説明

高コントラスト透明導電体およびそれを形成する方法

導電性ナノ構造ベースの透明導電体のコントラスト比を向上させる方法について説明する。コントラスト比は、導電性ナノ構造をめっきし、その後、下層の導電性ナノ構造をエッチングまたは酸化するステップによって、ナノ構造の光散乱および反射率の低減によって大幅に改善する。一実施形態は、基板と、基板上の導電性膜であって、複数の金属ナノ構造を備える導電性膜とを備える透明導電体であって、1000を超えるコントラスト比を有する透明導電体について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/913,231号(2007年4月20日出願)、米国仮特許出願第60/978,635号(2007年10月9日出願)および米国仮特許出願第61/031,643号(2008年2月26日出願)の米国特許法第119条第(e)項の優先権の利益を主張し、これらの出願の全ては、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、ディスプレイシステムにおける機能性膜として適切である高コントラスト透明導電体に関し、より具体的には、導電性ナノ構造ベースの透明導電体およびそれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の記載)
導電性ナノ構造は、そのサブミクロン寸法に起因して光透過性の導電性膜を形成することが可能である。これらの導電性膜は、「透明導電体」とも呼ばれ、カラーフィルタ、薄膜トランジスタ、偏光子、透明電極、およびその同等物としての多様な用途を有する。同時係属米国特許出願第11/504,822号は、導電性ナノ構造、具体的には、金属ナノワイヤベースの透明導電体について説明している。
【0004】
同時係属米国特許出願第11/871,767号は、光透過性および電気伝導度の両方を提供するナノワイヤベースの透明導電体を特徴とする機器およびディスプレイについて説明している。
【0005】
同時係属米国特許出願第11/871,721号は、高度に整列したナノワイヤベースの機能性膜(例えば、偏光子)について説明している。これらの同時係属出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
上記同時係属米国特許出願に説明するように、ナノ構造ベースの透明導電体は、従来のインジウムスズ酸化物(ITO)ベースの透明導電性膜に取って代わることが可能である。ITO膜のように、ナノ構造ベースの透明導電体は、特に、フラットパネルディスプレイおよびタッチスクリーン等のエレクトロクロミックディスプレイにおける機能性膜として有用である。
【0007】
透明導電体に関するいくつかの光学的および電気的パラメータは、典型的には、ディスプレイシステムにおける適切な機能について評価される。これらのパラメータには、例えば、光透過性、抵抗率、およびコントラスト比が含まれる。特に、コントラスト比は、ディスプレイシステムが産生する画質に密接に関連する。
【0008】
ディスプレイシステムのコントラスト比は、ディスプレイシステムが産生可能である最も明るい白色と最も暗い黒色との比率をいう。典型的には、コントラスト比が高いほど、鮮明さおよび輝度等の画質が優れている。反対に、不十分なコントラスト比は、非飽和色、真の黒色の不足、繊細な詳細の損失等に現れる。
【0009】
コントラスト比は、フラットパネルディスプレイにおいて特に重要な特質である。電子ビームによるリンの励起によってディスプレイの前面で光を産生する従来の陰極線管ディスプレイとは違って、フラットパネルディスプレイは、典型的には、バックライト付きであり、光は、ディスプレイから出射する前に、多数の光学的要素および電気的要素を通らなければならない。さらに、液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネルディスプレイは、各画素における光透過性を制御するために、偏光を変調することを必要とする。したがって、偏光解消、すなわち偏光の非偏光への変換は、ディスプレイの全体のコントラスト比および輝度の低下に寄与する支配要因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フラットパネルディスプレイにおいて偏光子、カラーフィルタ上の塗膜、および透明電極等の機能性膜として使用する場合、ナノ構造ベースの透明導電体は、粒子導電性媒体の存在によって偏光解消を引き起こし、コントラスト比を低下させることが懸念される。偏光解消およびコントラスト比に影響を及ぼし得る要因には、例えば、粒子形状およびサイズ、粒子間反射、ならびに光散乱が挙げられる。したがって、そのコントラスト比を向上させるために、ナノ構造ベースの透明導電体においてナノ構造により引き起こされる偏光解消を低減または排除する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
