説明

面状発熱体及びその製造方法

【課題】 消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工、施工時の容易化を図る。
【解決手段】 面状発熱体は、ポリカーボネートフィルムからなる基材3と、この基材3の長手方向に適宜な間隔でカーボンインキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5と、このカーボン印刷部5において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材3上に設けられ、かつ前記カーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aに通電する銅箔フィルムからなる電極7と、前記カーボン印刷部5と前記電極7を覆って前記基材3上にラミネートした複合素材9であって、両面接着ポリエステル透明フィルム15とポリカーボネートフィルム17をラミネートした複合素材9と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、面状発熱体及びその製造方法に関し、特に床暖房、融雪、岩盤浴の用途に使用される面状発熱体であって、消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工、施工時の容易化を図ることのできる面状発熱体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の面状発熱体としては、例えば特許文献1に示されているように、絶縁性のフィルムからなる下地材と、この下地材の上にそれぞれの間に空白を設けて印刷された複数の発熱部となる複数のカーボンと、このカーボンの両側に沿って前記下地上で設けられ前記カーボンに電流を流すための導体と、前記下地材上に前記カーボン及び導体を覆ってラミネートされた絶縁シート材からなる複合素材とを備えており、前記カーボンとカーボンとの間の空白部分に対応させて前記下地材と前記複合素材を貫通する打ち抜き穴を設けている。
【特許文献1】特開2004−36961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の面状発熱体においては、下地材が絶縁性のフィルムであるといっても種々の材質のフィルムがあるが、実際には下地材に印刷されるカーボンは湿気によって熱効率が変わってくるので、水分吸収性が高いフィルムではカーボンの通電状態が不安定となる。また、面状発熱体は寒暖サイクルの条件下で使用されるので、下地材は耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化が生じない素材が求められる。さらには、面状発熱体が折り曲げられることで伸縮するとカーボンの抵抗値の変化が大きくなるので、下地材には低伸縮性の素材が求められる。特許文献1では下地材としてポリエステル(PET)が使用されているが、これらの点では不十分であった。
【0004】
さらに、下地材に印刷したカーボンは複合素材で覆うようにラミネートされる構成であるが、前記複合素材はポリエステルとポリエチレンが貼り合わされている構成であるので、耐寒性、耐熱性、低水分吸収性、低伸縮性という点では上記の下地材と同様に不十分であった。
【0005】
また、下地材に印刷するカーボンにはピンホールができるとカーボンの通電状態に悪影響が生じるので避けたいのであるが、カーボンは粒子が粗いために印刷時にピンホールができやすいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の面状発熱体は、ポリカーボネートフィルムからなる基材と、
この基材の長手方向に適宜な間隔でカーボンインキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分からなるカーボン印刷部と、
このカーボン印刷部において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材上に設けられ、かつ前記カーボン印刷部の複数の各印刷部分に通電する銅箔フィルムからなる電極と、
前記カーボン印刷部と前記電極を覆って前記基材上にラミネートした複合素材であって、両面接着ポリエステル透明フィルムとポリカーボネートフィルムをラミネートした複合素材と、
を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明の面状発熱体は、前記面状発熱体において、前記電極が、前記カーボン印刷部の幅方向の両端間に複数設けられていることが好ましい。
【0008】
この発明の面状発熱体の製造方法は、次の工程によって製造されることを特徴とするものである。
【0009】
(A)使用目的に応じて幅、長さを予め決め、印刷部分を作画した製版を準備する準備工程、
(B)目的温度に応じてカーボンインキの塗布量の調整を考慮してスクリーンメッシュの選定と組み合わせをする刷版工程、
(C)ポリカーボネートフィルムからなる基材を目的に合わせて幅方向にスリット又は枚葉に裁断を行う第1切断加工工程、
(D)前記基材のポリカーボネートフィルムを、印刷時に起こる伸縮を防止すべく乾燥機内にて熱風乾燥を行う乾燥工程、
(E)前記乾燥工程にて熱風乾燥を行った基材のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程にて準備された製版をセットした刷版を用いてスクリーン印刷機により、前記基材のポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にてカーボンインキのスクリーン印刷と乾燥機にて乾燥を行って複数の印刷部分からなるカーボン印刷部を形成する印刷工程、
(F)目的巾のポリカーボネートフィルムとセパレータ付き両面接着テープフィルムをヒータロール間に走行させて貼り合せる第1ラミネート工程、
(G)前記印刷工程にて基材のポリカーボネートフィルム上に印刷されたカーボン印刷部の複数の各印刷部分の幅方向の両側に、電極となる銅箔フィルムをヒータロール間に走行させて前記銅箔フィルムを貼り合せる銅箔フィルム貼り合せ工程、
