説明

食品改質剤

【課題】安全性が高く、栄養価に優れ、かつ各種食品に添加することにより該食品の歩留りを向上させるとともに、硬さ、弾力性、風味等の食感を良化させる食品改質剤を提供する。
【解決手段】ゴマ種子の搾油残渣から得られたゴマタンパク質組成物からなることを特徴とする食品改質剤である。前記ゴマタンパク質組成物は、繊維質を乾燥重量で2〜10質量%含有するゴマタンパク質、及び糖質含有量が0.1質量%未満であるであるゴマタンパク質のいずれかであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマタンパク質組成物からなる食品改質剤に関し、特に、食品に添加することにより該食品の硬さ、弾力性、風味等の食感を良化させ、かつ栄養価を高める食品改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種加工食品の粘着性、保水性、保油性等の改良を目的とした添加剤として、植物性タンパク質が広く利用されており、各種加工食品の製造において欠かせないものとなっている。
【0003】
前記植物性タンパク質としては、現在、主に小麦タンパク質や大豆タンパク質が使用されているが、これらは原料特有の風味を有し、食品に多量に添加した場合、該食品の風味を損なうという問題がある。
また、小麦及び大豆は、食物アレルギーを誘発する物質として知られており、アレルギー物質を含む特定原材料として、前記小麦タンパク質及び前記大豆タンパク質を含む加工食品は、食品衛生法によりアレルギー表示が義務付けられている。さらに、大豆タンパク質は、遺伝子組換え大豆を原料に使用した場合、JAS法により遺伝子組換え大豆を使用したことの表示が義務付けられている。前記小麦タンパク質、又は前記大豆タンパク質を含む加工食品は、これらの表示を行うことにより、安全性を確保しているのが現状である。
【0004】
また、第三の植物タンパク質として、エンドウタンパク質が知られており、高い乳化安定特性から、各種加工食品の品質改良剤としての使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、小麦や大豆同様、エンドウ特有の臭いにより、食品に多量に添加した場合に、該食品の風味を損なうという問題がある。
【0005】
ところで、食品において臭気や風味は大きな要素であり、嫌悪される臭気や風味は、少しでも残存していると、その商品価値が低下してしまう。
一般に、食品に添加される添加剤としては、安全性が高く、添加される食品本来の特性を損なわず、少なくとも口腔内感覚や嗅覚に不快感を付与しないことが要求される。しかしながら、従来の植物タンパク質は、由来植物特有の臭気があり、特に、食感を改良する添加剤としては満足なものではないという問題がある。
このため、新たな植物性タンパク質からなり、安全性及び機能性に優れた食品改質剤が求められている。
【0006】
一方、食品素材や食品の増量剤としてゴマ由来タンパク質が提案されており、例えば、ゴマの脱脂粕から該ゴマタンパク質を回収する方法(特許文献2参照)や、酵素処理された脱脂ゴマ種子から得られたゴマタンパク質(特許文献3参照)が提案されている。これらのゴマタンパク質は、良好な風味を有するが、食品改質剤としての効果は十分なものではない。他方、食品の増粘安定剤としてゴマ抽出物が提案されている(特許文献4参照)が、該ゴマ抽出物は、水に溶解又は分散することにより食品を増粘させ、ゲル化させて食感の改良機能を発現するものであるため、汎用性が低い。
【0007】
よって、安全性が高く、栄養価に優れ、かつ各種食品に添加することにより該食品の歩留りを向上させるとともに、硬さや弾力等の食感、及び風味を良化させる食品改質剤は未だ提供されておらず、その開発が切に望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開2004−105067号公報
【特許文献2】特開平1−206956号公報
【特許文献3】特許第3615000号公報
【特許文献4】特開2004−307678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性が高く、栄養価に優れ、かつ各種食品に添加することにより該食品の歩留りを向上させるとともに、硬さや弾力等の食感、及び風味を良化させる食品改質剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> ゴマ種子の搾油残渣から得られたゴマタンパク質組成物からなることを特徴とする食品改質剤である。
<2> ゴマタンパク質組成物が、室温条件下において、pH7の純水に対して5質量%となるように添加して懸濁した際の溶解量が、添加量に対して80質量%未満である前記<1>に記載の食品改質剤である。
