説明

食感又は風味の改善・保持方法、グルコースポリマーの使用、グルコースポリマー、並びに飲食物

【課題】粘度安定性に優れ、また、品質の変化が少ないグルコースポリマーを提供すること。
【解決手段】グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させる、食感及び/又は風味の改善・保持方法を提供する。このグルコースポリマーを(1)食感改善作用、(2)食感保持作用、(3)風味改善作用、(4)風味保持作用、のいずれか又は複数の作用の有効成分として使用することにより、飲食物の食感・風味を改善でき、また、飲食物の良好な食感・風味を長期間保持できる。このグルコースポリマーは、パン、ケーキ、麺類、乳飲料、流動食、乾燥粉末品、液体調味料など、飲食物全般に広く適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デキストリンなどのグルコースポリマーに係わる技術分野に属し、グルコースポリマーを飲食物に含有させる食感又は風味の改善・保持方法、グルコースポリマー及びその使用、飲食物、などに関する。
より詳細には、グルコース重合度が100〜10,000であり、平均鎖長が10〜22であり、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させる食感又は風味の改善・保持方法、グルコースポリマー及びその使用、飲食物、などに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、化学的・酵素的方法などでデンプンを低分子化することにより得られたグルコースポリマーは、デキストリンと総称される。デキストリン(若しくは、デンプンを分解・精製などして得られたグルコースポリマー)は、例えば、飲食物分野において、味調整剤、増量剤、粉末化基剤など、種々の用途に利用されている。
【0003】
デキストリンなどに関する先行文献として、例えば、以下の文献が開示されている。特許文献1には、ワキシー種のデンプンを加水分解して得られた高分子デキストリンが、特許文献2及び特許文献3には、デンプンを酵素的に分解した後、精製などするデキストリンの製造方法などが、特許文献4及び特許文献5には、枝つくり酵素を用いて調製されたデキストリンなどが、それぞれ記載されている。
【特許文献1】特開昭57−47500号公報
【特許文献2】特開昭61−205494号公報
【特許文献3】特開平6−209784号公報
【特許文献4】特開平8−134104号公報
【特許文献5】特開2002−78497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のデキストリンは、粘度変化の割合が比較的大きいものが多かった。また、飲食物に含有させた場合、デキストリンの品質が劣化し、飲食物の食感・風味に影響を与える場合が多かった。
【0005】
そこで、本発明は、粘度安定性に優れ、また、品質の変化が少ないグルコースポリマーを提供すること、を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させた場合、その飲食物の食感や風味が改善・保持されることを新規に見出した。
【0007】
そこで、本発明では、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させる、食感及び/又は風味の改善・保持方法を提供する。
【0008】
このグルコースポリマーを(1)食感改善作用、(2)食感保持作用、(3)風味改善作用、(4)風味保持作用、のいずれか又は複数の作用の有効成分として使用することにより、飲食物の食感・風味を改善でき、また、飲食物の良好な食感・風味を長期間保持できる。
【0009】
本発明に係るグルコースポリマーは、例えば、小麦粉を主原料として焼成又は加熱し作製する食品(パン、ケーキなど)、麺類、飲料(乳飲料など)、流動食、乾燥粉末品、液体調味料など、飲食物全般に広く適用可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、飲食物の食感・風味を改善でき、また、飲食物の良好な食感・風味を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<本発明に係るグルコースポリマーについて>
本発明に係るグルコースポリマーは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであればよい。
【0012】
このグルコースポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上のデンプンを加水分解した後、精製することにより、得ることができる。
