説明

高グリセリン濃度を用いる1,3−プロパンジオール生産のための連続培養

本発明は、高グリセリン含量の培養培地で微生物を培養することを含んでなる1,3−プロパンジオールの新規な生産方法に関する。本発明はまた、高グリセリン含量を含んでなる培地からの1,3−プロパンジオールの生産に適合された新規な微生物または微生物株に関する。本発明はまた、グリセロール代謝が1,3−プロパンジオール生産に向けられ、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖可能とされた「適合微生物」に関する。
本発明はまた、その方法によって得られた生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。最後に、本発明は、熱可塑性ポリウレタンにおける鎖延長剤としての、ポリトリメチレンテレフタレートにおけるモノマーとしての、また、化粧用処方物における成分としての、前記生物起源の1,3−プロパンジオールの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高グリセリン含量の培養培地で微生物を培養することを含んでなる1,3−プロパンジオールの新規な生産方法に関する。本発明はまた、高グリセリン含量を含んでなる培地からの1,3−プロパンジオールの生産に適合された新規な微生物または微生物株に関する。本発明はまた、グリセロール代謝が1,3−プロパンジオール生産に向けられ、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖可能とされた「適合微生物(adapted micro organism)」に関する。本発明はまた、本発明の方法によって得られた生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。最後に、本発明は、熱可塑性ポリウレタンにおける鎖延長剤(extender chain)としての、ポリトリメチレンテレフタレートにおけるモノマーとしての、また、化粧用処方物における成分としての、前記生物起源の1,3−プロパンジオールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−プロパンジオール(PDO)は、最も古い既知の発酵産物の1つである。PDOは、1881年という初期にAugust Freundにより、活性生物としてクロストリジウム・パスツリアヌム(Clostridium pasteurianum)を明らかに含有するグリセロール発酵混合培養物において同定確認された。PDO(トリメチレングリコール、プロピレングリコール)を生産する種々の腸内細菌の発酵の定量分析は、1928年という初期にデルフトの微生物学校で始まり、1940年代にアイオワ州エームズで継続された。1960年代には、関心はグリセロールに作用する酵素へ、特に、グリセロールデヒドラターゼおよびジオールデヒドラターゼが補酵素B12を要求するという点で特異であったのでこれらの酵素へ移った。PDO生成クロストリジウム菌は1983年に初めて、グリセロール排泄藻類からの特異産物を得るプロセスの一部として記載された(Nakas et al., 1983)。PDOはグリセロール発酵の典型的な産物であり、他の有機基質の嫌気的変換では見られたことはなかった。生物種としては極めて少ないが、これらの微生物は全てがPDOを生成することができる。これらの微生物には、クレブシエラ属(肺炎桿菌(K. pneumoniae))、エンテロバクター属(E.アグロメランス(E. agglomerans))およびシトロバクター属(C.フレウンディー(C. freundii))、乳酸桿菌属(乳酸短桿菌(L. brevis)およびブーフナー乳酸桿菌(L. buchneri)、C.ブチリカム(C. butyricum)およびC.パスツリアヌム(C. pasteurianum)種のクロストリジウム属が含まれる。
【0003】
発酵産物の分析は、グリセロール部分は、この種々の種の糖発酵の場合と同じ産物、すなわち、酢酸、2,3−ブタンジオール、酪酸、乳酸、エタノールおよびコハク酸に変換されることを示す。この変換は成長に必要なエネルギーを与えるが、これらの産物の多くの還元型のものも放出され、それらがグリセロールからPDOへの還元的変換に用いられる。クロストリジウム属でPDO収量を低下させるブチレートの生成は、クレブシエラ属のエタノール生成に幾分か匹敵するが、成長速度により依存的であると思われる。ブチレートは、過剰量の基質の不在下であっても希釈率とともに急速に減少する。どんな場合でも、アセテート/ブチレート比の変化はPDO収量に大きな影響を及ぼさない。
【0004】
二官能性有機化合物としてのPDOは、多くの合成反応に、特に、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリウレタンを生産するための重縮合のモノマーとして潜在的に用いることができる。PDOは種々の化学経路によって生産することができるが、極度な汚染物質を含有する廃液流を出し、そして、生産コストは高く、化学的に生産されたPDOは、石油化学的に利用可能な1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールのようなジオールと競合し得ない。従って、それまでのところ、PDOはわずかな市場規模のニッチ利用しか見出せていない。これが、1995年にデュポンがグルコースのPDOへの生物変換に関する研究プログラムを始めた理由である。このプロセスは環境に優しいが、i)価格が極めて高い補因子ビタミンB12を使用する、およびii)生産株が不安定であるために不連続なプロセスである、という欠点がある。バイオディーゼル工業から出る大量のグリセロールが利用できるため、ビタミンB12に頼らず、炭素収量のより高い連続的プロセスが有利となる。
【0005】
PDOが、グリセロールと塩および水の混合物をおよそ80〜85%含むバイオディーゼル生産の望まない副産物であるグリセリンから生産可能であることは当技術分野で公知である。
