説明

駆動方法および電気光学装置

【課題】色順次駆動方式において、画面の明るさを十分に確保した上で、光学応答の遅れを考慮する。
【解決手段】表示パネルの画素は、書き込まれた電圧に応じた透過率となる。この表示パネルに対して、LEDが、R(赤)、G(緑)、B(青)の光を順番に照射する。フレーム期間を、R・G・Bサブフレーム期間に分割し、各サブフレーム期間に第1および第2走査期間を設ける。このうち、第1走査期間において縦方向に互いに隣接する2つ画素のうち、光学応答の遅い方の画素に対応するデータ信号を表示パネルの画素に書き込んで、低い解像度の画像を形成し、第2走査期間において第1走査期間より高い解像度の画像を形成する。第1走査期間が終了して待機期間を経た後に、LEDを発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる色順次方式の電気光学装置の駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、色順次方式では、1つのカラー画像を形成するフレーム期間を、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの原色に対応するサブフレーム期間に分割するとともに、各サブフレーム期間において、当該サブフレーム期間の原色成分の階調(明るさ)に応じた情報(例えば電圧)を表示パネルの画素に書き込んだ後に、当該原色の光を表示パネルに照射する構成となっている。これにより、R、G、Bの各原色画像が順次表示されるので、人間には、これらの原色画像が重なってフルカラー画像として視覚される(特許文献1参照)。このような色順次方式では、表示素子にカラーフィルタを設けなくて済むほか、1画素をR・G・Bのサブ画素に分割しなくて済むので、高精細化が容易となる。
【0003】
このような色順次方式において、各サブフレームにおいて原色成分の明るさに応じた情報(例えば電圧)を全画素に書き込んだ後に、当該原色の光を複数の画素に照射開始する構成では、画面の明るさを十分にとれなくなる可能性があるので、全画素に対する書き込みが終了する前に、光の照射を開始する方式が考えだされた(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−237606号公報
【特許文献2】特開2003−107425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この方式では、画面の明るさを確保する点では有効ではあるが、表示パネルの画素における光学応答特性が悪いと、書き込んだ電圧に対する応答が不充分な状態で光の照射が開始されるので、書き込んだ内容とは異なる画像が視認されてしまう、という点が指摘された。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、色順次方式において、画面の明るさを十分に確保した上で、書き込んだ内容とは異なる画像が視認されてしまうことを回避した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の駆動方法は、それぞれが書き込まれた情報に応じた透過率または反射率となる複数の画素と、前記複数の画素に対して、互いに異なる少なくとも3つの原色の光を順次照射する照射手段と、を備え、単位期間を前記原色に対応させたサブフレーム期間に分割し、各サブフレーム期間において、前記複数の画素に対し、第1走査と当該第1走査に続く第2走査とによって当該サブフレーム期間に対応する原色成分の情報を書き込み、前記第1走査において、互いに隣接する2以上の画素に対して同一の情報を書き込んで、前記複数の画素で規定される解像度よりも低い解像度の画像を形成し、前記第1走査において前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素のいずれかの画像情報のなかから、当該2以上の画素の画像情報に基づいて決定し、前記第2走査によって、前記低い解像度よりも高い解像度の画像を形成し、前記第1走査の後、次のサブフレーム期間における第1走査の前に、前記照射手段が当該原色の光を前記複数の画素に照射することを特徴とする。本発明によれば、2以上の画素に同時に同一の画像情報を書き込むことよって低解像度の画像を形成するが、その書き込む画像情報を、当該2以上の画素に対応する画像情報のなかから、当該2以上の画素の画像情報に基づいて決定する。画像情報から光学応答の遅れそうな画素を先に書き込んでおくことができ、書き込んだ内容とは異なる画像が視認されてしまうことを回避することが可能となる。
【0006】
