説明

風力発電装置

【課題】弱風における発電量を改善すると共に大型大出力タイプにも対応可能な風力発電装置を提供する。
【解決手段】回転軸24の長手方向一端部24aは、その反対側の長手方向他端部24bよりも高い位置に位置するように傾斜しており、この長手方向一端部24aには、風力に応じて回転するように羽26が固定されている。傾斜した回転軸24の長手方向一端部24aに羽26が取り付けられているので、図1(b)に示すように羽26の回転面は鉛直面上には無く、鉛直面に交差する面上にあることになる。羽26は、風力によって回転する途中において支柱22に対向する。支柱22のうち羽26に対向する対向面22fは、回転軸24の傾斜角度(図2(b)のθ)以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しており、支柱22のうち対向面22fになる部分の太さは、下方ほど太くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力によって羽を回転させて発電する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力によって羽を回転させて発電する風力発電装置が知られている。この風力発電装置の高出力型の一例について図3を参照して説明する。図3は、従来の高出力型の風力発電装置の一例を示す斜視図である。
【0003】
風力発電装置10は、鉛直方向に延びる支柱12と、風向きに応じて自在に回転するように支柱12の上端部12aに固定された回転軸14と、風力に応じて回転するように回転軸14の長手方向一端部14aに固定された複数(図1では3枚)の羽16とを備えた構造をしている。このような構造の風力発電装置10では、支柱12と回転する羽16との干渉(衝突)を防止するために、これらの横断面の大きさに限度があり、限度を超えて支柱12を太くすることができない。このため、風力発電装置10の設計基準を超えた強風を受けた場合、羽16や支柱12が折損するという事故が発生するおそれがある。また、上記と同様の理由(支柱12と羽16との干渉を防止する)から、風を受ける羽16の面積に制約があり、この羽16の面積をむやみに広くすることはできない。このため、風力の小さいときに発電する風力量は小さくなるといった問題がある。
【0004】
そこで、羽の高さを風力に合わせて調整し、風力の小さいときには羽の高さ(従来の羽では長さに相当)を高く(長く)し、風力の大きい場合には羽の高さを低く(短く)する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この構造では、羽の高さを調整する機構が複雑になるので風力発電装置のコストが増加する。また、羽が一体の剛体構造ではないので、強風下における羽の強度を確保するための対策が必要となる。
【0005】
また、支柱と発電機の間に水平の回転軸を設けておくと共に、強風時に支柱や支線の弾性変形を利用し、羽の回転面が傾斜するような構造の風力発電装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この構造の風力発電装置では、強風による発電装置の破損を防止することができるとされている。しかし、このような構造は軽量小出力タイプの小型発電機には採用可能であるが、大型の大出力タイプの発電機には採用が難しい。この理由は、風圧は構造物の寸法相似則である寸法の2乗に比例するものの、重力は体積(即ち、寸法の3乗)に比例するので、大型になるほど支柱等の太さを相似形状よりも大きくしなければならず、必要とされる剛性が急激に増加するからである。しかも、水平方向に延びる回転軸に回転自在に固定された羽の回転は突風等の急激な風圧の増加等には対応できず、さらに、この構造の風力発電装置では、通常の使用時には支柱や支線の弾性変形及びばね(又は、カウンターウエイト)によって羽の回転面を垂直に戻すので、羽と支柱が干渉しない範囲に支柱の太さを制限する必要があり、風圧をさらに強く受ける大型の発電機の羽の長さや幅の寸法に限界がある。
【特許文献1】特開2007−085271号公報
【特許文献2】特開平11−270456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、弱風における発電量を改善すると共に大型大出力タイプにも対応可能な風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の風力発電装置は、鉛直方向に延びる支柱と、風向きに応じて回転するように前記支柱の上端部に固定された回転軸と、風力に応じて回転するように前記回転軸の長手方向一端部に固定された羽とを備えた風力発電装置において、
