説明

音データ生成装置および方向センシング発音楽器

【課題】動きに対応して多様な音を生成可能とする音データ生成装置および方向センシング発音楽器を提供することを目的とする。
【解決手段】3軸の加速度センサが内蔵されたセンサがユーザにより動かされると、センサにより該動きの加速度が軸ごとに特定される。加速度の大きさが極大となったタイミングで、最も大きな加速度で動いた方向(軸)および該軸における移動の向きが特定され、音階名称対応テーブルにおいて該特定内容と対応付けられた音階の名称に対応する波形データが読み出され発音がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動きに基づいて音を発するための音データ生成装置および方向センシング発音楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器には、その発音の仕組みに応じた操作方法がある。例えば、ピアノでは、鍵が指で押下されると、所定のメカニズムによりハンマが弦を打撃し音を発する。その場合、押鍵の速度によりハンマの打撃の速度が制御され、生じる音の大きさや音色が変わる。また、リコーダーでは、管に息が吹き込まれると、空気が振動し音を発する。その場合、指で塞がれた音孔の組み合わせや、吹き込まれる息の強さなどにより空気の振動の態様が変わり、異なる音階や音色の音が生じる。
【0003】
このような古典的な楽器に対し、操作子の動き自体に応じて音が生成される楽器が近年提案されている。特許文献1においては、ユーザにより動作センサが動かされると、動作のパターンを認識し、認識したパターンに応じた音が生成されるシステムについて記載されている。
【特許文献1】特開2001−195059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、動作センサには1軸の加速度センサが設けられていることから、動作センサの1次元方向についての動きしか検知されない。従って、動作センサの動かし方を多様に制御しても、生成される音の音色や音量などにあまり反映されず、楽器として十分に楽しむことはできなかった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、動きに対応して多様な音階の音を生成可能とする音データ生成装置および方向センシング発音楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音データ生成装置は、複数の軸についての正の向きおよび負の向きの運動を検出するセンサと、各軸の各向きと音階を構成する音とを対応付けるテーブルを記憶する記憶手段と、前記センサにより検出された運動に基づいて各軸の各向きに対応する音を前記記憶手段内のテーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成する音指定情報生成手段とを有することを特徴とする。
【0007】
上記の構成において、前記センサは、各軸方向の加速度を検出し、検出結果を表す加速度データを生成する加速度センサであり、前記音指定情報生成手段は、前記センサにより生成された加速度データに基づいて、前記複数の軸から特定の軸および該特定された軸における向きを特定し、該特定内容と対応付けられた音を前記テーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成しても良い。その場合、前記音指定情報生成手段は、前記センサにより検出された加速度の大きさが極大となる時刻に前記音指定情報を出力しても良い。なお、前記音指定情報生成手段は、前記センサにより生成された加速度データから、加速度の絶対値が最大である軸および該特定された軸における加速度の向きを特定しても良い。
【0008】
本発明に係る音データ生成装置は、上記の構成において、前記テーブルは、各軸の各向きとペンタトニックスケールを構成する音とを対応付けても良い。
【0009】