(H)前記銅箔フィルム貼り合せ工程にて貼り合わされた印刷・銅箔付き基材のポリカーボネートフィルム上に、前記第1ラミネート工程にて貼り合わされた両面接着テープ付きポリカーボネートフィルムを貼り合わせる第2ラミネート工程、
(I)第2ラミネート工程にて貼り合わせたフィルムを目的の規格サイズに仕上げるべくスリット又は裁断を行う第2切断加工工程、
また、この発明の面状発熱体の製造方法は、前記面状発熱体の製造方法において、前記印刷工程にて、粗いメッシュから細かいメッシュへ段階的に変化させた複数の刷版でカーボンインキのスクリーン印刷の重ね刷りを行うことが好ましい。
【0010】
また、この発明の面状発熱体の製造方法は、前記面状発熱体の製造方法において、前記銅箔フィルム貼り合せ工程で、前記カーボン印刷部の幅方向の両端間に、電極となる銅箔フィルムを複数貼り合せることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の面状発熱体によれば、基材として使用しているポリカーボネートフィルムが湿気対策と絶縁対策も兼ねていると共に耐寒性・耐熱性に優れた素材であるので、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体の複数の印刷部分からなるカーボン印刷部の通電状態を安定させることに寄与する。さらに、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材であるので、メンテナンスフリー対策となる。
【0012】
また、基材の上面にカーボン印刷部と電極を覆ってラミネートされている複合素材が、例えば両面にアクリル系接着剤を塗布した両面接着ポリエステル透明フィルムとポリカーボネートフィルムとをラミネートした構成であると、前記アクリル系接着剤とポリカーボネートフィルムのいずれも、湿気対策と絶縁対策も兼ねているので、外部からの空気を遮断してカーボンインキに余分な水分を受け付けないようにしてカーボンインキの持つ特性を安定させることができる。
【0013】
また、基材のポリカーボネートフィルムと複合素材のポリエステル透明フィルムとポリカーボネートフィルムが例えば透明であることから、容易にカーボン印刷部の複数の印刷部分及び電極の銅箔フィルムを除く他の領域でビスや釘等の固定具により面状発熱体を固定でき、施工時の容易化を図ることができる。
【0014】
この発明の面状発熱体の製造方法によれば、使用目的に応じて幅、長さを予め決め、且つスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行って目的温度に応じてカーボンインキの塗布量を調整しているので、スクリーン印刷時に安定した通電状態のカーボン印刷部を形成することができる。したがって、消費電力の省エネ化となる導電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工の容易化を図ることができる。
【0015】
また、基材のポリカーボネートフィルムに対して熱風乾燥(アニール)を行っているので、設定温度の安定化と印刷加工後の基材の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止できる。
【0016】
また、第2ラミネート工程で印刷・銅箔付き基材のポリカーボネートフィルム上に両面接着テープ付きポリカーボネートフィルムを貼り合わせることで、両面接着テープ付きポリカーボネートフィルムが印刷部分や電極の段差を吸収してラミネート加工時のトンネリングを防止できる。さらには、両外側のポリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体の全体の絶縁対策と湿気対策に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1(A)〜(C)を参照するに、この実施の形態に係る面状発熱体1は、ポリカーボネートフィルム(透明)からなる基材3の上に、前記基材3の長手方向(図1(B)、(C)において左右方向)に適宜な間隔でカーボンインキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5が設けられている。
【0019】
さらに、前記カーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aに通電する銅箔フィルムからなる電極7が、前記カーボン印刷部5において前記基材3の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材3の上面に設けられている。
【0020】
また、前記基材3の上面には、複合素材9が前記カーボン印刷部5と前記電極7を覆ってラミネートされている。なお、上記の複合素材9は、ポリエステル透明フィルム11の両面にアクリル系接着剤13を塗布した両面接着ポリエステル透明フィルム15と、ポリカーボネートフィルム17(透明)とをラミネートしたものである。
【0021】
なお、この実施の形態に示されている図では、基材3、ポリエステル透明フィルム11、ポリカーボネートフィルム17が透明であるので、透過した状態で図示されている。さらに、図1(A)の断面図では基材3とポリエステル透明フィルム11のアクリル系接着剤13との間が空いているが、実際には貼り合わされている状態であり、図1(A)は拡大された断面図であるが、各部材の実際の厚さは薄いのでカーボン印刷部5の複数の印刷部分5Aや電極7の段差が小さいものである。
【0022】
また、面状発熱体1の性状は、カーボンインキ、刷版・印刷方法及び乾燥条件、基材3との相関関係から、設定すべき発熱温度の数値(傾向)で決められるものである。
【0023】