【0006】
C.ブチリカムは、バッチ法および二段階連続発酵において増殖し、工業用グリセロールからPDOを産生可能であったことが従前に記載されている(Papanikolaou et al., 2000)。しかしながら、最高グリセロール濃度において、得られる最大PDO力価は、希釈率0.02h−1で48.1g/Lであり、生産性0.9g/L/Hということであった。培養は、供給培地中最大グリセロール濃度90g/Lで、当業者には細菌バイオマス生産を増やすことに役立つことで知られている高価な有機窒素含有化合物である酵母抽出物の存在下で行われた。
【0007】
WO2006/128381には、天然PDO生産生物、例えば、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、C.ブチリカムまたはC.パスツリカム(C. pasteuricum)などを用いたバッチ培養および流加培養でのPDO生産のためのこのグリセリンの使用が開示されている。さらに、WO2006/128381において使用された培地はまた、酵母抽出物も含有する。この特許出願に記載のとおり、到達した最大の生産性は0.8〜1.1g.l.h−1の間である。
【0008】
C.アセトブチリカム(C. acetobutylicum)DG1 pSPD5と呼ばれる、C.ブチリカム由来のビタミンB12非依存性グリセロールデヒドラターゼとPDOデヒドロゲナーゼを含有するように改変されたC.アセトブチリカム株の能力は、Gonzalez-Pajuelo et al., 2005に記載されている。この株は、120g.l−1までの純粋なグリセロールを含有する供給培地では最初は増殖し、PDOを産生する。さらに、最大60g.l−1の純粋なグリセロールまたは工業用グリセロールを含有する供給培地での分析ではいかなる違いも確認されなかった。C.ブチリカムをC.アセトブチリカムDG1 pSPD5と比較したときには、著者らによって全体的類似行動が観察されたGonzalez-Pajuelo et al., 2006。
【0009】
しかしながら、有機窒素を含まない合成供給培地中105g.l−1の工業用グリセロールで試験した同じC.アセトブチリカムDG1 pSPD5株は、同じ濃度の純粋なグリセロールの場合と同じ能力を発揮することができなかった(実施例1参照)。
【0010】
本発明は、高濃度の工業用グリセリンを用いる1,3−プロパンジオール生産のための、より高いPDO力価および生産性に到達することができる手段を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、グリセリンの連続発酵プロセスにおける1,3−プロパンジオールの生産方法であって、グリセロールから1,3−プロパンジオールへの変換が可能な生産微生物を培養培地で培養すること、および1,3−プロパンジオールを回収することを含んでなり、前記培養培地が高濃度の、グリセロールを含んでなる工業用グリセリンを含んでなることを特徴とし、前記生産微生物が高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように予め適合された微生物である方法に関する。
【0012】
好ましい実施形態では、グリセロールは培養培地中に90〜120g/Lの間、好ましくは約105g/Lの濃度で存在する。
【0013】
培養培地は、好ましくは、いかなる有機窒素源も添加していない、特には酵母抽出物を含まない合成培地である。
【0014】
工業用グリセリンは、特にはバイオディーゼル生産の副産物である。
【0015】
生産微生物は、好ましくは細菌であり、より好ましくはクロストリジウム属のメンバーから選択され、特にはクロストリジウム・アセトブチリカムである。
【0016】
生産微生物は、有利には、グリセロールからの1,3−プロパンジオール生産が改善可能であるように遺伝的に改変された微生物である。
【0017】
好ましい実施形態では、生産微生物におけるグリセロールデヒドラターゼ活性は、補酵素B12またはその前駆体の1つの存在に依存せず、クロストリジウム・ブチリカムに由来する。
【0018】
好ましくは、生産微生物は、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養し、適合微生物を選択することによって、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖するように予め適合された微生物である。
【0019】
最終的には、1,3−プロパンジオールはさらに精製される。
【0020】
本発明はまた、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物への微生物の改変方法であって、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養し、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖が可能な適合微生物を選択することを含む方法に関する。
【0021】
微生物は、有利には、低希釈率で24時間から10日まで、好ましくは2日より長い、より好ましくは約8日の期間にわたって培養される。
【0022】
希釈率は、一般的には0.005〜0.1h−1の間、好ましくは0.005〜0.02h−1の間である。希釈率は、適合法中に変更することができ、最終的には、第1工程で0.005〜0.02h−1の間に、第2工程で希釈率は0.1h−1、好ましくは0.06h−1まで高められる。
【0023】
本発明はまた、適合微生物、すなわち、上記および下記の方法によって得ることができる、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された生産微生物に関する。
【0024】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0025】
