説明

食品用保存剤および食品の保存方法

【課題】 食品の味や香りに悪影響を及ぼすことのないホップ毬花の抗菌成分を有効成分とする食品用保存剤及び食品の保存方法を提供すること
【解決手段】 抗菌成分として、苦味を有しない、ホップ毬花成分のキサントフモールを使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品用保存剤および食品の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ホップの毬花がビール醸造において、特有の芳香と苦味を与える目的で使われることはよく知られている。ホップ特有の芳香や苦味は、ホップ毬花中に存在するいわゆるホップ樹脂に由来し、このホップ樹脂は、大別して、フムロン(humulone)などのα酸とルプロン(lupulone)などのβ酸と呼ばれる比較的化学構造のよく似た一連の化合物から構成されていることが知られている。α酸とβ酸は、ともに強い苦味を持つ黄色ないし淡黄色の化合物で、ビール醸造においては香りや味だけでなく、ビールの生物学的な安定性にも寄与するものとして、古くから研究されてきた。
【0003】Chapmanは、ホップ抽出物がBacillus属に対し抗菌活性をもつことを示し、WalkerとParkerはフムロンやルプロンが抗菌活性をもち、ルプロンの方が抗菌活性は強いが、ビール製造の煮沸の過程でその95%が破壊されるため、ビールの生物学的な安定に寄与しているのはフムロンであることを明らかにした。さらに、Lewisらにより、フムロンやルプロンはビール中の濃度ではグラム陰性菌や真菌類には抗菌効果がなく、グラム陽性菌のみに抗菌活性を示すことが示された。
【0004】このように、ホップ毬花中には、抗菌活性を持つ化合物がいくつか存在することが知られているが、これらの物質の多くは苦味を持つ物質である。したがって、これらの物質の保存効果を奏することのできる量を食品に添加すると、食品の味や香りなどに悪影響を及ぼすこととなる。
【0005】本発明者は、先に、ホップ毬花中の抗菌性化合物を他の保存料と併用する食品用保存剤を提案した(特開平6−98738号公報参照)。この発明においては、抗菌活性を相乗的に奏させることにより、ホップ毬花中の抗菌性化合物の添加量を少なくし、苦味による悪影響を抑えようとしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、食品の味や香りに悪影響を及ぼすことのない、ホップ毬花の抗菌成分を有効成分とする食品用保存剤および食品の保存方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、抗菌性化合物として、苦味を有しない、ホップ毬花成分のキサントフモールを使用すれば、食品の味や香りに悪影響を及ぼすことなく食品の保存性を向上させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、ホップ毬花成分のキサントフモールを有効成分とする食品用保存剤であり、該化合物を含有させる食品の保存方法である。キサントフモールはホップ毬花成分のうち、上記した抗菌性化合物とは異なり、それ自体苦味を有さず、食品に添加してもその食品の味や香りに悪影響を及ぼすことがないので、単独でも抗菌活性を奏する量、添加して保存の目的を達成することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、ホップ(学名:Humulus luplus L)は、雌雄異株のクワ科に属する植物であり、雌株のみが栽培されている。毬花は雌花が多数集まって松かさ状になったものであり、その形や大きさ、数などは品種により、異なっている。この品種には、Taurus種、Galena種、Nugget種、Chinook種などいろいろあるが、本発明で用いるキサントフモールはいずれの品種の毬花にも含まれている。最近では、ホップ毬花を低温下で粉砕後、小指の先ほどの大きさに成形したペレット形のものがあるが、これを用いることもできる。