高コントラスト比(例えば、1000より高い)の金属ナノ構造ベースの透明導電体について説明する。ナノワイヤおよびナノチューブを含む導電性ナノ構造ベースの導電性膜のコントラスト比を向上させるプロセスについても説明する。
【0012】
一実施形態は、基板と、基板上の導電性膜であって、複数の金属ナノ構造を備える導電性膜とを備える透明導電体であって、1000を超えるコントラスト比を有する透明導電体について説明する。
【0013】
別の実施形態は、溶媒と、粘度調整剤と、界面活性剤と、複数の金属ナノチューブとを含み、ナノチューブの重量パーセントが0.05%から1.4%である組成物について説明する。
【0014】
さらなる実施形態は、溶媒と、粘度調整剤と、界面活性剤と、複数の金属ナノチューブとを含み、界面活性剤と粘度調整剤との比率が約80から約0.01の範囲にある組成物について説明する。
【0015】
さらなる実施形態は、複数の金ナノチューブを備える透明導電体であって、金ナノチューブは、85%より高い光透過性、1%より低いヘーズ、および1500Ω/□よりも低い抵抗率を有する導電製網を形成する透明導電体について説明する。
【0016】
さらなる実施形態は、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、めっきテンプレートナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップと、導電性網を形成するために、中空ナノ構造を基板上に蒸着するステップとを含む、プロセスについて説明する。
【0017】
別の実施形態は、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、テンプレート網を形成するために、テンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、テンプレート網におけるテンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップであって、中空ナノ構造は導電性膜を形成するステップとを含む、プロセスについて説明する。
【0018】
別の実施形態は、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、めっきテンプレートナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっきテンンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップであって、中空ナノ構造は導電性膜を形成するステップとを含む、プロセスについて説明する。
【0019】
さらなる実施形態は、テンプレート網を形成するために、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、テンプレート網におけるテンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、第1の種類の金属のテンプレートナノ構造を酸化するステップとを含むプロセスについて説明する。
【0020】
他の実施形態は、本明細書に記載のプロセスによって調製される透明導電体について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面において、同一の参照番号は、類似の要素または作用を示す。図面における要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、種々の要素の形状および角度は一定の縮尺で描かれず、これらの要素のいくつかは、図面の視認性を改善するために、任意により拡大および配置されている。さらに、描かれる要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えることを意図せず、単に、図面を認識し易いように選択されただけである。
【図1】図1Aおよび図1Bは、偏光子の間に配置される透明導電体試料のコントラスト比を評価するためのシステムを図式的に示す。
【図2】図2は、ナノワイヤをめっきし、その後エッチングする実施形態を図式的に示す。
