説明

音楽生成装置、音楽生成方法、及びプログラム

【課題】娯楽性の高いゲーム制御技術を提供する。
【解決手段】音楽生成装置10は、音楽を構成する複数のメロディ要素の音楽データを保持するメロディデータ保持部60と、メロディ要素を組み合わせる際の条件及びメロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件とを保持する条件保持部62と、所定のタイミングで、トラックに対してメロディ要素を割り当てるか否かを判定し、割り当てると判定した場合は、条件保持部62に保持された条件に基づいてトラックに割り当てるメロディ要素を選択する要素選択部43と、選択されたメロディ要素を再生する際の属性を決定する属性決定部44と、選択されたメロディ要素の音楽データをメロディデータ保持部60から読み出し、属性決定部44により決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカ66に出力すべき音声信号を生成する音声生成部45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽生成技術に関し、とくに、音楽を構成する複数の要素を組み合わせて音楽を生成する音楽生成装置、音楽生成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームなどの背景音楽は、通常、一つの曲を繰り返し再生するか、同じ長さの複数のメロディを差し替えながら繰り返し再生することで実現される。
【特許文献1】特開2002−258842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、長時間ゲームをプレイするユーザは、同じ背景音楽が何度も繰り返し再生されると、飽きを感じてしまうことがある。ユーザに飽きを感じさせないために、ゲームをプレイするたびに異なる音楽を生成する技術が求められる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、より娯楽性の高い音楽生成技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、音楽生成装置に関する。この音楽生成装置は、音楽を構成する複数のメロディ要素の音楽データを保持するメロディデータ保持部と、前記メロディデータ保持部に保持されたメロディ要素を組み合わせる際の条件と、前記メロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件とを保持する条件保持部と、所定のタイミングで、複数のトラックのうちメロディ要素が割り当てられていないトラックに対して前記メロディ要素を割り当てるか否かを判定し、割り当てると判定した場合は、前記条件保持部に保持された前記メロディ要素を組み合わせる際の条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択する要素選択部と、前記条件保持部を参照して、選択されたメロディ要素を再生する際の属性を決定する属性決定部と、選択されたメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部から読み出し、前記属性決定部により決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカに出力すべき音声信号を生成する音声生成部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より娯楽性の高い音楽生成技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態では、音楽を構成する複数のメロディ要素を用意しておき、それらを任意に組み合わせることにより、事実上無限の種類の音楽を生成する技術を提案する。本実施の形態では、メロディ要素を任意に組み合わせるだけでなく、それぞれのメロディ要素の再生タイミング、ボリューム、リバーブ、パンなどの属性を任意に調整して組み合わせることにより、より変化に富んだ斬新で深みのある音楽生成技術を実現する。
【0009】
図1は、実施の形態に係る音楽生成装置10の構成を示す。音楽生成装置10は、メモリ30、制御部40、メロディデータ保持部60、条件保持部62、及びスピーカ66を備える。これらの構成は、ハードウエアコンポーネントでいえば、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0010】