本発明に係る音データ生成装置は、複数の回転軸の周りの正の向きおよび負の向きの回転運動を検出するセンサと、前記各回転軸の各向きの回転運動と音階を構成する音とを対応付けるテーブルを記憶する記憶手段と、前記センサにより検出された回転運動に基づいて各軸の各向きの回転運動に対応する音を前記記憶手段内のテーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成する音指定情報生成手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る方向センシング発音楽器は、上記のいずれかに記載の音データ生成装置と、音階を表す音のデータを記憶する第2の記憶手段と、前記音指定情報により指定された音に対応する音のデータを前記第2の記憶手段から読み出し、該読出した音のデータに基づいて発音する発音手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る音データ生成装置および方向センシング発音楽器によれば、動きに対応して多様な音階の音を生成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施形態の説明に入る前に、「ペンタトニックスケール(五音音階)」について説明する。ペンタトニックスケールとは、長音階(ドレミファソラシド)から「ファ」と「シ」を抜いた音階、すなわち、ドレミソラからなる音階である。ペンタトニックスケールを用いれば、どのような音の順序で発音しても調子はずれにならず、終わりのない流れるような音楽が奏でられることが知られている。
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A;構成)
本発明に係る方向センシング発音楽器1の構成について説明する。図1に示すように、方向センシング発音楽器1は、本体2とセンサ3の組み合わせで構成される。
【0014】
(A−1;センサ3の構成)
図2は、センサ3の外観を示す。図示するように、センサ3の筐体3aは略直方体の形状であり、リストバンド3bにより手首に巻き付けられるようになっている。
センサ3の内部構成を、図3を参照して説明する。センサ3において、制御部30と加速度センサ31と送信部32とは、バスで接続されており、それらの構成は図2に示す筐体3aに収められている。
【0015】
加速度センサ31は、3軸の加速度センサである。すなわち、加速度センサ31には、軸方向の加速度を検出する3つのセンサ(以下、各センサをSx、Sy、Szと呼ぶ)が含まれており、各センサの軸が図2に示すx、y、z軸方向となるように設けられている。各センサSx、Sy、Szは、各時刻において、図2に示したx、y、z軸の方向の加速度(それぞれ、αx、αy、αzと表す)を検出し、その加速度を表す数値データを生成・出力する。以下、該加速度を示す数値データを「加速度データ」と呼び、以下では、具体的にデータの内容を示す場合には、x、y、z軸それぞれの方向の加速度の値を用いて、(αx、αy、αz)のように表す。
【0016】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを含む。CPUは、RAMをワーキングエリアとして、ROMに格納された制御プログラムを実行する。
送信部32は、上記加速度センサ31が生成した加速度データを、所定時間(本実施形態では5ミリ秒)ごとに、電波などの無線信号として本体2に出力する。
【0017】
(A−2;本体2の構成)
次に、本体2の構成を、図4を参照して説明する。本体2において、制御部20と受信部21と音源22と出力部23とは、バスで接続されており、出力部23にはスピーカ24が接続されている。
【0018】
受信部21は、センサ3から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号が表すデータを制御部20に出力する。
制御部20は、CPUとROMとRAMとを含む。CPUは、RAMをワーキングエリアとして、ROMに格納された制御プログラムを実行する。制御部20は、センサ3から受信する加速度データに基づいて音を発音させるための処理を行う。
【0019】
ROMには、制御プログラムに加え、「音階名称対応テーブル」が格納されている。音階名称対応テーブルとは、上記センサ3が動かされた軸方向及びその向きと、音階の名称とを対応付けるテーブルである。
【0020】
図5に、音階名称対応テーブルの一例を示す。同図に示すように、音階名称対応テーブルにおいては、センサ3が動かされた軸方向(軸x、y、z)および、該軸方向の向き(正または負)の組み合わせに対して音階の名称が1つ対応付けられている。各音階は、ペンタトニックスケールに含まれる5つの音階のうちの1つの音にそれぞれ対応する。なお、z軸方向の正の向きに対応付けられている「レ」は、z軸方向の負の向きに対応付けられている「レ」よりも1オクターブ高い音である。
【0021】
音源22は、上述したペンタトニックスケールに対応する各音について、所定時間長の音を表す波形データを記憶する。
出力部23は、D/Aコンバータとアンプとを有する。D/Aコンバータは、受取った波形データをアナログの音信号へ変換する。アンプは、該音信号の振幅を調整する。
