説明

骨盤痛および不妊症を処置するための膣投与される抗律動異常剤

【課題】子宮律動異常に関連する骨盤痛または不妊症を軽減するための薬学的組成物の提供。
【解決手段】局所投与される抗律動異常治療剤および生体接着性徐放性担体を含む組成物。生体接着性、水膨潤性、水不溶性の架橋したポリカルボン酸ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む徐放性処方物中で送達され、治療剤は、局所麻酔薬(例えば、リドカイン)であり得る。また、抗律動異常治療剤および生体接着性担体の混合物を処置される患者の膣に挿入することによって、骨盤痛を処置もしくは予防する、または不妊症を処置もしくは改善する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2001年10月29日に出願された米国仮出願番号60/330,684の利益を主張し、その内容は、参考として本明細書中に明確に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、子宮律動異常に関連する骨盤痛を処置または予防するための薬学的組成物、ならびにこのような疼痛を処置または予防するための方法に関する。この組成物および方法は、生じた疼痛または不快を原因に影響することなく単に軽減またはマスキングするのではなく、疼痛または不快を引き起こす、根底にある異常なまたは望ましくない筋収縮を予防または処置するために、局所的な組織への吸収のための治療剤の部分的な(local)、
局所使用に部分的に焦点を当てている。本発明はまた、子宮律動異常に関する不妊症を処置または改善するための薬学的組成物ならびにこのような不妊症を処置または改善するための方法に関する。
【0003】
発明の背景
骨盤痛は、断続的または再発性であり得、あるいはこれは不変性かつ重症であり得る。しかし、これは、しばしば、異常な、乱れた(disordered)または妨げられた(disturbed)
子宮の収縮である、子宮律動異常に関連する。骨盤痛は、しばしば、月経の間に疼痛性月経(すなわち、月経困難症)として、経験される。月経に関する慢性的な骨盤痛を有する女性は、しばしば、毎月1日ベットで過ごし、また、疼痛の重篤度に起因して、各月にさらに1日、減少した活動を有し得る。骨盤痛はまた、骨盤感染および尿路または腸の疾患によって引き起こされ得る。
【0004】
不妊症はまた、月経困難を含む子宮律動異常状態に関連し得る。例えば、米国特許番号10/089,796を参照のこと。子宮律動異常は、精子の迅速な輸送に影響し得、従って受胎能に影響する。女性の路(子宮およびファローピウス管)に沿った収縮性が、頸部領域から管の遠位末端(ここで、受精が生じる)への精子の迅速な輸送を保証する主要なモーターであるようである。逆行性の子宮収縮性は、この通常の輸送機構を妨げるようである。
【0005】
慢性的な骨盤痛は、再生産年齢群の女性において一般的である。これは、無力および苦痛を生じ、保健サービスに対して多大な費用を生じる。全体には、女性は、彼女の生涯におけるいくらかの期間、慢性的な骨盤痛を有するという約5%の危険を有する。骨盤炎症性疾患の以前の診断を有する患者において、この危険は、約20%まで4倍増加する。米国からの近年の疫学データによって、再生産年齢の14.7%の女性が、慢性的な骨盤痛を報告していることが示された。慢性骨盤痛を有するこれらの女性の全部で15%が仕事から失われた時間を報告し、そして45%が仕事の生産性の減少を報告した。米国において、10%の外来患者の婦人科診察が慢性的な骨盤痛についてであり、腹腔鏡検査の40%が慢性的な骨盤痛について行われる。
【0006】
慢性骨盤痛の病因は、十分に理解されていない。しばしば、腹腔鏡検査による調査は、子宮内膜症を軽度から中程度明らかにし得、または疼痛についての何の明らかな原因も明らかにしない。検出されない過敏性腸症候群を含む慢性骨盤痛についてのいくつかの可能な説明があり、血流が顕著に減少する拡張した骨盤静脈ならびに慢性的な骨盤痛を有する女性における変容された脊髄および脳の刺激のプロセシングから疼痛が生じると考えられている血管の仮説がある。慢性的な骨盤痛の病態生理学は十分に理解されていないので、
その処置は、しばしば満足のいくものではなく、症状の軽減に限られる。現在、処置に対する主なアプローチとしては、薬物投与、手術、またはことによると精神療法およびカウンセリングを用いる疼痛の対症処置が挙げられる。
【0007】
非常に一般的な慢性疼痛症候群であるという事実にもかかわらず、慢性骨盤痛についての効果的な薬理学的処置について、ほとんど知られていない。いくつかの異なる薬理学的クラスの薬物投与が、慢性的な疼痛症候群を有する患者において、根底の原因を処置または予防するのではなく、症候的疼痛および不快を軽減するために使用されている:非ステロイド抗炎症薬、抗痙攣薬、局所麻酔薬およびオピオイド。慢性的な骨盤痛を処置または予防するために、根元となる原因、子宮ジスキネジー収縮の実際の処置または予防に焦点を当てた研究はほとんどない。
【0008】