メロディデータ保持部60は、メロディ要素の音楽データを格納する。図2は、メロディデータ保持部60の内部データの例を示す。メロディデータ保持部60において、各メロディ要素の音楽データは、レターごと、フレーズごと、及び構成音ごとに分類されて格納されている。基本的には、レターは音楽の構成部分ごとに、フレーズはトラックごとに、設けられるが、異なるレターに属するメロディ要素を同じ構成部分に割り当ててもよいし、同じフレーズに属するメロディ要素を異なるトラックに割り当ててもよい。「オリジナルA1a」に属する複数のバリエーションは、メロディ要素を構成する構成音は同じで、リズムやオクターブなどを変更して編曲したものである。したがって、「オリジナルA1a」に属する複数のバリエーションは、同じ構成音グループに属する。音楽生成装置10は、これらのメロディ要素の音楽データを組み合わせて音楽を生成する。
【0011】
条件保持部62は、メロディ要素を組み合わせる際の条件と、メロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件を格納する。図3は、条件保持部62の内部データの例を示す。条件保持部62において、メロディ要素に関する条件は、生成する音楽の構成部分ごとに定義されている。例えば、「1A」部分は、ファイル名「1A1」のメロディ要素のみから構成され、「2A」部分では、トラック「1」に、「1A1」、「2A11」、「2A12」のいずれかが割り当てられ、トラック「2」に、「2A21」又は「2A22」が割り当てられ、トラック「3」とトラック「4」には、それぞれ「2A3」と「2A4」が割り当てられる。条件保持部62には、構成部分間の遷移条件も格納されている。例えば、「1A」において、ファイル名「1A1」のメロディ要素を1回再生すると「2A」に遷移し、「2A」において、2分間音楽を再生すると「B」へ遷移し、「B」において、2分間音楽を再生すると「1A」又は「2A」へ戻る。進行制御部42は、これらの条件に基づいて、音楽の進行を制御する。条件保持部62には、メロディ要素の排他条件も格納されている。例えば、あるフレーズに属するメロディ要素は、特定のフレーズに属するメロディ要素と同時には再生しないという条件が格納される。この排他条件は、要素選択部43がメロディ要素を選択する際に参照され適用される。
【0012】
条件保持部62には、トラック欄70、ファイル名欄71、発生率欄72、禁則事項欄73、ボリューム欄74、パン角度欄75、パン移動モード欄76、パン距離欄77、パン相対角度欄78、及びリバーブ欄79が設けられている。トラック欄70は、メロディ要素を割り当てるトラックの番号を格納する。本実施の形態では、8つのトラックが設けられており、最大で8つのメロディ要素を同時に再生することができる。ファイル名欄71は、メロディ要素の音楽データのファイル名を格納する。発生率欄72は、メロディ要素を割り当てる際の発生率を格納する。発生率が高いほど高い頻度でメロディ要素が割り当てられる。禁則事項欄73は、メロディ要素の選択の可否を判定するためのルールを格納する。ルールとして、例えば、「奇数小節で再生する」、「偶数小節で再生する」、「2拍目で再生する」、「拍頭で再生する」、「他の特定のメロディ要素と同時に再生しない」などのルールが格納されてもよい。要素選択部43は、これらの条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択する。
【0013】
ボリューム欄74は、メロディ要素を再生する際のボリュームの範囲を格納する。パン角度欄75は、メロディ要素の音楽データに含まれる各チャンネルの音源位置をパンさせる際の角度の範囲を格納する。パン移動モード欄76は、音源位置をパンさせる際の移動モードを格納する。パン距離欄77は、音源位置をパンさせる際の距離又は距離の範囲を格納する。パン相対角度欄78は、複数のチャンネルの音源位置をパンさせる際の音源位置間の相対角度又は相対角度の範囲を格納する。リバーブ欄79は、残響効果のレベル又はレベルの範囲を格納する。これらの属性は、属性決定部44により決定される。
【0014】
環境設定部41は、再生すべき音楽に関する情報を条件保持部62からメモリ30へ読み出す。環境設定部41は、条件保持部62から読み出した情報を参照して、音楽を構成する全てのメロディ要素のデータサイズを取得し、メロディ要素をデータサイズ順にソートして、データサイズの小さい方から所定のデータサイズ分のメロディ要素の音楽データをメモリ30へ読み込んで常駐させる。条件保持部62に各メロディ要素のデータサイズが格納されていない場合は、メロディデータ保持部60のファイルシステムなどから取得してもよいし、メロディデータ保持部60から実際に各メロディ要素の音楽データを読み出してもよい。
【0015】
このように、メモリ30に常駐されたメロディ要素を、「オンメモリストリーム」と呼ぶ。それ以外のメロディ要素は、必要になった時点でメロディデータ保持部60からメモリ30に読み出される。このように、メモリ30に常駐されないメロディ要素を、「ファイルストリーム」と呼ぶ。メモリ30は、高速な読み書きが可能なメモリ装置により実現されてもよいが、このようなメモリ装置は一般に小容量で高額である。他方、メロディデータ保持部60は、ハードディスクや光ディスクなど、大容量記憶装置により実現されてもよい。したがって、所定のサイズ分のメロディ要素の音楽データをメモリ30に常駐させることで、メモリ30を効率よく使用しつつ、処理を高速化することができる。