【0011】
<3> ゴマタンパク質組成物が、繊維質を乾燥重量で2〜10質量%含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の食品改質剤である。
<4> ゴマタンパク質組成物が、タンパク質を乾燥重量で55〜65質量%含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の食品改質剤である。
【0012】
<5> ゴマタンパク質組成物が、タンパク質を乾燥重量で85〜95質量%含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の食品改質剤である。
【0013】
<6> ゴマタンパク質組成物のラクトース含有量が0.1質量%未満である前記<1>から<5>のいずれかに記載の食品改質剤である。
【0014】
<7> 食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品の少なくともいずれかに添加されて使用される前記<1>から<6>のいずれかに記載の食品改質剤である。
<8> 冷凍食品、レトルト食品、及び電子レンジ対応食品のいずれかに添加されて使用される前記<1>から<7>のいずれかに記載の食品改質剤である。
【0015】
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の食品改質剤を含むことを特徴とする飲食物である。
<10> 食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品の少なくともいずれかである前記<9>に記載の飲食物である。
<11> 冷凍食品、レトルトパウチ食品、及び電子レンジ対応食品のいずれかである前記<9>から<10>のいずれかに記載の飲食物である。
<12> 機能性食品である前記<9>から<11>のいずれかに記載の飲食物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における問題を解決し、安全性が高く、栄養価に優れ、かつ各種食品に添加することにより該食品の歩留りを向上させるとともに、硬さや弾力等の食感、及び風味を良化させる食品改質剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(食品改質剤)
本発明の食品改質剤は、ゴマ種子の搾油残渣から得られたゴマタンパク質組成物からなり、必要に応じて、適宜その他の成分を含む。
前記食品改質剤は、硬さや弾力等の食感を良化させる食感改良剤、風味を良化させる風味改善剤、歩留りを向上させる歩留り向上剤、及び保水性を高める水分保持剤などとしての効果を備えるものである。
【0018】
<ゴマタンパク質組成物>
前記ゴマタンパク質組成物は、室温(20〜25℃)条件下において、pH7の純水に対して5質量%となるように添加して懸濁した際の溶解量が、添加量に対して80質量%未満であることが好ましい。前記溶解量としては、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0019】
また、前記ゴマタンパク質組成物は、ラクトース含有量が0.1質量%未満であることが好ましく、ラクトースを含有しないことがより好ましい。
【0020】
さらに、前記ゴマタンパク質組成物は、以下の第一の態様及び第二の態様のいずれかであることが好ましい。これらのゴマタンパク質組成物でない場合には、前記食品改質剤として用いた場合、添加した飲食物の食感、風味、歩留まり、及び保水性などを良化することができない。
【0021】
前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、タンパク質を乾燥重量で55〜65質量%含有し、かつ繊維質を、乾燥重量で2〜15質量%含有する。
前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、タンパク質を乾燥重量で85〜95質量%含有する。
【0022】
前記ゴマタンパク質組成物中のタンパク質乾燥重量は、公知の方法で測定することができ、例えば、ケルダール法において窒素タンパク質換算係数を6.25として計算した値として求めることができる。
また、前記ゴマタンパク質組成物中の繊維質の含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、酵素−重量法等により求めることができる。
【0023】
前記ゴマ種子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シロゴマ、クロゴマ、キンゴマ等が挙げられるが、これらの中でもシロゴマが好ましい。