本発明において、前記複数の画素は、それぞれ液晶素子を含み、前記液晶素子の透過率または反射率が大きくなる側から小さくなる側に変化するときの応答時間が、小さくなる側から大きくなる側に変化するときの応答時間よりも短い場合には、前記第1走査において、前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素の画像情報のうち、最も明るい画素の画像情報とし、反対の場合には、前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素の画像情報のうち、最も暗い画素の画像情報として決定することが好ましい。本発明において、前記第1走査において前記2以上の画素において、書き込まれなかった画素の情報を、前記第2走査において、対応する画素に書き込むことも好ましい。
本発明において、前記複数の画素は、複数行の走査線および複数列のデータ線との交差に対応して配列するとともに、前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号の電圧が書き込まれるものであり、前記第1走査において、奇数行の走査線と当該奇数行の走査線に対し隣接する偶数行の走査線とを組として、所定方向に順番に、同時に選択し、一の組の奇数行および偶数行の走査線を同時に選択したときに、当該2行の走査線と一のデータ線との交差に対応する2つの画素の明るさ情報を比較して、いずれかの明るさ情報を代表値として決定し、前記代表値として決定した明るさ情報に基づいた電圧のデータ信号を、前記一のデータ線に供給しても良い。
ここで、本発明において、前記複数の画素は、それぞれ液晶素子を含み、前記液晶素子の透過率または反射率が大きくなる側から小さくなる側に変化するときの応答時間が、小さくなる側から大きくなる側に変化するときの応答時間よりも短い場合には、前記第1走査において、前記2つの画素の明るさ情報のうち、明るい方の明るさ情報を代表値として決定し、反対の場合には、前記第1走査において、前記2つの画素の明るさ情報のうち、暗い方の明るさ情報を代表値として決定することが好ましい。
また、本発明では、前記第1走査において、前記2つ画素のうち、代表値として決定しなかった画素の情報を、前記第2走査において、対応する画素に書き込んでも良い。なお、本発明は、駆動方法のみならず、電気光学装置としても概念することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0008】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の駆動方法について説明する。図1は、この駆動方法を適用した電気光学装置の一例たるプロジェクタの光学的な構成を示す図である。
この図において、LED11Rは、ダイクロイックプリズム13の中心からみて12時の方向に位置し、図において下方に向けてR(赤)の光を放つ発光ダイオードである。LED11Rにより放たれたRの光は、コリメータレンズ12Rによって、ほぼ平行な光束となる。同様に、LED11G、11Bは、それぞれ9時、6時の方向に位置し、図において右方、上方に向けてG(緑)、B(青)の光を放つ発光ダイオードである。LED11G、11Bにより放たれたG、Bの光についても、それぞれコリメータレンズ12G、12Bによって、ほぼ平行な光束となる。
なお、LED11R、11G、11Bは、後述する制御回路によって順番に発光制御されるので、これら3つのLEDが照射手段となる。
【0009】
ダイクロイックプリズム13は、互いに直交するダイクロイック面13R、13Bを有する。このうち、ダイクロイック面13Rは、12時の方向から入射したR光を反射して3時の方向に出射し、他の色の光を透過する。ダイクロイック面13Bは、6時の方向から入射したB光を反射して3時の方向に出射し、他の色の光を透過する。一方、9時の方向から入射したG光は、ダイクロイック面13R、13Bを透過し、そのまま3時の方向に出射する。
【0010】
ダイクロイックプリズム13の出射面には、表示パネル100が配置する。この表示パネル100は、本実施形態では、例えばアクティブマトリクス型の透過型の液晶表示パネルであり、複数の画素を有する。投射レンズ群14は、表示パネル100によって透過率が画素毎に規定された透過像をスクリーン200に拡大投射する光学系である。
後述するように、フレーム期間をR・G・Bサブフレーム期間に分割するとともに、各サブフレーム期間において、各画素にR・G・Bの原色成分の明るさとなるような電圧を書き込み、この後に、当該原色のLEDを発光させる動作をR・G・Bで繰り返す。このため、R・G・Bの各原色画像が順次表示されて、これらの原色画像が重なってフルカラー画像として視覚されることになる。
【0011】
次に、プロジェクタ10の電気的な構成について図2を参照して説明する。
この図に示されるように、プロジェクタ10は、制御回路20、画像処理回路30、データ信号変換回路40および表示パネル100により構成される。このうち、制御回路20は、上位装置(図示省略)から供給される同期信号Syncに基づいて各部を制御する。