【図3】図3Aは、最初にテンプレートナノワイヤベースの膜を形成し、その後、めっきおよびエッチングを行なう順番で、ナノチューブから構成される導電膜を調製するための実施形態を示す。図3Bは、最初にテンプレートナノワイヤをめっきし、その後、膜形成およびエッチングを行なう順番で、ナノチューブから構成される導電膜を調製するための実施形態を示す。図3Cは、最初にテンプレートナノワイヤをめっきし、その後、エッチングおよび膜形成を行なう順番で、ナノチューブから構成される導電膜を調製するための実施形態を示す。
【図4】図4は、ナノワイヤをめっきし、その後、酸化または黒色化する実施形態を図式的に示す。
【図5】図5は、高度に整列するナノワイヤを透過する際の光の偏光を図式的に示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、高度に整列するナノワイヤを有する透明導電体のコントラスト比を評価するためのシステムを図式的に示す。
【図7】図7は、ナノワイヤが直交して整列するナノワイヤの効率的な網を示す。
【図8】図8は、ナノワイヤを金属でめっきし、その後、導電性ポリマーでめっきする実施形態を示す。
【図9】図9は、透明導電体試料におけるコントラスト比を評価するためのシステムおよびその幾何学的形状を示す。
【図10】図10は、透明導電体試料におけるコントラスト比の直接視覚的評価のためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(コントラスト比)
本明細書において使用する際に、コントラスト比は、平行透過軸を有する2つの偏光子を通る光透過性(T)と、垂直(すなわち、直角)透過軸を有する2つの偏光子を通る光透過性(T)との間の比率として定義される。
【0023】
コントラスト比=T/T 公式(I)
したがって、コントラスト比は、交差偏光子の効率に依存する。偏光解消が存在しない場合、交差偏光子の完全な組により測定されるコントラスト比は、論理的には無限に及び得る。しかしながら、実際は、散乱および反射により引き起こされる偏光解消により、コントラスト比の低下がもたらされ得る。
【0024】
典型的には、偏光解消は、光の伝搬、反射、散乱、または回折によって発生する。不完全な偏光子および偏光子間に配置される任意の中間光学的要素は、偏光解消に寄与し、公式(I)に従い測定されるコントラスト比を低下させ得る。
【0025】
図1Aおよび図1Bは、一対の偏光子の間に配置される透明導電体試料を光が通る場合に、透明導電体試料のコントラスト比を評価するためのシステムを図式的に示す。
【0026】
図1Aは、Tの測定を示す。図示するように、光源10は、非偏光14を発光し、非偏光14は、第1の偏光子18、透明導電体試料22、および第2の偏光子26を連続的に通る。第1の偏光子18および第2の偏光子26は、その透過軸(18’および26’のそれぞれ)が相互に直角であるように配置される。
【0027】
非偏光14は、第1の偏光子18を通り、偏光30として出射し、偏光30は、透過軸18’に沿って偏光される。この偏光30は、引き続き、透明導電体試料22および第2の偏光子26を通る。光34は、第2の偏光子26から出射し、透過軸26’に沿って偏光される。偏光34は、検出器38によって検出可能であり、検出器38は、透過(T)の値を産生する。
【0028】
任意の偏光解消が存在しなければ、偏光30の偏光方向に垂直である透過軸26’を有する第2の偏光子26は、偏光30を完全に阻止し、検出器38によって検出される光は存在しないだろう(すなわち、Tはゼロ)。しかしながら、透明導電体試料22による任意の偏光解消は、偏光30の一部を非偏光に変換し得る。非偏光は、第2の偏光子26の透過軸26’に沿って偏光される成分を有し、これは、第2の偏光子26を通過し、偏光34として現れた後に検出可能である。
【0029】
図1Bは、Tの測定を示す。その透過軸26”が第1の偏光子18の透過軸18’に平行であるように第2の偏光子26が配置されること以外は、図1Aに類似する設定において、光源10からの非偏光14は、第1の偏光子14によって偏光30に変換される。変換光30は、透明導電体試料22および第2の偏光子26を通る。出射する光42は、透過方向14’に平行である透過方向26”に沿って偏光される。検出器30は、偏光42の光透過性(T)を測定する。
【0030】
任意の偏光解消が存在しなければ、偏光42は、偏光30と同一の強度を有するだろう。しかしながら、透明導電体試料22による任意の偏光解消は、偏光30の一部を非偏光に変換し得る。この非偏光は、第2の偏光子26の透過軸26”に直角である成分を有し、これは、第2の偏光子26によって阻止される。したがって、出射する光42の強度(T)は、偏光解消によって偏光30の光強度よりも低下する。