【0010】キサントフモールは、ホップの毬花成分中の抗菌性化合物の1つであり、苦味を有しないので、本発明の目的に適っており、下記の構造式で表され、分子式C21225、分子量354、融点171℃の黄色結晶の化合物である。
【0011】
【化1】


【0012】キサントフモールはホップ毬花から抽出して得ることができるが、本発明の目的には、毬花の抗菌成分のうち、苦味成分であるα酸およびβ酸の含有量を極力低減させることが望ましい。しかし、食品の保存日数を少し余分に延ばせばいいような場合は、保存剤は少量添加ですむので、α酸およびβ酸がキサントフモールの1/3程度以下残存していても、食味に影響することは少ない場合が多い。このような抽出方法としては、α酸およびβ酸の含量が少なく、キサントフモールの含量の多くなる方法であればどのような方法でも用いることができる。例えば、α酸及びβ酸を溶解し、キサントフモールを溶解しない、または溶解性の低い溶媒、例えば、ヘキサン、液化炭酸ガスで抽出操作を行って、α酸およびβ酸を抽出して分離し、得られた抽出残査から、キサントフモールを溶解する溶媒、例えば、熱水、エタノール、メタノール等を用いて二回めの抽出を行うことによりキサントフモールに富む抽出物を得ることができる。この抽出物には苦味は感じられず、抗菌性に富む。
【0013】本発明においては、このような抽出操作によって得られた抽出物をキサントフモールとして用いることができる。ちなみに、後記する実施例(参考例1)で得られたキサントフモールに富む抽出物の代表的な腐敗細菌に対する抗菌力(MIC)を表1に示す。抗菌力はトリプトソイ寒天培地、30℃、48時間培養における最小発育阻止濃度(MIC)を測定したが、同時に、ゼラチン、コーンスターチ、ゼラチン及びコーンスターチ混合物(1:2)をそれぞれ3%添加した培地についても同様にMICを測定した(表1中、with1(ゼラチン)、with2(コーンスターチ)、with3(ゼラチン1:コーンスターチ2)、いずれもpH6.0)。
【0014】
【表1】


【0015】表1にみるとおり、代表的な腐敗細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)は0.01〜0.03%であった。蛋白質としてゼラチンを添加した場合、抗菌力は1/20に低下し、炭水化物としてコーンスターチを添加した場合、抗菌力に変化はない。ゼラチン1:コーンスターチ2の比率の場合は1/3〜1/5に抗菌力は低下している。すなわち、上記抽出物に対し、蛋白質は吸着等の影響か、抗菌力を減殺し、炭水化物は影響を及ぼさないことがわかる。したがって、キサントフモールを多量に含有するホップ抽出物は炭水化物系の食品の保存に好適であり、炭水化物に蛋白質が少々混ざっていても実用上問題ないことわかった。
【0016】炭水化物系の食品の原料としては、米、麦、豆、とうもろこし、雑穀等の穀類、ジャガイモ、サツマイモ、長いも、クズ等の根茎類、カボチャ、ニンジン、ナス、ゴボウ、ホウレンソウ等の野菜類などがある。これらの加工食品としては、米の加工食品として、白飯、赤飯、まぜご飯、炊き込みご飯、チャーハン、モチ、団子などがあり、小麦の加工食品には、生麺・茹で麺・蒸し麺として、うどん、日本そば、中華そば、スパゲッテイ等、パン類として、焼くタイプのパン、蒸すタイプのパン、饅頭などがある。豆類の加工食品としては、生あん、練りあん、煮豆、豆腐、調味油揚げなどがある。根茎類や野菜類の加工食品としては、ポテトサラダ、サツマイモのペースト、トロロイモ、キンピラゴボウ、カボチャ、ニンジン、ダイコン、インゲン、ホウレンソウ等の煮物、いため物などがある。
【0017】本発明の食品用保存剤は、通常、キサントフモールとして、食品重量の0.0005〜0.5%添加することが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1%添加する。
【0018】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】参考例1(キサントフモール含有抽出物の調製)