(1)前記回転軸は、前記長手方向一端部とは反対側の長手方向他端部よりも高い位置に該長手方向一端部が位置するように傾斜しているものであることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、
(2)前記支柱は、該支柱のうち前記羽に対向する対向面が、前記回転軸の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであってもよい。
【0009】
さらに、
(3)前記支柱は、複数の柱から構成されるラーメン構造又はトラス構造であって、前記複数の柱は、前記回転軸の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであってもよい。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の他の風力発電装置は、鉛直方向に延びる支柱と、風向きに応じて自在に回転するように前記支柱の上端部に固定された回転軸と、風力に応じて回転するように前記回転軸の長手方向一端部に固定された羽とを備えた風力発電装置において、
(4)前記羽は、前記支柱に向き合う位置に該羽が到達したときには、該支柱から離れる方向に傾斜しているものであることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、
(5)前記支柱は、該支柱のうち前記羽に対向する対向部分が、前記羽の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜している外側面を有するものであってもよい。
【0012】
さらに、
(6)前記支柱は、複数の柱から構成されるラーメン構造又はトラス構造であって、前記複数の柱は、前記羽の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであってもよい。
【0013】
さらにまた、
(7)前記羽のピッチ角を該羽の位置に応じて変更させるピッチ角変更器を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転軸(又は、羽)を傾斜させることにより、羽と支柱とを干渉させずに支柱の曲げ強度を改善できるので、軽量化と強風に対する強度を両立した風力発電装置を提供できる。さらに、支柱の強度を高められるので、羽の受風面積を増加でき、弱風の際にも高出力が確保される風力発電装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、垂直方向に延びる支柱を備えた風力発電装置に実現された。
【実施例1】
【0016】
図1を参照して、本発明の風力発電装置の一例を説明する。図1(a)は、本発明の風力発電装置の一例の概略を示す斜視図であり、(b)は、構成部品の位置関係を示す模式図である。
【0017】
風力発電装置20は、鉛直方向に延びる支柱22を備えている。この支柱22は、後述するように回転軸24が傾斜しているので従来よりも太くできる。この点についての詳細は後述する。支柱22の上端部22aには回転軸24が固定されており、この回転軸24は、風向きに応じて自在に回転するように固定されている。回転軸24の長手方向一端部24aは、その反対側の長手方向他端部24bよりも高い位置に位置するように傾斜しており、この長手方向一端部24aには、風力に応じて回転するように羽26が固定されている。図1では羽26は3枚であるが、何枚でもよい。
【0018】
傾斜した回転軸24の長手方向一端部24aに羽26が取り付けられているので、図1(b)に示すように羽26の回転面は鉛直面上には無く、鉛直面に交差する面上にあることになる。羽26は、風力によって回転する途中において支柱22に対向する(向き合う)。支柱22のうち羽26に対向する対向面22fは、回転軸24の傾斜角度(図2(b)のθ)以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しており、支柱22のうち対向面22fになる部分の太さは、下方ほど太くなっている。また、支柱22の下部22bを最も太くしてもよい。
【0019】
上記のように回転軸24を傾斜させたので、羽26が支柱22に向き合う位置にあるときは支柱22から離れることとなり、支柱22と羽26が干渉せず(衝突せず)、しかも、この離れた分の長さだけ支柱22を太くできる。強風で発生する風下方向の横荷重による支柱22の曲げモーメントに対して、支柱22の下部22bは強度を必要とされるが、この強度的に厳しい支柱22の下部22bを太くできるので支柱22の強度が大幅に改善する。
【0020】
