説明

顔料分散体及び塗料

【課題】 粒子径の小さな凝集しやすい着色顔料またはカーボンブラックを良好な分散状態で含有する顔料分散体及びそれを用いた塗料を得る。
【解決手段】 一次平均粒子径が200nm以下の着色顔料またはストラクチャーの平均粒子径が100nm以下のカーボンブラックからなる第1の顔料と、一次平均粒子径が55nm以下の硫酸バリウムからなる第2の顔料とを、一方の顔料の(酸量−塩基量)の値が正で、他方の顔料の(酸量−塩基量)の値が負となるように組み合わせ、顔料分散剤の存在下、第1の顔料と第2の顔料を媒体中に同時に分散させたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色顔料またはカーボンブラックを媒体中に分散させた顔料分散体及びそれを用いた塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着色顔料及びカーボンブラックは、塗料や印刷インキなどにおいて着色剤として用いられているが、色相が鮮明で、かつ高い光沢を有する塗膜を形成する場合には、粒子径の小さな着色顔料及び/またはカーボンブラックを用いる必要がある。しかしながら、粒子径の小さな着色顔料及びカーボンブラックは、一般に凝集しやすく、このため良好な分散状態で分散させることができないという問題があった。
【0003】
一方、硫酸バリウムは、その屈折率が他の無機物より低く、有機物によって構成される塗膜等に近いことから、塗料等に配合しても透明性を得ることができるため、透明性顔料として従来より用いられている。このような透明性顔料としての硫酸バリウムにおいても、粒子径の小さなものを配合することが求められているが、粒子径が小さくなると凝集しやすくなり、これを多量に配合すると塗膜等においてにごりが生じ透明性が損なわれるという問題があった。
【0004】
特許文献1においては、有機顔料もしくはカーボンブラックと、酸性もしくは塩基性官能基を有する有機色素誘導体または酸性もしくは塩基性官能基を有するトリアジン誘導体と、硫酸バリウムなどの無機粉体とを乾式処理することにより、複合化顔料を製造する方法が開示されている。このような方法によれば、有機色素誘導体またはトリアジン誘導体が、有機顔料またはカーボンブラックと無機粉体の仲立ちの役割を果たし、均一な複合化顔料を得ることができるとされている。
【0005】
特許文献2においては、カーボンブラックに、塩基性官能基を有する有機色素誘導体または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体を吸着処理し、次いで無機粒子がマイナスの表面電荷を持つpH領域において硫酸バリウムなどの無機粒子で処理することにより、無機粒子を複合化したカーボンブラックを製造する方法が開示されている。
【0006】
特許文献1においては乾式処理により複合化顔料を製造する方法が提案されているが、このような方法で得られた複合化顔料を用いても十分に良好な分散状態を得ることができない場合があった。また、特許文献2においては、水系媒体中で複合化カーボンブラックを製造しているため、溶剤系の塗料に添加する場合には一旦乾燥させる必要があり、乾燥工程において凝集が生じ易く、これを塗料などに配合した場合には十分に良好な分散状態が得られない場合があった。これらの従来の方法で得られた複合化顔料の平均粒子径は、カーボンブラックを複合化した場合において、400〜800nm程度であった。
【特許文献1】特開2004−224949号公報
【特許文献2】特開2004−224950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粒子径の小さな凝集しやすい着色顔料またはカーボンブラックを良好な分散状態で含有する顔料分散体及びそれを用いた塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顔料分散体は、一次平均粒子径が200nm以下の着色顔料またはストラクチャーの平均粒子径が100nm以下のカーボンブラックからなる第1の顔料と、一次平均粒子径が55nm以下の硫酸バリウムからなる第2の顔料とを、一方の顔料の(酸量−塩基量)の値が正で、他方の顔料の(酸量−塩基量)の値が負となるように組み合わせ、顔料分散剤の存在下、第1の顔料と第2の顔料を媒体中に同時に分散させたことを特徴としている。
【0009】
本発明に従い、第1の顔料と第2の顔料とを、一方の顔料の(酸量−塩基量)の値が正で、他方の顔料の(酸量−塩基量)の値が負となるように組み合わせ、顔料分散剤の存在下、第1の顔料と第2の顔料を媒体中に同時に分散させることにより、第1の顔料である着色顔料またはカーボンブラックを良好な分散状態で分散させることができる。従って、例えば、平均粒子径が400nm以下となるように着色顔料またはカーボンブラックを分散させることができる。
【0010】
本発明において、顔料の(酸量−塩基量)は、顔料の酸量から顔料の塩基量を差し引いた値である。顔料の酸量及び塩基量は、例えば、小林敏勝及び池田承治、日本化学会誌、1993年、第145〜146頁に記載された方法により測定することができる。
【0011】
酸量の測定は、具体的に以下のようにして行う。まず、顔料2gと、塩基としての例えばジメチルエチルアミン(DMEA)を10-2モル/リットル溶解させたメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液30mlを三角フラスコに入れ、密栓した後、20℃に制御した超音波洗浄器中で1時間超音波分散する。この分散液から顔料を遠心分離して除去し、得られた上澄み液10mlを、MIBK100mlで希釈し、10-2モル/リットルの過塩素酸溶液で滴定(逆滴定)して、酸量を決定する。
【0012】
塩基量の測定は、まず、顔料2gと、酸として酢酸を10-2モル/リットルとなるように溶解させたMIBK溶液30mlを三角フラスコに入れ、密栓した後、20℃に制御した超音波洗浄器中で1時間超音波分散する。この分散液から顔料を遠心分離して除去し、得られた上澄み液10mlを、MIBK100mlで希釈し、10-2モル/リットルのカリウムメトキシド溶液で滴定(逆滴定)して、塩基量を決定する。
【0013】
顔料の酸量及び塩基量は、いずれも一般にその単位はμmol/gとして求める。上記のようにして求めた顔料の酸量から顔料の塩基量を差し引くことにより本発明における顔料の(酸量−塩基量)の値を求めることができる。
【0014】
本発明においては、一方の顔料の(酸量−塩基量)の値が正で、他方の顔料の(酸量−塩基量)の値が負となるように組み合わせる。従って、着色顔料またはカーボンブラックからなる第1の顔料の(酸量−塩基量)の値が正である場合には、第2の顔料として、顔料の(酸量−塩基量)の値が負である硫酸バリウムを用いる。逆に第1の顔料の(酸量−塩基量)の値が負である場合には、第2の顔料として、(酸量−塩基量)の値が正である硫酸バリウムを用いる。
【0015】
本発明において、第1の顔料として用いられる着色顔料の一次平均粒子径は200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。下限値は特に限定されるものではないが、一般には、製造または入手しやすさの観点から20nm以上のものが用いられる。
