説明

面材ユニット及びその面材ユニットを備えた建物

【課題】殺菌等の光触媒の有する効果を現場施工でなくても発揮でき、しかも見た目の演出効果向上も期待することのできる面材ユニットを得る。
【解決手段】紫外線光に反応して活性化される光触媒が担持された薄膜15を、面材としてのガラス板12の表面13側に形成した。そして、ガラス板12の裏面38側には、ガラス板12に向けて可視光を発する可視光LED23を有した可視光モジュール21を設けた。また、ガラス板12の表面12側には、ガラス板12に向けて紫外線光を発する紫外線光LED24を有した紫外線光モジュール22を設けた。そして、これらガラス板12、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22により面材ユニット11を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明を備えた面材ユニット及びその面材ユニットが天板,天井板,床板等として備えられた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒を所定の基体の表面にコーティング等により担持させるとともに、基体とは別に設けた紫外線光発光体を照射して、基体の表面を殺菌したり又はその周辺の空気を脱臭若しくは消臭する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような技術は建物内の浴室やトイレ等、居住者の住環境を快適なものとするのにも役立つものとして、その応用が考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、光触媒が担持されて殺菌等の対象となる基体と、光触媒を活性化させるための紫外線光発光体とが個別に設けられる結果、その設置作業の際に、位置調整を都度行わなければならず、その位置調整作業が煩雑となる。また、位置調整が上手くいかないと光触媒への紫外線光の照射量が不十分となって期待したほどの殺菌等の効果が得られないおそれがある。さらに、基体と紫外線光発光体とが別々に配置されるため、両者が離間して配置されることも避けられず、紫外線光が基体に到達するまでに減衰してしまうおそれがある。また、実用性を考慮した場合、天井等の面材と照明との一体感がなく、住環境向上に不可欠な見た目上の演出効果が低いという問題もある。
【特許文献1】特開平9−941号公報
【特許文献2】特開平10−314280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、殺菌等の光触媒の有する効果を現場施工でなくても発揮でき、しかも見た目の演出効果向上も期待することのできる面材ユニット及びその面材ユニットを備えた建物を提供することを主たる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するのに有効な手段につき、必要に応じて作用、効果、より踏み込んだ具体的手段等を示しつつ説明する。なお、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する主要な構成を括弧書きで適宜示すが、この括弧書きで示した具体的構成に限定されない。
【0006】
本発明は、紫外線光に反応して活性化される光触媒(薄膜15)が表面(表面13)側に担持されるとともに可視光を透過可能な面材(ガラス板12)と、前記面材の裏面(裏面38)側に設けられ、前記面材に向けて可視光を発する可視光発光体(可視光LED23)を有した可視光モジュール(可視光モジュール21)と、前記面材の表面側に設けられ、前記面材に向けて紫外線光を発する紫外線光発光体(紫外線光LED24)を有した紫外線光モジュール(紫外線光モジュール22)とをユニット化して面材ユニット(面材ユニット11)を構成した。
【0007】
この発明によれば、可視光発光体が面材の裏面側において発光されると、面材が面発光されることになり、落ち着いた雰囲気の照明演出を実現することができる。一方、紫外線光発光体が面材の表面側において発光されると、その紫外線光が面材の表面に照射されて
光触媒が活性化される結果、面材の表面を殺菌することができる。
【0008】
また、面材、可視光モジュール及び紫外線光モジュールがまとめてユニット化されているため、建物の建築現場における面材と可視光モジュールとの位置調整や、面材と紫外線光モジュールとの位置調整が不要となる。これにより、面材ユニットの取付作業が容易になる。そればかりか、位置調整作業が予め行われていて現場施工者に委ねられない結果、面発光に偏りが生じて建物環境が低下したり、光触媒への紫外線光の照射量が不十分となって期待したほどの殺菌等の効果が得られないという不都合も回避し得る。
