説明

騒音検知システム

【課題】 点検可能な場所に振動検知センサーを設置でき、離れた場所の振動から騒音を検知したい場所の騒音レベルを推定することができる騒音検知システムを提供する。
【解決手段】 上階の床の振動を検知して振動の大きさに対応する電圧信号を出力する振動検知センサー12と、前記電圧信号の電圧を下階の騒音の値に換算して出力する騒音換算部4と、入力部8を有し、騒音換算部4による電圧から騒音の値への換算のための条件を設定する騒音換算条件設定部7と、振動の大きさを示す電圧と騒音の所定の対応関係を格納した振動騒音換算テーブル9と、騒音換算部4が出力する騒音の値を入力し、前記騒音の値を所定の閾値と比較する比較回路を有し、前記騒音の値が前記閾値より大きい場合は警告部6に警告出力命令を出力する制御部5と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等における上階の発生音を振動で計測し、当該振動を下階の騒音に換算し、下階での騒音が所定のレベルを超えないように、上階の発生音を制限する技術に関する。
【0002】
特に、本発明は、振動を検知するセンサー(振動検知センサー)の設置が上階の居住者の活動の邪魔にならないところに振動検知センサーを設置しながら、居住者の活動がもっとも盛んな場所における下階の居住者が受ける騒音を検知できるシステムに関する。
【0003】
さらに、本発明は、上記したように騒音を検知したい場所と離れた場所に振動検知センサーを設けることにより、該振動検知センサーが検知した振動が前記騒音を検知したい場所で発生した振動か否かを判断することができない問題に対して、騒音を検知したい場所と離れた場所に振動検知センサーを設置しても、騒音を検知したい場所で生じた振動のみを検知して騒音に換算することができる騒音検知システムに関する。
【背景技術】
【0004】
集合住宅等では上階の居住者の活動による音が下階の居室に伝わり、下階の居住者に騒音として受け止められる。
【0005】
このため、集合住宅等の床の遮音性に対する研究が進められている。
【0006】
しかし、床の遮音性の性能が向上しても、上階の騒音が全く下階に伝わらないということはなく、このため下階の居住者が感じる騒音レベルがどの程度なのかを把握する必要がある。
【0007】
このため、従来から、住宅等の遮音性能のシミュレーションシステムが種々提案されている。
【特許文献1】特開平6−230711号公報
【特許文献2】特開平10−31409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
下階の騒音レベルを計測するためには、実際に下階の居室にマイク等を設けて計測することが考えられる。
【0009】
しかし、マイク等は下階の居住者の生活音も拾ってしまい、下階の居住者のプライバシーの侵害になってしまう。
【0010】
これに対して、本願出願人は、下階の騒音レベルを音で直接検知することを避け、上階の発生音を振動で検知し、当該振動から下階の騒音の値を推定するシステムを考案した。
【0011】
しかし、下階の居住者が最もいる可能性が高い場所は、通常上階の居住者が最も活発に活動する場所の直下にあたるため、本願出願人が先に考案した上記システムでは、下階の居住者が感受する騒音レベルを推定するためには、振動検知センサーを上階の居住者が最も活発に活動する場所に設置しなければならなかった。
【0012】
そうすると、振動検知センサーの設置が上階の居住者の活動の邪魔になり、実際の使用上不便であった。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする一つの課題は、キッチンの下や脱衣室の洗濯パンの下や洗面化粧台の下や電話台の下や押し入れ等の下部など、点検可能な場所に振動検知センサーを設置でき、離れた場所の振動から騒音を検知したい場所の騒音レベルを推定することができる騒音検知システムを提供することにある。
【0014】
上述したように騒音を検知したい場所から離れた場所に振動検知センサーを設置した場合には、騒音を検知したい場所以外で発生した振動も振動検知センサーで拾い、狙った場所以外の騒音を検知することになる。
【0015】
そこで、本発明が解決しようとするもう一つの課題は、騒音を検知したい場所から離れた場所に振動検知センサーを設置した場合において、狙った場所以外で発生した振動や騒音を排除し、狙った場所で生じた騒音のみを検知することができる騒音検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による騒音検知システムは、
