説明

駆動力正逆切替装置及びこれを用いた紙送りローラ駆動装置

【課題】一方向に回転する駆動力が入力される場合において、出力の回転方向を正逆選択的に切り替える装置において、入出力軸を平行に配置できるコンパクトなものを提供することである。
【解決手段】入力部材11、出力部材12及びこれらの間に介在された切替機構13を有し、切替機構13は傘歯車機構14、制御機構15及びクラッチ機構16により構成され、制御機構15を構成する第一制御部材25は外部のアクチュエータ27によって拘束と非拘束が選択的にとれ、非拘束時においてはクラッチ機構16がロックされ入力部材11に入力された正回転がクラッチ機構16を経て伝達され、公転のみする傘歯車機構14の中間傘歯車23とともに出力部材12を同方向に回転させる。第一制御部材25が拘束されるとクラッチ機構16のロックが解除され中間傘歯車23が自転のみ行い、出力部材12を逆転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事務機等において用いられる駆動力正逆切替装置及び紙送りローラ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機等の事務機における紙の搬送方向は、通常は一方向であるので、一定方向の回転仕様をもったモータによって駆動するようにしている。しかし、紙の搬送方向を正逆適宜切り替えて搬送する進化した給紙部において、従来の一定方向の回転仕様のモータで対応する場合、モータの回転方向を正逆に適宜切り替える装置を追加する必要があった(特許文献1)。
【0003】
このような場合に通常使用される駆動力正逆切替機構として、図49に示した3個の傘歯車を用いた機構が知られている(非特許文献1)。この機構は、入力軸121の一端に設けた入力傘歯車122の歯面に接近して直交方向に出力軸123が設けられ、その出力軸123にクラッチ124が軸方向にスライド可能にキー止めされる。そのクラッチ124の両側に一対の出力傘歯車125、125が回転自在に嵌合され、これらの出力傘歯車125が入力傘歯車122に噛み合わされる。各出力傘歯車125の対向面に設けたボス部126に前記クラッチ124に係合する歯127が設けられる。前記クラッチ124の中間部に設けられた周溝128に揺動アーム129のピン130が挿入される。揺動アーム129の他端は軸131により固定部に揺動回転可能に取り付けられる。
【0004】
揺動アーム129が左右いずれか一方に倒されると、クラッチ124が軸方向にスライドしてその方の出力傘歯車125の歯127に係合され、入力軸121の回転が出力軸123に伝達される。また、揺動アーム129が逆方向に倒されるとクラッチ124が他方の出力傘歯車125側に係合され出力軸123が逆転される。
【特許文献1】特開平5−307290号公報
【非特許文献1】「機械運動機構」株式会社技報堂、昭和32年10月15日出版、81頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の駆動力正逆切替機構は、入力軸121と出力軸123が直交しているため、入力側のモータと出力側の給紙ローラの配置に制限を受け、また入力傘歯車の径が大型化し、さらに揺動アーム129の制御機構が複雑になる等の問題があった。また、クラッチ124の切り替え時に歯127の回転位相を同期させ歯の衝突を回避する同期手段が必要となる問題もあった。
【0006】
そこで、この発明は、入出力軸が平行に配置されるコンパクトな駆動力正逆切替装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための発明の基本形態を図1から図3に基づいて説明する。即ち、この発明の基本形態は、入力部材11、出力部材12及び前記入力部材11に入力された駆動トルクの回転方向を正逆選択的に切り替えて前記出力部材12に出力する切替機構13を備えた駆動力正逆切替装置である。
【0008】
前記切替機構13は傘歯車機構14、制御機構15及びクラッチ機構16により構成される。
【0009】
前記傘歯車機構14は、固定部17に支持された回転伝達軸18と、該回転伝達軸18に回転自在に嵌合された入力傘歯車19と、その入力傘歯車19と対向して同軸状態に組み合わされた出力傘歯車21と、前記入力傘歯車19と出力傘歯車21との間において前記回転伝達軸18に直交状に設けられた中間軸22と、該中間軸22に回転自在に嵌合され前記入力傘歯車19と出力傘歯車21に噛み合わされた中間傘歯車23とにより構成される。前記入力傘歯車19にこれと同軸状態のクラッチ装着部24が設けられる。また、該入力傘歯車19が前記入力部材11に一体化され、出力傘歯車21が前記出力部材12にそれぞれ一体化される。
【0010】
また、前記制御機構15は、前記回転伝達軸18に同軸状態に設けられた第一制御部材25と、前記回転伝達軸18に回転方向に一体化され、かつ前記固定部17によって支持された第二制御部材26とにより構成される。前記第一制御部材25は外部のアクチュエータ27によって拘束状態と非拘束状態が選択的にとれ、前記第二制御部材26は前記第一制御部材25に対し回転方向の一定の制御すき間bをおいて係合される。
【0011】
前記クラッチ部材29は、非拘束状態にある第一制御部材25に対して前記クラッチ装着部24が一定方向に回転した場合にロック状態となる一方、拘束状態にある第一制御部材25に対して前記クラッチ装着部24が前記と同方向に回転することによりロック解除状態となる方向性を有する。
【0012】
なお、前記制御すき間bは、前記第一制御部材25が非拘束状態から拘束状態に変化した時から前記クラッチ部材29がロック解除状態になるまで回転する前記第二制御部材26の移動すき間aより大に設定される。
〔作用〕
前記構成の駆動力正逆切替装置は、アクチュエータ27がオフとなって第一制御部材25が非拘束状態にある場合(図1参照)において、外部の駆動装置から入力部材11及びこれと一体の入力傘歯車19に駆動トルクが入力され(下向き白抜き矢印は入力を示す。以下、同じ。)、一定方向(例えば、図1の右から見て右回転方向。以下、この回転方向を正回転方向Aと称する。)に回転されると、クラッチ装着部24に装着されたクラッチ部材29は第一制御部材25と一体に回転してロック状態となる(図2参照)。
【0013】
クラッチ部材29のロックによって、入力部材11に加えられた駆動トルクがクラッチ装着部24、クラッチ部材29、第二制御部材26及び回転伝達軸18を経て伝達され、中間軸22とこれに支持された中間傘歯車23を正回転方向Aに回転させる。
【0014】
中間軸22が回転伝達軸18及びクラッチ部材29を介して入力傘歯車19と一体化されることにより、中間軸22と入力傘歯車19は同一の正回転方向Aに回転するため、中間傘歯車23は自転することがなく、正回転方向Aの公転のみを行い、出力傘歯車21及びこれと一体の出力部材12を正回転方向Aに回転させ、負荷に出力を伝達する(図1参照。外向き白抜き矢印は出力を示す。以下同じ。)。
【0015】
入力部材11及びこれと一体の入力傘歯車19が正回転方向Aに回転している前記の状態において、制御装置からの選択信号によってアクチュエータ27がオンとなり(図2の一点鎖線、図3参照)第一制御部材25が拘束状態(停止状態)になると、正回転方向Aに回転している第二制御部材26が所要の移動すき間a(図2参照)だけ移動してクラッチ部材29のロックが解除される。これによりクラッチ部材29、第二制御部材26及び回転伝達軸18を経て中間軸22を回転させていた駆動トルクの伝達経路が遮断される。
【0016】
一方、入力部材11及び入力傘歯車19は引き続き正回転方向Aに回転しているため、入力傘歯車19に噛み合った中間傘歯車23が自転し、かつ中間軸22とともに正回転方向Aに公転する。また中間軸22及び回転伝達軸18と一体化された第二制御部材26も正回転方向Aに回転する。このとき、出力部材12には負荷トルクが作用しているため、中間傘歯車23と中間軸22及び回転伝達軸18は空転し、出力傘歯車21と出力部材12に駆動トルクは伝達されない。
【0017】
前記第二制御部材26の正回転方向Aの回転に伴い前記制御すき間b(図2参照)がゼロになると、第二制御部材26が拘束状態にある第一制御部材25に係合され回転が停止される。第二制御部材26の停止に伴い、回転伝達軸18及び中間軸22の回転も停止されるので、中間傘歯車22は自転のみ行い、出力傘歯車17及び出力部材12を逆回転方向Bに回転させる(図3参照)。
【0018】
なお、前記制御すき間bを前記移動すき間aより大きく設定しておくことにより、先にクラッチ部材29のロックが解除されたのち、時間差をおいて第二制御部材26を第一制御部材25に係合させて第二制御部材26の回転を停止さることができる。これによって、クラッチ部材29のロックが解除される前に、第二制御部材26の回転が停止してしまい、クラッチ部材29のロックが解除されなくなる不都合が回避される。
【0019】
以上の構成によると、傘歯車機構14を介して、入力側の回転を出力側に伝達するようにしているので、正回転方向A及び逆回転方向Bのいずれの伝達においても、入力側と出力側の回転速度が等しくなる。
【0020】
また、出力軸に対して入力軸が平行に取れるため、平歯車の歯車伝達による入力が可能となり、入力軸と固定部を同じハウジングで受けることも可能となるため、組み込み構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は以上のようなものであるから、以下の効果がある。
(1)第一制御部材25の拘束・非拘束を制御することによって入力側から出力側へ伝達する駆動トルクの回転方向を容易に切り替えることができる。
(2)傘歯車機構14を介して、入力側の回転を出力側に伝達するようにしているので、正回転方向A及び逆回転方向Bのいずれの伝達においても、入力側と出力側の回転速度が等しくなる。
(3)出力軸に対して入力軸が平行に取れるため、平歯車の歯車伝達で入力が可能となり、入力軸と固定部を同じハウジングで受けることも可能となるため、組み込み構造を簡単にすることができる。
(4)入力側と出力側の回転速度が等しいので、紙送りローラの駆動装置において正逆同じ速度で搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明に係る駆動力正逆切替装置の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図4から図9に示した実施例1の駆動力正逆切替装置は以下のようなものである。
【0024】