本発明はまた、−34‰より低いδ13Cと、21,9‰〜0,5‰の間のδ18O、好ましくはδ13Cが−35‰より低く、δ18Oが21,9‰〜0,5‰の間である、より好ましくはδ13Cが−35,05‰〜−36,09‰の間であり、δ18Oが21,9‰〜17,34‰の間の中から選択される13C同位体値と18O同位体値の組合せを特徴とする、生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0026】
好ましい実施形態では、生物起源の1,3−プロパンジオールは、−2〜0の間、好ましくは−1〜−0,2の間、より好ましくは−0,65〜−0,4の間のδ13C/δ18O同位体比値を特徴とする。
【0027】
本発明はまた、熱可塑性ポリウレタンにおける鎖延長剤としての、ポリトリメチレンテレフタレートにおけるモノマーとしての、または化粧用処方物における成分としての、本発明の方法によって得られる、または上記で定義された生物起源の1,3−プロパンジオールの使用に関する。
【発明の具体的説明】
【0028】
本発明は、グリセリンの連続発酵プロセスにおける1,3−プロパンジオールの生産方法であって、グリセロールから1,3−プロパンジオールへの変換が可能な生産微生物を培養培地で培養すること、および1,3−プロパンジオールを回収することを含んでなり、前記培養培地は高濃度の、グリセロールを含んでなる工業用グリセリンを含んでなり、前記生産微生物は高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように予め適合された微生物である方法に関する。
【0029】
「微生物」という用語は、細菌、酵母および真菌からなる群の中から選択される微生物を意味する。優先的には、微生物は、好ましくは、腸内細菌科、バシラス科、クロストリジウム科、ストレプトマイセス科およびコリネバクテリア科からなる群の中から選択される細菌である。より優先的には、細菌は、エシェリキア種(好ましくは大腸菌(Escherichia coli))、クレブシエラ種(好ましくは肺炎桿菌)、バチルス種(好ましくは枯草菌(Bacillus subtilis))、クロストリジウム種(好ましくはクロストリジウム・アセトブチリカムおよびクロストリジウム・ブチリカム)およびコリネバクテリウム種(好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum))からなる群の中から選択される。
【0030】
「エシェリキア」、「クレブシエラ」、「バチルス」、「クロストリジウム」および「コリネバクテリウム」という用語は、これらの科または属に属するあらゆる種類の微生物を指す。
【0031】
「生産微生物」または「生産微生物株」という用語は、微生物のグリセロール代謝が1,3−プロパンジオール生産に向けられた微生物または微生物株を意味する。
【0032】
「適合された微生物」とは、高濃度の工業用グリセリンで増殖可能であるように改変された微生物を意味する。
【0033】
「適当な培養培地」または「培養培地」とは、生産株の成長およびジオール生産用に最適化された培養培地を指す。
【0034】
「高グリセリン含量」または「高濃度のグリセリン」という用語は、培養培地中のグリセロールが90g/lより高いことを意味する。好ましい実施形態では、培養培地は、グリセロールを90〜120g/Lの間、好ましくは約105g/Lの濃度で含んでなる。
【0035】
「工業用グリセリン」とは、実質的に精製することなく工業プロセスから得られるグリセリン製品を意味する。工業用グリセリンはまた、「粗製グリセリン」、「粗製グリセロール」または「工業用グリセロール」と呼ばれることもある。工業用グリセリンは、約70%を超える、好ましくは約80%を超えるグリセロール、15%未満の水および無機塩や脂肪酸などの不純物を含有する。無機塩の濃度は、10%未満、好ましくは5%未満である。脂肪酸の濃度は、20%未満、好ましくは5%未満である。工業用グリセリンの最も代表的な脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸およびアラキジン酸である。
【0036】
工業用グリセリンが得られる工業プロセスは、とりわけ、脂肪および油、特に植物由来の脂肪および油が、洗剤または潤滑剤などの工業製品へと加工される製造方法である。かかる製造方法では、工業用グリセリンは副産物と考えられる。
【0037】
特定の実施形態では、工業用グリセリンはバイオディーゼル生産の副産物であり、バイオディーゼル生産から得られるグリセリンの既知の不純物を含んでなり、約80〜85%のグリセロールと、塩、水および、脂肪酸などのいくつかの他の有機化合物を含んでなる。バイオディーゼル生産から得られる工業用グリセリンは、さらなる精製工程に付されていない。
【0038】
「合成培地」という用語は、生物を成長させる化学的に定義された基質を含んでなる培養培地を意味する。
【0039】
本発明の培養培地において、グリセロールは、有利には単一炭素源である。好ましくは、この培養培地は有機窒素源を含有しない。窒素は、植物および動物の両方において成長および生殖に必須である天然に存在する元素である。窒素は、アミノ酸においても多くの他の有機化合物および無機化合物においても見つけられる。「有機窒素」とは、本発明によれば、生きている生物から得られる、窒素を含む有機化合物を意味する。細菌培養用の通常の有機窒素源は、酵母抽出物を含んでなる。
【0040】
好ましい実施形態では、生産微生物はクロストリジウム株、より好ましくはクロストリジウム・アセトブチリカムである。
【0041】
本発明のもう1つの実施形態では、生産微生物は遺伝的に改変された細菌である。
【0042】
「遺伝的に改変された微生物」という用語は、その株がその遺伝的特徴を変化させる目的のために形質転換されていることを意味する。内在性遺伝子を減弱、欠失、または過剰発現させることができる。外来遺伝子を導入したり、プラスミドによって運ばせたり、またはその株のゲノムに組み込んだりして、細胞内で発現させることができる。
