説明

食品の異物検出装置

食品20に混入した毛髪、虫等の異物を検出する異物検出装置10において、前記食品20を検出領域Aに搬送する搬送コンベア11と、前記検出領域Aを挟んで少なくとも2方向から食品に対して照明光を照射する照明手段14、15と、検出領域Aの一側から前記食品の表画像を撮像する撮像カメラ12と、該撮像した表画像に対して2値化処理を含む画像処理を行い、異物を検出する画像処理手段13と、を備え、前記画像処理手段13が、前記撮像した表画像を2値化処理し、得られた2値画像のうち予め設定した黒色度の閾値を超える異常な1画素を検出した後に、該1画素に隣接する画素の異常の有無を検出し、異常画素が前記1画素を元に連続的に出現した場合に異物と判定する。このとき、異常画素が連続的な線状で出現した場合には毛髪等の繊維状異物と判定し、連続的な面積状に出現した場合には虫等の面積異物と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品中の異物を検出する異物検出装置に関し、特に食品の表面に付着した毛髪等の繊維状異物や虫等の面積異物などの異物を検出する食品の異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種食品の製造工場では、食品原料中に異物が混入している場合や製造段階にて食品に異物が混入する場合があり、製品として販売するためには衛生管理の観点からこれらの異物を除去することが求められている。食品に混入する異物として最も多いのが各種の虫であり、次いで毛髪が挙げられる。この2種類の異物が、異物全体のおよそ50%を占めている。
毛髪が混入する原因としては、作業員が係わって作業する工程にて、脱毛、若しくは衣服に付着した毛髪が脱落して混入するケース、又は既に床などに落下していた毛髪が静電気などでラップ材に付着し、これを介して混入するケース等が挙げられ、製品の冷却段階、盛り付け後のハンドリング段階、製品の包装段階等において、異物混入が多く発生する。
一方、虫が食品中に混入する原因としては、食品原料に成虫の死骸として混入するケース、たまごで混入するケース、若しくはたまご及び既に混入していたゴキブリ等の虫のたまごが孵って混入するケース、或いは工場外部から飛来した虫が混入するケース等が挙げられる。
従来これらの異物検査は、作業員である人間が目視によりこれらの異物混入を検査していたが、手間がかかる上に精度上に問題があった。
【0003】
そこで近年、自動化された食品の異物検出装置が種々提案、実用化されている。このような異物検出装置としては、電磁波を用いた装置、X線を用いた装置、可視光による画像処理を用いた装置等がある。電磁波を用いた装置は、金属などの電磁波によって反応する異物のみに適用されるため、使用目的が限られていた。X線を用いた装置は、X線を透過した場合に出現する白黒画像上で、色差による判定を行う装置である。現在、一般に使用されているX線検出装置では、鉄などの金属は色差が大きく判別が容易であるが、食品と略同質の成分(たんぱく質)である異物は検出できず、毛髪、虫等のたんぱく質性の異物には適用することが困難であった。また、X線検出装置では1mm以上の面積が必要であるため、毛髪等の細長い形状を有する繊維状異物は検出できないという問題があった。
【0004】
一方、前記可視光による画像処理を用いた装置は、特許文献1(特開平5−223950号公報)、特許文献2(特開2001−21499号公報)、特許文献3(特開2004−245695号公報)等に開示されている。
特許文献1は、パック食品に混入した毛髪を検出する装置であり、撮像装置により該食品の光学像を撮像し、撮像された光学像を2値化したデータから毛髪の形状を部分特徴として抽出し、この抽出データが一定以下の細さ、一定以上の長さをもった線状体であるか否かを判定することにより、毛髪を特定的に検出する構成である。
【0005】
また、特許文献2には、酒粕や麺生地のような食品を一定厚の板状に形成して縦方向にローラ装置で送り、異物検出部にて食品の一方から光を照射して他方から透過光を取得して画像処理することによって異物を検出する装置の構成が記載されている。
また、特許文献3には、搬入コンベアと搬出コンベアの間に隙間を設け、コンベアの一側に検出対象を透過照明する手段と、該透過照明手段と前記コンベアを挟む位置に設けられたラインセンサとを備え、ラインセンサによるスキャニングにより得られた画像を2値化処理して検出対象中の異物を検出する装置が開示されている。
