説明

【課題】フリーアドレスオフィスの執務者が必要なものを好適に自席に運搬し、退席時にも速やかに撤収し得ることにより、執務の遂行を好適に促し得る鞄を提供する。
【解決手段】鞄は支持基部C3と前記座C5との間に荷物載置面C75が設けられ、その荷物載置面C75と前記座C5の裏面との間に本発明に係る鞄1を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間C77が形成されている椅子に好適に適用される。具体的には本発明に係る鞄1は、平板状に形成された鞄本体3と、当該鞄本体3の両端に設けられた対をなす把手5と、前記鞄本体3の上面側に設けられ、持ち主を表示するための持ち主情報を表示する表示部7とを具備していることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーアドレスタイプのオフィスで好適に使用され得る鞄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリーアドレス形式のオフィスレイアウトを採用したフリーアドレスオフィス(例えば、下記非特許文献を参照)は、1980年代後半に始まったとされる。フリーアドレスオフィスでは、執務者個々人の自席を固定せず、誰でも自由に利用できるデスク及び椅子を配したカフェスタイルのフロアを構築する。
【0003】
そしてこのようなフリーアドレスオフィスの場合、執務者は、必要書類やパーソナルコンピュータ等を予め勤務者に割り当てられたロッカー等から取り出し、それらをオフィス内に持参し、空いている席に着いて仕事をする。
【0004】
つまり、このよう態様を想定すると、執務者がロッカー等から必要書類やパーソナルコンピュータ等を持ち出す場合は、これらを確実に執務者の近辺に位置付けることを重視すれば、特許文献1のような態様の鞄を採用することが考えられる。
【0005】
また他方、特許文献2に開示されている通り、座の下に荷物を載置し得る空間を設けた椅子も提案されており、着座者は鞄をこのような空間へ収容しておく場合も十分に考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−104093号公報
【特許文献2】特開2005−73789号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】嶋村仁志、山田哲弥、杉山武、岩田美成、「研究執務スペースのフリーアドレス化に関する研究その1:折畳移動机を用いたフリーアドレス・オフィスのユーザー満足度評価による効果分析」、日本建築学会計画系論文集、社団法人日本建築学会、1998年7月30日、No.509、pp.129−134
【非特許文献2】岩切一幸、毛利一平、外山みどり、野瀬かおり、落合孝則、城内博、斉藤進、「フリーアドレス形式オフィスレイアウトでのVDT作業者の姿勢および身体的疲労感」、産業衛生学雑誌、社団法人日本産業衛生学会、2006年1月20日、Vol.48、pp.7−14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加えて、フリーアドレスオフィスでは持ち込んだ荷物をデスク近辺に収納し直すということをせずに、退席時には荷物を全て自席から毎回持ち出すことを考えると、執務者が持ち運ぶ鞄は、持ち込んだ鞄は速やかに着座者の近辺に位置付け得るのみならず、退席を行なう動作時には速やかに持ち出すことができるものが要求されるものと考えられる。
【0009】
本発明は、このような点に着目したものであり、フリーアドレスオフィスの執務者が必要なものを好適に自席まで速やかに運搬し、退席時にも速やかに撤収し得ることにより、執務の遂行を好適に促し得る鞄を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係る鞄は、平板状に形成された鞄本体と、当該鞄本体の両端に設けられた対をなす把手と、前記鞄本体の上面側に設けられ、持ち主を表示するための持ち主情報を表示する表示部とを具備していることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、両端に対をなす把手が設けられているので、椅子の座の下方に設けられている棚板から、取り出す方向を意識することなく簡便な出し入れを実現することが可能となる。また表示部によって持ち主情報が常に表示されることとなるので、棚板に載置されているときでも表示部によって持ち主情報を表示することにより、オフィスの他のメンバーが誤って着座することを有効に回避するとともに、着座者が着座していることを容易に認識させることができる。
【0012】