上階の床の振動を検知して振動の大きさに対応する電圧信号を出力する振動検知センサーと、
前記電圧信号の電圧を下階の騒音の値に換算して出力する騒音換算部と、
入力部を有し、前記騒音換算部による前記電圧から騒音の値への換算のための条件を設定する騒音換算条件設定部と、
スラブ仕様と、天井仕様と、スラブ中央部から前記振動検知センサーまでの距離の諸条件の組合せにより振動の大きさを示す電圧と騒音の所定の対応関係を格納した振動騒音換算テーブルと、
前記騒音換算部が出力する騒音の値を入力し、前記騒音の値を所定の閾値と比較する比較回路を有し、前記騒音の値が前記閾値より大きい場合は警告部に警告出力命令を出力する制御部と、
前記制御部の警告出力命令を入力して、警告メッセージを出力する警告部と、を有し、
前記騒音換算条件設定部は前記入力部を介してスラブ仕様と、天井仕様と、スラブ中央部から前記振動検知センサーまでの距離の諸条件を入力し、前記振動騒音換算テーブルを参照して、前記諸条件に対応する振動の大きさを示す電圧と騒音の対応関係を取得し、前記対応関係を前記騒音換算部に出力し、前記振動検知センサーは振動を検知して振動の大きさを電圧に変換して前記騒音換算部に出力し、前記騒音換算部は前記電圧を入力して前記対応関係を用いて前記電圧を下階の騒音の値に換算して前記制御部に出力し、前記制御部は前記騒音の値を所定の閾値と比較し、前記騒音の値が前記閾値より大きい場合は前記警告部に警告出力命令を出力し、前記警告部は前記警告出力命令を受けた場合は警告メッセージを出力する、ことを特徴とするものである。
【0017】
前記振動騒音換算テーブルは、上階の振動の大きさをその振動が生じた場所の直下部の下階の騒音の値の対応関係を格納する振動騒音換算テーブルと、
騒音を検知したい場所と前記振動検知センサーの設置場所の平面的な距離に対応する、前記振動検知センサーが検知した振動の大きさと前記騒音を検知したい場所の振動の大きさの対応関係を格納する距離換算テーブルと、からなるようにすることができる。
【0018】
また、前記振動検知センサーを複数個設置し、
前記複数の振動検知センサーの設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサーが出力する電圧の比率を記憶する比率記憶手段を有し、各振動検知センサーが出力した電圧の値を入力し、前記比率記憶手段に記憶された電圧の値の比率と比較し、各振動検知センサーが出力した電圧の値の比率が前記比率記憶手段に記憶された電圧の値の比率と実質的に同一の場合に、前記振動検知センサーが出力する電圧の値の少なくとも一つを前記騒音換算部に出力するフィルター部を設けるようにすることができる。
【0019】
あるいは、前記振動検知センサーを複数個設置し、
前記複数の振動検知センサーの設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサーが振動を検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値の比率を記憶する比率記憶手段を有し、各振動検知センサーが検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値を入力し、前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率と比較し、各振動検知センサーが検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値の比率が前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率と実質的に同一である場合に、前記振動検知センサーが検知して前記騒音換算部が換算した騒音の値の少なくとも一つを前記制御部に出力するフィルター部を設けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、振動検知センサーをキッチンの下等の居住者が日常的にいない場所の床下に設置することができる、振動検知センサーのメンテナンスが行ないやすく、そうでありながら、上階の居住者が最も活発に活動する場所における下階の居住者が感受する騒音レベルを検知することができる。
【0021】
