説明

顔認証装置および顔認証方法

【課題】認証対象となる歩行者に対し認証精度を上げるための指示を的確に行なうことができる顔認証装置および顔認証方法を提供する。
【解決手段】歩行者を認証対象とし、当該歩行者から取得した顔画像をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるかを判定する顔認証装置において、歩行者の顔サイズを計測し、この計測された顔サイズに基づき現在の歩行状態を推定し、この推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、セキュリティを必要とする部屋や施設等に対する入退場を管理する入退場管理装置等において、歩行者を認証対象とし、当該歩行者から取得した顔画像をあらかじめ登録された辞書情報と照合することにより当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるかを判定する顔認証装置および顔認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔画像を用いた顔認証装置は、ビデオカメラなどのカメラを有していて、認証対象となる人物がカメラの前に立ち止まり、カメラのレンズに顔を向けることで、人物の顔画像をカメラが撮像して入力し、この入力した顔画像から得られる当該人物固有の顔の特徴情報をあらかじめ登録されている辞書情報と照合することにより当該人物はあらかじめ登録された人物であるかを判定し、あらかじめ登録された人物である場合、部屋や施設等のドア(ゲート)を開放するように構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような認証対象者が静止して直立状態で使用する顔認証装置では、カメラと顔との距離が一定範囲内に収まるように、顔検出手段により検出された顔のサイズに基づいて、認証対象者に対し直立位置の制御等を促す画面表示を行なう方法が特許文献2に開示されている。
また、歩行者を認証対象とした顔認証装置において、歩行者の顔の方向を一定に保つために、歩行者に対し案内画面を表示する方法が特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開2001−266152号公報
【特許文献2】特開2003−141541号公報
【特許文献3】特開2004−356730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の方法を歩行者を認証対象とした顔認証装置に適用しても、歩行中に撮像画像内の顔サイズが連続的に変化するので、この画面表示が瞬間現れるだけでは、歩行者に対し適切な制御を促すデータ表示にならない。
また、特許文献3の方法では、歩行者の歩行速度や複数の歩行者の歩行状態を制御することはできず、必要なフレーム数の顔画像を収集できない場合がある。
【0005】
また、自由な歩行下で顔認証等を行なおうとする際、従来の顔認証技術では歩行者の顔がカメラの正面に向く必要があったり、あるいは、立ち止まって照合に必要な画像枚数が充分撮像できるようなガイダンスを必要としている。
【0006】
複数のカメラを使用できる場合は、照合に必要な画像枚数を稼ぐことができるのに対し、単数のカメラを使用する際には照合に適した顔画像を限られた条件の中で確保する工夫が必要となる。
【0007】
歩行者の顔の向きについては、正面に向けた顔が最も一般的であり、証明写真やその他の媒体で広く流布しているからである。また、顔認証技術についても、正面顔を前提とした照合方式が主流となっている。
【0008】
ただし、カメラで歩行者を撮像する際には、ガイダンスなしであれば、カメラに近づくにしたがって顔向きの角度が生じるため、角度の程度によっては顔照合結果に著しい劣化をもたらす。
また、歩行者の歩行位置によってはカメラの視野から外れてしまい、照合に必要なフレームを落としてしまうことも考えられる。
【0009】
さらに、自由に歩行している環境下で歩行者の認証の精度(通過率)を上げようとすると、歩行者に負担にならない程度に協力してもらう必要がある。しかし、問題は、歩行者ごとに個別の指示をださなくてはいけないが、システムのもつ特性からくる要求を是正するための指示内容を伝えることが難しい。現在の状態を基本レベルの信号を融合させて歩行者に指示し、協力をよびかけなくてはいけない。
【0010】
難しい例として、たとえば、音声を用いて実現しようとする際には認証対象の歩行者に対し「だれそれ」と呼びかける必要がある。しかし、そもそも歩行者の名前があらかじめわかっていないので、効果はそれほど望めない。
また、個人を特定する目的で歩行中の詳細画像をディスプレイに表示しようとすれば、常にそのディスプレイを注視してもらう必要があり、歩行者への個別の指示は望めない。
【0011】
そこで、本発明は、認証対象となる歩行者に対し認証精度を上げるための指示を的確に行なうことができる顔認証装置および顔認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の顔認証装置は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、この顔検出手段により検出された顔領域のサイズを計測する顔サイズ計測手段と、この顔サイズ計測手段により計測された顔領域のサイズに基づき当該歩行者の現在の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示する表示手段と、前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段とを具備している。
