説明

顕微鏡対物レンズ

【課題】 カバーガラス等の透明な平行平面板の厚さの変化による結像性能の劣化を補正する補正環付顕微鏡対物レンズで、補正環による移動機構のスペースを確保した対物レンズを構成する。
【解決手段】 正の第1レンズ群と、光軸に沿って移動可能な正の第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズを有する第3レンズ群と、最も物体側の面が凸面の第4レンズ群とより構成され、下記条件満足する対物レンズで、補正環による移動機構を確保し、コンパクトで結像性能が良好になるようにした。
(1) 6<f2/f<16
(2) 0.2<f2/f3<1.2
(3) |R3|/|R4|>4

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズに関し、特に、物体側に配置されたカバーガラス等の透明な平行平面板の厚さが変化した場合でも良好な結像性能が得られるようにした補正環付顕微鏡対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、顕微鏡対物レンズは、カバーガラス等の平行平面板の厚さが設計値より大きく異なる場合は、その結像性能が劣化する。この傾向は、対物レンズの開口数(NA)が大きくなる程顕著になる。
【0003】
従来、カバーガラスの厚さの変化に応じて、対物レンズ内のレンズ間隔を変化させて、収差変動を補正するいわゆる補正環対物レンズが知られている。
【0004】
このような補正環対物レンズの従来例として、下記文献のレンズ系が知られている。
【特許文献1】特開平10−142510号公報
【特許文献2】特開平8−114747号公報 これら従来例のうち、特許文献1に記載されている対物レンズは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた負の屈折力を持つレンズと像側に凸面を向けた正の屈折力を持つレンズとの接合レンズからなる第1レンズ群と、負の屈折力の接合面を有する接合レンズの第2レンズ群と、発散光束を収斂光束に変える第3レンズ群と、最も像側の面が凹面である負の屈折力を有する第4レンズ群とより構成され、第2レンズ群を光軸に沿って移動させてカバーガラスの厚さの変化による収差補正を行なっている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズ成分を有し、物体からの光をほぼ平行光束に変換する正の屈折力を有する第1レンズ群と、発散性の接合面を含み合成の屈折力が正の屈折力である第2レンズ群と、強い発散作用を持つ負の屈折面を有する第3レンズ群と負の屈折力を有する第4レンズ群にて構成された対物レンズで、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、カバーガラスの厚さの変化による収差補正を行なっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ガラス等の透明な平行平面板の下に配線を行なう製品や、光学素子を組み込んだ電子機器が増加しており、液晶基板の検査等に見られるような、透明な平行平面板越しに物体の検査を行ない得る装置の需要が高まっている。
【0007】
このような装置に用いられる顕微鏡対物レンズは、高開口数であることと、長作動距離であることが求められ、補正環対物レンズにおいても高開口数であることと、長作動距離であることが求められる。補正環対物レンズの場合、更に透明な平行平面板越しの物体検査装置に組み込み易いように、コンパクトであることが要求される。
【0008】
しかし、対物レンズは、高NAで、長作動距離になるにつれ、レンズの径は大になる傾向にある。
【0009】
前記特許文献1の対物レンズは、NAが大きく、収差が抑えられ、高解像で高コントラストであるが、移動群の後ろの群の光線高を十分に抑えきれず、対物レンズの最大光線高つまり対物レンズ全体の径が大であり、装置に組み込みにくい。
【0010】
また、特許文献2の対物レンズは、NAが大きく、接合レンズにより色収差が補正され、高解像で高コントラストであるが、移動群の光線高が高く、補正群の移動メカ機構を配置するスペースがなくなり、移動機構を配置すると移動機構を含む対物レンズ全体の径が大になり、装置に組み込みにくい。
【0011】
本発明は、上記のような従来例の問題点を解決するためになされたもので、良好な結像性能を有し、かつ補正環による移動機構のスペースを確保したコンパクトな対物レンズを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の顕微鏡対物レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有し光軸に沿って移動可能な第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズを有する第3レンズ群と、最も物体側の面が物体側に凸の面で全体として負の屈折力を有する第4レンズ群にて構成され、次の条件(1)、(2)、(3)を満足するものである。
【0013】
(1) 6<f2/f<16
(2) 0.2<f2/f3<1.2
(3) |R3|/|R4|>4
ただし、f2は第2レンズ群の焦点距離、f3は第3レンズ群の焦点距離、fは対物レンズ全系の焦点距離、R3は第3レンズ群の最も像側の面の曲率半径、R4は第4レンズ群の最も物体側の面の曲率半径である。
【0014】
また、本発明の対物レンズは、上記構成のレンズ系であって、全系の焦点距離が下記条件(5)を満足するもので、更に条件(4)を満足することを特徴とする。
【0015】
(4) −10<f4/f<−2
(5) 1<f<5
ただし、f4は第4レンズ群の焦点距離である。
【0016】
本発明の顕微鏡対物レンズは、前記のレンズ構成つまり前記の第1、第2、第3、第4レンズ群よりなり、条件(1)、(2)、(3)を満足するレンズ系で、全系の焦点距離fが下記条件(7)を満足する範囲内で、第4レンズ群の焦点距離f4’が条件(6)を満足するものである。
【0017】
(6) −40<f4’/f<−20
(7) 8<f<11
本発明の顕微鏡対物レンズにおいて、第1レンズ群が下記条件(8)を満足することが望ましい。
【0018】
(8) 1<f1/f<5
ただし、f1は第1レンズ群の焦点距離である。
【0019】