画像処理回路30は、上位装置から供給されるデジタルの映像信号Vidを、一旦内部メモリに記憶した後、制御回路20による制御にしたがって画素の原色成分を読み出して、映像信号Vdとして出力する。
ここで、上記上位装置から供給される映像信号Vidは、表示パネル100の各画素につきR・G・Bの各色成分の明るさ(階調)を指定するデジタルデータであり、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号およびドットクロック信号(図示省略)にしたがって走査される画素の順で供給される。ただし、画像処理回路30において、読み出されて出力される映像信号Vdは、上位装置から供給される画素の順番ではなく、後述するように特定の行(ぎょう)または特定の画素に係るものである。
【0012】
データ信号変換回路40は、画像処理回路30から供給される映像信号Vdを、表示パネル100の駆動に適したアナログのデータ信号Vsに変換して、Yドライバ130およびXドライバ140による駆動タイミングに合わせて表示パネル100に供給する。
【0013】
表示パネル100の表示領域100aでは、例えば768行の走査線112が図において横方向に延在し、また、1024列のデータ線114が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられるとともに、これらの走査線112とデータ線114との交差のそれぞれに対応して、画素110がそれぞれ配設されている。したがって、本実施形態において、画素110は、表示領域100aにおいて縦768行×横1024列のマトリクス状に配列することになる。
なお、便宜的に走査線112を区別するために、以下の説明では図において上から順に1、2、3、…、768行目という呼び方をする場合がある。同様に、データ線114を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、1024列目という呼び方をする場合がある。
【0014】
Yドライバ130は、制御回路20による制御にしたがって各走査線にそれぞれ走査信号を供給する走査線駆動回路であり、選択した走査線に対し選択電圧を、それ以外の走査線に対し非選択電圧を、それぞれ印加する。なお、1、2、3、…、768行目の走査線112に供給される走査信号を、図2において、それぞれG1、G2、G3、…、G768と表記している。
Xドライバ140は、選択された行に対応する画素110の各々に対し、データ信号変換回路40によって変換されたデータ信号Vsを、それぞれデータ線114にサンプリングするデータ線駆動回路である。なお、1、2、3、…、1024列目のデータ線114にサンプリングされるデータ信号を、図2において、それぞれd1、d2、d3、…、d1024と表記している。
【0015】
画素110について図3を参照して説明する。
この図に示されるように、画素110においては、nチャネル型のTFT116のソース電極がデータ線114に接続されるとともに、ドレイン電極が画素電極118に接続される一方、ゲート電極が走査線112に接続されている。
画素電極118は、画素毎に設けられるのに対して、対向電極108は、画素電極118のすべてに対向するように全画素に対して共通に設けられるとともに、一定の電圧LCcomが印加されている。そして、対向電極108と画素電極118との間に液晶105が挟持され、これにより液晶素子120が構成されている。このため、画素毎に、画素電極118、対向電極108および液晶105からなる液晶素子120が設けられることになる。
【0016】
このような構成の液晶素子120は、画素電極118および対向電極108の間で電圧を保持するとともに、透過型であれば、保持した電圧の実効値に応じた透過率となる。これは、液晶素子120において、画素電極118および対向電極108の間で電圧に怖じて、両電極の間に介在する液晶105の分子配向状態が変化するためである。
走査線112に選択電圧を印加させるとともに、選択した走査線112に対応する画素に対して、指定された階調値に応じた電圧のデータ信号をデータ線114に供給すると、選択走査線における画素110のTFT116はオン状態となり、当該データ信号が、オン状態のTFT116を介して画素電極118に印加されるので、液晶素子120に対し、階調値に応じた電圧を印加・保持させて、目的とする階調に応じた透過率とさせることができる。
なお、走査線に非選択電圧を印加して、TFT116をオフ状態とさせても、TFT116がオン状態のときに液晶素子120に書き込まれた電圧は、その容量性によりに保持される。
【0017】
本実施形態では、便宜的に液晶素子120に保持される電圧実効値がゼロに近ければ、光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が減少するノーマリーホワイトモードであるとする。