【0009】
さらに、このような予めユニット化した面材ユニットを用いることにより、可視光モジュール及び紫外線光モジュールを含めた全体をコンパクトにまとめることができる。
【0010】
ここで、上記面材の表面側には、紫外線光の乱反射を生じさせるカット面(カット面14)を形成することが好ましい。これにより、面材の表面に照射される紫外線が乱反射されて、面材の表面側における周辺雰囲気の脱臭や消臭効果等も高められるからである。
【0011】
上記可視光モジュール及び紫外線光モジュールは、それぞれ別々の防水ハウジング(防水ハウジング36)に収納して構成することが好ましい。これにより、住宅等の建物に多い、水分を使用する環境下や、水分が発生しやすい環境下での使用に耐えられるからである。
【0012】
上記可視光モジュール及び紫外線光モジュールは、それぞれ面材に固定されるものであることが好ましい。このようなユニット構造であれば、面材ユニットを一層コンパクトなものとすることができるからである。そして、コンパクト化された面材ユニットであれば取扱いが容易になるし、建物の壁、床、天井、その他の各種面材として設置された場合の美観向上にも寄与し得る。
【0013】
上記紫外線光モジュールは、上記面材の外周縁全域に延設され、紫外線光発光体を内向きに指向させることが好ましい。これによれば、紫外線光が面材全域に均等に及び易く、表面の殺菌性能が高められるし、紫外線光モジュールが面材の表面側に設けられているにもかかわらず極力目立たないようにすることができる。
【0014】
上記可視光発光体及び紫外線光発光体は、それぞれ可視光LED及び紫外線光LEDからなることが好ましい。これにより、可視光モジュール及び紫外線光モジュール自体もコンパクトなものとすることができ、面材ユニットの一層のコンパクト化を図ることができるからである。また、比較的発熱量も少なく、長期にわたり発光させても必要電力量が少なくて済み経済的だからである。さらに、可視光LED及び紫外線光LEDは、比較的長寿命であってメンテナンスを頻繁に行わずに済むし、多数の可視光LED及び紫外線光LEDを用いるのが想定されるがこの場合にあっては若干数のLEDが切れても支障なく使用することができるからである。
【0015】
以上説明した面材ユニットは、建物における以下の各所への適用が可能である。
【0016】
例えば、面材ユニットをキッチン(システムキッチン61)の天板(天板62)とすることが可能である。この適用例によれば、調理後などにおいて天板の上面である作業面(作業面63)を殺菌することができ、作業面を清潔に保つことができる。また、作業面上方の空気の脱臭及び防臭効果も期待し得る。さらに、天板の裏面側からの可視光によって天板が面発光されるから、調理する者に照明による演出効果を楽しませることができる。
【0017】
また、面材ユニットを浴室(浴室41)の天井板(天井板42)とすることが可能であ
る。この場合、紫外線光モジュールを浴室の天井廻縁(天井廻縁44)とし、天井廻縁の一部とし、又は天井廻縁に埋め込むことが好ましい。この適用例によれば、入浴後などにおいて天井板の下面である天井面(天井面43)を殺菌することができ、天井面を清潔に保つことができる。また、浴室内の空気の脱臭及び防臭効果も期待し得る。さらに、天井板の裏面側からの可視光によって天板が面発光されるから、入浴する者に照明による演出効果を楽しませることができる。また、紫外線光モジュールに浴室の天井廻縁の機能をもたせれば、殺菌用機器が外部に露出されているという印象がなくなり美観に優れる。
【0018】
また、面材ユニットをトイレ室(トイレ室51)の床板(床板52)とすることが可能である。この場合、紫外線光モジュールをトイレ室の巾木(巾木54)とし、巾木の一部とし、又は巾木に埋め込むことが好ましい。この適用例によれば、トイレ室からの退室後などにおいて床板の上面である床面(床面53)を殺菌することができ、床面を清潔に保つことができる。また、トイレ室内の空気の脱臭及び防臭効果も期待し得る。さらに、床板の裏面側からの可視光によって床板が面発光されてトイレ室内における今までにない照明の演出を実現することができる。また、紫外線光モジュールにトイレ室の巾木の機能をもたせれば、殺菌用機器が外部に露出されているという印象がなくなり美観に優れる。
【0019】