【0016】
本発明において、第1の顔料として用いられるカーボンブラックのストラクチャーの平均粒子径は100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。下限値は特に限定されるものではないが、一般には、製造または入手しやすさの観点から10nm以上のものが用いられる。カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径、すなわち平均一次粒子径は、50nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以下である。また、下限値は特に限定されるものではないが、製造または入手のしやすさの観点から5nm以上のものが用いられる。
【0017】
本発明において、第2の顔料として用いられる硫酸バリウムの一次平均粒子径は、55nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。一次平均粒子径が55nmより大きくなると、第1の顔料に第2の顔料を組み合わせることにより、良好な分散状態で分散することができるという本発明の効果が十分に得られなくなる。
【0018】
着色顔料の一次平均粒子径及びカーボンブラックのストラクチャーの平均粒子径は、電子顕微鏡による観察などにより測定される平均粒子径である。なお、カーボンブラックの一次粒子径は、ストラクチャーの球状部分の径である。
【0019】
また、本発明における第2の顔料である硫酸バリウムの一次平均粒子径も、上記と同様に電子顕微鏡による観測などで測定される平均粒子径である。
【0020】
本発明において、顔料分散体の平均粒子径、すなわち第1の顔料と第2の顔料を同時に分散した分散体の平均粒子径は、nmオーダーで測定することができる粒度分布測定装置により測定することが好ましい。このような粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法/レーザードップラ法(UPA法)を用いたナノトラック粒度分布測定装置(日機装社製)を用いることができる。
【0021】
本発明において、第1の顔料と第2の顔料の重量配合比は、2:8〜8:2であることが好ましく、さらに好ましくは7:3〜3:7である。このような配合割合とすることにより、良好な分散状態とすることができる。
【0022】
本発明において、同時に混合分散した顔料分散体の平均粒子径は、着色顔料の一次平均粒子径の5倍以下、あるいはカーボンブラックのストラクチャーの平均粒子径の5倍以下であることが好ましい。
【0023】
本発明において用いる着色顔料としては、例えば、可溶性および不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、アンスラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、チオインジゴ系顔料等の有機顔料、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、黄鉛、カドミウムエロー、カドミウムレッド、弁柄、鉄黒、亜鉛華、紺青、群青、酸化鉄、クロム酸顔料等の無機顔料がある。また、これらの混合物を用いることができる。顔料は、粗製(クルード)顔料であっても良い。
【0024】
本発明において用いるカーボンブラックは、特に限定されるものではなく、一般的に用いられるファーネスブラックやアセチレンブラックなどを用いることができる。具体的には、デグサ社製のカーボンブラックColorBlack Fw200、ColorBlack Fw200P、ColorBlack Fw285、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、キャボット社製のエンペラー2000、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等が挙げられる。上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明において、第1の顔料と第2の顔料は、顔料分散剤の存在下、SGミルなどの分散機で媒体中に同時に分散される。
【0026】
顔料分散体中の着色顔料またはカーボンブラックの含有量は、1〜20重量%の範囲であることが好ましい。顔料分散体中の硫酸バリウムの含有量は、0.3〜50重量%であることが好ましい。硫酸バリウムの含有量がこれより多いと耐水性が悪くなり、逆に少ないと本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0027】
顔料分散体を調製するための分散機としては、SGミル、ボールミル、ビーズミル、スパイクミル、パールミル、ダイノミル、2本または3本のロールミル、エクストルーダー、ペイントシェーカー、超音波処理、ホモジナイザー、ニーダー、フラッシング処理などが挙げられる。分散させる際のメディアとしては、ジルコンビーズ、ジルコニアビーズ、ソーダー石灰ガラスビーズ、無アルカリビーズ、アルミナビーズ、シリコンビーズなどが挙げられる。
【0028】
顔料分散剤としては、ノニオン系またはアニオン系の顔料分散剤が好ましく用いられる。
【0029】
ノニオン系顔料分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、および、アセチレングリコール系等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤は二種以上を混合して使用してもよい。ノニオン系界面活性剤の添加量は分散液に対して0.1〜5重量%程度の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2重量%程度の範囲である。
【0030】
アニオン系顔料分散剤としては、高分子アミン系顔料分散剤を好ましいものとして挙げることができる。
【0031】
上記高分子アミン系顔料分散剤は、ブロックまたはグラフト構造により少なくとも主鎖の片末端に(両末端を含む)、塩基性顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子である。上記塩基性顔料親和性基としては、第3級アミノ基、第4級アンモニウムまたは塩基性窒素原子を有する複素環基であり、直鎖状の高分子としてポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステルまたは、これらの変性物のいずれか1種が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、ピロール基、イミダゾール基、ピリジニル基、ピリミジニル基等が挙げられる。
【0032】
また上記塩基性顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、色ムラを生じる恐れがあり、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる恐れがある。より好ましくは、5〜1500個である。
【0033】