【0043】
本明細書において「プラスミド」または「ベクター」という用語は、細胞の中心の代謝の一部ではない遺伝子を多くの場合運び、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外要素を指す。
【0044】
本発明のもう1つの実施形態では、前記方法は、生産微生物が、補酵素B12またはその前駆体の1つの存在に依存しない、クロストリジウム・ブチリカムに由来するグリセロールデヒドラターゼ活性を有することを特徴とする。
【0045】
特に、生産微生物は、プラスミドによって過剰発現されるかまたは微生物の染色体に組み込まれる(ビタミンB12非依存性1,3−プロパンジオール経路に関与する酵素をコードする)、C.ブチリカム由来の1,3−プロパンジオールオペロンの追加のコピーを導入することによって1,3−プロパンジオール生産のフラックスの増大を示す。例えば、1,3−プロパンジオールオペロンの過剰発現には、pSPD5プラスミドを使用することができる。
【0046】
グリセロール代謝を1,3−プロパンジオール生産に向けるための方法は、当技術分野で公知である(例えば、WO2006/128381、Gonzalez-Pajuelo & al. 2006を参照)。
【0047】
本発明のもう1つの実施形態では、生産微生物は、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように予め適合された微生物である。生産微生物の前記「適合」は、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養し、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖が可能な適合微生物を選択することによって得られる。
【0048】
本発明はまた、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物への微生物の改変方法に関する。
【0049】
生産微生物を高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖が可能な生産微生物へと形質転換するために、当業者はいくつかの「適合プロセス」を選択することができる。
【0050】
本発明によれば、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物への微生物の改変は、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養し、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖が可能な適合微生物を選択することを含んでなる。
【0051】
微生物は、有利には、低希釈率で24時間から10日まで、好ましくは2日より長い、より好ましくは約8日の期間にわたって培養される。
【0052】
希釈率は、一般的には0,005〜0,1h−1の間、好ましくは0,005〜0,02h−1の間である。希釈率は、適合法中に変更することができ、最終的には、第1工程で0.005〜0,02h−1の間に、第2工程で希釈率は0,1h−1、より好ましくは0,06h−1まで高められる。適合法中に希釈率を改変する場合、0.005〜0.02h−1の間の希釈率を「低希釈率」と呼び、一方、0.02〜0.1h−1の間の希釈率を普通希釈率と呼ぶ。
【0053】
本発明はまた、上記の方法によって得ることができる、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物に関する。
【0054】
本発明の方法を用いて適合された微生物は、好ましくは、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するようにさらに適合された生産微生物である。
【0055】
前記適合微生物はまた、最初に高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合され、さらにグリセロール代謝を1,3−プロパンジオール生産へ向けるように改変された微生物でもある。
【0056】
本発明による「適合微生物」は、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された生産微生物であり、
−そのグリセロール代謝が1,3−プロパンジオール生産に向けられている、および
−前記微生物は、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖が可能である
という2つの基本特性を有する。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、C.アセトブチリカムDG1 pSPD5株は、バイオディーゼル生産からの105g.l−1の粗製グリセロールを含有する供給培地を用いて、0.005〜0.02h−1の間、好ましくは0.02h−1の低希釈率での連続培養により培養される。最大10日、好ましくは5〜8日の間の期間かかって、その株は供給培地中に存在する高グリセリン濃度に適合され、希釈率を0.1h−1まで、好ましくは0.06h−1まで高めることができる(実施例2参照)。
【0058】
希釈率の段階的上昇は、バッチ期終了時〜10日の間に、優先的には5日、5〜8日の間、約7日の後に行うことができ、結果として、連続培養の生産性の向上がもたらされる(実施例3参照)。
【0059】
有利には、適合期の後、供給培地中のグリセロール濃度を120g.l−1まで高めることができる。しかしながら、120g.l−1の工業用グリセロールを用いて前記株を適合させる直接的な試みは、グリセロール濃度105g.l−1に関しては希釈率0.02h−1でも不可能であり、これはまた前記株が事前の適合なしに供給培地中高グリセリン濃度の存在下で増殖することができないことを示している。
