説明

香味又は香気改善剤

【課題】飲食品等の熱による劣化、特に牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を効果的に抑制することである。
【解決手段】シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物を牛乳類入り飲食品等に添加することにより、加熱による劣化臭を抑えることができる。この溶媒抽出物は、牛乳類入り飲食品のみならず、他の飲食品、香粧品等の熱による劣化臭を抑制する効果があるので優れた香味又は香気改善剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱により生成する飲食品等の経口組成物、香粧品の劣化臭の抑制に対し、広く適用できる香味又は香気改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品の味と匂いは食欲の増進や減退に大きく影響するため、その香味は種々の栄養成分と同様に食生活において重要な要素と考えられる。食品の香味は製造、流通、保存等の各段階で経時的に劣化し、特に、密封容器入り飲料のような保存期間の長い飲食品の場合は、保存中に食品本来の香味が消失したり、食品成分の劣化により異味異臭が発生する等の問題が生じやすい。
最近の研究によれば、香味成分の劣化は、酸素のみならず、外部からの光照射や加熱、或いは食品中に微量に含まれている鉄等の金属成分などによって分解されて芳香や美味が消失し、更にその分解物が劣化臭や変色の発生の要因となることが明らかとなってきた。
【0003】
特に牛乳類は、蛋白、脂肪、糖質、ビタミン、ミネラル等の多種多様の乳成分から構成され、熱や光による影響を受けやすい。このため、自動販売機や店頭で加温販売される缶コーヒーや缶紅茶等の牛乳(ミルク)入り缶飲料のように、高温で長期間保存される商品では、乳成分に起因する劣化臭をいかに抑制するかが問題となる。
【0004】
ここで、本発明における牛乳類とは、乳等省令(「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、昭和26年12月27日厚生省令第52号)によって定義されるところの、乳(生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳)、並びに乳製品(クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、はつ酵乳、乳酸菌飲料及び乳飲料)が含まれるものとする。
【0005】
長期間にわたる加熱による飲食品の香味の劣化、特に牛乳類入り飲料の加熱による劣化を防止するために、これまでに幾つかの方法、例えば、L−アスコルビン酸を牛乳入り紅茶飲料に10〜500ppm添加することによる牛乳入り紅茶飲料の品質劣化を防止する方法(特許文献1参照)、シトラス系果実の果皮から得られるクマリン類縁体混合物を有効成分とする乳含有食品用劣化防止剤(特許文献2参照)、セルロース及び2種類以上の乳化剤を組み合わせて含むことを特徴とする乳飲料用安定剤(特許文献3参照)等が提案されている。
また、本発明者らもこれまでに飲食品等の光や熱による劣化を抑える方法を提案してきた(特許文献4〜20参照)。
しかしながら、これら従来技術は必ずしも熱による乳成分の分解等に起因する劣化臭を抑制するのに適した方法とはいえず、牛乳類入り飲食品の熱による劣化臭を抑制する技術は未だ確立されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平1−199542号公報
【特許文献2】特開2002−272366号公報
【特許文献3】特開2006−20579号公報
【特許文献4】特開平11−137224号公報
【特許文献5】特開2001−346558号公報
【特許文献6】特開2002−244号公報
【特許文献7】特開2002−330741号公報
【特許文献8】特開2002−291406号公報
【特許文献9】特開2003−79335号公報
【特許文献10】特開2004−16056号公報
【特許文献11】特開2004−16057号公報
【特許文献12】特開2004−18611号公報
【特許文献13】特開2004−18612号公報
【特許文献14】特開2004−16058号公報
【特許文献15】特開2004−16059号公報
【特許文献16】特開2004−16061号公報
【特許文献17】特開2004−292778号公報
【特許文献18】特開2005−171116号公報
【特許文献19】特開2005−269908号公報
【特許文献20】特開2006−340639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、飲食品等の熱による劣化、特に牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは牛乳類入り飲食品の加熱による劣化を詳細に検討した結果、シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物に、牛乳類入り飲食品の加熱による劣化臭を抑える効果があることを見出した。さらに、この溶媒抽出物は牛乳類入り飲食品のみならず、他の飲食品、香粧品等の熱による劣化臭を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は以下のように構成される。
(1)シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物からなることを特徴とする香味又は香気改善剤。
(2)シソ科メンタ属植物の葉又は茎の乾燥物を水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られる(1)に記載の香味又は香気改善剤。
(3)シソ科メンタ属植物の葉又は茎の乾燥物を水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られた抽出物を酵素処理して得られる(1)又は(2)に記載の香味又は香気改善剤。