上記高分子アミン系顔料分散剤は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、色ムラを生じる恐れがあり、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる恐れがある。より好ましくは、2000〜500000である。
【0034】
例えば、アミン系の顔料分散剤としては、「BYK−160」、「BYK−161」、「BYK−162」、「BYK−180」、「BYK−181」、「BYK−182」(以上、ビックケミー社製)、「ソルスパース20000」(ゼネカ社製)、「EFKA−4550」、「EFKA−4580」(以上エフカアディテブス社製)等を用いることができる。
【0035】
ノニオン系顔料分散剤としては、「BYK−190」、「BYK−191」(以上、ビックケミー社製)等を用いることができる。
【0036】
その他の顔料分散剤としては、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上エフカアディテブス社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ製)等の高分子分散剤、ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ゼネカ株式会社製)を挙げることができる。
【0037】
上記顔料分散剤の塗料中の配合量は、顔料固形分に対して5〜120重量%が好ましい。この配合量が、5重量%未満では粒径が大きくなる恐れがあり、120重量%を超えると貯蔵安定性が低下する恐れがある。より好ましくは10〜100重量%である。
【0038】
本発明の顔料分散体の媒体は、有機溶媒であってもよいし、脱イオン水であってもよいし、脱イオン水と溶媒の混合物であってもよい。有機溶媒としては、ソルベッソ100(商品名)、ソルベッソ150(商品名)、キシレン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エチル、シェルゾールTK(商品名)、エトキシエチルプロピオネート(EEP)、メトキシプロパノール(MP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAC)、ブタノール等が挙げられる。
【0039】
また、水系溶媒としては、脱イオン水、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。
【0040】
本発明のソリッド塗料は、上記本発明の顔料分散体と、バインダーとを含むことを特徴としている。顔料分散体の媒体が有機溶媒である場合には、有機溶媒に可溶なバインダーが用いられる。バインダーとしては、塗膜形成用樹脂が用いられ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂等が用いられる。これらの中でも特にアクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
塗膜形成用樹脂が硬化性を有する樹脂である場合には、一般にアミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物等の硬化剤を混合して用いられる。
【0042】
顔料分散体の溶媒が水系溶媒である場合には、エマルション樹脂、水溶性樹脂、または水分散性樹脂がバインダーとして用いられる。これらの樹脂としては、上記と同様の塗膜形成用樹脂を用いることができる。また、硬化剤として、上記と同様の硬化剤を用いることができる。
【0043】
本発明のメタリック塗料は、上記本発明の顔料分散体と、鱗片状光輝性顔料と、バインダーとを含むことを特徴としている。バインダーとしては、顔料分散体の媒体が有機溶媒であるか、水系溶媒であるかに応じて、上記のソリッド塗料と同様のバインダーを用いることができる。
【0044】
鱗片状光輝性顔料としては、アルミフレーク顔料、着色アルミフレーク顔料、マイカ顔料、金属チタンフレーク顔料、アルミナフレーク顔料、シリカフレーク顔料、二酸化チタン被覆ガラスフレーク顔料、グラファイト顔料、ステンレスフレーク顔料、ホログラム顔料、板状酸化鉄顔料及びフタロシアニンフレーク顔料などが挙げられる。
【0045】
ソリッド塗料及びメタリック塗料において、本発明の顔料分散体の含有量は、PWCで、0.03〜50%となるような範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜30%である。
【0046】
ソリッド塗料及びメタリック塗料において、バインダーの含有量は、塗膜中の固形分で、0.03〜70重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜50重量%である。
【0047】
また、メタリック塗料において、鱗片状光輝性顔料の含有量は、PWCで、0.05〜30%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜25%である。
【0048】
上記本発明のソリッド塗料及びメタリック塗料は、例えば、2コート1ベークの塗装方法、または3コート1ベークの塗装方法で塗装して積層塗膜の形成に用いることができる。
【0049】
2コート1ベークの塗装方法で塗膜を形成する本発明の塗膜形成方法は、上記ソリッド塗料またはメタリック塗料を被塗物に塗布し、ソリッド塗膜またはメタリック塗膜を形成する工程と、ソリッド塗膜またはメタリック塗膜の上にクリヤ塗膜をウェットオンウェットで塗布し、積層塗膜を形成する工程と、積層塗膜を同時に焼き付け硬化する工程とを備えることを特徴としている。
【0050】
3コート1ベークの塗装方法で塗膜を形成する本発明の塗膜形成方法は、被塗物に中塗り塗料を塗布し、中塗り塗膜を形成する工程と、中塗り塗膜の上に、上記本発明のソリッド塗料またはメタリック塗料をウェットオンウェットで塗布し、ソリッド塗膜またはメタリック塗膜を形成した後、その上にクリヤ塗料をウェットオンウェットで塗布し、積層塗膜を形成する工程と、積層塗膜を同時に焼き付け硬化する工程とを備えることを特徴としている。
【0051】
クリヤ塗料としては、特に限定されず、塗膜形成性熱硬化性樹脂および硬化剤等を含有するものを利用できる。このクリヤ塗料の形態としては、溶剤型、水性型および粉体型のものが挙げられる。
【0052】
上記溶剤型クリヤ塗料の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組合わせ、あるいはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0053】
また、上記水性型クリヤ塗料の例としては、上記溶剤型クリヤ塗料の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものが挙げることができる。この中和は重合の前又は後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
【0054】
一方、粉体型クリヤ塗料としては、熱可塑性および熱硬化性粉体塗料のような通常の粉体塗料を用い得ることができる。良好な物性の塗膜が得られるため、熱硬化性粉体塗料が好ましい。熱硬化性粉体塗料の具体的なものとしては、エポキシ系、アクリル系およびポリエステル系の粉体クリヤ塗料等が挙げられるが、耐候性が良好なアクリル系粉体クリヤ塗料が特に好ましい。