【0016】
進行制御部42は、条件保持部62からメモリ30へ読み出された音楽の構成部分間の遷移条件を参照して、音楽の進行を制御する。進行制御部42は、音楽の再生が開始されると、最初の構成部分の条件を適用するよう要素選択部43に指示する。進行制御部42は、最初の構成部分から次の構成部分への遷移条件が満たされると、次の構成部分の条件を適用するよう要素選択部43に指示する。このとき、最初の構成部分において選択されたメロディ要素の再生が終了していない場合は、そのメロディ要素の再生が終了してから次の構成部分に遷移させてもよいし、そのメロディ要素の再生を強制的に終了させてから次の構成部分に遷移させてもよいし、そのメロディ要素の再生を継続しながら次の構成部分に遷移させてもよい。いずれの方法で遷移させるかを条件として条件保持部62に格納しておいてもよい。進行制御部42は、他の構成又は装置などから遷移を要求されたときに、別の構成部分又は音楽に遷移させてもよい。例えば、図示しないゲーム装置において制御されているゲームにおいてイベントが発生したときに、そのイベントに割り当てられた音楽の再生を開始してもよい。このように、構成部分間の遷移条件を設定して音楽の進行を制御可能とすることにより、音楽の長さを任意に調整することができる。
【0017】
要素選択部43は、所定のタイミングで、複数のトラックのうちメロディ要素が割り当てられていないトラックに対してメロディ要素を割り当てるか否かを判定し、割り当てると判定した場合は、条件保持部62に保持されたメロディ要素を組み合わせる条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択する。要素選択部43は、所定の時間間隔、例えば1拍ごとに、トラックに対してメロディ要素を割り当てるか判定してもよいし、メロディ要素を割り当て可能なトラックが空いたとき、又はトラックが空くタイミングの所定時間前に判定してもよい。
【0018】
要素選択部43は、まず、メモリ30に保持されている条件を参照して、空いているトラックに割り当て可能なメロディ要素の有無を確認する。例えば、図3に示した例において、「1A」部分を再生しているときには、トラック「1」以外にメロディ要素を割り当て可能なトラックがないので、要素選択部43は、「1A」部分の再生が終了するまで、トラックに新たなメロディ要素を割り当てない。要素選択部43は、空いているトラックに割り当て可能なメロディ要素があれば、つづいて、要素選択部43は、メモリ30の空き容量、又は、制御部40の機能を実現するCPUなどのプロセッサの使用状況を示す情報を取得し、取得した情報に基づいて、トラックにメロディ要素を割り当てるか否かを判定する。具体的には、要素選択部43は、メモリ30の空き容量が所定値を下回ったとき、又は、プロセッサの負荷を示す使用率が所定値を上回ったときは、メロディ要素をトラックに割り当てない。これにより、メモリ30のオーバーフローや、プロセッサの過負荷により、音楽の再生が停滞してしまったり、遅延してしまったりするのを防ぐことができる。判定に用いる所定値は、プロセッサの性能やメモリ30の総容量に応じて予め決定されてもよいし、メロディ要素のデータサイズや再生中の音楽の構成などに応じて決定されてもよい。
【0019】
要素選択部43は、トラックにメロディ要素を割り当てると判定した場合、メモリ30に保持されている条件を参照して、トラックに割り当て可能なメロディ要素を抽出する。例えば、「2A」部分の再生中に、トラック「1」にメロディ要素を割り当てる場合、「1A1」、「2A11」、「2A12」を割り当て可能なメロディ要素として抽出する。要素選択部43は、更に、抽出したメロディ要素の中から、禁則事項に該当するメロディ要素を排除する。ここで、複数のメロディ要素がなお選択可能である場合は、要素選択部43は、それらのメロディ要素の中から発生率に応じて割り当てるメロディ要素を選択する。例えば、要素選択部43は、0から1までの乱数を発生させて、0以上0.2未満であれば「1A1」を、0.2以上0.5未満であれば「2A11」を、0.5以上0.7未満であれば「2A12」を選択する。
【0020】
要素選択部43は、選択されたメロディ要素が、オンメモリストリームとしてメモリ30に常駐されているのか、ファイルストリームとしてメロディデータ保持部60に格納されているのかを確認し、ファイルストリームであった場合、そのメロディ要素が再生されるまでに、そのメロディ要素の音楽データをメロディデータ保持部60から読み出して音声信号を生成することが可能か否かを判定し、不可能であると判定した場合は、そのメロディ要素の選択を解除する。プロセッサの性能やメモリ30の総容量などに応じて、メロディ要素の音楽データのデータサイズと、音楽データを処理して音声信号を生成するまでに要する時間との間の関係を予め算出して条件保持部62に保持しておき、判定に利用してもよい。