前記の顕微鏡対物レンズにおいて、即ち、前記第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群にて構成され、条件(1)、(2)、(3)を満足する対物レンズで、第2レンズ群のうちの最も高い光線高をH2、第3レンズ群のうちの最も高い光線高をH3とする時、下記条件(9)を満足することが望ましい。
【0020】
(9) H2/H3<1
また、前記本発明の対物レンズにおいて、第1レンズ群の最も物体側のレンズの屈折率N1を下記条件(10)を満足する範囲内にすることが望ましい。
【0021】
(10) N1>1.7
前記顕微鏡対物レンズにおいて、第1レンズ群の物体側の面の曲率半径をR1、像側の面の曲率半径をR2とする時、下記条件(11)を満足することが好ましい。
【0022】
(11) |R1|/|R2|>1
前記本発明の対物レンズにおいて、第4レンズ群を凸レンズと凹レンズを接合した接合レンズを含む構成とし、凸レンズのアッベ数をν(4p)とする時、下記条件(12)を満足することが望ましい。
【0023】
(12) ν(4p)<35
前記本発明の顕微鏡対物レンズにおいて、第3レンズ群と第4レンズ群の間の空気間隔をDとする時、下記条件(13)を満足することが好ましい。
【0024】
(13) 0<D<3
尚、本発明の顕微鏡対物レンズは、以上述べた通りであるが、下記の通りのレンズ系も本発明の目的を達成し得る。
【0025】
即ち、本発明の対物レンズは、前記のように、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有し光軸に沿って移動可能な第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズを有する第3レンズ群と、最も物体側の面が物体側に凸の面である第4レンズ群とよりなり、前記の条件(1)、(2)、(3)を満足するレンズ系で、全系の焦点距離fが前記の(5)に示す範囲内であって、条件(4)を満足するもの、あるいは全系の焦点距離fが前記の(7)に示す範囲内であって、条件(6)を満足する対物レンズで、更に条件(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)の少なくとも一つの条件を満足するレンズ系も本発明の目的を達成し得る。
【0026】
次に、上記の本発明のレンズ構成並びに各条件の設定の理由について述べる。
【0027】
本発明の顕微鏡対物レンズは、前述のように、正の第1レンズ群と、正の第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズ成分を含む正の第3レンズ群と、最も物体側の面が物体側に凸の面である負の第4レンズ群とよりなり、前記条件(1)、(2)、(3)を満足する。
【0028】
本発明の対物レンズは、まず正の第1レンズ群により物体より出る高いNAの光線の開き角を小さくする作用を有する。
【0029】
そして、次の第2レンズ群により光束径の広がりを抑えるようにしている。これにより、球面収差や色収差を効果的に補正するようにしている。また、この第2レンズ群は、光軸に沿って移動させることによりガラス等の透明な平行平面板の厚さの変化による球面収差の変動を調整している。
【0030】
更に、第2レンズ群は、条件(1)を満足するようにその屈折力を規定している。
【0031】
この条件(1)において、f2/fが下限値の6よりも小になると、第2レンズ群の屈折力が強くなりすぎて負の球面収差が発生し、第1レンズ群で発生する球面収差を補正することが困難である。逆に条件(1)の上限値の16より大になると、第2レンズ群の屈折力が弱くなり、光束径を抑えきれず、次の第3レンズ群の最大光線高が高くなりすぎて、対物レンズ全体の径が大になる。
【0032】
次に、第2レンズ群からの光束は、第3レンズ群により収斂される。
【0033】
本発明の対物レンズは、第2レンズ群を移動させるため、この移動群の移動機構のスペースを確保する必要がある。そのため、光線高のバランスをとることを特徴としている。
【0034】
対物レンズ全体の最大光線高よりも、移動レンズ群の光線高が小であるとメカ機構を含めた対物レンズ全体の径を大にすることなしに移動レンズ群のメカ機構を配置することができる。
【0035】
このような関係にするためには、第2レンズ群と第3レンズ群の屈折力の比が条件(2)を満足する必要がある。
【0036】
(2) 0.2<f2/f3<1.2
この条件(2)は、第2レンズ群と第3レンズ群における収斂させる屈折力の比を定めたもので、これにより第2レンズ群と第3レンズ群の収斂のバランスをとるようにしている。
【0037】
第2レンズ群の焦点距離が第3レンズ群の焦点距離よりも小さいか、近い値であると両レンズ群による収斂のバランスをとることができる。
【0038】
2/f3の値が条件(2)の上限値の1.2よりも大になると、移動レンズ群(第2レンズ群)より後ろのレンズ群の光線高が高くなりすぎて、対物レンズ全体の径が大きくなる。また光線高の高い光線では、高次の収差が発生する。
【0039】
逆にf2/f3の値が下限値の0.2より外れて小になると、移動レンズ群である第2レンズ群の光線高が高くなりすぎて移動群のメカ機構のスペースがなくなる。
【0040】
更に、本発明の対物レンズは、第3レンズ群が接合レンズ成分を含むことにより、色収差の補正を行なっている。
【0041】
また、本発明のレンズ径は、第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群に大きな屈折力を有する。そのために、第4レンズ群をその最も物体側の面を物体側に凸の面とし、このレンズ群全体を負の屈折力を有するようにし、更に、第3レンズ群の最も像側の面と第4レンズ群の最も物体側の面の曲率半径の関係を条件(3)を満足するように定める必要がある。
【0042】
(3) |R3|/|R4|>4
この条件(3)より外れ|R3|/|R4|の値が4より小になると、第3レンズ群から第4レンズ群にかけて光線を十分に下げることができなくなり、十分な負の屈折力を得られず、ペッツバール和を適正な値にコントロールできなくなる。
【0043】
本発明の対物レンズは、全系の焦点距離fが、下記条件(5)の範囲内のレンズ系の場合、第4レンズ群の焦点距離f4を次の条件(4)を満足するようにしている。
【0044】
(4) −10<f4/f<−2
(5) 1<f<5
条件(4)においてf4/fの値が上限値の−2より大になると、コマ収差が発生するため好ましくない。またf4/fの値が下限値の−10より小になると、この第4レンズ群の負の屈折力が小になり、ペッツバール和を適正な値に保つことができなくなる。
