説明

風力発電機用動力伝達装置

【課題】 風力を回転体に対して効率よく伝達する。
【解決手段】 風力を螺旋羽根の捕風面に集中させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向を鉛直とする縦型螺旋羽根式の風力発電機用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の原動力伝達装置に関係する先行技術文献情報として、例えば、下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特開平9−68152号公報
【0003】
例示した特許文献には、風力が作用する受面部を有する螺旋羽根を、軸線方向を鉛直とする縦式の回転軸の外周に対して、螺旋方向が回転軸の軸線方向に沿い、受風面部が回転軸の径方向に突出するよう配設してなる回転体を備えた縦型螺旋羽根式の原動力伝達装置(風力原動装置)が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最初に、風についてであるが、回転体において追い風となって回転させる風を順風、向かい風となって回転を阻む風を逆風として説明を行う。
ところで螺旋羽根に対して作用する風力を回転体に対して効率よく伝達するには、勢力の全部又はその大半を主軸の軸心を境とする一方向側面即ち順風受面部にのみ作用させることが好ましい。
しかしながら、前記螺旋羽根は、その構造により、側面視(風力が作用する方向)において、螺旋羽根の順風受面部と逆風受面部とが主軸の軸心を境に左右に分かれて同一方向に向き、螺旋羽根に対する勢力が順風受面部と逆風受面部の双方に同じ力で作用することにより、風力が拮抗し、回転体に対して風力を効率的に伝達ができないと云うことがあった。
【0005】
本発明は、風力を回転体に対して効率よく伝達することを課題とし、この課題を解決した風力発電機用動力伝達装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、軸心方向を鉛直とする主軸の外周に対して、風力により回転させるための螺旋羽根を配設してなる回転体を備えた風力発電機用動力伝達装置において、螺旋羽根は、回転体に作用する順風を捕集する凸状部や凹状部を備えた捕風面とする一方、逆風が作用する面にはこれを逃がすため、前記回転体の外側に、螺旋羽根の上下方向全域に亘る範囲で反作用させないようにする風除板を、回転体と同心で回転可能に支持してなることを特徴とする風力発電機用動力伝達装置にしたことである。
【0007】
風力をより効率良く回転体の回転に伝達するという観点から、該風除板を風向きに応じて移動させて、対風向状態を保持する案内板・風向板を連設することが好ましい。
【0008】
この場合、台風や嵐等のきわめて強い風による螺旋羽根の破損防止や過大電力の発生を制御するため前記風除板には、螺旋羽根の上下方向全域に亘る範囲で前記捕風面に対向させて該捕風面に作用する風量を制御する制御板が一体的に備えられ、該制御板は、風除板に対してその一端部が伸縮するような方向に、風除板と同心で回転することで捕風面に対する風量を調節可能に支持され、且つ風力に応じて自動的に調節する調節手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の風力発電機用伝達装置によれば、風力を螺旋羽根の一方側(捕風面)のみに集中させることができるので、該風力を回転体に対して効率よく伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る風力発電機用動力伝達装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本形態の風力発電機用動力伝達装置(以下、「伝達装置」と略称する。)Aは、軸心方向を鉛直として基礎Hに固定された主軸1の外周に対して、回転可能に嵌合された回転軸10と、該回転軸10の外側に配設され、順風3により回転軸10を回転させるための螺旋羽根2とからなる回転体Bと、該回転体Bの外側に位置し、この回転体Bの主軸と同心で回転可能に支持されている、逆風4を防止する風除板5とを備えている。
【0012】
図中符号Hは前記主軸1を固定する基礎である。台座Dは基礎Hの上に設けられ風力案内部材C及び後述する制御板7の下側を支持する。符号Eは前記主軸1と風力案内部材C及び制御板7の上側を支える天盤であり、台座Dと天盤Eとに亘って、風除板5・風力案内部材C及び制御板7を支持している。
符号D1は、台座Dの上面に至る雨水や雪を排出する排出孔である。
【0013】
図中符号Fは、風力案内部材C及び制御板7を回転し案内する案内レールであり、前記主軸1と同心円として該主軸を囲むように、前記台座Dの上面と天盤Eの下面とに設けられている。
前記案内レールFは、風力案内部材Cが嵌合する外側嵌合突起F1と制御板7が嵌合する内側嵌合突起F2が形成されてなる。
【0014】
図中符号Gは上方に雨雪カバーG1を備えた発電機であり、例えば、該発電機Gに対して嵌入した前記回転体Bの下端部が、発電機G内部に設けられた発電手段(図示せず)に連結され、該回転体Bの回転を前記発電手段に伝達することで発電することができる。
【0015】
以下、本形態の伝達装置Aを詳述する。
前記主軸1は、基準風力に対し、基礎Hに転倒不可能に固定されている。
