説明

飛散性アスベスト溶融処理装置

【課題】飛散性アスベストの溶融処理は、エネルギ−効率が良く建設コストの安価な設備が必要とされている。内燃式流動床炉は流動する熱媒体から被加熱体に大きな熱エネルギ−を与える燃焼炉であるが、溶融した被加熱体が熱媒体に融着し炉が閉塞する問題がある。特に飛散性アスベスト製品のように2種類以上の融点の違う物質で構成さる物を同時に加熱すると、融点の低い方の物質が先に熱媒体に融着し炉の燃焼が継続しない。
【解決手段】流動しない熱媒体を、ガスと空気の混合ガスによる燃焼雰囲気の中に設置し、高温加熱された熱媒体に被加熱体を通過させ溶融処理を行う。過燃焼や異常燃焼による熱媒体や炉壁の溶融や損傷が起きないように精度の良い炉内温度制御を行う。被加熱体により効率よく大きな熱エネルギ−を与えるために被加熱体を微粒に粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散性アスベストを溶融無害化したり、その他の微粉体を溶融させたり、有毒ガスや悪臭を無害化無臭化する内燃式熱媒体燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒中空ガラス球の製造装置として内燃式流動床炉があり、セラミック系熱媒体から発する輻射熱により微粉体を高温加熱する装置である。熱媒体を流動化状態にして、それを通過する被加熱体を瞬間高温加熱する。
【0003】
高温に加熱された固体の熱媒体からは大量の熱エネルギ−が被加熱体に与えられ、電気炉や、加熱バ−ナ−のような気体雰囲気による加熱よりも、被加熱体の融点を低くすることができる。
【0004】
なお、本発明に関連する公知技術として次の特許文献1を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】 特開平11−011960
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃式流動床炉は、熱媒体を流動化させるので熱媒体に溶融した被加熱体が融着した場合、熱媒体の流動が止まり、かつ炉の燃焼が止まったり炉が閉塞したりする。炉内温度設定や炉内温度自体が被加熱体の融点を超えた場合に、この現象は起こる。したがって飛散性アスベスト製品のような多種多様な物質で構成される被加熱体を内燃式流動床炉で同時に溶融処理することは困難である。また、最適溶融炉内温度の決定も困難である。
【0007】
飛散性アスベスト製品には、セメントやロックウ−ルのようなアスベストよりも融点の低い物質が混合されて使用されている。アスベスト溶融温度に設定された炉内ではアスベストよりも先にセメントやロックウ−ル等が溶融し、流動化状態にある熱媒体に付着して炉の燃焼が止まり、炉が閉塞する。
【0008】
内燃式熱媒体燃焼炉に飛散性アスベスト製品を投入するためには、飛散性アスベスト製品を、前処理として微粒に粉砕する必要がある。アスベストは硬度が高いので歯の着いたタイプの粉砕機では歯の磨耗が激しく、また吹き付けアスベストのような製品は綿状で流動性が悪いのでボ−ルミルでは粉砕が進まない。さらに装置外部への飛散の防止をするよう密閉性を保ちながら、炉の処理容量に適した被加熱体の投入量を制御する必要がある。
【0009】
飛散性アスベスト製品に有機系の塗料や溶剤が混合されていた場合、それらが熱媒体で加熱され可燃性ガス化し、異常燃焼でフリ−ボ−ド内が異常高温になり炉が損傷する。
【0010】
本発明は、この内燃式流動床炉の飛散性アスベスト処理に関する融着と云う本質的な問題点を解決する新規の内燃式熱媒体燃焼炉である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