これらの装置を用いて、対象食品の光学像を取得して、得られた画像データを解析処理することにより、食品中に混入した様々な種類の異物を検出することが可能となった。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載される装置は、検出対象が板状に形成できる食品のみに限定され、パック詰めされた冷凍うどん、冷凍ご飯、或いは餃子やシューマイ等の複雑な形状を有する成型品については適用できない。また、特許文献1では、前記成型品のように形状が一様ではなく、表面の凹凸が著しい食品が検査対象である場合には、撮像した画像上に影の部分が多く存在し、2値化処理により異物を検出する際にこの影の部分を異物と誤認知してしまう惧れがある。さらに、特許文献3に記載される装置は、光を透過する検出対象のみにしか適用できず、またこの装置においても表面に凹凸がある検出対象に適用した場合には、検出対象である食品の撮像に影が生じてしまうため誤認知率が高く、検出精度が低下するという問題があった。
さらにまた、食品に対してこれら従来の異物検出装置を適用する場合、食品以外の検出対象とは異なり衛生面の問題をクリアする必要があった。
【特許文献1】特開平5−223950号公報
【特許文献2】特開2001−21499号公報
【特許文献3】特開2004−245695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記従来の技術の問題点に鑑み、凹凸のある検出対象であっても高精度で以って異物を検出することができる食品の異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、食品に混入した異物を検出する異物検出装置において、
前記食品を異物検出領域に搬送する搬送手段と、前記検出領域を挟んで少なくとも2方向から前記食品に対して照明光を照射する照明手段と、前記検出領域の一側から前記食品の表画像を撮像する撮像手段と、該撮像した表画像に対して2値化処理を含む画像処理を行う画像処理手段と、を備え、
前記画像処理手段が、前記撮像した表画像を2値化処理し、得られた2値画像のうち予め設定した閾値を超える異常な1画素を検出した後に、該1画素に隣接する画素の異常の有無を検出し、異常画素が前記1画素を元に連続的に出現した場合に異物と判定することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、従来検出が困難であった食品中の異物に対しても、これを高精度で検出することが可能となる。これは、食品に対して、少なくとも検出領域を挟んだ2方向から照明することによって、食品表面の凹凸により生じる影を消し、混入する異物を周りの食品から浮き出させるようにしたため、凹凸のある複雑な形状を有する食品であっても精度の良い異物検出が可能となるものである。
【0010】
また、前記異常画素が、前記1画素を元に連続的な線状に出現した場合に、毛髪等の繊維状異物と判定することを特徴とする。
このように、2値化処理して得られた2値画像における予め設定した線形状に関する長さと太さの閾値を超える異常画素の連続性を検出し、該異常画素が連続線状に出現した場合にのみ異物と判定することによって、繊維状物質のみを選択的に検出することが可能となる。
【0011】
また、前記異常画素が、前記1画素を元に連続的な面積状に出現した場合に面積異物と判定することを特徴とする。
このように、2値化処理して得られた2値画像における予め設定した面積に関する閾値を超える異常画素の連続性を検出し、異常画素が隣接して面積形状をす場合にのみこれを異物と判定することによって、面積異物のみを選択的に検出することが可能となる。
尚、前記面積異物とは、所定の幅及び長さを有する異物、若しくは所定面積以上を有する異物などをいう。
【0012】
さらに、前記照明手段のうち前記撮像手段側に位置する第1の照明手段が可視光を照射する手段であり、他の側に位置する第2の照明手段が赤外光を照射する手段であることを特徴とする。
このように、前記撮像手段とはベルトを挟んで反対側から光透過性の高い赤外光を照射することによって、食品の凹凸による影の大部分を消すことが可能となる。さらにまた、前記第1の照明手段を2以上設け、食品の一面側(撮像手段側)を異なる2以上の方向から照射することが好適である。
【0013】
また、前記第1の照明手段は、赤色、青色、緑色、及び混合色としての白色光の何れかを照射する手段であり、前記食品の種類に応じて適宜選択することを特徴とする。
このように、食品に応じた光源を利用することによって、食品をより鮮明に撮像することができ、精度の高い異物検出を行うことが可能となる。
【0014】