【0045】
また、本発明の対物レンズの全系の焦点距離fが下記条件(7)の範囲内の場合は、第4レンズ群の焦点距離f4’が下記条件(6)を満足することが望ましい。
【0046】
(6) −40<f4’/f<−20
(7) 8<f<11
この場合も、f4’/fの値が条件(6)の上限値の−20より大になると、コマ収差が発生するため好ましくない。またf4’/fの値が下限値の−40より小になると、この第4レンズ群の負の屈折力が小になり、ペッツバール和を適正な値に保つことができなくなる。
【0047】
本発明の対物レンズは、前述のように、第1レンズ群において物体から出る高NAの光束の開き角を小さくしている。この第1レンズ群の屈折力f1は、次の条件(8)を満足するように設定することが望ましい。
【0048】
(8) 1<f1/f<5
この条件(8)は、第1レンズ群の屈折力を規定するもので、球面収差、コマ収差、色収差を補正し、また光線高をコントロールするための条件である。
【0049】
この条件(8)において、f1/fが下限値の1より小になると、この第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎて、球面収差、コマ収差、色収差が大きく補正不足になり、この第1レンズ群より後のレンズ群にての補正が困難になる。
【0050】
逆に、f1/fが上限値の5より大になると、第1レンズ群の屈折力が弱くなりすぎて、光束径を十分絞りきれなくなり、次の第2レンズ群で光線高が高くなり、移動群である第2レンズ群の移動させるためのメカ機構のスペースを確保できなるなる。更に、第2レンズ群での光線高が高くなることにより高次の球面収差が発生する。
【0051】
以上述べた本発明の顕微鏡対物レンズにおいて、下記条件(9)を満足することが望ましい。
【0052】
(9) H2/H3<1
この条件(9)において、H2/H3の値が上限値1より大になると、第2レンズ群の光線高が高くなりレンズの径が大になり、移動群のメカ機構のスペースがなくなる。
【0053】
更に、本発明の対物レンズにおいて、下記条件(10)を満足することが望ましい。
【0054】
(10) N1>1.7
第1レンズ群の最も物体側のレンズの屈折率N1に関する条件で、球面収差、コマ収差を良好に補正するための条件である。この屈折率N1を大きな値にすることにより、このレンズの像側の面の曲率を緩くして球面収差、コマ収差の発生を防ぐことができる。N1の値の条件(10)の下限値の1.7より小になると、球面収差、コマ収差が発生し、後のレンズ群にて補正することが困難になる。
【0055】
また、本発明の顕微鏡対物レンズにおいて、下記条件(11)を満足すればより望ましい。
【0056】
(11) |R1|/|R2|>1
ただし、R1、R2は、夫々第1レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面の曲率半径および像側の面の曲率半径である。
【0057】
この条件(11)は長い作動距離の対物レンズで、球面収差、コマ収差、フレア等に関するものである。
【0058】
長作動距離の対物レンズは、第1レンズ群の最も物体側の面の曲率半径を大にしてフレアを小さくし、像側の面の曲率半径を小さくして球面収差、コマ収差の発生を防ぐようにしている。
【0059】
この条件(11)において、下限値の1より小になると、フレアが発生すると共に、球面収差、コマ収差が発生し、このレンズ以降のレンズにより補正しきれなくなる。
【0060】
また、本発明の対物レンズにおいて、第4レンズ群中の接合レンズの凸レンズのアッベ数ν(4p)が下記条件(12)を満足することが望ましい。
【0061】
(12) ν(4p)<35
上記条件(12)は、色収差を補正するためのもので、前記凸レンズのアッベ数ν(4p)が35より大になると、色収差が補正不足になる。
【0062】
更に、本発明の顕微鏡対物レンズにおいて、第3レンズ群と第4レンズ群の軸上空気間隔Dを下記条件(13)を満足する範囲内に設定することが望ましい。
【0063】
(13) 0<D<3
この空気間隔Dが上限値の3以上になって大になると、第3レンズ群にて高くなっている第4レンズ群のスペースが小になりすぎる。もしくは、第4レンズ群の負の屈折力を強くせざるを得なくなり、コマ収差が発生するため好ましくない。
【発明の効果】
【0064】
本発明の対物レンズは、十分良好な結像性能を有し、補正環による移動機構のスペースを確保し、しかもコンパクトな構成で、透明な平行平面板の厚さの変化による収差変動を良好に補正し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1の断面図
【図2】本発明の実施例2の断面図
【図3】本発明の実施例3の断面図
【図4】本発明の実施例4の断面図
【図5】本発明の実施例5の断面図
【図6】本発明の実施例6の断面図
【図7】本発明の実施例7の断面図
【図8】本発明の実施例8の断面図
【図9】本発明の実施例9の断面図
【図10】本発明の実施例1のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図11】本発明の実施例1のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図12】本発明の実施例1のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図13】本発明の実施例2のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図14】本発明の実施例2のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図15】本発明の実施例2のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図16】本発明の実施例3のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図17】本発明の実施例3のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図18】本発明の実施例3のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図19】本発明の実施例4のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図20】本発明の実施