前記基本形態における入力部材11がこの実施例1においては平歯車よりなる入力歯車41、また出力部材12が平歯車よりなる出力歯車42により構成される。前記入力歯車41に入力された駆動トルクの回転方向を正逆選択的に切り替えて出力歯車42に出力する切替機構13を備える。切替機構13は、前述の基本形態と同様に、傘歯車機構14、制御機構15及びクラッチ機構16により構成される。
【0025】
前記傘歯車機構14においては前記基本形態の固定部17が固定軸43により構成され、その固定軸43によって装置全体が支持される。固定軸43に組み合わされる傘歯車機構14は、該固定軸43に回転自在に嵌合支持された回転伝達軸18と、該回転伝達軸18に回転自在に嵌合された入力傘歯車19と、同じく回転伝達軸18に回転自在に嵌合され前記入力傘歯車19と対向して同軸状態に組み合わされた出力傘歯車21を有する。さらに、前記入力傘歯車19と出力傘歯車21との間において前記回転伝達軸18に直交状に設けられた中間軸22と、該中間軸22に回転自在に嵌合され前記入力傘歯車19と出力傘歯車21に噛み合わされた中間傘歯車23とを有する。
【0026】
前記入力傘歯車19の外径部に前記入力歯車41が一体化され(図6参照)、出力傘歯車21の外径部に前記出力歯車42が一体化される。
【0027】
中間傘歯車23は、中間軸22のボス部37と抜止めリング38の間で支持される。
【0028】
前記中間軸22の先端相互間に外環部材39が嵌合される。この外環部材39の内径面の中心対称の位置に軸方向の嵌合溝40が設けられ(図6参照)、各嵌合溝40に中間軸22の先端部が嵌合される。外環部材39の両端面がそれぞれ入力歯車41及び出力歯車42の対向面に当接され、内部の傘歯車機構14をカバーする。
【0029】
前記入力傘歯車19の出力傘歯車21と対向する面の反対側の面において、円筒形のクラッチ装着部24が同軸状態に設けられる。
【0030】
前記制御機構15は、前記回転伝達軸18に同軸状態に設けられた第一制御部材25と、前記回転伝達軸18に回転方向に一体化された第二制御部材26とにより構成される。
【0031】
前記の第一制御部材25は、外径面に歯車、セレーション等の凹凸係合面44が設けられた環状の部材であり、その外端内径面に蓋部材45が嵌合され閉塞される。その蓋部材45が固定軸43に回転自在に嵌合されることにより、該第一制御部材25が固定軸43に対して同芯状態に支持される。また、該第一制御部材25の内端面に設けられた段差部46が前記入力歯車41の端面角部に嵌合されることにより、第一制御部材25の内端面においても同芯状態に支持される。
【0032】
前記第一制御部材25は、図5に示したように、その内径面の一部に軸方向の全長にわたるスリット47が設けられ、そのスリット47に対向した内径面の一部に扇形凹部48が設けられる。その扇形凹部48の一方の内側面に、周方向に凹入し、かつ軸方向に所要深さc(図4参照)をもった小凹部49が設けられる。
【0033】
前記蓋部材45の内側において、前記第一制御部材25の内径側に所要の径方向のすき間をもって第二制御部材26が固定軸43に回転自在に嵌合される。第二制御部材26は、環状の外径面の一部に扇形凸部51が設けられたものであり(図5参照)、その扇形凸部51が前記第一制御部材25の扇形凹部48に回転方向の一定の制御すき間bをおいて嵌合される。
【0034】
前記の小凹部49は、扇形凸部51を正回転方向Aに見た場合の進み側の側面に対向した面に設けられ、その小凹部49とこれに対向した扇形凸部51の側面との間に戻しばね52が介在され、通常状態において前記の制御すき間bが存在する。
【0035】
前記の第二制御部材26の外径は前記クラッチ装着部24の外径に等しく(図4参照)、また、その第二制御部材26の内端面に前記クラッチ装着部24と、そのクラッチ装着部24の内径面に貫通された回転伝達軸18の端面が当接される。その当接部分において、回転伝達軸18に設けられた係合凹部53(図6参照)と、第二制御部材26に設けられた係合凸部54とが軸方向に嵌合され、第二制御部材26と回転伝達軸18とが回転方向に一体化される。
【0036】
前記第一制御部材25の外部において、ソレノイド、電磁ブレーキ等からなるアクチュエータ27が設けられ、ソレノイドの場合は直接的に、また電磁ブレーキの場合は歯車を介して間接的に第一制御部材25の凹凸係合面44に係合される。外部の制御装置からアクチュエータ27をオン・オフ制御することにより、選択的に第一制御部材25を拘束状態としたり非拘束状態としたりすることができる。
【0037】
次に、クラッチ機構16において、前記の基本形態においてクラッチ部材29及びロック解除部32として示した部分が、この実施例1においては一層具体的に、それぞればねクラッチ55及びそのコイル部の一端部を径方向外向きに屈曲して設けられた解除フック56として示している(図4から図6参照)。
【0038】
ばねクラッチ55は、そのコイル部が同一径のクラッチ装着部24と第二制御部材26の外径面に渡って緊縛され、前記解除フック56がクラッチ装着部24側の端部に形成され、前記第一制御部材25のスリット47に回転方向のすき間のない状態で係合される(図5参照)。
【0039】
前記のばねクラッチ55は、右巻きのコイルばねによって構成され、解除フック47が係合された第一制御部材25が非拘束状態にある場合において、クラッチ装着部24と第二制御部材26が正回転方向Aに回転した場合は一層強く緊縛されてロック状態となり、クラッチ装着部24のトルクを第二制御部材26に伝達する。前記第一制御部材25がアクチュエータ27の作用によって拘束状態に変化される一方、クラッチ装着部24と第二制御部材26が引き続き正回転方向Aに回転すると、コイル部分が拡径されロックが解除され前記のトルク伝達を遮断する一方向性をもつ。
【0040】
前記制御すき間b(図5参照)は、アクチュエータ27の作用によって拘束状態に変化した第一制御部材25に対して引き続きクラッチ装着部24と前記第二制御部材26が正回転方向Aに回転することにより、ばねクラッチ55のロックが解除されるまで該第二制御部材26が移動する移動すき間aより大に設定される。
【0041】
その他、図4等において、57、58は抜け止めリングである。また、59、60は外部の入力部材とその軸、61、62は外部の出力部材とその軸である。
【0042】
また、装置全体の軽量化・コンパクト化・低コスト化をはかるために、次の部材は各種合成樹脂の成形品を用いることができる。即ち、入力歯車41(入力部材11)と一体化された入力傘歯車19、出力歯車42(出力部材12)と一体化された出力傘歯車21、一対の中間傘歯車23、第一制御部材25、第二制御部材26、外環部材39、蓋部材45等である。
【0043】
実施例1の駆動力正逆切替装置は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0044】
いま、図4に示したように、アクチュエータ27がオフであって第一制御部材25が非拘束状態にある場合において、外部の入力部材59を経て入力歯車41と入力傘歯車19に正回転方向Aの駆動トルクが入力されると、ばねクラッチ55はコイル部分が一層縮径されロック状態となる。
【0045】
ばねクラッチ55のロックにより入力歯車41、入力傘歯車19、クラッチ装着部24、ばねクラッチ55、第二制御部材26、回転伝達軸18及び中間軸22が一体化され、該中間軸12が正回転方向Aに回転される。このとき、第一制御部材25は、戻しばね52を介して扇形凸部51に押され同方向に回転される(図5参照)。
【0046】
中間傘歯車23は、これが噛み合った入力傘歯車19と、これが支持された中間軸22が共に正回転方向Aに回転するため自転することがなく、中間軸22の回転に従い公転のみ行い、これに噛み合った出力傘歯車21を介して出力歯車42を正回転方向Aに回転させ、外部の出力部材61(負荷)に駆動トルクを出力させる。即ち、入力歯車41に入力された駆動トルクの回転方向(正回転方向A)と同一回転方向の駆動トルクが出力歯車42を経て負荷に出力される。
【0047】
次に、入力歯車41が正回転方向Aに回転されている前記の状態において、負荷側の回転を反対方向に切り替える場合は、外部の制御装置からの信号によりアクチュエータ27をオンにしてこれを第一制御部材25の凹凸係合面44に係合させ、第一制御部材25を拘束状態に変化させる(図7参照)。このとき、入力歯車41、入力傘歯車19、クラッチ装着部24、ばねクラッチ55、第二制御部材26は引き続き正回転方向Aに回転する。移動すき間aだけ回転したときに、ばねクラッチ55が拡径されロックが解除される。これによって、ばねクラッチ55を経た駆動トルクの伝達経路が遮断される。
【0048】
入力歯車41、入力傘歯車19は引き続き正回転方向Aに回転するため中間傘歯車23が自転しつつ公転する。このとき、出力傘歯車21及び出力歯車42側には負荷トルクが作用しているのに対し、中間傘歯車23は、中間軸22と第二制御部材26とともに空転する。このため、出力傘歯車21と出力歯車42に対し駆動トルクの伝達は行われない。即ち、出力傘歯車21と出力歯車42は一時的に停止状態となる(図7参照)。
【0049】
中間軸22、回転伝達軸18及び第二制御部材26が空転して、該第二制御部材の扇形凸部51が停止状態にある第一制御部材25の扇形凹部48の内側面に対し戻しばね52を圧縮させながら係合し、前記の制御すき間bがゼロになる(図9参照)。これにより、第二制御部材26、回転伝達軸18及び中間軸22の空転が停止されるので、中間傘歯車23の公転が停止され自転のみ行う。その自転により、出力傘歯車21及び出力歯車42に逆回転方向Bの駆動トルクが伝達される(図8参照)。
【0050】
また、出力側の回転を前記の逆回転方向Bから元の正回転方向Aへの回転に切り替える場合は、アクチュエータ27をオフにすると、第一制御部材25が非拘束状態となるのでばねクラッチ55はそれ自体のばね力により縮径されロック状態となる。これと同時に第一制御部材25は元の状態に戻り前記の制御すき間bを生じさせる。ばねクラッチ55のロックにより、入力歯車41に入力された駆動トルクがばねクラッチ55、回転伝達軸18を経て中間軸22を正回転方向Aに回転させ、図4、図5において説明したと同様の作用により出力傘歯車21及び出力歯車42を正回転方向Aの方向に回転させる。
【0051】
なお、戻しばね52は前記の第一制御部材25が元の状態に戻る際のばねクラッチ55のばね力を補助するが、ばねクラッチ55のばね力が十分に大きければその補助は不要であるので、戻しばね52は省略することができる。