【0060】
本発明の方法は、その種々の実施形態(遺伝的に改変された微生物の使用および/または有機窒素源を添加していない培地の使用)において1,3−プロパンジオールの生産を導き、その際、0.05〜0.6g.h−1の間の希釈率では、収量は0,4〜0.6g.g−1の間であり、生産性は1.8〜3.5g.l−1.h−1の間である。好ましくは、収量は0.5〜0.56g.g−1の間であり、生産性は2〜2.9g.l−1.h−1の間である。
【0061】
本発明の特定の態様では、生産された1,3−プロパンジオールをさらに精製する。
【0062】
連続発酵プロセスは当業者には公知である。
【0063】
その発酵プロセスは、一般的には、少なくともグリセリン、グリセロールを含有するバイオディーゼル生産の副産物、および必要に応じて代謝産物の生産のための補基質を含有する、使用する微生物に適合した既知の定義された組成の無機培養培地の入ったリアクターで行われる。
【0064】
本発明のこの方法は、好ましくは、連続的プロセスにより実現される。当業者ならば、これらの各実験条件を管理する方法、および本発明による微生物の培養条件を決定する方法を熟知している。特に、クロストリジウムは、C.アセトブチリカムの場合には20℃〜60℃の間、優先的には25℃〜40℃の間の温度で発酵させる。
【0065】
発酵培地から1,3−プロパンジオールを回収し、最終的に精製するための方法は当業者には公知である。1,3−プロパンジオールは蒸留によって単離し得る。ほとんどの実施形態では、1,3−プロパンジオールは、発酵培地からアセテートなどの副産物とともに蒸留され、その後、公知の方法によってさらに精製される。
【0066】
本発明はまた、上記の方法に従って得られた生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0067】
本発明はまた、その同位体比を特徴とする生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。水素(D/H)と炭素(13C/12C)の同位体比の分析により、蜂蜜(Grenier-Lcustalot et al., 2006)やワイン(Guillou et al, 2001)などの特定製品の真正性指標が得られる。13C/12C同位体比は、起源識別の指標となり、特定製品および使用原料の生合成代謝経路を反映する。実際には、カルビン・ベンソン光合成回路を用いるC3植物とハッチ・スラック光合成回路を用いるC4植物とを識別することができる。WO01/11070には、グルコースから生産された生物起源の1,3−プロパンジオールの13C/12C同位体比が−10,9〜−15,4の間であり;グリセロールから生産された生物起源の1,3−プロパンジオールの13C/12C同位体比が−22,41〜−22,60の間であり、一方、化学的に生産された1,3−プロパンジオールの13C/12C同位体比が−17,95〜−18,33の間であることが記載されている。
【0068】
本発明によれば、1,3−プロパンジオールD/H比(δDと記述)、13C/12C比(δ13Cと記述)、18O/16O比(δ18Oと記述)は、燃焼後の質量分析によって決定した。同位体13C/12C比は、国際標準(PDB=ベレムナイト(Pee Dee Belemite))を基準にしてδパーミル(‰)として算出した。同位体18O/16O比は、国際的な標準平均海水(SMOW)を基準にしてδパーミル(‰)として算出した。同位体D/H比は、国際的な標準平均海水(SMOW)と比較してppmとして算出した。
【0069】
D/H比および13C/12C比は、製品の評価として周知であるが、18O/16O比は主に、水分析のために古気候指標として用いられる。
【0070】
種々のタイプの1,3−プロパンジオールの間での比較では、δDに識別力がないことが分かる。グリセロールからの生物起源の1,3−プロパンジオール(本発明の対象)のδDは147.38ppm〜145.84ppmの間であるのに対し、グルコースからの生物起源の1,3−プロパンジオールのδDは145ppmであり、化学製品の1,3−プロパンジオールのδDは150.19ppm〜139.37ppmの間である。
【0071】
本発明は、δ13C同位体値が−34‰より低く、好ましくは−35‰より低く、より好ましくは−35.05‰〜−36.09‰の間であることを特徴とする、上記の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0072】
本発明はまた、δ18O同位体値が21.5‰〜0.5‰の間、好ましくは21.9‰〜15‰の間であり、より好ましくは21.9‰〜17.34‰の間であることを特徴とする、上記の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0073】
本発明はまた、下記の特性の1つまたはその組合せ:
34‰より低いδ13Cと、21.9‰〜0.5‰の間のδ18Oの中から選択される13C同位体値と18O同位体値、
好ましくはδ13Cが−35‰より低く、δ18Oが21.9‰〜0.5‰の間である、
より好ましくはδ13Cが−35.05‰〜−36.09‰の間であり、δ18Oが21.9‰〜17.34‰の間である(実施例4参照)
を特徴とする生物起源の1,3−プロパンジオールに関する。
【0074】
本発明の一実施形態では、生物起源の1,3−プロパンジオールは、18O/13C同位体比値が−2〜0の間;好ましくは−1〜−0.2の間、より好ましくは−0.65〜−0.4の間であることを特徴とする。
【0075】
好ましくは、上記同位体比を特徴とする生物起源の1,3−プロパンジオールは、原料としてのグリセロールに基づく発酵によって得られる。より好ましくは、上記同位体比を特徴とする生物起源の1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための本発明の方法から得られる。
【0076】