【0055】
本発明に用いる粉体型クリヤ塗料として、硬化時の揮散物が無く、良好な外観が得られ、そして黄変が少ないことから、エポキシ含有アクリル樹脂/多価カルボン酸の系の粉体塗料が特に好ましい。
【0056】
更に、上記クリヤ塗料には、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤を添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含むことができる。
【0057】
被塗物としては、種々の基材、例えば金属、プラスチック、発泡体等、特に金属表面、および鋳造物に有利に用い得るが、カチオン電着塗装可能な金属製品に対し、特に好適に使用できる。
【0058】
上記金属製品としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および部品が挙げられる。これらの金属は予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
【0059】
また、本発明の塗膜形成方法に用いられる基材には、化成処理された鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜が形成されていても良い。電着塗膜を形成する電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型を使用できるが、カチオン型電着塗料組成物が防食性において優れた積層塗膜を与えるため好ましい。
【0060】
中塗り塗膜を形成する中塗り塗料としては、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料としたグレー系のメラミン硬化系あるいはイソシアネート硬化系のものが用いられる。更に、上塗りとの色相を合わせたものや各種の着色顔料を組み合わせたものを用いることもできる。
【0061】
各塗料を塗装する方法としては、静電塗装方法など一般的な方法を用いることができる。
【0062】
積層塗膜を硬化させる硬化温度は、特に限定されるものではなく、用いた樹脂及び硬化剤の種類等により適宜選択される。例えば、80〜180℃、好ましくは120〜160℃に設定される。硬化時間は、硬化温度等により変化するが、例えば120℃〜160℃で10〜30分間程度が適当である。
【0063】
本発明の塗装物は、上記本発明の塗膜形成方法により形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0064】
本発明に従う顔料分散体においては、粒子径の小さな凝集しやすい着色顔料またはカーボンブラックを第1の顔料として用いているが、本発明に従い、これらの第1の顔料を、第2の顔料である硫酸バリウムと同時に分散させることにより、着色顔料同士またはカーボンブラック同士の凝集を抑制して、従来より小さな粒子径で分散させることができ、良好な分散状態を得ることができる。
【0065】
本発明の顔料分散体を用いたソリッド塗料は、塗料中での着色顔料またはカーボンブラック顔料の凝集が少ないため、着色力及び透明感に優れ、かつ着色顔料またはカーボンブラックが本来有する鮮明な色相の塗膜を形成することができる。
【0066】
本発明の顔料分散体を含有するメタリック塗料は、透明感に優れ、塗膜を斜めから見たときのシェードに濁りがなく、深みのある色相を呈することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
<第1の顔料>
第1の顔料として、以下のものを用いた。
【0069】
・カーボンブラックA:カーボンブラック、商品名「ラーベン5000UIII」コロンビア社製、ストラクチャーの平均粒子径32nm
・カーボンブラックB:カーボンブラック、商品名「デクサカーボンFW−200P」、デグサ社製、ストラクチャーの平均粒子径39nm
・キナクリドンマゼンタ:赤色有機顔料、商品名「シンカシャマゼンタBRT−343D」、チバガイギー社製、一次平均粒子径70nm
・ポリ塩素化銅フタロシアニン:緑色有機顔料、商品名「リオノールグリーン6YKP−N」、東洋インキ社製、一次平均粒子径90nm
・フタロシアニン:青色有機顔料、商品名「シャニンブルーG−314NF」、山陽色素社製、一次平均粒子径80nm
〔酸量及び塩基量の測定〕
上記の各第1の顔料について、酸量及び塩基量を測定した。酸量の測定は、上記の方法により、塩基としてジメチルエチルアミン(DMEA)を用いて行った。また、塩基量の測定は、上記のように、酸として酢酸を用いて行った。酸量及び塩基量、並びに(酸量−塩基量)の測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
<第2の顔料>
硫酸バリウムとして、以下に示す硫酸バリウムを用いた。
【0072】
・BF−20:堺化学社製硫酸バリウム、一次平均粒子径30nm
・BF−21:堺化学社製硫酸バリウム、一次平均粒子径50nm
・BF−40:堺化学社製硫酸バリウム、一次平均粒子径10nm
・BF−1:堺化学社製硫酸バリウム、一次平均粒子径50nm
・BF−10:堺化学社製硫酸バリウム、一次平均粒子径60nm
【0073】
〔酸量及び塩基量の測定〕
上記と同様にして、上記各硫酸バリウムの酸量及び塩基量を測定し、(酸量−塩基量)を求めた。測定結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
<顔料分散体の調製>
第1の顔料と第2の顔料を、表3及び表4に示すように組み合わせて混合し顔料分散体を調製した。第1の顔料の分散液と第2の顔料の混合割合は、それぞれの分散液における顔料(固形分)が、表3及び表4にそれぞれ示すような比率となるようにした。溶剤としてはキシレンを用い、第1の顔料と第2の顔料の合計が、16重量%となるように調整した。顔料分散剤としては、アミン系顔料分散剤(商品名「BYK−182」、ビッグケミー社製)を用いた。顔料分散剤は、第1の顔料がカーボンブラックである場合には第1の顔料100重量部に対し80重量部となるように添加し、第1の顔料が着色顔料である場合には第1の顔料100重量部に対し30重量部となるように用いた。また、ここでは、分散樹脂も併せて用いた。分散樹脂の添加量は、顔料分散体中の固形分が20重量%となるように添加した。
【0076】
また、分散メディアとしては、直径0.5mmのジルコンビーズを用いた。
【0077】
以上のようにして第1の顔料、第2の顔料、顔料分散剤、及び分散樹脂を添加した溶液を、SGミルを用いて攪拌混合し、第1の顔料と第2の顔料を同時に分散させて顔料分散体を調製した。ミルの回転速度は3000rpmとし、分散時間は、表3及び表4に示した時間とした。
【0078】
得られた顔料分散体の平均粒子径を、ナノトラック粒度分布測定装置(日機装社製)を用いて測定した。測定結果を表3及び表4に示す。また、第1の顔料の平均粒子径に対する、顔料分散体の平均粒子径の比(粒子径比)を表3及び表4に示す。また、表3及び表4には、第1の顔料の(酸量−塩基量)及び第2の顔料の(酸量−塩基量)も示している。
【0079】
【表3】