その場合、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上のデンプンを得るための好適な原料として、例えば、コナフブキ、紅丸、トヨシロ、農林1号、エニワ(以上、アミロースを通常量含有する品種)、ワキシー種(アミロース含有量の少ない品種)などの品種の馬鈴薯、白花豆などの豆類、などが挙げられる。
【0013】
また、デンプンを酵素で分解などし、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22のグルコースポリマーを得た後、そのグルコースポリマーをリン酸化して、製造してもよい。
その場合、デンプンの種類・原料は特に限定されず、公知のものを広く用いることができる。
なお、リン酸化は、例えば、グルコースポリマーとリン酸塩(オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩など)との混合乾燥物を110℃以上で加熱することにより、行うことができる。
【0014】
デンプンの分解は、例えば、α−アミラーゼ(1,4−alpha−D−glucan glucanohydrolase)、β−アミラーゼ(1,4−alpha−D−glucan maltohydrolase)、プルラナーゼ(alpha−dextrin endo−1,6−alpha−glucosidase)、イソアミラーゼ(glycogen 6−glucanohydrolase)、枝つくり酵素(1,4−alpha−D−glucan:1,4−alpha−D−glucan 6−alpha−D−(1,4−alpha−D−glucano)−transferase)などの酵素を用いて行う。
また、塩酸、蓚酸などの酸による分解、加熱焙焼による分解、これらの方法と酵素による方法とを組み合わせた方法、などにより行ってもよい。
【0015】
本発明に係るグルコースポリマーの精製は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、膜分離装置、エタノールなどの有機溶媒を用いる方法などで、デンプン分解物などを分画することにより行う。
また、前記方法により分画したグルコースポリマーを、活性炭、イオン交換樹脂などを用いて、さらに精製してもよい。
その他、例えば、回収した液状のグルコースポリマーを、スプレードライヤーなどで噴霧乾燥することにより、粉末化又は濃縮化を行ってもよい。
【0016】
<本発明に係るグルコースポリマーの使用方法について>
本発明に係るグルコースポリマーは、例えば、飲食物に対する、(1)食感改善作用、(2)食感保持作用、(3)風味改善作用、(4)風味保持作用、のいずれか又は複数の有効成分として使用できる。
【0017】
このグルコースポリマーは、飲食物全般に広く適用可能である。
例えば、小麦粉を主原料として焼成又は加熱し作製する食品、麺類、飲料、流動食、乾燥粉末品、液体調味料などに含有させることができる。
【0018】
なお、飲食物に含有させる場合におけるグルコースポリマーの形態は、液状・固形状のいずれでもよい。また、固形状のグルコースポリマーを用いる場合、粉末化、顆粒化、ペレット化など、食品加工の際に分散しやすいように加工されたものを用いてもよい。
その他、本発明に係るグルコースポリマーは、飲食前に添加されていればよく、添加の時期などにより狭く限定されない。好適な添加時期は飲食物の種類によって異なるが、例えば、飲食物の調製段階に添加してもよいし、飲食直前に添加してもよい。
【0019】
小麦粉を主原料とし、焼成加工又は加熱加工して製造された食品としては、例えば、パン、ケーキ、カステラ、パイ、ワッフル、ドーナツ、クッキー、フラワーペースト、シュークリームのシュー皮、餃子の皮、シューマイの皮、中華まん類、お好み焼き、たこ焼き、から揚げ・トンカツなどの衣、カレー・シチュー・ハヤシライスなどのルー、などが挙げられる。
なお、冷凍パン生地などのように焼成加工又は加熱加工前である場合も、それらの食品に含まれる。
【0020】
麺類としては、例えば、うどん、そば、そうめん、冷麦、中華麺、パスタ類などが挙げられる。また、それらの麺類の袋入り茹で麺、弁当タイプの麺類、即席麺類、乾麺類なども、本発明に係る麺類に含まれる。
【0021】
飲料としては、例えば、乳飲料、ジュース、野菜ジュース、トマトジュース、スポーツ飲料、コーヒー飲料、酒類、栄養ドリンク、アイソトニック飲料、健康飲料、豆乳飲料、酢飲料、流動食などが挙げられる。
【0022】