本発明はまた、熱可塑性ポリウレタンにおける鎖延長剤としての、ポリトリメチレンテレフタレートにおけるモノマーとしての、または化粧用処方物における成分としての、本発明の方法によって得られる、または上記で定義される生物起源の1,3−プロパンジオールの使用に関する。生物起源の1,3−プロパンジオールは、化学製品の1,3−プロパンジオールのあらゆる既知用途に使用し得る。当業者ならば、1,3−プロパンジオールからこれらの最終産物を得る方法を熟知している。
【0077】
本発明は、本発明による生物起源の1,3−プロパンジオールを鎖延長剤として使用する熱可塑性ポリウレタンの製造方法に関する。本発明はまた、本発明による生物起源の1,3−プロパンジオールを含有する化粧用組成物の製造方法に関する。本発明はまた、本発明による生物起源の1,3−プロパンジオールをモノマーとして使用するポリトリメチレンテレフタレートの合成方法に関する。
【実施例】
【0078】
実施例1
クロストリジウムのバッチ培養に使用した合成培地は、脱イオン水1リットル当たり:グリセロール、30g;KH2PO4、0.5;K2HPO4、0.5g;MgSO4、7H2O、0.2g;CoCl2 6H2O、0.01g、H2SO4、0.1ml;NH4Cl、1.5g、ビオチン、0.16mg;p−アミノ安息香酸、32mgおよびFeSO4、7H2O、0.028gを含有するものであった。培地のpHは、NH4OH 3Nを用いて6.3に調整した。バッチ培養には、Sigmaから購入した市販のグリセロール(純度99.5%)を使用した。連続培養用の供給培地は、水道水1リットル当たり:粗製グリセロール、105g;KH2PO4、0.5;K2HPO4、0.5g;MgSO4、7H2O、0.2g;CoCl2 6H2O、0.026g;NH4Cl、1.5g、ビオチン、0.16mg;p−アミノ安息香酸、32mg;FeSO4、7H2O、0.04g、消泡剤、0,05ml;ZnSO4、7H2O、8mg;CuCl2、2H2O、4mg;MnSO4、H2O、40mg、H3BO3、2mg;Na2MoO4、2H2O、0.8mgを含有するものであった。この場合には培地のpHを調整しなかった。バイオディーゼル生産のエステル交換プロセスから生じる粗製グリセロールは、SAIPOL(Le Meriot, France)によって供給されたものであり、83%グリセロール(w/w)を含有していた。
【0079】
連続培養は、作業容量1000mlの2LバイオリアクターTryton(Pierre Guerin, France)で実施した。培養物量は、培養物の高さを自動調節することにより1000mlに一定に保った。培養物を200RPMで、35℃の温度で攪拌し、NH4OH 3Nを自動添加することによりpHを6.5に維持した。培養培地の酸化還元力(mVで表される)は、実験中制御し、記録した。嫌気性条件を作り出すために、容器に入った滅菌培地を60℃で1時間無菌無酸素窒素でフラッシュし、さらに、35℃に達するまでフラッシュした。バイオリアクターのガス出口は、ピロガロールを準備することにより酸素から保護した(Vasconcelos et al., 1994)。滅菌後、供給培地も室温に到達するまで無菌無酸素窒素でフラッシュし、O2が入らないように200ミリバールの窒素圧下で維持した。
【0080】
細胞濃度は、620nmで比濁分析により測定し、直接評価した細胞乾燥重量と相関させた。グリセロール、1,3−プロパンジオール、エタノール、ブタノール、酢酸および酪酸ならびに他の微量レベルの酸の濃度をHPLC分析により測定した。分離は、Biorad Aminex HPX−87Hカラムで実施し、屈折率により検出をなし得た。操作条件は以下の通りであった:移動相 硫酸0.5mM;流速0.5ml/分、温度、25℃。
【0081】
対数増殖期終了時に採取した、合成培地(上記のバッチ培養培地と同じものに酢酸、2.2g.l−1およびMOPS、23.03g.l−1の添加を行ったもの)において100mlフラスコ中で増殖中の培養物を接種材料(5%v/v)として用いた。培養物はまずバッチ式に増殖させた。対数増殖期初期に市販のグリセロールのパルスを添加した:パルスは、市販のグリセロール120g.l−1を含む合成培地(バッチ培養で記載した同じもの)の、流速50ml.h−1で3時間の添加(すなわち、18gのグリセロールの添加)と定義される。その後、バッチ式増殖を続け、対数増殖期終了前に連続供給を希釈率0.06h−1および105g.l−1の粗製グリセロールを含有する供給培地で開始した。
【0082】
表1:105g.l−1の粗製グリセロールにおけるC.アセトブチリカムDG1(pSPD5)の連続培養(D=0.06h−1、pH6.5およびT℃=35℃)。示した値は、3回の体積変化後に得られた定常状態条件における7ポイントの平均を表す。
【表1】

炭素回収率の算出では、二酸化炭素濃度を最終産物濃度から推定した。
【0083】
実施例2
使用した合成培地は、実施例1に記載のものと同じであった。前培養、接種およびバッチ式増殖は、上記と同じ条件で実施した。
【0084】
連続供給は、希釈率0.02h−1および105g.l−1の粗製グリセロールを含有する供給培地で開始した。これらの条件で数日後(すなわち、少なくとも、3回の体積変化に相当する、バイオリアクターへの接種の8〜10日後)に下記スキームに従って希釈率を0.02h−1から0.05h−1へと高めた:i)48時間に0.01h−1単位の上昇およびii)24〜48時間の休止工程、を3回繰り返した。培養物の安定後に前述のHPLCプロトコールを用いて産物の分析を行った。特に、本発明者らは、残留グリセロールが可能な限り少なくなるのを待ち、希釈率を48時間に0.06h−1まで最終上昇させた。
【0085】
表2:105g.l−1の粗製グリセロールにおけるC.アセトブチリカムDG1(pSPD5)の連続培養(D=0.05h−1および0.06h−1、pH6.5およびT℃=35℃)。示した値は、定常状態条件における3または4ポイントの平均を表す。
【表2】