また、前記ゴマ種子は、遺伝子組換体ではないゴマの子実体であることが好ましい。
前記ゴマ種子の搾油残渣としては、前記ゴマ種子から油分を除去する工程を経た残渣であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ゴマ種子を用いた公知のゴマ油の製造工程を経て排出された脱脂粕等が挙げられる。
【0024】
前記ゴマタンパク質組成物の製造方法としては、第一の態様及び第二の態様の組成及び物性の組成物が得られる限り、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、タンパク質抽出工程及び精製工程において、実質的に酵素分解処理が行われないものが好ましい。
前記製造方法としては、例えば、前記ゴマ種子の搾油残渣をアルカリ処理し、可溶化した後、不溶成分を除去して目的のタンパク質を含む画分を回収し、必要に応じて濃縮し、その後、酸を加えて中和する方法が挙げられる。
このようにして得られた前記ゴマタンパク質組成物は、そのままであってもよく、乾燥させて粉末状としてもよい。乾燥方法としては、例えば、凍結乾燥法、スプレードライ法等が挙げられる。
【0025】
<第一の態様のゴマタンパク質組成物>
前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、タンパク質を乾燥重量で55〜65質量%含有することが好ましく、58〜62質量%含有することがより好ましい。
【0026】
また、前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、繊維質を含有することにより、前記食品改質剤として食品等に添加した場合、該食品等に優れた歩留り性と弾力性とを付与する。
前記繊維質は、前記ゴマタンパク質組成物100質量%中に乾燥重量で2〜15質量%含有することが好ましく、3〜12質量%含有することがより好ましい。
前記糖質(前記繊維質成分を除く炭水化物)は、前記ゴマタンパク質組成物100質量%中に乾燥重量で10〜25質量%含有することが好ましく、15〜20質量%含有することがより好ましい。
【0027】
また、前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、脂質を含んでいてもよく、前記脂質の含有量としては15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
さらに、前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、該ゴマタンパク質組成物100質量%中の糖類含有量が2.5質量%未満であることが好ましい。
【0029】
前記第一の態様のゴマタンパク質組成物は、未加工のゴマ種子と同様の高い機能性を維持しながら、高いタンパク質含有量を有するため、飲食物等に前記食品改質剤として添加して使用される他に、栄養付加剤や機能性食品(健康食品)の原料としても好適である。
【0030】
<第二の態様のゴマタンパク質組成物>
前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、タンパク質を乾燥重量で85〜95質量%含有することが好ましい。
【0031】
また、前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、保水性が高く、弱アルカリ性から弱酸性の環境下において難溶性であり、強酸性の環境下においては高い溶解性を示すことが好ましい。それにより、前記食品改質剤として食品等に添加した場合、該食品等に優れた歩留り性と弾力性とを付与するとともに、消化性に優れる。
【0032】
前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、実質的に糖類を含有しないことがより好ましい。
また、前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、脂質の含有量が2質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
このような組成である前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、カロリーの低い高品質のタンパク源であり、前記食品改質剤として食品等に添加した場合、該食品等の質感を向上させ、優れた栄養特性を付与するとともに、アミノ酸が調味料として作用して風味良化をもたらす。
【0033】
前記第二の態様のゴマタンパク質組成物は、タンパク質含有量が高く、必須アミノ酸を高い割合で含有し、かつコレステロールや糖質を含まないため、飲食物等に前記食品改質剤として添加して使用される他に、栄養付加剤や機能性食品(健康食品)の原料としても好適である。