また、液晶105に直流成分が印加するのを防止するため、データ信号変換回路40は、画素の明るさを指定する映像信号Vdを、画素電極118に印加されることになるデータ信号Vsに、基準電圧Vc(対向電極108の電圧LCcomとほぼ同じ電圧、または、低位の電圧)に対して高位側の正極性電圧と低位側の負極性電圧とに、所定期間(例えば後述するサブフレーム期間、または、フレーム期間)毎に交互に切り替えながら変換する。なお、この極性は、制御回路20によって指定される。
【0018】
図4は、液晶素子120において、電圧変化があったときに経過時間に対する光学応答(透過率)の特性を示す図である。
ノーマリーホワイトモードにおいて、明状態とさせる場合(液晶素子120の透過率を上昇させる場合)には、保持させる電圧の実効値を小さくすれば良いし、反対に、画素110を暗状態とさせる場合(液晶素子120の透過率を低下させる場合)には、保持させる電圧の実効値を大きくすれば良い。このとき、図4に示されるように、電圧変化に対する応答時間は、印加電圧を高くして明状態から暗状態に変化する場合よりも、印加電圧を低くして暗状態から明状態に変化する場合の方がよりも長い。
これは、画素110を明状態とする場合に、暗状態とする場合と比較して、書き込んだ電圧に応じた透過率となるまでに時間を要する、ということを意味する。
このため、本実施形態に係る色順次駆動では、概略的にいえば、低解像画像を形成する際には明状態の画素を優先的に書き込み、その後の高解像度の書き込みを開始するとともに、低解像画像のための書き込みを終了して一定期間経過した後、LEDの発光を開始させるようにしている。
【0019】
以下、本実施形態に係る色順次駆動の詳細について説明する。図5は、本実施形態に係る色順次駆動の概略を示す図である。
この図において、フレーム期間とは、表示パネル100やLED11R、11G、11Bを駆動することによって、カラー画像の1コマ分を表示させるために要する期間をいい、垂直走査周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。なお、同期信号Syncで規定される垂直走査期間とフレーム期間とは、期間長でみれば同一あるが、同期信号Vsyncに同期して供給される映像信号Vidを、一旦、画像処理回路30において記憶した後に読み出すとともに、この読み出しに合わせて、表示パネル100等を駆動するので、タイミング的には、フレーム期間は、垂直走査期間よりも遅延した関係にある。
【0020】
図5に示されるように、フレーム期間が、R・G・Bの3つのサブフレーム期間に等分割されるとともに、R・G・Bサブフレーム期間の各々が、第1走査期間および第2走査期間に分けられる。また、第1走査期間が終了してから待機期間を経て、サブフレームに対応する色のLEDの発光を開始させる。
【0021】
まず、Rサブフレームの第1走査期間(R第1走査期間)では、表示パネル100に対して、R成分の階調に応じたデータ信号を2行ずつまとめて書き込む。詳細には、R第1走査期間において、制御回路20は、Yドライバ130に対して、奇数i(iは、1、3、5、…、767)行と、この奇数i行に対して1行下の偶数(i+1)行との2行に同時に選択電圧を印加する動作を、上から順番に行うように制御することによって、走査信号G1、G2、G3、…、G768を図6に示されるように出力させる一方、Xドライバ140に対して、データ信号Vsを、列毎に1、2、3、…、1024列のデータ線114に順番にサンプリングするように制御する。
この走査信号の出力に合わせて、例えば、奇数i行目と、偶数(i+1)行目とに同時に選択電圧が印加されるとき、制御回路20は、画像処理回路30に対して、内部メモリに記憶された映像信号のうち、i行目と(i+1)行目とにおいて同列に位置する2画素に指定されたR成分の階調を比較して、明るい階調の方を、1、2、3、…、1024列の順番で読み出すように制御するとともに、データ信号変換回路40に対して極性を指定する。
【0022】
この制御によりR第1走査期間では、表示パネル100の同列でみたときに、奇数行と当該奇数行に下方に隣接する偶数行との2画素に対して、明るい階調の方の画素に対応したデータ信号が同時に書き込まれる。このため、各画素110には、縦方向の解像度が半分に低下した画像であってR成分の階調に応じた電圧が書き込まれたことになる。
なお、R第1走査期間では、2行の走査線を同時に選択しているので、R第1走査期間に要する時間は、1行ずつ順番に選択する場合と比較して半分になる。
【0023】
次に、Rサブフレームの第2走査期間(R第2走査期間)では、表示パネル100の各画素110にR成分の階調に応じたデータ信号を順番に書き込む。詳細には、R第2走査期間において、制御回路20は、Yドライバ130に対して、走査線を上から1行ずつ順番に選択電圧を印加するように制御することによって、走査信号G1、G2、G3、…、G768を図7に示されるように出力させる一方、Xドライバ140に対して、データ信号Vsを、列毎に1、2、3、…、1024列のデータ線114に順番にサンプリングするように制御する。