【0013】
また、本発明の顔認証装置は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、この顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者の顔の向きを推定する顔向き推定手段と、この顔向き推定手段により推定された顔の向きに基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示手段と、前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段とを具備している。
【0014】
また、本発明の顔認証装置は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、この顔検出手段により検出された顔領域の当該歩行者の歩行に伴う時系列的遷移から当該歩行者の歩行位置を推定する歩行位置推定手段と、この歩行位置推定手段により推定された歩行位置に基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示手段と、前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段とを具備している。
【0015】
また、本発明の顔認証方法は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、この顔検出ステップにより検出された顔領域のサイズを計測する顔サイズ計測ステップと、この顔サイズ計測ステップにより計測された顔領域のサイズに基づき当該歩行者の現在の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示する表示ステップと、前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップとを具備している。
【0016】
また、本発明の顔認証方法は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、この顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者の顔の向きを推定する顔向き推定ステップと、この顔向き推定ステップにより推定された顔の向きに基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示ステップと、前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップとを具備している。
【0017】
さらに、本発明の顔認証方法は、通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、この顔検出ステップにより検出された顔領域の当該歩行者の歩行に伴う時系列的遷移から当該歩行者の歩行位置を推定する歩行位置推定ステップと、この歩行位置推定ステップにより推定された歩行位置に基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示ステップと、前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップとを具備している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、歩行者の顔サイズを計測し、この計測された顔サイズに基づき現在の歩行状態を推定し、この推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示することにより、認証対象となる歩行者に対し認証精度を上げるための指示を的確に行なうことができる顔認証装置および顔認証方法を提供できる。
【0019】
また、本発明によれば、歩行者の顔の向きを推定し、この推定された顔の向きに基づき歩行者の歩行状態を推定し、この推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示することにより、歩行者の歩行速度に応じて指示内容もそれを追跡させながら表示可能となるので、時系列的な変化にも対応可能となり、認証対象となる歩行者に対し認証精度を上げるための指示を的確に行なうことができる顔認証装置および顔認証方法を提供できる。
【0020】
また、本発明によれば、歩行者の歩行位置を推定し、この推定された歩行位置に基づき歩行者の歩行状態を推定し、この推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示することにより、歩行者の歩行速度に応じて指示内容もそれを追跡させながら表示可能となるので、時系列的な変化にも対応可能となり、認証対象となる歩行者に対し認証精度を上げるための指示を的確に行なうことができる顔認証装置および顔認証方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る顔認証装置の構成を概略的に示すものである。図1おいて、人物の身長方向に長い棒状の支持体101は、たとえば、歩行者(以後、人物ともいう)Mが歩行する通路102の側部に立設されている。なお、支持体101の高さ(長さ)は、たとえば、ほぼ歩行者Mの最大身長に対応した長さに設定されている。