粉砕した乾燥ホップ毬花1kgに5リットルのヘキサンを加えて、1時間攪拌して抽出し、固液分離した。抽出液4100mlを濃縮して乾燥し、160gの乾燥粉末を得た。この粉末の組成は、α酸58%、β酸23%、ホップ油5%、キサントフモール1.1%、その他12.9%であった。液化炭酸ガス抽出を行った場合もほぼ同様の組成のものが得られた。
【0020】一方、得られた抽出残査810gに熱水5リットルを加えてpHを微アルカリに調整しながら、80℃、1時間抽出して得られた抽出液300mlを濃縮したのち、エタノール500mlを加えて不溶物を除いた。抽出液を濃縮、乾燥して抽出物19gを得た。この抽出物の組成は、キサントフモール57%、イソアルファ酸14%、その他29%であった。この抽出物をキサントフモール・リッチ・フラクション(以下、キサントフモールRFと略記)として以下の実施例において用いた。
【0021】実施例1〜2、比較例1(白飯の保存試験)
生米1kgを水洗いして水切りし、1kgの水を加え、更にキサントフモールRFを0.1g(生米に対して0.01%)加えたもの(実施例1)、同0.5g(0.05%)加えたもの(実施例2)、キサントフモールRFを加えなかったもの(比較例1)の3群を用意し、大型電気炊飯器3台を用いて炊飯を行った。得られた米飯をそれぞれボールに移し、ラップをかけて真空冷却器に入れて30℃に冷却した。200mlのフタ付きポリエチレン製容器に、米飯100g入りを一群5個づつ盛り付け、30℃にて保存試験を行った。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
保 存 時 間 12 18 24 30 36 42 48 比較例1 5/5 1/5 0/5 − − − − 実施例1 5/5 5/5 5/5 5/5 5/5 1/5 0/5 実施例2 5/5 5/5 5/5 5/5 5/5 5/5 3/5 注)分母は試験に供した一群の個数分子は腐敗や酸敗臭が感じられない正常品の数
【0023】表2からキサントフモールRFを添加することにより、顕著に保存性が向上することがわかる。また、白飯のような無味、無臭の食品に対してさえも風味に全く影響を与えなかった。
【0024】実施例3、比較例2(炊き込みごはんの保存試験)
生米300gを水洗して水切りし、280gの水と炊き込み五目ごはんの素((株)桃屋製)40gを加え、さらにキサントフモールRFを生米に対して0.8%加えて電気炊飯器にて炊飯した(実施例3)。キサントフモールRFを加えない炊飯も行い、両者の食味と30℃における一般生菌数を測定して保存性を比較した。結果を表3に示す。
【0025】
【表3】


注)数値は一般生菌数(CFU/g)
また、キサントフモールRFを0.8%添加しても風味において差はなかった。
【0026】実施例4〜5、比較例3(蒸し焼きそばの保存試験)
準強力粉1kgにかん粉14g、食塩10gを310mlの捏水に溶解させたものを加えて、15分間混捏を行った後、常法により生中華麺を試作した(比較例3)。このとき、捏水に、さらにキサントフモールRFを0.05g(0.005%)添加したもの(実施例4)、0.5g(0.05%)添加したもの(実施例5)をつくり、常法により、蒸して、蒸し焼きそばとして、一群5個づつ、ポリエチレン袋詰めし、ヒートシールし、30℃にて保存試験を行った。結果は表4のとおりであるが、キサントフモールRFは0.005%の添加でも効果があり、0.05%の添加でも風味に影響がなかった。
【0027】
【表4】


注)分母は試験に供した一群の個数分子は変敗に至らない正常品の個数
【0028】実施例6、比較例4(茹でうどんの保存性試験)
キサントフモールRF0.05%を添加した茹で水を用いて、市販の生うどんを98℃、15分間茹でた後、水切りし、プラスチックのカップに詰め(実施例6)、10℃に保存後の一般生菌数(CFU/g)およびpHの変化を調べた。同時に、キサントフモールRFを添加しない茹で水で茹でたうどんについても同様に保存性を調べた(比較例4)。結果を表5に示す。また、風味、食感、味について、両者に差は認められなかった。
【0029】
【表5】
保 存 日 数 1 4 7 15 30 比較例4 一般生菌数 <10 2.1×104 7.8×106 − − pH 7.28 7.17 7.23 − − 実施例6 一般生菌数 <10 <10 <10 <10 <10 pH 6.12 6.13 5.81 5.81 5.79