【0052】
以上の実施例1の場合は、出力部材61の軸62に対して入力部材59の軸60が平行に取れるため、平歯車の歯車伝達で入力が可能となり、軸60と固定軸43を同じハウジングで受けることも可能となるため、組み込み構造を簡単にすることができる。
【実施例2】
【0053】
図10に示した実施例2は、回転伝達軸18と第二制御部材26の支持構造に特徴がある。即ち、前記実施例1においては、図4に示したように、回転伝達軸18の一端部に設けられた係合凹部53と、第二制御部材26の対向端面に設けられた係合凸部54とが軸方向に嵌合され回転方向に一体化され、これらの部材に固定軸43が貫通され、その固定軸43により装置全体が支持される構成であった。
【0054】
これに対し、実施例2の場合は、中空の回転伝達軸18及び第二制御部材26に代えて中実の回転伝達軸18’及び第二制御部材26’を用い、各部材の外側端にそれぞれ小径軸部63を設けている。これらの小径軸部63をそれぞれ軸受64の介在によりフレーム65等の固定部分で支持するようにしている。その他の構成及び作用効果は実施例1の場合と同様である。前記フレーム65が基本形態における固定部17及び実施例1における固定軸43に相当する。
【0055】
なお、以下の実施例においては、固定部17に相当する部材として固定軸43を用いる構成を示しているが、いずれの実施例においてもこの実施例2のように、回転伝達軸18’と第二制御部材26’を個別に軸受64を介して固定部17に相当するフレーム65により支持する構成を採ることができる。
【実施例3】
【0056】
図11から図17に示した実施例3は、入力歯車41、出力歯車42及び前記入力歯車41に入力された駆動トルクの回転方向を正逆選択的に切り替えて出力歯車42に出力する切替機構13を備え、その切替機構13が、傘歯車機構14、制御機構15及びクラッチ機構16により構成される点で、前記実施例1と共通する。以下相違点を中心に説明する。
【0057】
傘歯車機構14を構成する回転伝達軸18aは、第一回転伝達軸20と、これに同軸状態に軸方向に突き合わされた第二回転伝達軸20’とにより構成される。第一回転伝達軸20の一端部は出力傘歯車21に貫通され、他端部外径面に直交状に2本の中間軸22が設けられる。その中間軸22を設けた側の先端部に係合凹部53が設けられる(図13参照)。第二回転伝達軸20’は第二制御部材26aの内端面に同芯状態に設けられ、その第二回転伝達軸20’がクラッチ装着部24及び入力傘歯車19を貫通する。その入力傘歯車19側の先端部に係合凸部54が設けられ、前記第一回転伝達軸20の係合凹部53と嵌合され回転方向に一体化される。
【0058】
制御機構15を構成する第一制御部材25aは、その内径面に第二制御部材26aが相対回転可能に嵌合される。これにより、第一制御部材25a及び第二制御部材26aが固定軸43に対して同芯状態に支持される。この場合は前記実施例1の場合の蓋部材45を省略することができる。前記の第二制御部材26aは、第一制御部材25aの軸方向の略中間部から右端部(左右の方向は、図11に向かって見た方向をいう。)に至る範囲においてその内径面に嵌合される。第一制御部材25aの前記第二制御部材26aの嵌合部から入力歯車41に至る間に環状部70が設けられ、その環状部70が前記クラッチ装着部24と径方向に対向する。
【0059】
前記第一制御部材25aの環状部70の内径面66においては、図12に示したように、扇形凹部67が回転方向に所定の角度範囲をもって設けられる。内径面66とクラッチ装着部24との間にばねクラッチ55aを装着するに必要な径方向のすき間が設けられる。
【0060】
また、第二制御部材26aの内端面には、前記の第二回転伝達軸20’の外径側にこれと平行に軸方向に突き出したフック受けアーム68が設けられる(図14参照)。このフック受けアーム68は前記扇形凹部67の中央部に軸方向に挿通される(図12参照)。
【0061】
前記クラッチ機構16を構成するばねクラッチ55aは、3回巻き程度の同一仕様のものをクラッチ装着部24に3個軸方向に接近して装着することにより構成される。各ばねクラッチ55aは、その両端部に屈曲されて外径方向に突き出した2本のフック56、56’が設けられる(図12参照)。これらのフック56、56’は、コイル部の両端において90度より小さい角度αの範囲内で重複した巻き部分を有する型式(交差型と称する。)であり、前記のフック受けアーム68がこれらのフック56、56’の間に回転方向に所要の余裕をもって挿通される。
【0062】
図12において扇形凹部67を環状部70と一体の第一制御部材25aの正回転方向Aに見た場合に、回転の進み側にある段差部を係合段差部69、遅れ側のものを係合段差部69’として区別することとすると、一方のフック56は係合段差部69と対向する部分に、他方のフック56’は係合段差部69’と対向する部分にそれぞれ回転方向に所要の余裕をもって介在される。前記のフック56は、ばねクラッチ55aのロック解除の作用を行うので、これを解除フック56と称し、他方のフック56’はトルクを伝達する作用を行うので、これを伝達フック56’と称することとする。
【0063】
ばねクラッチ55aを複数個用いるのは、前記の各フック56、56’に加わる負荷を分散軽減させるためである。
【0064】
第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、前記ばねクラッチ55aは、前記クラッチ装着部24が正回転方向Aに回転した場合に縮径されロック状態となり、伝達フック56’がフック受けアーム68に係合して第二制御部材26aにトルクを伝達する(図12の一点鎖線参照)。更に、ばねクラッチ55aと第二制御部材26aの回転が進んで、図13に示したように解除フック56が係合段差部69に係合すると、非拘束状態にある第一制御部材25aが第二制御部材26aと一体に回転する。
【0065】
上記の状態からアクチュエータ27の作用により第一制御部材25aが拘束状態となった場合、クラッチ装着部24が引き続き前記と同一方向に回転することにより、解除フック56が停止状態にある係合段差部69からの反力を受けるため、ばねクラッチ55aが拡径されロック解除状態となる。
【0066】
前記基本形態にいう「制御すき間b」は、この実施例3においては以下のように実現される。
【0067】
即ち、この実施例3においては、図13に示したように、第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、トルクをクラッチ装着部24から伝達フック56’を経て第二制御部材26aのフック受けアーム68に伝達しながら回転し、解除フック56が係合段差部69に係合した状態におけるフック受けアーム68から解除フック56までの回転方向のすき間が制御すき間bである。
【0068】
図13の状態からアクチュエータ27の作用により第一制御部材25aが拘束状態になると、クラッチ装着部24と一体にばねクラッチ55a及びフック受けアーム68が所要の移動すき間aだけ回転することにより、解除フック56が係合段差部69からの反力を受けてばねクラッチ55が拡径されロックが解除される。さらにクラッチ装着部24及びフック受けアーム68が回転し、該フック受けアーム68が解除フック56を挟んで係合段差部69に係合され、制御すき間bがゼロとなってその回転が停止される(図17参照)。
【0069】
この実施例3のばねクラッチ55aを実施例1(図4参照)の場合と比較すると、実施例1の場合は解除フック56と、比較的長く(即ち、巻き数が多く)形成されたコイル部からなるのに対し、実施例3の場合は解除フック56の他に伝達フック56’を有し、コイル部の長さは、実施例1の場合の三分の一程度である。クラッチ作用は、コイル部が縮径される回転でロック状態となり、その反対の回転でロック解除状態となる方向性を有する点で共通するが、ロック時において、実施例1の場合は、クラッチ装着部24からばねクラッチ55のコイル部を経て第二制御部材26にトルクを伝達するのに対し、実施例3の場合は、クラッチ装着部24から、ばねクラッチ55aの伝達フック56’及びこれが係合されるフック受けアーム68を経て第二制御部材26aにトルクが伝達される点で、トルクの伝達経路が一部相違する。
【0070】
なお、ばねクラッチ55aは、図示の場合は、右巻きのものを示しているが、左巻きのものであってよい。いずれの場合も、開き角αが減少する方向に両方のフック56、56’を接近させる方向の荷重を受ければコイル部が拡径し、反対方向に荷重を受ければ縮径する。
【0071】
実施例3の駆動力正逆切替装置は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0072】
いま、図11に示したように、アクチュエータ27がオフであって第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、外部の入力部材59を経て入力歯車41と入力傘歯車19に正回転方向Aの駆動トルクが入力されると、ばねクラッチ55aはコイル部分が一層縮径されロック状態となる(図12参照)。
【0073】
ばねクラッチ55aのロックにより入力歯車41、入力傘歯車19、クラッチ装着部24、ばねクラッチ55a、伝達フック56’、フック受けアーム68、第二制御部材26a、回転伝達軸18a及び中間軸22が一体化され、該中間軸22が正回転方向Aに回転される。回転が進み、解除フック56が係合段差部69に係合されると、第一制御部材25aが回転される(図13参照)。
【0074】
中間傘歯車23は、これが噛み合った入力傘歯車19と、これが支持された中間軸22が共に正回転方向Aに回転するため自転することがなく、中間軸22の回転に従い公転のみ行い、これに噛み合った出力傘歯車21を介して出力歯車42を正回転方向Aに回転させ、外部の出力部材61に駆動トルクを出力させる。即ち、出力歯車42は入力歯車41に入力された駆動トルクの回転方向(正回転方向A)と同一回転方向に駆動される。
【0075】
次に、入力歯車41が正回転方向Aに回転されている前記の状態において、負荷側の回転を逆回転方向に切り替える場合は、外部の制御装置からの信号によりアクチュエータ27をオンにしてこれを第一制御部材25aの凹凸係合面44に係合させ、第一制御部材25aを拘束状態とする(図16参照)。このとき、入力歯車41、入力傘歯車19、クラッチ装着部24は引き続き正回転方向Aに回転するため、所要の移動すき間aだけ回転して解除フック56に反力を及ぼし、ばねクラッチ55aを拡径させロックを解除させる。これによって、ばねクラッチ55aを経た駆動トルクの伝達経路が遮断される。