月経困難症は、代表的に月経周期に関連する疼痛に関し、一次性または二次性であり得る。多くの女性が、生涯のある時期に一次性月経困難症を経験する。疼痛は、痙攣または鋭く、月経周期の最初の数日続く。これは、背中、大腿または骨盤深くに広がり得る。しばしば、悪心または嘔吐が生じる。二次性月経困難症は、子宮内膜症または頸部狭窄に起因し、月経出血過多(heavy menstrual flow)に関連する場合、フィブロイド、腺筋症または大きい子宮内膜ポリープに起因し得る。
【0009】
延長された期間の部分的(local)または局部的(regional)な遮断を提供するために、臨
床医は、現在疼痛が遮断されるべき部位へカテーテルまたはシリンジを介して投与される局所麻酔薬を使用する。これは、ボーラスとしてまたは注入ポンプに接続された体内に留置したカテーテルを介してのいずれかで、1日よりも多い期間にわたって疼痛が遮断される場所での繰り返し投与を必要とする。これらの方法は、濃度における変動および高レベルの麻酔薬に起因して、神経または周囲の組織に対する不可逆的な損傷を潜在的に引き起こし得るという不利益を有する。さらに、これらの方法によって投与される麻酔薬は、一般的に、標的領域に制限されず、直線的な連続的な様式で送達されない。全ての場合において、痛覚消失は、6〜12時間、より代表的には4〜6時間より多くはめったに続かない。ポンプの場合において、注入ラインは、配置および固定するのが困難であり、患者は、移動性が制限され、妨げられ、患者が小さな子供や精神的に障害がある場合は、故意にポンプをはずそうとし得る。
【0010】
米国特許第5,700,485号は、マイクロスフェアに組み込まれた生分解性ポリマーと組み合わされた局所麻酔薬を投与するための方法およびデバイスを開示する。麻酔薬の延長された放出は、グルココルチコイドと共に投与することによって得られる。
【0011】
高い全身麻酔濃度は、膣への刺激または灼熱感(burning)ならびに他の有害な副作用を
引き起こし得るので、麻酔薬の全身循環を低く維持する必要がある。従って、律動異常状態に起因する骨盤痛を処置するための十分な麻酔薬を保証するが、一方、全身循環を低く維持するために、延長した期間、局所麻酔薬が頸部(cervix)に優先的に拡散する処方物についての必要性が存在する。
【0012】
同様に、高い全身レベルの他の抗律動異常治療剤が有害な副作用を導き得、これらのいくつかは、重篤であり得る。多数の古典的な抗不整脈(および他の抗律動異常)剤自体が、冠不整脈を引き起こす能力を有する。他の有害な副作用としては、制限されないが、悪心、かすんだ視野または黄視、緑内障の促進、便秘、発作、震え、骨髄発育不全、肺繊維症、低血圧、運動心拍数の減少、下痢および下痢誘導性低カリウム血症、ならびに血小板減少症、肝炎または骨髄抑制のような免疫学的反応が挙げられる。従って、子宮律動異常を処置または予防するための抗律動異常剤の使用は、冠動脈の問題または他の有害な副作用を促進し得る全身レベルを注意深く避けなければならない。
【0013】
従って、律動異常に起因する骨盤痛を処置もしくは防止するため、または律動異常に関連する不妊症を処置もしくは改善するための抗律動異常治療剤を局所的かつ優先的に送達する処方物についての必要性が存在する。該処方物は、有害な副作用を引き起こすほど十分に高い治療剤の血液レベルを避け、一方、所望の治療上の抗律動異常効果を提供するのに十分な治療剤の局所組織レベルを達成すべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、治療有効量の抗律動異常治療剤および薬学的に許容される徐放性(extended-release)生体接着性(bioadhesive)担体を包含する、子宮律動異常に関連する骨盤痛を処
置もしくは予防するための、または子宮律動異常に関連する不妊症を処置もしくは改善するための薬学的膣用組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、治療有効量の抗律動異常治療剤および投与後に延長した時間にわたって治療剤を放出する薬学的に許容される生体接着性担体を包含する組成物を膣に投与することを包含する、骨盤痛を処置もしくは予防するための、または不妊症を処置もしくは改善するための方法に関する。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、薬学的に許容される生体接着性担体と共に、異常なまたは所望でない収縮を引き起こす神経インパルスの伝播および/または神経インパルスもしくは細胞から細胞へ
の連絡(すなわち、より速い、より遅い、またはより一定の)を正常化することによって子宮律動異常を軽減または緩和することを意図した有効量の治療剤を含む薬学的組成物に関する。このような抗律動異常治療剤としては、局所麻酔薬、古典的な「抗不整脈剤」(通常、冠律動異常を処置するための使用と関連する)、カルシウムチャネルブロッカー、ならびにプロスタグランジンおよびプロスタグランジンブロッカーのようなオータコイド(autocoid)、非ステロイド抗炎症薬(「NSAIDS」)、COXインヒビター、トロンボキサンシンターゼインヒビター、ならびにロイコトリエンインヒビターが挙げられる。
【0017】
