説明

風力装置

【課題】方位駆動装置の寿命を長くしたり、操作の簡素な小型の方位駆動装置を使用することが可能な風力装置を提供すること。
【解決手段】風向きを検出する風向き検出装置と、機械ハウジングの方位位置を検出する方位位置検出装置と、風向き検出装置と方位位置検出装置を制御するための制御装置と、ロータブレードの入射角を調節するための調節装置と、制御装置に電気的に接続され機械ハウジングの方位位置を調節する方位駆動装置と、制御装置に電気的に接続されロータブレードの入射角を変更するロータブレード駆動装置とを設け、検出された風向きと方位位置とのずれが所定時間の間に第1の閾値に達すると、調節装置はロータブレード駆動装置を駆動してロータブレード円の所定のセグメントにおけるロータブレードの入射角を調節して空気抵抗を増減し、風向きと方位位置が所定の限度内になるまで機械ハウジングが風を追尾するように調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロンと、パイロンに配設され調節可能な少なくとも一つのロータブレードを有するロータを備え、さらに風向きを検出する装置と、方位位置を検出する装置を備えた風力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような風力装置は、風向きを追尾する能動的駆動装置を一般に備えている。装置が風上型ロータ部材の形態の場合、駆動装置は、ロータのロータブレードが風の方向に向くように風力装置の機械ハウジングを回転する。風向き追尾に必要な駆動装置は、パイロンの頂部と機械ハウジングとの間に関連する方位ベアリングとともに通常配置される方位駆動装置である。
【0003】
風向きを追尾する機械ハウジングに関する方法において、風測定システムは所定時間、例えば10秒間風向きに関する平均値を供給する。この平均値は常に機械ハウジングの瞬間的方位位置と比較される。ずれが所定値を超えるとすぐに、風向きに対するロータのずれ、すなわち偏揺れ角ができるだけ小さくなりパワーロスがなくなるように、機械ハウジングは風向きの変化に追尾するように適宜調節される。
【0004】
公知の風力装置で行われている風向き追尾法は、Erich Hauの"Winkraftanlagen" 第2版、1996年、268頁、316頁に記載されている。
【0005】
加えて、そのような風向き追尾法は、ドイツ国公開公報DE19920504から公知である。
【0006】
【特許文献1】ドイツ国公開公報DE19920504
【非特許文献1】"Winkraftanlagen" 第2版、1996年(Erich Hau)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの公知の装置には欠点があり、一般的には電動モータの形態の方位駆動装置を風向き追尾操作のたびに作動する必要がある。頻繁に動作させると、負荷が高くなり比較的に早く劣化し、駆動装置の磨耗がかなりひどくなる。
【0008】
さらに、この種の公知の構造の欠点は、所要の調節動作を行うためには、装置サイズが増大すると必然的に駆動装置の数を多くしたりサイズを大きくする必要がある。しかしながら、特に故障した場合や、交換の必要がある場合には、駆動装置をクレーンで機械ハウジングから取り出したり機械ハウジングに取り付けたりする必要があるので、駆動装置が大きくなるほど出費がかなりのレベルで増大する。ハブ高さが130m以上の場合を考えると、地上に取り付けられる装置はすでにかなりのレベルの出費が必要であり、海上装置の場合は全ての許容限度をはるかに超えている。このような駆動装置に必要なスペースもまた増大する。
【0009】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、方位駆動装置の寿命を長くしたり、あるいは操作の簡素な小型の方位駆動装置を使用することが可能な風力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は本願明細書の前段に記載したような風力装置であって、その目的は、風向きと方位位置とのずれに基いてロータブレードを調節する制御を行うことにより達成される。本発明にかかるこの制御は、風向き追尾に必要な力をロータブレードの入射角を適宜調節することにより発生することができるので、風向き追尾操作のかなりの部分を方位駆動装置をONすることなく行うことができることを意味している。
【0011】
本発明は、これまでのモータ駆動による通常の方位調節に加えて、風向きと方位位置とのずれに基いてロータブレードを調節する制御を行うことにより方位の位置決めを行うことができる。
【0012】
ある状況下において、方位を少しだけ変更する必要があるときに特に有利である。これは、モータ方位駆動装置を通常待機しておくことができることを意味している。
【0013】
例えば、モータ方位駆動装置が二つもしくはそれ以上の非同期モータを備えていれば、方位調節用のこれらのモータは3相交流の供給を受けるが、非同期モータに直流を供給することで機械ハウジングを遅延させることができる。また、機械的制動を必ずしも必要としないように停止時にも非同期モータは直流の供給を受ける。機械ハウジングのずれの調節、すなわち方位調節がロータブレードの調節制御により行われる場合には、モータ制動を停止する必要があり、これは直流を極めて低くするかゼロにすることにより行うのが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態において、本発明にかかる風力装置の支持部が水上あるいは水中に浮揚しているプラットホームであれば、風向きと方位位置とのずれは水平からのプラットホームのずれを検出したり、風力装置のパイロンの鉛直からのずれを検出することにより検出される。このようにして、風向きと方位位置との違いに起因する傾斜を容易に検出することが可能である。
