説明

順次ライン走査符号化多色蛍光顕微鏡法および画像フローサイトメトリ

高速、高分解能画像サイトメトリを実施するシステムでは、ライン走査センサを利用する。特性解析される細胞は、走査領域を越えて移送される。光学系は、走査領域の一部の画像の焦点を少なくとも一つの線形光センサに合わせ、細胞が走査領域を通って移送される間にセンサに照射される光が繰り返し読み取られる。当該システムは、細胞を直接撮像してもよく、あるいは細胞内で蛍光を励起し、結果として蛍光によって細胞から放射される光を撮像してもよい。当該システムは、走査領域において狭帯域の照明を提供する可能性がある。当該システムは、同時多色蛍光画像サイトメトリを可能にする様々なフィルタおよび結像光学系を含んでいてもよい。複数の線形センサが備えられてもよく、信号対ノイズ比特性が改善された画像を構築するために個々のセンサによって集められた画像が結合されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年3月20日に出願された米国仮特許出願第61/162,072号明細書、および2009年8月7日に出願された米国仮特許出願第61/232,113号明細書に対する優先権を主張し、その開示はすべての目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
サイトメトリは、生体細胞の計数および特性解析に関する技術的な専門分野である。図1は、フローサイトメトリとして知られる一技術の簡易図を示す。フローサイトメトリの基本形では、細胞101が流体内に懸濁され、透明な細管102内で一列になって伴流される。伴流は、流体力学収束を含むいくつかの方法のいずれかで実現されうる。光源103は、測定位置104を通過する各細胞101を照射する。光源103は、たとえば、レーザであってもよい。光源103からの光は、測定されている細胞101によって散乱される。一部の光105は、細胞101に達するように進むので一般に同じ方向に散乱される。光105は、「前方散乱」と呼ばれることがあり、前方センサ106によって集められことがある。一部の光は他の方向にも散乱されることがある。この光は、「側方散乱」と呼ばれることもあり、側方散乱光107の一部は一つ以上の他のセンサ108によって集められることがある。センサ106および108からの出力信号はコンピュータ109に送られ、コンピュータ109は信号を記憶し解析することができる。散乱光の量と分布を解析することによって、各細胞に関する情報、たとえば、各細胞のサイズと各細胞の内部構造に関する一部の情報とを識別することが可能である。
【0003】
フローサイトメトリは、散乱光を直接測定することもでき、蛍光を利用することもできる。蛍光サイトメトリでは、細胞は一つ以上の発蛍光団で標識されることがあり、発蛍光団は光源103からの光によって励起されて蛍光による光を発生する。放射光の性質によって、細胞に関する新たな情報が明らかになる可能性がある。
【0004】
図1に示す技術は、細胞構造に関する情報を推論するために散乱光の測定に全面的に依存するものであるが、個々の細胞の画像を生成しない。「画像サイトメトリ」と呼ばれる別の技術では、個々の細胞の画像がカメラまたは顕微鏡によって記録される場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
改良された画像サイトメトリシステムは、線形光センサを用いて高速、高分解能サイトメトリを実施する。一部の実施形態では、光源からの光が楕円の走査領域に集光され、走査領域を通って移送されている細胞を照射する。光学系が走査領域の一部の画像の焦点を線形光センサに合わせる。システムは、線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう。システムは、システムが半共焦点撮像を実施するように、線形光センサに隣接したスリット開口を含んでいてもよい。
【0006】
一部の実施形態では、光源からの光が走査領域を通って移送されている細胞を照射する。光学系が、走査領域の一部の画像の焦点を少なくとも二つの平行な線形光センサに合わせる。当該システムは、線形光センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう。当該システムは、当該システムが半共焦点撮像を実施するように、線形光センサに隣接したスリット開口を含んでいてもよい。一部の実施形態では、単一の線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ比特性が改善された画像を形成するために、個々の線形光センサによって集められた画像が組み合わせられる。当該組合せは、細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応するそれぞれの画像からピクセル値をディジタル的に結合することによって実施されてもよい。当該組合せは、時間遅延積分によって実施されてもよい。一部の実施形態では、光源からの光は走査領域における楕円領域に集光される。
【0007】
別の実施形態では、サイトメトリを実施するシステムは、少なくとも第1および第2の波長帯域を含む光によって照射される走査領域と、細胞が照射されるように走査領域を通って細胞を移送する手段とを備える。当該システムは、さらに、第1および第2の組の線形光センサを備え、各組は少なくとも一つの線形光センサと、光学系とを備える。当該光学系は、第3の波長帯域の放射光が主として第1の線形光センサの組に向けられ、かつ第4の波長帯域の放射光が主として第2の線形光センサの組に向けられるように、細胞から放射される光を二つの線形光センサの組に選択的に向ける。細胞が走査領域を通って移送される間に、当該システムが線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう。各光センサの組は、少なくとも二つの線形光センサを備えていてもよい。放射光は蛍光を受けて放出される可能性がある。当該システムは、細胞から放出される光を受け取って光路変更する対物レンズと、光路変更された光の第1の部分を第1の線形光センサの組に向けて反射して光路変更された光の第2の部分を伝播するミラーとを含んでいてもよい。当該システムは、光の第1の部分を受け取って対物レンズと協働して第1の線形光センサの組に細胞の画像を形成する第1のチューブレンズを備えていてもよい。一部の実施形態では、当該システムは、さらに、光の第2の部分を受け取って対物レンズと協働して第2の線形光センサの組に細胞の画像を形成する第2のチューブレンズを備えていてもよい。当該システムは、システムが半共焦点撮像を実施するように、線形光センサの組の少なくとも一つに隣接したスリット開口を含んでいてもよい。一部の実施形態では、線形光センサの各組は少なくとも二つの線形光センサを備え、線形光センサの各組に対して、その組の個々の線形光センサによって集められた画像が組み合わせられて、その組の単一線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像を形成する。当該組合せは、細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応するそれぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することによって実施されてもよい。当該組合せは、時間遅延積分によって実施されてもよい。
【0008】