さらに、前記撮像手段がCCDカメラであって、該CCDカメラのレンズの焦点距離が、500mm〜900mm、好ましくは800mm〜900mmの範囲内であると良い。
これにより凹凸の著しい食品、若しくは食品表面とトレイの底との距離が大きい状態の食品であっても、取り込んだ画像の焦点を合わせることが容易となる。
さらにまた、前記搬送手段が前記食品と接触する部位を洗浄する洗浄手段を備えるとともに、少なくとも何れかの前記照明手段が移動自在に構成され、前記洗浄手段による洗浄時に該照明手段が前記搬送手段から離間して設けられた収納箱に収納されるようにしたことを特徴とする。
前記洗浄手段を設けることにより、食品の衛生面において安全で且つ信頼性の高い製品を提供することができ、また前記照明手段を収納箱に収納する構成とすることにより水や洗浄液が照明手段にかかって不具合が発生することを防止できる。尚、前記収納箱に収納される照明手段は、前記第1の照明手段であることが好ましい。
【0015】
また、前記第2の照明手段が、前記搬送手段に対面する側が赤外光を透過する材質で形成された密閉収納箱に収納されるとともに、該密閉収納箱は内部を冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする。
これにより、洗浄手段を具備する場合に、第2の照明手段に洗浄液や水等がかかり不具合が発生することを防止することができ、また第2の照明手段が搬送コンベア間の隙間の下方に設置される構成の場合、食品から落下するごみ等が付着しても容易に清掃できる。
【0016】
さらに、前記搬送手段が、並行して配置された2のコンベアベルトを有し、該2のコンベアベルトの移送方向が互いに逆方向となるように構成されるとともに、該コンベアベルトの端部に食品反転手段を備え、1のコンベア上にて前記食品の表面の異物検出を行い、他のコンベア上にて前記食品の裏面の異物検出を行うようにしたことを特徴とする。
このように、前記搬送手段を往路と復路からなるコンベアベルトで構成することにより、一基の検出装置にて食品の表面、裏面の両側に付着する異物を検出することができる。また、一度に表裏両面の異物検出ができるため、検査時間の短縮化が図れる。
さらにまた、前記異物が、たんぱく質を主成分とする物質であることを特徴とする。本発明では従来のX線検出装置では検出できなかったたんぱく質を主成分とする異物であっても好適に検出可能である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、従来検出が困難であった毛髪、虫等の異物を高精度で検出することが可能となる。また、検出領域を挟んで2方向から照明する構成とすることにより、食品表面の凹凸により生じる影を消し、混入する異物を周りの食品から浮き出させることができるため、影を異物と誤認知することを防止できる。また、2値化処理して得られた2値画像のうち予め設定した黒色度の閾値を超える異常な連続性を検出することによって、繊維状物質若しくは面積異物のみを選択的に検出することも可能となる。
さらに、搬送手段を洗浄する洗浄手段を設けることにより、衛生管理上、安全且つ安心な製品を提供でき、また照明手段を収納可能な構成とすることにより、水、洗浄液等が付着して発生する不具合を防止できる。
また、反転手段を備えた往復路からなる搬送手段を備えることにより、一基の検出手段にて食品の表面、裏面の両側に付着する異物を検出することが可能となり、検査時間の短縮化も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
本実施例の検査対象は食品であり、これは食品単体、若しくはトレイ内に収納された食品を含む。食品の種類は特に限定されるものではなく、例えば白米、うどん、シュウマイ、餃子等が挙げられ、これらのワークは冷凍状態、常温状態、加熱・保温状態の何れであっても良い。検出する異物は、毛髪や虫等の異物である。
図1は本発明の実施例に係る異物検出装置の正面図、図2は図1に示した異物検出装置の側面図、図3は洗浄手段を備えた異物検出装置を示す概略正面図、図4は他の実施例に係る異物検出装置を示す概略正面図、図5は搬送コンベアの他の実施例を示す概略平面図、図6は本実施例の画像処理装置にて得られた2値画像を示す図である。
【0019】
図1及び図2に示される異物検出装置10は、食品を検出領域Aに搬送する搬送コンベア11と、検出領域にて該搬送コンベア11に載置された食品の表画像を撮像する撮像カメラ12と、撮像手段にて得られた食品の表画像を画像処理することにより異物を検出する画像処理装置13と、前記搬送コンベア11を挟んで異なる2方向から検出領域Aにて食品に照明光を照射する照明装置14、15と、を主要構成とする。尚、前記検出領域Aは前記撮像カメラ12の視野範囲に略一致する。