【0021】
属性決定部44は、トラックに割り当てられたメロディ要素を再生する際に適用すべき属性を決定する。属性決定部44は、条件保持部62からメモリ30に読み出された条件において定義された範囲内で、属性を規定するパラメータ値をランダムに決定する。例えば、「1A」部分において、トラック「1」に割り当てられた「1A1」を再生する際には、ボリュームを「100」、パン角度を「固定」、パン相対角度を「100度」に設定して再生される。また、「2A」部分において、トラック「3」に割り当てられた「2A3」を再生する際には、ボリュームを「40〜100」の範囲でランダムに決定された値、パン角度を「−359度から+359度」の範囲でランダムに決定された値、パン移動モードを「A」、パン距離を「−360」、パン相対角度を「75度」に設定して再生される。属性決定部44は、更に、メモリ30に保持された条件に基づいて、メロディ要素の再生を開始するタイミングを決定する。例えば、メロディ要素の禁則事項として、「拍頭で再生する」というルールが設定されていた場合、そのメロディ要素の再生開始タイミングを拍頭に設定する。
【0022】
音声生成部45は、選択されたメロディ要素の音楽データを、オンメモリストリームであればメモリ30から、ファイルストリームであればメロディデータ保持部60から読み出し、属性決定部44により決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカ66に出力すべき音声信号を生成する。音声生成部45は、音楽データが複数のチャンネルから構成されている場合、それぞれのチャンネルの音声データを、属性決定部44により決定された音源位置に適用して、複数のスピーカ66のそれぞれへ出力すべき音声信号を生成する。例えば、ステレオスピーカが設けられている場合は、ステレオ音声信号を生成してスピーカ66へ出力する。5.1チャンネルなどのサラウンド音声に対応したスピーカが設けられている場合は、それぞれのスピーカ66に出力すべき信号を生成して出力する。
【0023】
図4は、トラックにメロディ要素が割り当てられた様子を示す図である。図4において、各トラックに割り当てられているメロディ要素を示す斜線を付した矩形は、時間の経過とともに左へ移動し、左端の辺に到達したときにそのメロディ要素の再生が開始される。例えば、トラック0及び1に割り当てられているメロディ要素は再生中であり、トラック3及び4は、メロディ要素が割り当てられているが、まだ再生が開始されていない。塗り潰された矩形は無音部分を示す。このように、メロディ要素を割り当てるほか、明示的に無音部分を作ることもできる。本実施の形態では、音声生成部45は、128チャンネル分の音声生成を同時に処理可能であり、トラックにメロディ要素が割り当てられると、そのメロディ要素の音楽データに含まれるチャンネル数分のチャンネルを確保し、それぞれのチャンネルについて、再生開始のタイミングに間に合うように音声生成処理を実行する。
【0024】
図5は、本実施の形態に係る音楽生成方法の手順を示すフローチャートである。環境設定部41は、条件保持部62に保持された条件をメモリ30に読み出すとともに、メロディデータ保持部60に保持されたメロディ要素の音楽データの一部をメモリ30に常駐させて、音楽を生成するための環境を設定する(S10)。進行制御部42が音楽の再生を終了するまでの間(S12のN)、音楽を生成する手順が繰り返される。要素選択部43は、トラックにメロディ要素を割り当てるタイミングが到来するまでの間(S14のN)待機し、タイミングが到来すると(S14のY)、プロセッサの使用状況とメモリ30の空き容量を確認し、新たにメロディ要素を割り当てても処理可能か否かを判定し(S16)、処理不可能であると判定されれば(S16のN)、S12へ戻る。処理可能であると判定されると(S16のY)、つづいて、メモリ30に保持されている条件を参照して、空いているトラックに割り当て可能なメロディ要素を選択する(S18)。S18の詳細については、図6を参照して後述する。メロディ要素が選択されなければ(S20のN)、S12へ戻る。
【0025】
メロディ要素が選択されると(S20のY)、要素選択部43は、選択したメロディ要素がファイルストリームであるかオンメモリストリームであるかを確認し(S22)、ファイルストリームであれば(S22のY)、そのメロディ要素の再生を開始するタイミングまでに、そのメロディ要素の音声データから音声信号を生成する処理が終了するか否かを確認し(S24)、不可能であれば(S24のN)、メロディ要素を再生せずにS12へ戻る。可能であれば(S24のY)、属性決定部44が、メモリ30に保持されている条件にしたがってメロディ要素を再生する際に適用すべき属性を決定し、音声生成部45が、決定された属性を適用してメロディ要素を再生する(S26)。S22において、選択したメロディ要素がオンメモリストリームであれば(S22のN)、再生開始タイミングまでに処理可能であるから、S24をスキップして、音声生成部45がメロディ要素を再生する(S26)。メロディ要素が再生されると、S12へ戻る。進行制御部42が音楽の再生を終了すると(S12のY)、音楽生成方法の手順を終了する。
