説明

食物グレードの消毒用組成物

消毒用拭きものを形成させるため、吸収性基体上に加えることができる食物グレード品質の消毒用組成物が提供される。本発明組成物は硫黄含有塩、カルボン酸またはそれらの塩、およびアルコールを含み、固い表面や動物の皮膚、特に牛の乳頭を消毒するのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物質および食物グレードの物質をベースとする消毒用組成物に関する。本発明組成物は、食物接触表面や動物の皮膚、特に牛の乳頭を清潔にするのに有効である。この組成物はまた、一般用または衛生クリーニング用のすぐに使えるタオルを提供するため、織布または不織布タオルの上に付加することができる。
【背景技術】
【0002】
農業や食品製造工業にとってバクテリア(細菌)や微生物のコントロールはずっと継続している問題である。望ましくないバクテリアや微生物のコントロールに極めて有効な多数の殺菌性化合物が現在では入手可能である。そのような組成物は沃素や塩素をベースとする消毒(殺菌)剤を含む。しかしながら、ある表面や場所が一旦、消毒(殺菌)されたら、抗菌性の組成物が食料品を汚染しないように注意を払わねばならない。一般に、このことにより消毒剤を洗い流すため表面を水で洗い流すさらに別のステップが必要であった。
【0003】
酪農産業においては、搾乳のための牛の準備は搾乳手順のうちで非常に労働集約的で時間の手間どる部分となる。慣用の抗細菌性化合物では、この化合物は先ずスプレーまたは浸漬によって乳房や乳頭部に適用され、次に乳房が吸湿性のタオルで乾かされる。ミルク供給物が汚染されないように、搾乳前に浄化用組成物が乳房や乳頭から除去されていることを確かめるよう注意を払わねばならない。搾乳後、乳牛が乳房炎になるのを防止するため乳頭部はさらに消毒される。
【0004】
同様な細菌コントロール問題がレストランおよび食物製造産業に存在する。食物の製造場所、特に料理していない肉と接触する場所は、有害なバクテリアの成長とまん延を防止するため完全なクリーニングと消毒が必要である。しかしながら、酪農産業と同様、食物が消毒剤で汚染されるようになるのを避けるため、この刺激の強い消毒剤製品を食物製造領域から確実に洗い流すよう注意しなければならない。これがこのクリーニング法にさらなる時間と労力を課すことになる。
【0005】
この問題に応じて、多数の組成物およびあらかじめ湿らせたタオル製品とが提案されている。たとえばWO 96/39842は、消毒用拭きもの(消毒用タオル)を形成させるため、紙または織物のタオルに使用できる消毒剤組成物を開示している。この消毒剤組成物は、消毒剤として強力な抗生物質化合物であるバクテリオシン(ラントシン、ニシン、シンナマイシン、およびエピデルミン(epidermin)など)を用いる。この拭きものは表面のクリーニングや牛の乳頭の消毒用に使用できる。
【0006】
WO 02/40628は食物製造表面に使用するためのあらかじめ湿らした拭きものについて記載している。この拭きものは、基体および1つ以上の毒物学的に許容できるアニオン性界面活性剤、キレート化剤(chelant)、非イオン性界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、石けん泡抑制剤、香水、および水性担体を含む組成物とを含む。しかしながら、この組成物は乳腺炎の原因となるバクテリアをコントロールするのに効果があるとは示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、人の消費用に適さないようにする組成物と接触する食物製品を全体的に汚染させないで病気の原因となる細菌の成長とまん延を効果的にコントロールするような食物グレード品質の消毒用組成物に対して現実的に満たされていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の問題点を克服して硫黄含有塩(好ましくは無機の硫黄含有塩)、置換または非置換のC2〜C10カルボン酸(好ましくはモノカルボン酸)またはそれらの塩、およびアルコールを含む食物グレードの消毒用組成物を提供する。ここに使用するように、用語「硫黄含有塩」は、硫黄原子がそれ自身別の非金属化合物と共有結合しているかどうかに拘らず、少くとも1つの硫黄原子を含むすべての塩のことをいう。