また、前記異物検出装置10は、操作性を向上させるために、前記撮像カメラ12により撮像した食品の表画像等が表示されるモニタ22、該装置10を操作するためのタッチパネル23や操作キー24、及び検査対象である食品の大きさに応じて上照明装置14の高さを調節できる昇降ハンドル25等を備えていることが好ましい。
【0020】
前記搬送コンベア11は、モータに連結された駆動ローラ11bにコンベアベルト11aが架け渡された構造を有する。
前記搬送コンベア11の具体的な一の形態を図3に示す。同図に示すように前記コンベアベルト11aを赤外光透過性の材料で形成し、食品の検出領域Aにおける上ベルトの下に前記下照明手段15を設置する。このとき、前記コンベアベルト11aは透明若しくは半透明な材質で形成されると良く、例えばウレタン材等が用いられる。尚、該ベルトが白色系であっても食品によっては使用できる場合がある。また、他の形態として、図4に示すように、前記コンベアベルト11aを直列に複数配置し、食品の検出領域Aに当たる位置に間隙を設け、前記下照明装置15を該間隙の下方に設置するようにしても良い。この場合、前記コンベアベルト11aは赤外光透過性でなくても良く、その材質は特に限定されない。
【0021】
前記照明手段は、前記搬送コンベア11の上方に配置される上照明装置14と、該搬送コンベア11の内部若しくは下方に配置される下照明装置15と、から構成される。
前記上照明装置14は、前記撮像カメラ12の設置位置と同様に検出領域Aの上方に前記食品を両側から照明するように配置される。該上照明装置14によって、食品に付着した異物を周りの食品から浮き出させて、異物が存在する認識の基点を作る。例えば、異物が毛髪である場合、その断面形状は円形であるので、このような照明の方法によって毛髪の横の面に照明されて周りの食品と区別できる。異物が虫である場合、その断面形状は一定以上の大きさを持つので、虫の側面に照明を当てて周りの食品と区別する。その他の異物に関しても、異物の形状に即した照明方法を採用することにより、周りの食品と異物を明瞭に区別することができる。
また、前記上照明装置14は、可視光を用いており、光線の3原色である赤、青、緑とこれらを混合した白色光の4要素から、その食品をバックにした異物が浮き出る照明の条件を選択する。
【0022】
このとき、異物が黒色の毛髪である場合は、該異物は黒白2値化した画像の中で、黒色に近い部分に存在する。この部分を含む範囲でまず対象領域を設定し、この条件に当てはまる画素を検証の対象とする。白色の毛髪の場合も同様である。
また、異物が虫である場合は、該異物は黒色2値化した画像の中で、黒色に近い部分に存在する。従って、毛髪の場合と同様に、この部分を含む範囲内でまず対象領域を設定し、この条件に当てはまる画素を検証の対象とする。
可視光を照射する位置は、食品に近いほど好ましい。後述のように食品は搬送コンベア11上に載置された状態で上照明装置14の下をくぐって移動するため、食品上端部分と上照明装置14の下端との間は所定距離だけ離間させておく必要がある
【0023】
しかし、前記上照明装置14の光線の4要素だけでは以下の問題を生じる。即ち、表面に凹凸を持つ食品に撮像カメラ12側から可視光を照射するだけでは、異物判定の際に食品の影が異物と認識される惧れがある。このため、食品の凹凸による影を消す技術をさらに付加することが必要である。本発明者らはこの影を消す技術に関して、撮像カメラ12側からの光線の照射では影を完全に消すことはできないことを見出した。これを解決するために本実施例では、前記撮像カメラ12とは反対側に位置する照明として、下照明装置15を設けた。
前記下照明装置15には、赤外光を照射する装置を用いた。後述するように、食品は搬送コンベア11上に載置されて移送され、その途中の検出領域Aで撮像カメラ12により画像取り込みをし、その画像を画像処理装置13によって解析して異物検出の判定をするものであるから、下照明装置15から照射される赤外光は食品が載置されたコンベアベルト11aを挟んで、食品の裏面から照射される。
このとき、上記したコンベアベルト11aの構造により、食品の凹凸に基づく影は消えるか若しくは薄くなる。食品が透明性を持っている、又は透明ではないが赤外光を透過する材料、例えばご飯、うどんなどに関しては、完全に影が消える。食品がほとんど赤外光を透過しない材料に関しては、周りの壁に反射した赤外光が食品の凹凸に入り込み影を消すこととなる。
【0024】