そして着座者が鞄を取り出し易いものとするための望ましい構成としては、把手を、前記鞄本体の両端から突出させて設けた保形性を有する突出把手として、当該突出把手を常に突出させておけば、着座者は垂れ下がった把手を手探りで探るような動作をすることなく、目視をしない状態でも鞄を取り出し易いものとなる。
【0013】
またオフィスで使用する書類や、ノート型パーソナルコンピュータを好適に収容し得るものとするためには、鞄本体を、平面視矩形状としておくことが好ましい。
【0014】
持ち主によって表示部の表示を容易に変更、設定し得るものとするためには、表示部を、持ち主情報を記したカードを視認可能に収容し得るカード収容部としておくことが望ましい。
【0015】
そして、現実的に適用され易い収容部の具体的な態様としては、カード収容部が名刺を収容し得るものを挙げることができる。
【0016】
そして、着座者が頻繁に鞄の出し入れを行なう際にも繰り返し容易にし得るためには、鞄本体の下面側の表面を一枚の可撓性を有する素材により構成しておくことが望ましい。ここで可撓性を有する素材としては、天然の布地や合成繊維或いは皮革類など、既存の鞄に適用しうる種々の素材を適用することができる。
【0017】
そして、鞄本体を開閉するための開閉部が鞄自体の出し入れに干渉しないようにするためには、当該鞄本体が、側方にのみ開口する開閉部を側縁に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、両端に対をなす把手が設けられているので、椅子の座の下方に設けられている棚板から、取り出す方向を意識することなく簡便な出し入れを実現することが可能となる。また表示部によって持ち主情報が常に表示されることとなるので、棚板に載置されているときでも表示部によって持ち主情報を表示することにより、オフィスの他のメンバーが誤って着座することを有効に回避するとともに、着座者が着座していることを容易に認識させることができる鞄を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る鞄の使用態様を示す斜視図。
【図2】同使用態様を示す平面図。
【図3】同実施形態に係る鞄の斜視図。
【図4】同実施形態に係る鞄の平面図。
【図5】同実施形態に係る鞄の使用態様を示す正面図。
【図6】同使用態様を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図6を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る鞄1は、図1に示すように、フリーアドレスオフィスにおいて有効に適し得る椅子Cとともに使用されるものである。換言すれば本実施形態に係る鞄1は、当該椅子Cとともに、例えば椅子ユニットといったものを構成し得るものとなっている。
【0022】
先ず、椅子Cの各構成要素について説明する。
【0023】
この椅子は、図1及び図2に示すように、脚体C1と、この脚体C1により回転可能に支持された支持基部C3と、この支持基部C3に支持された座C5及び背凭れC7とを具備してなる。
【0024】
脚体C1は、同図に示すように、キャスタC9を有した脚羽根タイプの脚ベースC11と、この脚ベースC11の中心部に立設した脚支柱C13とを具備してなる。前記脚支柱C13は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱C13の上端部に前記支持基部C3が取り付けられている。
【0025】
支持基部C3は、同図に示すように、後方に向かって漸次幅狭となる平面視ほぼ三角形状をなすものであり、前記脚体C1のガススプリングを制御するための脚操作レバーC3dが設けられている。
【0026】
座C5は、同図に示すように、左右対をなす座フレームC15と、これら両座フレームC15間に張設された可撓性のある座張地C17と、この座張地C17との間に空間19を形成しつつ前記両座フレームC15の前端部間に介設されその介設状態で前記座張地C17に張力を付与する前横梁C21とを具備してなる。
【0027】
背凭れC7は、同図に示すように、左右対をなす背フレームC23と、これら両背フレームC23間に張設された可撓性のある背張地C25と、この背張地C25との間に空間を形成しつつ前記両背フレームC23の上部間に介設されその介設状態で前記背張地C25に張力を付与する上横梁C29と、前記背張地C25との間に空間を形成しつつ前記両背フレームC23の下部間に介設されその介設状態で前記背張地C25に張力を付与する下横梁C33とを具備してなる。
【0028】
また、この実施形態にかかる椅子Cは、肘掛けC89を有している。この肘掛けC89は、図1及び図2に示すように、前記下横梁C33と一体に連続形成されたものであり、前記下横梁C33の外面と前記肘掛けC89の外面とが滑らかに一体化されている。
【0029】