炭素回収率の算出では、二酸化炭素濃度を最終産物濃度から推定した。
同じ条件で実施した別の培養物でも同じ結果に至った。
【0086】
実施例3
使用した合成培地は、実施例1に記載のものと同じであったが、供給培地は120g.l−1の粗製グリセロールを含有するものとした。前培養、接種およびバッチ式増殖は、上記と同じ条件で実施した。
【0087】
A)連続供給は、希釈率0.02h−1および120g.l−1の粗製グリセロールをそのまま含有する供給培地で開始した。
【0088】
表3:120g.l−1の粗製グリセロールにおけるC.アセトブチリカムDG1(pSPD5)の連続培養(D=0.02h−1、pH6.5およびT℃=35℃)。示した値は、3回の体積変化後に得られた定常状態条件における7ポイントの平均を表す。
【表3】

炭素回収率の算出では、二酸化炭素濃度を最終産物濃度から推定した。
【0089】
B)連続供給は、希釈率0.02h−1および105g.l−1の粗製グリセロールを最初に含有する供給培地で開始した。これらの条件で数日後(少なくとも、3回の体積変化に相当する)に上記スキームに従って希釈率を0.02h−1から0.06h−1へと高めた。その後、連続供給を、希釈率0.05h−1および120g.l−1の粗製グリセロールを含有する供給培地に変えた。
【0090】
表4:105g.l−1粗製グリセロールで、D=0.06h−1での供給後の、120g.l−1の粗製グリセロールにおけるC.アセトブチリカムDG1(pSPD5)の連続培養(D=0.05h−1、pH6.5およびT℃=35℃)。示した値は、少なくとも20回の体積変化後に得られた3ポイントの平均を表す。
【表4】

炭素回収率の算出では、二酸化炭素濃度を最終産物濃度から推定した。
【0091】
実施例4
δ13C値およびδ18O値の算出方法
13Cおよび18Oのレベルは、慣例により相対値として表される。通常、それらは2つの国際標準と比べたときの割合(δ)として表される。
13Cの場合、標準は、13C値が既知の化石炭酸塩であるベレムナイト石灰(Vienna. PD belemnite)」である。δの算出式は以下の通りである。
【数1】

18Oの場合、標準は、既知の18O値を有する「標準平均海水」(SMOW)である。式は、13Cのものと同じであり、O18基準値を用いる。
【0092】
使用材料および試料調製
13
PDOの13C/12C同位体比は、実験的に測定した二酸化炭素試料に基づいて算出した。この目的のために、試料を元素分析計で燃やし、得られた二酸化炭素を、同位体比測定用の元素分析計(CARLO ERBA NA 2100)と連結された質量分析計(Finnigan MAT DELTA)に注入した。このようにして質量44、45および46の二酸化炭素を分離し、定量した。次いで、それらの結果を、国際標準に対して事前に較正された常用基準(グルタミン酸)のものと比較することにより、13C/12C同位体比をδの千分の一スケールで算出した。
【0093】
18
18O/16O同位体比の測定は、有機化合物の連続フラックス中で行った。この目的のために、マイクロアナライザーの炉のレベルでの熱分解により試料を燃やし、生じた一酸化炭素を質量分析計(元素分析計Fisons NA1500 2シリーズと連結されたOPTIMA、またはThermoelectron製の元素分析計TC/EAと連結された質量分析計Delta V)に送った。熱分解によって生じた一酸化炭素において28、29、30の異なる同位体を確認した。次いで、それらの結果をSMOWと比較することにより、18O/16O同位体比をδの千分の一スケールで算出した。
【0094】
結果
粗製グリセロールから生産されたPDOでは、本発明者らは平均δ13C値−35.57±0.52‰を得、グルコースから生産されたPDOは平均δ13C値−12.6‰を有し、化学的に生産されたPDOは平均δ13C値−30.05±5.02‰を有していた。
【0095】
粗製グリセロールから生産されたPDOは平均δ18O値19.76±2.42‰を有し、グルコースから生産されたPDOは平均δ18O値22.0‰を有し、化学的に生産されたPDOは平均δ18O値−0.80±1.27‰を有していた。
【0096】
このように、δ13Cの測定によって、多様な原料から発酵プロセスによって生産されたPDOを識別することが可能である。化学的に生産されたPDOのδ13Cは、大きなばらつきを示し(−30.05±5.02)、グリセロールから生産されたPDOのδ13Cよりもわずかだけ大きい。化学的に生産されたPDOのδ18Oは、非常に低い値を有し(−0.8±1.27)、この値により、化学的に生産されたPDOとグルコースまたはグリセロールのいずれかに基づく生物学的起源のPDOとを識別することが可能である(図1)。
【0097】
δ18O/δ13C値により、異なるPDOを同定することが可能であることは明らかであり(図2)、グリセロールに基づくPDOのδ18O/δ13C比は−0.56、グルコースに基づくPDOでは−1.75、化学的に生産されたPDOでは0.03である。結論として、グリセロールから生産されたPDOは、δ13Cおよびδ18Oの測定、続いてのδ18O/δ13Cの決定により同定することができる。
【0098】
参考文献

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】PDO δ13Cおよびδ18O(国際標準の‰):PDO1:記載したプロセスに従って生産されたPDO;PDO2:基質としてのグルコースから生産されたPDO;PDO3:化学的プロセスによって生産されたPDO。