以上の各面材ユニットを備えた建物においては、可視光モジュール及び紫外線光モジュールの一方がオンのときに他方がオフとなるように両者を選択的にオンオフさせる切換手段(コントローラ46,56,76)を備えることが好ましい。これによれば、照明として必要な場合には可視光モジュールの可視光発光体のみが発光され、殺菌処理として必要な場合には紫外線モジュールの紫外線光発光体のみが発光され、両者が同時に発光されることがないので、照明としての利用時に紫外線光が照射される事態を回避し得る。
【0020】
また、人感センサ(人感センサ45,55)をさらに備え、上記切換手段は、人感センサが人を感知すると紫外線光モジュールをオフに切り換えるようにすることが好ましい。これにより、人が面材ユニットの照明領域に至った場合には面発光による照明演出が行われる一方で紫外線モジュールからの紫外線発光が中止されるので、人が能動的にスイッチ操作をしなくても適切な切り換えを自動的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、発明を具体化した一実施の形態について図1を参照しつつ説明する。なお、図1(a)は光透過性面材ユニットの正面図、図1(b)はLEDモジュールの平面図、図1(c)は面材の一部拡大図である。
【0022】
本実施形態では、面材ユニット11を構成する面材として、光透過性を有するガラス板12が用いられている。ガラス板12の表面13には非常に細かな反射カット加工が施されることで、同表面13はカット面14となっている。また、そのカット面14には、紫外線光に反応して活性化される光触媒を担持した薄膜15がコーティングにより形成されている。なお、このような光触媒としては、二酸化チタンが代表例として挙げられる。
【0023】
面材ユニット11は、前記ガラス板12に加え、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22を備えている。可視光モジュール21は可視光発光体として可視光LED23を有し、紫外線光モジュール22は紫外線光発光体として紫外線光LED24を有している。なお、紫外線光LED24は例えば360〜400nmの範囲の紫外線光を発光させるものである。
【0024】
ここで、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22は、可視光LED23を用いているか紫外線光LED24を用いているかの違いを除き、基本的構成は同一である。したがって、以下においては、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22の基本
構成について、可視光モジュール21についてのみ説明し、紫外線光モジュール22についての基本構成については説明を省略する。
【0025】
可視光モジュール21は、一方向へ延びるように長尺状に形成されたLEDハウジング31を備えている。LEDハウジング31の正面には長手方向に所定間隔をおいて円形の開口部32が多数形成され、各開口部32はレンズ33によりそれぞれ閉塞されている。LEDハウジング31には、各レンズ33に対峙するようにパラボラ等の凹形状に形成された反射鏡34がそれぞれ設けられている。LEDハウジング31の反射鏡34よりも裏側位置には、同LEDハウジング31の長手方向に延びる基板35が収容されている。基板35には、前記開口部32と同数の可視光LED23がそれと同一間隔で実装されている。各可視光LED23は反射鏡34の中央最奥部に形成された開口からその先端部が突出されるように位置決めされている。したがって、上記可視光モジュール21においては、基板35を介して各可視光LED23に電流を流すと、各可視光LED23が発光される。この光は反射鏡34及びレンズ33により概ね直進するように投光される。
【0026】
可視光モジュール21は、LEDハウジング31全体を防水ハウジング36に覆われており、LEDハウジング31内への水分の浸入が阻止されている。上記のとおり、紫外線光モジュール22も可視光モジュール21と同様の構成を有している。防水ハウジング36には紫外線光が減衰されにくい素材が用いられており、本実施形態では石英ガラスや紫外線光の透過性の高いアクリルが使用されている。
【0027】
そして、可視光モジュール21は可視光LED23がその投光方向をガラス板12の板面に平行となるように配置された状態で、ガラス板12の裏面38に固定されている。また、紫外線光モジュール22は紫外線光LED24がその投光方向をガラス板12の板面に平行となるように配置された状態で、ガラス板12の表面13に固定されている。以上のようにして、ガラス板12、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22がユニット化された面材ユニット11が構成されている。