【0076】
一方、入力歯車41、入力傘歯車19は引き続き正回転方向Aに回転するため中間傘歯車23が自転しつつ公転する。このとき、出力傘歯車21及び出力歯車42側には負荷トルクが作用しているのに対し、中間傘歯車23は、中間軸22、回転伝達軸18a及び第二制御部材26aとともに空転する。このため、出力傘歯車21と出力歯車42に対し駆動トルクの伝達は行われない。即ち、出力傘歯車21と出力歯車42は一時的に停止状態となる。
【0077】
中間軸22、第二制御部材26a等の空転により、該第二制御部材26aが前記の制御すき間bだけ回転すると、そのフック受けアーム68が解除フック56を介して係合段差部69に係合し、制御すき間bがゼロとなる(図17参照)。これにより、第二制御部材26a、回転伝達軸18a及び中間軸22の空転が停止されるので、中間傘歯車23は公転が停止され自転のみ行う。その自転により、出力傘歯車21及び出力歯車42に逆回転方向Bの駆動トルクが伝達される。これにより、負荷側の回転方向が切り替わる。
【0078】
出力傘歯車21及び出力歯車42が逆回転方向Bに回転中においても、入力歯車41及び入力傘歯車19は正回転方向に回転しているので、ばねクラッチ55aは引き続き拡径状態にあり、クラッチ装着部24に対する摩擦が少なくなり、空転トルクが減少する。
【0079】
また、前記の逆回転方向Bの伝達を停止し元の正回転方向Aの回転に切り替える場合はアクチュエータ27をオフにする。これにより第一制御部材25aが非拘束状態となるので、ばねクラッチ55aはそれ自体のばね力により縮径状態に戻ってロックされ、これと同時に第一制御部材25aも元の状態に戻る。
【0080】
前記の作用の説明は、入力歯車41に正回転方向Aの駆動トルクが入力された場合について説明したが、反対の逆回転方向Bの駆動トルクが入力された場合も同様の作用が行われる。即ち、第一制御部材25aが非拘束状態において同一方向の回転が出力され、拘束状態において逆方向の回転が出力される。このとき、図13に示した場合において、回転方向が図示の正回転方向Aと反対の逆回転方向Bとなるから、解除フック56が伝達フックの役目をしてフック受けアーム68に係合してトルクを伝達する。また、伝達フック56’が解除フックの役目をして係合段差部69’に係合してロックが解除され、その伝達フック56’を挟んでフック受けアーム68が係合段差部69’に係合して第二制御部材26a等が停止される。
【0081】
なお、前記のばねクラッチ55aは両端部のフック56、56’が扇形凹部67に挿入され、またフック受けアーム68が両方のフック56、56’の間に挿入されるので、ばねクラッチ55aを用いているにも関わらず、左右いずれの回転方向に対しても一方向クラッチとして作用し、駆動トルクの回転方向を切替えて伝達することができる。
【実施例4】
【0082】
図18から図27に示した実施例4は、制御機構15及びクラッチ機構16において一部前記実施例3と相違する。その他の構成は実施例3の場合と同一であるから、以下相違点を中心に説明する。
【0083】
この場合の制御機構15は、実施例3の場合と同様に、第一制御部材25aの内径面に第二制御部材26aが相対回転可能に嵌合される。第二制御部材26aは、第一制御部材25aの軸方向の略中間部から図18の右端に至る範囲においてその内径面に嵌合され、第一制御部材25aの前記嵌合部から入力歯車41に至る間に環状部70が設けられ、その環状部70が前記クラッチ装着部24と径方向に対向する。
【0084】
前記第一制御部材25aの環状部70の内径面66においては、図19に示したように、2箇所の扇形凹部67、67’が中心対称の位置において、それぞれ回転方向に所定の角度範囲をもって設けられる。内径面66とクラッチ装着部24との間にばねクラッチ55aを装着するに必要な径方向のすき間が設けられる。
【0085】
また、第二制御部材26aの内端面には、前記の第二回転伝達軸20’の外径側に該第二回転伝達軸20’を挟んだ位置にこれと平行に軸方向に突き出したフック受けアーム68とストッパーアーム71が設けられる(図21(b)参照)。このフック受けアーム68とストッパーアーム71は前記扇形凹部67、67’の中央部に軸方向に挿通される(図19参照)。フック受けアーム68の幅方向中間部に軸方向のスリット72が設けられている。
【0086】
前記クラッチ機構16を構成するばねクラッチ55aは、実施例3の場合と同様に、3回巻き程度の同一仕様のものをクラッチ装着部24に3個軸方向に接近して装着することにより構成される。各ばねクラッチ55aは、その両端部に外向きに屈曲されて突き出した2本のフック56、56’が設けられる(図19参照)。これらのフック56、56’は、コイル部の両端において90度より小さい角度の範囲内で重複した巻き部分を有する前述の交差型である。一方のフック56’は前記フック受けアーム68のスリット72に挿入され回転方向に係合される。
【0087】
図19において扇形凹部67を環状部70と一体の第一制御部材25aの正回転方向Aに見た場合に、回転の進み側にある段差部を係合段差部69、遅れ側のものを係合段差部69’として区別することとすると、他方のフック56はフック受けアーム68と係合段差部69との間に回転方向に所要の余裕をもって介在される。前記のフック56は、ばねクラッチ55aのロック解除の作用を行うので、これを解除フック56と称し、フック56’はトルクを伝達する作用を行うので、これを伝達フック56’と称することとする。この点は実施例3の場合と同様である。
【0088】
また、ストッパーアーム71は、扇形凹部67’の前記正回転方向Aの進み側の係合段差部73と遅れ側の係合段差部73’に対し回転方向に所要の余裕をおいて軸方向に挿入される。
【0089】
第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、前記ばねクラッチ55aは、前記クラッチ装着部24が正回転方向Aに回転した場合に縮径されロック状態となり、伝達フック56’がフック受けアーム68を経て第二制御部材26aにトルクを伝達する。更に、ばねクラッチ55aと第二制御部材26aの回転が進んで解除フック56が係合段差部69に係合すると(図19の一点鎖線参照)、非拘束状態にある第一制御部材25aが第二制御部材26aと一体に回転する。
【0090】
上記の状態からアクチュエータ27の作用により第一制御部材25aが拘束状態に変化した場合(図22参照)、クラッチ装着部24が引き続き前記と同一方向に回転することにより、解除フック56が停止状態にある係合段差部69からの反力を受けるため、ばねクラッチ55aが拡径されロック解除状態となる。
【0091】
また、この実施例4の場合の制御すき間bは、図19に示したように、第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、トルクをクラッチ装着部24から伝達フック56’を経て第二制御部材26aのフック受けアーム68に伝達しながら回転し、解除フック56が係合段差部69に係合した際(図19の一点鎖線参照)におけるストッパーアーム71から係合段差部73までの回転方向のすき間をいう。
【0092】
図19の状態からアクチュエータ27の作用により第一制御部材25aが拘束状態になると、クラッチ装着部24と一体にばねクラッチ55a及び第二制御部材26aのフック受けアーム68が所要移動すき間aだけ回転することにより(図23参照)、解除フック56が係合段差部69からの反力を受けてばねクラッチ55aが拡径されロックが解除される。さらにクラッチ装着部24及び第二制御部材26aのストッパーアーム71が回転し、該ストッパーアーム71が係合段差部73に係合され、制御すき間bがゼロとなって回転が停止される(図25参照)。
【0093】
実施例4の駆動力正逆切替装置は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0094】
いま、図18に示したように、アクチュエータ27がオフであって第一制御部材25aの凹凸係合面44から外れた非拘束状態において、入力歯車41に正回転方向Aの回転が加えられると、入力傘歯車19と一体のクラッチ装着部24が正回転方向Aに回転されるため、ばねクラッチ55aが縮径されロック状態となる。
【0095】
これにより、伝達フック56’が係合されたフック受けアーム68を介して第二制御部材26a、これと一体の回転伝達軸18a及び中間軸22が正回転方向Aに回転される。このとき、入力傘歯車19に噛み合った中間傘歯車23は自転することなく公転のみ行い、これに噛み合った出力傘歯車21を介して出力歯車42を正回転方向Aに回転させる。即ち、入力された正回転方向Aの駆動力が正回転方向Aのまま出力される。
【0096】
次に、入力歯車41が前記の正回転方向Aに回転している状態において、出力側の回転を逆回転方向Bに切り替える場合は、アクチュエータ27をオンにしてこれを凹凸係合面44に係合させ、第一制御部材25aを拘束する(図22参照)。これによって、第一制御部材25aが停止される一方、入力歯車41、入力傘歯車19、ばねクラッチ55a、第二制御部材26a、回転伝達軸18a及び中間軸22は引き続き正回転方向Aに回転しているので、ばねクラッチ55aの伝達フック56’及びフック受けアーム68が移動すき間a(図23参照)だけ回転した時点でばねクラッチ55aが拡径されロックが解除される。このとき、ストッパーアーム71も同量回転するので制御すき間bはbに減少する。ばねクラッチ55aのロック解除によりばねクラッチ55aを経た駆動トルクの伝達経路が遮断される。
【0097】
一方、入力歯車41、入力傘歯車19は引き続き正回転方向Aに回転するため中間傘歯車23が自転しつつ公転する。このとき、出力傘歯車21及び出力歯車42側には負荷トルクが作用しているのに対し、中間傘歯車23は、中間軸22と第二制御部材26aとともに空転する。このため、出力傘歯車21と出力歯車42に対し駆動トルクの伝達は行われない。即ち、出力傘歯車21と出力歯車42は一時的に停止状態となる(図23参照)。
【0098】
中間軸22、回転伝達軸18a及び第二制御部材26aが空転して、該第二制御部材26aがさらにすき間bだけ回転することにより、制御すき間bがゼロとなりストッパーアーム71が係合段差部73に係合する(図25参照)。これにより、第二制御部材26a、回転伝達軸18a及び中間軸22の空転が停止されるので、中間傘歯車23は公転が停止され自転のみ行う。その自転により、出力傘歯車21及び出力歯車42に逆回転方向Bの駆動トルクが伝達される。これにより、負荷側の回転方向が切り替わる(図24参照)。