また、フィルター部を有する本発明による騒音検知システムによれば、離れた場所に設置された振動検知センサーにより狙った場所の振動のみを検出し、その場所の直下部の居室の騒音レベルを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態による騒音検知システム1の構成を示している。
【0023】
本実施形態の騒音検知システム1は、振動検知センサー2と、電気信号増幅部3と、騒音換算部4と、制御部5と、警告部6と、騒音換算条件設定部7と、入力部8と、振動騒音換算テーブル9とを有している。
【0024】
振動騒音換算テーブル9は、直下部振動騒音換算テーブル10と、距離換算テーブル11とを有している。
【0025】
なお、電気信号増幅部3は、振動検知センサーの一部品として、振動検知センサー2と電気信号増幅部3とを合わせて振動検知センサー12ということができる。
【0026】
振動検知センサー2あるいは12は、上階の床(好ましくはコンクリートスラブ上)に設置され、上階の振動を検知して振動の大きさに対応する電圧信号を出力するものである。
【0027】
図2に、本発明の振動検知センサーの一例と作動原理を示す。
【0028】
図2に示すように、振動検知センサーは、基板13上に長さが異なる複数の振動レバー14を有している。各振動レバー14の基部には、図示しない歪みゲージが設けられている。各歪みゲージは歪みを受けると電圧信号を出力するように電気回路に組み込まれている。
【0029】
振動レバー14は、異なる長さを有し、それぞれの長さは音圧レベルが気になる音の周波数帯域に合った1次固有振動数を有する長さに設定されている。
【0030】
今、ある振動が発生したとすると、その振動の周波数に合った長さの振動レバー14が振動する。前記振動レバー14が振動すると、その基部に設けられた歪みゲージによって電圧信号が出力される。どの振動レバー14が振動したかにより、どの周波数帯域の音かが定まり、電圧信号の大きさによって、音の大きさが定まる。
【0031】
電圧信号は電気信号増幅部3に送られ増幅された後に騒音換算部4に入力される。騒音換算部4により、電圧が騒音の値に換算される。
【0032】
以上が振動検知センサー2の構成と作動の原理である。ここで、再び図1の各構成要素について説明を続ける。
【0033】
騒音換算部4は、振動検知センサー2または12の電圧信号の電圧を下階の騒音の値に換算して出力する手段である。換算は、騒音換算条件設定部7から出力された所定の電圧と騒音の対応関係に基づいて行われる。
【0034】
制御部5は、騒音の値を所定の閾値と比較する図示しない比較回路を有し、騒音換算部4が出力した騒音の値を入力し、前記閾値と比較し、騒音の値が閾値より大きい場合は警告出力命令を警告部に出力する手段である。
【0035】
警告部6は、前記制御部5からの警告出力命令を受けたときに、視覚や聴覚に訴える警告メッセージを出力する手段である。
【0036】
騒音換算条件設定部7は、騒音換算部による前記電圧から騒音の値への換算のための条件を設定する手段である。騒音換算条件設定部7は、上記条件を入力するための入力部8を有している。
【0037】
振動騒音換算テーブル9は、スラブ仕様と、天井仕様と、スラブ中央部から前記振動検知センサーまでの距離の諸条件の組合せにより振動の大きさを示す電圧と騒音の所定の対応関係を格納したデータファイルである。振動騒音換算テーブル9は、テーブルの形式とデータベースの形式のいずれをとってもよい。
【0038】
本実施形態では、振動騒音換算テーブル9は、直下部振動騒音換算テーブル10と距離換算テーブル11とからなる。
【0039】
直下部振動騒音換算テーブル10は、上階の振動の大きさをその振動が生じた場所の直下部の下階の騒音の値の対応関係を格納するものである。
【0040】
距離換算テーブル11は、振動検知センサー2が検知した振動の大きさと騒音を検知したい場所の振動の大きさの対応関係を格納するものである。この対応関係は、騒音を検知したい場所と振動検知センサー2の設置場所の平面的な距離に対応している。
【0041】
次に、騒音検知システム1の設置例、振動を騒音に換算する原理、振動と騒音の対応関係の条件設定方法について説明する。
【0042】
図3は、上階の居室の一例の平面図である。
【0043】
図3において、ポイント15が居住者が最も長く留まりかつ活発に活動する場所である。ポイント15は、構造体によって支持された床スラブの中央部にあたる。
【0044】
振動検知センサー2は、図3に示すように、たとえばキッチンの床下等の邪魔にならない場所に設置されている。制御部5と警告部6はユーザーが操作しやすい場所に設置されている。