別の実施形態では、サイトメトリを実施するシステムは、少なくとも第1および第2の波長帯域を含む光によって照射される走査領域と、細胞が照射されるように走査領域を通って細胞を移送する手段とを備える。当該システムは、さらに、少なくとも一つの線形光センサと光学系を備えるセットを含む。光学系は、第3の波長帯域の放射光が主として線形光センサの組の第1の部分に向けられ、第4の波長帯域の放射光が主として線形光センサの組の第2の部分に向けられるように、線形光センサの組の二つの部分に細胞から放出された光を選択的に向ける。細胞が走査領域を通って移送される間に、システムが線形光センサの組に照射される光の読取りを繰り返して行なう。当該組は、少なくとも二つの線形光センサを備えていてもよい。放射光は蛍光を受けて放出されてもよい。当該システムは、システムが半共焦点撮像を実施するように、線形光センサの組に隣接したスリット開口を含んでいてもよい。一部の実施形態では、当該組は少なくとも二つの線形光センサを備え、当該組の個々の線形光センサによって集められた画像は組み合わせられて、当該組の単一線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像を形成する。当該組合せは、細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応するそれぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することによって実施されてもよい。当該組合せは、時間遅延積分によって実施されてもよい。
【0009】
別の実施形態では、サイトメトリを実施するシステムは、光源によって照射される走査領域と、少なくとも一つの線形光センサを備える組と、走査領域の一部の画像の焦点を線形光センサの組に合わせる光学系とを含む。細胞が走査領域を通って移送され、光源によって照射される間に、当該システムが線形光センサの組に照射される光の読取りを繰り返して行なう。この実施形態では、当該システムは、第1の実験中に、線形光センサの組の長さに対応する寸法内の第1のピクセル数を有する第1の画像が作成され、第2の実験中に、線形光センサの組の長さに対応する寸法内の第2のピクセル数を有する第2の画像が作成され、ピクセルの第2の数は第1の数よりも少ないように構成可能である。当該組は少なくとも二つの線形光センサを備えていてもよい。第2の画像のピクセルの数は、線形光センサの組からピクセルの全部よりも少ないピクセルを選択することによって削減されてもよい。第2の画像のピクセルの数は、線形光センサの組からピクセルの一部または全部をビニングすることによって削減されてもよい。線形センサの特定の一つに照射される光の各読取りによって、特定センサに照射される光の量の単一の数値表現が得られる可能性がある。
【0010】
別の実施形態では、楕円照射領域を作り出すシステムは、ビームを発生するレーザと、ビームを受け取ってそのビームを第1の軸のみに収束させる円柱レンズと、円柱レンズの後でビームを受け取る対物レンズとを含む。対物レンズは、無限遠補正された光学系の一部であり、ビームを第1の軸に対して直角の第2の軸に収束させる。当該システムは、円柱レンズと対物レンズの間に波長選択ミラーを含んでいてもよい。一部の実施形態では、対物レンズは、円柱レンズから円柱レンズの焦点距離よりも小さい距離をあけて配置される。一部の実施形態では、対物レンズは、円柱レンズから円柱レンズの焦点距離よりも大きい距離をあけて配置される。一部の実施形態では、ビームは対物レンズを離れるにつれて第1の軸において発散している。一部の実施形態では、ビームは対物レンズを離れるにつれて第1の軸において収束している。
【0011】
別の実施形態では、サイトメトリを実施する方法は、光源を用いて走査領域における楕円領域を照射することを備え、楕円領域を照射することは、さらに、光成形素子を用いて光源からの光を楕円領域に集光することを含む。当該方法は、さらに、光学系を用いて、走査領域の一部の画像の焦点を線形光センサに合わせることと、細胞が走査領域を通って移送され、且つ光源によって照射される間に線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なうこととを備える。一部の実施形態では、当該方法は、さらに、システムが半共焦点撮像を実施するように、線形光センサに照射される光を線形光センサの組に隣接したスリット開口に通すことを含んでいてもよい。
【0012】
別の実施形態では、サイトメトリを実施する方法が、光源を用いて走査領域を照射することと、光学系を用いて走査領域の一部の画像の焦点を少なくとも二つの平行な線形光センサに合わせることとを備える。この実施形態の方法は、さらに、細胞が走査領域を通って移送され、且つ光源によって照射される間に、二つの平行な光センサに照射される光の読取りを繰り返して行なうことを含む。一部の実施形態では、当該方法は、さらに、単一の線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像を形成するために、個々の線形光センサによって集められた画像を組み合わせることを備える。画像を組み合わせることは、さらに、細胞の実質的に同じそれぞれに位置に対応するそれぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することを含んでいてもよい。画像を組み合わせることは、さらに、時間遅延積分を用いて画像を組み合わせることを含んでいてもよい。一部の実施形態では、光源は、少なくとも第1および第2の波長帯域の光を含む照明を作り出し、当該方法は、さらに、光学系を用いて第3の波長帯域の細胞から放射される光を主として二つの平行な光センサの一方に向け、光学系を用いて第4の波長帯域の細胞から放射される光を主として二つの平行な線形光センサの他方に向けることを備える。一部の実施形態では、当該方法は、さらに、光学系を用いて、走査領域の一部の画像の焦点を平行な線形光センサの少なくとも二つの組に合わせることを備え、各組は少なくとも二つの線形光センサを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】フローサイトメトリとして知られる技術の簡易図を示す。
【図2】ある実施形態による高速、高分解能ライン走査画像サイトメトリシステムの簡易概念図を示す。
【図3】(a)〜(d)は、画像形成過程を示す。
【図4】本発明の別の実施形態によるシステムの直交図を示す。
【図5】本発明の別の実施形態によるシステムの直交図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態によるシステムの直交図を示す。
【図7】本発明のさらに別の実施形態によるシステムの直交図を示す。
【図8】別の実施形態によるシステムの直交図を示す。
【図9】(a)〜(c)は、楕円照明領域を作り出すシステムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、ある実施形態による高速、高分解能ライン走査画像サイトメトリシステム200の簡易概念図を示す。図2のシステムはフロー・サイトメトリ・システムであるが、本発明の実施形態が他の種類のサイトメトリにも同様に利用されてよいことを当業者は認識するであろう。
【0015】
