説明

風力発電装置

【課題】ブレーキの応答性を向上させ、かつ低風速でも回転可能とした安定かつ効率のよい風力発電装置を提供する。
【解決手段】回転体1に発電用環状永久磁石4を配置し、回転体1の径方向における支柱2に発電用環状永久磁石4に対向して発電コイル3を配置することにより発電機を構成する。この発電機にて発電された電気エネルギーを制御回路11で受電する。電磁石5に対して回転体1の径方向にリング6を対向配置して、回転体1の回転により、リング6を差交する磁極の極性が変化することにより渦電流を発生させることによって、回転体1の回転を制動できる構成にする。そして、制御回路11において発電電流または発電量を測定し、測定値に基づき低風速のときには電磁石5には電流を通電せず、高風速のときには電磁石5に大きな電流を通電してブレーキをかけ、回転体1の回転数の上昇を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力による回転エネルギーを電気エネルギーに変換する垂直軸型の風力発電装置に係り、特に、気象状況によって変化する風力に対応して、安定かつ効率的に発電を行うことのできる構成の風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の風力発電装置としては、風速が速くなることで羽根体が設けられた回転軸の回転が所定の回転速度を超えることがないようにブレーキを働かせるために、回転軸に外方向へ開くことができる複数のアームを取り付け、回転軸の回転に伴う遠心力によりアームが開いて、固定筒の内周面との間に適度な隙間を残してマグネットが回転することで渦電流抵抗を発生させるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7は特許文献1に記載された従来の風力発電装置の構成図である。
【0004】
図7において、101はモニュメント風車、102は台、103は回転軸、104は発電機を示しており、モニュメント風車101は軸103を中心として回転することができる。モニュメント風車101は、その重量を軽くするために材質をアルミニウム合金製とし、中心に設けられた回転軸103によって支えられ、台102に垂直に起立している。そして、モニュメント風車101に風が当たると回転軸103を中心として回転し、この回転により台102内に収容されている発電機104に発電を生じさせる。
【0005】
モニュメント風車101は受風効率が高くなる形状となっている。モニュメント風車101は、材質をアルミ合金とし、その重量を軽くしているが、回転軸103を支えるスラスト荷重による摩擦でモニュメント風車101の回転に悪影響を及ぼさないように、マグネットスラスト軸受装置105を採用している。
【0006】
マグネットスラスト軸受装置105は、回転軸103に回転体を取り付け、該回転体の下端面に回転部永久磁石を設け、一方、台102側に固定部永久磁石を配置し、回転部永久磁石と固定部永久磁石を上下方向に対向させて配置して、両永久磁石の反発力によって回転体を浮上させることができる構造としている。
【0007】
また、増速機として大歯車106を回転軸103に取り付け、小歯車107を発電機104の出力軸に設けて、両歯車106,107間にタイミングベルト108を巻き掛けている。そして、小歯車107は、発電機104を高速回転することができるが、カップリング(図示せず)が介在しており、小歯車107の回転速度が一定以上になったところで発電機104を回すようにしている。発電機104としては、3相交流発電機が使用される。
【0008】
ところで、台風時に風速が30m/s〜40m/sにも達する場合もあり、モニュメント風車101の回転速度は非常に高くなって危険であることから、回転軸103にパラソル型遠心力マグネットブレーキ装置109を設けることにより、所定の速度以上にならないように制御している。
【0009】
回転軸103には、マグネットスラスト軸受け装置105とパラソル型遠心力マグネットブレーキ装置109とが取り付けられ、長さ調整が可能な非磁性金属で作製されているブーム110が回転軸103に対して放射状に取り付けられている。ブーム110の先端には、回転軸103が回転することで遠心力の作用で開くことができ、非磁性体金属からなる平行四辺形関節を構成するアーム111,111,……が設けられている。各アーム111の先端には磁性金属のヨーク112が設けられ、このヨーク112に強力なマグネット113が取り付けられている。