【0026】
図6は、本実施の形態の音楽生成方法の手順のうち、メロディ要素を選択するステップの詳細を示すフローチャートである。要素選択部43は、メロディ要素の再生開始タイミングを決定する(S30)。再生中の音楽が、テンポフリーな音楽である場合は、要素選択部43は、再生開始タイミングをランダムに決定する。再生中の音楽が、テンポの定まった音楽である場合は、要素選択部43は、メロディ要素を割り当て可能な範囲で、再生中の音楽のテンポに基づいて再生開始タイミングを決定する。例えば、拍頭を再生開始タイミングとしてもよいし、小節の1拍目の拍頭を再生開始タイミングとしてもよい。
【0027】
つづいて、要素選択部43は、トラックに割り当てるメロディ要素のフレーズを選択する(S32)。要素選択部43は、条件保持部62に保持された条件に規定された発生率に基づいて、同じレターに属する複数のフレーズの中から、トラックに割り当てるメロディ要素のフレーズを選択する。つづいて、要素選択部43は、メロディ要素の再生開始タイミングを調整する(S34)。要素選択部43は、選択されたフレーズに属するメロディ要素に課された禁則条件を参照しつつ、許容される範囲で再生開始タイミングを早めたり遅らせたりして、音楽に更なる変化を与える。要素選択部43は、再生中の音楽がテンポフリーな音楽である場合は、許容される範囲でランダムに再生開始タイミングを調整する。要素選択部43は、再生中の音楽がテンポの定まった音楽である場合は、1拍、1/2拍、小節などを単位として、許容される範囲でランダムに再生開始タイミングを調整する。
【0028】
つづいて、要素選択部43は、選択されたフレーズが、条件保持部62に保持された排他条件に該当しないか確認する(S36)。排他条件に該当する場合は(S36のY)、メロディ要素を選択せずに処理を終了する。排他条件に該当しない場合は(S36のN)、要素選択部43は、選択されたフレーズに属する複数の構成音グループの中からランダムに構成音グループを選択する(S38)。要素選択部43は、更に、選択された構成音グループに含まれる複数のバリエーションの中からランダムにバリエーションを選択する(S40)。こうして、トラックに割り当てられるメロディ要素が選択される。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、種々のメロディ要素を任意に組み合わせ、それらのメロディ要素に適用すべき属性を任意に調整することにより、バラエティー豊かな音楽を生成することができる。
【0030】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、その各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る音楽生成装置の構成を示す図である。
【図2】メロディデータ保持部の内部データの例を示す図である。
【図3】条件保持部の内部データの例を示す図である。
【図4】トラックにメロディ要素が割り当てられた様子を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る音楽生成方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係る音楽生成方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
10 音楽生成装置、30 メモリ、40 制御部、41 環境設定部、42 進行制御部、43 要素選択部、44 属性決定部、45 音声生成部、60 メロディデータ保持部、62 条件保持部、66 スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽を構成する複数のメロディ要素の音楽データを保持するメロディデータ保持部と、
前記メロディデータ保持部に保持されたメロディ要素を組み合わせる際の条件と、前記メロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件とを保持する条件保持部と、
所定のタイミングで、複数のトラックのうちメロディ要素が割り当てられていないトラックに対して前記メロディ要素を割り当てるか否かを判定し、割り当てると判定した場合は、前記条件保持部に保持された前記メロディ要素を組み合わせる際の条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択する要素選択部と、
前記条件保持部を参照して、選択されたメロディ要素を再生する際の属性を決定する属性決定部と、