細胞101は、流体内に懸濁されてチューブ102の中を一列になって伴流される。当該システムは、多くの異なる種類の細胞を特性解析するために使用されてもよいが、典型的な応用では、細胞101は、たとえば、直径が約10から20μmであってもよく、たとえば、毎秒10mmの速度でチューブ102の中を進んでもよい。光源201は、チューブ102に光の場203を供給する。光源201は、レーザ、発光ダイオード、白熱光源、蛍光光源、または別の種類の光源であってもよい。光源201は、実質的に単色光、広域スペクトル光、あるいは二つ以上の狭波長帯域を含む光を発生してもよい。オプションの光成形素子202は、光源201からの光を細胞101が移送される楕円領域またはスリット状の場203に集中するために様々なレンズ、プリズム、反射器または他の光学部品を含んでいてもよい。以下で説明するように、細線画像のみが走査されるので、対物視野全体が照射される従来の落射照明とは対照的に細線場が照射されるだけで済む。光成形素子202によって提供される集中は、通常の対称的な落射照明と比較して、有効な照明レベルを2から6倍も高めることができる。
【0016】
光源201からの一部の光は、伝播されてまたは細胞101の一つによって散乱され、その少なくとも一部分は場203内にある。光の一部は、一つ以上のレンズ204によって線形センサ205に経路変更される。線形センサ205は、たとえば、電荷結合素子(CCD)センサ、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサ、または一列に配置された複数の感光部位を有する別の種類のセンサであってもよい。レンズ204およびセンサ205は、たとえば、独国、アーレンスブルク(Ahrensburg)のバスラー アーゲー(Basler AG)社が販売するバスラー スプリント(Basler Sprint)ライン走査CMOSカメラなどのライン走査カメラの部品であってもよい。個々のセンサ部位は「ピクセル」と呼ばれることがある。また、センサピクセルによって検知された走査ラインの対応する部位もピクセルと呼ばれることがある。センサ205は、たとえば、各列が512、1024、2048、またはその他の適切な数のピクセルを含む、一つ以上のピクセル列であってもよい。ピクセルの列に照射される光の強度は、ピクセルアレイを清浄にし(clean)、電荷を所定の露光時間ピクセル部位に蓄積させた後、蓄積電荷量を光強度を表わす数値に変換することによって読み取られてもよい。この過程は、細胞が走査範囲を通過するときに繰り返し実施される。一実施形態例では、システムは、20μsecごとに、すなわち、50kHzの走査速度で読取り(「ライン走査」)を行なってもよい。毎秒10mmの細胞移送速度と50kHzの走査速度を採用すると、200nmの画像ピクセルサイズが得られる。他の移送速度と走査速度が可能であり、したがって他の画像ピクセルサイズが得られる可能性がある。得られたアレイの測定値は、細胞の近似的な画像に再構築されうる。
【0017】
図3(a)〜(c)は画像形成過程を示す。図3(a)では、走査ライン301が、ピクセルa、b、c、d、およびeを含む。細胞101は、図3(b)に示すように、走査ライン301を越えて移送され、図3(b)は連続サンプル時刻T〜Tに細胞101に重畳された走査ライン301を示す。図3(b)は、サンプル時刻ごとに正確に1ピクセルを横切る細胞を示すが、これは必要条件ではなく、実際には、細胞移動速度、サンプルレート、およびピクセルサイズのある組合せに対して横切るだけとなる。実際に、連続的な走査ラインは撮像されている細胞に重なる場合があり、あるいは、連続的な走査ラインによって読み取られる細胞の範囲間に隔たりが存在する場合がある。ピクセルa、b、c、d、およびeによって読み取られる光レベルは、細胞101の構造によって影響を受ける。たとえば、どの細胞も走査ライン301を横切らないとき、比較的高い光レベルが記録される。細胞101の比較的透明な部分がピクセルを横切るとき、そのピクセルによって記録される光レベルはやや低下する。細胞101の核がピクセル内にあるとき、そのピクセルに記録される光レベルは著しく低下する可能性がある。図3(c)は、時間の関数としてピクセルa、b、およびcに記録される光レベル(0から1の範囲の任意の目盛りの)のトレースを示す。図3(d)は、複数の連続的なライン走査中に走査されたデータを一緒に重ねることによって形成されて、表示された階調レベルによる各数値的な光の読取りを表わす再構築された画像を示す。図3(d)は数回サンプリングされる数個のピクセルだけを用いて構築され、したがって、細胞101の比較的粗雑な模写を示すが、実際に、本発明の実施形態によるシステムでは各細胞の通過中により多くのラインあるいはより少ないラインを走査してもよく、各ラインは図示よりも多くのあるいは少ないピクセルを含んでいてもよい。一実施形態では、システムは各細胞の通過中におよそ50本のラインを走査してもよく、各ラインはおよそ50個のピクセルを含んでいてもよい。走査されたラインと各細胞のために影響を受けるピクセルの正確な数は、細胞のサイズと、ライン走査周波数と、細胞が走査ラインを流れ去る速度と、使用される具体的なセンサおよび光学部品とに依存する。
【0018】
システムの理論的な分解能は、主に対物レンズの品質に依存する。また、システムの実際の走査分解能は、走査速度と、走査ラインを通過する細胞の移送速度と、使用される具体的なセンサおよび光学系とに依存する。Y方向のピクセル分解能は、使用される具体的なレンズおよびセンサを含む結像系によって決定される。X方向のピクセル分解能は、v・dtに等しく、ここで、vはサンプル搬送速度であり、dtはカメラの露光時間である。好ましくは、vは、既知のパラメータであり、具体的な流動実験の前に予め決定されるか、あるいは細胞がシステムを通過する過程において測定される。理想的には、走査されている細胞は、その走査ラインを通過中に無回転かつ無振動のはずである。
【0019】
図2のシステムの動作については直接光画像化との関連で前述しており、光源201からの散乱光はセンサ205によって測定される。蛍光画像化を実現するためにも同じ原理で動作するシステムが採用されうるし、事実、システムは蛍光画像化に特に役立つ可能性がある。その場合、光源201からの光は、測定されている細胞101内で蛍光を励起することになり、得られる放射光が集められてセンサ205によって測定されることになる。放射光は、一般に、光源201からの励起光よりも長い波長となる。蛍光画像化では、様々なフィルタまたは構成部品の幾何学的配置を用いて光源201の受光からセンサ205を遮蔽することが好ましいかもしれず、したがって、光源光が優勢になったり蛍光によって放射される光の測定を妨げたりすることはない。典型的に、蛍光によって放射される光は光源光ほど強力でなく、直接画像化の場合よりも蛍光画像化の場合の方が、より長い露光時間、より強力な照明、またはより高感度のセンサが求められるかもしれない。また、図3(c)に示す一時的な信号変化の形は、蛍光画像化では直接画像化と異なる場合がある。直接画像化では、細胞内の付加構造によって、センサ205の対応するピクセルによって受け取られる光が少なくなる傾向がある。蛍光画像化では、付加構造が付加的な発蛍光団を持つ場合があり、小さい構造の細胞部分に対応するピクセルと比較して対応するセンサピクセルに達する光が多くなる可能性がある。
【0020】