【0034】
前記食品改質剤は、飲食物に添加して使用することにより、該飲食物に対して歩留りを向上させ、保水性を高め、適度な硬さや弾力性を付与し、風味等の食感を良化することができる。
この場合の前記食品改質剤の添加量としては、前記飲食物の種類や性状に応じて適宜選択することができるが、前記飲食物100質量%に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0035】
前記食品改質剤の添加方法としては、前記飲食物の調製中に、均一に添加される方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記食品改質剤を、前記飲食物の主原料、副原料、調味料等に混合したり、ふりかけたり、まぶしたり、擦り込んだり、漬け込んだり、注入したりして添加することができる。
【0036】
前記食品改質剤が添加される前記飲食物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品などが好適に挙げられる。
前記食品改質剤は、前記食肉加工品に添加することにより、該食肉加工品に対し、例えば、歩留りを向上させ、硬さと弾力性とを良化し、畜肉臭等をマスキングし、前記水産加工品に添加することにより、該水産加工品に対し、例えば、歩留りを向上させ、硬さと弾力性とを良化し、ゴマ特有の良好な風味を付与し、前記穀粉加工品に添加することにより、該穀粉加工品に対し、例えば、製造工程において生地のまとまりを向上させ、歩留りを向上させ、加工品の硬さと弾力性とを良化し、ゴマ特有の良好な風味を付与する。
また、前記食品改質剤は、前記乳製品に添加することにより、該乳製品に対し、例えば、歩留りを向上させ、硬さと弾力性とを良化し、発酵臭等をマスキングする。
【0037】
また、前記食品改質剤が添加される前記飲食物としては、例えば、冷凍食品、レトルト食品、及び電子レンジ対応食品などが好適に挙げられる。
前記食品改質剤を、前記冷凍食品に添加することにより、例えば、前記冷凍食品の解凍による食感の劣化を抑制することができ、前記レトルト食品に添加することにより、例えば、前記レトルト食品の長期保存による食感の劣化を抑制することができ、前記電子レンジ対応食品に添加することにより、例えば、前記電子レンジ対応食品のレンジ加熱による食感の劣化を抑制することができる。
【0038】
前記食品改質剤中に含まれる前記その他の成分としては、添加する飲食物の食感を良化させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の植物タンパク質(小麦タンパク質、大豆タンパク質、エンドウタンパク質等)、澱粉、着香料、着色剤、増粘剤等が挙げられる。
【0039】
また、前記食品改質剤は、機能性食品の主原料、及び副原料として使用することができる。
この場合の前記食品改質剤の添加量としては、前記機能性食品の種類や性状に応じて適宜選択することができるが、前記機能性食品100質量%に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0040】
(飲食物)
本発明の飲食物としては、前記食品改質剤が添加されている限り、経口摂取可能な組成物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、食肉加工品、水産加工品、乳製品、及び穀粉加工品などが好適に挙げられる。
【0041】
前記食肉加工品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハンバーグ、ソーセージ、ハム、チキンナゲット、ミートボール、餃子、シュウマイ、ロールキャベツの具等が挙げられる。
前記食品改質剤が添加された前記食肉加工品は、例えば、歩留りが良好で、硬さと弾力性とに優れ、さらに畜肉臭等の不快な臭気がマスキングされている。
【0042】
前記水産加工品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒲鉾、薩摩揚げ、はんぺん、つみれ、魚肉ソーセージ、ちくわ等が挙げられる。
前記食品改質剤が添加された前記水産加工品は、例えば、歩留りが良好で、硬さと弾力性とに優れ、さらに、調理工程において油で揚げる等の高温加熱処理を経ていないものは、ゴマ特有の良好な風味が付与されている。
【0043】
前記穀粉加工品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、小麦粉加工品が挙げられる。前記小麦粉加工品としては、中華麺、パスタ、うどん、パン、クッキー、ビスケット、シリアル、ピザの生地、ちくわぶ、餃子の皮、春巻の皮等が挙げられる。