(4)シソ科メンタ属植物が、ミズハッカ(Mentha aquatica L.)、ペパーミント(Mentha piperita L.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegium L.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia (L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicata L.)もしくはベルガモットハッカ(Mentha citrata(Ehrh.)Briq.)またはこれらの変種である(1)乃至(3)のいずれかに記載の香味又は香気改善剤。
(5)酵素処理がα−L−ラムノシダーゼ活性を有する酵素による処理である(3)又は(4)に記載の香味又は香気改善剤。
(6)α−L−ラムノシダーゼ活性を有する酵素が、ヘスペリジナーゼであることを特徴とする(3)又は(4)に記載の香味又は香気改善剤。
【0009】
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする香料組成物。
(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする経口組成物。
(9)経口組成物が牛乳類含有飲食品である(8)記載の経口組成物。
(10)牛乳類含有飲食品が牛乳入り紅茶飲料である(9)記載の経口組成物。
(11)(1)乃至(6)のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする香粧品。
(12)(1)乃至(6)のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を経口組成物又は香粧品に0.01〜500ppm添加することを特徴とする、経口組成物又は香粧品の香味又は香気改善方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の香味又は香気改善剤を飲食品、香粧品に添加すると、熱に起因する劣化臭が抑制され、牛乳入り紅茶等の牛乳類含有飲食品では特に高い効果を示す。加熱による劣化臭の発生を抑制する効果と、発生した劣化臭をマスキングする効果がともに認められることから、幅広い応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)原材料
本発明で使用するシソ科メンタ属植物(Mentha)の例としては、ミズハッカ(Mentha aquatica L.)、ペパーミント(Mentha piperita L.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegium L.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia (L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicata L.)、ベルガモットハッカ(Mentha citrata(Ehrh.)Briq.)又はこれらの変種などが挙げられる。これらの中でもペパーミント(Mentha piperita L.)やオランダハッカ(Mentha spicata L.)はハーブや香料として用いられるなど、古くからの食経験があることから安全性が確認されているので好適である。例えばペパーミントは古来ハーブとして使用されており、精油や溶媒抽出物を香味剤として種々な食品などに使用することは周知の事実である。
【0012】
本発明では上記シソ科メンタ属植物の茎(枝幹)、葉を天日干し等で乾燥したものをそのまま抽出することにより溶媒抽出物が得られる。かかる乾燥物は生の枝葉と異なり、水分並びに香味又は香気の改善に寄与しない低沸点成分が除去されているという特徴を有する。また、水分が除去されている分だけ、香味又は香気の改善に寄与する有効成分の抽出効率が向上する点で有利である。
【0013】
(2)抽出処理
抽出処理に使用する溶媒は、水、極性有機溶媒又はこれらの混合物である。極性有機溶媒としてはアルコール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられるが、人体への安全性と取扱性の観点から、水又はエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが好ましく、特に水又はエタノール又はこれらの混合物が好ましい。特に、濃度が40〜60%のエタノール水溶液が好適である。
なお、抽出の前処理としてヘキサン等の非極性溶媒であらかじめ脱脂しておけば、後の抽出処理時に余分な脂質が大量に入り込むことを防止できるので好ましい。また、この脱脂処理で結果的に脱臭等の精製ができる場合がある。
【0014】
抽出処理方法としては、メンタ属植物の葉又は茎の乾燥物を粉砕したものを溶媒中に入れ、侵漬法又は加熱還流法で抽出する。なお、侵漬法による場合は加熱条件下、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。次いで、溶媒不溶物を除去して抽出物を得るが、不溶物除去法としては遠心分離、濾過、圧搾等の固液分離手段を用いることができる。
得られた抽出物はそのままでも飲食品等に添加して使用できるが、例えば水、エタノール等の食品用溶剤で適宜希釈して使用することもできる。また、さらに凍結乾燥や濃縮して粉末状、ペースト状の抽出エキスとしても使用できる。
【0015】
(3)精製
上記方法で得られた抽出物はそのまま飲食品等に添加して使用することができるが、抽出物は匂いを有していたり、着色している場合もあるので、精製して用いることが望ましい。
精製には活性炭、合成樹脂吸着剤、イオン交換樹脂等を用い、常法により抽出物の脱色、脱臭を行うことができる。なお、精製は後述の酵素処理の後に行ってもよい。
【0016】
(4)酵素処理