乾燥粉末品としては、だしの素、複合調味料、粉末醤油、粉末味噌、ふりかけ、お茶漬けの素、粉末すし酢、中華の素、粉末油脂、魚肉練り製品用粉末調味料、ハムソーセージ用粉末調味料、粉末乳製品、粉末飲料(スポーツドリンク用など)、シチューの素、スープの素、ポタージュの素、おでんの素、唐揚げ粉、バッターミックス、たこ焼き粉、パン用粉、麺用粉、菓子用粉などのミックス粉などが挙げられる。また、乾燥粉末品を打錠して得られた打錠物も、本発明に係る乾燥粉末品に含まれる。
【0023】
液体調味料としては、例えば、醤油、ドレッシング、食酢、三杯酢、天つゆ、麺つゆ、ソース、焼肉のタレ、缶詰用調味液、レトルト調味液、発酵調味料、みりん、新みりんなどが挙げられる。
また、ケチャップ、味噌、もろみ、ひしおなどの半液状物も、本発明に係る液体調味料に含まれる。
【0024】
<本発明に係るグルコースポリマーの検出方法について>
飲食物中に、本発明に係るグルコースポリマーが含有しているかどうかは、例えば、以下に示す方法により、検出することができる。
【0025】
はじめに、試料の調製を行う。
【0026】
まず、減圧加熱乾燥又は凍結乾燥を行い、飲食物から水分を除く。
次に、飲食物中に油脂が含まれる場合、95%エタノール、ヘキサン、クロロホルムなどを用いて脱脂する。脱水した飲食物に95%エタノールを加え、グルコースポリマーを含む画分を沈澱させた後、遠心分離し、回収する。次に、グルコースポリマーを含む画分を水で分散させた後、再び遠心分離を行い、今度は沈殿物を除去する。これにより、水に不溶性の成分を除去することができ、また、グルコースポリマーが溶解した水溶液を得ることができる。なお、この操作により、リンを含む脂溶性成分も同時に取り除くことができる。
次に、タンパク質を除去する。グルコースポリマーが溶解した水溶液にプロテアーゼ(pepsin、メルク株式会社製)を加えタンパク質を分解した後、最終濃度が50%になるようにエタノールを加えてグルコースポリマーを沈澱させ、沈澱物を回収する。なお、この操作により、グルコースポリマーに結合していないリンも同時に取り除くことができる。
次に、デンプン質以外の増粘多糖類を除去する。前の手順で得られたグルコースポリマーの沈殿物を再び水に溶解させた後、多糖類分解酵素(ペクチナーゼ(ヤクルト薬品工業株式会社製)、キシラナーゼ(ヤクルト薬品工業株式会社製)、プルラナーゼ(生化学工業製)など)により処理を行って多糖類を分解し、次に、最終濃度50%になるように再びエタノールを加えてグルコースポリマーを沈澱させ、沈澱物を回収する。
次に、沈殿物として回収したグルコースポリマーから、重合度約3,000〜12,000程度のアミロース成分を、Schochらの方法(J. Am. Chem. Soc., 64, 2957(1942)参照)を一部変更した方法により除去する。回収した沈殿物に10%ブタノール水溶液を添加し、10分間沸騰させた後、一晩4℃条件下に放置し、沈澱したアミロースを遠心分離により除去する。これにより、重合度が3,000〜12,000程度で、平均鎖長の長いグルコースポリマーを除去できる。
そして、得られた上澄みを濃縮乾燥させ、試料とする。
【0027】
続いて、調製した試料の分析を行う。
【0028】
グルコースポリマーのグルコース重合度が100〜10,000であることの確認は、例えば、Hanashiroらの方法(Carbohydr. Res.,306,421−426(1998)参照)の一部を変更した方法により行うことができる。
まず、グルコースポリマーの還元末端基を蛍光試薬(2−アミノピリジン)で標識する。次に、3種類のカラム、SHodex OHpak SB−804(「SHodex」は登録商標、昭和電工株式会社製)、SHodex OHpak SB−803(「SHodex」は登録商標、昭和電工株式会社製)、SHodex OHpak SB−802.5(「SHodex」は登録商標、昭和電工株式会社製)を連結して、ゲルろ過クロマトグラフィーを行う。そして、示差屈折計と蛍光検出器の出力値より、グルコースポリマーの重合度を測定する。
【0029】
平均鎖長の確認は、例えば、Hizukuriらの方法(Carbohydr.,Res.,134,1(1978)参照)により行うことができる。
グルコース重合度100〜10,000のグルコースポリマーをスミス分解し、遊離のグリセロールを測定し、その測定値より非還元末端数を定量し、フェノール硫酸法により調べた試料のグルコース数を非還元末端数で除することにより、算出する。
【0030】
リン含有量の確認は、例えば、回収したグルコースポリマーを過塩素酸で湿式灰化した後、Fiske−Subbarow法で定量する方法、または、Nodaらの蛍光X線分析法(Food chemistry, Vol.86, Issue 1, June 2004,Pages119−125参照)、などにより行うことができる。
【実施例1】
【0031】
実施例1では、後述の実施例で用いるグルコースポリマーのサンプル(1〜10)を調製した。