【0028】
このような面材ユニット11において、そのガラス板12が建物の壁、床、天井、その他の各種面材として設置されると、次のような効果が得られる。
【0029】
すなわち、可視光LED23がガラス板12の裏面38側において発光されることにより、その可視光がガラス板12を介して面発光されることになり、ガラス板12の表面側から見ると穏やかなイメージを演出することができる。また、可視光LED23がガラス板12の外周縁全域に配設されていることにより面発光が均等に及ぶし、さらに各可視光LED23をガラス板12の内向きに指向させたことにより柔らかい光の演出が実現される。
【0030】
一方、紫外線光LED24がガラス板12の表面13側において発光されることにより、その紫外線光がガラス板12の表面13に照射される。ガラス板12の表面13には光触媒が担持された薄膜15が形成されているため、ガラス板12の表面13を殺菌することができる。また、紫外線光LED24がガラス板12の外周縁全域に配設されていることにより紫外線光がガラス板12の表面13全域に及び易く、表面13の殺菌性能が高められる。
【0031】
また、ガラス板12の表面13はカット面14とされているため、紫外線光がカット面14において乱反射し、ガラス板12の表面13側における周辺雰囲気の脱臭・消臭効果が高められる。
【0032】
また、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22がいずれも防水ハウジング3
6に収納されているため、住宅等の建物に多い、水分を使用する環境下や、水分が発生しやすい環境下での使用に耐えられる。
【0033】
また、発光体が可視光LED23及び紫外線光LED24よりなることから、長寿命であってメンテナンスを頻繁に行わずに済むし、多数の可視光LED23及び紫外線光LED24を用いているから、若干数の可視光LED23及び紫外線光LED24が切れても支障なく使用することができる。また、可視光LED23及び紫外線光LED24を使用しているので、発熱量も少なく、長期にわたり発光させても必要電力量が少なくて済むから経済的である。
【0034】
また、ガラス板12、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22がまとめてユニット化されているため、建築現場におけるガラス板12と可視光モジュール21との位置調整や、ガラス板12と紫外線光モジュール22との位置調整が不要となる。これにより、面材ユニット11の取付作業が容易になる。そればかりか、位置調整作業が予め行われていて現場施工者に委ねられない結果、面発光に偏りが生じて住環境が低下したり、光触媒への紫外線光の照射量が不十分となって期待したほどの殺菌等の効果が得られないという不都合も回避し得る。
【0035】
さらに、このような予めユニット化した面材ユニット11を用いることにより、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22を含めたユニット全体をコンパクトにまとめることができる。しかも、発光体が可視光LED23及び紫外線光LED24よりなることから、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22自体もコンパクトなものとすることができる。さらに、ガラス板12に対して可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22を固定することによりユニット化されているため、一層コンパクトなものとなる。これにより、面材ユニット11の取扱いが容易になるし、建物の壁、床、天井、その他の各種面材として設置された場合の美観向上にも寄与し得る。
【0036】
[適用例]
以上説明した面材ユニット11には各種の有用な適用例がある。そこで、以下に各適用例について図2乃至図5を参照しつつ個別に説明する。但し、図2乃至図5は、白抜きの丸で可視光LED23を表現するとともに黒塗りの丸で紫外線光LED24を表現した説明図である。また、以下の説明では、これまでに説明した構成及び効果と異なる点のみ説明する。
【0037】
(適用例1)
適用例1は、図2に示すように、前記面材ユニット11を浴室41の天井板42に適用した例である。すなわち、浴室41の天井板42を面材ユニット11のガラス板12によって構成し、下面、すなわち天井面43が表面13となるようにして取り付けられている。