例4のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図21】本発明の実施例4のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図22】本発明の実施例5のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図23】本発明の実施例5のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図24】本発明の実施例5のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図25】本発明の実施例6のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図26】本発明の実施例6のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図27】本発明の実施例6のカバーガラスの厚さが1.2mmの場合の収差図
【図28】本発明の実施例7のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図29】本発明の実施例7のカバーガラスの厚さが0.4mmの場合の収差図
【図30】本発明の実施例7のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図31】本発明の実施例8のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図32】本発明の実施例8のカバーガラスの厚さが0.4mmの場合の収差図
【図33】本発明の実施例8のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図34】本発明の実施例9のカバーガラスの厚さが0mmの場合の収差図
【図35】本発明の実施例9のカバーガラスの厚さが0.4mmの場合の収差図
【図36】本発明の実施例9のカバーガラスの厚さが0.7mmの場合の収差図
【図37】上記各実施例の対物レンズと組み合わせて用いられる結像レンズの断面図
【発明を実施するための形態】
【0066】
次に本発明の顕微鏡対物レンズの各実施例について述べる。
【実施例1】
【0067】
本発明の顕微鏡対物レンズの実施例1は、図1に示す通りの構成であって、下記データを有する。

上記データ中、r1 ,r2 ,・・・は各レンズ面の曲率半径、d1 ,d2 ,・・・は各レンズの肉厚および空気間隔、n1 ,n2 ,・・・ は各レンズの屈折率、ν1 ,ν2 ,・・・ は各レンズのアッベ数である。また、NAは開口数、WDは作動距離、βは倍率、fは全系の焦点距離、である。尚、上記値において長さの単位はmmである。
【0068】
この実施例1は、図1に示すように、単体の両凸レンズ(r1〜r2)よりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)よりなる第2レンズ群G2と、両凸レンズ(r6〜r7)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第3レンズ群G3と、両凸レンズ(r9〜r10)と両凹レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r12〜r13)と像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r13〜r14)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r12〜r14)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成された対物レンズである。
【0069】
この実施例1の対物レンズは、使用するカバーガラスの厚さに応じて第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させて補正を行なう。つまり間隔d2 、d5 を変化させて補正を行なう。
【0070】
このカバーガラスの厚さに対する作動距離WD、第2レンズ群の移動量(d2 、d5の変化量)をデータ中に示してある。
【0071】
この実施例1は、データに示すように全系の焦点距離がf=9であって条件(7)に示す範囲内の値である。したがって、第4レンズ群G4が条件(6)を満足する。又データに示すように、条件(1)、(2)、(3)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)を満足する。
【0072】
この実施例1における第2レンズ群の各位置における収差状況は、つまりカバーガラスの厚さが0mmの時、0.7mmの時、2mmの時の収差状況は夫々図10、図11、図12に示す通りである。
【0073】
尚、この実施例1の対物レンズは、無限遠補正型であり、図37に示す結像レンズと組み合わせて用いられる。したがって、前記収差図も上記結像レンズを装着した状態でのものである。
【0074】
これら図10、図11、図12より明らかなように、収差はいずれも良好に補正されており、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動は第2レンズ群の移動により良好に補正されている。
【実施例2】
【0075】
本発明の顕微鏡対物レンズの実施例2は、図2に示す通りの構成であって、下記データを有する。

この実施例2は、図2に示すように、単体の両凸レンズ(r1〜r2)よりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第2レンズ群G2と、両凸レンズ(r6〜r7)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第3レンズ群G3と、両凸レンズ(r9〜r10)と両凹レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と両凹レンズ(r12〜r13)と両凸レンズ(r13〜r14)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r12〜r14)からなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0076】