【0045】
振動検知センサー2と制御部5は、配線によって接続されている。
【0046】
図4は、振動検知センサー2によって離れた場所の下階の居室の騒音を推定する方法を示している。図4は、集合住宅等の居室の床部分の縦断面図である。
【0047】
図4に示すように、ポイント15に振動が生じたとすると、その振動は上階の床からスラブを通してさらに下階の居室の天井を伝わって下階の居室の空間に騒音として放射される。
【0048】
上階の床衝撃音レベルの下階居室への平均音圧実効値は、下式によって計算されることが提案されている。
【0049】
rms=(Urms*R*S*(4/A)
rms:床板の振動速度の実効値
:音響放射抵抗
S:音響放射面積
A:下階居室吸音力
実際には、上式によって単純計算することは難しく、本発明では上階の振動がその直下部の居室での騒音となる関係を、スラブ仕様や天井仕様を種々変えて実験し、上階の振動と下階の騒音の関係を求めて直下部振動騒音換算テーブル10に記憶させている。
【0050】
一方、ポイント15で生じた振動は、振動検知センサー2が設置された場所に伝わるまではその間の距離によって減衰されている。
【0051】
本発明では振動検知センサー2が設置された場所と騒音を検知したい場所の間の距離に応じて、騒音を検知したい場所の振動と振動検知センサー2が検知する振動の対応関係を距離換算テーブル11に格納している。
【0052】
上記直下部振動騒音換算テーブル10と距離換算テーブル11により、振動検知センサー2が振動を検知したときは、その振動はポイント15ではどの程度の大きさの振動であるかが距離換算テーブル11によって推定でき、さらに推定された振動が下階の居室にどの程度の大きさの騒音となるかが直下部振動騒音換算テーブル10によって推定することができる。
【0053】
直下部振動騒音換算テーブル10と距離換算テーブル11は、別々のテーブルにする必要はなく、適宜まとめて一つの振動騒音換算テーブル9とすることもできる。
【0054】
次に、騒音検知システム1による処理を説明する。
【0055】
最初に(騒音検知システム1の設定初期に)、騒音換算部4が使用する振動の大きさと騒音の対応関係を設定しなければならない。
【0056】
上記振動の大きさと騒音の対応関係の選定は騒音換算条件設定部7を介して選定される。
【0057】
図5は振動の大きさと騒音の対応関係の選定、すなわち騒音換算の条件設定の方法を示している。
【0058】
図5に示すように、騒音換算条件はスラブ仕様と天井仕様の双方の条件が関与する。
【0059】
ユーザーは、入力部8によりスラブ仕様に関してはスラブ厚、スラブ面積、センサー取付け位置、スラブ構造、床仕様についてそれぞれ入力する。
【0060】
センサー取付け位置としては、スラブ中央から振動検知センサー2設置場所までの距離を入力する。また、スラブ構造に関してはボイドスラブ、PSスラブ、RCスラブのうちからいずれかを選択する。また、床仕様に関しては、直床、二重床のいずれかを選択する。
【0061】
また、天井仕様に関しては、直天井、二重天井、下階天井高について選択あるいは数値入力を行なう。
【0062】
これらの条件を入力すると、騒音換算条件設定部7は、振動騒音換算テーブル9(直下部振動騒音換算テーブル10および距離換算テーブル11)を参照して、前記諸条件に対応する振動の大きさを示す電圧と騒音の対応関係を取得する。
【0063】
騒音換算条件設定部7は、取得した対応関係を騒音換算部4に出力し、騒音換算部4はこの振動の大きさと騒音の対応関係を記憶する。
【0064】
以上の準備の後に、騒音検知システム1が実際に使用され、振動が発生したときには、振動検知センサー2あるいは12は振動を検知して振動の大きさを電圧に変換して騒音換算部4に出力する。
【0065】
騒音換算部4は前記電圧を入力して記憶している振動の大きさと騒音の対応関係を用いて前記電圧を下階の騒音の値に換算して制御部5に出力する。
【0066】
制御部5は、騒音換算部4から入力した騒音の値を比較回路で所定の閾値と比較し、騒音の値が閾値より大きい場合は、警告部6に警告出力命令を出力する。
【0067】
警告部6は警告出力命令を受けた場合は、警告メッセージを出力する。
【0068】
以上の処理により、騒音を検知したい場所から離れた場所に振動検知センサー2を設置し、当該振動検知センサー2が検知した振動によって騒音を検知したい場所の下階居室の騒音レベルを推定でき、警告部6の警告メッセージにより上階の居住者に注意を促すことができる。