【0038】
ガラス板12の裏面38すなわち天井裏側の可視光モジュール21の各可視光LED23が発光することにより、天井面43が面発光される。なお、この適用例1では、可視光モジュール21はガラス板12の外周縁ではなく板面に沿って複数平行に並べられており、かつ下方へ可視光が照射されるように可視光モジュール21の取り付け方向が変更されている。これにより、十分な照度で浴室41を明るくすることができる。一方、紫外線光モジュール22の各紫外線光LED24が発光することにより、天井面43が殺菌される。また、ガラス板12は乳白色に着色されている。さらに、紫外線光モジュール22は、天井廻縁44とされている。
【0039】
ここで、浴室41には、当該浴室41に人が入室したことを検知する人感センサ45が
設けられている。また、人感センサ45、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22にそれぞれ接続されたコントローラ46が建物内に設けられている。
【0040】
そして、人感センサ45により人が感知されると、検知信号がコントローラ46に出力される。コントローラ46はその検知信号を受けると、可視光モジュール21をオンさせて各可視光LED23を点灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を消灯させる。他方、コントローラ46は人感センサ45からの検知信号を受けていない状態では、可視光モジュール21をオフさせて各可視光LED23を消灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を点灯させる。
【0041】
以上により、適用例1では、次のような効果を奏する。
【0042】
すなわち、人が浴室41に入室すると、人感センサ45が検知し、各可視光LED23が点灯する一方で各紫外線光LED24が消灯する。したがって、人が特に意識せずとも入室に伴い照明が点灯されるし、紫外線光による影響を回避し得る。
【0043】
また、人が浴室41から退室すると、人感センサ45による人の検知がなくなり、各可視光LED23が消灯する一方で各紫外線光LED24が点灯する。したがって、人が特に意識せずとも退室に伴い照明が消灯されることで無駄な照明点灯コストが低減され、自動的に天井面43が殺菌される。また、浴室41内の空気の脱臭及び防臭効果もある。
【0044】
さらに、天井板42を構成するガラス板12は乳白色に着色されているから、各可視光LED23が点灯することによる面発光で、ゆったりとした落ち着きを醸し出すよう演出することができる。
【0045】
さらにまた、紫外線光モジュール22が天井廻縁44を兼用することになるため、殺菌用機器が外部に露出されているという印象がなくなり、美観に優れるという効果もある。
【0046】
(適用例2)
適用例2は、図3に示すように、前記面材ユニット11をトイレ室51の床板52に適用した例である。すなわち、浴室41の天井板42を面材ユニット11のガラス板12によって構成し、上面、すなわち床面53が表面13となるようにして取り付けられている。
【0047】
ガラス板12の裏面38すなわち床下側の可視光モジュール21の各可視光LED23が発光することにより、床面53は面発光される。なお、この適用例2でも、適用例1と同様に、可視光モジュール21はガラス板12の外周縁ではなく板面に沿って複数平行に並べられており、かつ上方へ可視光が照射されるように可視光モジュール21の取り付け方向が変更されている。これにより、十分な照度でトイレ室51を明るくすることができる。一方、紫外線光モジュール22の各紫外線光LED24が発光することにより、床面53が殺菌される。また、紫外線光モジュール22は、巾木54とされている。
【0048】
ここで、トイレ室51には、当該トイレ室51に人が入室したことを検知する人感センサ55が設けられている。また、人感センサ55、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22にそれぞれ接続されたコントローラ56が建物内に設けられている。
【0049】
そして、人感センサ55により人が感知されると、検知信号がコントローラ56に出力される。コントローラ56はその検知信号を受けると、可視光モジュール21をオンさせて各可視光LED23を点灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を消灯させる。他方、コントローラ56は人感センサ55からの検知信号を受