【0022】
支持体101の上端には、表示手段としての表示部103が設置されている。表示部103は、歩行者Mに対して各種情報を表示するもので、たとえば、カラー液晶表示パネルなどが用いられる。
【0023】
支持体101には、撮像手段としてのビデオカメラ(以後、単にカメラと略称する)104が設置されている。ビデオカメラ104は、歩行者Mの少なくとも顔を含む画像を撮像して1フレームごとに入力するものである。
【0024】
カメラ104で入力された画像は、顔検出手段としての顔領域検出部105に送られる。顔領域検出部105は、カメラ104で入力された画像から1フレームごとに歩行者Mの顔領域を検出する。これは、たとえば、文献(福井,山口.”形状抽出とパターン照合の組合せによる顔特徴点抽出”,信学論,(D),vol.J80−D−H,No.8,pp.2170−2177,1997)に記載されている方法などを用いることで、精度の高い顔領域の検出が実現可能である。
【0025】
顔領域検出部105の検出結果は、認証手段としての顔認証部106および顔サイズ計測手段としての顔サイズ計測部107にそれぞれ送られる。顔認証部106は、顔領域検出部105により検出された顔領域の画像とあらかじめ登録された辞書情報(顔画像)とを照合することにより当該歩行者Mはあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する。
【0026】
顔サイズ計測部107は、顔領域検出部105により検出された顔領域のサイズ(横方向W、縦方向Hのサイズ)を計測する。ここに、顔サイズの計測方法は、たとえば、顔領域検出部105により検出された顔領域のX方向およびY方向の各座標値を用いることで行なう。
【0027】
顔サイズ計測部107の計測結果は、歩行状態推定手段としての歩行状態推定部108に送られる。歩行状態推定部108は、顔サイズ計測部107により計測された顔のサイズおよび当該顔サイズの変化量等を用いて歩行者Mの歩行状態を推定する。
【0028】
表示手段としての表示制御部109は、歩行状態推定部108の推定結果に基づき表示部103の表示制御を行なう。音声案内部110は、歩行者Mに対して各種情報を音声で案内するもので、表示制御部109により制御される。
【0029】
以下、歩行状態推定部108およびその推定結果に基づく表示制御について詳細に説明する。歩行状態推定部108は、たとえば、図2および下記表1に示すように、顔サイズ計測部107により計測された顔のサイズおよび当該顔サイズの変化量等を用いて歩行者Mの歩行状態を推定する。
【表1】

【0030】
すなわち、顔サイズ計測部107により計測された顔のサイズ(顔領域のサイズ)が小さい場合、歩行位置が遠すぎるものと判断し、数フレーム後に照合される通路102内の区域に進入するものと判断し、歩行者Mに対し歩行進入を促す情報(たとえば、青信号)の表示命令を表示制御部109に送る。表示制御部109は、歩行者Mに対し歩行進入を促す情報(たとえば、青信号)を表示部103に表示する。この場合、表示と同時に、歩行進入を促す情報を音声案内部110で音声により行なってもよい。
【0031】
次に、顔サイズ計測部107により計測された顔のサイズの変化量が大きい場合、すなわち、ある時刻t=t0での撮像画像とその前の時刻t=t0−1での撮像画像のサイズについて、サイズ変化量があらかじめ設定される閾値を越えてしまった場合、歩行速度が速過ぎると判断し、歩行者Mに対し歩行速度の減速を促す情報(たとえば、黄信号)の表示命令を表示制御部109に送る。表示制御部109は、歩行者Mに対し歩行速度の減速を促す情報(たとえば、黄信号)を表示部103に表示する。この場合、表示と同時に、歩行速度の減速を促す情報を音声案内部110で音声により行なってもよい。
【0032】
次に、顔サイズ計測部107により計測された顔のサイズがあらかじめ設定される一定量を超える場合、近過ぎて画像がぼける、ぶれる等の現象が予測されるるものと判断し、歩行者Mに対し歩行停止を促す情報(たとえば、赤信号)の表示命令を表示制御部109に送る。表示制御部109は、歩行者Mに対し歩行停止を促す情報(たとえば、赤信号)を表示部103に表示する。この場合、表示と同時に、歩行停止を促す情報を音声案内部110で音声により行なってもよい。
【0033】
次に、サイズ変化量があらかじめ設定される閾値以内におさまっている場合、あるいは、取得した画像のフレーム数が必要数を超えた場合、画像撮像が良好と判断し、特別な歩行指示は与えない。
【0034】
以上の過程を経て照合(認証)に必要な歩行者Mの顔画像が取得されたと判断した場合には、歩行者Mに対し画像取得成功を示す情報(たとえば、緑信号)を表示部103に表示する。この場合、表示と同時に、画像取得成功を示す情報を音声案内部110で音声により行なってもよい。
【0035】
なお、図2(a)は、通常歩行時の顔サイズ、顔サイズ変化量、それに対する表示情報(色)の具体例を示し、図2(b)は、歩行速度が速い場合の顔サイズ、顔サイズ変化量、それに対する表示情報(色)の具体例を示している。
【0036】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図3は、第2の実施の形態に係る顔認証装置の構成を概略的に示すものである。図3おいて、人物の身長方向に長い棒状の支持体201は、たとえば、歩行者Mが歩行する通路202の側部に立設されている。なお、支持体201の高さ(長さ)は、たとえば、ほぼ歩行者Mの最大身長に対応した長さに設定されている。