スピーカ24は、出力部23から供給される音信号に基づき、放音する。
【0022】
(B;動作)
次に、上記の構成を有する方向センシング発音楽器1の動作について説明する。
センサ3は、リストバンド3bにより筐体3aがユーザの手首に装着される。ユーザは、手首を回したり振ったりして、センサ3を3次元的に所望の態様で動かす。
【0023】
(B−1;制御部30(センサ3)の処理内容)
センサ3の処理内容を説明する。センサ3がユーザにより動かされると、加速度センサ31は、各軸方向の加速度を表す加速度データを逐次生成する。該加速度データは、送信部32を介して無線信号として本体2に送信される。なお、加速度データは、5ミリ秒ごとにその時点での値が書き込まれ送信される。
【0024】
例えば、センサ3の筐体3aが、ある時刻(以下、時刻T1)において、単位ベクトルu(本実施形態では、u=(3/13、−4/13、12/13))の方向に大きさ|α|(本実施形態では、|α|=13)の加速度で動かされたとする。その場合、加速度センサ31の各軸のセンサSx、Sy、Szにより検出される加速度は、それぞれαx=3、αy=−4、αz=12となる。加速度データには、これら3軸方向の加速度の値が書き込まれる。
【0025】
(B−2;制御部20(本体2)の処理内容)
次に、本体2の処理内容を、図6に示すフローチャートに従って説明する。本体2の受信部21は、センサ3から加速度データを受信し、制御部20に出力する。ステップSA10において、制御部20は加速度データを受信する。制御部20は、受信した加速度データをRAMに書き込むと共に、以下の処理を実行する。
【0026】
メディアンフィルタ処理(ステップSA20)
制御部20は、受取った加速度データの各軸ごとのデータについて以下の処理を行う。制御部20は、各時刻(本実施形態では5ミリ秒ごと)のデータにおいて隣接する前後の所定長の区間(例えば5つのデータ)における加速度を求め、その加速度を小さい順に並べ、メディアン(中央の値)をその時刻の加速度とする。本処理がなされることにより、各軸の加速度の値が、時間的に滑らかに変化するように加工される。
【0027】
DCオフセット処理(ステップSA30)
制御部30は、各軸ごとの加速度データから、直流成分(DC)を取り除くDCオフセット処理を施す。加速度センサ31には定常的に重力が働いており、加速度センサ31が生成する加速度データには、該重力に由来する加速度成分が直流成分として含まれている。
方向センシング発音楽器1は、センサ3に働く加速度のうち、センサ3がユーザにより動かされたことに由来する加速度成分のみに基づいて音を発することを意図していることから、このように重力加速度による加速度成分を取り除く処理を行う。
【0028】
ローパスフィルタ(以下、LPF)処理(ステップSA40)
制御部20は、各軸ごとの加速度データを、LPF(所定の周波数以下の成分のみを通し、高周波数成分を除去するフィルタ)により処理する。該処理により、各軸ごとの加速度データに含まれるノイズ成分を除去することができる。
【0029】
以上のステップSA20ないしステップSA40の処理は、加速度データについて各軸ごとに処理を行い、加速度データを加工する処理である。以下のステップSA50以降では、上記処理により加工した加速度データについて、各時刻ごとに処理を行う。
【0030】
ピーク検出処理(ステップSA50)
制御部20は、センサ3に働く加速度の大きさ(絶対値)が極大となる時刻を特定する。具体的には、制御部20は、各時刻におけるセンサ3の加速度αの大きさを、以下の式に従って算出する。
|α|=(αx2+αy2+αz21/2
【0031】
制御部20は、順次算出されるセンサ3の加速度の大きさから、加速度が極大となる時刻を特定する。具体的には、ステップSA50において生成された加速度の大きさの経時的変化を表す曲線において、各時刻における傾き(微分値)が正から負に転ずる時刻を特定する。以下では、該特定された時刻(以下、ピーク時刻)のそれぞれについて、ステップSA60ないしステップSA90の処理を行う。
【0032】
制御部20は、6軸分離処理を行う。6軸分離処理は、軸方向チェック処理と軸方向の向きチェック処理に大別される。
【0033】
軸方向チェック処理(ステップSA60)
制御部20は、上記ステップSA50において特定された各ピーク時刻において、いずれの軸方向の加速度の大きさが最大であるか、すなわちセンサ3がおよそいずれの軸方向で移動しているかを特定する。
【0034】