【0010】
回転軸103が回転して遠心力の作用によりアーム111が開くと、アーム111は平行四辺形関節を構成しているため、マグネット113面は、常に垂直を保った状態で移動し、固定筒114の内周面に近づく。固定筒114は、銅合金またはアルミ合金などの非磁性金属からなり、台102に固定されている。また、アーム11の先端のマグネット113は、該アーム111が開いても固定筒114の内周面に接触しないように、アーム111の開き度をストッパー115にて規制している。
【0011】
前記構成において、マグネット113が固定筒114の内周面との間に適度な隙間を保って回転するとき、渦電流抵抗が発生して回転軸103の回転を抑制するトルクが作用する。そして、回転軸103の回転速度が大きくなって、遠心力の作用でマグネット113と固定筒内周面との隙間がより小さくなると、渦電流抵抗はより大きくなって、回転軸103には大きなブレーキが働き、所定の回転速度を超えることがないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4009888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、台風に代表される強風は、一定の風速で続くことはなく、弱風/強風がランダムに発生し、風力発電装置においてはブレーキの応答性が問題となる。しかしながら、従来のブレーキ機構はメカニカルな構造であり、十分な応答性が得られないため、弱風/強風がランダムに発生した場合には所定の回転数を超えることがあり、時として装置を破損してしまうということがあった。
【0014】
また、風力発電装置では、低風速でも円滑かつ安定的に回転を開始することが要求されるが、前記従来の装置では、回転軸にブーム,アーム,永久磁石といった部材が取り付けられているため、回転軸全体の重量が増加し、これにより風車に対する動力負荷が大きくなり、低風速で回り難くなるという課題を有していた。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、ブレーキの応答性を向上させ、かつ低風速でも回転可能とした安定かつ効率のよい風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、鉛直方向に設置された支柱を中心とし、該支柱の外側に同心円状で回転する円筒形回転体を設け、前記円筒形回転体に、風力を受ける羽根体と、該羽根体が受けた風力を電気エネルギーとして取り出す発電機とを設けた風力発電装置において、前記支柱に設けられた電磁石と、前記円筒形回転体に前記電磁石に対して前記円筒形回転体の径方向に対向して設置された導電体とにより磁路を形成し、前記発電機の発電電力を受けて前記電磁石に通電することによって発生する渦電流により、風力が大きくなったときに前記円筒形回転体の回転数を減速させる制御手段を備えることにより、風力の程度によって電磁的にブレーキを機能させることができ、弱風/強風の風力の変化への迅速な応答が可能になる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の風力発電装置において、発電機が発生する電気エネルギーの大きさまたは電流の大きさにより、電磁石への電流量を制御することにより、風力と関係する発電量によって、電磁的にブレーキを機能させることにより、正確かつ確実に風力の変化への迅速な応答が可能になる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の風力発電装置において、風速を監視するためのセンシング手段を備え、センシング手段から得られる風速情報により、電磁石への電流量を制御することにより、直接的な風量の検知に基づいて、電磁的にブレーキを機能させることにより、より正確かつ確実に風力の変化への迅速な応答が可能になる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の風力発電装置において、電磁石に交流波を印加することにより、導電体に磁束の変化を発生させて渦電流を発生することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の風力発電装置において、円筒形回転体を支持するラジアル軸受と、支柱に設けられた永久磁石により磁力を発生するスラスト磁気軸受ステータと、円筒形回転体にスラスト磁気軸受ステータに対して円筒形回転体の径方向に対向して設置されたスラスト磁気軸受ロータとにより構成された吸引型スラスト磁気軸受を備えたことにより、回転体をスラスト方向に非接触浮上させることができ、微風での回転が可能になる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の風力発電装置において、支柱に備えられた永久磁石と、円筒形回転体に該円筒形回転体の径方向に永久磁石に対向して設置された導電体とを備え、導電体に渦電流を発生することにより、円筒形回転体の振動を抑制するラジアル磁気ダンパを構成したことにより、円筒形回転体に発生するラジアル方向の振動を減衰させることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6いずれか1項記載の風力発電装置において、スラスト磁気軸受ステータにスラスト磁気軸受ロータのスラスト方向に対向して磁極を設け、該磁極に対してスラスト方向に対向するスラスト磁気軸受ロータ部分に導電体を設置することにより、円筒形回転体のスラスト方向の振動を抑制するスラスト磁気ダンパを構成したことにより、円筒形回転体に発生するスラスト方向の振動を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の風力発電装置によれば、強風時においても、発電した電力を利用してブレーキをかけ、回転を停止させることなく定格出力になるように、安定して羽根体を回転させることができ、また微風時においても円滑かつ安定的に回転が可能となる発電効率のよい風力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の風力発電装置の実施形態1における構造を示す断面図
【図2】本実施形態におけるヘテロポーラ型の電磁石の平面構造を示す説明図
【図3】本実施形態におけるホモポーラ型の電磁石の断面構造を示す説明図
【図4】本発明の風力発電装置の実施形態4の構成を示す断面図
【図5】本発明の風力発電装置の実施形態5の構成を示す断面図
【図6】本発明の風力発電装置の実施形態6の構成を示す断面図
【図7】従来の風力発電装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は本発明の風力発電装置の実施形態1における構造を示す断面図である。
【0027】
図1において、1は回転体、2は支柱、3は発電コイル、4は発電用環状永久磁石、5は電磁石、6はリング、7はスラスト軸受ステータ、8は永久磁石、9はスラスト軸受ロータ、10はラジアルベアリング、11は制御回路、12はアンプ、15は取付部材、16は羽根体を示す。
【0028】
図1に示すように、回転体1は、鉛直方向に配置され、受風手段としての羽根体16が周囲に複数枚取り付けられている。風力を受け回転力に変える羽根体16としては、例えば、サボニウス風車,ダリウス風車,クロスフロー風車,カップ型風車などが用いられる。これら垂直軸型風車は、風車ロータの回転面を風向に追尾させる方位制御装置が不要であるという特徴がある。
【0029】
前記回転体1の内側に支柱2が鉛直方向に設けられている。回転体1と支柱2の回転中心軸は同じである。回転体1には、発電用環状永久磁石4が配置され、さらに回転体1の径方向における支柱2に発電用環状永久磁石4に対向して発電電力抽出手段である発電コイル3を配置することで発電機を構成している。具体的には、三相交流を出力する三相交流発電機の構造を採用することができる。
【0030】
前記発電機にて発電された電気エネルギーは制御回路11で受電される。制御回路11では、例えば、ダイオードブリッジを用いて直流電流を出力し、DC/AC変換や昇圧を経て100Vの交流として供給することができる。また、制御回路11には、交流電力を直流電力として取り出せるように、AC/DCコンバータや、発電された電気エネルギーを蓄積する蓄電池を設置してもよい。
【0031】
前記発電用環状永久磁石4と発電コイル3は、回転体1における鉛直方向のいずれの位置に配置してもよい。
【0032】
支柱2にはヘテロポーラ型の電磁石5が配置されている。図2はヘテロポーラ型の電磁石5の平面構造を示す説明図である。
【0033】