前記食品改質剤が添加された前記穀粉加工品は、例えば、製造工程において生地のまとまりが良く、歩留りが良好で、加工品の硬さと弾力性とに優れ、調理工程において油で揚げる等の高温加熱処理を経ていないものは、ゴマ特有の良好な風味が付与される。
【0044】
前記乳製品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チーズ、クリーム、ヨーグルト、バター、アイスクリーム等が挙げられる。
前記食品改質剤が添加された前記乳製品は、例えば、歩留りが良好で、硬さと弾力性とに優れ、特に、製造工程で発酵が行われるものは、発酵臭がマスキングされている。
【0045】
また、前記飲食物としては、例えば、冷凍食品、レトルトパウチ食品、及び電子レンジ対応食品などが好適に挙げられる。
前記食品改質剤が添加された前記冷凍食品は、例えば、解凍による食感の劣化が抑制され、前記食品改質剤が添加された前記レトルト食品は、例えば、長期保存による形状の崩れや食感の劣化が抑制され、前記食品改質剤が添加された前記電子レンジ対応食品は、例えば、レンジ加熱による食品の外観や食感の劣化が抑制される。
【0046】
さらに、前記飲食物としては、例えば、機能性食品が挙げられ、これらの中でも、健康食品、病人用食品、嚥下困難者用食品、高齢者用食品、及び乳幼児用食品などが好適に挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1、比較例2〜3)
下記表1に示す組成により、前記飲食物としてハンバーグを以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0049】
〔ハンバーグの製造方法〕
合挽き肉及び豚脂以外の材料を均一に混合した後、合い挽肉A(粗挽き)を添加して100回混合し、次いで合い挽肉B(二度挽き)及び豚脂を添加して20回混合した。これを50g/個ずつ、直径60mmの円形に成形したものを、200℃で12.5分間加熱調理して前記ハンバーグを調製した。
【0050】
【表1】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAPROT、DIPASA社製)
*2:小麦タンパク質(商品名:A−グルGX、グリコ栄養食品(株)製)
*3:大豆タンパク質(商品名:サンラバー20、不二製油(株)製)
*4:味の素(登録商標)、味の素(株)製
【0051】
前記飲食物について、以下の方法により、歩留り、物性(破断荷重、破断歪率)を測定し、さらに食感及び風味を官能評価した。結果を表2に示す。
【0052】
(1)歩留り
前記飲食物5個について、加熱調理前及び加熱調理後の質量をそれぞれ測定した。加熱調理前の質量に対する加熱調理後の質量の比(質量%)を求め、歩留りとした。結果を表2に示す。前記歩留りは、値が高い程好ましい。
【0053】
(2)物性
前記飲食物の破断荷重及び破断歪率を、レオメーター(CREEP METER RE2−33005S、株式会社山電製)を用いて測定した。測定サンプルは、直径50mm、厚み20mmとし、直径7mmの球形プランジャーを使用し、該プランジャーの移動速度を1mm/秒として測定した。7回測定を行い、それぞれの平均値を求めた。結果を表2に示す。
前記破断荷重(単位:N)は、前記測定サンプルが破断するのに要した応力であり、該破断荷重の値が高い程、測定したサンプルが硬いことを表す。
前記破断歪率(単位:%)は、前記測定サンプルの厚みに対する、前記測定サンプルが破断するまでに前記プランジャーが移動した距離の割合であり、該破断歪率の値が高い程、測定したサンプルの弾力性が高いことを表す。
【0054】
(3)官能評価
前記飲食物を、10名のパネラーに喫食してもらい、食感改善剤を添加していないもの(無添加サンプル)と比較して、舌触り(滑らかさ、みずみずしさ)、歯ごたえ(硬さ、弾力性)、及び風味(香り、味)の3項目について回答を得た。前記回答に基づき、以下の評価基準に従って、前記飲食物を評価した。結果を表2に示す。
−評価基準−
○:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが8名以上
△:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが5名以上
×:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが1名以下
【0055】
また、食感改善剤を添加した前記飲食物のうち、最も食感が好ましいものを1つ選んでもらった。前記各飲食物について、選択したパネラーの人数を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物(ハンバーグ)の歩留りを向上させ、適度な硬さと弾力性を付与することがわかった。また、本発明の食品改質剤を添加した実施例1の飲食物(ハンバーグ)は、比較例1及び2の飲食物(ハンバーグ)と比べて、食感及び風味に優れることがわかった。