前記撮像カメラ12は、CCDカメラ等が用いられる。該撮像カメラ12は、レンズの焦点距離を大きくすることが好ましく、これにより凹凸の大きい食品、若しくは食品表面とトレイの底との距離が大きい状態であっても、取り込んだ画像の焦点を合わせることが容易である。好適には、取り込むべき視野を食品表面で300mm×300mmとして、前述の距離を最大40mmとするとき、焦点距離として500mm〜900mmの範囲内、好ましくは500mm〜800mmとすると好結果が得られた。
また、画素数が多いほど、1画素が小さな面積を捕らえられる。例えば、毛髪の径は100μm程度で、虫は100μm以上の大きさがある。ここで、400万画素のCCDカメラで300mm×300mmの視野を見る場合、画素面積は150μm×150μmとなる。この面積において毛髪または虫等を異物として捕らえることが可能である。当然600万画素、1200万画素のカメラも実用化されており、本実施例にも適用可能であるが、高価になる欠点を持っているため、400万画素がより好ましい。
【0025】
前記画像処理装置13は、前記撮像カメラ12にて取得した食品の画像に基づき、2値化処理を含む画像処理を行い異物を検出する装置である。
ここで、一例として(1)黒髪、(2)虫、を夫々判別する方法につき記述する。
【0026】
(1)黒髪の判別方法
黒白の2値化技術において、全画素に関して、周りより黒色の強い1画素が出現し、これをまず基点とする。基点の周りに関して同じ黒色の異常性を持つ画素を検索する。このとき、予め閾値を設定しておき、該閾値を超えた値を示す画素を異常画素41とする。背景の画素40は前記閾値内にある。そして、基点に一番近い異常画素41を認識し、その画素を新しく基準画素として次の異常画素41を検索する。この解析を順次行い、図6(a)に示されるように異常画素41が連続的な線状に存在する場合を、黒色繊維物、即ち繊維状異物として認識する。毛髪もこの黒色繊維物の中に存在する。一方、ひじき等の長尺状食品の場合も前述の黒色繊維物の中に含まれる。そこで、異物として認定する繊維の細さを基準としてあらかじめ設定しておくと良い。これによりひじき等の長尺状食品は異物から除外されることとなる。黒色繊維物の中には、毛髪のほかに、豚毛、黒色の植物性繊維などが含まれる。尚、毛髪のみを検出する際には、図6(b)に示されるように、異常画素41が広面積的に出現する場合は異物として判定しない。
一方、白髪を判別する方法は、黒白の2値化技術において、全画素に関して、周りより白色の強い1画素を対象にはじめる以外、前述の黒色の場合と同様である。
【0027】
(2)虫の判別方法
黒白の2値化技術において、全画素に関して、周りより黒色の強い1画素が出現し、これをまず基点とする。尚、前記黒色の強い1画素は虫の一部である。そして、基点の周りに関して同じ黒色の異常性を持つ画素を検索する。このとき、予め閾値を設定しておき、該閾値を超えた値を示す画素を異常画素41とする。背景の画素40は前記閾値内にある。そして、基点に一番近い異常画素41を認識し、その画素を新しく基準画素として次の異常画素41を検索する。この解析を順次行い、図6(b)に示されるように異常画素41が連続して面積を作るように存在する場合を、黒色面積異物として認識する。虫もこの黒色面積異物の中に存在する。黒色面積異物の中には、虫の他に、食品の焦げた部分、虫以外の黒色の異物などが含まれる。尚、虫等の面積異物のみを検出する際には、図6(a)に示されるように、異常画素41が連続線状に出現する場合は本実施例では異物として判定しない。
【0028】
さらに、本実施例では異物検出装置10を食品に適用しているため、食品に特有の構成を備えている。ここで、前記撮像カメラ12を上部分に設置する場合を例に挙げて説明する。このとき、上方向から、撮像カメラ12、上照明装置14、搬送コンベア11、下照明装置15の順に配置される。むき出しの食品若しくはトレイに収納された食品は、前記搬送コンベア11上に載置され、前記上照明装置14の下をくぐる状態で検出領域Aを通過する。食品を扱う装置は、衛生面の観点から清潔に保持される必要がある。そこで、搬送コンベア11のうち、少なくとも食品若しくはトレイが接触する部分の洗浄が必要になる。従って、本実施例では、図3に示されるようにコンベアベルト11aの表面を水若しくは洗浄液にて洗浄する洗浄手段30を備える。
ここで、前記コンベアベルト11a上に存在する上照明装置14とベルトとの間が食品を通すだけの間隔しか持っていない場合、ベルト11aに水をかけて洗浄すると上照明装置14にも液体がかかってしまう惧れがある。従って、前記上照明装置14を移動自在な構成とし、洗浄時には該上照明装置14の近傍に設けた収納箱17にこれを収納し、箱外面をシールして水がからないようにする。前記上照明装置14は、レール18(図2参照)上を移動させる構成とする。このとき、前記収納箱17は、前記撮像カメラ12を収納する箱と同じものとしても良い。