図4は、本発明の別の実施形態によるシステム400の直交図を示す。図4の実施形態は、単一色の蛍光画像サイトメトリに特に適している可能性がある。図4の実施形態では、光源401が光を放射する。光源401は、レーザ、発光ダイオード、白熱光源、蛍光光源、または別の種類の光源であってもよい。光源401は、実質的に単色光、広域スペクトル光、あるいは二つ以上の狭波長帯域含む光を発生してもよい。一実施形態例では、光源401は、公称波長が488nmの光を放射するレーザである。特に、光源401が広域スペクトル光である場合や具体的なサイトメトリ実験にとって望ましくない波長を生成する場合は、システムによって利用される光の波長帯域をさらに狭めるために励起フィルタ402が使用されてもよい。オプションの光成形素子または集光レンズ403は、細胞101が移送されている走査領域404に放射光を集中してもよい。好ましくは、細胞101は、光源401からの光によって励起されるときに蛍光を発する一つ以上の発蛍光団で標識されている。米国、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad)のライフ テクノロジーズ コーポレイション(Life Technologies Corporation)社が販売するアレクサ フルオル(ALEXA FLUOR)(商標)シリーズの発蛍光団など、様々な発蛍光団が知られている。光成形素子または集光レンズ403によって提供される集光は、細胞101の実効照明を改善してより強力な蛍光信号をもたらす。信号が強力になると、システムで使用されるセンサの露光時間の制限が緩和される。楕円またはスリット状の照明場は、半導体レーザや発光ダイオードなど、自然な非対称照明パターンを有する光源によく適している。
【0021】
細胞101から散乱される光は、対物レンズ405によって集められて進路変更され、ダイクロイックミラー406から反射し、チューブレンズ408を通過し、ライン走査カメラに達して、そこで処理ユニット410による解析のために走査領域404の折れ線画像が集められる。カメラ409に供給される光波長の帯域を狭めるために、放射フィルタ407がシステム内に設置されてもよい。また、ダイクロイックミラー406がフィルタ処理を行なってもよい。このフィルタ処理は、細胞101によって散乱される可能性のある光源401からの直接光の影響を抑制する可能性がある。対物レンズ405およびチューブレンズ408は、好ましくは、これらの間に「無限遠空間」が作り出されるように、無限遠補正光学系を形成する。(当技術分野で知られる)このようなシステムでは、システムの性能は、対物レンズとチューブレンズの距離に比較的鈍感であり、ダイクロイックミラー406および放射フィルタ407など、他の構成要素を挿入する余地を与える。
【0022】
図5は、本発明の別の実施形態によるシステム500の直交図を示す。図5のシステムは、同時二色蛍光画像サイトメトリ用に構成される。図5のシステムでは、二帯域の波長を備える励起光が画像化されている細胞101に提供される。これは、実線および鎖線で示される種々の波長の光を生成する二つの光源501によって図5に描かれている。光は、さらに、一つ以上のフィルタ502によって調整されてもよい。他の構成も考えられる。たとえば、単一の広域スペクトル光源が利用されてもよく、特定帯域の波長がフィルタ502によって優先的に選択されてもよい。あるいは、単一の光源が二つの異なる蛍光波長を励起するために使用されうる。好ましい実施形態では、光源501は、一つは532nmの公称波長で第1の狭帯域の光を生成し、他の一つは633nmの公称波長で第2の狭帯域の光を生成する、二つのレーザを備える。光は、光形成素子または集光レンズ503によって走査領域504に集光されてもよい。素子503は、様々なレンズ、プリズム、反射器または他の光学部品を単独でまたは組み合わせて備えていてもよく、好ましくは、光源501によって生成された光を走査領域504の楕円領域に集光する。
【0023】
好ましくは、光源501からの励起光が細胞101に達するとき少なくとも二つの異なる色特性の光が蛍光によって生成されるように、細胞101は一つ以上の発蛍光団で標識される。たとえば、一つの発蛍光団は532nmの励起光に強い反応を示して約550nmの放射ピークを有する放射光を生成してもよく、第2の発蛍光団は633nmの励起に強い反応を示して約650nmの放射ピークを有する放射光を生成してもよい。これらの異なる放射は、二色の励起光を表わす方法と同様の方法で鎖線および実線を用いて図5で近似的に表わされるが、放射後に特定の線種で表わされる光は、一般に、同じ線種で表わされる励起光と同じスペクトル特性を有しないことは理解されたい。
【0024】
走査領域504からの光は、この後、対物レンズ505によって集められ、ダイクロイックミラー506に向けられる。ミラー506は、基本的に波長帯域からの光がミラー506から反射され残る光が通過されるように、何らかのフィルタ処理を施されてもよい。ミラー506から反射される光は、別の放射フィルタを通過してさらに光のスペクトル特性を制限し、この後、チューブレンズ508を通過してカメラ509に達してもよい。それゆえ、カメラ509は、細胞101における第1の発蛍光団マーカーによって放射された光を優先的に受け取り、光源510のいずれからの光によっても、第2の発蛍光団マーカーによって放射される光からもほとんど悪影響を受けることがない。すなわち、カメラ509に達する光は、第1の発蛍光団の蛍光放射から選択される第3の波長帯域に含まれることが好ましい。
【0025】
ダイクロイックミラー506を通過した光は、この後、別のダイクロイックミラー510から反射され、別のダイクロイック放射フィルタ511を通過し、第2のチューブレンズ512を通過し、カメラ513に達してもよい。それゆえ、カメラ509は細胞101内の第2の発蛍光団マーカーによって放射される光を優先的に受け取り、光源510のいずれからの光によっても、第1の発蛍光団マーカーによって放射される光からもほとんど悪影響を受けることがない。すなわち、カメラ513に達する光は、第2の発蛍光団の蛍光放射から選択される第4の波長帯域に含まれることが好ましい。
【0026】
カメラ509および513は、この後、種々の放射スペクトルで細胞101の同時画像を走査しうる。カメラ509および513の出力は、記憶、解析、表示または他の目的のために処理ユニット514に渡される。処理ユニット514は、たとえば、画像データを処理しうるコンピュータシステムなどのプロセッサ・ベース・システムであってもよい。処理ユニット514は、外部スタンドアロン装置であってもよく、試験装置に組み込まれてもよい。
【0027】
システムには多くの変形形態が考えられる。たとえば、ダイクロイックミラー510は省かれてもよく、フィルタ511、チューブレンズ512、およびカメラ513はダイクロイックミラー506を通過した光を直接受け取るように定置されてもよい。システム内のフィルタの一部は、採用される具体的な光源および蛍光体に応じて任意であってもよい。三つ、四つ、あるいはさらに多くの異なるスペクトル帯域で同時画像化が実施されうるように、さらなる組の光源、フィルタ、ミラー、レンズ、またはカメラが追加されてもよい。
【0028】
これまでに説明したダイクロイックミラーおよびフィルタは完全な波長識別や完全な効率を有しないことを当業者は認識するであろう。特定フィルタを通過することが意図される波長帯域内の一部の光は、吸収または反射されてもよい。特定フィルタによって阻止されることが意図される波長帯域内の一部の光は、通過または反射されてもよい。しかしながら、フィルタおよびミラーは、システムが種々の放射光の色を効果的に識別しうる指定波長を優先的に通過または阻止するだけの十分な実施能力がある。他の変形形態では、プリズム、回折格子または他の光学部品を含む色分解にダイクロイックミラー以外の構成部品が採用されてもよい。
【0029】