局所麻酔薬は、一般に、疼痛の感覚を中継するかまたは報告する神経インパルスの伝播を妨げることによって、局所的なしびれまたは疼痛の解放を提供するために使用され得る薬物として規定されている。本発明と共に有用な局所麻酔薬としては、当業者に公知の任意のこのような麻酔薬が挙げられ得る。リドカインは、本発明と共に使用するための好ましい麻酔薬である。使用され得る他の局所麻酔薬としては、コカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブイピバカイン(buipivacaine)、レボブピバカイン、アルチカイン(articaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、フェノール、ベンゾカイン、プラモキシン、ジクロニン、エチドカイン、プロカイン、プロパラカイン、ジブカイン、およびプラモキシンが挙げられる。
【0018】
古典的な抗不整脈剤は、一般に、冠律動異常を処置または予防するために使用される。このような治療剤としては、例えば、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、トカイニド、プロカインアミド、キニジン、ジソピラミド、モリシジン(moricizine)、プロパフェノン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム(bretyllium)、アミオダロン、ベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシン、ジギトキシン、アデノシン、プロプラノロール、エスモロール、およびN−アセチルプロカインアミドが挙げられる。
【0019】
カルシウムチャネルブロッカーは、SAおよびAV節に対するこれらの作用に起因して、抗冠不整脈剤として使用される。これらの薬剤はまた、冠血管耐性を減少させ、冠血流
を増加させる。カルシウムチャネルブロッカーの例としては、制限されないが、アムロジピン、ベプリジル(bepridil)、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、およびベラパミルが挙げられる。最も一般的な副作用は、過度の血管拡張によって引き起こされる傾向があり、めまい感、低血圧、頭痛、指の異常感覚、および悪心を引き起こし得る。他の副作用としては、便秘、心筋虚血の悪化(aggrevation)、および末梢または肺水腫が挙げられる。
【0020】
プロスタグランジンおよび関連する化合物は、それらの共通の構造的由来に起因して、エイコサノイドと呼ばれる。エイコサノイドはまた、ロイコトリエンおよびトロンボキサンAを含む。プロスタグランジンは、しばしば、強力な血管拡張薬および/または血管
収縮薬である。特定のプロスタグランジンは、全身の血圧を減少させ、ほとんどの器官に対する血流を増加させるが、他のものは、一般に、心拍出量を増加させる。ロイコトリエンは、冠血流を減少させる傾向があり、トロンボキサンAは、強力な血管収縮剤である。
【0021】
エイコサノイドまたはエイコサノイド生合成のインヒビターとしては、プロスタグランジンブロッカー、トロンボキサンシンターゼインヒビター、ロイコトリエンインヒビター、NSAIDS(非ステロイド抗炎症薬)、およびCOXインヒビターが挙げられる。種々のエイコサノイドまたはエイコサノイド前駆体の生合成または生物活性をブロックすることまたは妨げることはまた、律動に影響することなく、収縮の数を増加または減少し得る。これは、末梢または予備の活性または合成に影響することによって、間接的な機構を介して生じ得る。
【0022】
トロンボキサンシンターゼインヒビターとしては、例えば、ピルマグレル(pirmagrel)
およびダゾキシベン(dazoxiben)が挙げられる。
【0023】
ロイコトリエンインヒビターとしては、例えば、ジロートン(zileuton)が挙げられる。
【0024】
NSAIDSとしては、例えば、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、ルルビプロフェン(lurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケ
トロラク、メクロフェナメート、フェナム酸(fenamic acid)、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキシン(naproxin)、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチンが挙げられる。
【0025】
COXインヒビターとしては、例えば、アスピリン、セレコキシブ(celecoxib)、ロフ
ェコキシブ(rofecoxib)およびヴァルデコキシブが挙げられる。
【0026】
生体粘着性担体は、生体接着性、水膨潤性(water-swellable)、水不溶性の架橋したポ
リカルボン酸ポリマーを含む。好ましい担体(これは、ゲル処方物中に存在し得る)は、膣粘膜を通る局所麻酔薬の制御され延長された放出を付与するように設計されたポリカルボフィルベースを含む。他の目的のための異なる治療剤の投与のための同様の処方物が、米国特許第5,543,150号および同6,126,959号に記載され、その内容は、各々、参考として、本明細書中に明確に援用される。