さらに、ここに使用するように、用語「アルコール」は通常アルコール部分を有するすべての化合物を指し、ジオール、トリオール、およびポリオールを含む。好ましくは、硫黄含有塩はアルカリおよびアルカリ土類金属硫酸塩および亜硫酸塩からなる群から選ばれ、亜硫酸ナトリウムが特に好ましい。好ましいカルボン酸(および相当する塩)には乳酸とその塩が含まれる。好ましいアルコールはC2〜C8アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選ばれ、エタノール、プロパノール(1−プロパノールおよび2−プロパノールの両方を含む)、およびそれらの混合物がより好ましい。
【0009】
消毒組成物は通常約0.25〜10重量%、より好ましくは約0.5〜5重量%、最も好ましくは約0.5〜1.0重量%の硫黄含有塩を含む。この組成物は約0.25〜10重量%、より好ましくは約0.5〜5重量%、最も好ましくは1.0〜3.0重量%のカルボン酸を含む。この組成物は0.1〜30重量%、より好ましくは約1〜15重量%、最も好ましくは約1〜10重量%のアルコールを含む。
【0010】
本発明の組成物は食物グレードの品質であるため、これらは動物の皮膚、特に搾乳前後の牛の乳頭に使用することができる。動物の皮膚への使用をより容易にし、刺激を少くするため、各種の皮膚軟化剤、界面活性剤、糊稠剤(thickener)、およびスキンコンディショナーを組成物に加えることができる。好ましい皮膚軟化剤は、グリセリン、ラノリン、ソルビトール、アルキレングリコール(たとえばエチレングリコールおよびプロピレングリコール)、ポリオール、ポリヒドロキシル基を有する化合物の脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる。好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる。キサンタンガムは好ましい糊稠剤であり、アラントインは好ましいスキンコンディショナーである。
【0011】
本組成物はまた吸収性基材とともに使用して消毒用拭きものを形成させることもできる。この吸収性基材は、天然繊維、合成繊維、または天然および合成繊維の混合物の織布または非織布ウエブからなる。好ましい天然繊維物質は、木材パルプ、コットン、およびレーヨンなどのセルロース繊維を含み、他方好ましい合成繊維はポリエステルおよびポリプロピレンを含む。本発明組成物は吸収性基材上に加えられ、次いで消毒用組成物の蒸発を避けるような方法で包装される。
【0012】
消毒組成物および拭きものは、さまざまな表面、特に食料品と接触する表面の衛生的な浄化に使用できる。この組成物は細菌の蔓延と成長を抑制する抗細菌性を示す。固い表面に使用するほかに、この組成物は人間の手や牛の乳頭などの生きている皮膚組織に使用することができる。本発明組成物は食物グレード品質のものであるので、搾乳前後の両方で牛の乳頭に使用できる。好都合にも、この組成物では搾乳に先立って消毒組成物を除去するためさらに洗浄する必要なく、乳頭から土や他の潜在的汚染物の除去が可能となり、かつ、この組成物はまた搾乳後に使用したときは乳房炎を効果的に防ぐ。万一食料製品が消毒組成物と接触したとしても、この製品が人間の消費用に向かなくなるようには汚染しないであろう。
【0013】
多量の消毒用組成物を担った消毒用拭きものは、希望する表面を効果的に浄化することができる。ユーザーは、効果的な消毒をするため本組成物を含む吸収性タオルで表面を拭くだけでよい。食物製品と表面接触する前に、過剰の消毒組成物を除くためのさらなる水洗は不必要である。本発明組成物はまた、湿り気のある消毒用拭きものを貯蔵中有効に保つ。好ましくは、この組成物は、広汎な温度範囲で、約6ヶ月以上の間拭きものの消毒性を保つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次の実施例は本発明にしたがう消毒用組成物を説明するものである。しかしながら、これらの実施例は例示として提供されるものであり、例中のどれも本発明の全体範囲に対する限定として解釈してはならない。
【実施例1】
【0015】
表1は本発明にしたがう比較上の組成物および好ましい組成物を示す。表示のすべてのパーセントは、特に断らない限り重量%を示す。また、各処方中、十分な水の量で全体を100%とすることにする。
【0016】
【表1】