図6は、本発明の別の実施形態によるシステム600の直交図を示す。システム600は、それぞれカメラ509および513の前方にスリット開口601および602が新たに設置されている点を除いてシステム500に似ている。スリット開口601および602は、システムの焦点面以外の位置から集められた一部の光がそれぞれのカメラに到達するのを阻止または排除しようとする効果を有する。この効果は、細胞101上方の焦点外の位置から出てくる微細な点の光線束603によって図6に示される。その結果、レンズ508から出てくる光線束604は、システムの焦点面からの光よりもレンズ508のより近くに焦点を結ぶ。光線束604の光がスリット開口601に達するまでに、光線束604は既に発散し始めており、したがって、光線束604の中心の小さな部分だけがスリット601を通過してカメラ509に達しうる。それゆえ、システムは、細胞101におけるシステムの焦点面からの光を優先的に受け取り、他の深度位置から受け取った少なくとも一部の光を排除する。
【0030】
小さい円形開口がこのように使用されて単一センサによって受け取られる光を制限する場合、この技術は共焦点撮像と呼ばれる。図6のシステムでは、開口601および602はスリットであり、したがって、一軸のみの光を排除する。本開示を目的として、これは「半共焦点」撮像と呼ばれる。この技術では、半共焦点撮像を利用しないシステムによって記録される画像と比較してシステムによって記録される画像のコントラストが向上する。
【0031】
本発明を具体化するサイトメトリシステムの別の優位性は、これが点検出器型システムに修正されても設定可能にされてもよいことであり、その場合、線形検出器の真ん中の数個のピクセルのみが動作しているか、あるいは列の一部または全部のピクセルがビニングされて一つのピクセルまたは数個のピクセルになる。その結果、線形光センサの長さに対応する寸法の分解能が低下した画像が得られる(図6のY方向)。たとえば、センサピクセルのすべてがビニングされる場合、光センサの各露光はセンサに照射される光の量の単一の数値表現となることさえある。任意として、照射場は、そのモードで動作しているときにシステムの速度を高めるためにはるかに小さい円または楕円に形成されうる。この種のシステムの優位性は、細胞の超高速単一断面画像が作成されうることである。電子通信帯域幅が制限されているものの十分な照明が得られるとき、この種のシステムは特に有用であるかもしれない。こうして設定できるシステムは、ライン走査画像サイトメトリおよび非画像フローサイトメトリの両方に適用可能であるかもしれない。
【0032】
図7は、本発明のさらに別の実施形態によるシステム700の直交図を示す。図7のシステムでは、同時二色蛍光画像サイトメトリが一つの線形光センサまたはライン走査カメラのみを用いて起動される。システム700の照射システムは、たとえば、図5に示したシステム500に関して前述した照射システムのいずれであってもよい。すなわち、一つ以上の光源が、たとえば、細胞101内の二つの異なる発蛍光団からの二つの異なる蛍光スペクトルを励起する。細胞101からの蛍光によって放射される光の一部は、捕捉され、ダイクロイックミラー701に向けて対物レンズ505によって進路変更される。図7の実線および鎖線は、二つの異なる蛍光スペクトルを含む光がダイクロイックミラー701に達することを示す。ミラー702は、一つの波長帯域が優先的にミラー701から反射し、他の波長が優先的にミラー701を通過してミラー702に向かって進むように光を選択的にフィルタ処理する。さらなるミラーおよびフィルタが、要望通りに、光を指し向けて調整する光学系に設置されてもよい。たとえば、ミラー703はミラー702からの光をチューブレンズ705の方向に進路変更させ、ミラー703はさらに新たなフィルタ処理を提供してもよい。同様に、ミラー704はミラー701からの光をチューブレンズ705の方向に進路変更させ、ミラー704はさらにフィルタ処理を提供してもよい。放射フィルタ707および708などの一つ以上の新たなフィルタが光路に設置されてもよい。チューブレンズ705は光の焦点を再び線形光センサ706に合わせ、線形光センサ706は、ライン走査カメラの一部であってもよく、処理ユニット514によって読み取られうる。
【0033】
センサ706の一部が蛍光スペクトルの一つで放射された光から選択された一つの波長帯域の光を受け取り、センサ706の別の一部が他の蛍光スペクトルで放射された光から選択された他の波長帯域の光を受け取るように、ミラーの配置はセンサ706に達する光の二つの帯域間に幾何学的ずれをもたらす。たとえば、センサ706が一列に配置された512個のピクセルを備える場合、およそ第1の256個のピクセルが一つの波長帯域の光を受け取ってもよく、およそ残りの256個のピクセルが他の波長帯域の光を受け取ってもよい。前述のように、処理ユニット514はセンサ706から反復ライン走査を受け、各波長帯域に対して一つの画像、すなわち細胞101の二つの画像を再構築することができる。このようなシステムは、一つの線形光センサまたはライン走査カメラのみを必要とし、二つの線形光センサまたはライン走査カメラを有するシステムと比較して低コストで構築される可能性がある。また、二波長帯域の光を線形光センサの別々の部分に向けるために、他の種類の光学系が採用されてもよい。たとえば、このような光学系は、光回折格子を備えていてもよい。システムが半共焦点撮像を実施するように、システム700などのシステムにスリット開口が含まれていてもよい。
【0034】
図8は、さらに別の実施形態によるシステム800の直交図を示す。システム800は、図4に示すシステム400の変形形態として示されるが、システム800のさらなる特徴が多色画像、蛍光画像または他の技術を実施するシステムを含む、他のシステムにおいて採用されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0035】
システム800では、狭い間隔で並んだ三つの平行なセンサ列802、803、804を有する例示的なカメラ801を採用している。センサ列は、図8に横向きに示される。システムの光学系の動作に基づいて、列の各々は細胞101の異なる「縞」を撮像する。それゆえ、カメラ801は、細胞101が走査領域404のそばを通過するときに細胞101の特定部分を撮像する三度の異なる機会がある。すなわち、細胞101の特定部分が最初は列802で撮像される。細胞101の同じ部分がその後に列803で撮像され、さらにその後に列804で撮像される。図8では、不必要な詳細によってシステムの動作が分かりにくくならないように、細胞101とセンサ列802、803、804を結ぶ中心光線束のみが示される。
【0036】
一技術では、細胞101について、一つがセンサ列802、803、804の各々によって作られる三つの異なる画像が集められてもよい。異なる画像は、互いに対して時間的にシフトされ、すなわち、X方向に空間的にシフトされるものと考えられてもよい。これらの複数の画像は、信号対ノイズ特性が改善された合成画像を作成するために採用されてもよい。たとえば、三つの画像がディジタル的に元の配列にシフトされ、細胞101の実質的に同じ位置に対応する三つの画像からのピクセル値が加えられると、得られる合成画像は個々の画像のいずれか一つと比較しておよそ√3倍だけ改善された信号対ノイズ比を有することになる。カメラ801は三本の走査ラインを有するものとして示されているが、これは2本、4本、あるいは任意の有効な数nを有していてもよい。n本のラインを有するカメラからのこのディジタル加算または平均法によって生成される合成画像は、単一画像と比較しておよそ√n倍だけ信号対ノイズ比が改善されることになる。走査画像ラインが得られると画像の組合せは「その場で」で行なわれる可能性があり、したがって、単一の線形センサで作られる特定細胞の完全な画像は作成されない。