前記螺旋羽根2は、その一方面を、該面に作用する順風3を捕集する捕風面30とし、他方面は、凹凸が無い逆風面40としてなり、逆風面40が該面に作用しようとする逆風4を逃がす風除板5で塞がれて、逆風4が作用しないようにされている。
前記捕風面30は、螺旋羽根2の外縁部全域に立設された捕風壁31と、該捕風壁31の内側と前記回転体の間に位置し、螺旋羽根2の螺旋方向に沿って多数立設された捕風隔壁32とで形成された複数の凹状部3Aを備えて構成されており、該捕風面30に作用する風を前記凹状部3Aにより、効率よく捕風するようにしている。
すなわち、本形態の回転体Bによれば、主軸1の軸心を境に左右に分かれて同一方向に向く捕風面30と逆風面40に作用する風を、捕風面30では複数の凹状部3Aが捕風する一方、逆風面40において逃がすことにより、風力を効率よく回転体Bの回転に伝達することができる。
前述の回転体Bは螺旋羽根2と捕風壁31・捕風隔壁32等により構成され、この上部及び下部が軸受(図示せず)によって天盤Eと台座Dとの間で回転するようになっており、その下部が発電機Gに接続され動力を伝達する。
尚、本形態では、前記捕風面が捕風壁、捕風隔壁により構成された複数の凹状部により構成された形態を例示したが、本発明では、例示した凹状部に限定するものではなく、該凹状部における捕風隔壁のみを立設してなる凸条部としてもよい(図示せず)。
【0016】
前記風力案内部材Cは、前記螺旋羽根2の上下方向全域に亘り、前記逆風受面部への風向に対向して風力を作用させないにする風除板5と、風向きに応じて前記風除板5を移動させて、該風除板5の逆風受面部に対する風向状態を保持する案内板6と、前記捕風面に対して対向することで該捕風面に作用する風量を制御する制御板7と、該制御板7を風の強さに応じて捕風面に対する風量を自動的に調節する調節手段8とを備えて構成されている。
【0017】
風除板5は、平面視において前記外側嵌合突起F1の略1/4周とする風除板本体51と、該風除板本体51の上下端に外側嵌合突起F1に嵌合される嵌合凹部52を備えて構成されている。
案内板6は、風除板本体51の後端側から連続して前記案内レールFよりも外方へ延設されてなるものであり、延設された風力案内部材Cに風が作用すると、その風力により押されるように移動し、且つこの移動により風除板5が絶えず逆風に対向するようになっている。
尚、本形態でいう風除板本体51の後端側とは案内板6側であり、該案内板6側の反対側の端部を先端側という。
又、符号63は、風を受けることで案内板6の方向をずれないように保持するための風向板である。
【0018】
具体的には、前記風除板本体51の後端部から延設された案内板6の先端部が、主軸1を挟んで風除板本体51の先端側と対向し、該風除板本体51の他端部から延長される主軸1の平面中心線上に位置するとともに、該平面中心線と平行にされていて、案内板6が風向きと平行になるとその移動が停止するようになっている。
そして、案内板6の先端部が風向きと平行になった際に、前記風除板5が風向きに対向する。逆風受面部に風を作用させない状態となり、風が前記捕風面にのみ作用する状態となる。
又、風向きが変わった際には、再び案内板6に対して風が作用することで案内板6が移動し、これにより風除板5が移動する。
すなわち、本形態の風除板5と案内板6からなる風力案内部材Cによれば、風向きにかかわらず、風を捕風面に対して効率よく作用させることができる。
【0019】
又、本形態の風力案内部材Cには、前述の制御板7と該制御板7を風力の強さに応じて捕風面に対する風量を自動的に調節する調節手段8とが備えられている。
制御板7は、平面視において前記内側嵌合突起F2の略1/8周とする制御板本体C11と、該制御板本体C11の上下端に前記内側嵌合突起F2に嵌合される嵌合凹部C12を備えて構成され、前記風除板5と回転体Bとの間に収納された状態から風除板5の先端側から突出して移動するようにされている。
調節手段8は、前記案内板6の表面側に突出した移動可能に軸支された風受板81と、その移動量に対応して制御板7を出没させるためのプッシャー82と、これら風受板81とプッシャー82とに亘って配線されたケーブル83とから構成されている。
【0020】
本形態のプッシャー82は、油圧により前記制御板7を出没させるようにしたものを例示している。
具体的には、操作ケーブル83により前記制御板7を出没させるに油圧が作用するようにしてあり、通常では、プッシャー82に対して制御板7の収納状態を保持する方向に油圧を作用させ、且つその油圧は、操作ケーブル83を介して前記風受板81の移動を阻止する方向に作用している。
又、前記風受板81に対して、前記操作ケーブル83を介して前記風受板81の移動を阻止する方向の油圧以上の風力が作用すると、その油圧に抗して風受板81が移動して操作ケーブル83を引っ張り、そして、該操作ケーブル83を引っ張り力により、プッシャー82に対して制御板7を押し出す方向に油圧を作用させるようにしている。
更に、前記風受板81に対する風力の強さに応じて、操作ケーブル83の引っ張り量が増減され、この引っ張り量に応じてプッシャー82に対して制御板7を押し出す方向への油圧が強弱されるようにしていて、この油圧の強弱により制御板7の突出量を増減することで、制御板7の風力の強さに応じた捕風面に対する風量の調節を行うことができる。