【0032】
サンプル1は、次のように調製した。
まず、10重量%馬鈴薯デンプン分散液に10重量%炭酸カルシウムを適量加え、pH5.8に調製した後、105℃に加熱し、糊状にした。次に、それに、α−アミラーゼ(商品名「Termamyl」、ノボザイムズ社製、以下同じ)を、デンプン固形分重量に対して0.1%添加し、80℃でDE5になるまで分解反応させた。次に、デンプン分解溶液のDEが5になった時点で塩酸を加え、pH4に調製し、煮沸により、酵素による分解反応を停止させた。
次に、このデンプン分解溶液を、活性炭による脱色・ろ過・濃縮した後、クロマトグラフ分離装置を用いて、その濃縮液から、グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上の画分を分取した。
そして、回収した画分を濃縮し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル1を得た。
なお、DE(Dextrose Equivalent)はデンプンの分解度を表す指標であり、DEが大きいほど分解率が大きいことを示す(以下同じ)。
【0033】
サンプル2は、次のように調製した。
馬鈴薯デンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで分解反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル2を得た。
【0034】
サンプル3は、次のように調製した。
ワキシー馬鈴薯デンプン(Avebe社製)とα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル3を得た。
【0035】
サンプル4は、次のように調製した。
馬鈴薯デンプンと枝つくり酵素(馬鈴薯塊茎より抽出・精製したもの、以下同じ)を用いて、サンプル1とほぼ同様の方法により、40℃でDE3になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル4を得た。
【0036】
サンプル5は、次のように調製した。
ワキシー馬鈴薯デンプンと枝つくり酵素を用いて、サンプル3と同様の方法により、DE3になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの酸基が300ppm以上の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル5を得た。
【0037】
サンプル6は、次のように調製した。
まず、コーンスターチとリン酸塩の100:1の混合物を、120℃で加熱し、リン酸化グルコースポリマーを得た。
次に、そのリン酸化グルコースポリマーと枝つくり酵素を用いて、サンプル1と同様の方法により、DE3になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル6を得た。
【0038】
サンプル7は、次のように調製した。
まず、実施例1などと同様、10重量%馬鈴薯デンプン分散液に10重量%炭酸カルシウムを適量加え、pH5.8に調製した後、105℃に加熱し、糊状にした。次に、それに、α−アミラーゼを、デンプン固形分重量に対して0.1%添加し、80℃でDE15になるまで分解反応させた。次に、デンプン分解溶液のDEが15になった時点で塩酸を加え、pH4に調製し、煮沸により、酵素による分解反応を停止させた。
次に、このデンプン分解溶液を、活性炭による脱色・ろ過・濃縮した後、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル7を得た。
【0039】
サンプル8は、次のように調製した。
甘藷デンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル8を得た。
【0040】
サンプル9は、次のように調製した。
タピオカデンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル9を得た。
【0041】
サンプル10は、次のように調製した。
ワキシーコーンデンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100〜10,000の画分を分取し、スプレードライヤーで粉末化し、サンプル10を得た。
【0042】
サンプル1〜10に関して、ポリマー含有量(グルコース重合度100〜10,000で、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppm以上のグルコースポリマーの含有量)、リン酸基として存在するリンの含有量、及び、平均鎖長を、表1及び表2に示す。
【表1】