【0037】
複数列のピクセルを有するカメラ801は、追加的または代替的に時間遅延積分(time delay integration:TDI)を実施するように構成される可能性がある。TDIでは、細胞101への露光から生じる様々なピクセルの電荷がディジタル値への変換前にピクセル列内に蓄積される。細胞101に対するセンサの露光は、細胞101の特定位置が一回の露光中にセンサ列802に露光され、次の露光中にセンサ列803に露光され、そして次の露光中にセンサ列804に露光されるように、実質的に同期される。最初の露光中に列802に蓄積された電荷は、列803にシフトされて第2の露光が加わり、得られる電荷は列804にシフトされて第3の露光が加わる。蓄積電荷は、この後、ディジタル値に変換される。TDIは、単一画像と比較して信号対ノイズ比におよそ√nの改善をもたらす。
【0038】
同時平行画像ラインを走査する一つの優位性は、ディジタル画像結合とTDIのいずれとともに使用するかにかかわらず、当該技術が利用可能な照明をよりうまく活用することである。素子403などの光成形素子は、一般に、光の焦点を走査ラインの単一ピクセル幅のストリップに結ばない。照明場は或る相当の幅を有し、照明の一部が単一のライン・カメラ・システムで破壊される場合がある。
【0039】
このようなシステムの別の優位性は、信号対ノイズ特性を改善するために単にピクセルをビニングすることはシステム内でもできるので、分解能が損なわれないことである。
図5に示すシステム500などのシステムは各カメラ509、513が一組の二つ以上の線形光センサを含むようにさらに適合されうることを当業者は認識するであろう。画像化は、カメラ801に対して前述のように各カメラ509、513によって実施されることになり、したがって、多色画像化はディジタル画像結合またはTDIによって実現される可能性がある。
【0040】
同様に、図7に示すシステム700などのシステムは、センサ706が一組の少なくとも二つの線形光センサに置き換えられるように適合されうる。システムは、この後、波長が選択された光を一組の線形光センサの二つの部分に別々に向けることになる。
【0041】
図2、4、5、6、および7のシステムは、単一線形光センサを有する「組」を含むと考えられてもよい。
さらに、少なくとも二つの平行な線形光センサからの画像の組合せは、ディジタル組合せによるかそれとも時間遅延積分によるかにかかわらず、ビニングや他の分解能低減法と組み合わせられうる。ビニングは、画像精度が落ちるものの信号対ノイズ特性がさらに改善された画像を生成する可能性がある。
【0042】
図9(a)〜(c)は、ライン走査サイトメトリを実施するのに好都合な楕円照射領域を提供するさらなる技術を示す。
ライン走査サイトメトリ技術は、すべての実施形態において楕円照射領域の採用を必要としないかもしれない。光力が十分に高い場合には、従来の円形落射照明が利用されるかもしれない。散乱される非蛍光性の光を使用する画像化では、照明光源の十分な光力を実現することは困難でないかもしれない。しかしながら、蛍光によって放射される光を実際に検出するために励起光を楕円領域に集中すると、エネルギー効率がはるかに高くなる可能性があり、たとえば、所要励起レーザ出力が数十Wあるいは数百Wで測定されるレベルから数十mWあるいは数百mWで測定されるレベルに減少する。
【0043】
図9(a)は、楕円照明領域を提供する技術の実施形態を含むシステム900の一つの図を示す。システム900では、図4に示したシステム400のそれらに類似した一部の構成部品および装置を採用するが、図9(a)に示した照明技術は他の検知装置とともに使用されてもよいことを当業者は認識するであろう。システム900では、照明は検知が実施される方向と同じ方向からレーザ901によって提供され、したがって、サンプル上方の空間は遮るものがない状態にある。したがって、この装置は、サンプルステージと集光レンズとの距離と同程度の厚さのサンプルに限定される可能性のある前述の装置よりもはるかに大きいサンプルを受け入れる可能性がある。図9(a)のシステムの別の優位性は、対物レンズ405が照明場の形成に関与することである。対物レンズ405は、典型的にきわめて高品質のレンズである可能性があり、したがって、このレンズが生成する照明場はきわめて厳密に規定される可能性がある。
【0044】
図9(a)のシステム例では、レーザ901が細胞101に向けてビーム902を生成する。ビーム902は、円柱レンズ903を通過する。本開示を目的として、円柱レンズは、唯一の寸法の曲率を有する任意のレンズである。円柱レンズは、円柱によって規定される曲面を有していてもよいがその必要はない。図9(a)の図では、円柱レンズ903はその円柱軸がX方向に平行になるように定置され、レンズ903はビーム902に影響を持たないように見える。ビーム902はダイクロイックミラー406を通って対物レンズ405に進み、対物レンズ405はビームの焦点を細胞101に結ぶ。細胞101から生じた光は対物レンズ405を通過し、ミラー406から優先的に反射し、場合によっては一つ以上のフィルタ407に入り、レンズ408を通過してカメラ409に達する。
【0045】
図9(b)は、X軸に沿って見た図9(a)の照明部分の実施形態を示す。すなわち、図9(b)は、図9(a)の図から90°回転された図を示す。この図では、チューブ102は円として投影され、円柱レンズ903は湾曲した輪郭を有するものとして示される。図9(b)の実施形態例では、円柱レンズ903の材料および寸法は、レンズ903が円柱レンズと対物レンズの距離よりも大きい、比較的長い焦点距離を有するように選択される。円柱レンズ903を通過したビーム902は、この図から分かるように、比較的緩やかに収束するように見える。対物レンズ405は、この後、照明場が拡大されるように、ビームを収束させてY方向に再び広げる。図9(a)に示すように、対物レンズ405は、ビームをX方向に同時に収束させる。得られる照明場は、細胞101に入ると輪郭がはっきりした楕円形を有する可能性がある。
【0046】
図9(c)は、X軸に沿って見た、図9(a)の照明部分の別の実施形態を示す。この実施形態では、円柱レンズ903の材料および寸法は、レンズ903が円柱レンズと対物レンズの距離よりも短い、比較的短い焦点距離を有するように選択される。円柱レンズ903を通過したビーム902は、収束しているように見え、この後、再び発散して対物レンズ405に達する。対物レンズ405は、ビーム902が再び収束するようにビーム902を進路変更させるが、進路変更はあまりにも緩やかなので、ビーム902が細胞101に達するときにビーム902はカメラ409によって走査されているラインの少なくとも一部分に亘るほどなお十分に広い。さらに、対物レンズ405はビームをX方向に同時に収束させる。得られる照明場は、細胞101に入ると輪郭がはっきりした楕円形を有する可能性がある。
【0047】
本発明の実施形態では直線状チューブ内に閉じ込められた細胞を走査するものとして説明しているが、本発明の実施形態は、電気泳動法、圧力駆動流、光ピンセット、電動移動ステージなどを含む、広範な細胞分配法のいずれかを用いるシステムにおいて利用されてもよいことを当業者は認識するであろう。細胞は、油乳剤、エレクトロウェッティング作動液滴におけるペイロードとして、あるいは磁気ビーズ標識を利用した磁気移送によって搬送されてもよい。特許請求の範囲は、利用される細胞分配法によって制限されるものではない。
【0048】
