説明

駆動輪のシール構造

【課題】従来の駆動輪は、車輪に隣接する変速機を備え、出力内歯車に車輪を嵌め込む機構のため大型化して、また、シール構造も大径にして部品価格も高価になり、車輪幅も広げることができなかった。そのために、過重量の積載になり、油漏れの原因になり、修理にも時間と費用を要していた。本発明では、車輪の幅を広げて、広げたホイール内に減速機を内蔵して、油漏れ防止を強化する構成を提供する。
【解決手段】本発明の車輪は、回転体6に電動モータ4の回転を入力するケース本体13で覆われた減速機5を内蔵して、該減速機5から突出する出力側をシール付き軸受14で前記枠体3の一端に配置して支持すると共に、他端を減速機5の入力側をシール付き軸受14で枠体3に配置して支持し、車体を走行可能にし、前記軸受14の一端と他端には、内周面にシール部材20を配置する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車の駆動輪であり、駆動輪の全体の大きさを変えることなく、車輪の幅を広げることができ、剛性も高めることができ、もし減速機に油漏れが発生しても、外部に流出することを防止する車輪の内部を密閉するシールの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動輪2は、ホイール3に内蔵する変速機5を備え、該変速機5に入力する電動モータ6を接続し、電動モータ6にブレーキ7を備えて形成し、前記変速機5の密閉したケース本体25にパイプ管18で連結する圧力除去缶19は大気に接する透孔を備え、ケース本体25内の潤滑油Oにパイプ管18の一端を挿入し、パイプ管18の他端を該圧力除去缶19の底面に配置する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2010−78131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この駆動輪は、車輪に隣接する変速機を備え、この変速機が段車により減速する機構であり、出力内歯車に車輪を嵌め込む機構のため大型化して、また、シール構造も大径にして部品価格も高価になり、車輪幅も広げることができなかった。そのために、過重量の積載をすることが多いとき、車輪が剛性に耐えられなくシールに異常を生じ油漏れの原因になり、修理にも時間と費用を要していた。
【0005】
本発明では、車輪の幅を広げて、広げたホイール内に減速機を内蔵して、この減速機のシールにより油漏れを防止して、さらに、このホイールをシールで密閉する軸受を形成することで、油漏れ防止を強化する構成にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では電動モータの駆動回転で走行する搬送台車の車輪からの油漏れを防止するシールの構造に関するものである。この車輪は、車体を支持して搬送可能にする枠体を備え、この枠体に進行方向へ駆動回転する回転体を備えている。前記回転体は、電動モータの回転を入力するケース本体で覆われた減速機を内蔵している。
この減速機は、突出する出力側をシール付き軸受で前記枠体の一端に配置して支持している。そして、減速機の他端は、入力側をシール付き軸受で枠体に配置して支持して、外周面をホイールで嵌着してタイヤを形成し、車体を走行可能にする。前記軸受は、一端と他端に、外部へ流出する側にシール部材を配置して密閉する構成とする。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1のシール部材は、減速機のケース本体を支持する両側板に配置する軸受を密閉する構成とする。
【0008】
請求項3の発明では、請求項2の減速機は、両端を前記ホイールで密閉して、軸心の一線上にホイールを駆動輪として形成し、この軸心を中心に駆動回転する構成とする。
請求項4の発明では、請求項1の軸受を外部に露出するときは、車輪の外装側を避けて内装側にシール部材を配置している構成とする。
【0009】
請求項1の構成では、車輪の内部に減速機を備え、この車輪を覆うように軸受を備え、この軸受をシールすることで、減速機から油漏れが発生しても内部全体が密閉されて、外部に漏らすことがない作用がある。
請求項2の構成では、車輪からの油漏れを防ぐことができる作用がある。
請求項3の構成では、同軸上の全体を覆うホイールで形成することができるので、車輪幅を広くできる作用がある。