上記抽出処理で得られた抽出物はそのまま飲食品等に添加して使用することができるが、抽出物に酵素処理を施すことが好ましい。酵素処理により、抽出物に含まれるフラバノン配糖体の1種で水や有機溶媒に難溶性のヘスペリジン等を分解し、抽出物の溶解性を高めることができるため飲食品等への添加が容易となるからである。
酵素処理は抽出物を水に溶解し、抽出物の固形質量に対して5〜25%の酵素を加え、40〜70℃で1〜15時間反応させることにより行う。使用できる酵素としては、α−L−ラムノース基を加水分解するα−L−ラムノシダーゼ活性を有するもの(例えば、ヘスペリジナーゼ、ナリンギナーゼ、セルラーゼA)であればいずれも用いることができるが、中でも反応性の観点からヘスペリジン加水分解酵素のヘスペリジナーゼを用いるのが好ましい。
また、反応後は高純度のエタノールを添加して、酵素の失活処理を行うことが好ましい。
【0017】
(5)用法
上記抽出処理で得られた抽出物又はさらにそれに酵素処理を施した酵素処理物は、香味又は香気改善剤として香料又は飲食品、香粧品の加工段階で適宜添加することができる。
本発明の香味又は香気改善剤は熱による劣化臭の生成を抑制する効果と、生成した劣化臭をマスキングする効果を併せ持つので、飲食品等の加熱殺菌処理のような加熱処理を行う前に添加しても、加熱処理を行った後に添加してもよい。
【0018】
添加量は一般に、香料に添加する場合は0.1〜50質量%が適当であり、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
飲食品のような経口組成物及び香粧品では、一般に0.01〜500ppmが適当であるが、飲食品等の香味、香気に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点から、好ましくは0.5〜50ppm、さらに好ましくは1〜10ppmである。
【0019】
本発明の香味又は香気改善剤は香料、経口組成物、香粧品等に特に制限なく使用できるが、具体例としては下記のものが挙げられる。
【0020】
香料の例としては、香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出物、合成香料)およびそれらを含有する香料組成物などが挙げられる。
【0021】
経口組成物の例としては、飲料、菓子類、油脂及び油脂加工食品、乳、乳製品、口腔衛生剤などが挙げられるが、より具体的には下記のものを挙げることができる。
【0022】
飲料の例としては、コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0023】
菓子類の例としては、ゼリー、プリン、ババロア、キャンディー、ビスケット、クッキー、チョコレート、ケーキ類などが挙げられる。
【0024】
油脂及び油脂加工食品の例としては、食用油脂(動物性油脂、植物性油脂)、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、ハードバターなど、さらに、即席(フライ)麺類、とうふの油揚(油揚、生揚、がんもどき)、揚かまぼこ、てんぷら、フライ、スナック類(ポテトチップス、揚あられ類、かりんとう、ドーナッツ)、調理冷凍食品(冷凍コロッケ、エビフライ等)などが挙げられる。
【0025】
乳、乳製品等の例としては、乳として生乳、牛乳、加工乳等、乳製品としてクリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエー、チーズ、アイスクリーム類、ヨーグルト、れん乳、粉乳、濃縮乳等などが挙げられる。
【0026】
口腔衛生剤の例としては、歯磨、うがい薬、口中清涼剤、口臭防止剤などが挙げられる。
【0027】
香粧品の例としては、香水、化粧品、洗剤、石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤等が挙げられ、特にシトラールを含有するシトラス調の香りを有する香粧品に好適である。
【0028】
上記の香料、経口組成物、香粧品の中でも、熱による劣化臭が問題となることが多い茶飲料、果汁飲料等の飲料類への使用が好ましく、特に自動販売機や店頭で加温販売される缶コーヒーや缶紅茶等のミルク入り缶飲料に使用することが特に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0030】
〔香味又は香気改善剤の製造例〕
ペパーミントの乾燥葉300gを2250gの50%エタノール水溶液で、60℃で60分間抽出した。抽出後、遠心分離により抽出液を分離し、抽出液の固形分質量に対して30%の活性炭を加え、30分撹拌した後、セライト濾過により、活性炭を除去した。
得られた抽出液は減圧濃縮によりエタノールを除去し、水で固形分濃度が5質量%となるよう調製した。これに固形分質量の25%のヘスペリジナーゼ(田辺製薬(株)製「可溶性ヘスペリジナーゼ<タナベ>2号」)を添加して、60℃で12時間撹拌した。その後、セライト濾過により酵素を除去し、固形分濃度が31%となるまで濃縮した。
【0031】
この濃縮液を予め0℃に冷却した95%エタノール中に撹拌しながら徐々に加え、液温を0〜5℃に保ちながら30分間撹拌した(この工程で酵素は失活する)。析出した不溶物をセライト濾過により除去し、減圧濃縮した後、水で濃度調整し、固形分濃度10%、エタノール濃度50%のエキス650gを得た。
このエキスの50%エタノール溶液中における紫外線吸収スペクトル(濃度:100ppm)を図1に示した。
【0032】
〔試験例1〕<牛乳入り紅茶飲料に対する香味又は香気改善効果>
250gの湯(80℃)にL−アスコルビン酸ナトリウム0.3gを溶かし、紅茶葉8gを5分間抽出し、メッシュで濾過した。濾液を20℃以下に冷却した後、これに、牛乳200g、砂糖57g、予め溶かしておいた乳化剤0.3g及び水にて全量1000gとし、重曹でpH6.8に調整して牛乳入り紅茶飲料を製造した。
この紅茶飲料をベースに何も添加しない紅茶飲料と、上記製造例で得られた香味又は香気改善剤を1ppm添加した紅茶飲料とをそれぞれ缶に充填し殺菌して、缶入りの2種類の牛乳入り紅茶飲料を製造した。