そして、この実施例2も第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させてカバーガラスの厚さの変化による収差を補正している。
【0077】
この第2レンズ群G2の移動による間隔d2 、d5 の変化で使用するカバーガラスの値に応じた第2レンズ群の移動量は、データ中に示す通りである。
【0078】
この実施例2も全系の焦点距離がf=9であって条件(7)に示す範囲内の値である。したがって、第4レンズ群G4が条件(6)を満足するレンズ系である。つまり、この実施例2はデータ中に記載するように、条件(1)、(2)、(3)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)を満足する。
【0079】
また、第2レンズ群の各位置における収差状況は、夫々図13、図14、図15に示す通りで、いずれも良好に補正されている。つまりカバーガラスの厚さの変化による収差の変動は、第2レンズ群の移動により良好に補正される。
【実施例3】
【0080】
本発明の顕微鏡対物レンズの実施例3は、図3に示す通りの構成であって、下記データを有する。

この実施例3は、図3に示すように、物体側より順に単体の両凸レンズ(r1〜r2)よりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)よりなる第2レンズ群G2と、両凸レンズ(r6〜r7)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第3レンズ群G3と、両凸レンズ(r9〜r10)と両凹レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r12〜r13)と像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r13〜r14)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r12〜r14)からなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0081】
この実施例3も第2レンズ群を移動させてカバーガラス等の厚さの変化による収差の補正を行なっている。
【0082】
データ中にはカバーガラスの厚さに対応する第2レンズ群の位置(d2 、d5 )等を示してある。
【0083】
この実施例3は、データに示すように全系の焦点距離がf=9であって条件(7)に示す範囲内の値である。したがって、第4レンズ群G4が条件(6)を満足する。又データに示すように、条件(1)、(2)、(3)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)を満足する。
【0084】
この実施例3における第2レンズ群がデータ中に示す各位置における収差状況は、図16、図17、図18に示す通りである。これら図より明らかなように、いずれも収差は良好に補正されており、カバーガラスの厚さによる収差の変動は良好に補正されている。
【実施例4】
【0085】
本発明の実施例4は、図4に示す通りのレンズ構成であって、下記データを有する。

この実施例4は、図4に示すように、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と両凸レンズ(r3〜r4)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r6〜r7)と両凸レンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第2レンズ群G2と、両凹レンズ(r9〜r10)と両凸レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と両凸レンズ(r12〜r13)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r13〜r14)とを貼り合わせた接合レンズ(r12〜r14)と両凸レンズ(r15〜r16)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r16〜r17)とを貼り合わせた接合レンズ(r15〜r17)よりなる第3レンズ群G3と、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r18〜r19)と像側と凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r19〜r20)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r18〜r20)と単体の両凹レンズ(r21〜r22)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0086】
この実施例4は、f=3.6であって、全系の焦点距離fが条件(5)に示す範囲内のレンズ系である。したがって、実施例4は、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する。
【0087】
この実施例4のレンズ系は、第2レンズ群G2を移動させてカバーガラスの厚さの変化による収差変動を補正している。つまりデータ中にカバーガラスの厚さに応じてd5とd8を変化させる。
【0088】
この実施例4の収差状況は、図19、図20、図21に示す通りで、良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さに応じて第2レンズ群を移動させて収差の変動を補正している。
【実施例5】
【0089】
本発明の実施例5は、図5に示す通りの対物レンズで、下記データを有する。


この実施例5は、図5に示すように、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と両凸レンズ(r3〜r4)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r6〜r7)と両凸レンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第2レンズ群G2と、両凹レンズ(r9〜r10)と両凸レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と両凸レンズ(r12〜r13)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r13〜r14)とを貼り合わせた接合レンズ(r12〜r14)と両凸レンズ(r15〜r16)と両凹レンズ(r16〜r17)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r15〜r17)よりなる第3レンズ群G3と、両凸レンズ(r18〜r19)と両凹レンズ(r19〜r20)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r18〜r20)と単体の両凹レンズ(r21〜r22)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0090】