【表2】

【実施例2】
【0043】
実施例2では、グルコースポリマーの物性の検討を行った。
【0044】
はじめに、実施例1で調製した各グルコースポリマーについて、その粘度変化の割合を検討した。
【0045】
まず、サンプル調製直後の各グルコースポリマー、及び、サンプル調製後3時間20℃条件下に静置した各グルコースポリマー、のそれぞれについて、20℃におけるブリックス度が50になるように調製し、レオメータ(AR1000型、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、粘度を測定した。そして、サンプル調製後3時間静置したグルコースポリマーの粘度(下記表中(B))を、サンプル調製直後のグルコースポリマーの粘度(下記表中(A))で除し、粘度変化の割合を算出した。
【0046】
結果を表3及び表4に示す。
【表3】


【表4】

【0047】
表3及び表4に示す通り、サンプル2〜6では、粘度変化の割合が、1に近い値であった。このことは、サンプル調製直後と3時間経過後とで、粘度がほとんど変化していないことを示す。
即ち、平均鎖長が10〜22であり、リン酸基として存在するリンを300〜10,000ppm含有するグルコースポリマーは、粘度安定性に優れていることを示す。
なお、サンプル7の場合、粘度変化の割合は1.0であったが、粘度自体が非常に低かった。
【0048】
その他、サンプル2〜6のグルコースポリマーを再加熱した後、20℃条件下で粘度を測定した場合でも、各サンプルの粘度特性は、調製直後とほぼ同様であった。このことは、それらのグルコースポリマーを加工食品などに適用する場合でも、良好な粘度安定性を得ることができることを示唆する。
【0049】
続いて、グルコース重合度が100〜10,000のグルコースポリマーについて、吸湿性・老化性などを検討した。
【0050】
まず、グルコース重合度100未満のグルコースポリマー(グルコース重合度100以上のグルコースポリマーを含有しないグルコースポリマー)、グルコース重合度が100〜10,000のグルコースポリマー、グルコース重合度10,000以上のグルコースポリマー(グルコース重合度10,000以下のグルコースポリマーを含有しないグルコースポリマー)、以上三種類のグルコースポリマーの乾燥粉末を準備した。
【0051】
グルコース重合度100未満のグルコースポリマーの乾燥粉末は、次のように調製した。
ワキシーコーンデンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度100未満の画分を分取し、スプレードライヤーで乾燥粉末化した。
【0052】
グルコース重合度が100〜10,000のグルコースポリマーの乾燥粉末には、上述のサンプル3のグルコースポリマーを用いた。
【0053】
グルコース重合度10,000以上のグルコースポリマーの乾燥粉末は、次のように調製した。
ワキシーコーンデンプンとα−アミラーゼを用いて、サンプル1と同様の方法により、DE15になるまで反応させた後、サンプル1と同様の方法により、グルコース重合度10,000以上の画分を分取し、スプレードライヤーで乾燥粉末化した。
【0054】
次に、各グルコースポリマーを、湿度75%、25℃条件下に3日間静置し、グルコースポリマーの吸湿性について、観察した。
また、各グルコースポリマーの15%水溶液を調製し、4℃条件下で3日間静置し、グルコースポリマーの老化性について、観察した。
【0055】
結果を表5に示す。
【表5】

【0056】
表5に示す通り、グルコース重合度100未満のグルコースポリマーの場合、老化などの会合は生じにくいが、吸着性が高く、固まりやすかった。
また、グルコース重合度10,000以上のグルコースポリマーの場合、吸湿による劣化は少なかったが、老化が起こりやすく、水溶液中において、比較的短時間で白濁した。
一方、グルコース重合度が100〜10,000のグルコースポリマーは、吸湿・老化が少なかった。
【0057】
従って、上述の二つの実験結果は、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、粘度安定性に優れ、かつ、吸湿・老化しにくいことを示す。
【0058】
これらの知見に基づき、本発明者らは、本発明に係るグルコースポリマーの、飲食物に対する食感又は風味の改善・保持作用が、次の機序によるものであると推測する。
平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000であるグルコースポリマーは、適度な粘度を有し、かつ、粘度安定性に優れる。これにより、飲食物の食感又は風味が改善・保持される。
グルコース重合度100〜10,000であることにより、飲食物中において、グルコースポリマーの老化が生じにくくなり、また、老化に伴う飲食物の白濁・硬化やグルコースポリマーの沈殿が生じにくくなる。加えて、グルコース重合度100〜10,000のグルコースポリマーは、吸湿性が適度であり、吸湿によって固まったり変化したりすることが少ない。従って、飲食物の品質が改善・保持される。
平均鎖長が10〜22であり、グルコースポリマーの分枝の度合いが適度であるため、グルコースポリマーの直鎖部分同士の会合などが分子内・分子間で生じにくい。これにより、飲食物の粘度が適度に保持され、また、飲食物の白濁が抑制される。従って、飲食物の品質が改善・保持される。なお、平均鎖長が9以下の場合、飲食物の風味が保持されにくく、品質が劣化しやすくなる。また、平均鎖長が22よりも大きい場合、保存中に、飲食物の硬化が起こりやすく、品質の変化も生じやすい。
リン(リン酸基)を含有することにより、グルコースポリマーがマイナスに帯電しているため、グルコースポリマー同士が反発しあい、会合しにくい。これにより、前記と同様、飲食物の粘度が適度に保持され、また、飲食物の白濁が抑制される。従って、飲食物の品質が改善・保持される。なお、リン酸基として存在するリンの含有量が300ppmよりも少ない場合、グルコースポリマー同士の会合により、粘度安定性が低くなり、食感改良効果・風味改善効果が低くなる。また、リン酸基として存在するリンの含有量が10,000ppmよりも多い場合、塩による影響を受けやすくなり、また、粘度変化が生じやすくなる。
【実施例3】
【0059】
実施例3では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いてパンを作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0060】
試作パンの作製は、表6に示す配合で、次の手順により行った。
【表6】