支柱22を中空部材で構成した場合、支柱22の外径を2倍に増加できれば、曲げ強度は4倍に向上する。支柱22の重量を増加させないためにその板厚を半分にしても曲げ強度は2倍に向上でき、風圧が風力の2乗に比例することから限界風力が1.4倍に向上する。
【0021】
一方、支柱22の強度を向上する必要がない場合には外径を2倍にすれば板厚を1/4に軽減しても曲げ強度は変わらない。従って、同じ強度の支柱を半分の材料で構成することができ、軽量化を図ることができる。
【0022】
支柱22の強度を2倍程度に強化した場合には、羽26の受風面積を2倍以内に増加でき、弱風下であっても発電量を2倍まで改善できる。羽26の面積を増加するときは、羽26の幅を2倍にできれば厚さも2倍程度に増加できるので、羽26の曲げ強度は受圧面積以上に改善し、羽26の破損も防止できる。
【0023】
また、回転軸24の傾き(傾斜角度θ)が5°以内の場合、ピッチ角の変化も無視できる。しかし、この傾きが5°を超えた場合は、風の方向となる水平面に対する左右の羽26(回転中の羽26は正面から見て左に位置したり右に位置したりする)のピッチ角の差が大きくなるので、発電効率の低下が予想される。周知の高出力型風力発電装置の羽のピッチ角は風力に合わせて調整可能であり、上に位置する羽(鉛直方向に一致して上に延びた状態の羽)と下に位置する羽(鉛直方向に一致して下に延びた状態の羽)の受ける風速の変化にも対応しているものもあり、この機構を利用して左右の羽(左右に位置した状態の羽)でピッチ角を水平面に対して同等となるよう変化させたほうがよい。この場合は、風力発電装置20にピッチ角変更器を備えておき、上記のように左右の羽のピッチ角も適宜に変更する。
【0024】
ところで、例えば通常のメガワット級風力発電装置では、支柱の最大径が支柱の高さ(長さ)のおよそ10分の1のものが多く採用されている。このような風力発電装置では、羽26の幅を変えずに支柱22の強度や軽量化のために支柱22の最大径を2倍に増加させる必要があるときは、羽26との支柱22の対向面22fをアークタンジェント20分の1、即ち僅か3度傾斜させればよく、回転軸24の傾斜角は3度程度でよい。出力増加のために羽26の幅を増加させる場合には、さらにクリアランスを確保するために回転軸24を傾斜させる必要があるが、この場合でも5度程度でよい。
【0025】
上記したように風力発電装置20では、回転軸24を傾斜させることにより、羽26と支柱22とを干渉させずに支柱22の曲げ強度を改善できるので、軽量化と強風に対する強度を両立した風力発電装置20を提供できる。さらに、支柱22の強度を高められるので、羽26の受風面積を増加でき、弱風の際にも高出力が確保される風力発電装置20を提供できる。
【0026】
なお、上記した風力発電装置20では支柱22を中空又は中実のものとしたが、支柱22を、図2に示す支柱32のように複数の柱から構成されるラーメン構造又はトラス構造にしてもよく、この場合は、これら複数の柱は、回転軸24の傾斜角度(θ)以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜させる。
【実施例2】
【0027】
図2を参照して、本発明の風力発電装置の他の例を説明する。図2(a)は、本発明の風力発電装置の他の例の概略を示す斜視図であり、(b)は、構成部品の位置関係を示す模式図である。
【0028】
風力発電装置30は、中心軸32cが鉛直方向に延びる支柱32を備えている。この支柱32は、後述するように羽36が傾斜しているので従来よりも太くできる。この点についての詳細は後述する。支柱32の上端部32bには回転軸34が固定されており、この回転軸34は、風向きに応じて自在に回転するように固定されている。回転軸34は水平方向に延びたものであり、この長手方向一端部34aには、風力に応じて回転するように羽36が固定されている。図2では羽36は3枚であるが、何枚でもよい。
【0029】
水平方向に延びる回転軸34には、傾斜した羽36が固定されている。傾斜角度は、図2(b)に示すように、鉛直線に対してαである。この羽36は、支柱32に向き合う位置に羽36が到達したときには、支柱32から離れる方向に傾斜している。風の向きに応じて回転軸34は回転するので、羽36は、回転軸34から風上に向かって傾斜することとなり、各羽36の先端は回転軸34よりも風上に位置していることとなる。上記のように羽36が支柱32から離れる方向に傾斜している場合、羽36の重心位置が支柱32から離れるので、支柱32に作用するモーメントが大きくなる。しかし、羽36が支柱32よりも風上に配置されることとなるので、強風時に発生する支柱32にとって最も厳しいモーメントを相殺して緩和することができる。