けていない状態では、可視光モジュール21をオフさせて各可視光LED23を消灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を点灯させる。
【0050】
以上により、適用例2では、次のような効果を奏する。
【0051】
すなわち、人がトイレ室51に入室すると、人感センサ55が検知し、各可視光LED23が点灯する一方で各紫外線光LED24が消灯する。したがって、人が特に意識せずとも入室に伴い照明が点灯されるし、紫外線光による影響を回避し得る。特に、床面53の面発光によって今までにない照明の演出をトイレ室51において実現することができる。
【0052】
また、人がトイレ室51から退室すると、人感センサ55による人の検知がなくなり、各可視光LED23が消灯する一方で各紫外線光LED24が点灯する。したがって、人が特に意識せずとも退室に伴い照明が消灯されることで無駄な照明点灯コストが低減され、自動的に床面53が殺菌される。また、トイレ室51内の空気の脱臭及び防臭効果もある。
【0053】
さらに、床板52の床面53は、ガラス板12の表面13側に相当するため、微細なカットが施されたカット面14を有する。これにより、紫外線光を乱反射させる効果に加えて人の歩行時の滑り止め効果が得られる効果が得られる。
【0054】
さらにまた、紫外線光モジュール22が巾木54を兼用することになるため、殺菌用機器が外部に露出されているという印象がなくなり、美観に優れるという効果もある。
【0055】
(適用例3)
適用例3は、図4に示すように、前記面材ユニット11を台所設備としてのシステムキッチン61の天板62に適用した例である。すなわち、システムキッチン61の天板62を面材ユニット11のガラス板12によって構成し、上面、すなわち作業面63が表面13となるようにして取り付けられている。
【0056】
ガラス板12の裏面38すなわち天板62下側の可視光モジュール21の各可視光LED23が発光することにより、作業面63は面発光される。一方、紫外線光モジュール22の各紫外線光LED24が発光することにより、作業面63が殺菌される。また、紫外線光モジュール22は、システムキッチン61の奥側に配設されている。
【0057】
ここで、システムキッチン61又はそのシステムキッチン61を有したキッチン室には、照明スイッチ64及び殺菌スイッチ65が設けられている。また、照明スイッチ64、殺菌スイッチ65、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22にそれぞれ接続されたコントローラ66が建物内に設けられている。
【0058】
そして、照明スイッチ64が操作されると、照明操作信号がコントローラ66に出力される。コントローラ66はその照明操作信号を受けると、可視光モジュール21をオンさせて各可視光LED23を点灯させる。他方、殺菌スイッチ65が操作されると、殺菌操作信号がコントローラ66に出力される。コントローラ66はその殺菌操作信号を受けると、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を点灯させる。
【0059】
以上により、適用例3では、次のような効果を奏する。
【0060】
すなわち、照明スイッチ64が操作されると、各可視光LED23が点灯する。これにより、システムキッチン61における天板62の作業面63が面発光され、調理時等にお
ける照明演出の効果が得られる。
【0061】
また、殺菌スイッチ65が操作されると、各紫外線光LED24が点灯する。これにより、調理後などにおいて作業面63を殺菌することができ、作業面63を清潔に保つことができる。また、作業面63上方の空気の脱臭及び防臭効果もある。
【0062】
さらに、照明スイッチ64及び殺菌スイッチ65は人が能動的に操作することによりオンされるものであるから、人の意思によって照明演出を楽しんだり殺菌処理することができる。
【0063】
(適用例4)
適用例4は、図5に示すように、前記面材ユニット11を靴箱等の収納室71の棚板72に適用した例である。すなわち、収納室71の棚板72を面材ユニット11のガラス板12によって構成し、上面、すなわち靴等の収納物が載置される載置面73が表面13となるようにして取り付けられている。
【0064】