【0030】実施例7、比較例5(フラワーペーストの保存試験)
脱脂粉乳3%(重量)、粉乳2%、水49.2%、砂糖25%、小麦粉3.5%、マーガリン15%、コーンスターチ2%、キサンタンガム0.3%の材料を混合し、加熱前の重量の5%分を攪拌しながら煮詰めて、フラワーペーストを試作した。キサントフモールRF無添加群(比較例5)、0.05%(全量に対して、加熱前に添加)添加群(実施例7)について、放冷後、蓋付きのビニールカップ容器に移し、25℃にて保存試験を行った。結果(一般生菌数(CFU/g)、pH、外観)を表6に示す。
【0031】
【表6】
保 存 日 数 0 3 5 6 比較例5 一般生菌数 <10 5.8×106 − − pH 6.7 6.6 − − 外観 − 離水 − − 実施例7 一般生菌数 <10 <10 4.0×103 1.5×104 pH 6.5 6.5 6.4 6.5 外観 − 無変化 無変化 無変化
【0032】実施例8、比較例6(蒸しパンの保存試験)
小麦粉100g、牛乳45g、砂糖50g、卵35g、ベーキングパウダー5gの配合で常法により、蒸しパンを試作した。この処方に、キサントフモールRF無添加群(比較例6)、0.03%(全量に対し)添加群(実施例8)を作り、それらを、袋詰めにし、20℃にて保存試験を行った。結果を表7に示す。
【0033】
【表7】
保 存 日 数 0 3 5 7 10 比較例6 一般生菌数 <10 1.0×10 3.4×105 3.5×106 − pH 6.8 6.9 7.0 6.9 − 外観 − 無変化 無変化 無変化 − 実施例8 一般生菌数 <10 <10 1.5×10 1.0×10 4.0×10 pH 6.4 6.5 6.5 6.6 6.6 外観 − 無変化 無変化 無変化 カビ発生 注)一般生菌数:CFU/g
【0034】保存7日目における一般生菌数を比較すると、比較例6は106になったのに対し、実施例8(キサントフモールRF添加群)は10で、比較例6より5オーダー少なく、高い保存効果が認められている。
【0035】実施例9〜10、比較例7(ねり餡の保存試験)
生こしあん50g、砂糖15g、SE-30 7.5g、水200gを混合し、これに、キサントフモールRFを0.025%(実施例9)、0.05%(実施例10)添加し、攪拌しながら煮詰めて、Brix 約37%にして、ねり餡を試作した。キサントフモールRF無添加のねり餡も作った(比較例7)。それらを蓋付きビニールカップに入れ、30℃で保存し、経時的に菌数測定(CFU/g)を行った。結果を表8に示す。
【0036】
【表8】
保 存 時 間 (h) 0 24 48 72 144 比較例7 一般生菌数 <10 5.5×10 1.3×107 2.2×107 − pH 6.87 6.77 6.60 6.51 − 観察 − 無変化 腐敗臭 腐敗臭 − 実施例9 一般生菌数 <10 <10 3.8×103 7.0×105 3.7×107 pH 6.25 6.21 6.14 6.19 6.18 観察 − 無変化 無変化 無変化 腐敗臭 実施例10 一般生菌数 <10 <10 <10 <10 <10 pH 5.96 5.94 5.88 5.95 5.93 観察 − 無変化 無変化 無変化 無変化
【0037】30℃、72時間保存後における一般生菌数を比較すると、実施例9(キサントフモールRF0.025%添加区)は、2オーダー、実施例10(0.05%添加区)は、7オーダー、比較例7(無添加区)より低く、腐敗臭の発生も認められず、高い保存性を示している。
【0038】実施例11、比較例8(バッター液の保存試験)
小麦粉50g、卵15g、水85gをよく混ぜ合わせ、バッター液を試作した。キサントフモールRF0.03%添加群(実施例11)と無添加群(比較例8)を作り、それらを蓋付きビニールカップに入れ、15℃で保存し、経時的に一般生菌数(CFU/g)を測定した。結果を表9に示す。
【0039】
【表9】