図2において、電磁石5を構成する電磁石コイル14に電流を印加し磁極13にN極/S極を発生させる。電磁石コイル14に対して回転体1の径方向にリング6を対向配置して、回転体1の回転により、リング6を差交する磁極の極性が変化することにより渦電流を発生させることによって、回転体1の回転を制動するようにしている。
【0034】
リング6としてはアルミニウムや銅などの渦電流を生じやすい材料を用いる。渦電流の大きさは、磁界の変動周波数の2乗に比例するため、N極S極の変化が多い(変動周波数が高い)ほど大きい。また、渦電流の大きさは、磁束密度の2乗に比例するため、リング6と磁極13のギャップが小さいほど、また、電磁石コイル14に流す電流が大きいほど大きい。
【0035】
したがって、回転体1に対するブレーキとして必要な制動力の大きさに応じて電磁石5を複数個設置する。また、回転体1に加わるブレーキ力の均一性を考え、回転中心軸に対称に偶数個配置することが望ましく、N極/S極が交互になるよう配置する。また、電磁石5の結線は、複数の電磁石を直列に接続してもよいし、それぞれ別の回路により駆動してもよい。
【0036】
前記電磁石5とリング6は、回転体1における回転軸の鉛直方向のいずれの位置に配置してもよい。
【0037】
通常、前記発電機には定格出力を持つ発電機が用いられる。風力発電装置は、風速が大きくなってカットイン風速(発電するために必要な最小風速)に達すると発電を開始する。このカットイン風速は低いことが望ましい。カットイン風速から定格風速までは、ピッチ制御などにより最大の出力を得る運転を行う。定格風速を超えると(カットアウト風速)、発電機の容量が不足するため、出力を定格値に保つ運転を行う。
【0038】
しかし、強風や突風などにより風速が大きくなり、風速が回転する部材および軸受などの構造物の運転設計強度の限界に達したり、発電機出力電圧が異常に上昇するカットアウト風速に達したりすると、風力発電装置の回転を停止する。
【0039】
定格風速は、強風地帯か弱風地帯かによって大幅に異なり、最適な定格風速が設定される。また、発電機では、カットイン風速以下では出力はゼロ、定格風速からカットアウト風速までの間では出力は定格値で一定、さらにカットアウト風速以上では装置は停止し、出力はゼロとなる。
【0040】
制御回路11において、発電電流または発電量を測定し、その測定量に応じてアンプ12から電磁石5に電流を供給する。ブレーキを作動する必要のない程度の小風力である場合は、電磁石5には電流を通電しない。また、台風などのように風力が大きい場合、過剰な回転数になって大きな遠心力などで破損してしまう可能性があるため、大きな電流を発生させることによって大きなブレーキをかけ回転数の上昇を抑える。
【0041】
また、本実施形態では、風力の変動が激しい場合においても、電気磁気的なブレーキ構造であるため応答性がはやく、瞬時にブレーキをかけることが可能となる。また、ブレーキ力をコントロールすることにより、安定的に適正な回転数に保つことができる。これにより、カットアウト風速を超え、回転を停止されるような状況が発生しても、発電機にて発電した電力を利用して、前記ブレーキ構造をコントロールすることにより適正な回転数を保つことができる。よって、発電を停止しないようにすることができるため、発電効率のよい風力発電装置を実現できる。
【0042】
回転体1のラジアル方向の支持には、接触式のラジアルベアリング10を用いる。ラジアルベアリング10としては、例えば、転がり軸受を用いる。
【0043】
微風での回転において、回転体1の回転を妨げる要因は、スラスト方向に作用する回転体1の重量であり、例えば、スラスト方向の軸受として接触式のベアリングを用いた場合、回転摩擦にて回転方向の抵抗となる。この抵抗に比べて、ラジアル方向の回転摩擦抵抗は小さいため、ラジアル方向には接触式のラジアルベアリング10を用いることができる。ラジアルベアリング10は取付部材15を介して支柱2に固定される。
【0044】
スラスト方向の支持は、支柱2に円環状の永久磁石8と円環状のスラスト軸受ステータ7とを設け、スラスト軸受ステータ7に対して回転体1の径方向にスラスト軸受ロータ9を対向配置してなる軸受構造にて行う。
【0045】
永久磁石8は鉛直方向にN極/S極(またはS極/N極)が設けられたホモポーラ型の構成のもの用いる。ホモポーラ型は回転体における磁極の変化がないため、回転体1に渦電流が発生せず、回転損失を小さくすることができる。永久磁石8には強い磁力を有し磁石としての性質を長期にわたって保持する必要があり、例えば、アルニコ磁石,フェライト磁石,ネオジム磁石などを用いる。