上記の面状発熱体1を構成する各素材について詳しく説明すると、基材3のポリカーボネートフィルム(透明)は、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体1の素材として、耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化が起きない優れた素材である。しかも、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材としても適しているのでメンテナンスフリー対策となる。なお、この実施の形態では、基材3のポリカーボネートフィルムの厚さは例えば0.18〜1.0mmである。
【0024】
また、ポリカーボネートフィルムは、融点温度が約240°Cであり、厚さによって温度の若干の差があるが、軟化温度が約85°C以上である。さらに、ポリカーボネートフィルムは、溶解度(塩化メチレン)不溶であり、引火点が522°Cで、発火点が550°Cで、可燃性は酸素指数26以上にランクされて不燃性・難燃性を有するものとして扱われており、自然発火の恐れがない素材である。したがって、このポリカーボネートフィルムは湿気対策と絶縁対策も兼ねている。
【0025】
また、発熱部としてのカーボン印刷部5を構成するカーボンインキとしては、公知のシルクスクリーン印刷インキを使用できる。このシルクスクリーン印刷インキとしては、例えばセルロース系、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系、アクリル/メラミン系、エポキシ系、エポキシ/メラミン系樹脂等のバインダーに、シルクスクリーン印刷適性を与え、通電性を付与するために、カーボン、金属、金属酸化物などの通電性物質を混入するものが使用できる。
【0026】
この実施の形態としては、電流を通りにくくして電気抵抗を発生するようにしてカーボンを練り込んだシルクスクリーンインキが使用されている。すなわち、上記のカーボンとしては通電時の発熱エネルギー交換の高効率を生じさせて消費電力の省エネ化を図れるものが望ましい。ちなみに、インキ配合のカーボン比率を上げると、粘度が低くなって印刷適性が悪くなるために、塗布量と電気抵抗値のバラつきを生じさせることになる。そこで、この実施の形態のシルクスクリーンインキの粘度は、スプレッドメーターSM14.0mm/25°Cであり、シルクスクリーンインキの表面電気抵抗値は0.6KΩ/□である。
【0027】
図2及び図3を併せて参照するに、カーボン印刷部5の複数の発熱部となる複数の各印刷部分5Aの印刷パターンのデザインは、用途や目的に合わせて変えるものである。各印刷部分5Aの幅寸法C(図2において左右方向の寸法)を例えば50mmとし、複数の印刷部分5Aの間隔D(図2において左右方向の寸法)を例えば50mmとすることができる。あるいは、各印刷部分5Aの幅寸法Cを例えば10mmとし、複数の印刷部分5Aの間隔Dを例えば10mmとすることができる。このように印刷部分5Aの寸法を変化させて、例えば各印刷部分5Aの幅寸法Cを狭くすると電極7とのカーボン接点の温度が高くなり、各印刷部分5Aの幅寸法Cを広くすると電極7とのカーボン接点の温度が低くなる。
【0028】
そこで、この実施の形態では、設定温度に応じて電極7の間の長さ、巾を考慮に入れて、各印刷部分5Aの図3(A)において上下方向の両端部分(E部)の形状が、滑らかな曲線形状とされている。これにより、電極7とのカーボン接点が点接点では無く、面積接点となる。従来の各印刷部分5Aの図3(B)において上下方向の両端部分(F部)の形状が平面視にて直線状であるために、電極7とのカーボン接点が点接点では接点部分の電気の流れが集中し、部分的な温度上昇と接点部分の負荷が増大するが、この実施の形態では上記のように面積接点とすることで、電気の流れが分散され、部分的な温度上昇を回避できる。このように電気ショートを避けるために鋭角な接点デザインは避けるようにすることが望ましい。
【0029】
また、上記の複数の印刷部分5Aの間隔Dが狭いと熱伝達効率が良くなり、複数の印刷部分5Aの間隔Dが広いと熱伝達効率が悪くなるので、電気の流れを分散して温度上昇を抑えるために、複数の各印刷部分5Aの幅寸法Cや間隔Dを変えて種々の印刷パターンを設定することができる。
【0030】
また、電極7である銅箔フィルムは、導電性粘着剤を塗布した接着テープタイプが使用されている。すなわち、粘着剤の部分に銅粉を練り込み導電性の向上が図られており、導電時の電流抵抗を抑えて銅箔部分の発熱を抑える構成となっている。銅箔フィルムの電気抵抗値は例えばΩ/25mm×25mm(1×10−1)であり、使用規格は例えば25mm巾×35μm(厚さ)である。
【0031】
図4を参照するに、電極7の配置状態は、カーボン印刷部5において基材3の長手方向に直交する幅方向(図4において上下方向)の両端間に複数設けることもできる。例えば、図4ではカーボン印刷部5の両端の電極7A,7Bの間に3つの電極7C,7D,7Eが配置されている。
【0032】
これにより、例えば電極7A,7Bに通電すると、カーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aの全長に亘って電流が流れるので、面状発熱体1のほぼ全体領域が発熱することになる。一方、例えば電極7A,7Dに通電すると、複数の各印刷部分5Aには電極7A,7Dの間だけに電流が流れることになるので、電極7A,7Dの間だけの面状発熱体1のほぼ半分の領域が発熱することになる。同様にして、例えば電極7C,7Eに通電すると、複数の各印刷部分5Aには電極7C,7Eの間だけに電流が流れることになるので、電極7C,7Eの間だけの面状発熱体1の中央付近の領域が発熱することになる。このように、面状発熱体1の発熱領域を調整することができる。
【0033】
なお、複数の各印刷部分5Aの中間で接触する電極7C,7D,7Eとの接点は面積接点となるので部分的な温度上昇とはならない。
【0034】
図5を参照するに、複合素材9に使用される両面接着ポリエステル透明フィルム15としては、例えば厚さ25μmのポリエステル透明フィルム11の両面にアクリル系接着剤13を塗布したものであり、各アクリル系接着剤13の外側には例えば厚さ38μmのPETセパレータフィルム19(剥離フィルム)が貼着されることで、図5に示されているセパレータ付き両面接着テープフィルム21が形成される。