【0015】
本発明の特に好ましい実施の形態においては、本発明にかかる風力装置は平軸受の形態の方位ベアリングを備えており、その所定の摺動特性により、風向きが急変した場合にパイロンヘッドのノッキングや羽ばたき運動を防止する一方、十分な力があれば、モータ駆動装置がなくても風向き追尾が可能になる。
【0016】
さらに、本発明は、風力装置のロータブレードの入射角を制御する方法を提供するものである。この方法によれば、風向きの変化は、
・風向きと方位位置との差、及び/又は
・プラットホームの水平線からの変位、及び/又は、
・パイロンの鉛直線からの変位
から検出される。また、風向きの変化量及び持続時間は予め決定可能な閾値と比較される。このようにして、風向き追尾が必要かどうかを認識することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述した構成により、方位駆動装置の寿命を長くすることができるとともに、操作の簡素な小型の方位駆動装置を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は機械ハウジング10とロータブレード11,12を有する風力装置の平面図である。機械ハウジング10の回転中心は点20で示されており、水平軸ロータの主軸は中心線14で示されている。
【0019】
ロータの主軸14とこの図で傾斜した矢印で示される風向きにずれがある場合、風向きの変化量と持続時間に関し予め決定可能な閾値に達しているか、あるいは超えているかを確かめるためのチェックがすぐに行われる。閾値に達していたり、あるいは超えていれば、図の左側に示されるロータブレード11の入射角が、空気抵抗が減少するように変更される。その結果、二つのロータブレード11,12にかかる力がアンバランスになり、右側のロータブレード12における空気抵抗がこの時は高く、これが、機械ハウジング10に作用して、回転中心20の上に図示された矢印の方向にトルクを与える力Fを発生する。このようにして、ロータは調節され、方位駆動装置をONする必要もなく風を追尾する。
【0020】
ロータの主軸14と風向きのずれが予め決定可能な閾値を超えていれば、方位駆動装置をONして、回転移動を補助したり非対称の負荷を減少させることができる。風が全くない場合や、無風状態が経過後、上述したような入射角の調節によりロータの追尾調節を許さない別の方向から風が吹くような場合にも、この方位駆動装置は必要になる。
【0021】
本発明の別の形態では、図1に示される状況では、左側のロータブレード11の空気抵抗を減少させる代わりに、右側のロータブレード12の空気抵抗を増大することも可能である。右側のロータブレード12の空気抵抗を増大すると、ロータブレード12にかかる負荷がより大きくなり、その寿命に悪影響がでる可能性がある。こういう理由で、左側のロータブレード11の空気抵抗を減少させ、このロータブレード11にかかる負荷を減少させるのが好ましい。
【0022】
図2は、水中に浮揚し、例えば少なくとも二つのアンカーチェーン32で所定の位置に保持されているプラットホーム30に設けられた風力装置を示している。
【0023】
この場合、プラットホーム30は水面2よりも下にあり、風力装置のパイロン8は水から突き出て、ロータブレード12を有する機械ハウジング10を支持している。
【0024】
風が風力装置にほぼ正面から衝突する限り、図2に示される状態では風力装置を後方に変位させる曲げモーメントが発生する。風向きが斜めになると、横方向成分も前部の構成要素に加わる。この横方向成分は後方への変位に加えて、横方向の変位を惹起する。これは、図において角度αで示される所定量だけ、水平からのプラットホーム30の面の傾斜や、鉛直からの風力装置のパイロン8の傾斜により明らかである。
【0025】
プラットホームの面の変位は比較的少ないが、パイロン8の頂点での鉛直線からの変位ははっきりと検出できるほどの量なので、パイロン8の頂点において検出する非常に感度の高い装置により風向きの変化やそれに起因する変位を検出することができる。
【0026】
変位を検出する点では、横方向の風の成分に起因する変位のみが本発明にかかる制御動作に関与している。
【0027】
図3は、本発明にかかる風力装置制御の実施形態を示している。装置40は風向きを検知する。この装置40は、どのような風力装置にも設けられているような、例えば増分送信機を有する簡素な風見であってもよい。別の装置42は、方位位置を検知する。これら二つの装置40,42は、その測定結果あるいはデータを制御装置44に送信し、制御装置44は方向検知装置40と方位位置検知装置42からの二つの値を評価し、それらを比較し、必要に応じて予め決定可能な特性値に基いて、調節装置46によりロータブレードの入射角を適宜適合させる。
【0028】
この点において、風向きと方位位置のずれの度合いに応じて、例えば閾値を予め決定することができる。二つの値のずれが所定時間の間に上記閾値の最初の閾値に達すると、ロータブレード12の入射角はロータ円の所定のセグメントにおいて、例えばピッチモータ(図示せず)につながる制御ライン48を介して調節装置46により空気抵抗が減少するように調節され、風向きと方位位置が再び予め決定可能な許容限度内になるまでロータを有する機械ハウジング10が風を追尾する。制御装置44はそれから再び最適エネルギ出力に適したロータブレード11,12の設定を行う。
【0029】
データ評価において、方位位置と風向きのずれに関する第2の閾値が出てくると、制御装置44は、例えば別の制御ライン49を介して方位駆動装置22をONし、風向き追尾をサポートすることができる。第3の閾値は、ロータブレードの入射角の変更により風向き追尾作用がもはや不可能になるように決定することができ、方位駆動装置22がこの場合必ず必要になる。