【0069】
次に、本発明の第二の実施形態による騒音検知システムについて説明する。
【0070】
図6は本発明の第二の実施形態による騒音検知システム20の構成を示している。
【0071】
本実施形態の騒音検知システム20は、振動検知センサーが複数個(以下の説明では2個の場合について説明する)存在する点と、フィルター部21が存在する点で、本発明の第一の実施形態と相違するほかは本発明の第一実施形態と同様である。
【0072】
理解容易のために、図6において図1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0073】
なお、図6では各振動検知センサー12(振動検知センサー2と電気信号増幅部3、以下単に「振動検知センサー12」という)にそれぞれ騒音換算条件設定部7と入力部8と騒音換算部4を接続するように示しているが、これは理解を容易にするための図示であり、実際は複数の振動検知センサー12(振動検知センサー2と電気信号増幅部3)を一つの騒音換算条件設定部7と入力部8と騒音換算部4の組に接続するのが好ましい。
【0074】
フィルター部21は、騒音換算部4からの出力を受信し、制御部5に出力を送信するように接続されている。
【0075】
騒音換算部4には、各振動検知センサー12を特定して、各振動検知センサー12と騒音を検知したい場所の間の距離に対応して、各振動検知センサー12ごとに振動の大きさと騒音の対応関係が記憶されている。図6においては、上記対応関係が各振動検知センサー12を特定して選定されることを示す意味で、各振動検知センサー12ごとに騒音換算部4に対して騒音換算条件設定部7と入力部8が出力するように示している。
【0076】
フィルター部21は、騒音換算部4から騒音の値を入力したときは、その騒音の値がどの振動検知センサー12によって検知された振動から算出されたかを把握できるようになっている。
【0077】
フィルター部21は、各振動検知センサー12の設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサー12が振動を検知し騒音換算部4が換算した騒音の値の比率を記憶する比率記憶手段(図示せず)を有している。
【0078】
実際の騒音検知の場面においては、一つの振動の発生すると、各振動検知センサー12がその振動を検知して電圧信号として騒音換算部4に出力する。騒音換算部4は、前記電圧を入力して振動を騒音の値に換算してフィルター部21に出力する。フィルター部21は、騒音換算部4から騒音の値を入力すると、その騒音の値がどの振動検知センサー12が検知した振動から換算された騒音の値かを把握し、全部の振動検知センサー12が検知した振動から換算された騒音の値を入力する。次に、フィルター部21は、前記各振動検知センサー12が検知し騒音換算部4が換算した騒音の値を前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率と比較する。その結果、各振動検知センサー12が検知し騒音換算部4が換算した騒音の値の比率と前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率が、実質的に同一である場合に、振動検知センサー12が検知して騒音換算部4が換算した騒音の値の少なくとも一つを制御部5に出力する。
【0079】
図7は、図6に示した騒音検知システム20の変形例である。
【0080】
図7に示した騒音検知システム22は、フィルター部21の接続部位が図6の騒音検知システム20と相違している。
【0081】
騒音検知システム22においては、振動検知センサー12からの出力を受信し、騒音換算部4に出力を送信するように接続されている。
【0082】
フィルター部21には、各振動検知センサー12の設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサー12が出力する電圧の比率を記憶する比率記憶手段(図示せず)を有している。
【0083】
フィルター部21は、電圧信号を入力したときは、その電圧信号がどの振動検知センサー12によって検知された振動から算出された電圧であるかを把握できるようになっている。
【0084】
実際の騒音検知の場面においては、一つの振動の発生すると、各振動検知センサー12がその振動を検知して電圧信号に変換してフィルター部21に出力する。フィルター部21は、入力した電圧信号がどの振動検知センサー12によって検知された振動から算出された電圧であるかを把握し、全部の振動検知センサー12から電圧の値を入力する。