【0035】
なお、上記のアクリル系接着剤13は通電性が無いので、上記の両面接着ポリエステル透明フィルム15は使用目的の用途に適合しており 、湿気対策と絶縁対策も兼ねている。
【0036】
一般的には、ラミネート加工方法はドライ・ウェット方式が多い中、後述する面状発熱体1の製造方法のロール仕様では印刷部分5Aや電極7としての銅箔フィルムの厚さの段差が部分的にあることと、カーボンインキの特性上、湿気に影響を受けやすいので、一般的なラミネート加工で使用される接着剤では油性系・水性系から影響を受けるためにカーボンインキの持つ特性が発揮されずに、電気抵抗値が変化をしてしまう。しかし、上記の両面接着ポリエステル透明フィルム15の厚さが上記の印刷部分5Aや電極7の段差を吸収すると共に、使用されているアクリル系接着剤13が湿気対策と絶縁対策を兼ねた性質があるのでカーボンインキの持つ特性を安定させる効果を発揮する。
【0037】
この実施の形態では、使用した両面接着ポリエステル透明フィルム15は耐熱温度が110°Cであり、物性試験としてのヒートサイクルテストにおいて80°C×1時間と−20°C×1時間を5サイクルで行った結果は外観異常なしであった。
【0038】
なお、複合素材9に使用されるポリカーボネートフィルム17(透明)としては、前述した基材3として使用されるポリカーボネートフィルム(透明)と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
上記構成により、この形態の面状発熱体1では、基材3として使用しているポリカーボネートフィルムは水分吸収性が低いフィルムであり、湿気対策と絶縁対策も兼ねた素材であるので、基材3にカーボンインキにて印刷される複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5の通電状態が安定することとなる。また、ポリカーボネートフィルムは耐寒性・耐熱性の条件とそれに伴う経時変化を生じない素材であるので、寒暖サイクルの条件下で使用される面状発熱体1のカーボン印刷部5の通電状態を安定させることに寄与する。さらに、ポリカーボネートフィルムは柔軟性に富んでおり、低伸縮性の素材としても適しているので、面状発熱体1が折り曲げられてもカーボン印刷部5の通電状態が安定することからメンテナンスフリー対策となる。
【0040】
さらに、電流を通りにくくして電気抵抗を発生するようにしてカーボンを練り込んだシルクスクリーンインキを使用することで、カーボン印刷部5の通電時の発熱エネルギー交換の高効率を生じさせて消費電力の省エネ化を図ることができる。
【0041】
また、基材3の上面にカーボン印刷部5と前記電極7を覆ってラミネートされている複合素材9が、両面にアクリル系接着剤13を塗布した両面接着ポリエステル透明フィルム15とポリカーボネートフィルム17とをラミネートした構成であることから、アクリル系接着剤13とポリカーボネートフィルム17のいずれも、湿気対策と絶縁対策も兼ねているので、外部からの空気を遮断してカーボンインキに余分な水分を受け付けないようにしてカーボンインキの持つ特性を安定させることができる。
【0042】
また、面状発熱体1を構成する基材3であるポリカーボネートフィルムと複合素材9のポリエステル透明フィルム11とポリカーボネートフィルム17とが透明であることから、カーボン印刷部5の複数の印刷部分5A及び電極7の銅箔フィルムが見えるので、面状発熱体1をビスや釘等の固定具で取り付ける際には、容易にカーボン印刷部5の複数の印刷部分5A及び電極7の銅箔フィルム以外の領域で固定することができ、施工時の容易化を図ることができる。
【0043】
次に、この発明の実施の形態の面状発熱体1の巻き取り(ロール)方式の製造方法について説明する。
【0044】
図6〜図12を併せて参照するに、この製造方法は、準備工程(A)、刷版工程(B)、第1切断加工工程(C)、熱風乾燥(アニール)工程(D)、印刷工程(E)、第1ラミネート工程(F)、銅箔フィルム貼り合せ工程(G)、第2ラミネート工程(H)、第2切断加工工程(I)、によって面状発熱体1が製造される。
【0045】
準備工程(A)は、図3(A)に示されているように、使用目的は面状発熱体1の仕様であるので、カーボン印刷部5の複数の発熱部となる複数の印刷部分5Aの印刷デザインの工夫が行われる。印刷デザインは上記の使用目的、つまり設定温度に応じて幅寸法C、長さ寸法G及び各印刷部分5Aの間隔Dが予め決められる。また、前記各印刷部分5Aの両端部分(E部)には滑らかな曲線形状の接点部分を作画した製版が準備される。つまり、カーボン接点の部分的な温度上昇を抑えるために、鋭角な接点部分を無くすようにして電極7との接点部分の発熱抑制とショート対策が行われる。
【0046】
刷版工程(B)は、目的の発熱温度に応じてカーボンインキの塗布量の調整を考慮に入れてスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行う工程である。例えば、スクリーンメッシュとしては、80メッシュ、100メッシュ、120メッシュ、150メッシュ、200メッシュ等がある。また、感光膜(感光フィルム)の考慮も必要であり、感光フィルムは100μmを設定している。
【0047】
第1切断加工工程(C)は、図6に示されているように、ロール状のポリカーボネートフィルムからなる基材3が第1スリット加工装置23の複数のローラ23Aによりカッタ付きローラ23Bへ走行されて、カッタ23Cにより目的に合わせて幅方向にスリット加工が行われ、所謂第1スリット加工工程である。図6ではスリット部23Dが形成される。この工程ではスリット加工後の基材3が再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0048】