【図2】PDOのδ18O/δ13C比:PDO1:記載したプロセスに従って生産されたPDO;PDO2:基質としてのグルコースから生産されたPDO;PDO3:化学的プロセスによって生産されたPDO。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンの連続発酵プロセスにおける1,3−プロパンジオールの生産方法であって、グリセロールから1,3−プロパンジオールへの変換が可能な生産微生物を培養培地で培養すること、および1,3−プロパンジオールを回収することを含んでなり、前記培養培地は、高濃度の、グリセロールを含んでなる工業用グリセリンを含んでなり、前記生産微生物は、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように予め適合された微生物である、方法。
【請求項2】
グリセロールが、培養培地中に、90〜120g/Lの間、好ましくは約105g/Lの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工業用グリセリンが、バイオディーゼル生産の副産物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
培養培地が、有機窒素源を添加していない、特には酵母抽出物を添加していない、合成培地である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
生産微生物が、クロストリジウム属のメンバーから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
生産微生物が、クロストリジウム・アセトブチリカムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生産微生物が、遺伝的に改変された細菌である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生産微生物におけるグリセロールデヒドラターゼ活性が、補酵素B12またはその前駆体の1つの存在に依存せず、クロストリジウム・ブチリカムに由来する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生産微生物が、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養し、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖が可能な適合微生物を選択することによって生産微生物に適合される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1,3−プロパンジオールがさらに精製される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物への微生物の改変方法であって、高濃度の工業用グリセリンを含んでなる培養培地で微生物を低希釈率で培養すること、および、高濃度の工業用グリセリンを含む培養培地で増殖が可能な適合微生物を選択することを含んでなる、方法。
【請求項12】
微生物が、低希釈率で、24時間から10日までの期間にわたって培養される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
希釈率が、0.005〜0.1h−1の間である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、高濃度の工業用グリセリンの存在下で増殖するように適合された微生物。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られる生物起源の1,3−プロパンジオール。
【請求項16】
−34‰より低い、好ましくは−35‰より低い、より好ましくは−35.05‰〜−36.09‰の間のδ13C同位体値を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオール。
【請求項17】
δ18O同位体値が、21.5‰〜0.5‰の間、好ましくは21.9‰〜15‰の間、より好ましくは21.9‰〜17.34‰の間であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオール。
【請求項18】
下記の値:
a)δ13C値が−34‰より低く、δ18O値が21.5‰〜0.5‰の間である、
b)δ13C値が−35‰より低く、δ18O値が21.9‰〜15‰の間である、または
c)δ13C値が−35.05‰〜−36.09‰であり、δ18O値が21.9‰〜17.34‰の間である
の中から選択されるδ13C同位体値とδ18O同位体値の組合せを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオール。
【請求項19】
18O/13C同位体比値が、−2〜0の間、好ましくは−1〜−0.2の間、より好ましくは−0.65〜−0.4の間であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる生物起源の1,3−プロパンジオール。
【請求項20】
熱可塑性ポリウレタン合成における鎖延長剤としての、請求項15〜19のいずれか一項に記載の1,3−プロパンジオールの使用。
【請求項21】
化粧用処方物における成分としての、請求項15〜19のいずれか一項に記載の1,3−プロパンジオールの使用。
【請求項22】
ポリトリメチレンテレフタレートの合成におけるモノマーとしての、請求項15〜19のいずれか一項に記載の1,3−プロパンジオールの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525827(P2012−525827A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509025(P2012−509025)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056078
【国際公開番号】WO2010/128070
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(505311917)メタボリック エクスプローラー (26)
【Fターム(参考)】