請求項4の構成では、車輪が障害物に接触したときに、シール部材に直接の損傷を無くすことができる作用がある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、油漏れの原因になる潤滑油を備えた減速機を車輪に内蔵して、小型化することができるとともに、シールで覆うことで減速機のシールと車輪の軸受のシートとで二重に対策することになり、外部に漏れるのを防止できる効果がある。
請求項2の発明では、シール用の軸受をさらにシールして、油漏れを何重にも防ぐことができる効果がある。
【0011】
請求項3の発明では、駆動部が車輪の軸心に沿って配置されるので、搬送台車を低くすることができ、荷物の積み下ろしが容易にできる効果がある。
請求項4の発明では、走行中に外装が接触することがあっても、シールの損傷を防ぐことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 搬送台車の正面図。
【図2】 駆動装置の正面断面図。
【図3】 回転体の軸受とシール部材を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、搬送台車1の駆動輪2を荷台7の下面に旋回可能に配置して、電動モータ4を駆動源にして、減速機5を介して駆動回転させ、床面GLを走行するタイヤ8を備えており、この減速機5からの油漏れの対策をした駆動輪2のシール構造の構成について、一実施形態を示して説明する。
【0014】
図1は、搬送台車1を示し、平面状の荷台7を備え、荷台7の下面に駆動輪2を複数台に配置して、図示略の制御により電源の供給と信号を伝達して、駆動輪2の旋回と回転数を制御して目的地に走行可能にしている。駆動輪2は、ウレタン・ゴム等の重量に耐えることができる材質にしたタイヤ8を駆動回転させて、通路GLを走行して荷台7に搭載した搭載物22を搬送することができる。荷台7は、低い位置にすることで、搭載物22の積み下ろしが楽になるため、駆動輪2を小径にする必要があり、電動モータ4と減速機5とタイヤ8を小型化して配置する。
【0015】
タイヤ8は、小径のため、走行距離に対して回転量が多く通路GLの衝撃振動も多くなり、減速機5のシール効果が下がり少量の潤滑油が漏れることがあるが、ホイール16内に密閉するように両端をシール付きの軸受14を嵌着しているため、この軸受14で油漏れを止めることができ、外部に流出するのを防ぐ。さらに、この軸受14をシール部材20で密閉することで、油漏れがあっても外部に流出することがなく、もしもこの軸受14からグリスが漏れても、外部に流出するのを塞ぐために、安全に走行することができる。
【0016】
タイヤ8は、操舵の旋回が多いと偏磨耗により交換を要することになり、このタイヤ交換に要する時間が長いと一台あたり4輪あるとして、4輪の交換を必要にし、数週間停止状態になり、稼働率が下がり仕事に悪影響を与える。対策として従来は、駆動輪2の全体を一式交換することにして、時間は短いが費用が高く、ランニングコストが上がる欠点を持っていた。本発明の駆動輪2のタイヤ8は、その場で短時間に新しいタイヤ8と入れ替えることができ、費用も安く、直ぐに運転可能になり稼働率を上げることができる。
【0017】
図2は、駆動輪2の構造を説明するもので、荷台7にボルトで固着する回転ベース21を枠体3の最上部に備え、この枠体3がタイヤ8を軸着して覆うようにフレームを形成し、回転ベース21に旋回軸20の軸心を中心にして、回転ベース21の外周面に噛合う旋回モータ23により回転ベース21を旋回させることで枠体3を旋回して操舵する。
枠体3には、内側にタイヤ8の軸心が軸受14により駆動回転可能に支持され、外側に電動モータ4が固着されて、電動モータ4のモータ軸10を軸受14と同心にタイヤ8の軸に入力している。
【0018】
タイヤ8は、アルミ製の円筒のホイール16の外周面に接着された、ウレタン・ゴム等により円筒の緩衝材で形成して、通路GLの振動・衝撃を吸収している。ホイール16は、外周面にウレタン・ゴム等を円筒状に巻きタイヤ8として形成し、駆動回転する回転体6に固定している。回転体6は、減速機5の出力軸12に固着され、モータ軸10の高回転を減速機5により、低回転に落として高トルクの出力の伝達を受けている。モータ軸10は、電動モータ4による高回転で回転して減速機5に入力され、減速機5のギヤ群11により低回転の高トルクに変換され、出力軸12に伝達される。