【0017】
次いで各組成物のアスペルギウス菌ニジェール(A.ニジェール)に対する静真菌性能力をテストした。処方2(乳酸なし)は試験管内でA.ニジェールに対して効力がなかったことが認められた。また、処方8(亜硫酸ナトリウムなし)もA.ニジェールに対して効力がなかった。しかし、乳酸と亜硫酸ナトリウムの両方を含む処方9は抜群の静真菌性特性を示した。
【0018】
さらに、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、および大腸菌(Escheria coli)に対する処方2,8,および9の最小抑制濃度を測定した。結果を表2にリストした。濃度は表1で調製したようにサンプルの%として示されていることに注意されたい。たとえば、処方2のMIC(最小抑制濃度)20%は、表1で調製した処方2の20%濃度(容量ベース)を意味する。“>”は組成物濃度がテストの限界超であったことを意味する。
【0019】
【表2】

【0020】
このテストは、亜硫酸ナトリウム単独(#2)および乳酸単独(#8)を用いる組成物は、乳酸および亜硫酸ナトリウムの両方を含む組成物(#9)と殆んど同じくらいバクテリアの成長を抑制しないということを確認している。
【実施例2】
【0021】
この実施例は、本発明にしたがう典型的な消毒組成物およびこの組成物を調製する方法を説明する。
【0022】
清浄な混合容器中で、10.0gのAmide KDO(脂肪酸ジエタノールアミン)を756.5gの脱塩水に加えた。Amide KDOが完全に分散して分散液が濁ってくるまで混合物を撹拌した。次に12.5gのLutensol AO 109を加え、完全に溶解するまで混合した。このとき、混合物は透明になった。
【0023】
この混合物に約5.0gの亜硫酸ナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌した。次いで10.0gのTween 80(エトキシル基を有するソルビタンモノオレエート:ethoxylated sorbitan monooleate)を加えて完全に溶解するまで混合した。混合を続けながら、10.0gのグリセリン、次いで5.0gのモノプロピレングリコールを加えた。約1.0gのアラントインを加え、完全に溶解するまで混合した。次に、混合を続けながら153.2gのエタノールとイソプロパノールの混合物(エタノール27.85重量%、イソプロパノール11.35重量%、水:バランス)を加えた。20.0gの乳酸(80%)を加え、16.8gの水酸化ナトリウム(29%)を加えることによって混合物のpHを5.0〜5.5に調節した。この混合物を次いで約30分間、すなわちpHが安定化するまで撹拌した。
【0024】
この組成物は、加速および通常条件の下で6ヶ月間にわたって安定性を示した。紙タオルに使用したとき、この組成物は、25℃および40℃の両温度で6ヶ月を超える期間中、このタオルの抗菌性を保持するのに役立った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.25〜10重量%の硫黄含有塩、約0.25〜10重量%の置換または非置換C2〜C10モノカルボン酸またはそれらの塩、および約0.1〜30重量%のアルコールを含む消毒用組成物。
【請求項2】
前記硫黄含有塩が、アルカリおよびアルカリ土類金属硫酸塩および亜硫酸塩からなる群、好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属亜硫酸塩からなる群から選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記硫黄含有塩が亜硫酸ナトリウムである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコールがC1〜C8アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1ないし3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコールがエタノール、プロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が約0.5〜5.0重量%の前記硫黄含有塩を含む、請求項1ないし5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸が乳酸またはその塩を含む、請求項1ないし6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が約0.5〜5.0重量%の前記カルボン酸またはそれらの塩を含む、請求項1ないし7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が約1〜15重量%の前記アルコールを含む、請求項1ないし8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がさらに皮膚軟化薬を含む、請求項1ないし9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記皮膚軟化薬が、グリセリン、ラノリン、ソルビトール、アルキレングリコール、ポリオール、ポリヒドロキシル基を有する化合物の脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がさらに界面活性剤を含む、請求項1ないし11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
約0.25〜10重量%の無機硫黄含有塩、約0.25〜10重量%の置換または非置換C2〜C10カルボン酸またはそれらの塩、および約0.1〜30重量%のアルコールを含む消毒用組成物。
【請求項15】
前記硫黄含有塩が、アルカリおよびアルカリ土類金属硫酸塩および亜硫酸塩からなる群、好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属亜硫酸塩からなる群から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記硫黄含有塩が亜硫酸ナトリウムである、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記アルコールがC1〜C8アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項14ないし16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
前記アルコールが、エタノール、プロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が約0.5〜5.0重量%の前記硫黄含有塩を含む、請求項14ないし18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記カルボン酸が乳酸またはその塩を含む、請求項14ないし19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が約0.5〜5.0重量%の前記カルボン酸またはそれらの塩を含む、請求項14ないし20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が約1〜15重量%の前記アルコールを含む、請求項14ないし21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、さらに皮膚軟化剤を含む、請求項14ないし22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記皮膚軟化剤が、グリセリン、ラノリン、ソルビトール、アルキレングリコール、ポリオール、ポリヒドロキシル基を有する化合物の脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物がさらに界面活性剤を含む、請求項14ないし24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
吸収性基材およびこの基材に加えた請求項1ないし26のいずれか1項に記載の消毒用組成物を含む消毒用拭きもの。
【請求項28】
前記吸収性基材が、天然繊維、合成繊維、または天然および合成繊維の混合物の織布または非織布ウエブを含む、請求項27記載の消毒用拭きもの。
【請求項29】
前記吸収性基材がセルロース繊維を含む、請求項28記載の消毒用拭きもの。
【請求項30】
表面を請求項1ないし26のいずれか1項に記載の組成物と接触させることを含む、前記表面を消毒する方法。
【請求項31】
前記表面が動物の皮膚を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記表面が牛の乳頭である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記表面を請求項27ないし29のいずれか1項記載の消毒用拭きもので拭くことを含む、表面を消毒する方法。
【請求項34】
前記表面が動物の皮膚を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記表面が牛の乳頭である、請求項34記載の方法。

【公表番号】特表2007−521226(P2007−521226A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507440(P2005−507440)
【出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001248
【国際公開番号】WO2005/011385
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500254480)デラヴァール ホルディング アクチボラゲット (10)
【氏名又は名称原語表記】DeLaval Holding AB
【Fターム(参考)】