保 存 日 数 0 2 4 6 7 比較例8 一般生菌数 <10 1.3×106 4.6×107 − − pH 6.63 6.66 5.70 − − 観察 − 腐敗臭 腐敗臭・変色 − − 実施例11 一般生菌数 <10 <10 2.0×104 1.1×106 1.5×107 pH 6.02 5.98 6.06 5.80 5.81 観察 − 無変化 無変化 無変化 腐敗臭 15℃、4日間保存後における一般生菌数を比較すると、実施例11は、比較例8より3オーダー低く、高い保存性を示している。
【0040】実施例12、比較例9(ポテトサラダの保存性試験)
じゃがいも70g、ニンジン10g、きゅうり10g、マヨネーズ10gをよく混ぜ合わせ、ポテトサラダを試作した。キサントフモールRF0.05%添加群(実施例12)、無添加群(比較例9)の両者を、蓋付きビニールカップに詰め、30℃で保存し、経時的に一般生菌数(CFU/g)を測定した。結果を表10に示す。
【0041】
【表10】
保 存 時 間 (h) 0 24 48 72 比較例9 一般生菌数 3.1×102 9.5×105 2.5×107 − pH 5.40 5.52 5.93 − 観察 − 無変化 腐敗臭・ネト − 実施例12 一般生菌数 2.6×102 6.7×102 8.4×103 1.1×104 pH 5.13 5.14 5.11 5.14 観察 − 無変化 無変化 無変化
【0042】30℃、48時間保存後における一般生菌数を比較すると、実施例12は無添加群より4オーダー低く、高い保存性を示している。なお、実施例12の味、香りについても特に問題はなかった。
【0043】実施例13〜14、比較例10(スイートポテトの保存試験)
蒸したさつまいも500gに、牛乳60g、砂糖50g、バター50g、卵黄(卵2個分)をよく混合し、オーブンで5分間加熱して、スイートポテトを試作した。キサントフモールRFをさつまいも重量の0.025%(実施例13)、0.05%(実施例14)添加群、無添加群(比較例10)について、蓋付きポリエチレン製容器に充填して、20℃にて保存試験を行った。結果を表11に示す。
【0044】
【表11】
保 存 日 数 (日) 0 3 5 7 比較例10 一般生菌数 <10 2.8×10 5.8×102 7.8×107 pH 6.6 6.4 6.4 6.7 観察 − 無変化 無変化 腐敗臭・ネト 実施例13 一般生菌数 <10 <10 <10 3.8×103 pH 6.3 6.3 6.2 6.2 観察 − 無変化 無変化 無変化 実施例14 一般生菌数 <10 <10 <10 3.0×102 pH 6.0 6.0 6.0 5.9 観察 − 無変化 無変化 無変化 注)一般生菌数:CFU/g
【0045】20℃、保存7日目における一般生菌数を比較すると、比較例(無添加群)は107になったのに対し、実施例13(0.025%添加群)は103で4オーダー、実施例14(0.05%添加群)は102で5オーダー、比較例より少なく、高い保存効果が認められる。
【0046】実施例15〜16、比較例11(筑前煮の保存試験)
鶏モモ肉150g、サトイモ250g、ニンジン50g、茹でタケノコ50g、コンニャク50g、干ししいたけ30g(湯で戻して)、サラダ油10g、だし汁200g、砂糖18g、酒6g、醤油27g、みりん5gの配合で、常法により、筑前煮を試作した。キサントフモールRFを固形物重量に対し、0.03%添加した群(実施例15)、0.1%添加した群(実施例16)、および無添加群(比較例11)を作り、それぞれを、カップ詰め後、20℃にて保存試験を行った。結果(一般生菌数はCFU/g)を表12に示す。
【0047】
【表12】


【0048】20℃、保存3日後における一般生菌数を比較すると、実施例15(0.03%添加群)は3オーダー、実施例16(0.1%添加群)は5オーダー、無添加群より低く、高い保存性を示している。
【0049】実施例17、比較例12(白あえの保存試験)
ニンジン60g、しいたけ20g、だし汁100g、砂糖2.5g、醤油4.5g、さやいんげん20gを煮つけ、それに豆腐50g、食塩2g、砂糖8g、みりん10g、MSG0.5gを加えた配合で、常法により、白あえを試作した。キサントフモールRF0.03%(全量に対して)を添加した群(実施例17)および無添加群(比較例12)を作り、それぞれ、カップ詰め後、20℃にて保存試験を行った。結果(一般生菌数はCFU/g)を表13に示す。