【0085】
次に、フィルター部21は、前記各振動検知センサー12が出力した電圧の値の比率と前記比率記憶手段に記憶された電圧の値の比率とを比較し、実質的に同一である場合に、振動検知センサー12が出力した電圧の値の少なくとも一つを騒音換算部4に出力する。
【0086】
騒音換算部4は、フィルター部21から電圧信号を入力すると、その電圧信号がどの振動検知センサー12が検知した振動から算出されたものであるかを特定し、対応する振動と騒音の対応関係を用いて騒音の値を制御部5に出力する。
【0087】
制御部5が、前記騒音の値が閾値を超える場合は、警告部6に警告メッセージを出力させることは前述したとおりである。
【0088】
次に、上記図6と図7による騒音検知システム20,22によって、騒音を検知したい場所の振動と騒音だけを検知できることを、図8を用いて以下に説明する。
【0089】
図8において、ポイントAは騒音を検知したい場所を示している。ポイントBは振動や騒音が発生しても検知しない場所を示している。
【0090】
図8に示す場所に振動検知センサー12が2個(仮に振動検知センサー12a,12bとする)設置されているとする。また、図8に示す場所にフィルター部21と騒音換算部4と制御部5が設置されているものとする。
【0091】
騒音を検知したいポイントAと振動検知センサー12aと振動検知センサー12bの場所は予め知ることができるので、騒音を検知したいポイントAと振動検知センサー12aの間の距離L1と、騒音を検知したいポイントAと振動検知センサー12ポイントBの間の距離L2は予め定められている。
【0092】
距離L1と距離L2が既知であることにより、ポイントAで発生した同一の振動に対して、距離による減衰を考慮して、振動検知センサー12aと振動検知センサー12bで検知する振動の大きさの比率も既知である。
【0093】
したがって、振動がポイントAで発生した場合には、その振動の大きさに関わらず、振動検知センサー12aと振動検知センサー12bが出力すべき電圧の値の比率、あるいは、それらの電圧から騒音換算部4によって換算されて出力された騒音の値の比率は、上記距離L1と距離L2によって定められた所定の比率になっている。
【0094】
これに対して、たとえば、騒音を検知したくないポイントBで振動が発生した場合には、ポイントBと振動検知センサー12aの間の距離およびポイントBと振動検知センサー12bの間の距離がそれぞれL3とL4となっている関係上、同一の振動に対して振動検知センサー12aと振動検知センサー12bで検知する振動の大きさの比率はポイントAの場合の比率とは一致しない。当然ながら、ポイントBで発生した振動から振動検知センサー12a,12bによって検知され騒音換算部4で換算された騒音の値の比率もポイントAの場合の比率と一致しない。
【0095】
これにより、騒音を検知したいポイントA以外の場所で生じた騒音や振動はノイズとして排除され、制御部5に送信されることはない。
【0096】
なお、複数の場所で同時に振動が生じることも考えられるが、本発明は振動の周波数ごとに振動を検知するので、重複することが少ない。また、同時に複数の場所で振動が生じた場合は一律に警告メッセージを出力するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態による騒音検知システムの構成図。
【図2】本発明の一実施形態による振動検知センサーの構造と作用を説明する図。
【図3】本発明の一実施形態による騒音検知システムの設置例を示す平面図。
【図4】本発明の一実施形態による騒音検知の原理を説明する図。
【図5】本発明の一実施形態による騒音換算条件の設定方法を説明する図。
【図6】本発明の第2実施形態による騒音検知システムの構成図。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例による騒音検知システムの構成図。
【図8】本発明のフィルター部による目的の場所の騒音のみを検知する原理を説明する図。
【符号の説明】
【0098】
1 騒音検知システム
2 振動検知センサー
3 電気信号増幅部
4 騒音換算部
5 制御部
6 警告部
7 騒音換算条件設定部
8 入力部
9 振動騒音換算テーブル
10 直下部振動騒音換算テーブル
11 距離換算テーブル
12 振動検知センサー
13 基板
14 振動レバー
15 ポイント
20 騒音検知システム
21 フィルター部
