説明

駆動装置

【課題】対象物の回転角度位置を素早くかつ精度よく調整でき、更に、操作性が高く小型化が可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置10は、回転シャフト17と、回転シャフト17を回転駆動する操作ユニット30とを備える。回転シャフト17は、表面にウォームホイール18を有し、静止部材13によって回転可能に軸支される。操作ユニット30は、固定部材31と、ハンドル32と、ウォーム33とを有する。固定部材31は、回転シャフト17に固定される。ハンドル32は、固定部材31によって回転シャフト17の軸と略直交方向に延びる軸周りに回転可能に支持される。ウォーム33は、ハンドル32の回転軸と同軸に形成され、ウォームホイール18と噛み合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、更に詳しくは、ウォームギヤを有する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置には、例えば、ウォームとウォームホイールとからなるウォームギヤを有し、対象物の位置や回転角度を調整する駆動に際して、微調整を行うものが知られている。
【0003】
特許文献1には、デジタル通信用装置において回転角度を微調整する微調整用ドライバーが記載されている。微調整用ドライバーには、柄の先端側の内部にウォームギヤが配置されており、ウォームギヤには、ウォームの回転軸に固定された調整用つまみと、ウォームホイールの回転軸に固定されたドライバー着脱部とが付属している。
【0004】
この微調整用ドライバーでは、作業者は、使用に際してドライバー着脱部にドライバーを装着する。次いで、作業者は、柄を把持しドライバー先端を回転角度の調整箇所に当接させた状態で、調整用つまみを回転させる。調整用つまみの回転に伴って、ウォームとウォームホイールとの回転比に従いドライバーの回転が調整され、回転角度の微調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−047868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記微調整用ドライバーとは別に、例えば回転軸の回転角度や対象物の位置の粗調整及び微調整を行うための駆動装置について、簡単な構成でこれを実現することが求められる。上記微調整用ドライバーを回転軸の粗調整及び微調整が可能な駆動装置に適用すると、以下の問題がある。
【0007】
上記公報記載の微調整用駆動装置は、柄と調整用つまみとが別体であるので、操作に際して両手が必要になり煩雑である。また、柄とは別体である調整用つまみを配置することで、微調整用ドライバーが大型化してしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、対象物の回転角度位置を素早くかつ精度よく調整でき、更に、操作性が高く小型化が可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、表面にウォームホイールを有し、静止部材によって回転可能に軸支される回転シャフトと、
前記回転シャフトを回転駆動する操作ユニットとを備え、
前記操作ユニットは、前記回転シャフトに固定される固定部材と、該固定部材によって前記回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りに回転可能に支持されるハンドルと、該ハンドルの回転軸と同軸に形成され、前記ウォームホイールと噛み合うウォームとを有することを特徴とする駆動装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の駆動装置では、対象物の回転角度位置を素早くかつ精度よく調整でき、更に、操作性が高く小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成を示す正面図。
【図2】図1に示す駆動装置をA方向から見た側面図。
【図3】図1に示す駆動装置をB方向から見た側面図。
【図4】クランク機構に代えてカム機構を備えた駆動装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の駆動装置は、最小構成として、回転シャフトと、回転シャフトを回転駆動する操作ユニットとを備える。回転シャフトは、表面にウォームホイールを有し、静止部材によって回転可能に軸支される。操作ユニットは、固定部材と、ハンドルと、ウォームとを有する。固定部材は、回転シャフトに固定される。ハンドルは、固定部材によって回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りに回転可能に支持される。ウォームは、ハンドルの回転軸と同軸に形成され、ウォームホイールと噛み合う。
【0013】
上記駆動装置では、ハンドルを固定部材と共に回転シャフトの軸周りに回転させると、ウォームホイール、回転シャフト、ウォーム及びハンドルが一体となって、回転シャフトの軸周りに回転する。これにより、回転シャフトの回転角度位置が粗調整される。また、ハンドルを回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りに回転させると、ハンドルの回転軸と同軸に形成されたウォームが回転し、さらにウォームとの回転比に従いウォームホイール及び回転シャフトが回転する。これにより、回転シャフトの回転角度位置が微調整される。なお、駆動対象物は、回転シャフトに直接取り付けてもよく、或いは、動力伝達機構を介して駆動してもよい。
【0014】
