説明

面状発熱体

【課題】給電電極における電圧降下を効率的に抑える手段を提供することで、発熱効率の向上などを目的とする。
【解決手段】電気絶縁性基材4上に印刷により形成され、対向するように配設した対となる給電電極1a,1b、それぞれの給電電極から交互に対向する給電電極に向かって配設した櫛形形状の接続電極2a,2bからなる電極3と、前記電極に重ねて印刷形成され、前記電極より給電されて発熱する高分子抵抗体6とを備え、前記接続電極は前記給電電極から延伸する根元部側に電気抵抗を低減する手段、例えば、電極を2回以上重ねて印刷した重複電極部5a,5bを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電電極間距離が比較的離れている幅広の面状発熱体に関するものであり、特に、電極、抵抗体が同一面上で形成される面状発熱体の電極および抵抗体のパターン構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の面状発熱体は、図4,5に示すように、ポリエステルシートなどの電気絶縁性基材51の上面両側に一対の平行な給電電極52、53を配置し、これら給電電極52、53からは相手側にのびる接続電極52a、53aを交互に位置するように分岐し、これら接続電極52a、53aと電気的接続状態で高分子抵抗体54が配置してあった。
【0003】
そして、給電電極52、53、接続電極52a、53aは電気絶縁性基材51上に導電性ペーストを印刷・乾燥して形成されるもので、また、高分子抵抗体54は高分子抵抗体インクを印刷・乾燥して得ていた。
【0004】
これら給電電極52、53、電極52a、53a、および高分子抵抗体54は電気絶縁性基材51と同材質の被覆材55で被覆して保護する構成としてある。
【0005】
前記高分子抵抗体54は多数の接続電極52a、53aより給電されることで電流が流れ、発熱する。
【0006】
電気絶縁性基材51、被覆材55としてポリエステルフィルムを用いる場合には、被覆材55に、例えばポリエチレン系の熱融着性樹脂56を予め接着しておき、熱を与えながら加圧する(熱加圧)ことにより、電気絶縁性基材51と被覆材55とを熱融着性樹脂56を介して接合する。
【0007】
これにより、給電電極52,53、その接続電極52a,53a、および高分子抵抗体54は外界から隔離され、長期信頼性を付与されるのである。
【0008】
前記した熱時加圧の手段としては、図5に示すように、矢印方向へ回転する2本の加熱ロール56、57からなるラミネーター58が一般的である。
【0009】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient)を意味しており、したがって、PTC特性を有する高分子抵抗体54は、自己温度調節機能を有する面状発熱体を提供できる(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−13689号公報
【特許文献2】特開平6−96843号公報
【特許文献3】特開平8−120182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の面状発熱体では、比較的広幅の面状発熱体を形成する場合においては、PTC特性を有する高分子抵抗体54に適切な電圧を供給するために、給電電極52,53に
おける電圧降下を効率的に抑えることが必要となる。
【0012】
この従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、給電電極における電圧降下を効率的に抑える手段を提供することで、発熱効率を向上するとともに、製品の設計抵抗値の簡便な管理を行い、また、電極材料の効率化に優れた面状発熱体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の面状発熱体は、電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材上に印刷により形成され、対向するように配設した対となる給電電極、それぞれの給電電極から交互に対向する給電電極に向かって配設した櫛形形状の接続電極からなる電極と、前記電極に重ねて印刷形成され、前記電極より給電されて発熱する高分子抵抗体とを備え、前記接続電極は前記給電電極から延伸する根元部側に電気抵抗を低減する手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の面状発熱体は、接続電極における電圧降下を効率的に下げることができるので、発熱効率の向上や製品の設計抵抗値の簡便な管理が行え、併せて、電極材料の効率化ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱体の構成を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態2における面状発熱体の構成を示す平面図