内燃式流動床炉は、熱媒体を流動させるために炉の下部から燃料ガスと空気と被加熱体を投入するが、本発明では熱媒体を流動させる必要がないので炉の如何なる方向からも燃料ガスと空気と被加熱体を投入できる。熱媒体を2枚の目皿で挟み固定し、空気圧縮装置と排ガスブロワ−との圧力差、即ち上部目皿の上下の差圧により被加熱体、溶融した被加熱体および再固化した被加熱体は輸送される。
【0012】
飛散性アスベスト製品の主成分は、セラミック系であるのでセラミック系熱媒体に融着し易く炉が閉塞する。これを避ける為に、熱媒体にはセラミック系被加熱体と融着し難い、融点の高い金属系の熱媒体を使用する。融着しない被加熱体の場合はセラミック系熱媒体も使用できる。
【0013】
被加熱体を内燃式熱媒体燃焼炉の目皿を通過させ、熱媒体より効率的に熱エネルギ−を被加熱体に与える為には飛散性アスベスト製品を出来るだけ細かく粉砕することが重要である。非常に微粒に飛散性アスベスト製品を粉砕するにはロッド式振動ミルを使用する。装置外部へのアスベストの漏れは危険であるので、ミルと燃焼炉は直結する。このロッド式振動ミルの出口には一時的に被加熱体を貯めるバッファ−タンクを結合する。
【0014】
粉砕された被加熱体の投入量を制御する為に、バッファ−タンクの出口には回転制御されるモ−タ−を持ったスクリュ−タイプフィ−ダ−を搭載する。バッファ−タンクにはレベルセンサ−を装着し、バッファ−タンクに溜まる粉砕された被加熱体が規定量を超えた場合には、センサ−から運転停止信号がミルに送られミルは自動的に運転を止める。
【0015】
有機混合物の可燃ガス化による異常燃焼は、熱媒体下部の温度やフリ−ボ−ド内の温度を検出し、燃料ガス量を制御することで、炉の安定した燃焼を行う。
【発明の効果】
【0016】
熱媒体を流動さぜずに目皿に挟み固定することで被加熱物を上からも投入でき、融点の低い飛散性アスベスト製品のアスベスト以外の混合物が、融点の高いアスベストの溶融の妨げにならない。即ち、この方式で融点の違う物質の同時溶融処理が可能になる。
【0017】
金属熱媒体を用いることで、溶融したアスベストや溶融した飛散性アスベスト製品の他のセラミック系混合物の熱媒体への融着がし難くなり、炉が閉塞することなく長時間の運転転が可能になる。融点が高いの球形のセラミック系熱媒体は、金属系のものより融着という点からは劣るが、ある程度の使用は可能である。
【0018】
ロッド式振動ミルの使用により含有した硬いアスベストも極めて微粒に粉砕でき、また軽くて綿状な為に、通常のミル内では流動性せずに粉砕できなかった飛散性アスベスト製品も、ロッド式振動ミルのロッドが飛散性アスベスト製品を粉砕しながら出口に輸送させることが出来る。また過剰な被加熱体の投入を防ぎ適性量を投入することで安定した炉の燃焼状態を保つことができる。
【0019】
有機混合物の可燃ガス化によって得られたガスは、熱媒体内でさらに燃料ガスとして再利用され、炉のエネルギ−効率を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、内燃式熱媒体加熱炉本体8の断面図とその周辺機器で構成され、飛散性アスベスト溶融装置全体を表しており、図2は、前処理装置として飛散性アスベスト製品の粉砕装置2の構成を表している。
【0022】
空気圧縮装置1は、燃焼空気と燃料ガスタンク3からの燃料ガスと粉砕装置2で粉砕された被加熱体を燃焼炉8に輸送する。被加熱体投入口30から投入された被加熱体はロッド式振動ミル31で微粉砕されバッファ−タンク34に一旦集積される。バッファ−タンク34にはレベルセンサ−33が付帯されており、集積した粉砕被加熱体が予め設定した量を超えた場合、レベルセンサ−33からミル運転装置32へ運転停止の信号が送られロッド式振動ミルは運転を止める。逆にバッファ−タンク内の集積量が減った場合はレベルセンサ−からミル運転装置に運転開始の信号を送り、ミルは運転を開始する。
【0023】
バッファ−タンク34からの粉砕被加熱体はスクリュ−フィ−ダ−36で燃焼炉8に送られる。スクリュ−フィ−ダ−36は回転数制御装置37で制御されたモ−タ−35で回転しており、燃焼炉8に適切な量の粉砕被加熱体を送る。粉砕被加熱体が装置外部へ漏れないように、このミル全体システム2は燃焼炉8にパイプで直結する。