【0019】
出力軸12は、枠体3の側板9に軸受14bに軸着され、枠体3に固着した減速機5の周辺を回転する円筒状の回転体6を固着している。回転体6は、一端に駆動力を伝達する出力軸12に固着して、他端を減速機5の外周面の軸受14aに支持され、タイヤ8に掛かる荷重を、出力軸12と軸受14aで支えて回転可能にしている。出力軸12は、軸受14bにより支持され、同心上のモータ軸10の回転を駆動力に変えて伝達される。
【0020】
図3は、回転体6の断面図であり、電動モータ4が枠体3に固着されてモータ軸10を継手19に連結して、継手19から入力軸15をギヤ群11に噛合わせ、出力軸12を回転させる。出力軸12は、回転体6の一方を固着して、側板9に備えた軸受14bに支持され、回転可能にして回転体6を駆動回転させることができる。
【0021】
回転体6は、円筒型で両端を軸受14で支持され、荷台7に掛かる荷重をタイヤ8の接地面が受け、出力軸12の駆動回転で走行させることができる。側板9は、枠体3にボルトの螺合により脱着可能に固着され、タイヤ8の側面を覆うようにして、出力軸12の軸受14bを備え、外部露出する側板9の内側にシール部材20を備えて回転可能にしている。シール部材20は、オイルシールを採用して説明するが、フェルト・ゴム板・コルク等をシール材として採用しても十分にシール効果がある。
【0022】
軸受14aは、タイヤ8に掛る荷重を外周面で受け、受けた荷重を内周に嵌着するケース本体13に支持され、回転体6がモータ軸10を中心にして滑らかに回転させることができる。ケース本体13は、枠体3に固着されて、前記軸受14aを内側にして隣接させて、回転体6と枠体3との間を、密閉するシール部材20を嵌着している。このシール部材20は、軸受14aに内蔵してある潤滑油のグリスが、万が一にも漏れたときに防止することができると共に、タイヤ8が通路GLの塵等を撒き上げても、軸受14aに付着しないため、長持ちさせることができる。
【0023】
軸受14bは、軸状の回転体6の端部を出力軸12に固着して、側板9に支承して、タイヤ8を回転可能にしている。側板9の内側には、軸受14bに隣接して、側板9と回転体6の間にシール部材20を嵌着して、軸受14bに内蔵してある潤滑油のグリスが万が一にも漏れたとしても、このシール部材20がグリスを遮断して、通路GLの汚しを防止して、通路GLからの塵等の撒き上げによる侵入も防止して、軸受14bを円滑な回転に維持させることができる。シール部材20は、回転体6の両端を支持する軸受14a・14bに挟まれた減速機5を内蔵して、減速機5の潤滑油の漏れを遮断し、さらに、前記軸受14a・14bを閉じ込める方向に遮断することで、安全性を高めたシール効果を得ることができる。
【0024】
減速機5の潤滑油は、入力軸15と出力軸12に軸受14を備え、この軸受14が減速機5内の潤滑油の漏れを封じている。潤滑油は、ケース本体13内のギヤ群11の摩耗と高熱を抑えて、円滑にトルクを伝達する。ケース本体13内の圧力は、内圧と言いギヤ群11の異常な摩擦熱が発生すると、空気が膨張して潤滑油が漏れることがあり、ケース本体13を覆うようにホイール16を外周に配置して、軸受14aと軸受14bにより塞ぐことができ、さらに最終的にシール部材20により塞ぐことで安全性を高めている。
【0025】
側板9を外すときは、タイヤ8の交換をするときで、荷重が片寄りになるため、タイヤに荷重が掛からないようにジャキアップして外すことで、出力軸12に固着された回転体6と、回転体6に嵌着されたホイール16の側面全体が現れる。回転体6とタイヤ8は、複数個のボルト18で嵌着してあり、順次ボルト18を外して、回転体6とホイール16の嵌着面17を軸方向へ移動させて分離させる。
【0026】
嵌着面17は、断面が階段状の段差にして、取付けるとき最初に嵌着面17aの奧側に嵌りこみ、次に嵌着面17bに嵌るところで、軸心が出て全体の嵌着面17とホイール16との軸方向が平行になるため、嵌着面17cを速やかに嵌め込むことができる。
嵌着面17の長さは、嵌着面17aが一番長く、次に嵌着面17bにして、最後に短い嵌着面17cとしている。ホイール16は、軸方向に引き抜くことで、嵌着面17cが外れて、接触抵抗が少なくなり、次に嵌着面17bが外れて、更に接触抵抗が小さくなって引き抜く距離が短くホイール16幅の半分ぐらいでほとんど外れる状態になり、容易に回転体6からホイール16を外すことで、磨り減ったタイヤ8を外すことになり、新しいタイヤ8を入れることになる。