【0033】
それらを、60℃で4週間保管した後、習熟した14名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味変化のない対照としては何も添加しない冷蔵保管品を使用し、香味の変化(劣化)の度合いを評価した。その結果は表1及び表2の通りである。
なお、表1中の評価の点数は、「異味・異臭が非常に強い」を4点、「異味・異臭がない」を0点とし、絶対評価を行った各パネルの平均点である。また、表2は、紅茶感(紅茶が本来有している香味)、牛乳感(牛乳が本来有している香味)、後キレ(後キレの良さ=飲んだ後に後味が長く残らないこと)について、無添加60℃、4週間保管品の場合を4点、無添加冷蔵保管品を8点とした場合の各パネルの評価の平均点である。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
〔試験例2〕<30%オレンジ果汁飲料に対する香味又は香気改善効果>
オレンジ濃縮果汁6.0g、果糖ぶどう糖液糖8.2g、クエン酸0.14g、クエン酸ナトリウム0.1gを、水で100gに調整してオレンジ果汁飲料を製造した。
この果汁飲料をベースに、何も添加しない果汁飲料と、上記製造例で得られた香味又は香気改善剤を10ppm添加した果汁飲料をそれぞれガラス容器に充填し殺菌して、ガラス容器入りの2種類のオレンジ果汁飲料を製造した。
それらを、50℃で1週間保管した後、習熟した6名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味変化のない対照としては何も添加しない冷蔵保管品を使用し、香味の変化(劣化)の度合いを評価した。
その結果は表3のとおりである。なお、評価基準は試験例1と同様である。
【0037】
【表3】

【0038】
〔試験例3〕<スポーツドリンクに対する香味又は香気改善効果>
市販のスポーツドリンク100gに、何も添加しないものと、上記製造例で得られた香味又は香気改善剤を10ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し殺菌して、ガラス容器入りの2種類のスポーツドリンクを製造した。
それらを、50℃で1週間保管した後、習熟した6名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味変化のない対照としては何も添加しない冷蔵保管品を使用し、香味の変化(劣化)の度合いを評価した。
その結果は表4のとおりである。なお、評価基準は試験例1と同様である。
【0039】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の香味又は香気改善剤を飲食品、香粧品に添加すると、熱に起因する劣化臭が抑制され、牛乳入り紅茶等の牛乳類含有飲食品では特に高い効果を示す。加熱による劣化臭の発生を抑制する効果と、発生した劣化臭をマスキングする効果がともに認められることから、幅広い応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】香味又は香気改善剤の製造例で得られたエキスの紫外線吸収スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ科メンタ属植物(Mentha)の葉又は茎の乾燥物の溶媒抽出物からなることを特徴とする香味又は香気改善剤。
【請求項2】
シソ科メンタ属植物の葉又は茎の乾燥物を水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られる請求項1に記載の香味又は香気改善剤。
【請求項3】
シソ科メンタ属植物の葉又は茎の乾燥物を水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られた抽出物を酵素処理して得られる請求項1又は2に記載の香味又は香気改善剤。
【請求項4】
シソ科メンタ属植物が、ミズハッカ(Mentha aquatica L.)、ペパーミント(Mentha piperita L.)、ペニロイアルハッカ(Mentha pulegium L.)、マルバハッカ(Mentha rotundifolia (L.) Huds.)、オランダハッカ(Mentha spicata L.)もしくはベルガモットハッカ(Mentha citrata(Ehrh.)Briq.)またはこれらの変種である請求項1乃至3のいずれかに記載の香味又は香気改善剤。
【請求項5】
酵素処理がα−L−ラムノシダーゼ活性を有する酵素による処理である請求項3又は4に記載の香味又は香気改善剤。
【請求項6】
α−L−ラムノシダーゼ活性を有する酵素が、ヘスペリジナーゼであることを特徴とする請求項3又は4に記載の香味又は香気改善剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする経口組成物。
【請求項9】
経口組成物が牛乳類含有飲食品である請求項8記載の経口組成物。
【請求項10】
牛乳類含有飲食品が牛乳入り紅茶飲料である請求項9記載の経口組成物。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を含有することを特徴とする香粧品。
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれかに記載の香味又は香気改善剤を経口組成物又は香粧品に0.01〜500ppm添加することを特徴とする、経口組成物又は香粧品の香味又は香気改善方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45021(P2009−45021A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214998(P2007−214998)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】