この実施例5は、全系の焦点距離fがデータに示すようにf=3.6であって、条件(5)に示す範囲のレンズ系である。したがって、実施例5は、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する対物レンズである。
【0091】
この実施例5のレンズ系も、第2レンズ群G2を移動させてカバーガラスの厚さの変化による収差変動を補正している。つまりデータに示すように、カバーガラスの厚さに対応してd5とd8を変化させて収差変動を補正している。
【0092】
この実施例5の収差状況は、図22、図23、図24に示す通りで、良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動を補正している。
【実施例6】
【0093】
本発明の実施例6は、図6に示す通りの対物レンズで、下記データを有する。

この実施例6は、図6に示すように、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と両凸レンズ(r3〜r4)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r6〜r7)と両凸レンズ(r7〜r8)を貼り合わせた接合レンズ(r6〜r8)よりなる第2レンズ群G2と、両凹レンズ(r9〜r10)と両凸レンズ(r10〜r11)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r9〜r11)と両凸レンズ(r12〜r13)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r13〜r14)とを貼り合わせた接合レンズ(r12〜r14)と両凸レンズ(r15〜r16)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r16〜r17)とを貼り合わせた接合レンズ(r15〜r17)よりなる第3レンズ群G3と、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r18〜r19)と像側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r19〜r20)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r18〜r20)と単体の両凹レンズ(r21〜r22)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0094】
この実施例6は、全系の焦点距離fがf=3.6で、条件(5)の範囲の焦点距離のレンズ系である。
【0095】
この実施例6は、データに示すように、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する。
【0096】
また、第2レンズ群G2をデータに示すようにd5とd8を変化させて移動することによって、カバーガラスの厚さの変化による収差変動を補正している。
【0097】
この実施例6の収差状況は、 図25、図26、図27に示す通りで、良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動は、良好に補正されている。
【実施例7】
【0098】
本発明の実施例7は、 図7に示す通りの対物レンズで、下記データを有する。


実施例7のレンズ系は、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、単体の両凸レンズ(r6〜r7)よりなる第2レンズ群G2と、両凹レンズ(r8〜r9)と両凸レンズ(r9〜r10)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r10〜r11)を貼り合わせた3枚の接合レンズ(r8〜r11)と単体の両凸レンズ(r12〜r13)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r14〜r15)と両凸レンズ(r15〜r16)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r16〜r17)とを貼り合わせた3枚接合レンズ(r14〜r17)よりなる第3レンズ群G3と、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r18〜r19)と像側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r19〜r20)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r18〜r20)と両凸レンズ(r21〜r22)と両凹レンズ(r22〜r23)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r21〜r23)と単体の両凹レンズ(r24〜r25)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0099】
この実施例7のレンズ系は、データ中に示すように全系の焦点距離fがf=1.8であって、条件(5)の範囲内の焦点距離である。したがって、第4レンズ群が条件(4)を満足する。つまり実施例7はデータに示すように、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する。
【0100】
この実施例7も、第2レンズ群G2を移動して、つまり、カバーガラスの厚さの変化に対応して、データに示すように、間隔d5、d7を変化させて、カバーガラスの厚さの変化による収差変動を補正している。
【0101】