【0080】
表3に示すように、実施例1〜4においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が正であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)が負である。また、実施例5においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が負であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)が正である。このように、第1の顔料及び第2の顔料の一方(酸量−塩基量)が正で、他方の(酸量−塩基量)が負となるように組み合わせることにより、顔料分散体の平均粒子径として、300nm以下の値が得られている。また、第1の顔料の平均粒子径に対する顔料分散体の平均粒子径の比(粒子径比)は、5以下の値が得られている。
【0081】
【表4】

【0082】
第1の顔料としてカーボンブラックAを用いた、表4に示す実施例1及び6並びに比較例1〜3について考察すると以下のようになる。
【0083】
実施例1及び6においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が正であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)が負である。このように組み合わせることにより、顔料分散体の粒子径比は5以下の値になっており、小さな粒子径で分散されていることがわかる。これに対し、比較例1及び2においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が正であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)も正である。このように組み合わせると、顔料分散体の粒子径比は5を超える値となっており、小さな平均粒子径が得られず、分散状態が良好でないことがわかる。比較例3においては第2の顔料を混合しておらず、第1の顔料のみの分散液の状態であるが、表4に示すように小さな平均粒子径が得られておらず、良好な分散状態が得られないことがわかる。
【0084】
第1の顔料としてフタロシアニンを用いた、表4に示す実施例5及び7並びに比較例4〜6について考察すると以下のようになる。
【0085】
実施例5及び7においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が負であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)が正である。このように組み合わせることにより、顔料分散体の粒子径比が5以下となっている。これに対して、比較例4では、第1の顔料の(酸量−塩基量)が負であり、第2の顔料の(酸量−塩基量)も負である。このような組み合わせでは、顔料分散体の粒子径比が5より大きくなっており、顔料分散体の平均粒子径が大きくなり、良好な分散状態で分散されていないことがわかる。
【0086】
また、比較例5においては、第2の顔料として、平均粒子径が60nmの硫酸バリウムを用いている。このような場合においては、第1の顔料の(酸量−塩基量)が正で、第2の顔料の(酸量−塩基量)が負となるように組み合わせても、顔料分散体の粒子径比は5以下になっておらず、良好な分散状態が得られないことがわかる。
【0087】
また、比較例6においては、第2の顔料を用いていないため、実施例5及び7に示すような小さな平均粒子径が得られていないことがわかる。
【0088】
また、比較例7〜11においては、第2の顔料のみを分散し、第2の顔料の分散液を調製している。
【0089】
<撹拌混合時間と到達粒子径との関係>
実施例1の配合で、第1の顔料と第2の顔料をSGミルを用いて撹拌混合する際の撹拌混合時間を2時間〜9時間の範囲で変化させ、得られる顔料分散体の平均粒子径を測定し、撹拌混合時間と到達粒子径との関係について検討した。また、比較例3に相当する配合、すなわち第2の顔料を添加せずに第1の顔料のみを分散させた場合についても同様に検討し、その結果を表5及び図1に示した。
【0090】
表5及び図1において、「第2の顔料添加有り」は、実施例1の配合に相当し、「第2の顔料添加無し」は、比較例3の配合に相当する。
【0091】
【表5】