【0058】
(参考例1)
実施例1で用いたゴマタンパク質(商品名:SESAPROT、DIPASA社製)の25℃における、pH7の純水に対して5質量%となるように添加して懸濁した際の溶解量を測定した。
前記ゴマタンパク質1000mgを遠沈管に秤取し、pH7の純粋19mLを添加した。これを30分間振とうした後、24時間放置し、3000rpmにて10分間遠心分離した。上清を廃棄し、残渣を70℃にて8時間乾燥して得られた固形物の重量を、溶解しなかったタンパク質の重量として測定した。3回測定した平均値を求めた結果、溶解しなかったタンパク質重量は698.7mgであった。このことから、前記ゴマタンパク質の溶解量は30.1質量%であることがわかった。
【0059】
(実施例2、比較例3〜4)
下記表3に示す組成により、前記飲食物としてケーシング蒲鉾、及び薩摩揚げを以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0060】
〔ケーシング蒲鉾の製造方法〕
半解凍した洋上すりみ1級(原料:スケトウダラ100%、商品名:マルハエクセレンスFA)を15秒ずつ5回擂潰(らいかい)した後、冷水を添加して15秒間擂潰し、次いで食塩を添加して15秒ずつ擂潰し、さらに氷水を添加して15秒間擂潰し、最後にその他の材料を添加して15秒ずつ2回擂潰して生地を調製した。なお、各擂潰は、フードカッター(DLC−6PRO、株式会社クイジナートサンエイ製)を用いて行った。前記生地を直径40mmの円筒状の型にケーシング充填し、90℃の温水で30分間加熱調理して、ケーシング蒲鉾を製造した。
【0061】
〔薩摩揚げの製造方法〕
前記ケーシング蒲鉾の製造方法において調製した生地を、25g/個ずつ、直径40mmの円形に成形したものを、170℃に加熱した油で3.5分間加熱調理して前記薩摩揚げを製造した。
【0062】
【表3】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAPROT、DIPASA社製)
*2:小麦タンパク質(商品名:A−グルGX、グリコ栄養食品(株)製)
*3:大豆タンパク質(商品名:サンラバー20、不二製油(株)製)
*4:味の素(登録商標)、味の素(株)製
【0063】
前記飲食物について、実施例1と同様にして、ケーシング蒲鉾の物性(破断荷重、破断歪率)及び食感、並びに薩摩揚げの歩留り、食感及び風味を評価した。結果を表4及び5にそれぞれ示す。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
表4及び5の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物の歩留りを向上させ、適度な硬さと弾力性を付与することがわかった。また、本発明の食品改質剤を添加した実施例2の飲食物は、比較例3及び4の飲食物と比べて、食感及び風味に優れることがわかった。
【0067】
(実施例3、比較例5〜6)
下記表6に示す組成により、前記飲食物として中華麺を以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0068】
〔中華麺の製造方法〕
小麦粉(強力粉及び中力粉)、食品改質剤、かんすい、及び食塩をミキサー(KENMIX chef、株式会社愛工舎製作所製)を用いて低速で1分間混合し、さらに水を添加して高速で10分間混合して生地を調製した。前記生地を、製麺機(パスタマシーンRMN220、インペリアトレーディング社製)で、装置の目盛りを10、8、6、4、1.5として5回圧延し、1.5mm幅に切り出して生麺を調製した。前記生麺を沸騰水で3分間茹でて、中華麺を製造した。
【0069】
【表6】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAPROT、DIPASA社製)
*2:小麦タンパク質(商品名:A−グルGX、グリコ栄養食品(株)製)
*3:大豆タンパク質(商品名:サンラバー20、不二製油(株)製)
【0070】
前記飲食物(中華麺)について、レオメーターのプランジャーをくさび型とし、前記プランジャーの移動速度を0.5mm/秒とし、測定サンプルを30mm長に切り出した麺1本とした以外は、実施例1と同様にして、物性(破断荷重、破断歪率)、食感及び風味を評価した。結果を表7に示す。
【0071】
【表7】

【0072】