【0046】
図1において、対向して配置されたスラスト軸受ステータ7とスラスト軸受ロータ9とにおけるエアギャップに、水平方向(ラジアル方向)の吸引力が発生する。回転体1がスラスト方向に移動し、エアギャップの磁束が変化することにより、スラスト軸受ロータ9にスラスト方向に戻すための復元力Fが発生する。この復元力Fがスラスト方向の軸受として機能する。
【0047】
本実施形態では、前記構成のスラスト軸受が回転体1の内部に設けられているため、羽根体16やラジアルベアリング10の水平方向の位置関係が同じでも干渉することなく設置することができ、設置の自由度が大きい。また、風力発電装置の軸方向の長さ全体を短くすることができる。
【0048】
スラスト軸受の個数は、回転体1における重量のバランス位置(重心位置)に応じて増減することができる。また、スラスト軸受を適切な位置に配置することが可能であって、例えば、スラスト軸受を羽根体16の鉛直方向上端より上、あるいは羽根体16の鉛直方向下端部より下に設置してもよい。
【0049】
また、回転体1に軸受剛性を超えるような異常な荷重が加わり、回転体1と支柱2に取り付けている部材が接触することを防ぐために、保護軸受(図示せず)を取り付けるようにしてもよい。
【0050】
このような非接触式のスラスト軸受により回転体1を非接触で支持することにより、スラスト方向の回転摩擦がなく、微風においても円滑かつ安定な回転が可能となる。
【0051】
(実施形態2)
本発明の風力発電装置の実施形態2として、実施形態1の構成において、支柱2に風速を監視するためのセンシング機構を別途設け(図示せず)、センシング機構からの風速信号に基づき電磁石5に流す電流を決定する構成を採用することができる。
【0052】
センシング機構としては、風速を応答性よくセンシングする必要があり、例えば、風杯型の風速計を用いることができる。風杯型の風速計は、垂直な回転軸の周りに3ないし4個の半球殻又は円錐殻の風杯と呼ばれる羽を有する垂直軸風車型の感部を有するものである。風杯に風が当たると、凸面よりも凹面の方が空気抵抗が多いため、凹面が押される方向に軸が回転する。風杯型の風速計は、前記回転を歯車式の機構,発電機,光電式カウンタなどを用いて検出し、数値や電気信号に変換して出力することによって測定値を得る構成のものである。
【0053】
実施形態2では、風力が大きい場合、前記センシング機構の信号に基づいたブレーキ動作により、図1における羽根体16の回転による発電信号よりも早くセンシングすることができ、より安定的に羽根体16を回転することが可能となる。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0054】
実施形態1では、突風時に回転体1が急激に大きな荷重を受けた場合、発電電流または発電量を測定した結果を用いては、ブレーキをかけるタイミングが遅く、回転する部材および軸受などの構造物を破損する可能性がある。
【0055】
しかし、実施形態2では、カットアウト風速を超え、さらに風速の検出スピードが必要な突風時においても、発電した電力を利用して前記ブレーキをコントロールすることにより適正な回転数を保つことができ、発電を停止しないため、発電効率のよい風力発電装置を実現できる。
【0056】
(実施形態3)
本発明の風力発電装置の実施形態3として、図1に示すアンプ12から電磁石5への電流に交流波形を印加することにより、磁路の磁束を電気的に変化させ、リング6に発生する渦電流を増大させる構成を採用することができる。
【0057】
この場合、電磁石5は図2に示すヘテロポーラ型でもよいし、図3に示す構成のホモポーラ型でもよい。ヘテロポーラ型の場合はDC電流に交流波形を重畳する形とし、交流波形を重畳しない場合と比較して、大きなブレーキ力を発生することが可能となる。
【0058】
また、図3に示すように、ホモポーラ型は軸方向にN極S極が形成されるため、回転体1には回転による磁極の変化が発生しない。したがって、回転によってリング6には磁極の変化が発生しないため、電気的に電磁石5のN極,S極を変化させる必要があり、±(プラスマイナス)の振幅を持った交流を印加することにより渦電流を発生させる。
【0059】