【0092】
表5及び図1から明らかなように、第2の顔料を添加した場合には、第2の顔料を添加していない場合に比べ、撹拌混合時間の経過とともに、到達粒子径が小さくなっており、分散状態が良好になっていることがわかる。また、6時間を超えて撹拌混合すると、粒子径が大きくなり再凝集する現象が認められるが、この場合においても、第2の顔料を添加することにより、再凝集が緩和されていることがわかる。
【0093】
第1の顔料としてフタロシアニンを用いた場合についても、上記と同様に第2の顔料を添加した場合と添加しない場合について、撹拌混合時間と到達粒子径との関係を検討した。「第2の顔料添加有り」は、実施例5に相当しており、「第2の顔料添加無し」は、比較例6に相当している。
【0094】
【表6】

【0095】
表6及び図2に示すように、第2の顔料を添加した場合には、第2の顔料を添加していない場合に比べ、撹拌混合時間の経過とともに、到達粒子径が小さくなっており、分散状態が良好になっていることがわかる。また、一定時間を超えて撹拌混合すると、粒子径が大きくなり再凝集する現象が認められるが、この場合においても、第2の顔料を添加することにより、再凝集が緩和されていることがわかる。
【0096】
<第1の顔料と第2の顔料の混合割合の検討>
表7に示すように、第1の顔料と第2の顔料を、混合割合を変えて混合し、得られた顔料分散体の平均粒子径を測定した。結果を表7に示す。
【0097】
【表7】

【0098】
表7に示すように、第1の顔料:第2の顔料の混合割合を、2:8〜8:2の割合とすることにより、小さな平均粒子径が得られており、これらの範囲で第1の顔料と第2の顔料を混合することが好ましいことがわかる。
【0099】
<ソリッド塗料の調製及び評価>
〔ソリッド塗料(ベース塗料)の調製〕
アクリル樹脂とメラミン樹脂を重量比で7:3の割合で顔料分散体に添加した後、キシレン及び酢酸ブチルの混合溶媒(重量比5:5)で希釈し、不揮発分(NV)35重量%とし、ソリッド塗料(ベース塗料)を調製した。アクリル樹脂としては、商品名「ダイヤナールHR」(三菱レーヨン社製、数平均分子量=5100、重量平均分子量=11500、酸価=13.5、水酸基価=75)を用い、メラミン樹脂としては、商品名「ユーバン20」(三井化学社製、数平均分子量=1300、重量平均分子量=3500、ブチル化)を用いた。
【0100】
顔料分散体としては、表8〜表10に示す第1の顔料と第2の顔料を、表8〜表10に示す混合割合で混合したものを用いた。
【0101】
表8に示すソリッド塗料においては、カーボンブラックAのPWCが5%となるように調製している。表9に示すソリッド塗料においては、キナクリドンマゼンタのPWCが10%となるように調製している。表10に示すソリッド塗料においては、キナクリドンマゼンタのPWCが9%、カーボンブラックAのPWCが1%となるように調製している。
【0102】
〔2コート1ベーク塗装〕
ガラス板の上に、上記のベース塗料(ソリッド塗料)を膜厚25μmとなるように手拭きスプレー塗装した。10分間セッティングした後、ベース塗膜(ソリッド塗膜)の上にクリヤ塗料を膜厚35μmとなるように塗装した。クリヤ塗料としては、商品名「MAC O−1810クリヤ」(日本ペイント社)を用いた。クリヤ塗料を塗装し、10分間セッティングした後、140℃で30分間加熱し、積層塗膜を硬化させた。
【0103】
得られた積層塗膜について、ガラス板の下に黒の試験板を挿入し、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて、塗膜のCIE−Labを測定し、測定結果を表8〜表10に示した。また、塗膜を目視により観察し、観察結果を表8〜表10に示した。
【0104】
【表8】