熱風乾燥(アニール)工程(D)は、図7に示されているように、前記第1切断加工工程(C)でスリット加工されたロール状の基材3のポリカーボネートフィルム(透明)を乾燥機25内に走行せしめて、後工程の印刷時に起こる基材3の伸縮を防止するために、基本的には印刷前に基材3の寸法精度を上げる目的で90°C/3分以上の熱風乾燥をする工程である。なお、この熱風(アニール)は、設定温度の安定化と印刷加工後の基材3の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止することが目的である。この工程では熱風(アニール)後の基材3が再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0049】
印刷工程(E)は、図8に示されているように、前記乾燥工程(D)にて熱風乾燥を行ったロール状の基材3のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程(A)にて準備された製版をセットした刷版27を用いてスクリーン印刷機29により、前記基材3のポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にてカーボンインキのスクリーン印刷を行い、次いで乾燥機31にて乾燥を行って複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5を形成する工程である。この工程では印刷後の基材3が再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0050】
なお、上記のスクリーン印刷は設定温度に応じて複数回の重ね刷りを行うことが望ましく、この実施の形態では2回の重ね刷りが行われている。この重ね刷りは、1度目は第1スクリーン印刷機29Aにてメッシュ数値の粗い製版を用いて印刷してから、第1乾燥機31Aにて乾燥温度80°C/3分以上で再乾燥される。次いで、2度目は第2スクリーン印刷機29Bにてメッシュ数値の細かい製版を用いて印刷してから、第2乾燥機31Bにて乾燥温度80°C/3分以上で再乾燥される。なお、この印刷後の乾燥温度はカーボンインキのタイプによって若干の違いはあるが、基本的には80°C〜85°Cぐらいで行われる。
【0051】
このように少なくとも2回以上の重ね刷りが行われることで、カーボンインキの粒径が粗いために生じる印刷後のインキの塗布量のバラつきを抑えることができる。特に、段階的に粗いメッシュから細かいメッシュへ変化させた製版でスクリーン印刷することで、インキの塗布分布が安定して均一の塗布量が得られるので、比較的電気抵抗値の安定化を図ることができる。重ね刷りをしても、もし同じメッシュの製版で印刷すると、印刷部分5Aにピンホールが発生して電気抵抗値のバラつきが生じるために、目的の発熱温度あるいは電気抵抗値が得られないことになる。なお、上記のように巻き取り方式の場合は、各第1,第2スクリーン印刷機29A,29Bにて印刷後にその都度対応する各第1,第2乾燥機31A,31Bにて再乾燥が行われる。
【0052】
第1ラミネート工程(F)は、図9に示されているように、第1ラミネート装置33を用いて、目的巾のロール状のポリカーボネートフィルム17と、セパレータ付き両面接着テープフィルム21が複数のロール33Aによりヒータロール33Bの間に走行され、このヒータロール33Bで貼り合わされて複合素材9(ここでは、「両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム」ともいう)が製造される工程である。
【0053】
すなわち、セパレータ付き両面接着テープフィルム21の片面側のセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されてロール35に巻回されると共に、セパレータ付き両面接着テープフィルム21が前記露出した片面側のアクリル系接着剤13を介してポリカーボネートフィルム17に貼り合わされる。この工程では製造された複合素材9が再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0054】
なお、この製造された複合素材9は、後工程の第2ラミネート工程(H)にて基材3のポリカーボネートフィルム(透明)とのラミネート加工時のために工夫されている。つまり、絶縁目的と湿気対策を考慮に入れた加工が行われている。
【0055】
より詳しく説明すると、一般的なラミネート加工はドライ方式又はウェット方式で行われるが、このラミネート加工時に使用される溶剤や水分は印刷部分5Aのカーボンインキに対して目的の電気抵抗値に影響を与えてしまう。また、前工程による印刷部分5Aの段差と銅箔フィルムの段差が有るためにラミネート加工時にトンネリングが生じることになる。そこで、これらのことを解消する目的で両面接着ポリエステル透明フィルム15が使用されている。すなわち、前述した図5のセパレータ付き両面接着テープフィルム21で説明したように、アクリル系接着剤13は湿気対策と絶縁対策を兼ねているのでカーボンインキの電気抵抗値を安定させることができ、両面接着ポリエステル透明フィルム15の厚さで上記のラミネート加工時のトンネリングを防止できる。
【0056】
銅箔フィルム貼り合せ工程(G)は、図10に示されているように、貼り合せ装置37を用いて、前記印刷工程(E)にてカーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aを印刷した基材3のポリカーボネートフィルムがヒータロール37Aの間に走行されると共に、電極7となる銅箔フィルムがカーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aの幅方向の両側に配置されるように複数のロール37Bによりヒータロール37Aの間に走行され、このヒータロール37Aで前記電極7の銅箔フィルムと基材3が貼り合わされる工程である。
【0057】
すなわち、銅箔フィルムに予め貼り合わされているセパレータフィルム7Fが導電性粘着剤から剥離されてロール39に巻回されると共に、銅箔フィルムが前記露出した導電性粘着剤を介して基材3のポリカーボネートフィルムに貼り合わされることで、印刷・銅箔付き基材41が製造され、再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0058】