【0029】
また、前記洗浄手段30を設けた場合、前記コンベアベルト11aの下方に存在する下照明装置15にも液体がかかってしまう惧れがある。そこで、前記下照明装置14を収納できる密閉型の収納箱19を設ける。該収納箱19のうち前記ベルト面に対面する側は、赤外光が透過する赤外光透過窓19aを設ける。該赤外光透過窓19aは、透明なプラスチック板、例えばポリカーボネイト板が好適である。
また、外部と隔離された収納箱19の中では、赤外光を常時点灯するために発熱する。そこで、収納箱19を冷却するために冷却手段(不図示)を設けた。該冷却手段は、例えば空気配管して外部空気を収納箱内に導入し外部に排気する強制冷却手段等が挙げられる。
また、別の実施態様として、図4に示した搬送コンベア11の構成とした場合には、下照明装置15と前記搬送コンベア11との間に赤外光透過板31を設置するようにしても良い。これにより、洗浄液や水等が照明装置にかかるのを防止する。さらに、前記赤外光透過板31の上側面に向けて清掃用空気を吹き付ける清掃装置32を設けるようにしても良く、これにより搬送コンベア11の間の隙間からごみ等が落下した場合であっても、前記赤外光透過板31にて受けとめられ、前記清掃装置32からの空気によって吹き飛ばされるため、光透過性を十分に維持することが可能である。
【0030】
さらに、本実施例に係る異物検出装置10は、異物が検出された異物混入食品を除外する機構を備えることが好ましい。食品20は連続的に搬送コンベア11の入り口に供給され、搬送されるが、前記画像処理装置13による異物検出の結果により、食品中に異物が混入していると判定された場合には、この判定信号が搬送コンベア11出口側に設置された食品排出機構に伝達され、異物混入食品のみを除外するようにする。
【0031】
次に、一例として、上記した異物検出装置10を用いた具体的な異物検出方法を示す。
異物検出装置10が備える画像処理装置13の性能は、取り込んだ画像中の食品表面に
付着する異物を検出することができる程度とする。該画像処理装置13は、1画面における異物検出の画像処理時間として、0.8秒から1.5秒を要し、1分間に300mm×300mmの面積を75〜40判定できるものである。従って、搬送コンベア11のスピードは22.5〜12m/minとなる。判定したい食品を1画面上に1個存在させる場合、75〜40個判定できる。トレイの大きさなら300mm×300mmの面積に2個存在させられるので、150〜80個判定できる。この生産量は、一般に食品を製造する生産量とあいまっていて従来のラインに容易に採用できる。
本実施例によれば、毛髪(黒髪、白髪、黒色以外の有色毛髪を含む)、毛髪以外の黒色/白色の豚毛、植物性の繊維、虫等の面積異物などの異物を識別できた。異物検出の対象となる食品としては、生肉、加工肉、ハム、ソーセージ、肉団子など、ご飯、うどん、そば、パン、サンドイッチ、弁当など、シューマイ、餃子、中華食品など、てんぷら、エビフライ、ハンバーグなど、野菜、果物、サラダなど、魚切り身、いかリングなどが挙げられる。
【0032】
また、前記搬送コンベア11の別の実施態様を図5に示す。該搬送コンベア11は、並行して近接配置された2の搬送コンベア11A、11Bを備え、これらコンベア11A、11Bは、移送方向が互いに逆方向となるように構成されている。該2の搬送コンベア11A、11Bは、同じ側の端部で連結され、該端部に食品反転手段28を備えている。そして、一の搬送コンベア11A上を搬送される食品20は、その表面を検出領域Aにて異物検査された後に、前記反転手段28にて反転され、食品20の裏面が表出した状態で他の搬送コンベア11B上を搬送され、再度検出領域Aを通過する際に裏面20の異物検査が行われる。
このような構成とすることによって、一基の検出手段にて食品20の表面、裏面の両側に付着する異物を検出することができるようになり、検査時間の短縮化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、複雑な形状を有する食品であっても、該食品を挟んで少なくとも2方向から照明光を照射する照明手段を備えることにより異物の誤認知を最小限に抑え、且つ2値化処理して得られた2値画像の異常画素における連続性を検出することにより、従来は検出困難であった毛髪、虫等の異物を高精度に検出可能であり、あらゆる食品に混入する各種異物を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例に係る異物検出装置の正面図である。