【0099】
出力傘歯車21及び出力歯車42が逆回転方向Bに回転中においても、入力歯車41及び入力傘歯車19は正回転方向に回転しているので、ばねクラッチ55aは引き続き拡径状態にあり、クラッチ装着部24に対する摩擦が少なくなり、空転トルクが減少する。
【0100】
また、前記の逆回転方向Bの伝達を停止し元の正回転方向Aの回転に切り替える場合は、アクチュエータ27をオフにすると、第一制御部材25aが非拘束状態となるので、ばねクラッチ55aはそれ自体のばね力により縮径状態に戻ってロックされ、これと同時に第一制御部材25aは元の状態に戻り制御すき間bを生じさせる。ばねクラッチ55aのロックにより、入力傘歯車19と一体に第二制御部材26a、回転伝達軸18a及び中間軸22が正回転方向Aに回転され、出力傘歯車21及び出力歯車42を正回転方向Aに回転させる。
【0101】
なお、中間傘歯車23の抜止め構造としての抜止めリング38を中間軸22に嵌合させる構造をとっているが、図26に示したように、外環部材39の内径面を中間傘歯車23の外面に外接させ、その外環部材39の内径面に設けた軸方向の嵌合溝74に中間軸22の先端部を嵌合させる構造をとることができる。
【0102】
また、図27及び図28(a)(b)は、前記クラッチ機構16の一部を変形したものである。即ち、この場合は第一制御部材25aと一体の環状部70の内径面の1箇所に扇形凹部67が設けられ、これに対応して第二制御部材26aにおいては第二回転伝達軸20’の外側にフック受けアーム68のみが設けられる(図28(b)参照)。そのフック受けアーム68にスリット72が設けられる。
【0103】
この場合の制御すき間bは、図27の一点鎖線で示したように、第一制御部材25aが非拘束状態にある場合において、トルクをクラッチ装着部24から伝達フック56’を経て第二制御部材26aのフック受けアーム68に伝達しながら回転し、解除フック56が係合段差部69に係合した際におけるフック受けアーム68から解除フック56までの回転方向のすき間をいう。
【0104】
図27の状態からアクチュエータ27の作用により第一制御部材25aが拘束状態になると、クラッチ装着部24と一体のばねクラッチ55a及び第二制御部材26aのフック受けアーム68が所要の移動すき間aだけ回転することにより、解除フック59が係合段差部69からの反力を受けてばねクラッチ55aが拡径されロックが解除される。さらにクラッチ装着部24及び第二制御部材26aのフック受けアーム68が回転し、該フック受けアーム68が解除フック56を挟んで係合段差部69に係合され、制御すき間bがゼロとなりその回転が停止される。
【実施例5】
【0105】
図29から図33に示した実施例5は、入力歯車41及びこれと一体の入力傘歯車19、制御機構15及びクラッチ機構16において前記実施例3と一部相違する。その他の構成は実施例3の場合と同一であるから、以下相違点を中心に説明する。
【0106】
入力歯車41及びこれと一体の入力傘歯車19の第一制御部材25b側の端面において、前記各実施例の場合より大径のクラッチ装着部24が設けられる。このクラッチ装着部24の自由端部は第一制御部材25bの内端面に形成された環状凹部75に相対回転可能に嵌合される。
【0107】
また、制御機構15は、第一制御部材25bとその内径面に嵌合された第二制御部材26bによって構成されるが、第二制御部材26bは回転伝達軸18bと一体の部分により構成される。
【0108】
前記の第二制御部材26bは、傘歯車機構14を貫通した回転伝達軸18bの入力傘歯車19側の端部において一体に形成された部分であり、その外径は回転伝達軸18bの外径より一段小径となっている。固定軸43が該第二制御部材26bの部分を貫通するとともに、第一制御部材25bの内径に相対回転可能に貫通される。第二制御部材26bの外径面に軸方向2本の突条からなる係合部76の間に係合溝77が形成される。前記回転伝達軸18bに中間軸22が直交方向に設けられる。
【0109】
第一制御部材25bの前記環状凹部75の内径側において、軸方向に平行に突き出したフック受けアーム68とストッパーアーム71が設けられる(図32(b)参照)。フック受けアーム68とストッパーアーム71は、図30に示したように、中心対称の位置から一方に片寄って設けられ、その狭い部分に前記の第二制御部材26bの係合部76が介在するように組み合わせる。
【0110】
前記クラッチ機構16はコイルばねでなるばねクラッチ55bが2個相互に接して直列状態に配置され、それぞれ拡径方向に弾性をもってクラッチ装着部24の内径面に密着される(図29、図30参照)。
【0111】
前記の各ばねクラッチ55bは、両端部に径方向内向きに屈曲形成された解除フック56bと伝達フック56’bを有し、解除フック56bを基準として整数回の右巻きに加えてさらに巻かれた劣弧の部分の端部に伝達フック56’bが形成された交差型である。
【0112】
このタイプのばねクラッチ55bは、両方のフック56b、56’bが劣弧側に引き寄せられる方向の力を受けるとコイル部分が拡径し、反対に引き離す方向の力を受けると縮径する性質を有する。
【0113】
図30に示したように、前記のフック受けアーム68は、劣弧を挟んで周方向に対向したフック56b、56’b間に介在される。一方の伝達フック56’bは前記係合部76の係合溝77に係合される。他方の解除フック56bは、フック受けアーム68の正回転方向Aに見た場合の回転遅れ側の端面78に対向した位置に介在される。
【0114】
前記のフック56bが前記遅れ側の端面78に接触した図30の状態を初期状態と称することとすると、その初期状態において前記係合部76と前記ストッパーアーム71との間に所要の中心角をもった制御すき間bが存在する。係合部76の突出高さは、第二制御部材25bが回転した場合に、ストッパーアーム71に係合し得る高さに設定される。
【0115】
実施例5は以上のようなものであり、次にその作用について説明する。
【0116】
いま、図29に示したように、アクチュエータ27がオフであって第一制御部材25bが非拘束状態にある場合において、入力歯車41及び入力傘歯車19に正回転方向Aの駆動トルクが入力されると、クラッチ装着部24が正回転方向Aに回転される。ばねクラッチ55bは一層拡径されクラッチ装着部24の内径面に強く密着されロック状態となる。
【0117】
このため、伝達フック56’bが係合された第二制御部材26b及びこれと一体の回転伝達軸18b、中間軸22及び中間軸22に係合された中間傘歯車23及び外環部材39が正回転方向Aに回転される。このとき、入力傘歯車19に噛み合った中間傘歯車23は自転することなく、中間軸22の回転に伴い公転のみ行い、これに噛み合った出力傘歯車21を介して出力歯車42を正回転方向Aに回転させる。
【0118】
このとき、第一制御部材25bは、解除フック56bがフック受けアーム68に係合された初期状態にあり、その状態のまま正回転方向Aに回転される。
【0119】
次に、入力歯車41が前記のように正回転方向Aに回転している状態において、出力の回転を逆回転方向Bに切り替える場合は、アクチュエータ27をオンにして第一制御部材25bを拘束する(図33参照)。これによって第一制御部材25b、これと一体のフック受けアーム68及びストッパーアーム71の回転が停止される。その一方、入力歯車41、入力傘歯車19、第二制御部材26b、回転伝達軸18bが引き続き正回転方向Aに回転しているので、ばねクラッチ55bの解除フック56bが停止状態にあるフック受けアーム68に係合した図30の初期状態から、前記の制御すき間bより小さい移動すき間a(図31参照)だけ回転が進んだときばねクラッチ55bのロックが解除される。ばねクラッチ55bのロック解除により該ばねクラッチ55bを経た駆動トルクの伝達経路が遮断される。
【0120】
一方、入力歯車41、入力傘歯車19は引き続き正回転方向Aに回転するため中間傘歯車23が自転しつつ公転する。このとき、出力傘歯車21及び出力歯車42側には負荷トルクが作用しているのに対し、中間傘歯車23は、中間軸22と回転伝達軸18b、第二制御部材26bとともに空転する。このため、出力傘歯車21と出力歯車42に対し駆動トルクの伝達は行われない。即ち、出力傘歯車21と出力歯車42は一時的に停止状態となる。
【0121】
中間軸22と第二制御部材26bが空転して、該第二制御部材26bがさらにすき間bだけ回転することにより、係合部76がストッパーアーム71に係合する(図31参照)。これにより、第二制御部材26b、回転伝達軸18b及び中間軸22の空転が停止されるので、中間傘歯車23は公転が停止され自転のみ行う。その自転により、出力傘歯車21及び出力歯車42に逆回転方向Bの駆動トルクが伝達される。これにより、負荷側の回転方向が切り替わる。
【0122】
出力傘歯車21及び出力歯車42が逆回転方向Bに回転中においても、入力歯車41及び入力傘歯車19は正回転方向Aに回転しているので、ばねクラッチ55bは引き続き縮径状態にあり、クラッチ装着部24に対する摩擦が少なくなり、空転トルクが減少する。
【0123】
また、前記の逆回転方向Bの伝達を停止し元の正回転方向Aの回転に切り替える場合は、アクチュエータ27をオフにすると、第一制御部材25bが非拘束状態となるので、ばねクラッチ55bはそれ自体のばね力により拡径状態に戻ってロックされ、これと同時に第一制御部材25bは元の状態に戻り前記の制御すき間bを生じさせる。ばねクラッチ55bのロックにより、入力傘歯車19と一体に第二制御部材26b、回転伝達軸18b及び中間軸22が正回転方向Aに回転され、出力傘歯車21及び出力歯車42を正回転方向Aに回転させる。
【実施例6】
【0124】
図34及び図35は実施例6を示す。この実施例6は前記実施例5の変形例である。前記実施例5においては、ばねクラッチ55bを構成する2個のコイルばねは共に右巻きのものであったが、この実施例6の場合は、同一仕様であるが一方は前述の場合と同様の右巻きのばねクラッチ55bを用い、他方のばねクラッチ55cは左巻きのものを用いている。右巻きのばねクラッチ55bは入力傘歯車19側に配置され、左巻きのばねクラッチ55cは第一制御部材25b側に配置される。
【0125】
上記のような巻き方向反対のばねクラッチ55b、55cを用いるのは、前記実施例5における以下のような不都合を解消するためである。
【0126】