【0027】
米国特許第5,543,150号は、初回子宮通過効果:子宮内膜の分泌トランスフォーメーションを行うためであるが、プロゲステロンの非常に低い血清レベルを維持する、プロゲステロンの直接的な局所送達を提供するためにプロゲステロンを含む同様の徐放性膣用処方物の使用を開示し、クレームする。同様に、米国特許第6,126,959号は、局所的な効力を発揮するが、治療剤の有害な血液レベルを引き起こすことがない、治療剤の膣送達のための、他の同様の徐放性処方物の使用および組成物を開示およびクレーム
する。
【0028】
本発明はまた、膣に該組成物を投与することを含む、骨盤痛を処置または予防するための方法に関する。このような投与は、子宮律動異常に関連する骨盤痛を処置または予防するための治療上の利益を実証する。
【0029】
本発明はまた、該組成物を膣に投与することを含む、不妊症を処置または改善するための方法に関する。このような投与は、子宮律動異常に関連する不妊症を処置または改善するための治療上の利益を実証する。
【0030】
好ましくは、該組成物は、約1%〜12.5%濃度の治療剤を含む投薬量で投与される。例えば、リドカインは、2%、5%および10%の投与濃度で治療剤として投与され得る。
【0031】
本発明の組成物は、制限することなく、例えば、ゲルまたはクリームのような任意の適切な膣用組成物として、または投与のためのゲル化(gelifying)錠剤としてでさえ、処方
され得る。投与される場合、組成物は、標的組織へ膣粘膜を通って拡散する。疼痛の軽減は、疼痛の原因または供給源(例えば、増加したかまたは律動異常の収縮性)の処置または予防によって提供される。
【0032】
本発明の組成物中の治療剤は、それに関連する疼痛の制御のための機能不全子宮収縮性を変更するために子宮筋層へ高濃度で拡散する。治療剤の全身循環は、低いレベルのままであり、有害な全身的な副作用を避けるための処置を可能にする。治療剤および処方物(これは、治療剤の放出の期間を延長または短縮するように改変され得る)の両方に依存して、治療剤の放出および効力は、少なくとも約48時間以上、容易に継続し得る。
【0033】
本発明を用いる使用のための好ましい局所麻酔薬は、リドカインである。リドカインは、最大の局所麻酔薬であるので、抗律動異常剤である。その化学式は、2−(ジエチルアミノ)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アセトアミドである。その分子量は、234.34である。その構造式は、
【0034】
【化1】

である。リドカインは、作用部位に局所的に送達される場合、極めて安全で、効果的な麻酔薬である。しかし、有意な血清レベルのリドカインはまた、有害な副作用を引き起こし得る。それは、約1.5〜2時間の半減期を有し、これは、徐放性処方物中で使用するために実用的にするのに十分に長い。
【0035】
選択された特定の薬物送達処方物は、一般に米国特許第4,615,697号(「‘697特許」)(その内容は、参考として本明細書中に明確に援用される)において記載される、架橋したポリカルボン酸ポリマー処方物を含む。一般に、このような処方物中のポリマーの少なくとも約80%のモノマーは、少なくとも1つのカルボキシル基の官能基を含むべきである。架橋剤は、所望の投与が行われるような十分な時間、システムが標的の
上皮表面に接着したままであるような十分な生体接着性を提供するような量で、存在すべきである。もちろん、より高い用量が、より長い期間にわたってよりゆっくりと放出されるように、当業者によって容易に処方され得る;重要な因子は、単位時間当たりに投与される治療剤の量であり、一方、処方物の濃度は、単位投薬量当たりの処方物の量と反比例して変化し得るか、または、治療剤の放出の期間とともに直接変化し得る。言い換えると、処方物中のより高い濃度の治療剤が、治療剤の送達の同一の全体速度を達成するために、よりゆっくりとそして/またはより小さい用量の処方物で、送達され得る。
【0036】
膣投与のために、処方物は、好ましくは、約24〜48時間の期間、上皮表面に付着したままである。このような結果は、ポリマーの継続する存在に起因して、pH減少について膣由来のサンプルを試験することによって、種々の期間にわたって臨床的に測定され得る。生体接着のこのレベルは、一般に、架橋剤がポリマーの約0.1〜6重量%、好ましくは約1〜2重量%で存在する場合に、達成される。生体接着はまた、接着強度を測定するために利用される市販の表面張力計を使用することによって測定され得る。
【0037】
ポリマー処方物は、ポリマー中の架橋剤の量を変化させることによって、リドカインのような局所麻酔薬の放出速度を制御するように調整され得る。適切な架橋剤としては、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、および同様の薬剤が挙げられる。
【0038】
このような処方物における使用のための好ましいポリマーは、ポリカルボフィル(Polycarbophil)、U.S.P.であり、これは、NOVEON(登録商標)−AA1の商品名