【0027】
新しいタイヤ8は、タイヤカバー9が外された状態の回転体6に嵌め込まれることになる。まずは、ホイール16を回転体6の嵌着面17aに預けることでホイール16の幅の三分の一が入り込んで状態であり、等分した2,3箇所のボルト18の位置に、長めの寸法のボルトを通して螺進することで、嵌着面17に入り込む。ホイール16は、嵌着面17bに入り込むと、回転体6とホイール16が略平行になり、軽く挿入させることができ、ホイール幅の約半部ほどの距離で入れ替えができるので、簡単にして容易に速く作業ができ、ボルト18を標準の寸法のもので螺合することができる。
【0028】
このときの回転体6は、軸受14aで支持されているだけで、出力軸12側に若干の心振れが生じる。この出力軸12には、側板9の軸受14bを軸着して、枠体3に螺合して固着させることでタイヤ8を駆動輪2として正常に回転させることができる。軸受14aと軸受14bは、モータ軸10と出力軸12とが同心で一線上であればよいが、多少の誤差を生じてもモータ軸10に配置された継手19により、効率よく伝達することができる。
【0029】
駆動装置2は、電動モータ4のモータ軸10の入力回転を、減速機5を介して低回転の高トルクにして、出力軸12の駆動力をタイヤ8に伝達して、通路GLを走行させるが、タイヤ8が通路GL上に溜まる塵等が撒き上げられてホイール16付近に塵が舞って軸受14が危険になるが、シール部材20により塵の侵入を遮断して軸受14に近づくことができないため、軸受14をいつまでも円滑に回転可能に保持することができる。
シール部材20の位置は、駆動装置2の外周面を避けて内周面に備えてあり、駆動装置2が走行と旋回をして搬送中のとき、通路GLに載置してある物品・コーナー枠等に接触しても、シール部材20を無傷の状態にして、シール効果を維持することで長時間の稼働をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
駆動輪は、搬送台車用の車輪に採用され、小型で剛性の高い車輪であり、この車輪からの油漏れを無くすことで、クリーンルームとか食品用の搬送台車に採用され、環境を汚すことなく清潔に駆動する車輪として利用される。
【符号の説明】
【0031】
1 搬送台車
2 駆動装置
3 枠体
4 電動モータ
5 減速機
6 回転体
7 荷台
8 タイヤ
9 側板
10 モータ軸
11 ギヤ群
12 出力軸
13 ケース本体
14 軸受
15 入力軸
16 ホイール
17 段差
18 ボルト
19 継手
20 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの駆動回転で走行する搬送台車の車輪において、
前記車輪は、車体を支持して搬送可能にする枠体を備え、該枠体に進行方向へ駆動回転する回転体を備え、
前記回転体は、電動モータの回転を入力するケース本体で覆われた減速機を内蔵して、該減速機から突出する出力側をシール付き軸受で前記枠体の一端に配置して支持すると共に、他端を減速機の入力側をシール付き軸受で枠体に配置して支持し、外周面をホイールで嵌着してタイヤを形成して車体を走行可能にし、
前記軸受の一端と他端には、外部に流出する側にシール部材を配置することを特徴とする駆動輪のシール構造。
【請求項2】
前記シール部材は、減速機のケース本体を支持する両側板に配置する軸受を密閉することを特徴とする請求項1記載の駆動輪のシール構造。
【請求項3】
前記減速機の両端は、前記ホイールに内蔵して密閉して、軸心の一線上に駆動輪として形成して、軸心を中心にして駆動回転することを特徴とする請求項1記載の駆動輪のシール構造。
【請求項4】
前記軸受を外部に露出するときは、車輪の外装側を避けた内装側にシール部材を配置していることを特徴とする請求項1記載の駆動輪のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−71810(P2012−71810A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234026(P2010−234026)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000237835)富士変速機株式会社 (76)
【Fターム(参考)】