即ち、実施例5のように、ばねクラッチ55bの巻き方向が2個とも同方向である場合、第一制御部材25bが拘束さればねクラッチ55bがロック解除の状態にあり、各ばねクラッチ55bが停止状態にあるとき、入力歯車41、入力傘歯車19及びこれと一体のクラッチ装着部24が引き続き正回転方向Aに回転する。この場合に、各ばねクラッチ55bはクラッチ装着部24の正回転方向Aへの回転によるスクリュウ作用により、同一方向かつ同一大きさのスラスト力が作用する。その結果、入力歯車41又は第一制御部材25bの回転に支障を来たすことがある。
【0127】
これに対し、この実施例6のように、巻き方向の異なる2個のばねクラッチ55b、55cを使用すると、各ばねクラッチ55b、55cに発生するスラスト力Sは反対向き、かつ大きさ同一である(図35参照)。このため、両方のスラスト力Sが打ち消し合うので入力歯車41又は第一制御部材25bの回転に支障を来たすことが回避される。
【0128】
上記以外の構成は実施例5の場合と同様であり、作用も同様である。
【実施例7】
【0129】
図36から図38に示した実施例7は、前記の実施例5のばねクラッチ55bを構成するコイルばねとして、伝達フック56’bを基準として複数の整数回の巻きに加えて優弧の不完全巻きの端部に解除フック56bを設けたタイプ(開放型と称する。)の場合である。各フック56’b、56bが内向きに屈曲形成される点は実施例5の場合と同様である。
【0130】
この型式のばねクラッチ55bは、両方のフック56b、56’bが劣弧側に引き寄せられる方向の力を受けると縮径し、反対方向の力を受けると拡径する性質を有する。
【0131】
また、この実施例7においては、優弧の部分を挟んで周方向に対向した前記フック56b、56’bの間にフック受けアーム68bが介在される構成を採っている。この構成の場合は、フック受けアーム68bは図37及び図38に示したように、優弧に沿った大きな円弧部をもった不完全円筒体に形成されるので、その内径面を第二制御部材26bの外径面に嵌合させることにより、第一制御部材25bの姿勢を安定させることができる。
【0132】
図36に示したように、伝達フック56’bが係合部76の係合溝77に係合される。解除フック56bは、前記フック受けアーム68bの正回転方向Aに見た場合の回転の進み側となる端面79に対向する。この解除フック56bが前記端面79に接触した図36の状態、即ち初期状態において、係合部76と該解除フック56bの間に制御すき間bが存在する。
【0133】
実施例7の場合の作用は、第一制御部材25bが非拘束状態にある場合は実施例5と同様である。拘束状態になると、係合部76側が所要移動すき間aだけ移動することによりばねクラッチ55bが縮径され解除状態となる。さらに進んで制御すき間bがゼロになったとき、係合部76が解除フック56bを挟んでフック受けアーム68bの端面79に係合され、第二制御部材25bの回転が停止される(図38参照)。
【0134】
その他の構成及び作用は前記実施例5と同様である。また、前記実施例6のように、巻き方向の異なるばねクラッチ55b、55cを用いることができる。
【実施例8】
【0135】
図39から図45に示した実施例8は、入力歯車41、出力歯車42及び前記入力歯車41に入力された駆動トルクの回転方向を正逆選択的に切り替えて出力歯車42に出力する切替機構13を備え、その切替機構13が、傘歯車機構14、制御機構15及びクラッチ機構16により構成される点で、前記実施例1と共通する。以下相違点を中心に説明する。
【0136】
傘歯車機構14を構成する回転伝達軸18は、入力傘歯車19と出力傘歯車21に貫通されるとともに、これに直交状に2本の中間軸22が設けられる。前記中間軸22に中間傘歯車23、23が回転自在に嵌合され、各中間傘歯車23、23が抜止めリング38によって抜け止めされる。また、各中間傘歯車23から突き出した中間軸22の両端部が、外環部材39の内径面に形成された嵌合溝40に嵌合され、環状の蓋部材81が外環部材39に嵌合され抜け止めが図られる。
【0137】
前記回転伝達軸18の入力傘歯車19側の端部に係合凹部82(図43参照)が設けられる。ボス部37から出力傘歯車21側に延びた回転伝達軸18の部分を省略し、出力傘歯車21及びこれと一体の出力歯車42を固定軸43に直接嵌合するようにしてもよい。
【0138】
入力歯車41の制御機構15側の端面にクラッチ装着部24bが同芯状に設けられ、その内径側において、第一制御部材25cと入力傘歯車19との間に第二制御部材26cが回転自在に嵌合される。第二制御部材26cは、前記回転伝達軸18と軸方向に突き当てられ、その突き当て面に一対の係合凸部83が設けられる(図44(a)参照)。その係合凸部83が回転伝達軸18の前記係合凹部82に係合され、回転伝達軸18と第二制御部材26cは一体回転可能となっている。また、第二制御部材26cの第一制御部材25c側の端面に規制凹部84(図39、図43参照)が設けられる。
【0139】
制御機構15は、前記の第一制御部材25cと第二制御部材26cとにより構成される。第一制御部材25cは、図44(b)に示したように、その内端面の軸対称の位置に一対のロック解除ピン85が軸方向に突設される。また、その一対のロック解除ピン85の周方向の中間部に規制突起80が設けられる。その規制突起80が規制凹部84に対し、回転方向の制御すき間b(図41及び図42(a)参照)をおいて嵌合される。
【0140】
クラッチ機構16は、クラッチ装着部24bの内部に組み込まれたころクラッチ90によって構成される。ころクラッチ90は、図40に示したように、固定軸43に回転自在に嵌合された内輪の機能を果たす前記の第二制御部材26c、前記クラッチ装着部24bの内面に回り止め89を介して挿入された外輪86、その外輪86と第二制御部材26cとの間に介在されたころ87と付勢ばね88によって構成される。
【0141】
図40に示したように、前記第二制御部材26cと外輪86の対向面間に、全周の四分の一の範囲ごとに方向性の異なるころ収納部89a、89bが設けられる。即ち、方向性が一致する2箇所のころ収納部89a、89aが軸対称の2箇所に設けられ、また、これらのころ収納部89a、89aの間に方向性が反対の2箇所のころ収納部89b、89bが設けられる。
【0142】
さらに詳述すると、図41に示したように、4箇所のころ収納部89a、89bごとの第二制御部材26cの外径面に周方向に連続した3箇所の傾斜面からなるカム面91a、91bが形成される。ころ収納部89aのカム面91aと、ころ収納部89bのカム面91bの傾斜方向が同一周回方向に見て反対となるように形成される。その結果、各カム面91a、91bに嵌合されたころ87の接点において引いた接線がなす角度、いわゆるクサビ角θの拡大方向が反対となる。
【0143】
前記のころ収納部89a、89bのうち、クサビ角θが相互に拡大方向となるころ収納部89a、89bの端部のころ87間に前記の付勢ばね88が介在され、その付勢ばね88によって各ころ収納部89a、89bのころ87にそれぞれクサビ角θの狭小方向の付勢力が付与される。また、クサビ角θが相互に狭小方向となるころ収納部89a、89bの端部のころ87間に前述のロック解除ピン85、85が挿入され、各ロック解除ピン85の両側のころ87との間に周方向の移動すき間a(図42(b)参照)が形成される。前記の制御すき間bはこの移動すき間aに比べ大きく設定される(a<b)。
【0144】
実施例8の駆動力正逆切替装置は以上のような構成であり、次にその作用について説明する。
【0145】
図39においてアクチュエータ27がオフであって、第一制御部材25cが非拘束の状態において、入力歯車41に正回転方向Aの駆動トルクが入力されると、ころクラッチ90の外輪86がこれと同一方向に回転され(図40参照)、2箇所のころ収納部89bのころ87はフリーとなるが、他の2箇所のころ収納部89aのころ87がロックされるため、全体としてころクラッチ90はロック状態となる。これにより第二制御部材26c及びこれに係合された回転伝達軸18を介して中間軸22が正回転方向Aに回転される。このとき、入力傘歯車19と出力傘歯車21に噛み合った中間傘歯車23、23は中間軸22の正回転方向Aへの回転に伴い自転することなく公転のみ行い、これと一体に出力傘歯車21及び出力歯車42が正回転方向Aに回転する。
【0146】
一方、入力歯車41に正回転方向Aの駆動トルクが入力されている上記の状態において、図45に示したように、アクチュエータ27がオンとなり第一制御部材25cが拘束されると、停止状態となった第一制御部材25cと一体のロック解除ピン85に対してすき間a(図42(b)参照)だけころクラッチ90が正回転方向Aに移動することにより、ころ収納部89aのころ87がロック解除ピン85に係合して(図42(b)一点鎖線参照)ころクラッチ90のロックが解除される、
このとき、第二制御部材26cは回転伝達軸18側から引き続き正回転方向Aに回転されるが、その第二制御部材26cの規制凹部84と第一制御部材25cの規制突起80との間の制御すき間b(図42(a)参照)がゼロになって第二制御部材26cが第一制御部材25cに係合されると、第二制御部材26c及び回転伝達軸18を介して中間軸22の回転が停止される。
【0147】
その結果、入力歯車41の正回転方向Aの回転が入力傘歯車19、中間傘歯車23、出力傘歯車21を介して出力歯車42に伝達される結果、逆回転方向Bに切替えて出力される。
【0148】
以上述べた実施例8においては、第二制御部材26cに規制凹部84及び第一制御部材25cに規制突起80をそれぞれ設け、規制凹部84と規制突起80との間に制御すき間bをおいた構成を採り、停止した第一制御部材25cの規制突起80に対し第二制御部材26cの規制凹部84の内面を係合させて第二制御部材26cの回転を停止されるようにしているが、この構成に代えて次のような構成を採ることも考えられる。
【0149】
即ち、図46(a)から(c)に示したように、前記規制凹部84、規制突起80を省略し、ころクラッチ90のカム面91a、91bの肩部92を利用して第二制御部材26cの回転を停止させるように構成した。この場合、アクチュエータ27がオンとなって第一制御部材25cがロックされた前述の状態において、図46(a)に示したように、ころクラッチ90の外輪86及び第二制御部材26cが正回転方向Aに回転して、ころ収納部89aのころ87がロック解除ピン85に係合してロックが解除されたとする(前記の図46(b)の状態)。このとき、ころ87とカム面91aの肩部92(カム面91aが隆起した部分)とこれに対向したころ87の係合部93との間に移動すき間c(c<b)が存在する。
【0150】