で、Cleveland,OhioのNoveon,Inc.から市販されている。ポリカルボフィルは、ジビニルグリコールと架橋したポリアクリル酸である。
【0039】
このような薬物送達システム処方物において使用され得る他の有用な生体接着性ポリマーは、‘697特許において言及されている。例えば、これらとしては、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエンと架橋したポリアクリル酸ポリマー、およびジビニルベンゼンと架橋したポリメタクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0040】
代表的には、これらのポリマーは、その生体接着性能力を減少させるので、それらの塩形態では使用されない。二価の塩(例えば、カルシウム塩)は、生体接着性において最も大きい減少を引き起こす。一価の塩(例えば、ナトリウム塩)は、代表的には、それほど生体接着性を減少させない。
【0041】
このような生体接着性ポリマーは、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどのような開始剤を利用して、従来のフリーラジカル重合技術によって調製され得る。有用な生体接着剤の例示的な調製は、‘697特許において提供される。
【0042】
生体接着性処方物は、ゲル、クリーム、錠剤、丸剤、カプセル、坐剤、フィルム、または粘膜に接着し容易に洗い流されない任意の他の薬学的に許容される形態で、存在し得る。本発明のための好ましい処方物は、ゲルの形態である。
【0043】
さらに、‘697特許において教示される添加剤は、送達系の最大の所望の効力のため、または患者の快適のために、処方物中の架橋ポリマーと共に、混合され得る。このような添加剤としては、制限されることはないが、以下の1つ以上を含む:滑沢剤、可塑剤、防腐剤、ゲル形成剤(formers)、錠剤形成剤、丸剤形成剤、坐剤形成剤、フィルム形成剤
、クリーム形成剤、崩壊剤、コーティング剤、結合剤、ビヒクル、着色剤、臭気制御剤、湿潤剤、粘度制御剤、pH調整剤、および他の同様の一般に使用される薬剤。
【0044】
本発明の組成物は、例えば(制限されることはないが)、プランジャー、圧注(douche)、および手動のような当業者に公知の種々の様式で、膣に送達され得る。送達の1つの方法は、米国意匠特許番号D345,211およびD375,352において記載されるものと同様のデバイスを使用する。これらのデバイスは、長楕円形の中空管状容器であり、患者によって相対的に容易に使用され得る密封された容器で送達されるように、一方の末端は解放され得、他方の末端はほとんどの組成物を含む。上記容器はまた、使用まで、密封した滅菌環境で、処方物および治療剤を維持する。使用の際、このような容器は開けられ、開放末端は、膣に挿入され、他方の末端は、膣へ容器の中身を送達するように絞られる。
【0045】
従って、本発明は、延長された期間、影響される組織に十分な量の治療剤を送達することによって疼痛の根元となる原因を処置するために使用され得る。送達系は、組織の収縮性に影響する濃度を達成する薬物の一定の供給源を提供するが、有害な影響を避けるのに十分に低い全身濃度を維持する。
【0046】
局所麻酔薬は、一般に、その塩基性またはプロトン化されていない形態で使用され得る。この形態で、麻酔薬は、水中にわずかに溶ける。別の形態では、麻酔薬は、例えば、塩酸塩のような水溶性塩として使用され得る。麻酔薬のプロトン化されていない形態は、作用部位に達するために細胞膜を通って拡散するために必要である。陽イオン化学種は、Naチャネルと優先的に相互作用する。好ましい実施形態において、麻酔薬は、その塩基性形態で使用され、ゲルまたは送達のためのゲル化錠剤中に懸濁される。
【0047】
局所麻酔薬(例えば、リドカイン)は、抗不整脈剤として子宮の筋肉に作用し、収縮の頻度ではなく、ジスキネジーに関連する子宮筋痙攣の疼痛を予防する手段として子宮ジスキネジーを逆転させる。麻酔薬はまた、律動異常収縮によって引き起こされる逆行性月経を制限することによって子宮内膜症を防止し、そしてまた、月経困難に関連する軽度の子宮内膜症に関連する不妊症を有する女性において精子輸送を補助し得る。
【0048】
麻酔薬の代表的な経口または注射形態は、抗律動異常効果を示すのに十分な子宮組織レベルに達するために、高い血液レベルを達成する必要がある。いわゆる「トリガーポイント」注射でさえ、より高い血液レベルを引き起こす傾向があり、本発明の処方物と比較する場合に、投与の簡便さおよび快適さに関して、明確な不利益を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
実施例
以下の例示的な処方物は、本発明に従って作製され得る。すべての成分は、重量%によって列挙する。
【0050】

【表1】



抗律動異常剤の膣送達のための適切な処方物の非制限的な例としては、ポリカルボフィル、カルボポール(carbopol)、NATROSOL(登録商標)、グリセロール、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸メチル、および抗律動異常剤(好ましくは、リドカインまたはイブプロフェン)と混合した精製水を含む。