【0061】
まず、ミキシングを行った。表6に示した材料(マーガリン以外)を混合し、縦型ミキサーで低速3分間、中速4分間、混捏した後、マーガリンを投入し、再び、縦型ミキサーで低速2分間、中速2分間、高速1分間、混捏した。捏上温度(生地を捏ね上げた時の生地の温度)は24℃とした。
次に、20分間のフロアタイム(生地を発酵させる時間、以下同じ)の後、生地を80gずつに分割し、次に、20分間のベンチタイム(生地の分割の後、生地を休ませる時間、以下同じ)の後、ロール型に成形した。
そして、二次発酵させた後、焼成してパンを作製した。二次発酵(ホイロ)は、38℃条件下で50分間、焼成は、200℃条件下で10分間、それぞれ行った。
【0062】
以上の手順により作製した試作パンについて、官能評価を行った。官能評価では、7名の専門パネラーが、パン焼成の3時間後に、「やわらかさ」、「弾力性」、「しっとり感」、「風味」の各項目について、評価した。また、パン焼成の24時間後に、それらの食感・風味が維持されているかどうかについて、評価した。
【0063】
結果を表7に示す。
各項目の評価基準は、対照区と比較して、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、特に相違しない又は悪い場合を「×」、とした。
【表7】

【0064】
表7に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いてパンを作製した場合、パンのやわらかさ、弾力性、しっとり感は良好であり、風味も良好であった。また、所定時間、パンを放置した後でも、食感・風味が維持されていた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、パンの食感又は風味の改善・保持成分として有効であることを示す。
【0065】
その他、パン生地作製時のミキシングにおいてサンプル2〜6のグルコースポリマーを添加した場合、ショートニング又はバターなどの油脂類が生地になじみやすくなった。これにより、パン製造時間を短縮できた。
【実施例4】
【0066】
実施例4では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて冷凍パン生地を作製し、パン焼成後の食感・風味を官能評価した。
【0067】
試作パンの作製は、実施例3と同様の配合(表6参照)で、以下の手順により行った。
まず、ミキシング、分割、成形の各手順を、実施例3と同様の手順により、行った。
次に、ロール型に成形したパン生地を凍結させ、冷凍パン生地を作製した。凍結は−30℃条件下で60分間行い、凍結後、−20℃条件下で保存した。
次に、冷凍パン生地を20℃条件下で60分間放置して解凍し、次に、38℃条件下で50分間放置して二次発酵(ホイロ)を行い、次に、200℃条件下で10分間焼成して、パンを作製した。
【0068】
以上の手順により作製した試作パンについて、官能評価を行った。
官能評価は、実施例3と同じ項目について、実施例3と同様の方法により、行った。加えて、本実験では、焼成の3時間後のパンを用いて、グルコースポリマーにより冷凍障害が抑制されているかどうかについても、評価した。
【0069】
結果を表8に示す。
各項目の評価基準は、実施例3と同様、対照区と比較して、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、特に相違しない又は悪い場合を「×」、とした。
【表8】

