および架橋剤を含むフルオロカーボン液体組成物溶液で微孔質膜支持体をフロースルーコーティングし、続いて微孔質膜支持体表面および細孔上で架橋させるためにそのコーティングを硬化させ、活性化させて、微孔質膜複合材料を形成することを説明するものである。
【0224】
フロースルー表面変性は、Goreより入手可能な20nm細孔径のPTFE膜に対して行った。20nmPTFE微孔質膜の直径47mmディスクを、50mL Savillexハウジング中に装填した。変性されていない微孔質膜支持体試料のIPA流動時間もまた測定し、記録した。
【0225】
微孔質PTFE膜支持体を被覆するために用いたイオノマー溶液、ラジカル開始剤、および架橋剤を含むフルオロカーボン液体組成物は、0.25重量%イオノマーおよびジオレフィン、0.35重量%イオノマーおよびジオレフィン、ならびに0.45重量%イオノマーおよびジオレフィンという3つの異なるイオノマー濃度を用い、一般的合成方法に従って調製した(SM後の流動損失が平均25%であり、水中40重量%MeOHで湿潤され、1.14の色濃度(Cd)を有した微孔質膜複合材料をもたらした(S2*)については、0.1重量%にまで希釈されたコーティング溶液を用いた)。
【0226】
4重量%イオノマーの、ジオレフィンを含有する架橋性イオノマー溶液を、Solvayから受け取ったままで使用した。これらのイオノマー溶液は、Galden SV90溶媒またはHFE7100(3M)溶媒中のものであった。ラジカル開始剤は、純度94%のLuperox−101(Arkema)であった。本実施例におけるイオノマーは、実施例2の表からの溶液S1、S2、S2*、およびS3であった。
【0227】
Savillexハウジング中の直径47mm微孔質PTFE膜試料の表面変性(SM)は、イオノマーと、ラジカル開始剤と、架橋剤とのコーティング溶液をそのSavillexハウジングに充填し、そのコーティング溶液を正圧3.2psi(22,063Pa)で微孔質膜に貫流させることによって作製した。被覆のために微孔質PTFE膜を通過するコーティング溶液の容量は、2.5mL未満であった。過剰なフルオロカーボン液体組成物コーティング溶液は、Savillexハウシングから排出させた。本実施例における微孔質膜複合材料上のコーティングの平均質量を、その微孔質膜複合材料の総重量の約3.5%であると決定した。
【0228】
被覆された膜を、175℃の温度に設定したオーブン中で60分間にわたって加熱することにより硬化させ、架橋させた(Savillexハウジング中の被覆された膜支持体)。硬化されたコーティングの加水分解(活性化)は、10%KOHでハウジングを満たし、Savillexハウジングの両側を塞ぎ、80℃の温度のオーブン中で9時間にわたって加熱することにより加水分解し、RT(室温)まで冷却し、次いでKOHを排出させ、pH<11となるまで水で洗浄することにより行った。(活性化)再生は、20%HNOでSavillexハウジングを満たし、Savillexハウジングを塞ぎ、室温で2時間にわたって膜を浸漬させることにより達成した。この20%硝酸をハウジングから排出させ、pH>3となるまで膜およびハウジングを水で流水洗浄した。抽出は、脱イオン水でハウジングを満たし、45〜50分にわたって90℃の温度のオーブンに入れ、RT(室温)まで冷却し、排水することにより行った。この膜を、約30〜45分間または乾燥するまで、125℃の温度のオーブン中のSavillexハウジングに入れておくことにより乾燥させた。
【0229】
HFE−7100溶媒中のフルオロカーボン液体組成物である実施例2の表3のS1およびS3を用い、本実施例における方法によって作製された被覆膜は、IPAが貫流できない被覆膜となった、すなわち、これらの試料は閉塞された(結果は示していない)。Galden SV−90(Gal)溶媒中のフルオロカーボン液体組成物である実施例2の表3のS2およびS2*を用い、本実施例における方法によって作製された被覆膜は、IPAが貫流できる被覆膜となった。湿潤性(膜を完全に湿潤させるための水混合物中のメタノールの重量%)、14.2psiで47mmディスクを通る500mLについてのIPA流動時間である流動時間(秒)、流動損失%の測定、およびメチレンブルー染料試験(色濃度測定を用いてコーティングの存在を決定するために使用される)を、Galden SV−90中イオノマーを用いて作製された被覆膜試料に対して行った。これらの結果は、表19および表20にある。
【0230】
【表19】

【0231】
【表20】

【0232】
本実施例の結果は、表面変性後の流動損失パーセントが、本実施例における被覆膜について、35%〜84%の範囲にわたったことを示している。16nm粒度のコーティング粒子についての表面変性後の流動損失パーセント(表20参照)は、コーティング中のイオノマー重量パーセントに依存して、約35%〜56%の間であった。同じイオノマー重量パーセントについて、流動損失は、37nm粒子(表19)についてよりも16nm粒子(表20)についての方が、平均してより低かった。
【0233】
Galden SV−90溶剤中のイオノマーで被覆された膜についてのメチレンブルー染料試験結果を、下記の表21に示す。1より高い青色染料の色濃度の値は、非常に優れたコーティングの存在を示している。下記の結果は、微孔質膜複合材料試料毎に10個のデンシトメーター測定値の平均に基づいている。下記の表中の結果は、全ての試料上のコーティングの存在を示している。
【0234】
【表21】

【0235】