本発明をここでは明瞭さと理解を目的として詳しく説明してきた。しかしながら、添付された特許請求の範囲内で一定の変更および修正が実施されてもよいことを当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメトリを実施するシステムであって、
光源と、
前記光源からの光を走査領域における楕円領域に集光する光成形素子と、
線形光センサと、
前記走査領域の一部分の画像の焦点を前記線形光センサに合わせる光学系と、を備え、
細胞が走査領域を通って移送され、前記光源によって照射される間に、前記システムが前記線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう、システム。
【請求項2】
前記システムが半共焦点撮像を実施するように、前記線形センサに隣接したスリット開口をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
サイトメトリを実施するシステムであって、
走査領域を照射する光源と、
少なくとも二つの平行な線形光センサと、
前記走査領域の一部分の画像の焦点を前記少なくとも二つの平行な線形光センサに合わせる光学系と、を備え、
細胞が前記走査領域を通って移送され、前記光源によって照射される間に、前記システムが前記線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう、システム。
【請求項4】
前記システムが半共焦点撮像を実施するように、前記線形センサに隣接したスリット開口をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記個々の線形光センサによって集められた画像が、組み合わせられて、単一線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ比特性が改善された画像が形成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記画像は、前記細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応する前記それぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することによって組み合わせられる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記画像は時間遅延積分によって組み合わせられる、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記光源からの光を前記走査領域における楕円領域に集光する光成形素子をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
サイトメトリを実施するシステムであって、
少なくとも第1および第2の波長帯域を含む光によって照射される走査領域と、
前記細胞が照射されるように、前記走査領域を通って細胞を移送する手段と、
第1および第2の組の線形光センサであって、各組は少なくとも一つの線形光センサを備える、前記第1および第2の組の線形光センサと、
第3の波長帯域の放射光が主として前記第1の線形光センサの組に向けられ、第4の波長帯域の放射光が主として前記第2の線形光センサの組に向けられるように、前記細胞から放射された光を前記二つの線形光センサの組に選択的に向ける光学系と、を備え、
前記細胞が前記走査領域を通って移送される間に、前記システムが前記線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なう、システム。
【請求項10】
各線形光センサの組は少なくとも二つの線形光センサを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記放射光は蛍光を受けて放射される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記光学系は、
前記細胞から放射される光を受け取って進路変更させる対物レンズと、
前記進路変更された光の第1の部分を前記第1の線形光センサの組に向けて反射し、前記進路変更された光の第2の部分を伝播するミラーと、
をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
光の前記第1の部分を受け取り、前記対物レンズと協働して前記細胞の画像を前記第1の線形光センサの組に形成する第1のチューブレンズをさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
光の前記第2の部分を受け取り、前記対物レンズと協働して前記細胞の画像を前記第2の線形光センサの組に形成する第2のチューブレンズをさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが半共焦点撮像を実施するように、前記線形光センサの組の少なくとも一つに隣接したスリット開口をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
線形光センサの各組は少なくとも二つの線形光センサを備え、線形光センサの各組に対して、前記組内の前記個々の線形光センサによって集められた画像が組み合わせられ、前記組内の単一の線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像が形成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記画像は、前記細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応する前記それぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することによって組み合わせられる、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記画像は時間遅延積分によって組み合わせられる、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
サイトメトリを実施するシステムであって、
少なくとも第1および第2の波長帯域を含む光によって照射される走査領域と、
前記細胞が照射されるように前記走査領域を通って細胞を移送する手段と、
少なくとも一つの線形光センサを備える組と、
第3の波長帯域の放射光が主として前記線形光センサの組の第1の部分に向けられ、第4の波長帯域の放射光が主として前記線形光センサの組の第2の部分に向けられるように、前記細胞から放射された光を前記線形光センサの組の二つの部分に選択的に向ける光学系と、を備え、
前記細胞が前記走査領域を通って移送される間に、前記システムが前記線形光センサの組に照射される光の読取りを繰り返して行なう、システム。
【請求項20】