この実施例7の収差状況は、図28、図29、図30に示す通りで、良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動は、良好に補正されている。
【実施例8】
【0102】
本発明の実施例8の光学系は、図8に示す通りの構成で、下記データを有する。


この実施例8のレンズ系は、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、単体の両凸レンズ(r6〜r7)よりなる第2レンズ群G2と、両凸レンズ(r8〜r9)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r9〜r10)とを貼り合わせた接合レンズ(r8〜r10)と単体の両凸レンズ(r11〜r12)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r13〜r14)と両凸レンズ(r14〜r15)と両凹レンズ(r15〜r16)とを貼り合わせた3枚接合レンズ(r13〜r16)よりなる第3レンズ群G3と、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ(r17〜r18)と像側に凹面を向けた負のメニスカスレンズ(r18〜r19)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r17〜r19)と両凸レンズ(r20〜r21)と両凹レンズ(r21〜r22)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r20〜r22)と物体側に凹面を向けた単体の負のメニスカスレンズ(r23〜r24)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成された対物レンズである。
【0103】
この実施例8の対物レンズの全系の焦点距離fはf=1.8であって、条件(5)の範囲内の値で、したがって、この実施例8は条件(4)を満足する。つまり実施例8の対物レンズは、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する。
【0104】
また実施例8も、第2レンズ群G2を移動してカバーガラスの厚さの変化による収差変動を補正している。例えばデータに示すように、カバーガラスの厚さに応じて、第2レンズ群を移動して、その前後の間隔d5、d7を変化させて収差変動を補正している。
【0105】
この実施例8の収差状況は、図31、図32、図33に示す通りで、いずれも良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動は、良好に補正されている。
【実施例9】
【0106】
本発明の実施例9は、図9に示す通りの対物レンズで、下記データを有する。

この実施例9は、物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r1〜r2)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r3〜r4)と両凸レンズ(r4〜r5)を貼り合わせた接合レンズ(r3〜r5)とよりなる第1レンズ群G1と、像側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズ(r6〜r7)よりなる第2レンズ群G2と、物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズ(r8〜r9)と像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r9〜r10)とを貼り合わせた接合レンズ(r8〜r10)と単体の両凸レンズ(r11〜r12)と物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ(r13〜r14)と両凸レンズ(r14〜r15)と両凹レンズ(r15〜r16)を貼り合わせた3枚接合レンズ(r13〜r16)よりなる第3レンズ群G3と、両凸レンズ(r17〜r18)と両凹レンズ(r18〜r19)を貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r17〜r19)と両凸レンズ(r20〜r21)と両凹レンズ(r21〜r22)とを貼り合わせた接合メニスカスレンズ(r20〜r22)と物体側に凹面を向けた単体の負のメニスカスレンズ(r23〜r24)とよりなる第4レンズ群G4とにて構成されたレンズ系である。
【0107】
この実施例9の対物レンズは、全系の焦点距離fがf=1.8であって、条件(5)の範囲内のレンズ系であり、条件(4)を満足する。つまり実施例9は、条件(1)乃至条件(5)および条件(8)乃至条件(13)を満足する。
【0108】
また実施例9のレンズ系は、カバーガラス等の透明な平行平面板の厚さの変化による収差変動を、第2レンズ群G2を移動して補正している。データに示すように、この実施例9は、カバーガラスの厚さに応じて、第2レンズ群G2を移動して(間隔d5、d7を変化させて)収差変動を補正している。
【0109】
この実施例9の収差状況は、図34、図35、図36に示す通りで、いずれも良好に補正されている。つまり、カバーガラスの厚さの変化による収差の変動は、良好に補正されている。
【0110】
尚、実施例1と同様に実施例2乃至実施例9も無限遠補正のレンズ系であり、例えば図37に示すような結像レンズを配置して使用される。
【0111】
この図37に示す結像レンズは、次のデータを有する。

ここで、R1 ,R2 ,・・・R6は結像レンズの各レンズ面の曲率半径、D1 ,D2 ,・・・D5 は結像レンズの各レンズの肉厚および空気間隔、N1 ,N2 ,N3 ,N4は結像レンズの各レンズの屈折率、V1 ,V2 ,V3 ,V4は結像レンズの各レンズのアッベ数、Fは結像レンズの焦点距離である。
【0112】
前記実施例1〜実施例9の対物レンズは、図37に示す結像レンズとの間隔が50mm〜170mmの間のいずれかの間隔を設けた配置にて用いられる。
【0113】
前記各実施例の収差図は、対物レンズと結像レンズとの間隔が119mmの時のものである。しかし、119mm以外で前記範囲内の間隔であれば、前記収差図に示すものとほぼ同様の収差状況である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の対物は、補正環付顕微鏡対物レンズで、カバーガラス等の透明な平行平面板の厚さの変化にも対応でき、厚さの変化による収差変動を容易に補正し得て、常に良好な結像性能にての物体の観察が可能である。