【0037】
支持体201には、撮像手段としてのビデオカメラ(以後、単にカメラと略称する)203が設置されている。カメラ203は、歩行者Mの少なくとも顔を含む画像を撮像して1フレームごとに入力するものである。
【0038】
カメラ203で入力された画像は、顔検出手段としての顔領域検出部204に送られる。顔領域検出部204は、カメラ203で入力された画像から1フレームごとに歩行者Mの顔領域を検出する。
顔領域検出部204の検出結果は、認証手段としての顔認証部205および顔位置推定手段としての顔位置推定部206にそれぞれ送られる。顔認証部205は、顔領域検出部204により検出された顔領域の画像とあらかじめ登録された辞書情報(顔画像)とを照合することにより当該歩行者Mはあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する。
【0039】
顔位置推定部206は、顔領域検出部204により検出された顔領域(顔)を追跡しながらその位置を推定する。すなわち、たとえば、人物のいない背景を初期画像として保存し、初期画像との差分より人物候補領域を検出する。そして、検出された人物候補領域については、その時系列的座標変化が既知の情報として得られることより、前フレームとの人物候補領域との対応をとって視野内にいる間は追跡の対象とする。
【0040】
顔位置推定部206の推定結果は、顔向き推定手段としての顔向き推定部207に送られる。顔向き推定部207は、顔位置推定部206により推定された位置の顔領域(顔)の向きを推定する。
すなわち、まず、前処理として目や鼻等の部分特徴を抽出する。その後、抽出された部分特徴の座標から平均顔モデルの対応関係を求め、周知のカメラ回転行列を用いて回転行列の内容を保持する。次に、推定された回転行列から内部パラメータとして顔の上下θ(pitch)、左右ψ(yaw)、傾きφ(roll)をそれぞれ求める。たとえば、回転行列Rについては、
R(θ,ψ,φ,χ)=R(θ)R(ψ)R(φ)
が考えられる。
【0041】
顔向き推定部207の推定結果は、歩行状態推定手段としての歩行状態推定部208に送られる。歩行状態推定部208は、顔向き推定部207により推定された顔の向き等を用いて歩行者Mの歩行状態を推定する。
【0042】
表示手段としての表示制御部109は、歩行状態推定部208の推定結果に基づき、同じく表示手段としての表示部210の表示制御を行なう。表示部210は、歩行者Mに対して各種情報を表示するもので、たとえば、図4に示すように、通路202の側部に歩行者Mの進行方向aに沿って立設された電光掲示板210a、あるいは、図5に示すように、通路202を歩行する歩行者Mの前方の床上に矢印などの指示情報を表示するプロジェクタなどの投影装置210bなどが用いられる。なお、図4は2人の歩行者M1,M2が存在する場合を示している。
音声案内部211は、歩行者Mに対して各種情報を音声で案内するもので、表示制御部209により制御される。
【0043】
以下、歩行状態推定部208およびその推定結果に基づく表示制御について詳細に説明する。歩行状態推定部208は、たとえば、下記表2に示すように、顔向き推定部207により推定された顔の向き等を用いて歩行者Mの歩行状態を推定する。
【表2】

【0044】
すなわち、顔向き推定部207により推定された顔の下向き量(pitch)があらかじめ定められた限界値を超えた場合、歩行者Mはうつむいているものと判断し、電光掲示板210aを用いる場合、図4(b)に示すように、電光掲示板210a上に矢印bを時系列的に表示することで、当該歩行者Mに対し歩行指示を表示する。なお、表示する矢印bの方向については、カメラ203の設置されている方向から歩行者Mに向かって指向するように表示する。
【0045】
また、電光掲示板210a上に、メッセージとして、たとえば、図4(b)に示すように、カメラを見て下さいを表す文字列cおよびカメラを表す絵dなどをアニメーションで表示することで、当該歩行者Mに対し顔向きの角度を調整するように指示する。
【0046】
なお、プロジェクタなどの投影装置210bを用いる場合、たとえば、図5に示すように、追跡している歩行者Mの前方に矢印eをカメラ203に向けて逐次的に表示することで、カメラ203との関係を表示し、当該歩行者Mに対し歩行指示を表示する。
【0047】
次に、顔向き推定部207により推定された顔の上向き量(pitch)があらかじめ定められた限界値を超えた場合、歩行者Mは上をむいているものと判断し、上記した歩行状態がうつむきの場合と同様な歩行指示の表示を行なうとともに、音声案内部211による音声案内をも同時に行なう。
【0048】
次に、顔向き推定部207により推定された顔の横向き量(yaw)があらかじめ定められた限界値を超えた場合、歩行者Mはカメラ203を注視していないものと判断し、たとえば、電光掲示板210aを用いる場合、図4(b)に示すように、カメラを見て下さいを表す文字列cおよびカメラを表す絵dなどをアニメーションで点滅表示することで、当該歩行者Mに対し顔向きの角度を調整するように指示するとともに、音声案内部211による音声案内をも同時に行なう。
【0049】
次に、顔向き推定部207により推定された顔の横向き量(yaw)変化量があらかじめ定められた限界値を超えた場合、歩行者Mはよそ見したものと判断し、前記した歩行状態がうつむきの場合と同様な歩行指示の表示を行なう。
【0050】