【図2】図1に示した異物検出装置の側面図である。
【図3】洗浄手段を備えた異物検出装置を示す概略正面図である。
【図4】他の実施例に係る異物検出装置を示す概略正面図である。
【図5】搬送コンベアの他の実施例を示す概略平面図である。
【図6a】本実施例の画像処理装置にて得られた2値画像を示す図で、繊維状異物を示す図である。
【図6b】本実施例の画像処理装置にて得られた2値画像を示す図で、面積異物を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に混入した異物を検出する異物検出装置において、
前記食品を異物検出領域に搬送する搬送手段と、前記検出領域の一側から前記食品の表画像を撮像する撮像手段と、前記搬送手段を挟んで前記検査領域の一方もしくは両側から前記食品に対して照明光を照射する照明手段と、該撮像した表画像に対して2値化処理を含む画像処理を行う画像処理手段と、を備え、
前記画像処理手段が、前記撮像した表画像を2値化処理し、得られた2値画像のうち予め設定した閾値を超える異常な1画素を検出した後に、該1画素に隣接する画素の異常の有無を検出し、異常画素が検出された場合はさらに該検出された異常画素に隣接する画素の異常の有無を検出することを繰り返し行ない、異常画素が前記1画素を元に連続的に出現した場合に異物と判定することを特徴とする食品の異物検出装置。
【請求項2】
前記異常画素が、前記1画素を元に連続的な線状に出現した場合に、毛髪等の繊維状異物と判定することを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項3】
前記異常画素が、前記1画素を元に連続的な面積状に出現した場合に面積異物と判定することを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項4】
前記照明手段のうち前記撮像手段側に位置する第1の照明手段が可視光を照射する手段であり、他の側に位置する第2の照明手段が赤外光を照射する手段であることを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項5】
前記第1の照明手段では、赤色、青色、緑色、及び混合色としての白色光の何れかを前記食品の種類に応じて適宜選択することを特徴とする請求項4記載の食品の異物検出装置。
【請求項6】
前記撮像手段がCCDカメラであって、該CCDカメラのレンズの焦点距離が、500mm〜900mmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項7】
前記搬送手段が前記食品と接触する部位を洗浄する洗浄手段を備えるとともに、少なくとも何れかの前記照明手段が移動自在に構成され、前記洗浄手段による洗浄時に該照明手段が前記搬送手段から離間して設けられた収納箱に収納されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項8】
前記第2の照明手段が、前記搬送手段に対面する側が赤外光を透過する材質で形成された密閉収納箱に収納されるとともに、該密閉収納箱は内部を冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の食品の異物検出装置。
【請求項9】
前記搬送手段が、並行して配置された2のコンベアベルトを有し、該2のコンベアベルトの移送方向が互いに逆方向となるように構成されるとともに、該コンベアベルトの端部に食品反転手段を備え、1のコンベア上にて前記食品の表面の異物検出を行い、他のコンベア上にて前記食品の裏面の異物検出を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。
【請求項10】
前記異物が、たんぱく質を主成分とする物質であることを特徴とする請求項1記載の食品の異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2008−541007(P2008−541007A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550624(P2007−550624)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/JP2005/021621
【国際公開番号】WO2006/129391
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】