なお、銅箔フィルムを貼る位置は印刷ラインの両側から内側に貼り合せる。このとき、電極7となる銅箔フィルムの間の距離によって電気抵抗値が変わるので、銅箔フィルムの貼り合せ位置によって発熱温度の設定が決まることになる。なお、銅箔フィルムの導電性粘着剤は粘着剤の中に銅粉を練り込んでおり、カーボン印刷部5の複数の印刷部分5Aとの接点部分の通電性の改良を図っている。このように導電性の改良を図ることにより安定温度が保たれる。
【0059】
第2ラミネート工程(H)は、図11に示されているように、第2ラミネート装置43を用いて、前記銅箔フィルム貼り合せ工程(G)にて貼り合わされた印刷・銅箔付き基材41のポリカーボネートフィルムと、前記第1ラミネート工程(F)にて製造された複合素材9(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)が複数のロール43Aによりヒータロール43Bの間に走行され、このヒータロール43Bで貼り合わされる工程である。
【0060】
すなわち、印刷・銅箔付き基材41のポリカーボネートフィルムと複合素材9(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)をヒータロール43Bの間に走行させ、このとき前記複合素材9のセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されてロール45に巻回されると共に、前記複合素材9が前記露出したアクリル系接着剤13を介して印刷・銅箔付き基材41のポリカーボネートフィルムにヒータロール43Bで貼り合わされて面状発熱体フィルム47が製造され、再びロール状に卷回されるロール・トゥ・ロールで行われる。
【0061】
その結果として、基材7と複合素材9のポリカーボネートフィルム同士が貼り合わされたラミネートの形態となり、両外側のポリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体1の全体の絶縁対策と湿気対策に貢献することになる。
【0062】
第2切断加工工程(I)は、図12に示されているように、前記第2ラミネート工程(H)にて貼り合わせたロール状の面状発熱体フィルム47が第2スリット加工装置49の複数のローラ49Aによりカッタ付きローラ49Bへ走行されて、カッタ49Cにより目的の規格サイズに仕上げるべくスリット加工が行われ、所謂第2スリット加工工程である。これにより、ロール状の面状発熱体1が製造される。
【0063】
次に、この実施の形態の面状発熱体1の枚葉(シート)裁断方式の製造方法について説明する。なお、前述した巻き取り(ロール)方式と対応して同様の部分は詳しい説明を省略し、主に枚葉(シート)裁断方式に関わることを説明する。
【0064】
図13〜図19を併せて参照するに、この製造方法の各製造工程は巻き取り(ロール)方式と対応しているので、同様の部材は同じ符号を付して説明する。
【0065】
準備工程(A)と刷版工程(B)は、巻き取り(ロール)方式と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0066】
第1切断加工工程(C)は、図13に示されているように、ロール状のポリカーボネートフィルムからなる基材3が裁断機51にて目的に合わせた大きさの枚葉(シート)の基材3Pに裁断加工が行われ、所謂第1裁断加工工程である。
【0067】
熱風乾燥(アニール)工程(D)では、図14に示されているように、前記第1切断加工工程(C)で切断された枚葉の基材3Pのポリカーボネートフィルム(透明)が、例えば枚葉定置型乾燥機53内の多段式の簀の子55に載置して熱風乾燥が行われるものである。基本的には巻き取り(ロール)方式と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
印刷工程(E)では、図15(A)に示されているように、前記乾燥(アニール)工程(D)にて熱風乾燥を行った基材3Pのポリカーボネートフィルムが、枚葉スクリーン印刷機57のスライド式テーブル59により印刷機本体61上へ設置される。また、前記準備工程(A)にて準備された製版をセットした刷版27が印刷機本体61の上部に上下動自在に設けた上下式刷版固定用型枠63に装着される。この枚葉スクリーン印刷機57の前記刷版27により、前記基材3Pのポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にてカーボンインキのスクリーン印刷が行われる。
【0069】
このとき、上記のスクリーン印刷は設定温度に応じて複数回の重ね刷りを行うことが望ましく、枚葉(シート)の場合は、上下式刷版固定用型枠63に装着される刷版27を交換して重ね刷りが行われる。
【0070】
上記のスクリーン印刷が行われた後に、図15(B)に示されているように、定置型乾燥機65内の多段式の簀の子65Aに載置して乾燥することで、複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5が形成される。この場合は、巻き取り方式の場合と比べて乾燥時間を延長して乾燥される。なお、印刷工程(E)の基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0071】
第1ラミネート工程(F)では、図16に示されているように、第1ラミネート装置67を用いて、目的巾の枚葉のポリカーボネートフィルム17Pが載置台67A上を図16において右方向のヒータロール67Bの間へ移動されると共に、セパレータ付き両面接着テープフィルム21が複数のロール67Cによりヒータロール67Bの間に走行される。このとき、セパレータ付き両面接着テープフィルム21の片面側のセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されてロール67Dに巻回されると共に、セパレータ付き両面接着テープフィルム21が前記露出した片面側のアクリル系接着剤13を介して枚葉のポリカーボネートフィルム17Pにヒータロール67Bで貼り合わされることで、枚葉の複合素材9P(「両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム」ともいう)が製造される。なお、第1ラミネート工程(F)の基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0072】
