説明

風力発電などに用いられる発電機構

【課題】回転子の回転の立ち上がりを良好なものにすることができ、電力を効率良く取り出すことができる発電機構を提供する。
【解決手段】発電用コイル3…が複数備えられると共に、これら発電用コイル3…の全部又は一部のうちの一部と、残部とを個別に通電可能と通電不能のいずれか一方に切り替える切換部9が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電などに用いられる発電機構に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の発電機構として、図4に示すように、羽根車と一体回転する回転子52の側に永久磁石56…,56…が備えられ、固定シャフト51の側に発電用コイル53が備えられ、回転子52の回転で永久磁石56…,56…が発電用コイル53…を横切ることによって発電するようになされたものは、従来より提供されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ような発電機構では、風速が高く、羽根車が勢い良く回転し、各発電用コイル53…が活発に発電を行っているときは、電力を効率良く取り出すことができて、発電に伴うトルクが回転子52に作用しても良好に回転を続けることができるが、その一方、低風速時には、羽根車の回転の立ち上がり過程において、発電に伴うトルクが回転子52の回転数上昇を抑制するように働き、回転子52の回転数が立ち上がりにくく、また、立ち上がり後の回転数も低くなり、電力が取り出されにくいという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、回転子の回転の立ち上がりを良好なものにすることができ、電力を効率良く取り出すことができる発電機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、固定子と回転子のいずれか一方に永久磁石が設けられると共に、もう一方に発電用コイルが設けられ、永久磁石の磁力線を発電用コイルが相対的に横切ることによって発電するようになされた発電機構において、
前記発電用コイルが複数備えられると共に、これら発電用コイルの全部又は一部のうちの一部と、残部とを個別に通電可能と通電不能のいずれか一方に切り換える切換手段が備えられていることを特徴とする発電機構(第1発明)によって解決される。
【0006】
この発電機構では、発電用コイルが複数備えられると共に、これら発電用コイルの全部又は一部を個別に通電可能と通電不能のいずれか一方に切り替える切換手段が備えられているので、通常の回転中は、切換手段によって通電可能な発電用コイルの数を増やした状態にすることで、電力を効率良く取り出すことができる。そして、回転の立ち上がり時には、切換手段によって通電可能な発電用コイルの数を少なくした状態にすることで、回転子に作用するトルクが小さくなり、回転子の回転の立ち上がりを良好なものにすることができて、電力を効率良く取り出すことができる。
【0007】
上記の発電機構において、回転子の回転数を検知するセンサーと、
該センサーからの信号に基づいて、回転子の回転数が所定の設定値よりも低いときの通電可能な発電用コイルの数を、前記所定の設定値以上のときの通電可能な発電用コイルの数よりも少なくする切換えを前記切換手段に行わせる制御手段と
が備えられているとよい(第2発明)。
【0008】
この場合は、回転子の回転数に応じて制御手段が切換えを行うので、切換えの制御を容易にすることができ、発電機構が最適な電力の取出しを自ら行っていくことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、回転子の回転の立ち上がりを良好なものにすることができ、電力を効率良く取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1及び図2に示す実施形態は、風力発電に用いられる発電機構についてのもので、図1において、1は固定子、2は回転子である。
【0012】
固定子1は、固定シャフト1aと、該シャフト1aに同心状態に取り付けられたディスク1bとを備え、ディスク1bには、図2(イ)に示すように、内周側寄りに位置して、発電用コイル3の第1の群4を構成する複数の発電用コイル3…が周方向に列設されると共に、外周側寄りに位置して、発電用コイル3の第2の群5を構成する複数の発電用コイル3…が周方向に列設れており、第1の群4を構成している発電用コイル3…の数は、第2の群5を構成している発電用コイル3…の数よりも少なく設定されている。
【0013】
回転子2は、図示しない風車の羽根車と一体回転するように備えられており、固定子1のディスク1bを挟む上下両側に、ディスク1bと対向するように永久磁石取付け部2a,2aが備えられ、各取付け部2aに、発電用コイル3の第1の群4と対応するように、図2(ロ)に示すように、内周側寄りに位置して、永久磁石6の第1の群7を構成する複数の永久磁石6…が周方向に列設されると共に、発電用コイル3の第2の群5と対応するように、外周側寄りに位置して、永久磁石6の第2の群8を構成する複数の永久磁石6…が周方向に列設されている。
【0014】
そして、固定子1のディスク1bに設けられた各発電用コイル3…の配線は、固定シャフト1aなどを通じて導出され、切換手段としての切換部9に接続され、該切換部9において、発電用コイル3…の群4,5を単位として、
第1の群4のすべての発電用コイル3…を通電可能にし第2の群5のすべての発電用コイル3…を通電不能にした第1切換状態と、
第1の群4のすべての発電用コイル3…を通電不能にし第2の群5のすべての発電用コイル3…を通電可能にした第2切換状態と、
第1の群4のすべての発電用コイル3…を通電可能にし第2の群5のすべての発電用コイル3…も通電可能にして第3切換状態と
に切換えを行うことができるようになされている。
【0015】
また、回転子2の回転数を検知するセンサー11が備えられると共に、該センサー11からの信号に基づいて、切換部9を制御する制御部10が備えられ、該制御部10は、
回転子2の回転数が第1設定値よりも低いときに、切換部9を第1切換状態にし、