前記座フレームC15と前記背フレームC23とは、図1及び図2示すように、連続したものであり、前記座C5と背凭れC7とが一体となるように構成されている。すなわち、左の座フレームC15と左の背フレームC23、及び右の座フレームC15と右の背フレームC23とはそれぞれ一本の連続した金属素材を一体に成形することにより一体に構成されている。
【0030】
前記座張地C17及び前記背張地C25は、図1及び図2に示すように、合成樹脂製の糸を織成または編成してなるメッシュ状の張地素材を所定形状に裁断することにより一体に構成されており、着座面である表面側から裏面側に存在するものを視認することができるような透光性を備えている。
【0031】
このようにしてなる本実施形態にかかる椅子Cは、同図に示すように、座C5と背凭れC7とが一体に構成されており、これら座C5及び背凭れC7が前記支持基部C3に一体に設けられた前横梁C21によって片持ち支持されている。そして、この支持基部C3と前記座C5との間に荷物載置面C75が設けられ、その荷物載置面C75と前記座C5の裏面との間に本発明に係る鞄1を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間C77が形成されている。
【0032】
前記荷物載置面C75は、同図に示すように、平面視においてその外縁C75aの一部が前記支持基部C3の外縁よりも外側に位置する延出部C79を備えており、その延出部C79に埃排除手段C81が設けられている。すなわち、この実施形態における荷物載置面C75は、前横梁C21の平坦部の上面と支持基部C3の上に着脱可能に装着された棚板C83の上面により形成されている。換言すれば、前記支持基部C3の上面を覆い隠すようにして前記棚板C83が設けられており、その棚板C83に前記荷物載置面C75の主要部が形成されている。
【0033】
しかして本実施形態に係る鞄1は、上述した椅子Cとともに椅子ユニットとして使用した場合、荷物載置面C75に対し好適に載せ置く事ができるとともに、着座者が側方から容易に出し入れがし易いよう、以下の構成を具備しているものである。
【0034】
すなわち本実施形態に係る鞄1は、平板状に形成された鞄本体3と、当該鞄本体3の両端に設けられた対をなす把手5と、前記鞄本体3の上面側に設けられ、持ち主を表示するための持ち主情報を表示する表示部7とを具備していることを特徴とするものである。
【0035】
鞄本体3は、図3又は図4に示すように、側端面31及び前後端面32によって平面視矩形状をなした可撓性を有する例えば布状のものであり、側端面31に設けられた対をなす把手5を、上面1aには表示部7を例えば縫いつけにより取り付けるとともに、一方の前後端面32の略全長にわたって開閉部たるファスナ9を設けている。そして下面1b側は一枚の布地のみによって構成している。そして本実施形態では、鞄本体3の長手寸法、すなわち前後端面32の寸法は、上記棚板C83の巾寸法の略対応させて設けている。
【0036】
把手5は、同図に示すように鞄本体3の側端面31の略全長に亘って取り付けられたものであり、側端面31の両端を縫いつけにより取り付けられた被取付部51と、当該被取付部51から突出させた突出部52と、当該突出部52間に設けられた把持部53とを有してなる。そして当該把手5は鞄本体3を平面に寝かせた状態であっても側方へ確実に突出し得る程度の強度を、特に突出部52に持たせた、本発明に係る突出把手5としている。
【0037】
表示部7は、鞄1の上面1aにおける鞄本体3の隅部近傍に設けられた矩形状のものであり、矩形枠状に形成された布材または人工皮革材からなり上面1aに平面視コの字状に縫いつけられることによって取り付けられた取付枠部71と、コの字状に縫いつけられた取付枠部71と鞄本体3との間のスリット状の部分を、名刺の長辺側が挿通可能なように開口させて設けた挿入部72と、取付枠部71によって枠状に開口することによって名刺に記載された持ち主に係る情報を視認可能に設けた開口部73と、当該開口部73に位置付けられた名刺を保護するために予め取付枠部71に取り付けられた、例えば透明のセルロイド板からなる透明板74とを具備している。
【0038】
ここで、本実施形態に係る鞄1は、側方へ突出させた把手5を備えることにより、図5に示すとおり、着座者がそのまま座の下方へ手を伸ばせば、着座者は執務中に着座した状態で、いつでも任意の方向へ鞄1を取り出し得るものとなっている。
【0039】
加えて本実施形態に係る鞄1は、鞄本体3に取り付けた表示部7を、持ち主情報を記したカード、すなわち名刺を視認可能に収容し得るカード収容部としているので、当該表示部7に名刺を挿入した状態で棚板C83上に鞄1を置いておけば、図6に示すように、着座者以外のオフィスのメンバーは椅子Cに着座している者を、座張地C17を介して確実に視認し得るものとなっている。