【0051】
ソルビン酸およびヒドロキシ安息香酸メチルは防腐剤であり、これは、他の公知の防腐剤(例えば、安息香酸、プロピルパラベン、またはプロピオン酸)によって置換され得る。
【0052】
カルボポールは、ゲル形成剤、好ましくは、Carbopol 974Pであるが、他のゲル形成剤によって置換され得、これらとしては、Carbopol 934P、Carbopol 980、メチルセルロースまたはプロピルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
NATROSOL(登録商標)250HHXは、粘度増強剤であるが、他の粘度増強剤(例えば、メチルセルロースまたはプロピルセルロース)によって置換され得る。
【0054】
グリセロールは、湿潤剤であり、代替的な湿潤剤としては、例えば、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。
【0055】
当業者に明らかなように、該組成物は、特定の特性に影響するように変化され得る。例えば、生体接着性ポリマーの濃度は、より大きいかまたはより小さい生体接着性を提供するように調整され得る。粘度は、pHを変化させることによって、ポリマーまたはゲル形成剤の濃度を変化させることによって、変化し得る。pHはまた、処方物の放出速度または生体接着性に影響するように適切に変化し得る。全ての成分は周知であり、産業において公知の供給業者から容易に入手可能である。
【0056】
従って、本発明は、律動異常に関連する骨盤痛を処置するために抗律動異常剤の膣投与のための使用および組成物を提供する。徐放性処方物は、有害な副作用を誘導するに十分な血液レベルを引き起こすことなく、効果的な局所治療を可能にする。
【0057】
本明細書中で言及した任意かつ全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者のレベルの指標である。本明細書中で言及された全ての刊行物および特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物または出願が、参考として援用されるように、具体的かつ個々に示されるように、同程度に参考として本明細書中に援用される。
【0058】
本発明は、本明細書中に例示されかつ記載されるようなまさにその形態に限定されないことが理解されるはずである。従って、本明細書中に示される開示から当業者によって、またはそれからの慣用実験によって容易に達成可能である、全ての適切な改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の精神および範囲内であるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮律動異常に関連する、骨盤痛を処置もしくは予防するための、または不妊症を処置もしくは改善するための薬学的膣用組成物であって、該組成物は、治療有効量の抗律動異常治療剤および薬学的に許容される徐放性(extended-release)生体接着性(bioadhesive)担
体を包含する。
【請求項2】
該担体が、生体接着性、水膨潤性(water-swellable)、水不溶性の架橋したポリカルボン
酸ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマーがポリカルボフィル(polycarbophil)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
抗律動異常治療剤が、抗冠不整脈剤(coronary anti-arrhythmic)、局所麻酔薬、カルシウムチャネルブロッカー、オータコイド剤(autocoid agent)、プロスタグランジンブロッカー、非ステロイド抗炎症薬、COXインヒビター、トロンボキサンシンターゼインヒビター、およびロイコトリエンインヒビターからなる群より選択される1つ以上の薬剤を包含する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
抗律動異常治療剤が、コカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブイピバカイン(buipivacaine)、レボブピバカイン、アルチカイン(articaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、フェノール、ベンゾカイン、プラモキシン、ジクロニン、エチドカイン、プロカイン、プロパラカイン、ジブカイン、プラモキシン、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、トカイニド、プロカインアミド、キニジン、ジソピラミド、モリシジン(moricizine)、プロパフェノン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム(bretyllium)、アミオダロン、ベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシン、ジギトキシン、アデノシン、プロプラノロール、エスモロール、N−アセチルプロカインアミド、アムロジピン、ベプリジル(bepridil)、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ベラパミル、ピルマグレル(pirmagrel)、ダゾキシベン(dazoxiben)、ジロートン(zileuton)、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、ルルビプロフェン(lurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、
ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、フェナム酸(fenamic acid)、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキシン(naproxin)、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アスピリン、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)およびヴァルデコキシブからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
治療剤がリドカインを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
治療剤が約2重量%〜10重量%の濃度のリドカインである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
約1〜1.5gの組成物の単回用量が、投与後少なくとも約24時間にわたって約20〜150mgのリドカインを放出するように、組成物が調製される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
単回用量が少なくとも約48〜72時間にわたって治療剤を放出するように、組成物が調製される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
子宮律動異常に関連する、骨盤痛を処置もしくは予防するための、または不妊症を処置もしくは改善するための薬学的膣用組成物であって、該組成物は、治療有効量の局所麻酔治療剤および薬学的に許容される徐放性生体接着性担体を包含する。
【請求項11】
担体が、生体接着性、水膨潤性(water-swellable)、水不溶性の架橋したポリカルボン酸
ポリマーである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
治療剤がリドカインである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーがポリカルボフィルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
骨盤痛を処置もしくは予防するための、または不妊症を処置もしくは改善するための方法であって、該方法は、治療有効量の抗律動異常治療剤および投与後に延長した時間にわたって治療剤を放出する薬学的に許容される生体接着性担体を包含する組成物を膣に投与することを包含する。
【請求項15】
治療剤が送達され、少なくとも24時間にわたって放出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療剤が送達され、少なくとも48時間にわたって放出される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療剤が送達され、少なくとも72時間にわたって放出される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
担体が、生体接着性、水膨潤性、水不溶性の架橋したポリカルボン酸ポリマーである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
担体がポリカルボフィルを含み、治療剤がリドカインを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
治療剤がリドカインであり、該リドカインが約20〜100mgのリドカインを少なくとも48時間にわたって放出する投薬量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、骨盤痛を処置または予防するためにおよそ2〜3日毎に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療剤が局所麻酔薬であり、担体が生体接着性、水膨潤性、水不溶性の架橋したポリカルボン酸ポリマーである、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