この走査信号の出力に合わせて、例えば、ある行の走査線に選択電圧が印加されるとき、制御回路20は、画像処理回路30に対して、内部メモリに記憶された映像信号のうち、その行において1、2、3、…、1024列の画素に対応するR成分の階調を順番で読み出すように制御するとともに、データ信号変換回路40に対して極性を指定する。
【0024】
この制御によりR第2走査期間では、各画素110には、それぞれR成分の階調に応じたデータ信号の電圧が書き込まれることになる。なお、R第1走査期間において書き込みがなされた画素については、R第2走査期間においても再度同じ階調に応じたデータ信号の電圧が書き込まれることになる。
【0025】
一方、制御回路20は、R第1走査期間が終了してからR待機期間経過したとき、LED11Rの発光を開始させて、その発光をR発光期間だけ継続する。
R第1走査期間において、光学応答が遅い明状態の画素が優先的に書き込まれ、当該画素については、R第2走査期間において再び同じ信号が書き込まれるので、R発光期間においては、書き込まれた電圧に応じた透過率となっていると考えられる。また、暗状態の画素については、明状態の画素よりも遅いR第2走査期間において書き込まれるが、光学応答が速いので、少なくともR発光期間の終了までには、書き込まれた電圧に応じた透過率となっていると考えられる。
【0026】
なお、G・Bサブフレーム期間においても、Rサブフレーム期間と同様な動作である。
このため、Rサブフレーム期間ではR成分の画像が、Gサブフレーム期間ではR成分の画像が、Bサブフレーム期間ではR成分の画像が、それぞれ順番に表示されるので、人間には、これらの原色画像が重なってフルカラー画像として視覚されることになる。
【0027】
図5において、R・G・B第1走査期間およびR・G・B第2走査期間の右下がりの直線は、走査線の選択行が時間経過とともに上から下方向に進行していることを示している。走査線の選択期間は、実際には短い直線であるが、時間軸に比べて十分に短いので、これを連続的な斜め直線としている。
また、R発光期間、G発光期間、B発光期間は、各原色の照射強度が均等になるように、換言すれば、ホワイトバランスが崩れるのを防止するために互いに同一期間に設定される。
【0028】
ここで、第1実施形態による色順次駆動により、どのような画像が視認されるについて図8を参照して説明する。なお、図8では、(a)で示した原画像を表示するものとする。また、ここでは、色成分についてはR・G・Bのうちのいずれかとして、特定はしないことにする。
【0029】
まず、第1走査期間では、表示パネル100でみたときに、奇数行と当該奇数行に下方に隣接する偶数行との縦方向に隣接する同列の2画素に対して、明るい階調の方のデータ信号を書き込む。
例えば(a)で示す原画像において、1行3列の画素は□で示されるように明状態であり、2行3列の画素は■(黒塗りの□)の暗状態であるので、1・2行目の走査線が選択されるときに、(b)で示されるように、3列目については、1行3列の明状態の画素に対応する映像信号を変換したデータ信号が1行3列および2行3列の画素110に書き込まれる。
なお、図において「+」は、縦方向に隣接する2画素のうち、読み出される方の画素(サンプリング画素)を示している。
また、原画像において、5行2列および6行2列の画素はいずれも■の暗状態であるので、5・6行目の走査線が選択されるときに、いずれか一方、ここでは上方に位置する画素に対応する映像信号を変換したデータ信号が(b)において5行2列および6行2列の画素110に書き込まれる。なお、(b)において■の暗状態に相当するデータ信号が書き込まれた画素については、ハッチングを付した□で示している。
【0030】
次に、第2走査期間では、1行ずつの走査線によって、映像信号Vidで示される(原色成分)の画像が、それぞれ各画素110に対して一対一に書き込まれるので、(c)で示されるように、(原色成分)の画像が、そのまま各画素110によって形成される。
【0031】
このように本実施形態によれば、R・G・B第1走査期間において、光学応答の遅い明状態となる画素への優先した書き込みにより、映像信号Vi dで規定される画像よりも低解像度の画像を形成し、この後に、R・G・B第2走査期間において、映像信号Vidで規定される解像度の画像を形成して、第1走査期間よりも解像度を高くするとともに、第1走査期間が終了してから待機期間を経て、第2走査期間の途中でLEDの発光を開始させる。このため、長い発光期間によって、明るい画面が表示可能となるとともに、光学応答が不充分な状態での光の照射を回避して、書き込んだ内容とは異なる画像が視認されてしまうことを防止することが可能となる。
【0032】