ガラス板12の裏面38すなわち棚板72下側の可視光モジュール21の各可視光LED23が発光することにより、載置面73は面発光され、ゆったりとした落ち着きを醸し出すよう演出される。なお、この適用例4でも、適用例1,2と同様に、可視光モジュール21はガラス板12の外周縁ではなく板面に沿って複数平行に並べられており、かつ上方へ可視光が照射されるように可視光モジュール21の取り付け方向が変更されている。一方、紫外線光モジュール22の各紫外線光LED24が発光することにより、載置面73が殺菌される。また、紫外線光モジュール22は、棚板72の出し入れ口側を除く外周縁に門型に配設されており、収納物の出し入れの邪魔とならないようにされている。
【0065】
ここで、収納室71には、収納物の出し入れを行う際に開閉される扉74が設けられ、また当該扉74が開放されたことを検知する開放スイッチ75が設けられている。また、開放スイッチ75、可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22にそれぞれ接続されたコントローラ76が建物内に設けられている。
【0066】
そして、開放スイッチ75により扉74の開放が検知されると、開放検知信号がコントローラ76に出力される。コントローラ76はその開放検知信号を受けると、可視光モジュール21をオンさせて各可視光LED23を点灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を消灯させる。他方、コントローラ76は開放スイッチ75からの開放検知信号を受けていない状態では、可視光モジュール21をオフさせて各可視光LED23を消灯させる一方、紫外線光モジュール22をオフさせて紫外線光LED24を点灯させる。
【0067】
以上により、適用例4では、次のような効果を奏する。
【0068】
すなわち、収納室71の扉74を開放すると、開放スイッチ75がこれを検知し、各可視光LED23が点灯する一方で各紫外線光LED24が消灯する。したがって、収納室71の靴その他の荷物を出し入れしようとする場合、扉74を開放するだけで収納室71内が照らされ、その照明を利用して荷物の出し入れを行うことができる。しかも、棚板72毎に照らされるため、棚板72の数が多数枚に及ぶような収納室71においても荷物の視認性を十分確保することができる。また、載置面73の面発光に伴う照明演出の効果も生じる。
【0069】
また、扉74が閉じると、自動的に各可視光LED23が消灯する一方で各紫外線光LED24が点灯する。したがって、人が特に意識せずとも扉74の閉鎖に伴い照明が消灯
されることで無駄な照明点灯コストが低減され、また自動的に棚板72の載置面73が殺菌される。さらに、扉74を閉じた状態では収納室71が閉鎖環境とされるが、この際に各紫外線光LED24が点灯されるので、載置面73の殺菌効果のみならず、収納室71内の全体において菌の増殖を抑えつつ内部の空気の脱臭及び防臭効果を高めることができる。
【0070】
[他の実施形態及び他の適用例]
なお、以上説明した実施形態及び各適用例に限らず、さらに以下に別例として示した形態での実施や適用が可能である。
【0071】
・上記実施形態では、ガラス板12に可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22を直接固定するようにしたが、全体としてユニット化されていればよく、スペーサその他を介して可視光モジュール21及び紫外線光モジュール22がガラス板12と一体化されていてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、ガラス板12の表面13側には紫外線光LED24だけが設けれたものを例示したが、ガラス板12の表面13側において、可視光LED23が一部存在するものであってもよい。この場合、可視光LED23により面発光による既述の効果に加え、直接的な照明の効果も得られる。
【0073】
・上記実施形態では、紫外線光モジュール22の各紫外線光LED24の軸線がガラス板12の表面13と平行となるように配置したが、各紫外線光LED24が若干表面13側に傾いた状態に配置することもできる。これにより、ガラス板12の表面13に及ぶ紫外線光の照射量が増大し得る。但し、この場合においては表面13の全域に紫外線光が及ぶように考慮されなければならない。
【0074】
・適用例1では紫外線光モジュール22そのものによって天井廻縁44を構成したが、これに代えて、天井廻縁44の一部として紫外線光モジュール22を用いたり、天井廻縁44内に紫外線光モジュール22を埋め込んでもよい。適用例2における巾木54に関しても同様である。但し、これらの場合、各紫外線光LED24からの紫外線光が遮断されないようにする必要がある。