次に、歩行者Mの歩行位置による当該歩行者Mへの歩行指示について説明する。歩行者Mの歩行位置については、歩行状態推定部208が顔領域検出部204により検出された顔領域の座標の時系列的な推移を追跡する。たとえば、ガイダンスを必要としない歩行下においては、図6(上方より眺めた状態を示している)に示すように、歩行者Mは一般に進行方向を向いて歩くとすれば、カメラ203の設置角度との差ψが刻々と変化する。一般には、この差ψが顔の横向き方向の角度(yaw)として撮像される。このため、ψは歩行者Mの進行方向とカメラ203とのなす角度で決定され、歩行位置によってみえる角度が異なる様子が図7で示される。
【0051】
そこで、歩行者Mの歩行位置の推定を追跡中の顔領域座標位置の推移履歴より行なう。図8は、一般の歩行者が画面上で時間的に移動することよって、顔領域座標位置の現れる座標の変化を大まかに示したものである。カメラ203から近い順にコース3、コース2、コース1とすれば、時系列変化を3分割(t=1,t=2,t=3)の順にカメラ203に迫るものとする。
なお、図8において、E3はコース3の歩行者に対する顔領域座標位置の変化を、E2はコース2の歩行者に対する顔領域座標位置の変化を、E1はコース1の歩行者に対する顔領域座標位置の変化を、それぞれ示している。
【0052】
図8から明らかなように、コース3を歩いている歩行者がコース1を歩いている歩行者よりも顔領域の座標変化が著しく、かつ、得られる顔向きの変化も大きい。そこで、歩行状態推定部208が対象とする画像の位置よりもt秒後の位置を推定し、端を歩きそうと予測される歩行者であると判断した場合には、追跡中の歩行者に対し歩行位置の変動を求めるよう進行方向の修正を求める表示を矢印あるいは歩行アニメーションを電光掲示板210aあるいはプロジェクタなどの投影装置210bによる投影を用いて行なう。
【0053】
具体例に基づいて説明すると、たとえば、下記表3に示すように、推定した歩行者Mの歩行位置がカメラ203に近い場合、歩行状態は正常であるものと判断し、当該歩行者Mに対する歩行指示は行なわない。
【0054】
推定した歩行者Mの歩行位置がカメラ203と遠い場合、すなわち、追跡中の歩行者Mが通路202の端を歩きそうと予測される場合、歩行状態を注意する必要があると判断し、当該歩行者Mに対し歩行位置を移動するよう指示する表示を行なう。
【表3】

【0055】
なお、前記第1の実施の形態では、表示部103としてカラー液晶表示パネルを用いた場合について説明したが、第2の実施の形態と同様な電光掲示板あるいはプロジェクタなどの投影装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る顔認証装置の構成を概略的に示す構成図。
【図2】顔のサイズとその変化量による表示情報の具体例を説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る顔認証装置の構成を概略的に示す構成図。
【図4】表示部の具体例を説明するための模式図で、(a)図は斜視図、(b)は上面図。
【図5】表示部の他の具体例を説明するための模式図。
【図6】歩行者とカメラのなす角度について説明するための模式図。
【図7】顔横向きの距離毎角度変化について説明するための図。
【図8】顔領域位置の移動による顔向き角度の推定について説明するための図。
【符号の説明】
【0057】
M…歩行者、101,201…支持体、102,202…通路、103,210…表示部(表示手段)、104,203…カメラ(撮像手段)、105,204…顔領域検出部(顔検出手段)、106,205…顔認証部(認証手段)、107…顔サイズ計測部(顔サイズ計測手段)、108,208…歩行状態推定部(歩行状態推定手段)、109,209…表示制御部(表示手段)、110,211…音声案内部、206…顔位置推定部、207…顔向き推定部(顔向き推定手段)、210a…電光掲示板、210b…投影装置(プロジェクタ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、
この顔検出手段により検出された顔領域のサイズを計測する顔サイズ計測手段と、
この顔サイズ計測手段により計測された顔領域のサイズに基づき当該歩行者の現在の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、
この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示する表示手段と、
前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段と、
を具備したことを特徴とする顔認証装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき、当該歩行者に歩行状態の制御を促す情報を色、点滅、音声、メッセージのうち少なくともいずれか1つを用いて表示することを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき、当該歩行者に歩行状態の制御を促す情報を、前記通路に沿って配設された電光掲示板を用いて当該歩行者に対して表示することを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき、当該歩行者に歩行状態の制御を促す情報を、プロジェクタ等の投影装置を用いて当該歩行者の足元の床上に表示することを特徴とする請求項1記載の顔認証装置。