前記の状態からさらに第二制御部材26cが前記の移動すき間cだけ回転すると、図46(c)に示したように、肩部92とロック解除ピン85との間にころ87が挟着されるので、第二制御部材26cの回転が停止される。
【0151】
このように、第二制御部材26cのカム面91a、91bの肩部92を利用することにより、前記の規制凹部84及び規制突起80を省略できるので構造が簡素化される。
【実施例9】
【0152】
図47及び図48に示した実施例9は、前掲の特許文献1に開示されたような両面印刷装置に適した紙送りローラ駆動装置に関するものであり、前記各実施例(便宜上、実施例1(図4から図9)を代表例として示す。)に示した駆動力正逆切替装置101を利用する例である。即ち、フレーム102に前記の固定軸43が固定され、そのフレーム102の内側において該固定軸43に前記の第一制御部材25が取り付けられる。
【0153】
前記フレーム102の外側面に駆動モータ103が固定され、その駆動モータ103のモータ軸104、モータ軸歯車105を経て前記の入力歯車41に駆動トルクが入力されるようになっている。また、出力歯車42に噛み合った出力補助歯車106の出力軸107にスイッチバック型の紙送りローラ108、108’が取り付けられる。さらに前記入力歯車41に噛み合った出力補助歯車109によって裏面搬送装置110が駆動される。裏面搬送装置110は、連動ベルト111を介して搬送ローラ112、112’及び搬送ベルト113が駆動される。
【0154】
図48に示したように、紙の搬送路114は前記の紙送りローラ108、108’を経て前方に延びている。またその紙送りローラ108、108’の下方において搬送路114から後方に引き返す裏面搬送路115が分岐され、その分岐部分に羽根車116が設けられる。その羽根車116は、紙送りローラ108、108’に挟まれて一時停止した紙の後端を裏面搬送路115側に向ける作用を行う。裏面搬送路115は前記の搬送ベルト113によって駆動され、Uターンして印刷機構117に入り、搬送路114に戻るようになっている。
【0155】
前記の紙送りローラ108、108’は、駆動力正逆切替装置101を介して駆動モータ103から駆動される。駆動モータ103は常時逆回転方向Bに回転駆動されるタイプであるとする(図47参照)。表印刷された紙118を搬送する際は、駆動力正逆切替装置101のアクチュエータ27を後退させ(図47の実線参照)、第一制御部材25を非拘束状態とする。これにより、前記実施例1の説明において述べた作用により、入力歯車41及び出力歯車42が正回転方向Aに回転し、出力補助歯車106を経て紙送りローラ108を逆回転方向Bに回転させ、紙118を搬送路114に送り出す。
【0156】
紙送りローラ108、108’の部分で紙118の後端が検知されるとアクチュエータ27が作動され第一制御部材25を拘束する。これにより、出力歯車42の回転が逆回転方向Bに切り替えられ、紙送りローラ108が前述の場合と反対に正回転方向Aに回転される。その結果、紙118の後端部の向きが羽根車116によって裏面搬送路115側へ変えられ、該搬送路114へスイッチバックが行われる(図47、図48の矢印C参照)。そして、印刷機構117において裏面印刷が施され、搬送路114から紙送りローラ108、108’をへて外部に排出される。
【0157】
このように、駆動力正逆切替装置101を用いることにより、駆動モータ103として一定方向回転仕様のものを用いながら、アクチュエータ27の入り切りによって出力側の回転方向を適宜切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】基本形態のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図2】図1のX−X線の断面図
【図3】基本形態のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図4】実施例1のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図5】図4のX−X線の断面図
【図6】実施例1の分解斜視図
【図7】実施例1のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図8】実施例1のアクチュエータがオンの場合の他の状態の断面図
【図9】図8のX−X線の断面図
【図10】実施例2のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図11】実施例3のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図12】図11のX−X線の断面図
【図13】図11のX−X線の他の状態の断面図
【図14】実施例3の分解斜視図
【図15】(a)同上の第一制御部材の斜視図、(b)同上の第二制御部材の斜視図
【図16】実施例3のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図17】図16のX−X線の断面図
【図18】実施例4のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図19】図18のX−X線の断面図
【図20】実施例4の分解斜視図
【図21】(a)同上の第一制御部材の斜視図、(b)同上の第二制御部材の斜視図
【図22】実施例4のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図23】図22のX−X線の断面図
【図24】実施例4のアクチュエータがオンの場合の他の状態の断面図
【図25】図24のX−X線の断面図
【図26】実施例4の変形例の一部断面図
【図27】実施例4の変形例の一部断面図
【図28】(a)図27の第一制御部材の斜視図、(b)同上の第二制御部材の斜視図
【図29】実施例5のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図30】図29のX−X線の断面図
【図31】図29の場合の作用状態における一部省略断面図
【図32】(a)実施例5の分解斜視図、(b)同上の第一制御部材の斜視図
【図33】実施例5のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図34】実施例6のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図35】同上のばねクラッチ部分の横断平面図
【図36】実施例7の断面図
【図37】同上の第一制御部材の斜視図
【図38】同上の他の状態の断面図
【図39】実施例8のアクチュエータがオフの状態の断面図
【図40】図39のX10−X10線の断面図
【図41】図40の部分の一部拡大断面図
【図42】(a)図41の第二制御部材の部分の一部拡大断面図、(b)同上のころクラッチ部分の一部拡大断面図
【図43】実施例8の分解斜視図
【図44】(a)同上の第二制御部材の斜視図、(b)同上の第一制御部材の斜視図
【図45】実施例8のアクチュエータがオンの状態の断面図
【図46】(a)〜(c)実施例8の変形例の一部断面図
【図47】実施例9の横断平面図
【図48】同上の概略側面図
【図49】従来例の平面図
【符号の説明】
【0159】
11 入力部材
12 出力部材
13 切替機構
14 傘歯車機構
15 制御機構
16 クラッチ機構
17 固定部
18、18’、18a、18b 回転伝達軸
19 入力傘歯車
20 第一回転伝達軸
20’ 第二回転伝達軸
21 出力傘歯車
22 中間軸
23 中間傘歯車
24、24b クラッチ装着部
25、25a、25b、25c 第一制御部材
26、26’、26a、26b、26c 第二制御部材
27 アクチュエータ
29 クラッチ部材
32 ロック解除部
37 ボス部
38 抜止めリング
39 外環部材
40 嵌合溝
41 入力歯車
42 出力歯車
43 固定軸
44 凹凸係合面
45 蓋部材
46 段差部
47 スリット
48 扇形凹部
49 小凹部
51 扇形凸部
52 戻しばね
53 係合凹部
54 係合凸部
55、55a、55b、55c ばねクラッチ
56、56b 解除フック
56’、56’b 伝達フック
57 抜止めリング
58 抜止めリング
59 入力部材
60 軸
61 出力部材
62 軸
63 小径軸部
64 軸受
65 フレーム
66 内径面
67、67’ 扇形凹部
68、68b フック受けアーム
69、69’ 係合段差部
70 環状部
71 ストッパーアーム
72 スリット
73、73’ 係合段差部
74 嵌合溝
75 環状凹部
76 係合部
77 係合溝
78 端面
79 端面
80 規制突起
81 蓋部材
82 係合凹部
83 係合凸部
84 規制凹部
85 ロック解除ピン
86 外輪
87 ころ
88 付勢ばね
89 回り止め
89a、89b ころ収納部
90 ころクラッチ
91a、91b カム面
92 肩部
101 駆動力正逆切替装置
102 フレーム
103 駆動モータ
104 モータ軸
105 モータ軸歯車
106 出力補助歯車
107 出力軸
108、108’ 紙送りローラ
109 出力補助歯車
110 裏面搬送装置
111 連動ベルト
112、112’ 搬送ローラ
113 搬送ベルト
114 搬送路
115 裏面搬送路
116 羽根車
117 印刷機構
118 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材(11)、出力部材(12)及び前記入力部材(11)に入力された駆動トルクの回転方向を正逆選択的に切り替えて前記出力部材(12)に出力する切替機構(13)を備えた駆動力正逆切替装置において、
前記切替機構(13)は傘歯車機構(14)、制御機構(15)及びクラッチ機構(16)により構成され、
前記傘歯車機構(14)は、固定部(17)に支持された回転伝達軸(18)と、該回転伝達軸(18)に回転自在に嵌合された入力傘歯車(19)と、その入力傘歯車(19)と対向して同軸状態に組み合わされた出力傘歯車(21)と、前記入力傘歯車(19)と出力傘歯車(21)との間において前記回転伝達軸(18)に直交状に設けられた中間軸(22)と、該中間軸(22)に回転自在に嵌合され前記入力傘歯車(19)と出力傘歯車(21)に噛み合わされた中間傘歯車(23)とにより構成され、前記入力傘歯車(19)にこれと同軸状態のクラッチ装着部(24)が設けられ、該入力傘歯車(19)が前記入力部材(11)に、出力傘歯車(21)が前記出力部材(12)にそれぞれ一体化され、