なお、その他の構成は実施形態1と同様であるため、対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0060】
(実施形態4)
図4は本発明の風力発電装置の実施形態4の構成を示す断面図である。
【0061】
図4に示すように、支柱2に円環状の永久磁石22と円環状のラジアルダンパ磁極21を設け、ラジアルダンパ磁極21に対して回転体1の径方向に、エアギャップを設けて導電体のラジアルダンパリング23を対向配置する。
【0062】
永久磁石22として鉛直方向にN極/S極(またはS極/N極)が設けられたホモポーラ型を用いる。ホモポーラ型は回転体1の回転による磁極の変化がないため、回転体1に渦電流が発生せず、回転損失を小さくすることができる。永久磁石22にはスラスト軸受に使用したものと同様強い磁力を有し、磁石としての性質を長期にわたって保持する必要があり、例えば、アルニコ磁石,フェライト磁石,ネオジム磁石などを用いる。また、ラジアルダンパリング23にはアルミニウムや銅などの渦電流をより生じやすい材料を用いる。
【0063】
対向して配置されたラジアルダンパ磁極22とラジアルダンパリング23間のエアギャップが振動などにより変化した場合、ラジアルダンパリング23に渦電流が発生し、ダンピング効果を生じ、ラジアル方向の振動を抑制することができる。ラジアル方向は接触式のラジアルベアリング10により支持しているため、ラジアルベアリング10のガタ分や、回転体1の撓み分に応じてラジアル方向においてギャップが変化する。
【0064】
その他の構成は実施形態1と同様であるため、対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0065】
実施形態4の構成により、風速の変化により回転体1に変動負荷が発生した場合、回転体1の振動を抑え、回転体1の回転精度を向上させることができるため、ラジアルベアリング10への摩擦損失が減り、発電効率を向上することができる。また、支柱2から伝わる振動を低減できるため、周囲の環境に及ぼす影響を低減することができる。
【0066】
(実施形態5)
図5は本発明の風力発電装置の実施形態5の構成を示す断面図である。
【0067】
図5に示すように、スラスト磁気軸受ステータ7に、スラスト磁気軸受ロータ9に対してスラスト方向において対向する円環状のスラストダンパ25を設け、該スラストダンパ25に対してスラスト方向にエアギャップをもって対向したスラスト磁気軸受ロータ9に、円環状の導電体のスラストダンパリング24を配置している。スラストダンパリング24にはアルミニウムや銅などの渦電流をより生じやすい材料を用いる。
【0068】
このため、振動などによって、対向して配置されたスラストダンパ25とスラストダンパリング24間のスラスト方向のギャップが変化した場合、スラストダンパリング24に渦電流が発生し、ダンピング効果が生じることによってスラスト方向の振動を抑制することができる。
【0069】
その他の構成は実施形態1と同様であるため、対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0070】
このように実施形態5では、風速の変化により回転体1に変動負荷が発生した場合、回転体1の振動を抑えて回転体1の回転精度を向上させることができるため、ラジアルベアリング10への摩擦損失が減り、発電効率を向上することができる。また、支柱2から伝わる振動を低減させることができて、周囲の環境に及ぼす影響を低減することができる。
【0071】
(実施形態6)
図6は本発明の風力発電装置の実施形態6の構成を示す断面図である。
【0072】
前記実施形態1〜5の構成では、ラジアルベアリング10を回転体1の外側に設置し回転体1を外側からラジアル方向の支持をしていたが、実施形態6では、図6に示すように、ラジアルベアリング10を回転体1の内部に配置した構造としている。
【0073】
また、実施形態1〜5の構成では、図示したようにブレーキ機構,スラスト磁気軸受,ラジアルダンパ,スラストダンパを回転体1内部に配置していたが、実施形態6では、図6に示すように、回転体1の外側に配置した構造とし、電磁石5とスラスト磁気軸受ステータ7とラジアルダンパ磁極23と永久磁石8,22とラジアルベアリング10は、取付部材15を介して支柱2に固定される構造にしている。
【0074】