なお、上述した第1実施形態では、第1走査期間において、奇数行とこれに続く偶数行との2行を同時に選択したが、1・2・3行、4・5・6行、7・8・9行、…、766・768・768行というように、隣接する3行を同時に選択しても良いし、4行以上同時に選択しても良い。3行以上同時に選択する場合であっても、第1走査期間において、3対以上の画素のうち、光学応答が遅い方の状態となる画素の映像信号を変換したデータ信号を書き込めば良い。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る色順次駆動について説明する。図9は、第2実施形態に係る色順次駆動の概略を示す図である。
この図に示されるように、第2実施形態ではR・G・B第2走査期間が、第1実施形態よりも短くなっている。また、第2実施形態では、図9では区別できないが、R・G・B第1走査期間も、第1実施形態と異なっている。そこで以下、これらの相違点を中心にして、第2実施形態に係る色順次駆動について説明することにする。
【0034】
まず、Rサブフレーム期間でみたときに、R第1走査期間において、制御回路20が、Yドライバ130に対して、奇数i(iは、1、3、5、…、767)行と、この奇数i行に対して1行下の偶数(i+1)行との2行に同時に選択電圧を印加する動作を、上から順番に行うように制御することによって、走査信号G1、G2、G3、…、G768を図6に示されるように出力させるとともに、データ信号変換回路40に対して極性を指定し、さらに、Xドライバ140に対して、データ信号Vsを、1、2、3、…、1024列のデータ線114に順番にサンプリングするように制御する点は、第1実施形態と共通である。
【0035】
ただし、奇数i行目と、偶数(i+1)行目とに同時に選択電圧が印加されるとき、制御回路20は、画像処理回路30に対して、内部メモリに記憶された映像信号のうち、次のような判断基準で、当該奇数i行目または偶数(i+1)行目のいずれかの行を選択して、選択した方の画素1行分を、1、2、3、…、1024列の順番で読み出すように制御する点で、第1実施形態と相違する。
すなわち、ここでいう判断基準とは、同時に選択される奇数i行目の画素1行分と、偶数(i+1)行目の画素1行分との階調同士を比較したときに、どちらの行が明るいかを判別して、明るいと判別した方の行を選択する、というものである。
なお、どちらの行が明るいかの判断としては、例えば、階調値を1行分累積して、その累積値の大小を判断したり、階調値が予め定められたしきい値を越える画素数の大小を判断したりすることなどが挙げられる。
【0036】
次に、R第2走査期間において制御回路20は、Yドライバ130に対して、R走査第1期間において同時に選択した奇数行および当該奇数行に続く偶数行のうち、映像信号を読み出さなかった方の行の走査線を上から順番に選択するように制御するとともに、画像処理回路30に対して、内部メモリに記憶された映像信号のうち、選択される行の映像信号を、1、2、3、…、1024列の順番で読み出すように制御し、データ信号変換回路40に対して極性を指定する。
第2実施形態におけるR第2走査期間で選択される走査線の数は、R第1走査期間で映像信号を読み出さなかった方の走査線の数であるから、全768行の半分である。したがって、第2実施形態におけるR第2走査期間は、第1実施形態におけるR第2走査期間の半分であり、R第1走査期間と等しいことになる。
【0037】
では次に、第2実施形態による色順次駆動により、どのような画像が視認されるについて図10を参照して説明する。なお、図10においても、(a)で示した原画像を表示するものとし、色成分については特定しないことにする。
【0038】
まず、第1走査期間では、表示パネル100でみたときに、奇数行と当該奇数行に下方に隣接する偶数行とが同時に選択されるが、書き込まれるデータ信号は、明るい方の行の画素に対応するものである。
(a)で示す原画像において、例えば1行目および2行目を比較したとき、明状態の□の数は、1行目の方が多いので、1・2行目の走査線が選択されるときには、(b)で示されるように、1行目の画素に対応して読み出された映像信号を変換したデータ信号が書き込まれる。
また、原画像において、3行目および4行目を比較したとき、明状態の□の数は互いに等しいので、3・4行目の走査線が選択されるときに、いずれか一方、ここでは上方に位置する3行目の画素に対応する映像信号を変換したデータ信号が書き込まれる。原画像において、5行目および6行目を比較したとき、明状態の□の数は6行目の方が多いので、5・6行目の走査線が選択されるときには6行目の映像信号を変換したデータ信号が書き込まれる。原画像において、7行目および8行目を比較したとき、明状態の□の数は互いに等しいので、7・8行目の走査線が選択されるときに、ここでは上方に位置する7行目の画素に対応する映像信号を変換したデータ信号が書き込まれる。なお、(b)において■の暗状態に相当するデータ信号が書き込まれた画素については、ハッチングを付した□で示している。
【0039】