【0070】
表8に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いて冷凍パン生地を作製した場合、焼成後のパンのやわらかさ、弾力性、しっとり感は良好であり、風味も良好であった。また、所定時間、パンを放置した後でも、食感・風味が維持されていた。その他、冷凍障害も抑制されていた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを用いて冷凍パン生地を作製した場合においても、焼成後のパンの食感又は風味を改善・保持できることを示す。
【実施例5】
【0071】
実施例5では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いてトンカツを作製し、その食感及び衣と肉との結着性を官能評価した。
【0072】
まず、薄力小麦粉900g、水1485g、卵白粉50g、実施例1で調製したグルコースポリマー50gを配合し、バッターを調製した。
次に、豚ロース肉にこのバッターをつけ、パン粉をつけた後、175℃、7分間、ヒマワリ油で揚げ、トンカツを作製した。
【0073】
そして、作製したトンカツについて、官能評価を行った。
官能評価は、衣の「歯切れ」及び衣と肉との「結着性」の二項目について、トンカツ作製の3時間後に行った。
【0074】
結果を、表9に示す。
各項目の評価基準は、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表9】

【0075】
表9に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いてトンカツを作製した場合、衣の歯切れ及び衣と肉との結着性がともに良好であり、食感も優れていた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、トンカツの食感の改善成分として有効であることを示す。
【実施例6】
【0076】
実施例6では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて麺を作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0077】
まず、中力小麦粉1,000g、水340g、食塩30g、実施例1で調製したグルコースポリマー50g、を配合し、ミキサーを用いて10分間練り合わせた後、成形し、麺線(幅4mm、厚さ2.4mm)を得た。
この麺線を12分間茹で、流水でよく洗った後、官能評価を行った。
官能評価は、麺の作製直後に、麺の「弾力性(粘り)」、「滑らかさ」、「食感の好ましさ」の三項目について、行った。また、4℃条件下で6時間保存した後、「ほぐれ性」、「茹で伸び」の二項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0078】
結果を表10に示す。
各項目の評価基準は、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表10】

【0079】
表10に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いて麺を作製した場合、麺の弾力性、滑らかさが良好であり、食感も優れていた。また、低温条件下で保存した後においても、麺のほぐれ性は良好であり、茹で伸びも少なかった。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、麺類の食感又は風味の改善・保持成分として有効であることを示す。
【実施例7】
【0080】
実施例7では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて乳飲料を作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0081】
牛乳32重量%、砂糖8重量%、乳化剤0.02重量%、粉末コーヒー抽出物10重量%、水50重量%、の組成で配合した後、加温混合し、高圧式ホモジナイザーを用いて乳化を行い、125℃、15分間の殺菌をし、乳飲料を得た。
そして、一ヶ月間、冷蔵した後、官能評価を行った。
官能評価は、飲料時の「すっきり感」、牛乳由来の「風味(ミルク感)」の二項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0082】
結果を表11に示す。
各項目の評価基準は、実施例5と同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表11】

【0083】
表11に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いた場合、すっきりとして飲みやすく、また、牛乳由来の風味が強調されており、乳飲料全体の風味が良好であった。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、乳飲料の食感又は風味の改善・保持成分として有効であることを示す。
【実施例8】
【0084】
実施例8では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて流動食を作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0085】
カゼイン45g、実施例1で調製したグルコースポリマー150g、コーン油10g、酵母粉末1g、乳化剤0.2g、コーヒー風味香料1g、水793g、を配合した後、加温混合し、高圧式ホモジナイザーを用いて乳化を行い、125℃、15分間の殺菌をし、流動食を得た。
そして、一ヶ月間、冷蔵した後、官能評価を行った。
官能評価は、飲料時の「すっきり感」、「沈殿物」の発生の度合、「風味」、「粘度安定性」の四項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0086】
結果を表12に示す。
各項目の評価基準は、実施例5などと同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表12】

【0087】
表12に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いた場合、すっきりとして飲み応えがあった。また、一定期間の保存後でも、沈殿物の発生は少なく、粘度も安定であり、風味も良好に保持されていた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、流動食の風味改善成分又は風味保持成分として有効であることを示す。
【実施例9】
【0088】
実施例9では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて粉末調味料を作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0089】
鰹節エキス50g、昆布エキス50g、実施例1で調製したグルコースポリマー300g、水600gを配合し、スプレードライヤーを用いて30℃で乾燥を行い、粉末調味料を得た。
そして、12時間、湿気の高い環境下に放置した後、官能評価を行った。
官能評価は、「粉体流動性」、「粉末非溶解性」、「風味」の三項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0090】
結果を表13に示す。
各項目の評価基準は、実施例5などと同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表13】