種々の溶媒中に様々な粒度のイオノマー粒子を含むフルオロカーボン液体組成物を、微孔質膜支持体の表面および細孔上に(例えば、ロールコーティングにより)塗布して、先の実施例に示されたように82%以下の流動損失を有する微孔質複合材料膜を提供し得る。本実施例の結果は、溶媒特性が、フロースルーコーティング方法とともに使用され得る約50nm以下のイオノマー粒子を含むフルオロカーボン液体組成物を提供して約82%以下の流動損失を有する微孔質膜複合材料を形成するのに重要であるということを示している。本実施例におけるGalden SV−90のような溶媒中に分散させた16nmおよび37nmのイオノマー粒子は、フロースルー塗布とともに使用することができる上、約82%未満の流動損失を有する微孔質膜複合材料をもたらした。本実施例の方法および材料を使用して、フルオロカーボン液体組成物に適した他の溶媒を決定し得た。膜支持体上の架橋コーティングでの表面変性後に約82%未満の流動損失を有する本実施例における微孔質膜複合材料はまた、水中約20重量%メタノール〜水中約30重量%メタノールを含有する溶液で湿潤可能であった。より高いイオノマー濃度、すなわち0.25重量%に対して0.45重量%は、被覆微孔質膜複合材料を僅かに湿潤に優れたものとしたが、より高い流動損失を犠牲にした。
【0236】
実施例22
本実施例は、実施例17の微孔質膜複合材料が、SPM浴のような浸食性の環境において安定であるということを示すものである。本実施例におけるSPM試験浴は、硫酸と過酸化水素との容量で5:1の混合物である。このSPM洗浄浴混合物を、被覆されたChemline(登録商標)フィルターを通して供給し、この浴の温度を、約150℃の所定の処理温度に調節した。Chemline(登録商標)フィルターを通るSPM浴の流量は、約10〜11L/分であった。
【0237】
約52時間(1日に6.5時間で8日間)にわたるSPM処理後、この被覆されたChemline(登録商標)フィルターを切り開き、各構成要素を、本明細書に記載されるようにメチレンブルーで染色した。図3は、上流側支持材、コア膜層、および下流側支持材を含む実施例20の被覆されたChemline(登録商標)フィルターの、メチレンブルー染料で染色された各要素を示す写真を描いた線画である。
【0238】
図3における描写図は、メチレンブルー染料による膜の均一な呈色を示している。均一性および陰影強度は、この膜複合材料が非脱湿潤性であることを示している。本実施例は、微孔質膜複合材料コーティングがSPM浴中で安定であるということ、およびこのコーティングがSPM浴のような浸食性の環境における長時間の使用の後でも安定であるということを示している。
【0239】
これらの非限定的な実施例は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤可能な、熱いIPA中フルオロ界面活性剤での処理前の被覆膜のデンシトメーター読取り値の±9%以内である熱いIPA中フルオロ界面活性剤での処理後のデンシトメーター読取り値を有する、架橋フッ素化イオノマーで被覆された非脱湿潤性の微孔質膜複合材料を作製し得るということ、およびこれらの微孔質膜複合材料は、被覆されていない微孔質膜支持体の流動時間に基づく平均82%以下の流動損失(圧力約14.2psi(約97905Pa)での500mLのイソプロピルアルコールについての流動時間に基づく)を有するということを示している。さらに、これらの微孔質膜複合材料は、0.45ミクロン未満の細孔を有し、微孔質膜支持体の細孔を含めた表面上に非晶質の架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングを有する微孔質膜支持体を含む。微孔質膜複合材料の中には、約60nmol/cmより高いイオン交換容量、場合によっては95nmol/cm以上のイオン交換容量、一部の変形例においては160nmol/cm以上のイオン交換容量を有するものもある。本発明の一部の変形例において、微孔質膜複合材料は、99nmol/cm〜161nmol/cmの間のイオン交換容量を有している。
【0240】
これらの非脱湿潤性の微孔質複合材料を、ある範囲のイオノマー当量重量およびある範囲のコーティング溶液中のイオノマー量を用いて作製し得る。380g/当量〜620g/当量の間、場合によっては458g/当量〜597g/当量の間、他の変形例においては約460g/当量〜約600g/当量の間の当量重量を有するイオノマーを用い得る。当量重量、流動損失、および湿潤特性に依存して、コーティング溶液中のイオノマーの濃度は、約0.1重量%〜約3.5重量%、一部の変形例においては0.25重量%〜3.5重量%、さらに他の変形例においては約0.25重量%〜約3.5重量%の間、なおさらに他の変形例においては1重量%〜2重量%、または約1重量%〜約2重量%の間のイオノマーの範囲内にあり得る。
【0241】
これらの実施例における微孔質膜複合材料は、フィルターデバイスにおいて様々な支持体と様々な構成で組み合わせ得る。微孔質膜複合材料は、1つ以上の支持層またはネットとともにひだをつけられ、ケージ、支持体、およびエンドキャップ構造物を用いて詰められて、種々のフィルターカートリッジを形成し得る。このカートリッジは、交換可能であってもよいし、ハウジング内に結合されていてもよい。微孔質膜複合材料が中空糸である場合には、1本以上の中空糸が詰められて、デバイスを形成し得る。微孔質膜複合材料を含むフィルターは、種々の気体または液体送達システム(例えば、フォトレジストまたは現像液または反射防止膜ディスペンスポンプ)中に組み込まれ得、そうした液体を基板との接触前に濾過するために使用され得る。これらのディスペンスシステムは、フィルターと流体接続されたディスペンスポンプ、および分配ポイントにおけるバルブまたはノズルを含み得る。あるいは、微孔質膜複合材料を含むフィルターは、ポンプ、フィルター、および洗浄液が入ったタンクを含む、循環洗浄ツールまたは枚葉式洗浄ツール中に含まれ得る。
【0242】