【図3】同実施の形態2における面状発熱体の他の例を示す平面図
【図4】従来の平面図
【図5】図4のX−Y断線図
【図6】従来の面状発熱体の製造説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材上に印刷により形成され、対向するように配設した対となる給電電極、それぞれの給電電極から交互に対向する給電電極に向かって配設した櫛形形状の接続電極からなる電極と、前記電極に重ねて印刷形成され、前記電極より給電されて発熱する高分子抵抗体とを備え、前記接続電極は前記給電電極から延伸する根元部側に電気抵抗を低減する手段を設けたものである。
【0017】
これにより、面状発熱体における接続電極の抵抗値が低減され、高分子抵抗体の発熱効率の向上や設計抵抗値の簡便な管理が行え、また、接続電極の給電電極から延伸する根元部側に限定して抵抗を低減することで、電極材料の量を可及的に減少することができるものである。
【0018】
第2の発明は、前記第1の発明において、電気抵抗低減手段は、電極を2回以上重ねて印刷して構成としてある。
【0019】
これにより、接続電極を2回以上重ねて印刷した部位は接続電極の抵抗を低減でき、さらに面状発熱体を形成する面内においては接続電極の面積が増えることがないため、高分子抵抗体の発熱面積を減らすこともない。そのため、高分子抵抗体の発熱効率の向上に寄与することができる。
【0020】
第3の発明は、前記第2の発明において、接続電極と高分子抵抗体の境界線上には電極を2回以上重ねて印刷しない構成としたものである。
【0021】
これにより、第2の発明の効果に加え、印刷による製造方法における不良の一つである高分子抵抗体のエッジ切れの発生を軽減することができる。
【0022】
エッジ切れとは高分子抵抗体が接続電極上に印刷された際に高分子抵抗体が設計通りに印刷されず接続電極と高分子抵抗体の境界線上において離れてしまい、高分子抵抗体のその部位に電流が流れなくなってしまう現象である(以降、エッジ切れと表記する)。
【0023】
第4の発明は、前記第1〜3いずれか一つの発明において、接続電極の幅を給電電極側が大となるように形成して電気抵抗低減手段をとしたものである。
【0024】
これにより、接続電極の幅を広げた部位は接続電極の抵抗を低減でき、さらに第2〜3の発明のように電極を重ね印刷する必要がなく簡便な製造方法で実現することができる。
【0025】
第5の発明は、前記第1〜4いずれか一つの発明において、電気抵抗低減手段は、給電電極側から略半分までの領域に特定したものである。
【0026】
これにより、接続電極の根元から略半分までの領域に限定しての接続電極の抵抗を低減することで電流量が少なくなる接続電極の先端部近傍に電極材料を使用することがなく効率的に接続電極の抵抗値の低減を行うことが出来る。
【0027】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、実施の形態が本発明を限定するものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1において、間隔をおいて位置する給電電極1a,1b、およびこれら給電電極1から相手極方向に交互に櫛歯状に分岐した接続電極2a,2bからなる電極3は、ポリエステルフィルムなどの電気絶縁性基材4上に銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥して得たものである。
【0029】
さらに述べると、接続電極2a,2bは、給電電極1a,1b側の略半分が重ね印刷されて重複電極部5a,5bを形成している。
【0030】
電極材料の低減のために、給電電極1a,1bの厚みは5〜30μm程度、接続電極2a,2bの厚みは1〜10μm程度とし、給電電極1a,1bよりも接続電極2a,2bが薄いことが望ましい。
【0031】
何故ならば、接続電極2a,2bには給電電極1a,1bよりも十分小さい電流しか供給されないため、電圧降下や電極自体の発熱といった現象が起こりにくいからである。
【0032】
重複電極部5a,5bは給電電極1a,1bと接続電極2a,2bを合算した6〜40μm程度の厚みとなる。
【0033】
高分子抵抗体インキに樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗材を溶剤に溶かしたもの、或いは特に、結晶性樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗材を溶剤に溶かした高分子抵抗体6を前記接続電極2a,2bの上に印刷・乾燥により形成している。