【0091】
表13に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いた場合、湿気の高い環境下においても、粉体流動性・溶解性が良好であった。また、昆布と鰹の風味が良好に保持されていた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、粉末調味料の風味改善成分又は風味保持成分として有効であることを示す。
【実施例10】
【0092】
実施例10では、実施例1で調製したグルコースポリマーを用いて液体調味料を作製し、その食感・風味を官能評価した。
【0093】
醤油140g、砂糖155g、実施例1で調製したグルコースポリマー150g、食塩25g、グルタミン酸ナトリウム15g、ごま油8g、たまねぎ5g、ニンニク2g、水500g(合計1000g)を配合し、加熱殺菌し、液体調味料を得た。そして、一ヶ月間、冷蔵保存した後、官能評価を行った。
官能評価は、液体調味料の「つや」、「風味」、「粘度安定性」の三項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0094】
結果を表14に示す。
各項目の評価基準は、実施例5などと同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表14】

【0095】
表14に示す通り、サンプル2〜6のグルコースポリマーを用いた場合、一定期間の保存後でも、粘度が安定していた。また、風味の劣化も少なく、外観上もつやを良好に保持していた。
このことは、グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーが、液体調味料の風味改善成分又は風味保持成分として有効であることを示す。
【実施例11】
【0096】
実施例11では、実施例1で調製したグルコースポリマーについて、飲料における添加量を検討した。
【0097】
まず、表15に示す配合で、粉末茶を作製した。
【表15】

【0098】
次に、配合した粉末茶を水220gに溶かし、冷蔵庫で冷やした後、官能評価を行った。官能評価は、「すっきり感」、「風味」の二項目で、実施例3などと同様の方法により、行った。
【0099】
結果を表16に示す。
各項目の評価基準は、実施例5などと同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表16】

【0100】
表16の結果は、本発明に係るグルコースポリマーを、飲料中に5〜99重量%含有させることにより、飲料の風味を改善できることを示す。
【実施例12】
【0101】
実施例12では、実施例1で調製したグルコースポリマーについて、食物における添加量を検討した。
【0102】
表17に示す配合で生地を作製し、生地を焼いてホットケーキを作製し、焼き上がり12時間後に官能評価を行った。官能評価は、「やわらかさ」、「風味」のに項目について、実施例3などと同様の方法により、行った。
【表17】

【0103】
結果を表18に示す。
各項目の評価基準は、実施例5などと同様、非常に良好である場合を「◎」、良好である場合を「○」、やや良好である場合を「△」、良好でない場合を「×」、とした。
【表18】

【0104】
表18の結果は、本発明に係るグルコースポリマーを、食物中に0.5〜99重量%含有させることにより、食物の風味を長時間保持できることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させる、食感及び/又は風味の改善方法。
【請求項2】
グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーを飲食物に含有させる、食感及び/又は風味の保持方法。
【請求項3】
グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであるグルコースポリマーの、下記(1)〜(4)のいずれか又は複数の作用の有効成分としての使用。
(1)食感改善作用、
(2)食感保持作用、
(3)風味改善作用、
(4)風味保持作用。
【請求項4】
グルコース重合度が100〜10,000、平均鎖長が10〜22、リン酸基として存在するリンの含有量が300〜10,000ppmであり、食感改善作用、食感保持作用、風味改善作用、風味保持作用、のいずれか又は複数の作用を有するグルコースポリマー。
【請求項5】
請求項4記載のグルコースポリマーを含有する飲食物。
【請求項6】
小麦粉を主原料とし、焼成加工又は加熱加工して製造された食品であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。
【請求項7】
麺類であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。
【請求項8】
飲料であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。
【請求項9】
流動食であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。
【請求項10】
乾燥粉末品であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。
【請求項11】
液体調味料であることを特徴とする請求項5記載の飲食物。


【公開番号】特開2007−89407(P2007−89407A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279543(P2005−279543)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000187079)昭和産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】