22 騒音検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階の床の振動を検知して振動の大きさに対応する電圧信号を出力する振動検知センサーと、
前記電圧信号の電圧を下階の騒音の値に換算して出力する騒音換算部と、
入力部を有し、前記騒音換算部による前記電圧から騒音の値への換算のための条件を設定する騒音換算条件設定部と、
スラブ仕様と、天井仕様と、スラブ中央部から前記振動検知センサーまでの距離の諸条件の組合せにより振動の大きさを示す電圧と騒音の所定の対応関係を格納した振動騒音換算テーブルと、
前記騒音換算部が出力する騒音の値を入力し、前記騒音の値を所定の閾値と比較する比較回路を有し、前記騒音の値が前記閾値より大きい場合は警告部に警告出力命令を出力する制御部と、
前記制御部の警告出力命令を入力して、警告メッセージを出力する警告部と、を有し、
前記騒音換算条件設定部は前記入力部を介してスラブ仕様と、天井仕様と、スラブ中央部から前記振動検知センサーまでの距離の諸条件を入力し、前記振動騒音換算テーブルを参照して、前記諸条件に対応する振動の大きさを示す電圧と騒音の対応関係を取得し、前記対応関係を前記騒音換算部に出力し、前記振動検知センサーは振動を検知して振動の大きさを電圧に変換して前記騒音換算部に出力し、前記騒音換算部は前記電圧を入力して前記対応関係を用いて前記電圧を下階の騒音の値に換算して前記制御部に出力し、前記制御部は前記騒音の値を所定の閾値と比較し、前記騒音の値が前記閾値より大きい場合は前記警告部に警告出力命令を出力し、前記警告部は前記警告出力命令を受けた場合は警告メッセージを出力する、ことを特徴とする騒音検知システム。
【請求項2】
前記振動騒音換算テーブルは、上階の振動の大きさをその振動が生じた場所の直下部の下階の騒音の値の対応関係を格納する振動騒音換算テーブルと、
騒音を検知したい場所と前記振動検知センサーの設置場所の平面的な距離に対応する、前記振動検知センサーが検知した振動の大きさと前記騒音を検知したい場所の振動の大きさの対応関係を格納する距離換算テーブルと、からなることを特徴とする請求項1に記載の騒音検知システム。
【請求項3】
前記振動検知センサーは複数個設置され、
前記複数の振動検知センサーの設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサーが出力する電圧の比率を記憶する比率記憶手段を有し、各振動検知センサーが出力した電圧の値を入力し、前記比率記憶手段に記憶された電圧の値の比率と比較し、各振動検知センサーが出力した電圧の値の比率が前記比率記憶手段に記憶された電圧の値の比率と実質的に同一の場合に、前記振動検知センサーが出力する電圧の値の少なくとも一つを前記騒音換算部に出力するフィルター部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の騒音検知システム。
【請求項4】
また、前記振動検知センサーは複数個設置され、
前記複数の振動検知センサーの設置場所と騒音を検知したい場所との間の平面的距離に対応して、前記騒音を検知したい場所で生じた同一の振動に対して各振動検知センサーが振動を検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値の比率を記憶する比率記憶手段を有し、各振動検知センサーが検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値を入力し、前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率と比較し、各振動検知センサーが検知し前記騒音換算部が換算した騒音の値の比率が前記比率記憶手段に記憶された騒音の値の比率と実質的に同一である場合に、前記振動検知センサーが検知して前記騒音換算部が換算した騒音の値の少なくとも一つを前記制御部に出力するフィルター部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の騒音検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29859(P2006−29859A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206052(P2004−206052)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【Fターム(参考)】