【0034】
接続電極2a,2bとの境界上でエッジ切れを起こさないよう、高分子抵抗体6の厚みは1〜30μm程度とすることが望ましい。
【0035】
これら給電電極1a,1b、接続電極2a,2b、重複電極部5a,5b、高分子抵抗体6の印刷としてはRoll−to−rollで電気絶縁性基材4を送り出し、巻き取り可能な設備にて所定の距離だけ移動させながらスクリーン印刷を行う方法が一般的である。
【0036】
また、図1では省略したが、面状発熱体の絶縁性を確保するため電気絶縁性基材4の全体にホットメルトや粘着材などの固定手段を備えた電気絶縁性被覆材を取り付けるのが一般的である。
【0037】
全ての印刷が終了した後、給電電極1a,1bにそれぞれ端子やリード線7などの給電手段を介して電源8に接続することで面状発熱体が完成する。
次に、動作、作用について説明する。
【0038】
図1において、電流が流れる経路を考察すると、リード線7から電流が供給され、給電電極1a,1bを介して接続電極2a,2bへ電流が流れ、高分子抵抗体6に給電される。高分子抵抗体6にかかる電圧は給電電極1a,1b、および接続電極2a,2bを通過する際の電圧降下を差し引いた電圧となる。
【0039】
よって、面状発熱体の設計抵抗値を設定する際には高分子抵抗体6の固有抵抗値・厚み、接続電極2a,2b間の距離だけでなく、給電電極1a,1bの抵抗値や接続電極2a,2bの抵抗値も勘案する必要がある。
【0040】
一般に、接続電極2a,2bには比較的少量の電流しか流れないため、電圧降下は小さく、設計抵抗値設定の際にはその抵抗値は無視される。しかしながら、図1のごとく左右方向に広い面状発熱体や高分子抵抗体6の抵抗値が低い場合や、接続電極2a,2b間距離が短い場合などは、前記接続電極2a,2bの抵抗値も勘案する必要がある。
【0041】
接続電極2a,2bは櫛歯形状となっているため、上下端の接続電極2a,2b以外は同接続電極2a,2bの抵抗値そのままの値を給電電極1a,1bに足し合わせ、上下端の接続電極2a,2bについては略半分の抵抗値を足せば良い。
【0042】
図1のごとく、矩形形状の単純な面状発熱体であれば、接続電極2a,2bの抵抗値を合算した抵抗値を求めることはできるが、複雑な形状を持つ面状発熱体の場合容易ではない。
【0043】
本実施の形態の面状発熱体は接続電極2a,2bの根元付近の一部に重複電極5a,5b部があるため、面状発熱体における接続電極2a,2bによる電圧降下を低減でき、設計抵抗値における接続電極2a,2bの抵抗値を無視できるようになり、高分子抵抗体6に設計意図する電圧を印加することができる。
【0044】
特に、接続電極2a,2bの給電電極1a,1bから延伸する根元部側は接続電極2a,2bの先端部に比べ電流量が大きいため、同一抵抗値であれば電圧降下が大きい。
【0045】
そのため、接続電極2a,2bの給電電極1a,1bから延伸する根元部側に限定して抵抗を低減することで、電極材料の量を効率的に使用することができる。
【0046】
先述の通り、給電電極1a,1bは接続電極2a,2bはよりも厚いため、必要な領域にのみ配設することが電極材料の効率的な使用に繋がる。
【0047】
接続電極2a,2bから高分子抵抗体6への電流経路を考察してみると、重複電極5a
,5bを接続電極2a,2bの根元側の略半分あれば少なくとも接続電極2aと接続電極2bのどちらかの電流経路において重複電極5a,5bによる抵抗値軽減の効果を得ることができる。
【0048】
よって、重複電極5a,5bの配設範囲としては接続電極2a,2bを図1における左右方向の略半分とすれば効率的かつ効果的に電極材料を使用できる。
【0049】
重複電極5a,5bは接続電極2a,2bの図1における上下方向内側にしか配設されていないため、高分子抵抗体6における発熱部位は、境界を持たず、重複電極5a,5bを配設したことによってエッジ切れが起こる心配はなく、簡便な品質管理で面状発熱体を形成することができる。
【0050】
さらに、重複電極5a,5bを給電電極1a,1b側としたことで面状発熱体における電極3は非発熱部の面積を広げることがなく、発熱分布向上に繋がる。
【0051】
また、本実施の形態では重複電極5a,5bを接続電極2a,2bと給電電極1a,1bの重ね合わせ部として形成したが、別途電極版を用意して形成してももちろん良い。場合によっては3重以上に重ね印刷しても良い。
【0052】