具体的には、制御部20は、ピーク時刻における各軸方向の加速度の絶対値を算出する。そして、算出結果が最大となる軸方向を特定する。本実施形態においては、上記時刻T1において、x、y、z軸の方向の加速度は、それぞれαx=3、αy=−4、αz=12であるため、各軸についての算出結果(絶対値)は、|αx|=3、|αy|=4、|αz|=12となる。従って、時刻T1においては「z軸」が特定される。このことは、時刻T1において、センサ3はおよそz軸の方向で加速していることを示す。
【0035】
軸方向の向きチェック処理(ステップSA70)
制御部20は、上記軸方向チェック処理(ステップSA60)において特定された軸方向の加速度の正負(加速の向き)を判定し、加速度の値が正である場合は軸の正の向き、負である場合には軸の負の向きに加速していると特定する。上記の例においては、z軸における加速度(αz=12)は正の値であるため、z軸において「正の向き」が特定される。
以上のように、6軸分離処理が各ピーク時刻について実行され、軸方向およびその向きが特定される。
【0036】
ステップSA80において、制御部20は、ROMに書き込まれた音階名称対応テーブルを参照し、各ピーク時刻において特定された軸方向およびその向きと対応付けられた音階の名称を選択する。上記の例においては、z軸方向の正の向きと対応付けられた音階の名称として、階名「レ」を選択する。制御部20は、選択された音階に対応する波形データを音源22から読み出し、出力部23に出力する。
【0037】
ステップSA90において、読み出された波形データに基づく放音が行われる。具体的には、音源22から読み出された波形データは、出力部23において、D/Aコンバータによりアナログの音信号へ変換され、アンプにより該音信号の振幅が調整される。そして、該音信号は、出力部23から供給される音信号に基づきスピーカ24から放音される。なお、上述したようにROMに格納された波形データは所定時間長の音を表す波形データであるため、読み出された波形データに基づいて上記所定時間長の発音がなされる。
以上で、本体2における処理は終了する。
【0038】
(B−3;動作のまとめ)
以上に説明したように、方向センシング発音楽器1において、センサ3には3軸の加速度センサが設けられており、各軸方向でそれぞれ正の向きおよび負の向きの動きが検知されることから、計6通りの動きが検知される。そして、該6通りの動きに対して、それぞれ異なる音が割り当てられている。その結果、センサ3が3次元で動かされると、該動きに応じて6通りの音が発音される。
6通りの音を用いれば、多様な旋律を奏でることが可能である。更には、該6通りの音は、ペンタトニックスケールを構成する音の組み合わせであることから、センサ3がどのように動かされたとしても、生成される音の旋律は聴いて心地よい音のつながりとなる。
【0039】
(C;変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように種々の態様で実施することができる。なお、以下に説明する種々の実施形態を、適宜組み合わせて実施することも可能である。
【0040】
(1)上記実施形態においては、センサ3に、3軸のセンサ(センサSx、Sy、Sz)が互いに直交して設けられた加速度センサ31を設ける場合について説明したが、3軸のセンサSx、Sy、Szを互いに直交させずに設けても良い。また、設けられる軸の数は、3軸ではなく2軸、および4軸以上でも良い。
例えば、上記実施形態におけるx−y平面において、12個の加速度センサを互いに15°ずつ角度をずらして設け、各センサの軸方向について正負の向きを判別することによりx−y平面において24方向の加速度を判別し、z軸方向と併せることにより計48方向の加速度を検出するようにしても良い。
なお、そのような場合、設定された軸の数や軸の設定方向に応じた数の波形データを音源22に格納することが可能である。音階名称対応テーブルにおいては、該格納された波形データが表す音階の名称と該設けられた軸の方向および向きとを対応付けておけば良い。
【0041】
(2)上記実施形態においては、方向センシング発音楽器1に、本体2とセンサ3が構造上分離して設けられている場合について説明した。しかし、本体2とセンサ3は単一の筐体に含まれていても良い。
その場合の方向センシング発音楽器5の構成を図7に示す。方向センシング発音楽器5は、制御部50と加速度センサ51と音源52と出力部53とスピーカ54とを有する。制御部50は、制御部20および制御部30の機能・構成を併せ有する。加速度センサ51と音源52と出力部53とスピーカ54とは、それぞれ加速度センサ31と音源22と出力部23とスピーカ24と同様の機能を有する。このように、方向センシング発音楽器5においては、本体2とセンサ3が有する構成を共通のバスに接続すると共に、送信部32および受信部21は設ける必要はない。