前記組は少なくとも二つの線形光センサを備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記放射光は蛍光を受けて放射される、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムが半共焦点撮像を実施するように、前記線形センサの組に隣接したスリット開口をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記組は少なくとも二つの線形光センサを備え、前記組内の前記個々の線形光センサによって集められた画像が組み合わされ、前記組内の単一の線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像が形成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記画像は、前記細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応する前記それぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することによって組み合わせられる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記画像は時間遅延積分によって組み合わせられる、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
サイトメトリを実施するシステムであって、
光源によって照射される走査領域と、
少なくとも一つの線形光センサを備える組と、
前記走査領域の一部の画像の焦点を前記線形光センサの組に合わせる光学系と、
を備え、
細胞が前記走査領域を通って移送され、前記光源によって照射される間に、前記システムが前記線形光センサの組に照射される光の読取りを繰り返して行なわれ、
第1の実験中に、前記線形光センサの組の長さに対応する寸法内の第1のピクセル数を有する第1の画像が作成され、第2の実験中に、前記線形光センサの組の長さに対応する寸法内の第2のピクセル数を有する第2の画像が作成され、前記第2のピクセル数は第1のピクセル数よりも少ないように構成可能である、システム。
【請求項27】
前記組は少なくとも二つの線形光センサを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記第2の画像内のピクセルの数は、前記線形光センサの組から前記ピクセルの全部よりも少ないピクセルを選択することによって削減される、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記第2の画像内のピクセルの数は、前記線形光センサの組から前記ピクセルの一部または全部をビニングすることによって削減される、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
特定線形センサに照射される光の各読取りによって前記特定センサに照射される光の量の単一の数値表現が得られる、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
楕円照明領域を作り出すシステムであって、
ビームを発生するレーザと、
前記ビームを受け取って前記ビームを第1の軸のみで収束させる円柱レンズと、
前記円柱レンズの後で前記ビームを受け取り、前記第1の軸に対して直角の第2の軸で前記ビームを発散させる、無限遠補正光学系の一部である対物レンズと、
を備える、システム。
【請求項32】
前記円柱レンズと前記対物レンズの間に波長選択ミラーをさらに備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記対物レンズは前記円柱レンズから前記円柱レンズの焦点距離よりも小さい距離をあけて配置される、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記対物レンズは前記円柱レンズから前記円柱レンズの焦点距離よりも大きい距離をあけて配置される、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記ビームは前記対物レンズを離れるにつれて前記第1の軸において発散している、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記ビームは前記対物レンズを離れるにつれて前記第1の軸において収束している、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
サイトメトリを実施する方法であって、
光源を用いて走査領域における楕円領域を照射することであって、前記楕円領域を照射することは光成形素子を用いて前記光源からの光を前記楕円領域に集光することをさらに含む、前記光源を用いて走査領域における楕円領域を照射することと、
光学系を用いて前記走査領域の一部の画像の焦点を線形光センサに合わせることと、
前記細胞が前記走査領域を通って移送され、前記光源によって照射される間に、前記線形センサに照射される光の読取りを繰り返して行なうことと、
を備える、方法。
【請求項38】
前記システムが半共焦点撮像を実施するように、前記線形光センサに照射される光を前記線形光センサに隣接するスリット開口に通すことをさらに備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
光源を用いて走査領域を照射することと、
光学系を用いて前記走査領域の一部の画像の焦点を少なくとも二つの平行な線形光センサに合わせることと、
細胞が前記走査領域を通って移送され、前記光源によって照射される間に、前記二つの平行な光センサに照射される光の読取りを繰り返して行なうことと、
を備える、サイトメトリを実施する方法。
【請求項40】
単一の線形光センサによって集められた画像と比較して信号対ノイズ特性が改善された画像を形成するために、前記個々の線形光センサによって集められた画像を組み合わせることをさらに備える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
画像を組み合わせることは、前記細胞の実質的に同じそれぞれの位置に対応する前記それぞれの画像からのピクセル値をディジタル的に結合することをさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
画像を組み合わせることは、時間遅延積分を用いて画像を組み合わせることをさらに備える、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記光源は少なくとも第1および第2の波長帯域内の光を含む照明を生成し、当該方法は、さらに、
前記光学系を用いて、第3の波長帯域内の前記細胞から放射された光を主として前記二つの平行な光センサの一つに向け、前記光学系を用いて、第4の波長帯域内の前記細胞から放射された光を主として前記二つの平行な光センサの他の一つに向けること、
をさらに備える、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記光学系を用いて、前記走査領域の一部の画像の焦点を平行な線形光センサの少なくとも二つの組に合わせることをさらに備え、各組は少なくとも二つの線形光センサを備える、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−521540(P2012−521540A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500967(P2012−500967)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027843
【国際公開番号】WO2010/108020
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(595154074)バイオ−ラド ラボラトリーズ インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】