【請求項5】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、
この顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者の顔の向きを推定する顔向き推定手段と、
この顔向き推定手段により推定された顔の向きに基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、
この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示手段と、
前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段と、
を具備したことを特徴とする顔認証装置。
【請求項6】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出手段と、
この顔検出手段により検出された顔領域の当該歩行者の歩行に伴う時系列的遷移から当該歩行者の歩行位置を推定する歩行位置推定手段と、
この歩行位置推定手段により推定された歩行位置に基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定手段と、
この歩行状態推定手段により推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示手段と、
前記顔検出手段により検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証手段と、
を具備したことを特徴とする顔認証装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記通路に沿って配設された電光掲示板を用いて当該歩行者に対する歩行指示を逐次的に表示することを特徴とする請求項5または請求項6記載の顔認証装置。
【請求項8】
前記表示手段は、プロジェクタ等の投影装置を用いて当該歩行者に対する歩行指示を逐次的に表示することを特徴とする請求項5または請求項6記載の顔認証装置。
【請求項9】
前記表示手段は、歩行指示の矢印、歩行アニメーション、音声、メッセージのうち少なくともいずれか1つを用いて歩行指示を逐次的に表示することを特徴とする請求項5または請求項6記載の顔認証装置。
【請求項10】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、
この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、
この顔検出ステップにより検出された顔領域のサイズを計測する顔サイズ計測ステップと、
この顔サイズ計測ステップにより計測された顔領域のサイズに基づき当該歩行者の現在の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、
この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に応じた情報を当該歩行者に対して表示する表示ステップと、
前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップと、
を具備したことを特徴とする顔認証方法。
【請求項11】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、
この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、
この顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者の顔の向きを推定する顔向き推定ステップと、
この顔向き推定ステップにより推定された顔の向きに基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、
この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示ステップと、
前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップと、
を具備したことを特徴とする顔認証方法。
【請求項12】
通路を歩行する歩行者の少なくとも顔を含む画像を撮像する撮像ステップと、
この撮像ステップにより撮像された画像から前記歩行者の顔領域を検出する顔検出ステップと、
この顔検出ステップにより検出された顔領域の当該歩行者の歩行に伴う時系列的遷移から当該歩行者の歩行位置を推定する歩行位置推定ステップと、
この歩行位置推定ステップにより推定された歩行位置に基づき当該歩行者の歩行状態を推定する歩行状態推定ステップと、
この歩行状態推定ステップにより推定された歩行状態に基づき当該歩行者に対して歩行指示を逐次的に表示する表示ステップと、
前記顔検出ステップにより検出された顔領域内の画像に基づき当該歩行者はあらかじめ登録された人物であるか否かを判定する認証ステップと、
を具備したことを特徴とする顔認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−241500(P2007−241500A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60637(P2006−60637)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】