本発明を、そのある特定の変形例および実施例に関してかなり詳細に説明してきたが、他の変形例も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書中に含まれる記載および変形例に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化イオノマーを溶解または分散させて含有するフルオロカーボン液状媒体を含むフルオロカーボン液体組成物であって、前記フッ素化イオノマーの少なくとも90重量%は200nm未満の粒度の粒子からなり、前記フッ素化イオノマーは:
エチレン基と、−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される親水性基に変換可能な官能基[ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである]とを含有するフッ素化モノマー単位;
式(OF−1)、(OF−2)、(OF−3)の間で選択されるビス−オレフィンに由来するモノマー単位であって、ここで:
【化1】

[式中、jは、2〜10の間、好ましくは、4〜8の間の整数であり、そして、R1、R2、R3、R4は、同一または互いに異なり、H、FまたはC〜Cアルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である]であり;
【化2】

[式中、Aの各々は、同一または互いに異なり、各出現で独立して、F、Cl、およびHから選択され;Bの各々は、同一または互いに異なり、各出現で独立して、F、Cl、HおよびORBから選択され、ここで、RBは、部分的に、実質的にまたは完全に、フッ素化または塩素化され得る分枝状もしくは直鎖状のアルキルラジカルであり;Eは、エーテル結合で挿入され得る、必要に応じてフッ素化されている、2個〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくは、Eは、−(CF−基であり、ここで、mは3〜5の整数であり;(OF−2)型の好ましいビス−オレフィンは、FC=CF−O−(CF−O−CF=CFである]であり;
【化3】

[式中、E、AおよびBは、上で規定された同じ意味を有し;R5、R6、R7は、同一または互いに異なり、H、FまたはC1〜5アルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である]である
モノマー単位;ならびに
ヨウ素および/または臭素原子
を含む、フルオロカーボン液体組成物。
【請求項2】
前記イオノマーが、380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記ビス−オレフィンが、式:
C=CH−(CF−CH=CR
を有し、式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記ヨウ素および/または臭素原子が、イオノマー主鎖の末端位にあり、前記ヨウ素および/または臭素原子が、式:
(CF)
[式中、XおよびXは、I、Brおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される]のフルオロカーボン連鎖移動剤に由来する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記ヨウ素および/または臭素原子の含有量が、前記イオノマーに基づき0.1重量%〜5重量%の間である、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記フルオロカーボン液状媒体が、ペルフルオロポリエーテルを含むか、またはペルフルオロポリエーテルの混合物からなる、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記含まれるペルフルオロポリエーテルが、一般式FC−O−[CF−CF(CF)−O]−[CF−O]−CF[式中、mおよびnは、n>0かつm≧0の整数である]を有し、前記ペルフルオロポリエーテルは、各々、300原子質量単位(amu)〜600amuの間の分子量および20℃〜150℃の間の沸点を有する、請求項6に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記液体組成物が、一般式FC−O−[CF−CF(CF)−O]−[CF−O]−CFを有するペルフルオロポリエーテルの混合物を含有し、前記混合物は、55℃〜135℃の間に含まれる、一般的、平均的、沸点、および0.05未満の添字mとnとの間の平均比率(m/n)を有する、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記液体組成物が、一般式FC−O−[CF−CF(CF)−O]−[CF−O]−CFを有するペルフルオロポリエーテルの混合物を含有し、各ペルフルオロポリエーテルは、400amu〜600amuの間の分子量を有し、前記混合物は、80℃〜100℃の間に含まれる一般的(「平均的」)沸点および0.05未満の添字mとnとの間の平均比率(m/n)を有する、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記フルオロカーボン液状媒体が、水素化フルオロポリエーテルを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記フルオロカーボン液状媒体が、水素化フルオロポリエーテルの混合物からなる、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項12】
前記水素化フルオロポリエーテル(HFPE)が、一般式R−O−R’−R’を有し、式中:
−RおよびR’は、同一または互いに異なり、−C2m+1基と−C2n+1−h基との間で独立して選択され、ここで、m、nは、1〜3の整数であり、hは、h≦2n+1となるように選択される≧1の整数であるが、但し、RおよびR’のうちの少なくとも一方は、上で規定されたとおりの−C2n+1−h基であり;
’は、以下の構造(1)、(2)および(3)の間で選択され、ここで:
構造(1)は、−(CFO)−(CFCFO)−(CF−(CFz’−CFO)であり、ここで、a、bおよびcは、10まで、好ましくは50までの整数であり、z’は、1または2の整数であり、a≧0、b≧0、c≧0かつa+b>0であり;好ましくは、aおよびbは、各々、>0であり、b/aは、0.1〜10の間に含まれ;
構造(2)は、−(CO)c’−(CO)−(CFXO)−であり、ここで、Xは、各出現で独立して、−Fおよび−CFの間で選択され;b、c’およびtは、10までの整数であり、c’>0、b≧0、t≧0であり;好ましくは、bおよびtは、>0であり、c’/bは、0.2〜5.0の間に含まれ、(c’+b)/tは、5〜50の間に含まれ;そして
構造(3)は、−(CO)c’−(CFXO)−であり、ここで、Xは、各出現で独立して、−Fおよび−CFの間で選択され;c’およびtは、10までの整数であり、c’>0、t≧0、好ましくはt>0であり、c’/tは、5〜50の間に含まれる、
請求項10または11に記載の液体組成物。
【請求項13】
’が、構造(1)および(2)の中から選択される、請求項12に記載の液体組成物。
【請求項14】
前記フルオロカーボン液状媒体が、メトキシノナフルオロブタン異性体(CFCFCF−O−CHおよび/またはCFCFCFCF−O−CHを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項15】
前記フッ素化イオノマーが:
テトラフルオロエチレンを含むモノマー単位;
エチレン基と、親水性基に変換可能な官能基であって前記親水性基は−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせ[式中、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである]からなる群より選択される官能基とを含有するフッ素化モノマー単位;
式:
C=CH−(CF−CH=CR
[式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である]のビス−オレフィンに由来するモノマー単位;ならびに
前記主鎖の末端位におけるヨウ素および/または臭素原子であって、前記ヨウ素および/または臭素が、式:
(CF)
[式中、XおよびXは、I、Brおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される]のフルオロカーボン連鎖移動剤に由来する、ヨウ素および/または臭素原子
を含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項16】
エチレン基と親水性基に変換可能な官能基とを含有する前記フッ素化モノマー単位が、式:
CF=CF−O−CFCFSO
を有する、請求項15に記載の液体組成物。
【請求項17】
前記液体組成物が、追加的に、架橋剤およびラジカル開始剤を含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項18】
前記架橋剤が、式:
C=CH−(CF−CH=CR
[式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である]のビス−オレフィンである、請求項17に記載の液体組成物。
【請求項19】
前記ラジカル開始剤が、有機ジアルキルペルオキシドである、請求項17に記載の液体組成物。
【請求項20】
前記ラジカル開始剤が、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンである、請求項17に記載の液体組成物。
【請求項21】
前記フッ素化イオノマーの少なくとも95重量%が、200nm未満の粒度の粒子からなる、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項22】
前記フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、200nm未満の粒度の粒子からなる、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項23】
前記フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、125nm未満の粒度の粒子からなる、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項24】
前記フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、40nm未満の粒度の粒子からなる、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項25】
前記フッ素化イオノマーの少なくとも99重量%が、15nm未満の粒度の粒子からなる、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項26】
架橋性フッ素化イオノマーを溶解または分散させて含有するフルオロカーボン液状媒体を含むフルオロカーボン液体組成物であって、前記架橋性フッ素化イオノマーの少なくとも90重量%は、200nm未満の粒度の粒子からなる、フルオロカーボン液体組成物。
【請求項27】
前記液体組成物が、追加的に、架橋剤およびラジカル開始剤を含む、請求項26に記載の液体組成物。
【請求項28】