銅箔フィルム貼り合せ工程(G)では、図17に示されているように、貼り合せ装置69を用いて、前記印刷工程(E)にて枚葉の基材3Pのポリカーボネートフィルム上に印刷された枚葉のフィルム3Pが載置台69A上を図17において右方向のヒータロール69Bの間へ移動されると共に、電極7となる銅箔フィルムが複数のロール69Cによりヒータロール69Bの間に走行される。このとき、銅箔フィルムに予め貼り合わされているセパレータフィルム7Fが導電性粘着剤から剥離されてロール69Dに巻回されると共に、銅箔フィルムが前記露出した導電性粘着剤を介して基材3Pのポリカーボネートフィルム上に印刷されたカーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aの幅方向の両側にヒータロール69Bで貼り合わされて枚葉の印刷・銅箔付き基材41Pが製造される。
【0073】
第2ラミネート工程(H)では、図18に示されているように、第2ラミネート装置71を用いて、前記第1ラミネート工程(F)にて貼り合わされた枚葉の複合素材9P(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)が載置台71A上を図18において右方向のヒータロール71Bの間へ移動される。このとき、上記の枚葉の複合素材9Pは図示しないセパレータフィルム19がアクリル系接着剤13から剥離されている。
【0074】
また、前記銅箔フィルム貼り合せ工程(G)にて製造された枚葉の印刷・銅箔付き基材41Pがヒータロール71Bの間に差し込まれ、このヒータロール71Bで前記複合素材9Pに露出したアクリル系接着剤13を介して貼り合わされて枚葉の面状発熱体フィルム47Pが製造される。なお、第2ラミネート工程(H)の基本的なことは巻き取り(ロール)方式と同様であるので、他の詳細な説明は省略する。
【0075】
第2切断加工工程(I)では、図19に示されているように、前記第2ラミネート工程(H)にて貼り合わせた枚葉の面状発熱体フィルム47Pが裁断機73のスライド式テーブル73Aに載置され、このスライド式テーブル73Aにて目的の規格サイズに仕上げるべく位置決めして裁断加工を行う、所謂第2裁断加工工程である。これにより、枚葉(シート)の面状発熱体1Pが製造される。
【0076】
以上の面状発熱体の製造方法から、使用目的に応じて幅、長さを予め決め、印刷部分5Aの両端部分に滑らかな曲線形状の接点部分を作画した製版を用いて、且つ刷版27のスクリーンメッシュの選定と組み合わせを行って目的温度に応じてカーボンインキの塗布量を調整しているので、スクリーン印刷時に安定した通電状態の複数の印刷部分5Aからなるカーボン印刷部5を形成することができる。したがって、消費電力の省エネ化となる通電時の発熱効果の高効率と安定化、及び加工の容易化を図ることができる。
【0077】
また、カーボン印刷部5の複数の各印刷部分5Aの両端部分に滑らかな曲線形状の接点部分を形成したので、電極7とのカーボン接点が面積接点となることから、電気の流れを分散して部分的な温度上昇を回避できる。
【0078】
また、基材3のポリカーボネートフィルムに対して熱風乾燥(アニール)をしてアニールを行っているので、設定温度の安定化と印刷加工後の基材3の伸縮によって起こる材料同士の層間剥離を防止できる。
【0079】
また、第2ラミネート工程(I)にて印刷・銅箔付き基材41のポリカーボネートフィルム上に複合素材9(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)を貼り合わせることで、複合素材9の両面接着ポリエステル透明フィルム15が印刷部分5Aや電極7の段差を吸収してラミネート加工時のトンネリングを防止できる。さらには、両外側のポリカーボネートフィルムの耐熱性・耐寒性の併せ持つ特性が面状発熱体1の全体の絶縁対策と湿気対策に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(A)はこの発明の実施の形態の面状発熱体の断面図で、(B)は(A)の表面図で、(C)は(A)の裏面図である。
【図2】この発明の実施の形態の面状発熱体の斜視図である。
【図3】(A)はこの実施の形態の印刷デザインの平面図で、(B)は従来の印刷デザインの平面図である。
【図4】カーボン印刷部に対する電極の配置状態を示す平面図である。
【図5】両面接着ポリエステル透明フィルムの断面図である。
【図6】巻き取り(ロール)方式における第1切断加工工程(C)で使用される第1スリット加工装置の斜視図である。
【図7】巻き取り(ロール)方式における熱風乾燥(アニール)工程(D)で使用される乾燥機の斜視図である。
【図8】巻き取り(ロール)方式における印刷工程(E)で使用されるスクリーン印刷機と乾燥機の斜視図である。
【図9】巻き取り(ロール)方式における第1ラミネート工程(F)で使用される第1ラミネート装置の斜視図である。
【図10】巻き取り(ロール)方式における銅箔フィルム貼り合せ工程(G)で使用される貼り合せ装置の斜視図である。
【図11】巻き取り(ロール)方式における第2ラミネート工程(H)で使用される第2ラミネート装置の斜視図である。
【図12】巻き取り(ロール)方式における第2切断加工工程(I)で使用される第2スリット加工装置の斜視図である。
【図13】枚葉(シート)裁断方式における第1切断加工工程(C)で使用される裁断機の斜視図である。
【図14】枚葉(シート)裁断方式における熱風乾燥(アニール)工程(D)で使用される枚葉定置型乾燥機の斜視図である。