回転子2の回転数が第1設定値とそれよりも高い第2設定値との間の回転数であるときに、切換部9を第2切換状態にし、
回転子2の回転数が第2設定値を越えたときに、切換部9を第3切換状態にする
制御を行うようになされている。
【0016】
上記の発電機構では、図3(イ)(ロ)(ハ)に示すように、低風速時と、中風速時と、高風速時とで、次のような切換えが行われる。即ち、低風速時には、切換部9が、発電用コイル3…の第1,第2の群4,5を、前述の第1切換状態にする。第1切換状態では、図3(イ)に示すように、内周側寄りの少ない数の発電用コイル3…からなる第1の群4の発電用コイル3…のみが通電状態となっており、そのため、発電に伴うトルクも小さく回転子2は立ち上がり良く回転していき、低風速時にしては高回転数の回転が行われ、電力の取出しが効率良く行われる。
【0017】
そして、中風速状態になって回転子2の回転が高まると、切換部9が、発電用コイル3…の第1,第2の群4,5を、前述の第2切換状態にする。第2切換状態では、図3(ロ)に示すように、外周側寄りの、より数の多い発電用コイル3…からなる第2の群5の発電用コイル3…のみが通電状態となっており、そのため、トルクは大きくなるが、電力がより多く取り出され、電力の取出しが効率良く行われる。
【0018】
そして更に、高風速状態になって回転子2の回転が更に高まると、切換部9が、発電用コイル3…の第1,第2の群4,5を、前述の第3切換状態にする。第3切換状態では、図3(ハ)に示すように、第1,第2の群4,5の発電用コイル3…がすべて通電状態となっており、そのため、電力が更に多く取り出され、電力の取出しが効率良く行われる。
【0019】
このように、上記の発電機構では、中高風速域では、通電可能な発電用コイル3…の数が増やされて、電力を効率良く取り出すことができ、それでいて、低風速域では、通電可能な発電用コイル3…の数が減らされて、回転子2に作用するトルクが小さくなり、回転子2の回転の立ち上がりを良好なものにすることができ、低風速域での電力の取出しを効率の良いものにすることができる。
【0020】
また、上記の実施形態では、発電用コイル3の第1の群4をディスク1bの内周側寄りに配列し、第2の群5をディスク1bの外周側寄りに配列し、低風速域では、内周側寄りの第1の群4の発電用コイル3…のみが通電可能な状態にされているので、発電に伴うトルクもより一層小さいものにすることができ、立ち上がりを速めて電力を効率良く取り出すことができる。
【0021】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本発明では、発電用コイルの第1の群4をディスク1bの外周側寄りに設け、第2の群5の発電用コイルをディスク1bの内周側寄りに設けるようにしてもよいし、また、第1の群と第2の群の発電用コイルをディスク1bにおいて一列配置状態、例えば一列交互配置状態や周方向の一方半部を第1の群、もう一方半部を第2の群とする一列配置状態にしてもよい。
【0022】
また、本発明の発電機構では、永久磁石が固定子側に、発電用コイルが回転子側に備えられていてもよいし、また、発電用コイルとして、巻数等の仕様の異なる複数種類のものが用いられていてもよいし、永久磁石として、磁力の大きさなどの仕様の異なる複数種類のものが用いられていてもよい。
【0023】
また、第1発明の発電機構は、回転子の回転数が所定の設定値よりも低いときの通電可能な発電用コイルの数を、該所定の設定値以上のときの通電可能な発電用コイルの数より多くすれば効果のあるようなところで、そのような用いられ方がされてもよく、切換えの具体的な態様に制限はない。
【0024】
また、切換えの態様についても制限はなく、いずれかの発電用コイルが常時通電可能状態で、残る発電用コイルが通電可能と通電不能のいずれか一方の状態に切り替えられるようになされていてもよい。
【0025】
更に、上記の実施形態では、発電機構を風力発電に用いた場合を示したが、本発明の発電機構は、自転車や自動車等の各種機械の発電機の発電に広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の発電機構を示す断面正面図である。
【図2】図(イ)は図1のI−I線矢視図、図(ロ)はII−II線断面矢視図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は作動状態を示す断面正面図である。
【図4】従来の発電機構を示すもので、図(イ)は断面正面図、図(ロ)は図(イ)のIII−III線矢視図、図(ハ)は図(イ)のIV−IV線断面矢視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…固定子
2…回転子
3…発電用コイル
6…永久磁石
9…切換部(切換手段)
10…制御部(制御手段)
11…回転数検知センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子のいずれか一方に永久磁石が設けられると共に、もう一方に発電用コイルが設けられ、永久磁石の磁力線を発電用コイルが相対的に横切ることによって発電するようになされた発電機構において、
前記発電用コイルが複数備えられると共に、これら発電用コイルの全部又は一部のうちの一部と、残部とを個別に通電可能と通電不能のいずれか一方に切り換える切換手段が備えられていることを特徴とする発電機構。
【請求項2】
回転子の回転数を検知するセンサーと、
該センサーからの信号に基づいて、回転子の回転数が所定の設定値よりも低いときの通電可能な発電用コイルの数を、前記所定の設定値以上のときの通電可能な発電用コイルの数よりも少なくする切換えを前記切換手段に行わせる制御手段と
が備えられている請求項1に記載の発電機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−288086(P2006−288086A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105280(P2005−105280)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】