次に、第2走査期間では、R走査第1期間において同時に選択した奇数行および当該奇数行に続く偶数行のうち、映像信号が読み出されなかった方の行の走査線が上から順番に選択される。R第1走査期間では、1、3、6、7、…行目の映像信号が読み出されたので、このR第2走査期間では、(c)で示されるように、2、4、5、8、…行目の走査線が選択されて、選択された行の映像信号が読み出されるとともに、データ信号に変換されて書き込まれることになる。
ここで、(c)において、例えば2行4列、4行3列、4行5列の画素について、第1走査期間において暗状態となる書き込みがなされた後、第2走査期間において光学応答の遅い明状態となる書き込みがなされるので、書き込みに応じた光学応答となっていない可能性が高いが、その他の画素については、書き込みに応じた光学応答となっている、と考えられる。
このため、第2実施形態においても、長い発光期間によって、明るい画面が表示可能となるとともに、光学応答が不充分な状態での光の照射を回避して、書き込んだ内容とは異なる画像が視認されてしまうことを防止することが可能となる。
【0040】
なお、第2実施形態においても、第1走査期間において、3行以上同時に選択しても良い。3行以上同時に選択する場合であっても、光学応答が遅い方の画素が支配的な行の映像信号を読み出すとともに、当該映像信号を変換したデータ信号を書き込めば良い。また、この場合、第2走査期間では、第1走査期間において読み出されなかった行の走査線を順番に選択すれば良い。
【0041】
また、上述した実施形態においては、明状態への変化する際の光学応答が、暗状態への変化する際の光学応答よりも遅い場合を想定して説明したが、反対に、暗状態への変化する際の光学応答が、明状態への変化する際の光学応答よりも遅い場合では、暗い画素を優先させて読み出して書き込むようにすれば良い。
【0042】
上述した実施形態では、実施形態では、用いる原色をR・G・Bの3色として、フレーム期間をこれらの色に対応して3つのサブフレーム期間に分けたが、原色を4つ以上として、フレーム期間をこれら用いる原色に対応して4つ以上のサブフレーム期間に分けても良い。例えばR・G・Bのうち、Gを、短波長寄りのYG(黄緑)と、長波長寄りのEG(エメラルドグリーン)に分けて、これらの4色として、フレーム期間をこれらの色に対応して4つのサブフレーム期間に分けても良い。
なお、原色を4つ以上とする場合、ダイクロイックプリズムが2以上必要となる。上述したR、YG、EG、Bを用いる場合であれば、図1においてダイクロイックプリズム13の9時方向に、別のダイクロックプリズムを配置させて、このうち、2面でYG、EG光を入射して、ダイクロイックプリズム13に導く構成とすれば良い。
表示パネル100の透過像を拡大投射する投射型ではなくて、バックライトの光源を原色毎に切り替える直視型にも適用可能である。また、画素110については透過型に限られず、反射型であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態に係る駆動方法が適用されるプロジェクタの構成を示す図である。
【図2】同プロジェクタの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】同プロジェクタの表示パネルにおける画素の構成を示す図である。
【図4】同表示パネルにおける画素(液晶素子)の光学応答を示す図である。
【図5】同駆動方法を示す図である。
【図6】同駆動方法の第1走査を示す図である。
【図7】同駆動方法の第2走査を示す図である。
【図8】同駆動方法による表示例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る駆動方法を示す図である。
【図10】同駆動方法による表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10…プロジェクタ、11R、11G、11B…LED、20…制御回路、30…画像処理回路、100…表示パネル、105…液晶、120…液晶素子、130…Yドライバ、140…Xドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが書き込まれた情報に応じた透過率または反射率となる複数の画素と、
前記複数の画素に対して、互いに異なる少なくとも3つの原色の光を順次照射する照射手段と、
を備え、
単位期間を前記原色に対応させたサブフレーム期間に分割し、
各サブフレーム期間において、前記複数の画素に対し、第1走査と当該第1走査に続く第2走査とによって当該サブフレーム期間に対応する原色成分の情報を書き込み、
前記第1走査において、互いに隣接する2以上の画素に対して同一の情報を書き込んで、前記複数の画素で規定される解像度よりも低い解像度の画像を形成し、
前記第1走査において前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素のいずれかの画像情報のなかから、当該2以上の画素の画像情報に基づいて決定し、