【図15】(A)は枚葉(シート)裁断方式における印刷工程(E)で使用される枚葉スクリーン印刷機の斜視図で、(B)は定置型乾燥機の斜視図である。
【図16】枚葉(シート)裁断方式における第1ラミネート工程(F)で使用される第1ラミネート装置の斜視図である。
【図17】枚葉(シート)裁断方式における銅箔フィルム貼り合せ工程(G)で使用される貼り合せ装置の斜視図である。
【図18】枚葉(シート)裁断方式における第2ラミネート工程(H)で使用される第2ラミネート装置の斜視図である。
【図19】枚葉(シート)裁断方式における第2切断加工工程(I)で使用される裁断機の斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1 面状発熱体
1P 枚葉(シート)の面状発熱体
3 基材〔ポリカーボネートフィルム(透明)〕
3P 枚葉(シート)の基材
5 カーボン印刷部
5A 印刷部分
7 電極(銅箔フィルム)
9 複合素材(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)
9P 枚葉の複合素材(両面接着テープ付きポリカーボネートフィルム)
11 ポリエステル透明フィルム
13 アクリル系接着剤
15 両面接着ポリエステル透明フィルム
17 ポリカーボネートフィルム(透明)
17P 枚葉のポリカーボネートフィルム(透明)
19 セパレータフィルム
21 セパレータ付き両面接着テープフィルム
23 第1スリット加工装置
23B カッタ付きローラ
23D スリット部
25 乾燥機
27 刷版
29 スクリーン印刷機
31 乾燥機
33 第1ラミネート装置
33B ヒータロール
37 貼り合せ装置
37A ヒータロール
41 印刷・銅箔付き基材
43 第2ラミネート装置
43B ヒータロール
47 面状発熱体フィルム
47P 枚葉の面状発熱体フィルム
49 第2スリット加工装置
49B カッタ付きローラ
49C カッタ
53 枚葉定置型乾燥機
57 枚葉スクリーン印刷機
63 上下式刷版固定用型枠
65 定置型乾燥機
67 第1ラミネート装置
67B ヒータロール
69 貼り合せ装置
69B ヒータロール
71 第2ラミネート装置
71B ヒータロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートフィルムからなる基材と、
この基材の長手方向に適宜な間隔でカーボンインキにて印刷された複数の発熱部となる複数の印刷部分からなるカーボン印刷部と、
このカーボン印刷部において前記基材の長手方向に直交する幅方向の両側に沿って前記基材上に設けられ、かつ前記カーボン印刷部の複数の各印刷部分に通電する銅箔フィルムからなる電極と、
前記カーボン印刷部と前記電極を覆って前記基材上にラミネートした複合素材であって、両面接着ポリエステル透明フィルムとポリカーボネートフィルムをラミネートした複合素材と、
を備えていることを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記電極が、前記カーボン印刷部の幅方向の両端間に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
次の工程によって製造されることを特徴とする面状発熱体の製造方法。
(A)使用目的に応じて幅、長さを予め決め、印刷部分を作画した製版を準備する準備工程、
(B)目的温度に応じてカーボンインキの塗布量の調整を考慮してスクリーンメッシュの選定と組み合わせをする刷版工程、
(C)ポリカーボネートフィルムからなる基材を目的に合わせて幅方向にスリット又は枚葉に裁断を行う第1切断加工工程、
(D)前記基材のポリカーボネートフィルムを、印刷時に起こる伸縮を防止すべく乾燥機内にて熱風乾燥を行う乾燥工程、
(E)前記乾燥工程にて熱風乾燥を行った基材のポリカーボネートフィルムを、前記準備工程にて準備された製版をセットした刷版を用いてスクリーン印刷機により、前記基材のポリカーボネートフィルム上に適宜な間隔にてカーボンインキのスクリーン印刷と乾燥機にて乾燥を行って複数の印刷部分からなるカーボン印刷部を形成する印刷工程、
(F)目的巾のポリカーボネートフィルムとセパレータ付き両面接着テープフィルムをヒータロール間に走行させて貼り合せる第1ラミネート工程、
(G)前記印刷工程にて基材のポリカーボネートフィルム上に印刷されたカーボン印刷部の複数の各印刷部分の幅方向の両側に、電極となる銅箔フィルムをヒータロール間に走行させて前記銅箔フィルムを貼り合せる銅箔フィルム貼り合せ工程、
(H)前記銅箔フィルム貼り合せ工程にて貼り合わされた印刷・銅箔付き基材のポリカーボネートフィルム上に、前記第1ラミネート工程にて貼り合わされた両面接着テープ付きポリカーボネートフィルムを貼り合わせる第2ラミネート工程、
(I)第2ラミネート工程にて貼り合わせたフィルムを目的の規格サイズに仕上げるべくスリット又は裁断を行う第2切断加工工程、
【請求項4】
前記印刷工程にて、粗いメッシュから細かいメッシュへ段階的に変化させた複数の刷版でカーボンインキのスクリーン印刷の重ね刷りを行うことを特徴とする請求項3記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項5】
前記銅箔フィルム貼り合せ工程において、前記カーボン印刷部の幅方向の両端間に、電極となる銅箔フィルムを複数貼り合せることを請求項3又は4記載の面状発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−186789(P2008−186789A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21762(P2007−21762)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(507033233)福寿産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】