選択されたメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部から読み出し、前記属性決定部により決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカに出力すべき音声信号を生成する音声生成部と、
を備えることを特徴とする音楽生成装置。
【請求項2】
前記音楽の生成に先立って、前記音楽を構成する複数のメロディ要素のうち、所定のデータサイズ分のメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部からメモリに読み出して常駐させる環境設定部を更に備え、
前記要素選択部は、選択されたメロディ要素が前記メモリに常駐されていない場合に、そのメロディ要素が再生されるまでに、前記音声生成部がそのメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部から読み出して前記音声信号を生成することが可能か否かを判定し、不可能であると判定した場合は、そのメロディ要素の選択を解除することを特徴とする請求項1に記載の音楽生成装置。
【請求項3】
前記要素選択部は、前記メモリの空き容量が所定値を下回ったとき、又は、前記音声生成部の負荷が所定値を上回ったときは、メロディ要素をトラックに割り当てないことを特徴とする請求項2に記載の音楽生成装置。
【請求項4】
前記属性決定部は、前記条件保持部に保持された条件において定義された範囲内で、前記属性を規定するパラメータ値をランダムに決定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の音楽生成装置。
【請求項5】
前記条件保持部は、前記音楽の複数の構成部分ごとに、その構成部分においてトラックに割り当て可能なメロディ要素を規定する条件と、構成部分間の遷移条件とを更に保持し、
前記条件保持部に保持された構成部分間の遷移条件を参照して、音楽の進行を制御する進行制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の音楽生成装置。
【請求項6】
メロディデータ保持部に保持された複数のメロディ要素の音楽データを組み合わせて音楽を再生する際に、所定のタイミングで、複数のトラックのうちメロディ要素が割り当てられていないトラックに対して前記メロディ要素を割り当てるか否かを判定するステップと、
前記メロディ要素を割り当てると判定した場合は、前記メロディデータ保持部に保持されたメロディ要素を組み合わせる際の条件と、前記メロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件とを保持する条件保持部に保持された、前記メロディ要素を組み合わせる際の条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択するステップと、
前記条件保持部を参照して、選択されたメロディ要素を再生する際の属性を決定するステップと、
選択されたメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部から読み出し、前記属性を決定するステップにより決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカに出力すべき音声信号を生成するステップと、
を備えることを特徴とする音楽生成方法。
【請求項7】
メロディデータ保持部に保持された複数のメロディ要素の音楽データを組み合わせて音楽を再生する際に、所定のタイミングで、複数のトラックのうちメロディ要素が割り当てられていないトラックに対して前記メロディ要素を割り当てるか否かを判定する機能と、
前記メロディ要素を割り当てると判定した場合は、前記メロディデータ保持部に保持されたメロディ要素を組み合わせる際の条件と、前記メロディ要素を再生する際に適用すべき属性に関する条件とを保持する条件保持部に保持された、前記メロディ要素を組み合わせる際の条件に基づいて、トラックに割り当てるメロディ要素を選択する機能と、
前記条件保持部を参照して、選択されたメロディ要素を再生する際の属性を決定する機能と、
選択されたメロディ要素の音楽データを前記メロディデータ保持部から読み出し、前記属性を決定する機能により決定された属性を適用して、各トラックに割り当てられたメロディ要素の音楽データから、スピーカに出力すべき音声信号を生成する機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−8518(P2010−8518A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165142(P2008−165142)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(395015319)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (871)
【Fターム(参考)】