前記制御機構(15)は、前記回転伝達軸(18)に同軸状態に設けられた第一制御部材(25)と、前記回転伝達軸(18)に回転方向に一体化され、かつ前記固定部(17)によって支持された第二制御部材(26)とにより構成され、前記第一制御部材(25)は外部のアクチュエータ(27)によって拘束状態と非拘束状態が選択的にとれ、前記第二制御部材(26)は前記第一制御部材(25)に対し回転方向の一定の制御すき間(b)をおいて係合され、
前記クラッチ機構(16)は、前記クラッチ装着部(24)と第二制御部材(26)との間に装着されたクラッチ部材(29)と、そのクラッチ部材(29)の一部に設けられたロック解除部(32)とからなり、
前記クラッチ部材(29)は、非拘束状態にある第一制御部材(25)に対して前記クラッチ装着部(24)が一定方向に回転した場合にロック状態となる一方、拘束状態にある第一制御部材(25)に対して前記クラッチ装着部(24)が前記と同方向に回転することによりロック解除状態となる方向性を有することを特徴とする駆動力正逆切替装置。
【請求項2】
前記制御すき間(b)は、前記第一制御部材(25)が非拘束状態から拘束状態に変化した時から前記クラッチ部材(29)がロック解除状態になるまで回転する前記第二制御部材(26)の移動すき間(a)より大に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項3】
前記クラッチ部材(29)が、前記クラッチ装着部(24)と第二制御部材(26)にわたりその外径面に緊縛されたばねクラッチ(55)により構成され、前記クラッチ解除部(32)が該ばねクラッチ(55)の一端部に設けられた解除フック(56)により構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項4】
前記の固定部(17)が、前記回転伝達軸(18)と制御機構(15)に貫通された固定軸(43)により構成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項5】
前記固定部(17)が、前記回転伝達軸(18)と第二制御部材(26)をそれぞれ軸受(64)の介在により支持するフレーム(65)により構成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項6】
前記入力傘歯車(19)、出力傘歯車(21)、中間傘歯車(23)、第一制御部材(25)、第二制御部材(26)及びこれらの部材と一体の部分が合成樹脂の成形品によって形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項7】
前記クラッチ部材(29)が、一端部に解除フック(56)及び他端に伝達フック(56’)を有するばねクラッチ(55)によって構成され、該ばねクラッチ(55)が前記第一制御部材(25)の内径面に形成された扇形凹部(67)に挿入され、前記解除フック(56)と伝達フック(56’)の間に前記第二制御部材(26)に設けられたフック受けアーム(68)が介在され、前記制御すき間(b)は、前記第二制御部材(26)に設けられたフック受けアーム(68)と、前記第一制御部材(25)の前記扇形凹部(67)の一方の係合段差部(69)に係合された前記解除フック(56)との間に形成されたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項8】
前記伝達フック(56’)が、前記フック受けアーム(68)のスリット(72)に挿入されたことを特徴とする請求項7に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項9】
前記クラッチ部材(29)が、一端に解除フック(56)、他端に伝達フック(56’)を有するばねクラッチ(55)によって構成され、前記第一制御部材(25)の内径面の2箇所に扇形凹部(67)、(67’)が設けられ、その一方の扇形凹部(67)に前記解除フック(56)及び伝達フック(56’)が挿入され、これらの解除フック(56)及び伝達フック(56’)の間に前記第二制御部材(26)に設けられたフック受けアーム(68)が介在され、該第二制御部材(26)に設けられたストッパーアーム(71)が前記他方の扇形凹部(67’)に挿入され、前記制御すき間(b)は、前記扇形凹部(67)の一方の係合段差部(69)に前記解除フック(56)が係合された場合における前記ストッパーアーム(71)と前記扇形凹部(67’)の一方の係合段差部(73)との間に形成されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項10】
前記クラッチ部材(29)が、複数のばねクラッチ(55)を軸方向に密着配置して構成されたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項11】
前記回転伝達軸(18)と第二制御部材(26)とを回転方向に一体化する手段として、該回転伝達軸(18)の一端部に第二制御部材(26)を一体に設けた構成をとり、前記クラッチ部材(29)が、前記クラッチ装着部(24)の内径面に拡径方向の弾性をもって装着されたばねクラッチ(55)によって構成され、前記第一制御部材(25)が、前記クラッチ装着部(24)に対向した面に設けられたフック受けアーム(68)とストッパーアーム(71)を有する第一制御部材(25)によって構成され、これらのフック受けアーム(68)とストッパーアーム(71)は前記クラッチ装着部(24)内に挿入され、前記クラッチ部材(29)を構成するばねクラッチ(55)は、その一端に解除フック(56)、他端に伝達フック(56’)が内向きに屈曲形成され、前記伝達フック(56’)は前記第二制御部材(26)に係合され、解除フック(56)は前記フック受けアーム(68)の正回転方向Aに見た場合の遅れ側となる端面(78)に対向した位置に介在され、前記解除フック(56)が前記端面(78)に接触した初期状態において、前記第二制御部材(26)に設けられた係合部(76)と前記ストッパーアーム(71)との間に前記の制御すき間(b)が存在することを特徴とする請求項1から10のいずれか記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項12】
前記クラッチ部材(29)が複数のばねクラッチ(55)によって構成され、そのばねクラッチ(55)の半数のものの巻き方向が反対であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項13】
前記ばねクラッチ(55)は交差型であり、劣弧の部分を挟んで周方向に対向した前記伝達フック(56’)と解除フック(56)の間に前記のフック受けアーム(68)が介在されたことを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項14】
前記ばねクラッチ(55)は開放型であり、優弧の部分を挟んで周方向に対向した前記伝達フック(56’)と解除フック(56)の間に前記のフック受けアーム(68)が介在されたことを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項15】
前記第一制御部材(25)が、前記固定部(17)を構成する固定軸(43)に嵌合され、かつ内端面にロック解除ピン(85)が突設された第一制御部材(25)によって構成され、
前記第二制御部材(26)が、前記回転伝達軸(18)に回転方向に一体化され、かつ前記固定部(17)によって支持された第二制御部材(26)により構成され、
前記クラッチ部材(29)が、前記クラッチ装着部(24)内に組み込まれたころクラッチ(90)により構成され、該ころクラッチ(90)は、内輪を兼用する前記第二制御部材(26)と外輪(86)の対向面に一定方向に拡大するクサビ角(θ)をもった一対のころ収納部(89a)が中心対称の位置に設けられるとともに、これらのころ収納部(89a)の相互間に前記と反対方向に拡大するころ収納部(89b)が中心対称の位置に設けられ、前記各ころ収納部(89a)、(89b)にそれぞれころ(87)が収納され、周方向に隣接するころ収納部(89a)、(89b)のクサビ角(θ)の狭小側端部において両方のころ(87)間に付勢ばね(88)が介在され、同じくクサビ角(θ)の狭小側端部においてころ(87)間に前記ロック解除ピン(85)が介在されたことを特徴とする請求項1に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項16】
前記各ころ収納部(89a)、(89b)を構成する前記外輪(86)及び第二制御部材(26)のいずれか一方の対向面に前記クサビ角(θ)を形成する同一方向の傾斜をもった3箇所のカム面(91a)、(91b)が周方向に連続して設けられ、各カム面(91a)、(91b)ごとにころ(87)が介在されたことを特徴とする請求項15に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項17】
前記制御すき間(b)が、前記ロック解除ピン(85)ところ(87)間に形成される移動すき間(a)より大に形成されたことを特徴とする請求項15又は16に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項18】
前記制御すき間(b)が、停止状態にある前記ロック解除ピン(85)に接触したころ(87)と、そのころ(87)が介在された前記いずれかのカム面(91a)又は(91b)におけるカム面(91a)相互間又はカム面(91b)相互間の肩部(92)との間に形成された所要の移動すき間(c)より大に形成されたことを特徴とする請求項15又は16に記載の駆動力正逆切替装置。
【請求項19】
駆動モータ(103)と、前記駆動モータ(103)からの入力を一定の回転方向のまま、又はその反対の回転方向に切替えて出力する駆動力切替装置(101)を用いた複写機、プリンター等の両面印刷機構の紙送りローラ駆動装置において、前記駆動力正逆切替装置(101)として請求項1から18のいずれかに記載の駆動力正逆切替装置を用いた紙送りローラ駆動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate


【公開番号】特開2008−286383(P2008−286383A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236848(P2007−236848)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】