また、上述したスラスト磁気軸受と、ブレーキ機構と、ラジアルダンパと、スラストダンパなどの配置,順序や、回転体1内側および外側への設置は、本実施形態の構造に限定されず、風力発電装置の仕様,構成により適宜配置する。
【0075】
なお、いずれの実施形態においても、風力発電装置の設置は屋外であるため、磁気回路および電気回路に対して水や埃が入らない構造となっている。また、電気磁気的に外部への影響がある場合には、磁束の漏れの無いように電磁シールドを施す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、風力発電装置のブレーキ機構に適用され、回転体に加わる負荷が変動する風力発電装置の構造のものに実施して有効である。さらに、発電用のタービンなどにも適用できる。また、スラスト磁気軸受機構は回転体を短くできるため、高速回転体を支持する機構にも適用される。
【符号の説明】
【0077】
1 回転体
2 支柱
3 発電コイル
4 発電用環状永久磁石
5 電磁石
6 リング(導電体)
7 スラスト軸受ステータ
8 永久磁石
9 スラスト軸受ロータ
10 ラジアルベアリング
11 制御回路
12 アンプ
13 磁極
14 電磁石コイル
15 取付部材
16 羽根体
21 ラジアルダンパ
22 永久磁石
23 ラジアルダンパリング(導電体)
24 スラストダンパリング(導電体)
25 スラストダンパ磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に設置された支柱を中心とし、該支柱の外側に同心円状で回転する円筒形回転体を設け、前記円筒形回転体に、風力を受ける羽根体と、該羽根体が受けた風力を電気エネルギーとして取り出す発電機とを設けた風力発電装置において、
前記支柱に設けられた電磁石と、前記円筒形回転体に前記電磁石に対して前記円筒形回転体の径方向に対向して設置された導電体とにより磁路を形成し、
前記発電機の発電電力を受けて前記電磁石に通電することによって発生する渦電流により、風力が大きくなったときに前記円筒形回転体の回転数を減速させる制御手段を備えたことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記発電機が発生する電気エネルギーの大きさまたは電流の大きさにより、前記電磁石への電流量を制御することを特徴とする請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
風速を監視するためのセンシング手段を設け、前記センシング手段から得られる風速情報により、前記電磁石への電流量を制御することを特徴とする請求項1記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記電磁石に交流波を印加することにより、前記導電体に磁束の変化を発生させて渦電流を発生することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記円筒形回転体を支持するラジアル軸受と、前記支柱に設けられた永久磁石により磁力を発生するスラスト磁気軸受ステータと、前記円筒形回転体に前記スラスト磁気軸受ステータに対して前記円筒形回転体の径方向に対向して設置されたスラスト磁気軸受ロータとにより構成された吸引型スラスト磁気軸受を備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記支柱に備えられた前記永久磁石と、前記円筒形回転体に該円筒形回転体の径方向に前記永久磁石に対向して設置された導電体とを備え、前記導電体に渦電流を発生することにより、前記円筒形回転体の振動を抑制するラジアル磁気ダンパを構成したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記スラスト磁気軸受ステータに前記スラスト磁気軸受ロータのスラスト方向に対向して磁極を設け、該磁極に対してスラスト方向に対向する前記スラスト磁気軸受ロータ部分に導電体を設置することにより、前記円筒形回転体の振動をスラスト方向の振動を抑制するスラスト磁気ダンパを構成したことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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