微孔質膜複合材料であって、
前記微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体を含み、前記微孔質膜支持体は、前記微孔質膜支持体の表面および細孔上にコーティングを含み、前記コーティングは、酸性親水性基を有する非晶質イオノマーを含み、前記微孔質膜複合材料は、水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であり、前記微孔質膜複合材料は、メタノールと水とを含有する溶液で湿潤され、そして前記微孔質膜複合材料は、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、前記微孔質膜支持体と比較して82%以下の流動損失を有する、微孔質膜複合材料。
【請求項29】
物品であって、
前記物品は、メタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を含み、前記微孔質膜複合材料は、水中でのオートクレーブ処理後に非脱湿潤性であり、前記微孔質膜複合材料は、10m/g以上の表面積を有する微孔質膜支持体を含み、前記微孔質膜支持体は、前記微孔質膜支持体の表面上および細孔上にコーティングを有し、前記コーティングは、親水性基を有するイオノマーを含み、前記イオノマーは架橋されており、前記微孔質膜複合材料は、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、被覆されていない微孔質膜支持体についての平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して、82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有し、前記微孔質膜支持体の細孔径は、0.45ミクロン以下である、物品。
【請求項30】
物品であって、
前記物品は、微孔質膜複合材料を含み、前記微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体を含み、前記微孔質膜支持体は、0.2ミクロン以下の定格細孔径を有し、かつ前記微孔質膜支持体の表面上および細孔上に非晶質架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングを有し、これにより、前記微孔質膜複合材料は、水オートクレーブ後に非脱湿潤性であり、そして、前記微孔質膜複合材料は、水中80重量%未満のメタノール量のメタノールを含有する溶液で湿潤可能であり;前記微孔質膜複合材料は、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、被覆されていない微孔質膜支持体についての平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して、82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有し、前記架橋フッ素化イオノマーは、親水性基を有さない架橋剤基を含む、物品。
【請求項31】
前記フッ素化イオノマーが、ビス−オレフィンを含む架橋剤で架橋されている、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
前記イオノマーが、380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項33】
前記微孔質膜複合材料が、95nmol/cm以上のイオン交換容量を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項34】
前記微孔質膜支持体が、多層膜である、請求項30に記載の物品。
【請求項35】
前記微孔質膜複合材料が、前記微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメトリー読取り値により決定される平均デンシトメーター値を有し、前記平均デンシトメーター値は、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触後の、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の前記デンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値の±9%の範囲内にある、請求項30に記載の物品。
【請求項36】
前記多孔質膜複合材料は、前記微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメトリー読取り値により決定される平均デンシトメーター値を有し、前記平均デンシトメーター値は、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触後の、前記微孔質膜複合材料の前記メチレンブルー染料で染色された試料の前記デンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値と、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならない、請求項30に記載の物品。
【請求項37】
前記微孔質膜複合材料が、(1000L/atm×時間×m)より高い透水度を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項38】
物品であって、