【0031】
液晶ディスプレイ等のディスプレイシステムにおいて、コントラスト比は、産生される画質に直接関連する。既知のように、反射型LCDは、光強度を変動させる画素を動的に生成する液晶撮像器(例えば、液晶セルの列)を含む。動作中、電圧または信号が個々の画素に印加されると、液晶撮像器は作動し、入射光を反射すると同時に、光の偏光方向を90°回転させる。これは、「オン」状態であると考えられる。液晶撮像器が作動しない場合、液晶撮像器のこれらの特定の画素は「オフ」状態であり、液晶撮像器から反射される光は、偏光状態の回転を含まない。したがって、偏光を変調することによって、液晶撮像器は、信号または画像情報を制御する。「オン」画素からの信号は、最終画像における輝点に相当するべきである。「オフ」画素からの信号は、最終画像における暗点に相当すべきである。したがって、コントラスト比は、このようなシステムにおける画質の測定値であり、「オフ」状態における光(Tに類似する)によって割られる「オン」状態においてシステムを透過する光(Tに類似する)の比率である。
【0032】
(光散乱および反射率の低減によるコントラスト比の向上)
同時係属米国特許出願第11/504,822号、第11/871,767号、および第11/871,721号は、特定の実施形態において、金属ナノワイヤベースの透明導電体について説明する。金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)は、80%より高い光透過性と、約10−1000オーム/スクエア(または「Ω/□」)の表面または面内抵抗率とを達成可能である導電性網を形成する。ゆえに、銀ナノワイヤベースの網は、ディスプレイシステムの光路における機能性膜(例えば、透明電極またはカラーフィルタ上の塗膜)の適切な候補である。銀ナノワイヤは、反射粒子である。特定の機能(例えば、表面導電率)に必要な荷重レベルにおいて、反射率および散乱による衝突偏光の偏光解消を引き起こすのに十分な数の銀ナノワイヤが存在し得る。
【0033】
実証されるように、偏光解消によって、Tが減少および/またはTが増加し、次いで、公式(1)に従うコントラスト比が低下する。反対に、Tの増加および/またはTの低下により、コントラスト比が向上する。Tが公式(1)の分母であるため、Tのわずかな減少が、コントラスト比に対して多大な影響を与えることに注目されたい。したがって、光源の電力の増加(すなわち、図1Aおよび図1Bにおける非偏光14の強度の増加)によって、Tの増加によって、より高い輝度およびより高いコントラスト比が潜在的にもたらされるが、同程度のTの減少によって、より動的にコントラスト比を改善することが可能である。したがって、Tを減少させるために偏光解消を低減することは、コントラスト比の向上において高度に効果的である。したがって、偏光解消および光散乱の低減によって、透明導電体のコントラスト比を向上させる方法について説明する。また、これらの方法によって産生される透明導電体についても説明する。
【0034】
ナノ構造の光散乱の量は、その寸法に関連付けられている。典型的には、寸法が小さくなると、ナノ構造の表面から散乱される光は少なくなる。壁厚さが増加すると、ナノチューブからの光散乱が非線形的に低減することが理論的に実証されている。Zhu J., Material Science and Engineering A 454−455(2007)。
【0035】
したがって、一実施形態は、中空ナノ構造から構成される導電膜を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、テンプレート網を形成するために、テンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、テンプレート網におけるテンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップであって、中空ナノ構造は導電性網を形成するステップとを含む。
【0036】
本明細書において使用する際に、「ナノ構造」または「導電性ナノ構造」は、ナノサイズの構造を指し、その少なくとも1つの寸法は、500nm未満、より好ましくは、250nm、100nm、50nm、または25nm未満である。ナノ構造は、金属(例えば、遷移金属)、金属合金、金属化合物(例えば、金属酸化物)、導電性ポリマー、導電性カーボンナノチューブ、およびその同等物を含む任意の導電性材料から作製可能である。典型的には、ナノ構造は、金属材料から作製される。金属材料は、元素金属または金属化合物(例えば、金属酸化物)であることが可能である。また、金属材料は、2つ以上の種類の金属を含む金属合金または2種類の金属からなる材料であることが可能である。