【0030】
図4は、モータ方位駆動装置による風向き追尾装置を示している。モータ駆動装置は、風力装置のロータが風の方向に適切に向くように風力装置の機械ヘッドを回転させる。風向き追尾作用を行うこの駆動装置は、方位ベアリング52を有する方位駆動装置51であってもよい。この方位ベアリングは、パイロンヘッドと機械ハウジングとの間に配置されている。小さい風力装置には一つの方位駆動装置で十分であるが、大きい風力装置の場合、図4に示されるように、複数の方位駆動装置、例えば四つの方位駆動装置を一般に備えている。四つの駆動装置51はパイロンヘッドの周囲に一様に配置されている(一様でない配置もまた可能である)。
【0031】
図示されている方位駆動装置は、非同期駆動装置として使用される3相交流非同期モータである。方位調節等の調節のため、これらの3相交流非同期モータは所定の3相交流の供給を受け、所定のトルクを発生する。機械ハウジングの調節が終了すると(所望の方位位置が得られると)、四つの3相交流非同期モータ(ASM)はOFFになり、もはやトルクを発生しない。モータを均一に遅延し、その後制動トルクを発生するために、3相交流ネットワークから分離された直後にできるだけ早く、モータは直流の供給を受ける。この直流は、これによりすぐに制動されるモータに静磁界を発生する。直流の供給は、停止時はずっと続いており、振幅を調節することができる。
【0032】
調節後、ASM駆動装置には、調節装置(図5参照)により調節された直流が供給される。非対称的な突風に起因するパイロンヘッドの緩やかな回転動作は、低直流によって減衰され(最小電流の約10%)、許容されるものである。早い回転動作は、より高い直流したがってより高い制動トルクにより回避される。回転動作が非常に早い場合、直流はモータの公称電流まで上昇される。
【0033】
非同期モータは、停止状態における直流磁化ではトルクを発生しない。しかしながら、回転速度が公称回転速度の約6%まで上昇すると、発生するトルクは直線的かつ両回転方向に対称的に上昇する。
【0034】
方位駆動装置の個々のモータを変流器により連結してもよい。非同期モータを単純に対向連結すると、個々の駆動装置が安定する。
【0035】
上述したように、3相交流を非同期モータに供給することにより方位調節が行われなくても、非同期方位駆動装置の直流をゼロあるいは低くセットすると、方位調節をロータブレードの角度調節により制御することもできる。例えば低い制動釣り合いモーメントを維持するために、平軸受の制動作用以上にモータ制動モーメントがもたらされるように非同期モータの直流を公称電流の1%〜10%の値に制限するのも好ましく、この制動モーメントにより過剰な旋回変位を伴うことなく方位変更を好ましく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】風力装置の機械ハウジングの平面図である。
【図2】水中に浮揚しているプラットホーム上の風力装置を示している。
【図3】本発明にかかる制御の簡略図を示している。
【図4】四つの駆動装置を有する方位ベアリングの図を示している。
【図5】方位モータの回路図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロンと、該パイロンに配設され入射角が調節可能な少なくとも一つのロータブレードを有する機械ハウジングを備えた風力装置であって、
風向きを検出する風向き検出装置と、前記機械ハウジングの方位位置を検出する方位位置検出装置と、前記風向き検出装置と前記方位位置検出装置を制御するための制御装置と、前記ロータブレードの入射角を調節するための調節装置と、前記制御装置に電気的に接続され前記機械ハウジングの方位位置を調節する方位駆動装置と、前記制御装置に電気的に接続され前記ロータブレードの入射角を変更するロータブレード駆動装置と、を備え、前記制御装置は、前記風向き検出装置で検出された風向きと前記方位位置検出装置で検出された方位位置とのずれを評価し、該ずれを複数の閾値と比較し、前記ずれが所定時間の間に第1の閾値に達すると、前記調節装置は前記ロータブレード駆動装置を駆動してロータブレード円の所定のセグメントにおける前記ロータブレードの入射角を調節して空気抵抗を増減し、風向きと方位位置が所定の限度内になるまで前記機械ハウジングが風を追尾するように調節することを特徴とする風力装置。
【請求項2】
前記風向き検出装置で検出された風向きと前記方位位置検出装置で検出された方位位置とのずれが第2の閾値に達すると、前記制御装置は前記方位駆動装置を駆動して前記機械ハウジングの方位位置を調節することを特徴とする請求項1に記載の風力装置。
【請求項3】
前記風向き検出装置で検出された風向きと前記方位位置検出装置で検出された方位位置とのずれが第3の閾値に達すると、前記制御装置は前記ロータブレード駆動装置を駆動することなく前記方位駆動装置のみを駆動して前記機械ハウジングの方位位置を調節することを特徴とする請求項2に記載の風力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2473(P2008−2473A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245408(P2007−245408)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【分割の表示】特願2002−564262(P2002−564262)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】