すなわち、本形態の風力案内部材Cによれば、制御板7と調節手段8の構成により、捕風面に対する風量の調節を自動的に行うことができ、この調節より、台風や嵐等のきわめて強い風による螺旋羽根の破損防止をしたり過大電力の発生を制御したりできる。
尚、前記油圧の力を任意に設定することで、風力に対応する制御板7の突出量や突出開始のタイミングを変更することができる。
又、本形態のプッシャーは油圧により伸縮する蛇腹式のものやテレスコピック式のものが使用できる。
【0021】
すなわち、本形態は、軸線方向を鉛直方向とする回転軸の外周に対して、風力により回転軸を回転させるための螺旋羽根を配設してなる回転体を備えた風力発電機用動力伝達装置において、前記螺旋羽根は、その一方面を該面に作用する風を捕集する凸状部又は/及び凹状部を備えた補風面とする一方、他方面を、該面に作用する風を逃がすフラットな逆風面とし、前記回転体の外側に、螺旋羽根の上下方向全域に亘る範囲で前記逆風面に対向させて該逆風面に対して風を作用させないようにする風除板を、回転体の回転軸心と同心で回転可能に支持してなることを特徴としている。
又、前記風除板には、該風除板を風向きに応じて回転させて、該風除板の逆風面に対する対向状態を保持する案内板が連設されていることを特徴としている。
又、前記風除板には、その周面に前記螺旋羽根の上下方向全域に亘る範囲で前記補風面に対して対向させて該補風面に作用する風量を制御する制御板が一体的に備えられ、該制御板は、風除板に対してその一端部が伸縮するような方向に、風除板の回転軸心と同心で回転することで前記補風面に対する対向量を調節可能に支持され、且つ風力に応じて自動的に調節する調節手段によりその対向量が調節されることを特徴としている。
【0022】
尚、制御板の出没を調節する調節手段の形態は、例示した油圧で行うもの以外の形態も含み、その形態として、例えば、風受板の移動量を検出して、その検出結果に基づいて制御板の出没量を調節するように電気的に制御する形態が挙げられる(図示せず)。
又、前記で例示した形態では、風力案内部材を備えた形態を示しているが、本発明では、例示した風力案内部材を備えず、前記構成の回転体のみで構成でもよく、このような構成でも、前記した回転体の捕風面と逆風面の作用により、風力を回転体Bの回転に伝達することができる。
又、例示した形態では、1枚の螺旋羽根を主軸に対して1周させた形態のものであるが、この螺旋羽根を、複数設けることで効率が良くなる。
又、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る風力発電機用動力伝達装置の一形態を示す一部切欠正面図で要部を拡大して示す。
【図2】図1の(2)−(2)線断面図。
【図3】制御板が突出した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0024】
A:風力発電機用動力伝達装置
B:回転体
C:風力案内部材
F:案内レール
G:発電機
H:基礎
F1:外側嵌合突起
F2:内側嵌合突起
1:主軸
2:螺旋羽根
3:順風
4:逆風
31:捕風壁
32:捕風隔壁
3A:凹状部
5:風除板
6:案内板
7:制御板
8:調節手段
51:風除板本体
52:嵌合凹部
61:表面部
62:案内板
81:風受板
82:プッシャー
83:操作ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向を鉛直として基礎に固定された主軸の外周に対して、風力により回転させるための螺旋羽根を配設してなる回転体を備えた風力発電機用動力伝達装置において、
前記回転体は、受風面に作用する風を捕集する凸状部や凹状部を備えた捕風面とする、一方逆風をうける面には、該面に作用する風を逃がすため、前記回転体の外側に、螺旋羽根の上下方向全域に亘る範囲で逆風を作用させないようにする風除板を、回転体と同心で回転可能に支持してなることを特徴とする風力発電機用動力伝達装置。
【請求項2】
前記風除板には、該風除板を風向きに応じて移動させて、逆風を逃がすと同時に対風向状態を保持する案内板や風向板が連設されていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電機用動力伝達装置。
【請求項3】
前記風除板には、過大な回転が生じて回転体の破損や過大な電力が発生しないように風力に応じて回転を制御できるようにするため、該風除板の一部に風受板を連設し、これの移動に応じて油圧装置や電力等にて制御板を風除板の前方に押し出し、受風面を縮小させ、回転力を制御することができることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風力発電機用動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−133789(P2008−133789A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321510(P2006−321510)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【特許番号】特許第3987566号(P3987566)
【特許公報発行日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(502012495)株式会社アサヒ建設コンサルタント (5)
【Fターム(参考)】