【0042】
(3)上記実施形態においては、方向センシング発音楽器1において、本体2にセンサ3が1つ設けられている場合について説明した。しかし、本体2に対してセンサ3を複数設けても良い。その場合、複数のセンサ3は、センサ3を互いに識別可能な識別子と共に加速度データを送信し、本体2は、各センサ3からの加速度データについて、それぞれ上述の実施形態と同様の処理を行い、それぞれについて読み出された波形データに基づいて発音しても良い。このようにすると、複数の音を同時に発音して和音を奏することが可能となる。
【0043】
(4)上記実施形態においては、軸方向チェック処理(ステップSA60)および軸方向の向きチェック処理(ステップSA70)により特定された軸方向および該軸方向の向きに基づいて、センサ3の運動状態を音と対応付ける場合について説明した。しかし、センサ3の運動状態を音に対応付けるためのパラメータは、軸方向および該軸方向の向きに限られるものではない。たとえば、以下の例のようにしても良い。
(例1)3次元空間をx=0、y=0、z=0の3つの平面で計8つの空間(以下、亜空間)に区切り、加速度データに基づいてセンサ3がいずれの亜空間の方向に向けて移動しているかを判定する。例えば、加速度データの各軸方向の成分(αx、αy、αz)について、正か負いずれであるかを判定し、その組み合わせから上記亜空間を特定する。ROMには8つの音階(例えば、長音階における「ド」から1オクターブ上の「ド」までの8つの音階)の音を表す波形データを書き込んでおくと共に、該8つの音階の名称と上記亜空間とを対応付ける音階名称対応テーブルを書き込んでおく。そして、センサ3が動かされると、該動きに基づいて生成された加速度データからいずれかの亜空間を特定し、音階名称対応テーブルにおいて該特定された亜空間に対応付けられた音階の音を表す波形データが読み出されるようにしても良い。図8には、その場合の音階名称対応テーブルを示す。例えば、センサ3が(3、2、−7)の加速度で動かされた場合、αx>0、αy>0、αz<0であることから、「レ」を表す波形データが読み出され、発音される。
【0044】
(例2)上記実施形態において、センサ3には加速度センサ31が設けられている場合について説明した。しかし、センサ3に設けられるセンサは加速度センサに限定されない。
例えば、上記実施形態の加速度センサ31に代えて、センサ3にジャイロを複数の(例えば3)軸方向に設けても良い。ジャイロとは、センサ3の回転速度を測定する装置である。ジャイロからは、時々刻々変化する回転速度が出力される。該回転速度から角度を計算し、該角度を足しあわせることにより最終的に回転した角度が算出可能である。このようなジャイロが複数の軸について設けられた場合、各回転軸について時計回り、反時計回りの回転を検出し、検出結果であるセンサ3の回転運動の状態を図5に示す音階名称対応テーブルに照らし合わせることにより6つの音を発音させることも可能である。
また、上記実施形態の加速度センサ31に代えて、3次元の動きを詳細に検出することが可能な以下のセンサ群を設けても良い。該センサ群には、例えばジャイロと加速度センサと磁気センサの組み合わせが可能である。加速度センサは、重力を検出するセンサである。該加速度センサは、センサ3が傾けられると重力を検出し、該重力に対応する信号を出力する。そこで、該加速度センサを2つ直交するように配置すると、水平面に対する傾斜角度を検出することが可能である。磁気センサは、方位磁石と同じように東西南北の方位を検出する。この場合、x軸、y軸、z軸の3次元方向のそれぞれに1つづつジャイロを配し、それとペアになるように、z軸方向に磁気センサ、x軸およびy軸方向に加速度センサを組み合わせる。そのように配されたセンサ群により出力される信号から、センサ3の運動を総合的に判断することにより、正確にセンサ3の運動を3次元的に検出することができる。音階名称対応テーブルには、上記センサ群により特定可能な運動状態と音階の名称とを対応付けておけば良い。
【0045】
(5)上記実施形態においては、ROMに6種類の音の波形データを格納しておく場合について説明した。しかし、そのような波形データの組みをROMに複数組み格納しておき、いずれかの組み合わせがユーザにより選択されるようにしても良い。その場合、各波形データの組みを、特定の楽器の音色を表す波形データの組み合わせとしておき、該組み合わせが選択されることにより、発音される音色(楽器)が選択されるようにしても良い。