ここで、回転シャフトの回転運動を往復運動に変換するクランク機構又はカム機構を回転シャフトに設け、これらの機構で対象物を上下方向に駆動する場合を想定する。この場合には、まず、ハンドルを回転シャフトの軸周りに回転させて、対象物の位置決めを粗く行い、その後で、ハンドルを回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りに回転させる。回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りにハンドルが回転すると、ウォームが回転し、ウォームとウォームホイールとの回転比に従い、回転シャフトの回転角度が微調整できるので、対象物の位置を微調整できる。つまり、ハンドルの回転方向を変えるだけで、回転シャフトの回転量が調整され、粗調整及び微調整を行うことができる。このため、対象物の位置決めを素早くかつ精度よく行うことができる。また、駆動装置の操作性も向上し、その小型化も可能となる。
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置の構成を示す正面図である。図2は、図1に示す駆動装置をA方向から見た側面図であり、便宜上、一部の部材を除いて示している。図3は、図1に示す駆動装置をB方向から見た側面図である。駆動装置10は、例えば、スライドブロック11に載置された対象物を上下方向に駆動する位置決め用の駆動装置である。対象物としては、通信機器を設置する際に用いられる同軸ケーブル等が挙げられるが、特に限定されない。
【0016】
駆動装置10は、ベース12と、ベース12上に設置された支持ブロック13,14と、支持ブロック13,14に支持された支柱15,16と、支柱15,16が挿通されて上下方向に移動可能な上記スライドブロック11とを備える。また、駆動装置10は、支持ブロック13によって回転可能に軸支された回転シャフト17を備える。回転シャフト17は、一端側に、回転シャフト17の回転運動を上下方向に沿った往復運動に変換するクランク機構20が設けられ、他端側に、回転シャフト17を回転駆動する操作ユニット30が設けられている。回転シャフト17は、他端側の表面にウォームホイール18を有する。また、支持ブロック13が静止部材を構成する。
【0017】
クランク機構20は、例えば図1,図3に示すように、クランク21,22と、リンク23,24とを備える。クランク21は、一端が回転シャフト17に角度調整可能な状態で締結され、他端がリンク23を介してクランク22の一端に回転可能に接続されている。クランク22は、他端がリンク24を介してジョイント25に接続されている。ジョイント25は、上下方向に移動可能な状態でリンク24に取り付けられ、また、上面にはスライドブロック11が取り付けられている。
【0018】
操作ユニット30は、例えば図1,図2に示すように、回転シャフト17に固定されるホルダ31と、ハンドル32と、ウォームホイール18と噛み合うウォーム33とを有する。ホルダ31は、環状に形成された部材であり、ウォームホイール18及びウォーム33を、回転シャフト17の軸周りに一体的に取り囲んでいる。また、ホルダ31には、図1に示すように、回転シャフト17の他端に接するカバー34が設置されている。ウォーム33は、ハンドル32の中心軸と同軸に形成されている。また、ウォーム33とウォームホイール18との回転比は、一例として、20:1とするが、これに限定されない。
【0019】
ハンドル32は、支持ブロック13に軸支された回転シャフト17に固定されるホルダ31に支持されている。このため、ハンドル32は、図2の矢印C1,C2に示すように、回転シャフト17の軸周り(以下、第1方向)にホルダ31と共に回転可能である。更に、ハンドル32は、ホルダ31によって、回転シャフト17の回転軸と略直交方向に延びる中心軸周り(以下、第2方向)に回転可能に支持されている。このため、ハンドル32は、図2の矢印D1,D2に示す第2方向にも回転可能である。また、ハンドル32は、ホルダ31から外側に突出した長尺状の部材であり、作業者が把持し易い形状となっている。
【0020】
以下、駆動装置10の動作を説明する。ここでは、図3に示す状態を基準として、スライドブロック11に載置された対象物を上昇させて位置決めを行う場合について説明する。まず、作業者がハンドル32を把持し、ハンドル32を第1方向C1に回転させると、ホルダ31、ウォーム33及びウォームホイール18が一体となって第1方向C1に沿って回転し、ウォームホイール18と共に回転シャフト17が第1方向C1に回転する。このとき、ウォーム33は第2方向に回転していないので、回転シャフト17の回転量は、ハンドル32の第1方向C1への回転角度で決定される。
【0021】
次に、回転シャフト17の回転運動は、クランク機構20に伝達される。即ち、クランク21が図3から見て反時計回りに回転する。クランク21が反時計回りに回転すると、クランク22がリンク23を介して上方向に押されて、ジョイント25がリンク24を介して上方向に移動する。このため、スライドブロック11は、支柱15,16に案内されて上昇する。このように、駆動装置10では、ハンドル32が第1方向C1に回転すると、スライドブロック11に載置された対象物を上昇させることができる。以下、ハンドル32の第1方向への回転に伴うスライドブロック11の移動を第1動作という。
【0022】
続いて、作業者がハンドル32を第2方向D1に回転させると、ハンドル32に同軸に形成されたウォーム33が第2方向D1に回転する。ウォーム33の第2方向D1への回転に伴い、ウォームホイール18が、例えば図2で見て時計回り(即ち第1方向C1)に回転する。ウォーム33とウォームホイール18との回転比が、上記したように、20:1であるから、ウォーム33の回転角度に対するウォームホイール18の回転角度は1/20となり、回転シャフト17の回転角度の微調整が可能となる。
【0023】
回転シャフト17は、第1方向C1に回転しているので、クランク21が図3から見て上記同様に反時計回りに回転し、クランク機構20により、スライドブロック11が支柱15,16に案内されて上昇する。以下、ハンドル32の第2方向への回転に伴うスライドブロック11の移動を第2動作という。
【0024】
第2動作では、ウォーム33の回転角度、及びウォーム33とウォームホイール18との回転比によって、回転シャフト17の回転量が決定される。このため、第2動作では、第1動作に比べてスライドブロック11の上昇量を微調整できる。つまり、駆動装置10では、第1動作で粗調整を行い、その後で、第2動作で微調整を行うことで、対象物を上昇させる際に、素早くかつ精度よく位置決めできる。
【0025】
次に、図3に示す状態を基準にして、スライドブロック11を下降させる場合について説明する。第1動作では、ハンドル32を第1方向C2に回転させると、回転シャフト17が図3から見て時計回りに回転する。この回転シャフト17の回転運動は、クランク機構20に伝達され、クランク21が時計回りに回転することで、クランク22が押下げられて、ジョイント25と共にスライドブロック11が下降する。
【0026】
続いて、第2動作では、ハンドル32を第2方向D2に回転させると、ウォームホイール18がウォーム33との回転比に従いながら、例えば図2から見て反時計回り(即ち第1方向C2)に回転することで、回転シャフト17が図3から見て時計回りに回転する。回転シャフト17の回転運動は、クランク機構20に伝達されて、上記同様に、スライドブロック11が下降する。このように、駆動装置10では、対象物を下降する場合でも、第1動作でハンドル32を第1方向C2に回転させることで粗調整を行い、その後で、第2動作でハンドル32を第2方向D2に回転させることで微調整を行う。このため、駆動装置10は、対象物を下降させる際に、素早くかつ精度よく位置決めできる。
【0027】
本実施形態では、ハンドル32を第1方向C1,C2に回転させて上下方向の粗調整を行った後で、更に、ハンドル32を第2方向D1,D2に回転させて上下方向の微調整を行う。つまり、本実施形態では、ハンドル32を操作するだけで、クランク機構20が形成する一定の範囲内で、対象物を任意の位置に素早くかつ精度よく位置決めでき、また、操作性も向上する。さらに、回転シャフト17を回転駆動する操作ユニット30は、部品点数も少なく、構造が簡素化されているので、小型化、低コスト化、及び保守性の向上も図ることができる。
【0028】
上記実施形態では、回転シャフト17の一端部にクランク機構20を設置して、回転シャフト17の回転運動を往復運動に変換してスライドブロック11を上下方向に移動する構成について説明したが、これに限定されない。即ち、図4に示すように、クランク機構20に代えて、カム機構40を用いてもよい。
【0029】
駆動装置10Aは、図4に示すように、回転シャフト17の一端をカム軸41とするカム42を有する点で、上記駆動装置10と異なる。また、カム42の周縁部43は、ジョイント25の下面に接触している。駆動装置10Aでは、ハンドル32の操作に伴って、カム軸41が回転すると、カム42の周縁部43に対応したカム曲線に従って、ジョイント25が上下方向に移動する。このため、駆動装置10Aでは、クランク機構20に比べて、部品点数を少なくした簡素な構成でありながら、スライドブロック11に載置された対象物を素早くかつ精度よく位置決めできる。
【0030】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の駆動装置は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10,10A:駆動装置
11:スライドブロック
12:ベース
13,14:支持ブロック
15,16:支柱
17:回転シャフト
18:ウォームホイール
20:クランク機構
21,22:クランク
23,24:リンク
25:ジョイント
30:操作ユニット
31:ホルダ
32:ハンドル
33:ウォーム
34:カバー
40:カム機構
41:カム軸
42:カム
43:カムの周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にウォームホイールを有し、静止部材によって回転可能に軸支される回転シャフトと、
前記回転シャフトを回転駆動する操作ユニットとを備え、
前記操作ユニットは、前記回転シャフトに固定される固定部材と、該固定部材によって前記回転シャフトの軸と略直交方向に延びる軸周りに回転可能に支持されるハンドルと、該ハンドルの回転軸と同軸に形成され、前記ウォームホイールと噛み合うウォームとを有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記回転シャフトの回転運動を往復運動に変換するクランク機構を更に備える、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記回転シャフトの回転運動を往復運動に変換するカム機構を更に備える、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記固定部材が、前記ウォームホイールと前記ウォームとを、前記回転シャフトの軸周りに一体的に取り囲む環状部材である、請求項1〜3の何れか一に記載の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−286070(P2010−286070A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141139(P2009−141139)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】