治療剤がリドカインであり、担体がポリカルボフィルを包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療剤が、コカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブイピバカイン(buipivacaine)、レボブピバカイン、アルチカイン(articaine)、ロピバ
カイン(ropivacaine)、フェノール、ベンゾカイン、プラモキシン、ジクロニン、エチド
カイン、プロカイン、プロパラカイン、ジブカイン、プラモキシン、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、トカイニド、プロカインアミド、キニジン、ジソピラミド、モリシジン(moricizine)、プロパフェノン、フレカイニド、ソタロール、ブレチリウム(bretyllium)、アミオダロン、ベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシン、ジギトキシン、アデノシン、プロプラノロール、エスモロール、N−アセチルプロカインアミド、アムロジピン、ベプリジル(bepridil)、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ベラパミル、ピルマグレル(pirmagrel)、ダゾ
キシベン(dazoxiben)、ジロートン(zileuton)、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプ
ロフェン、ルルビプロフェン(lurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプ
ロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、フェナム酸(fenamic acid)、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキシン(naproxin)、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アスピリン、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)およびヴァルデコキシブからなる群より選択される1つ以上の薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
子宮律動異常を処置または予防するための薬学的膣用組成物であって、該組成物は、薬学的に許容される徐放性生体接着性担体、ならびに抗冠不整脈剤(coronary anti-arrhythmic)、局所麻酔薬、カルシウムチャネルブロッカー、オータコイド剤(autocoid agent)、プロスタグランジンブロッカー、非ステロイド抗炎症薬、COXインヒビター、トロンボキサンシンターゼインヒビター、およびロイコトリエンインヒビターからなる群より選択される1つ以上の治療剤を包含する。
【請求項26】
担体が、生体接着性、水膨潤性、水不溶性の架橋したポリカルボン酸ポリマーを含み、1つ以上の治療剤が局所麻酔薬、NSAIDSおよびカルシウムチャネルブロッカーからなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
ポリマーがポリカルボフィルであり、1つ以上の治療剤がリドカインを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項28】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法における使用のための、抗律動異常治療剤および薬学的に許容される徐放性生体接着性担体を包含する、薬学的膣用組成物。
【請求項29】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法における使用のための、治療有効量の局所麻酔治療剤および薬学的に許容される徐放性生体接着性担体を包含する、薬学的膣用組成物。
【請求項30】
骨盤痛の処置もしくは予防における、または不妊症の改善における膣投与のための医薬の製造における、抗律動異常治療剤および薬学的に許容される徐放性生体接着性担体の使用であって、ここで、疼痛または不妊症が子宮律動異常に関連する。
【請求項31】
骨盤痛の処置もしくは予防における、または不妊症の改善における膣投与のための医薬の製造における、局所麻酔治療剤および薬学的に許容される徐放性生体接着性担体の使用であって、ここで、疼痛または不妊症が子宮律動異常に関連する。

【公開番号】特開2011−201909(P2011−201909A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−121273(P2011−121273)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【分割の表示】特願2003−539721(P2003−539721)の分割
【原出願日】平成14年10月28日(2002.10.28)
【出願人】(399055579)コロンビア・ラボラトリーズ・(バミューダ)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】