表7の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物(中華麺)に適度な硬さと弾力性を付与することがわかった。また、本発明の食品改質剤を添加した実施例3の飲食物(中華麺)は、比較例5及び6の飲食物と比べて、食感及び風味に優れることがわかった。
【0073】
(実施例4、比較例7〜8)
下記表8に示す組成により、前記飲食物としてケーシングソーセージを以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0074】
〔ケーシングソーセージの製造方法〕
豚背脂肪を、フードカッターを用いて30秒間破砕し、さらに他の材料を加えてフードカッターで1分毎にへらで混合しながら5分間破砕・混合した。直径40mmの円筒型の型にケーシング充填し、90℃の温水にて30分間加熱調理し、ケーシングソーセージを製造した。
【0075】
【表8】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAPROT、DIPASA社製)
*2:小麦タンパク質(商品名:A−グルGX、グリコ栄養食品(株)製)
*3:大豆タンパク質(商品名:サンラバー20、不二製油(株)製)
【0076】
前記飲食物について、実施例1と同様にして、物性(破断荷重、破断歪率)、食感及び風味を評価した。結果を表9に示す。
【0077】
【表9】

【0078】
表9の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物に適度な硬さと弾力性を付与することがわかった。また、本発明の食品改質剤を添加した実施例4の飲食物は、比較例7及び8の飲食物と比べて、食感及び風味に優れることがわかった。
【0079】
(実施例5)
下記表10に示す組成により、前記飲食物として中華麺を以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0080】
〔中華麺の製造方法〕
小麦粉(強力粉及び中力粉)、食品改質剤(植物タンパク質)、かんすい、及び食塩をミキサー(KENMIX chef、株式会社愛工舎製作所製)を用いて低速で1分問混合し、さらに水を添加して高速で10分間混合して生地を調製した。前記生地を、製麺機(パスタマシーンRMN220、インペリアトレーディング社製)で、装置の目盛りを0、8、6、4、1.5として5回圧延し、1.5mm幅に切り出して生麺を調製した。前記生麺を沸騰水で3分間茄でて、中華麺を製造した。
【0081】
【表10】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAMINA、DIPASA社製)
【0082】
得られた中華麺について、測定回数を5回とした以外は、実施例3と同様にして物性を測定した。また、下記の方法により官能評価を行った。
【0083】
(官能評価)
前記飲食物を、5名のパネラーに喫食してもらい、食感改善剤を添加していないもの(無添加サンプル)と比較して、舌触り(滑らかさ、みずみずしさ)、歯ごたえ(硬さ、弾力性)、及び風味(香り、味)の3項目について回答を得た。前記回答に基づき、以下の評価基準に従って、前記飲食物を評価した。結果を表11に示す。
−評価基準−
○:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが4名以上
△:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが2名以上
×:無添加サンプルよりも優れていると回答したパネラーが1名以下
【0084】
また、前記飲食物のうち、食感が好ましい方を1つ選んでもらった。前記各飲食物について、選択したパネラーの人数をあわせて表11に示す。
【0085】
【表11】

【0086】
表11の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物(中華麺)に適度な硬さと弾力性を付与することがわかった。また、本発明の食品改質剤を添加した実施例5の飲食物(中華麺)は、無添加のものと比べて、食感及び風味に優れることがわかった。
【0087】
(参考例2)
実施例5で用いたゴマタンパク質(商品名:SESAMINA、DIPASA社製)の25℃における、pH7の純水に対して5質量%となるように添加して懸濁した際の溶解量を測定した。
前記ゴマタンパク質1000mgを遠沈管に秤取し、pH7の純粋19mLを添加した。これを30分間振とうした後、24時間放置し、3000rpmにて10分間遠心分離した。上清を廃棄し、残渣を70℃にて8時間乾燥して得られた固形物の重量を、溶解しなかったタンパク質の重量として測定した。3回測定した平均値を求めた結果、溶解しなかったタンパク質重量は809.3mgであった。このことから、前記ゴマタンパク質の溶解量は19.1質量%であることがわかった。