また、音階名称対応テーブルにおいて、軸方向および軸方向の向きと音階の名称との対応関係をユーザにより適宜変更可能としても良い。
【0046】
(6)上記実施形態においては、音源22に格納された波形データは6種類であり、該6種類の波形データはペンタトニックスケールをなす場合について説明した。しかし、音の組み合わせはペンタトニックスケールに限られるものではなく、他の音の組み合わせでも良い。例えば、日本の民謡や演歌にみられるヨナ抜き音階の音などでもよいし、ユーザにより選択された任意の5つの音でも良い。また、複数の楽器の音が組み合わされていても良い。要はどのような音の波形データの組み合わせでも良い。
【0047】
(7)上記実施形態においては、同一の軸の正および負の向きに、互いに異なる音を割り当てる場合について説明した。しかし、軸の正および負の向きで、互いに同じ音を割り当てるようにしても良い。
【0048】
(8)上記実施形態においては、センサ3を例えば単振動させた場合、その振動の1周期には、加速度の大きさが極大となる時刻が2度訪れることから、2回発音がなされる。そこで、各軸の一方の向き(例えば正の向き)だけに音を割り当て、他方には割り当てないようにしても良い。そのようにすれば、同じようにセンサ3を単振動させた場合、その振動の1周期に1度だけ発音される。即ちセンサの運動の軸方向とその向きにおいて、発音させない運動の方向又はその向きを設定しても良い。
【0049】
(9)上記実施形態において、地磁気の方向を検出する地磁気センサをセンサ3に更に設け、加速度センサ31による加速度の検出結果に加え、地磁気センサによって特定されたセンサ3の方位(東西南北)に基づいて発音内容を定めるようにしても良い。例えば図9に示すように、各加速度センサ31の軸方向およびその向きと、上記地磁気センサにより検出されたセンサ3の方位との組み合わせに対して音階の名称を対応付けた音階名称対応テーブルを参照するようにしても良い。図9に示す音階名称対応テーブルによれば、北を向いてz軸方向の正の向きにセンサ3を動かした場合には「ミ」が発音されるが、東を向いて同様にz軸方向の正の向きにセンサ3を動かした場合には「レ」が発音される。即ち4つの方位(東西南北)毎に異なるペンタトニックの音の組みを設定してもよい。
【0050】
(10)上記実施形態においては、3軸方向の正負の向き(6方向)にペンタトニックスケールの5音(ドレミソラ)の組み合わせの音を割り当てる場合について説明した。しかし、全ての方向に対して音を割り当てるようにはせず、1または複数の方向に対しては、音ではなく各種の音響効果を割り当てるようにしても良い。例えば、6方向のうち5方向には、上記ペンタトニックスケールに含まれる5音をそれぞれ割り当てると共に、残りの1方向には、例えばエコー効果を割り当て、エコー効果が割り当てられた方向にセンサ3が加速された直後の所定時間に発音される音にはエコー効果が付与されるとの制御がなされても良い。エコー効果の他にも、音量を大きくする処理、発音される音を1オクターブ上げたり下げたりする処理など各種の音響効果を割り当てても良い。
【0051】
(11)上記実施形態においては、ピーク検出処理(ステップSA50)において特定されたピーク時刻においてのみ発音がなされる場合について説明した。しかし、ピーク時刻以外の時刻においても発音がなされるようにしても良い。例えば、ピーク時刻に代えて、所定時間おきに、その時点で加速度が最大である軸方向および該軸方向の向きを特定する処理(軸方向チェック処理および軸方向の向きチェック処理に相当)を行い、該処理において特定された軸方向および該軸方向の向きと対応付けられた音階に対応する波形データを読み出して発音させるようにしても良い。
また、加速度の大きさが所定の閾値を越える期間に継続して発音がなされるようにしても良い。その場合、ステップSA50のピーク検出処理に代えて、加速度の大きさが閾値を越えている期間を特定する処理を行えば良い。そして、ステップSA90においては、ステップSA50において特定された期間に継続的に発音処理を行うようにすれば良い。このようにした場合、発音時間はユーザがセンサ3の加速度を上記閾値を越えるように維持した時間により決まるため、よりユーザが所望する音へと近づけることができる。
【0052】
(12)上記実施形態においては、ピーク検出処理(ステップSA50)において、加速度の大きさが極大となる時刻をピーク時刻として特定し、該時刻に発音がなされる場合について説明した。しかし、極大となる時刻に代えて、加速度の大きさが極小となる時刻、0となる時刻などを、加速度の大きさが極大となるピーク時刻に代えて特定しても良い。
【0053】