【0075】
・上記した各適用例以外にも、面材ユニット11を、例えば屋内の壁面に使用したり、階段の段板に用いることができる。いずれにしても、表面13を殺菌する必要性がありかつ裏面38からの可視光による面発光の演出を楽しませるのに適した環境での使用が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態を示し、(a)はガラスユニットの断面図、(b)はLEDユニットの一部正面図、(c)はガラスユニットの一部断面図。
【図2】浴室の天井板への適用例1を示す説明図。
【図3】トイレ室の床板への適用例2を示す説明図。
【図4】キッチン天板への適用例3を示す説明図。
【図5】靴箱の棚板への適用例4を示す説明図。
【符号の説明】
【0077】
11…面材ユニット、12…面材としてのガラス板、13…表面、14…カット面、15…薄膜、21…可視光モジュール、22…紫外線光モジュール、23…可視光発光体としての可視光LED、24…紫外線光発光体としての紫外線光LED、36…防水ハウジング、38…裏面、41…浴室、42天井板、43…天井面、44…天井廻縁、45…人
感センサ、46…切換手段としてのコントローラ、51…トイレ室、52…床板、53…床面、54…巾木、55…人感センサ、56…切換手段としてのコントローラ、61…システムキッチン、62…天板、63…作業面、64…照明スイッチ、65…殺菌スイッチ、66…コントローラ、71…収納室、72…棚板、73…載置面、74…扉、75…開放スイッチ、76…切換手段としてのコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線光に反応して活性化される光触媒が表面側に担持されるとともに可視光を透過可能な面材と、
前記面材の裏面側に設けられ、前記面材に向けて可視光を発する可視光発光体を有した可視光モジュールと、
前記面材の表面側に設けられ、前記面材に向けて紫外線光を発する紫外線光発光体を有した紫外線光モジュールと
をユニット化した面材ユニット。
【請求項2】
前記面材の表面側には、紫外線光の乱反射を生じさせるカット面が形成されている請求項1記載の面材ユニット。
【請求項3】
前記可視光モジュール及び紫外線光モジュールは、それぞれ別々の防水ハウジングに収納されて構成されている請求項1又は2記載の面材ユニット。
【請求項4】
前記可視光モジュール及び紫外線光モジュールは、それぞれ前記面材に固定されている請求項1乃至3のいずれかに記載の面材ユニット。
【請求項5】
前記紫外線光モジュールは、前記面材の外周縁全域に延設され、紫外線光発光体を内向きに指向させた請求項1乃至4のいずれかに記載の面材ユニット。
【請求項6】
前記可視光発光体及び紫外線光発光体は、それぞれ可視光LED及び紫外線光LEDからなる請求項1乃至5のいずれかに記載の面材ユニット。
【請求項7】
キッチンを備え、請求項1乃至6のいずれかに記載の面材ユニットを前記キッチンの天板とした建物。
【請求項8】
浴室を備え、請求項1乃至6のいずれかに記載の面材ユニットを天井板とした建物。
【請求項9】
前記紫外線光モジュールを、浴室の天井廻縁とし、天井廻縁の一部とし、又は天井廻縁に埋め込んだ請求項8記載の建物。
【請求項10】
トイレ室を備え、請求項1乃至6のいずれかに記載の面材ユニットを前記トイレ室の床板とした建物。
【請求項11】
前記紫外線光モジュールを、トイレ室の巾木とし、巾木の一部とし、又は巾木に埋め込んだ請求項10記載の建物。
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれかに記載の面材ユニットを備えた建物、又は請求項7乃至11のいずれかに記載の建物であって、
前記可視光モジュール及び紫外線光モジュールの一方がオンのときに他方がオフとなるように両者を選択的にオンオフさせる切換手段を備えた建物。
【請求項13】
人感センサをさらに備え、前記切換手段は、前記人感センサが人を感知すると、紫外線光モジュールをオフに切り換える請求項12記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−186874(P2007−186874A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4623(P2006−4623)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】