【0088】
(実施例6、比較例9〜10)
下記表12に示す組成により、前記飲食物として鶏ムネ肉の焼き物を以下の方法で製造した。なお、無添加サンプルとは、食品改質剤を添加していないサンプルである。
【0089】
(鶏ムネ肉の焼き物の製造方法)
鶏ムネ肉の皮を取り除き50g/個に削ぎ切りし、下記表12に示す割合で調製したピックル液と前記鶏ムネ肉とを、バキュームタンブラー(MGH-20型、スイス・ズーナー社製)にて25rpmで20分間タンブリング処理を行った。取り出した前記鶏ムネ肉をザルに移し、10分間静置して水切りを行った後、230℃のオーブンで15分間加熱調理して前記の鶏ムネ肉の焼き物を得た。
【0090】
【表12】

*1:ゴマタンパク質(商品名:SESAMINA、DIPASA社製)
*2:小麦タンパク質(商品名:A−グルGX、グリコ栄養食品(株)製)
*3:大豆タンパク質(商品名:サンラバー20、不二製油(株)製)
【0091】
得られた飲食物(鶏ムネ肉の焼き物)について、実施例1と同様にして歩留りを測定した。また、測定サンプルとして半分にカットした前記飲食物(鶏ムネ肉の焼き物)を用い、4回の測定の平均値を求めた以外は実施例1と同様にして物性(破断荷重、破断歪率)を測定した。結果を表13に示す。
【0092】
【表13】

【0093】
表13の結果から、本発明の食品改質剤は、添加した飲食物(鶏ムネ肉の焼き物)の歩留りを向上させ、適度な硬さと弾力性を付与し、本発明の食品改質剤を添加した実施例6の飲食物(鶏ムネ肉の焼き物)は、比較例9及び10の飲食物と比べて、歩留りが向上し、適度な硬さと弾力性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の食品改質剤は、安全性が高く、栄養価に優れ、かつ各種食品に添加することにより該食品の歩留りを向上させるとともに、硬さ、弾力性、風味等の食感を良化させることができるため、例えば、食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品等の食品改質剤として好適であり、また、冷凍食品、レトルト食品、及び電子レンジ対応食品の食品改質剤として好適である。さらに、栄養強化剤、及び機能性食品の原料としても好適である。
前記食品改質剤を含んでなる本発明の飲食物は、硬さ、弾力性、風味等の食感が良化され、かつ高い栄養価であるため、例えば、食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品等が好適に挙げられ、また、冷凍食品、レトルト食品、及び電子レンジ対応食品が好適に挙げられる。さらに、栄養強化剤、及び機能性食品も好適に挙げられ、例えば、健康食品、病院、福祉施設、及び高齢者施設等の施設で提供される病人用食品、嚥下困難者用食品、高齢者用食品、乳幼児用食品等としても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマ種子の搾油残渣から得られたゴマタンパク質組成物からなることを特徴とする食品改質剤。
【請求項2】
ゴマタンパク質組成物が、室温条件下において、pH7の純水に対して5質量%となるように添加して懸濁した際の溶解量が、添加量に対して80質量%未満である請求項1に記載の食品改質剤。
【請求項3】
ゴマタンパク質組成物が、繊維質を乾燥重量で2〜15質量%含有する請求項1から2のいずれかに記載の食品改質剤。
【請求項4】
ゴマタンパク質組成物が、タンパク質を乾燥重量で55〜65質量%含有する請求項1から3のいずれかに記載の食品改質剤。
【請求項5】
ゴマタンパク質組成物が、タンパク質を乾燥重量で85〜95質量%含有する請求項1から2のいずれかに記載の食品改質剤。
【請求項6】
食肉加工品、水産加工品、穀粉加工品、及び乳製品の少なくともいずれかに添加されて使用される請求項1から5のいずれかに記載の食品改質剤。
【請求項7】
冷凍食品、レトルト食品、及び電子レンジ対応食品のいずれかに添加されて使用される請求項1から6のいずれかに記載の食品改質剤。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の食品改質剤を含むことを特徴とする飲食物。

【公開番号】特開2006−271381(P2006−271381A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59055(P2006−59055)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(505080585)エーザイフード・ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】