【符号の説明】
【0115】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有し光軸に沿って移動可能な第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズ成分を含み全体として正の屈折力を有する第3レンズ群と、最も物体側の面が物体側に向けた凸面で全体として負の屈折力を有する第4レンズ群にて構成され、下記条件(1)、(2)、(3)を満足し、全系の焦点距離が下記(5)の範囲内で下記条件(4)を満足する顕微鏡対物レンズ。
(1) 6<f2/f<16
(2) 0.2<f2/f3<1.2
(3) |R3|/|R4|>4
(4) −4.643<f4/f<−2
(5) 1<f<5
ただし、f2は第2レンズ群の焦点距離、f3は第3レンズ群の焦点距離、fは対物レンズ全系の焦点距離、R3は第3レンズ群の最も像側の面の曲率半径、R4は第4レンズ群の最も物体側の面の曲率半径、f4は第4レンズ群の焦点距離である。
【請求項2】
下記条件(8)を満足する請求項1の顕微鏡対物レンズ。
(8) 1<f1/f<5
ただし、f1は前記第1レンズ群の焦点距離である。
【請求項3】
下記条件(9)を満足する請求項1又は2の顕微鏡対物レンズ。
(9) H2/H3<1
ただし、H2は第2レンズ群の最も高い光線高、H3は第3レンズ群の最も高い光線高である。
【請求項4】
下記条件(10)を満足する請求項1、2又は3の顕微鏡対物レンズ。
(10) N1>1.7
ただし、N1は第1レンズ群の最も物体側のレンズの屈折率である。
【請求項5】
下記条件(11)を満足する請求項1、2、3又は4の顕微鏡対物レンズ。
(11) |R1|/|R2|>1
ただし、R1、R2は夫々前記第1レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面および像側の面の曲率半径である。
【請求項6】
前記第4レンズ群が凸レンズと凹レンズを接合した接合レンズを含み下記条件(12)を満足する請求項1、2、3、4又は5の顕微鏡対物レンズ。
(12) ν(4p)<35
ただし、ν(4p)は、前記第4レンズ群の接合レンズの凸レンズのアッベ数である。
【請求項7】
下記条件(13)を満足する請求項1、2、3、4、5又は6の顕微鏡対物レンズ。
(13) 0<D<3
ただし、Dは第3レンズ群と第4レンズ群の光軸上の空気間隔(mm)である。
【請求項8】
物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズと両凸レンズと像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズを貼り合わせた接合レンズとよりなる前記第1レンズ群と、
物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズと両凸レンズを貼り合わせた接合レンズよりなる前記第2レンズ群と、
両凹レンズと両凸レンズを貼り合わせた接合メニスカスレンズと両凸レンズと像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズとを貼り合わせた接合レンズと両凸レンズと像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズとを貼り合わせた接合レンズよりなる前記第3レンズ群と、
物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズと像側と凹面を向けた負のメニスカスレンズを貼り合わせた接合メニスカスレンズと単体の両凹レンズとよりなる前記第4レンズ群とにて構成された請求項1、2、3、4、5、6又は7の顕微鏡対物レンズ。
【請求項9】
物体側より順に、像面側に凸面を向けた単体の正のメニスカスレンズと両凸レンズと像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズを貼り合わせた接合レンズとよりなる前記第1レンズ群と、
物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズと両凸レンズを貼り合わせた接合レンズよりなる前記第2レンズ群と、
両凹レンズと両凸レンズを貼り合わせた接合メニスカスレンズと両凸レンズと像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズとを貼り合わせた接合レンズと両凸レンズと両凹レンズとを貼り合わせた接合メニスカスレンズよりなる前記第3レンズ群と、
両凸レンズと両凹レンズを貼り合わせた接合メニスカスレンズと単体の両凹レンズとよりなる前記第4レンズ群とにて構成された請求項1、2、3、4、5、6又は7の顕微鏡対物レンズ。
【請求項10】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有し光軸に沿って移動可能な第2レンズ群と、少なくとも一つの接合レンズ成分を含み全体として正の屈折力を有する第3レンズ群と、最も物体側の面が物体側に向けた凸面で全体として負の屈折力を有する第4レンズ群にて構成され、下記条件(1)、(2)、(3)、(10)を満足し、全系の焦点距離が下記(5)の範囲内で下記条件(4)を満足する顕微鏡対物レンズ。
(1) 6<f2/f<16
(2) 0.2<f2/f3<1.2
(3) |R3|/|R4|>4
(4) −10<f4/f<−2
(5) 1<f<5
(10)N1>1.7
ただし、f2は第2レンズ群の焦点距離、f3は第3レンズ群の焦点距離、fは対物レンズ全系の焦点距離、R3は第3レンズ群の最も像側の面の曲率半径、R4は第4レンズ群の最も物体側の面の曲率半径、f4は第4レンズ群の焦点距離、N1は第1レンズ群の最も物体側のレンズの屈折率である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−83789(P2012−83789A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16026(P2012−16026)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2006−157151(P2006−157151)の分割
【原出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】