(13)上記実施形態においては、図2に示すように、センサ3はリストバンド3bにより手首に装着可能であり、手首を動かすことによりセンサ3が操作される場合について説明した。しかし、センサ3の構造および操作方法は、上述の態様に限られるものではない。例えば、足首や靴などに装着できるように径の大きなバンドを設けたり、接着剤などで所望の位置に貼付できるようにしたりしても良い。
また、上記実施形態においては、人間の動きに応じて音が発音される場合について説明したが、人間とは異なる対象(動物や物)にセンサ3を取り付けるようにしても良い。例えば風鈴や暖簾にセンサ3を取り付けても良く、そのようにすれば、風鈴が風に揺れた場合やお客さんが暖簾をくぐった際に、毎回異なった組み合わせで音が生成されるといった使用法が可能である。
【0054】
(14)上記実施形態においては、無線信号によりセンサ3から本体2へ加速度データを送信する場合について説明したが、伝送ケーブルなどによりセンサ3と本体2を接続し、有線により送信しても良い。
【0055】
(15)上記実施形態においては、ステップSA20およびステップSA40において、各種のデータ処理を行う場合について説明した。それらの処理を行うのが好ましいが、行わないとしても良い。
【0056】
(16)上記実施形態においては、ピーク検出処理(ステップSA50)において、センサ3の加速度の大きさが極大となる時刻を特定する場合について説明した。その場合、加速度の大きさが極大となると共に、その極大値が所定のレベルを越えるとの条件も同時に満たす時刻を特定するようにしても良い。そのようにすれば、ユーザが発音させることを意識せずに、わずかにセンサ3が動いた場合にも発音されてしまうのを防ぐことが出来る。
【0057】
(17)上記実施形態において、加速度センサ31が検出した加速度の大きさ(絶対値)に応じて音量を調整するなどしても良い。その場合、例えば、加速度の大きさが大きいほど出力部23のアンプに高い増幅率が設定されるようにすれば良い。
【0058】
(18)上記実施形態においては、センサ3に格納された加速度センサ31の向きを基準として、センサ3がいずれの方向に移動したか検出する場合について説明した。しかし、以下のように、空間の向き(重力の向き)を基準としたセンサ3の絶対的な移動方向を検出するようにしても良い。例えば、上記ステップSA30のDCオフセット処理において、各軸における加速度から取り除かれた重力加速度の成分に基づいて、センサ3の方向を基準とした重力の方向を特定することができ、該特定された重力の方向とセンサ3の加速度の方向とを比較することにより、空間におけるセンサ3の絶対的な移動方向を特定し、該特定された移動方向に基づいて発音がなされるようにしても良い。
【0059】
(19)上記実施形態においては、本体2に出力部23およびスピーカ24が設けられており、センサ3の動きに応じて読み出された波形データが発音される場合について説明した。しかし、読み出された波形データをそのまま外部機器に出力するようにしても良い。その場合、外部機器との間でデータ通信を仲介する通信インタフェースを本体2に設けておけば良い。
また、上記実施形態においては、音を表すデータとして波形データを用いたが、波形データに代えてMIDIデータなどの音の種類を指定する音指定データをROMに格納しておき、該音指定データを読み出し外部機器に出力するようにしても良い。
【0060】
(20)上記実施形態においては、ステップSA20において、メディアンフィルタ処理を行う場合について説明した。しかし、メディアンフィルタ処理に代えて、移動平均処理を行っても良い。移動平均処理とは、ある時刻のデータを、該時刻の近傍に位置する所定数のデータの平均値で置き換えることにより、データを平滑化する処理である。上記実施形態においてこの方法を用いる場合には、例えば、所定時間(5ミリ秒)ごとのデータについて複数(例えば5つ)のデータの平均をとり、該平均値で中央の時刻のデータを置き換える処理を行っても良い。
【0061】
(21)上記実施形態においては、ステップSA90において、読み出された波形データに基づいて上記所定時間の発音がなされる場合について説明した。しかし、発音時間は、波形データとして書き込まれた音の時間長に限定されるものではない。波形データを繰り返し読み出して発音することで任意の時間長発音することが可能であるが、例えばピーク時刻に発音を開始して、次のピーク時刻まで発音が継続されるようにしても良い。
【0062】