【0105】
表8に示す結果から明らかなように、本発明に従い第1の顔料と第2の顔料を混合して調製した顔料分散体を用いた場合には、顔料分散体の平均粒子径が小さくなっており、塗料中の平均粒子径も小さくなっている。従って、塗料中において良好な分散状態を示している。また、得られた塗膜は、第2の顔料を添加していない場合に比べ、L*の値が低く、黒味が強く着色力が強い塗膜であることがわかる。また、第2の顔料を添加していない場合には塗膜を斜め方向から見たシェードにおいて濁りが生じていたが、第2の顔料を添加した場合には、斜めから見たシェードにおいて濁りがなく、透明感の高い塗膜であった。
【0106】
【表9】

【0107】
表9から明らかなように、本発明に従い第2の顔料を添加して得られた顔料分散体を用いた場合には、顔料分散体の平均粒子径が小さく、また塗料中においても平均粒子径が小さくなっている。従って、塗料においても凝集が少なく、良好な分散状態であることがわかる。
【0108】
また、a*の値が高くなっており、顔料が本来有する赤色の色相が強く着色力の強い塗膜であることがわかる。また、目視観察から明らかなように、第2の顔料を用いていない場合には、斜めから見たシェードにおいて濁りが生じたが、第2の顔料を用いた場合には、シェードにおいて濁りが無く、透明感の高い塗膜であった。
【0109】
【表10】

【0110】
表10から明らかなように、赤色顔料に少量のカーボンブラックを混合させたブラック混色の場合においても、顔料分散体の平均粒子径が小さく、塗料中での平均粒子径も小さくなっている。従って、塗料にした場合にも、凝集が少なく、顔料の分散状態が良好であることがわかる。
【0111】
a*の値が高くなっていることから、顔料本来が有する赤味の強く着色力の強い塗膜であることがわかる。また、目視観察からも明らかなように、第2の顔料を添加していない場合には、斜めから見たシェードにおいて濁りが生じているが、第2の顔料を用いた場合には、シェードにおいて濁りが無く、透明感の高い塗膜であった。
【0112】
〔ベース塗料(ソリッド塗料)の調製〕
表11及び表12に示す第1の顔料と第2の顔料を混合した顔料分散体を用いる以外は、上記と同様にしてベース塗料(ソリッド塗料)を調製した。
【0113】
表11に示す塗料においては、フタロシアニンのPWCが10%となるように調製した。表12に示す塗料においては、フタロシアニンのPWCが9%、カーボンブラックAのPWCが1%となるように調製した。
【0114】
〔3コート1ベーク塗装〕
上記のベース塗料(ソリッド塗料)を用いて、以下のようにして3コート1ベークで積層塗膜を形成した。
【0115】
鋼板に、カチオン電着塗料(日本ペイント社製、商品名「パワートップV−65」)を塗装した後、中塗り塗料(日本ペイント社製、商品名「オルガH880 グレー」)を乾燥膜厚が35μmとなるように塗装した。10分間セッティングした後、80℃で10分間プレヒートし、その後上記ベース塗料(ソリッド塗料)を膜厚が25μmとなるように塗装した。10分間セッティングした後、上記と同様のクリヤ塗料を膜厚35μmとなるように塗装した。10分間セッティングした後、140℃で30分間加熱して積層塗膜を硬化させた。
【0116】
得られた積層塗膜について、上記と同様にしてCIE−Labを測定するとともに、目視で塗膜を観察した。結果を表11及び表12に示す。
【0117】
【表11】

【0118】
表11に示すように、第2の顔料を添加した場合には、顔料分散体の平均粒子径が小さくなっている。これを塗料にした場合には、平均粒子径が小さくなっており、良好な分散状態で分散していることがわかる。
【0119】
塗膜においては、a*の値が低くなっており、顔料本来が有する青味が強く、赤味の少ない色相の塗膜が得られている。また、顔料を添加していない場合には、斜めから見たシェードにおいて濁りが生じているのに対し、第2の顔料を添加した場合には、シェードに濁りが無く、透明感が高くなっている。
【0120】
【表12】