【0030】
上記の風力発電装置30では、羽36を上記のように傾斜させただけなので、羽36が左右に位置するときの各羽36のピッチ角は対称となり、傾斜角αを大きくしても左右位置でのピッチ角の調整は不要となる。したがって、支柱32と羽36の干渉はいっそう確実に解消されるので、支柱32の設計自由度は広くなり、支柱32の更なる軽量化やコストの低減が可能となる。
【0031】
ところで、例えば通常のメガワット級風力発電装置では、支柱の最大径が支柱の高さ(長さ)のおよそ10分の1のものが多く採用されている。このような風力発電装置では、羽36の幅を変えずに支柱32の強度や軽量化のために支柱32の最大径を2倍に増加させる必要があるときは、羽36との支柱32の対向面32dをアークタンジェント20分の1、即ち僅か3度傾斜させればよく、羽36の傾斜角は3度程度でよい。出力増加のために羽36の幅を増加させる場合には、さらにクリアランスを確保するために羽36を傾斜させる必要があるが、この場合でも5度程度でよい。
【0032】
なお、上記した風力発電装置30では支柱32をラーメン構造又はトラス構造にした。この場合、支柱32のうち鉛直方向にやや傾斜して延びる4本の柱32bは、羽36に対向する対向部分となる。この柱32bの外側面は、羽36の傾斜角度(α)以下の角度だけ鉛直方向(中心軸32cの延びる方向)に対して傾斜している。なお、支柱32を、図1の支柱22のように中空又は中実のものにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明の風力発電装置の一例の概略を示す斜視図であり、(b)は、構成部品の位置関係を示す模式図である。
【図2】(a)は、本発明の風力発電装置の他の例の概略を示す斜視図であり、(b)は、構成部品の位置関係を示す模式図である。
【図3】従来の高出力型の風力発電装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
20,30 風力発電装置
22,32 支柱
24,34 回転軸
26,36 羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる支柱と、風向きに応じて回転するように前記支柱の上端部に固定された回転軸と、風力に応じて回転するように前記回転軸の長手方向一端部に固定された羽とを備えた風力発電装置において、
前記回転軸は、
前記長手方向一端部とは反対側の長手方向他端部よりも高い位置に該長手方向一端部が位置するように傾斜しているものであることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記支柱は、
該支柱のうち前記羽に対向する対向面が、前記回転軸の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記支柱は、
複数の柱から構成されるラーメン構造又はトラス構造であって、
前記複数の柱は、前記回転軸の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項4】
鉛直方向に延びる支柱と、風向きに応じて自在に回転するように前記支柱の上端部に固定された回転軸と、風力に応じて回転するように前記回転軸の長手方向一端部に固定された羽とを備えた風力発電装置において、
前記羽は、
前記支柱に向き合う位置に該羽が到達したときには、該支柱から離れる方向に傾斜しているものであることを特徴とする風力発電装置。
【請求項5】
前記支柱は、
該支柱のうち前記羽に対向する対向部分が、前記羽の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜している外側面を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記支柱は、
複数の柱から構成されるラーメン構造又はトラス構造であって、
前記複数の柱は、前記羽の傾斜角度以下の角度だけ鉛直方向に対して傾斜しているものであることを特徴とする請求項4に記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記羽のピッチ角を該羽の位置に応じて変更させるピッチ角変更器を備えたことを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299515(P2009−299515A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152407(P2008−152407)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】