前記物品は、メタノールと水との溶液で湿潤可能な微孔質膜複合材料を含み、前記微孔質膜複合材料は、微孔質膜支持体と、前記微孔質膜支持体の表面上および細孔上に非晶質の架橋フッ素化イオノマーを含むある量のコーティングとを含み、前記微孔質膜複合材料は、水オートクレーブ後に非脱湿潤性であり、そして前記微孔質膜複合材料は、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定され被覆されていない微孔質膜支持体についての平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して、82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有し、前記微孔質膜支持体の細孔径は、0.45ミクロン以下であり、前記架橋フッ素化イオノマーは:
テトラフルオロエチレンに由来するモノマー単位;
フッ素化エチレン基と親水性基に変換可能な官能基とを含むフッ素化モノマー単位に由来するフッ素化イオノマー単位であって、前記官能基は、−SOF、−COOR、−COFおよびこれらの組み合わせ[ここで、Rは、C〜C20アルキルラジカルまたはC〜C20アリールラジカルである]からなる群より選択される、親水性基に変換可能である、フッ素化イオノマー単位;ならびに
式:
C=CH−(CF−CH=CR
[式中:m=2〜10であり、R、R、R、Rは、互いに同一または異なり、HまたはC〜Cアルキル基である]のビス−オレフィンに由来するモノマー架橋単位
を含む、物品。
【請求項39】
前記コーティングの前記量が、前記微孔質膜複合材料の25重量%〜30重量%である、請求項38に記載の物品。
【請求項40】
微孔質膜支持体が、多層微孔質膜である、請求項38に記載の物品。
【請求項41】
フッ素化イオノマー単位が、式:
CF=CF−O−CFCFSO
のフッ素化モノマー単位に由来する、請求項38に記載の物品。
【請求項42】
前記微孔質膜複合材料が、10m/g以上の表面積および95nmol/cm以上のイオン交換容量を有する、請求項38に記載の物品。
【請求項43】
前記微孔質膜複合材料が、前記微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメトリー読取り値により決定される平均デンシトメーター値を有し、前記平均デンシトメーター値は、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触後の、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の前記デンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値の±9%の範囲内にある、請求項38に記載の物品。
【請求項44】
前記微孔質膜複合材料が、前記微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメトリー読取り値により決定される平均デンシトメーター値を有し、前記平均デンシトメーター値は、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの、4時間以上の貫流接触後の、前記微孔質膜複合材料の前記メチレンブルー染料で染色された試料の前記デンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値と、スチューデントt検定により95%の信頼限界で異ならない、請求項38に記載の物品。
【請求項45】
前記フッ素化イオノマーが、0.01重量%〜5重量%の間の前記ビス−オレフィンを含有する、請求項38に記載の物品。
【請求項46】
前記コーティングが、460g/当量〜600g/当量の間の当量重量を有するイオノマーを含む、請求項38に記載の物品。
【請求項47】
0.1ミクロン以下の細孔および10m/gの表面積を有する微孔質膜支持体を含む多孔質膜複合材料であって、前記微孔質膜支持体の表面および細孔は、酸性親水性基を有し380g/当量〜620g/当量の間の当量重量を有する少なくとも1種の架橋非晶質イオノマーで被覆されており、
前記微孔質膜複合材料が、95nmol/cm以上のイオン交換容量を有し、非脱湿潤性であり、97,905Paの圧力で500mLのイソプロピルアルコールを用いて測定される場合、被覆されていない微孔質膜支持体の平均イソプロピルアルコール流動損失と比較して82%以下の平均イソプロピルアルコール流動損失を有し、前記微孔質支持体上の架橋非晶質イオノマー重量パーセントは、25重量%〜30重量%の間であり;そして
前記微孔質膜複合材料は、前記微孔質膜複合材料のメチレンブルー染料で染色された試料のデンシトメトリー読取り値により決定される平均デンシトメーター値を有し、前記平均デンシトメーター値は、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の直径47mm試料を通しての、70℃〜80℃の間の温度にて、少なくとも80mL/分の流量での、5000ppmのフルオロ界面活性剤を含有するイソプロピルアルコールとの4時間以上の貫流接触後の、前記メチレンブルー染料で染色された微孔質膜複合材料の前記デンシトメーターにより決定される平均デンシトメーター値の±9%の範囲内にある、
多孔質膜複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522882(P2012−522882A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504709(P2012−504709)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029344
【国際公開番号】WO2010/117845
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【出願人】(502439223)
【Fターム(参考)】