【0121】
表12に示すように、本発明に従い第2の顔料を添加した場合には、顔料分散体の平均粒子径が小さくなっている。また、塗料中においても平均粒子径が小さくなっており、塗料中において顔料が良好な状態で分散していることがわかる。
【0122】
また、塗膜においては、a*の値が小さくなっており、顔料本来が有する青味が強く、赤味の少ない色相が得られている。また、目視観察では、第2の顔料を添加していない場合には、斜めから見たシェードに濁りが生じているのに対し、第2の顔料を添加している場合には、シェードに濁りが生じず、透明感の高い色相の塗膜が得られている。
【0123】
〔メタリック塗料の調製〕
上記のベース塗料(ソリッド塗料)と同様のアクリル樹脂及びメラミン樹脂を同様の割合で顔料分散体に配合し、さらにアルミフレークを添加して、メタリック塗料を調製した。なお、上記と同様にしてキシレン及び酢酸ブチルの混合溶媒を用いて、不揮発分(NV)が35重量%となるように調製した。なお、アルミフレークとしては、東洋アルミ社製、商品名「7670NS」を用いた。
【0124】
表13に示す塗料においては、カーボンブラックAのPWCが2%、光輝性顔料(アルミフレーク)のPWCが10%となるように調製した。
【0125】
表14に示す塗料においては、キナクリドンマゼンタのPWCが7.5%、光輝性顔料のPWCが7.5%となるように調製した。
【0126】
表15に示す塗料においては、キナクリドンマゼンタのPWCが6.75%、カーボンブラックAのPWCが0.75%、光輝性顔料のPWCが7.5%となるように調製した。
【0127】
表16に示す塗料においては、フタロシアニンのPWCが7.5%、光輝性顔料のPWCが7.5%となるように調製した。
【0128】
〔2コート1ベーク塗装〕
表13〜表15に示す塗料を用いて、上記と同様にして2コート1ベーク塗装を行い、積層塗膜を形成した。
【0129】
得られた積層塗膜について、多角度分光測色計(MA68II X−Rite社製)を用いて、15°及び110°の2つの測定角度でCIE−Labを測定した。各表において15°及び110°で示している値は、この測定により得られた値である。なお、110°の角度は、シェードに相当する。
【0130】
また、各表において「平均」は、多角度分光測色計を用いて測定した値であり、全角度の平均値に相当する。
【0131】
【表13】

【0132】
表13に示すように、第2の顔料を添加した場合、平均のL*の値が低くなっており、黒味の強い塗膜が得られていることがわかる。また、110°におけるL*の値が小さくなっており、シェードにおいても黒味が強くなっていることがわかる。
【0133】
【表14】

【0134】
表14に示すように、第2の顔料を添加した場合、平均におけるa*の値が高くなっており、赤味が強くなっていることがわかる。また、110°におけるa*の値も高くなっており、シェードにおいても赤味が強くなっていることがわかる。
【0135】
【表15】

【0136】
表15に示すように、第2の顔料を添加した場合、平均におけるa*の値が高くなっており、赤味が強くなっていることがわかる。また、110°におけるa*の値も高くなっており、シェードにおいても深みのある赤色であることがわかる。
【0137】
〔3コート1ベーク塗装〕
上記と同様にして、表16に示すメタリック塗料を用い、3コート1ベーク塗装を行った。
【0138】
得られた積層塗膜について、上記と同様にして評価した。
【0139】
【表16】

【0140】
表16に示すように、第2の顔料を添加した場合、平均におけるa*の値が低くなっており、赤味が少なく、青味が強い色相を呈していることがわかる。また、110°におけるa*の値も低くなっており、シェードにおいても赤味が少なく、青味が強い色相を呈しており、シェードにおいて深みがあることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1の顔料と第2の顔料の撹拌混合時間と、これによって得られる顔料分散体における平均粒子径との関係を示す図。
【図2】第1の顔料と第2の顔料の撹拌混合時間と、これによって得られる顔料分散体における平均粒子径との関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次平均粒子径が200nm以下の着色顔料またはストラクチャーの平均粒子径が100nm以下のカーボンブラックからなる第1の顔料と、一次平均粒子径が55nm以下の硫酸バリウムからなる第2の顔料とを、一方の顔料の(酸量−塩基量)の値が正で、他方の顔料の(酸量−塩基量)の値が負となるように組み合わせ、顔料分散剤の存在下、第1の顔料と第2の顔料を媒体中に同時に分散させたことを特徴とする顔料分散体。
【請求項2】
前記第1の顔料と第2の顔料の重量配合比が、2:8〜8:2であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
顔料分散体の平均粒子径が、第1の顔料の一次平均粒子径(カーボンの場合はストラクチャーの平均粒子径)の5倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
前記顔料分散剤が、ノニオン系またはアニオン系の顔料分散剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散体。
【請求項5】
前記媒体が、有機溶媒、脱イオン水、または脱イオン水と溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散体と、バインダーとを含むことを特徴とするソリッド塗料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散体と、鱗片状光輝性顔料と、バインダーとを含むことを特徴とするメタリック塗料。
【請求項8】
請求項6または7に記載の塗料を被塗物に塗布し、ソリッド塗膜またはメタリック塗膜を形成する工程と、
前記ソリッド塗膜またはメタリック塗膜の上にクリヤ塗料をウェットオンウェットで塗布し、積層塗膜を形成する工程と、
前記積層塗膜を同時に焼き付け硬化する工程とを備えることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項9】
被塗物に中塗り塗料を塗布し、中塗り塗膜を形成する工程と、
前記中塗り塗膜の上に、請求項6または7に記載の塗料をウェットオンウェットで塗布し、ソリッド塗膜またはメタリック塗膜を形成した後、その上にクリヤ塗料をウェットオンウェットで塗布し、積層塗膜を形成する工程と、
前記積層塗膜を同時に焼き付け硬化する工程とを備えることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法により形成されたことを特徴とする塗装物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−182966(P2006−182966A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380017(P2004−380017)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】