【0024】
粉砕被加熱体と空気と燃料ガスは、逆火防止の為に設置された防爆セラミック4と上部目皿5を通過して熱媒体6に供給される。炉内温度は被加熱体の溶融に最低限必要な温度に設定され、燃焼炉は制御装置13の働きで最適燃焼される。
【0025】
被加熱体に有機系の塗料や溶剤が混合されていた場合、これらは熱媒体により加熱され可燃性ガス化しフリ−ボ−ド内温度が異常高温になる場合がある。この場合、熱電対で異常な温度を検知し、燃料ガスを調整して炉内温度の異常を制御する。
【0026】
下部目皿7を通過した被加熱体は冷却装置9で冷却され回収箱10かバグフィルタ−11で回収される。排ガスブロワ−12は、上部目皿5から下流を負圧にし全体の被加熱体の輸送を空気圧縮装置1ともに行う。
【0027】
金属熱媒体の形状は球状とは限らず、多層構造の金属メッシュの集合体でも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は飛散性アスベスト溶融処理の他に、粉砕シリカの球状化やシラノ−ル基の除去に利用できる。
【0029】
ゴミ焼却炉や火葬場の焼却装置より排出されるダイオキシンの無害化に利用できる。
【0030】
火葬場の焼却装置や畜産廃棄物や食品関連設備から排出される悪臭の無臭化を図れる。
【0031】
本発明は、その装置規模に制限されないので、市町村や中小企業でも利用され易い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 内燃式熱媒体燃焼炉本体とその周辺設備で構成された、飛散性アスベスト溶融処理装置を表している。炉本体は断面図である。
【図2】 図1内で示される粉砕装置2の構成を表している。
【符号の説明】
【0033】
1 空気圧縮装置
2 投入量制御装置を付帯したロッド式振動ミル詳細図面2
3 燃料ガスタンク
4 防爆セラミックボ−ル
5 上部目皿
6 金属熱媒体
7 下部目皿
8 内燃式熱媒体燃焼炉
9 冷却装置
10 回収箱
11 バグフィルタ−
12 排気ブロワ−
13 炉内温度制御装置
14 空気流量検出器
15 空気流量自動調節弁
16 燃料流量自動調節弁
17 燃料流量検出器
18 熱電対
19 熱電対
20 着火バ−ナ−
30 被加熱体投入口
31 ロッド式振動ミル
32 ミル運転装置
33 レベルセンサ−
34 粉砕被加熱体バッファ−タンク
35 モ−タ−
36 スクリュ−フィ−ダ−
37 モ−タ−回転数制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気の混合ガスを炉内で燃焼させ、燃焼雰囲気の中に流動しない熱媒体を置き高温加熱させ、その熱媒体で粉体を加熱したり溶融させたり、また気体を加熱する内燃式熱媒体燃焼炉。
【請求項2】
前記内燃式熱媒体燃焼炉の熱媒体は、金属系やセラミック系の素材で構成される。
【請求項3】
前記内燃式熱媒体燃焼炉は、ロッド式振動ミルと連結され、ロッド式振動ミルはレベルセンサ−を搭載したバッファ−タンクと連結され、さらに可変回転数制御できるモ−タ−で回転するスクリュ−フィ−ダ−で連結されている。
【請求項4】
前記内燃式熱媒体燃焼炉は、被加熱体から発生する可燃性ガスによる異常燃焼を検知し燃焼制御により安定した燃焼を行う。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−225125(P2007−225125A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31626(P2006−31626)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(506045314)
【Fターム(参考)】