前記第2走査によって、前記低い解像度よりも高い解像度の画像を形成し、
前記第1走査の後、次のサブフレーム期間における第1走査の前に、前記照射手段が当該原色の光を前記複数の画素に照射する
ことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項2】
前記複数の画素は、それぞれ液晶素子を含み、
前記液晶素子の透過率または反射率が大きくなる側から小さくなる側に変化するときの応答時間が、小さくなる側から大きくなる側に変化するときの応答時間よりも短い場合には、
前記第1走査において、前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素の画像情報のうち、最も明るい画素の画像情報とし、
反対の場合には、
前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素の画像情報のうち、最も暗い画素の画像情報として決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項3】
前記第1走査において前記2以上の画素において、書き込まれなかった画素の情報を、前記第2走査において、対応する画素に書き込む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項4】
前記複数の画素は、
複数行の走査線および複数列のデータ線との交差に対応して配列するとともに、前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号の電圧が書き込まれるものであり、
前記第1走査において、奇数行の走査線と当該奇数行の走査線に対し隣接する偶数行の走査線とを組として、所定方向に順番に、同時に選択し、
一の組の奇数行および偶数行の走査線を同時に選択したときに、当該2行の走査線と一のデータ線との交差に対応する2つの画素の明るさ情報を比較して、いずれかの明るさ情報を代表値として決定し、
前記代表値として決定した明るさ情報に基づいた電圧のデータ信号を、前記一のデータ線に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
前記複数の画素は、それぞれ液晶素子を含み、
前記液晶素子の透過率または反射率が大きくなる側から小さくなる側に変化するときの応答時間が、小さくなる側から大きくなる側に変化するときの応答時間よりも短い場合には、
前記第1走査において、前記2つの画素の明るさ情報のうち、明るい方の明るさ情報を代表値として決定し、
反対の場合には、
前記第1走査において、前記2つの画素の明るさ情報のうち、暗い方の明るさ情報を代表値として決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項6】
前記第1走査において、前記2つ画素のうち、代表値として決定しなかった画素の情報を、前記第2走査において、対応する画素に書き込む
ことを特徴とする請求項4または5に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項7】
それぞれが書き込まれた情報に応じた透過率または反射率となる複数の画素と、
前記複数の画素に対して、互いに異なる少なくとも3つの原色の光を順次照射する照射手段と、
単位期間を前記原色に対応させたサブフレーム期間に分割し、
各サブフレーム期間において、前記複数の画素に対し、第1走査と当該第1走査に続く第2走査とによって当該サブフレーム期間に対応する原色成分の情報を書き込み、
前記第1書込において、互いに隣接する2以上の画素に対して同一の情報を書き込んで、前記複数の画素で規定される解像度よりも低い解像度の画像を形成し、
前記第1走査において、互いに隣接する2以上の画素に対して同一の情報を書き込んで、前記複数の画素で規定される解像度よりも低い解像度の画像を形成し、
前記第1走査において前記2以上の画素に書き込む情報を、当該2以上の画素のいずれかの画像情報のなかから、当該2以上の画素の画像情報に基づいて決定し、
前記第2走査によって、前記低い解像度よりも高い解像度の画像を形成する駆動回路と、
前記照射手段に対し、前記第1走査の後、次のサブフレーム期間における第1走査の前に、前記照射手段が当該原色の光を前記複数の画素に照射するように制御する制御回路と、
を具備することを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−107581(P2010−107581A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277068(P2008−277068)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】