【0040】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る鞄1は、両端に対をなす把手5が設けられているので、椅子Cの座の下方に設けられている棚板C83から、取り出す方向を意識することなく簡便な出し入れを実現することが可能となっている。また表示部7によって持ち主情報が常に表示されることとなるので、棚板C83に載置されているときでも表示部7によって持ち主情報を表示することにより、オフィスの他のメンバーが誤って着座することを有効に回避するとともに、着座者が着座していることを容易に認識させ得るものとなっている。すなわち、上述の椅子Cとともに椅子Cユニットとして使用することによって、フリーアドレスオフィスにおけるスペースを有効に利用し得るのみならず、常に着座者の着座位置が変わる状況にあっても、他のメンバーが間違うことなく着座者の着座位置を特定し得るものとなっている。
【0041】
そして着座者が鞄1を取り出し易いものとするための望ましい構成として本実施形態では、把手5を、前記鞄本体3の両端から突出させて設けた保形性を有する突出把手5として、当該突出把手5を常に突出させておけば、着座者は垂れ下がった把手5を手探りで探るような動作をすることなく、目視をしない状態でも鞄1を容易に取り出し易いものとなっている。
【0042】
またオフィスで使用する書類や、ノート型パーソナルコンピュータを好適に収容し得るものとするために本実施形態では、鞄本体3を、平面視矩形状としている。
【0043】
持ち主によって表示部7の表示を容易に変更、設定し得るものとするために本実施形態では、表示部7を、持ち主情報を記したカード、すなわち名刺を視認可能に収容し得るカード収容部としている。そうすることにより、鞄1の持ち主の変更等に好適に適用し得るとともに、通常執務者が携帯していると思われる名刺を入れておくのみで、本発明に係る表示部7としての効果を奏し得るものとなっている。
【0044】
そして、着座者が頻繁に鞄1の出し入れを行なう際にも繰り返し容易にし得るために本実施形態では、鞄本体3の下面1b側の表面を一枚の可撓性を有する素材により構成し、荷物載置面C75上をスムーズに移動させ得るものとなっている。
【0045】
又勿論、鞄本体3を開閉するための開閉部が椅子Cの荷物載置面c75上の鞄1自体の出し入れに干渉しないようにするために本実施形態では、当該鞄本体3が、側方にのみ開口する開閉部として前後端面32に設けたファスナ9を構成している。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では一方の前後面のみにファスナを設けた態様を開示したが、勿論、両方の前後面、或いは上面にファスナ、或いはふぁる内外の開閉手段を設けたものであってもよい。また上面に別途ポケットを設けたり把手を硬質樹脂製のものとしたりする等、鞄本体や把手の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0048】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…鞄
3…鞄本体
5…把手
52…突出部。
【0050】
7…表示部
9…開閉部(ファスナ)
N…カード(名刺)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成された鞄本体と、
当該鞄本体の両端に設けられた対をなす把手と、
前記鞄本体の上面側に設けられ、持ち主を表示するための持ち主情報を表示する表示部とを具備していることを特徴とする鞄。
【請求項2】
前記把手を、前記鞄本体の両端から突出させて設けた保形性を有する突出把手としている請求項1記載の鞄。
【請求項3】
前記鞄本体を、平面視矩形状としている請求項1又は2記載の鞄。
【請求項4】
前記表示部を、前記持ち主情報を記したカードを視認可能に収容し得るカード収容部である請求項1、2又は3記載の鞄。
【請求項5】
前記カード収容部が名刺を収容し得るものである請求項4記載の鞄。
【請求項6】
前記鞄本体の下面側の表面を一枚の可撓性を有する素材により構成している請求項1、2、3、4又は5記載の鞄。
【請求項7】
前記鞄本体が、側方にのみ開口する開閉部を側縁に設けている請求項1、2、3、4、5又は6記載の鞄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78538(P2011−78538A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232781(P2009−232781)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】