【0050】
【表13】
保 存 日 数 (日) 0 2 4 比較例12 一般生菌数 7.0×10 2.7×104 1.1×107 pH 6.13 6.11 4.99 観察 − 無変化 腐敗臭 実施例17 一般生菌数 4.5×10 1.5×10 7.2×104 pH 5.49 5.41 5.56 観察 − 無変化 無変化
【0051】20℃、保存4日後における一般生菌数を比較すると、実施例17(0.03%添加群)は3オーダー無添加群より低く、腐敗臭の発生も認められず、高い保存性を示している。
【0052】実施例18〜19、比較例13(肉じゃがの保存試験)
じゃがいも200g、砂糖10g、醤油29g、玉葱70g、豚バラ肉(薄切り)70g、サラダ油5g、酒5g、水125g、みりん5gの配合で常法により、肉じゃがを試作した。キサントフモールRF0.04%(固形物重量に対し、実施例18)、0.1%(実施例19)添加群および無添加群(比較例13)を作り、それぞれ、カップ詰め後、20℃にて保存試験を行った。結果(一般生菌数はCFU/g)を表14に示す。
【0053】
【表14】


【0054】実施例について、風味、食感、味を比較例と比較したが、特に差は認められなかった。20℃、保存3日後における一般生菌数を比較すると、実施例18(キサントフモールRF0.04%添加群)は5オーダー、実施例19(0.1%添加群)は7オーダー、比較例(無添加群)より低く、腐敗臭の発生も認められず、高い保存性を示している。
【0055】実施例20、比較例14(ホワイトソースの保存試験)
牛乳100g、バター8g、小麦粉8g、塩1g、胡椒0.1gを混合し、これにキサントフモールRFを0.05%(全重量に対し)添加し、攪拌しながら煮詰めてホワイトソースを試作した(実施例20)。キサントフモールRF無添加についても作り(比較例14)、それらを蓋付きビニールカップに入れ、15℃で保存し、経時的に一般生菌数(CFU/g)を測定した。結果を表15に示す。
【0056】
【表15】


【0057】実施例20(0.05%添加群)は風味、食感、味について、問題はなかった。15℃、6日保存後における一般生菌数を比較すると、実施例は、比較例より4オーダー低く、高い保存性を示している。また、実施例は6日保存後においても腐敗臭の発生は認められなかった。
【0058】実施例21、比較例15(絹ごし豆腐の保存試験)
市販豆乳にグルコノデルタラクトンを0.3%加え、よく攪拌し、75℃まで加熱して15分間静置した。その後豆腐箱に流し込み、2時間軽く圧搾して、蓋付きプラスチック容器に豆腐100gづつを入れ、キサントフモール0.03%水溶液を豆腐がかぶる量まで(25ml)加えた(実施例21)。水を25ml加えた比較例15も同様に作った。10℃にて保存し、両者の5日後の保存性を差し水の一般生菌数(CFU/g)で比べたところ、比較例が5.5×106に対して実施例は6.1×103であった。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、食品の味や香りに悪影響を及ぼさないホップ成分を有効成分とする食品用保存剤、およびそのような食品の保存方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホップ毬花成分のキサントフモールを有効成分とする食品用保存剤。
【請求項2】 ホップ毬花成分のキサントフモールを含有させる食品の保存方法。
【請求項3】 食品が炭水化物系食品である請求項2記載の食品の保存方法。

【公開番号】特開2002−51757(P2002−51757A)
【公開日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−239642(P2000−239642)
【出願日】平成12年8月8日(2000.8.8)
【出願人】(000101215)アサマ化成株式会社 (37)
【Fターム(参考)】