また、本実施の形態では電源電圧について特に規定しなかったが、車載用バッテリー電源など低電圧電源に面状発熱体を接続する場合において接続電極2a,2bにおける電圧降下の低減に特に効果を発揮する。
【0053】
(実施の形態2)
図2において、面状発熱体の基本的な構成は実施の形態1と同一であるが、異なる点は、接続電極の抵抗値低減手段が幅広接続電極部9a,9bとなっているところである。
【0054】
なお、図1と同作用をおこなう構成部分には便宜上同一符号を付し、具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0055】
給電電極1a,1b、接続電極2a,2b、および幅広接続電極部9a,9bは同一版で形成されている。
【0056】
幅広接続電極部9a,9bは接続電極2a,2bと同一版で形成されているため、膜厚み及び固有抵抗は同一であるが幅が広い分、図2の左右方向に電流が向かう場合の抵抗値が低くなる。
【0057】
給電電極1a,1bと接続電極2a,2b、幅広接続電極部9a,9bが同一版で形成されているため、電極印刷回数が1回でよく、簡便な製造工程となっている。
【0058】
広幅接続電極9a,9bは図2の左右方向の略半分までとなっている。そのため、接続電極2a,2b、広幅接続電極9a,9b間の距離はどの場所でも同じとなり、よって、高分子抵抗体6で消費される電力密度はどの部位でも同じで、均一な発熱分布を得られるようになっている。
【0059】
なお、本実施の形態では給電電極1a,1bと接続電極2a,2b、および幅広接続電極9a,9bは同一の版で形成されているが、電流容量によっては別々の版で形成することも考えられる。
【0060】
なお、図3のごとく接続電極2a,2bおよび広幅接続電極9a,9bからさらに分岐
電極10a,10b分岐形成することもできる。
【0061】
分岐電極10a,10bを形成することで、高分子抵抗体6と接触している電極3を分岐電極10a,10bのみとすることができ、電流容量を制限することができる。
【0062】
これにより高分子抵抗体6や分岐電極10a,10bが何らかの外力で断線したとしても電力集中やスパークが起こりにくくなる構成となっている。
【0063】
このような構成の場合でも幅広接続電極部9a,9bを設けることができ、本発明の効果を得ることができる。
【0064】
なお、実施の形態1のごとく重複電極5a,5bを幅広接続電極部9a,9bにさらに設けてももちろん良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、給電電極から延伸する接続電極の根元付近の抵抗値を効果的に低減させることができるので、設計抵抗値通りの面状発熱体を得ることができ、さらに高分子抵抗体に設計意図する電圧を印加できる構成となるため良好な発熱分布を得ることができる。そのため、比較的広幅でかつ長尺な面状発熱体である堀座卓などの大面積を要する暖房商品に特に有用である。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b 給電電極
2a,2b 接続電極
3 電極
4 電気絶縁性基材
5a,5b 重複電極部
6 高分子抵抗体
9a,9b 広幅電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材上に印刷により形成され、対向するように配設した対となる給電電極、それぞれの給電電極から交互に対向する給電電極に向かって配設した櫛形形状の接続電極からなる電極と、前記電極に重ねて印刷形成され、前記電極より給電されて発熱する高分子抵抗体とを備え、前記接続電極は前記給電電極から延伸する根元部側に電気抵抗を低減する手段を設けた面状発熱体。
【請求項2】
電気抵抗低減手段は、電極を2回以上重ねて印刷して構成した請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
接続電極と高分子抵抗体の境界線上には電極を2回以上重ねて印刷しない構成とした請求項2記載の面状発熱体。
【請求項4】
接続電極の幅を給電電極側が大となるように形成して電気抵抗低減手段をとした請求項1〜3いずれか1項記載の面状発熱体。
【請求項5】
電気抵抗低減手段は、給電電極側から略半分までの領域に特定した請求項1〜4いずれか1項記載の面状発熱体。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−14269(P2011−14269A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154970(P2009−154970)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】