(22)上記実施形態においては、センサ3に加速度センサ31を設け、該加速度センサ31により検出されたセンサ3の加速度に基づいて発音がなされる場合について説明したが、発音がセンサ3の加速度以外のパラメータに基づいてなされるようにしても良い。例えば、加速度センサ31により出力される加速度データを各軸方向の成分について時間積分することにより算出される速度を表す速度データや、該速度を更に時間積分することにより算出される変位を表す変位データに基づいて発音がなされるようにしても良い。例えば、速度を例にとると、ある時刻におけるセンサ3の速度の向き(速度成分の符号)に基づいて発音される音が選択されるようにしても良いし、速度の大きさが所定の閾値を越える期間に発音がなされるようにするなどしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】方向センシング発音楽器1の構成を示した図である。
【図2】センサ3の外観を示す図である。
【図3】方向センシング発音楽器1のセンサ3の構成を示す図である。
【図4】方向センシング発音楽器1の本体2の構成を示す図である。
【図5】実施形態に係る音階名称対応テーブルを示した図である。
【図6】本体2が行う処理の内容を表すフローチャートである。
【図7】方向センシング発音楽器5の構成を示すブロック図である。
【図8】変形例(4)の例1に係る音階名称対応テーブルの一例である。
【図9】変形例(9)に係る音階名称対応テーブルの一例である。
【符号の説明】
【0064】
1…方向センシング発音楽器、2…本体、3…センサ、5…方向センシング発音楽器、20…制御部、21…受信部、22…音源、23…出力部、24…スピーカ、30…制御部、31…加速度センサ、32…送信部、50…制御部、51…加速度センサ、52…音源、53…出力部、54…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸についての正の向きおよび負の向きの運動を検出するセンサと、
各軸の各向きと音階を構成する音とを対応付けるテーブルを記憶する記憶手段と、
前記センサにより検出された運動に基づいて各軸の各向きに対応する音を前記記憶手段内のテーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成する音指定情報生成手段と
を有することを特徴とする音データ生成装置。
【請求項2】
前記センサは、各軸方向の加速度を検出し、検出結果を表す加速度データを生成する加速度センサであり、
前記音指定情報生成手段は、前記センサにより生成された加速度データに基づいて、前記複数の軸から特定の軸および該特定された軸の向きを特定し、該特定内容と対応付けられた音を前記テーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の音データ生成装置。
【請求項3】
前記音指定情報生成手段は、前記センサにより検出された加速度の大きさが極大となる時刻に前記音指定情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の音データ生成装置。
【請求項4】
前記音指定情報生成手段は、前記センサにより生成された加速度データから、加速度の絶対値が最大である軸および該特定された軸における加速度の向きを特定することを特徴とする請求項2または3に記載の音データ生成装置。
【請求項5】
前記テーブルは、各軸の各向きとペンタトニックスケールを構成する音とを対応付けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の音データ生成装置。
【請求項6】
複数の回転軸の周りの正の向きおよび負の向きの回転運動を検出するセンサと、
前記各回転軸の各向きの回転運動と音階を構成する音とを対応付けるテーブルを記憶する記憶手段と、
前記センサにより検出された回転運動に基づいて各軸の各向きの回転運動に対応する音を前記記憶手段内のテーブルを参照して特定し、該特定された音を指定する音指定情報を生成する音指定情報生成手段と
を有することを特徴とする音データ生成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の音データ生成装置と、
音階を表す音のデータを記憶する第2の記憶手段と、
前記音指定情報により指定された音に対応する音のデータを前記第2の記憶手段から読み出し、該読出した音のデータに基づいて発音する発音手段と
を有することを特徴とする方向センシング発音楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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