【0037】
ナノ構造は、任意の形状または幾何学的形状を有することが可能である。特定の実施形態では、ナノ構造は、等方性形状(すなわち、アスペクト比=1)である。典型的な等方性ナノ構造には、ナノ粒子が含まれる。好適な実施形態では、ナノ構造は、異方性形状(すなわち、アスペクト比≠1)である。本明細書において使用する際に、アスペクト比は、ナノ構造の長さおよび幅(または直径)の比率を指す。典型的には、異方性ナノ構造は、その長さに沿って長手方向軸を有する。例示的な異方性ナノ構造には、本明細書に定義するように、ナノワイヤおよびナノチューブが含まれる。
【0038】
ナノ構造は、中実または中空であることが可能である。中実ナノ構造には、例えば、ナノ粒子およびナノワイヤが含まれる。「ナノワイヤ」は、本明細書に定義するように、中実異方性ナノ構造を指す。典型的には、各ナノワイヤは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0039】
中空ナノ構造には、例えば、ナノチューブが含まれる。「ナノチューブ」は、本明細書に定義するように、中空異方性ナノ構造を指す。典型的には、ナノチューブは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0040】
同時係属米国特許出願第11/504,822号に開示するように、ナノ構造のアスペクト比(長さ:直径)が高くなると、導電性網の形成に必要なナノ構造は少なくなる。本明細書において使用する際、導電性網は、相互接続ナノ構造または交差ナノ構造のシステムを指す。本説明において、導電性網は、10Ω/□以下の表面抵抗率(または、「シート抵抗」)を有する。好ましくは、導電性網は、10Ω/□、10Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□、および100Ω/□以下の抵抗率、または100Ω/□から1000Ω/□もしくは10Ω/□から100Ω/□の抵抗率を有する。特定の好適な実施形態では、導電性網は、ナノワイヤ、ナノチューブ、またはその混合等の異方性ナノ構造から形成される。典型的には、導電性網は、薄膜の形状をとり、「導電性膜」とも呼ばれる。種々の実施形態では、薄膜は、約100nmから200nmの厚さ、または50nmから100nmまでの厚さ、または150nmから200nmまでの厚さを有する。
【0041】
したがって、一実施形態は、基板と、基板上の導電性網であって、複数の金属ナノ構造を備える導電性網とを含む透明導電体を提供し、透明導電体は、1000を上回るコントラスト比を有する。種々の実施形態では、コントラスト比は、750、3000より高いか、または5000より高いことが可能である。他の実施形態では、透明導電体は、1000Ω/□未満、500Ω/□未満、100Ω/□未満、または50Ω/□から400Ω/□の間の表面抵抗率を有する。他の実施形態では、透明導電体は、5%未満のヘーズ、1%未満のヘーズを有する。さらなる実施形態では、透明導電体は、85%を上回る、90%を上回る、または95%を上回る光透過性を有する。
【0042】
典型的には、ナノ構造は、中空ナノ構造(例えば、金属ナノチューブ)、金属ナノワイヤ、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書に説明するように、ナノ構造は、銀ナノワイヤに比べて光散乱が低減可能である特定の形状、寸法、材料を有する。
【0043】
図2は、ナノ構造をめっきし、その後、ナノ構造をエッチングするプロセスを図式的に示す。ナノワイヤは、代表的なナノ構造として示され、本プロセスが全ての形状および構造のナノ構造に適用されることを理解されたい。簡略化および明確化のために、示されるナノワイヤは1つだけである。基板50上に、第1の種類の金属(例えば、銀)のナノワイヤ54が蒸着される。ナノワイヤ54をテンプレートとして使用して、第2の種類の金属(例えば、金)の薄塗膜58をめっきして、金めっきのナノワイヤ60を形成する。その後、選択エッチングステップを実行して、テンプレート、すなわちナノワイヤ54を除去する。ナノワイヤテンプレートの除去によって、塗膜120内に空洞62が形成され、このようにして、第1の種類の金属のナノワイヤ54を第2の種類の金属の中空ナノ構造66、すなわちナノチューブに変換する。
【0044】
特定の実施形態では、テンプレートナノ構造上の塗膜58の厚さ「d」は、テンプレートナノ構造(図2)の直径「D」未満である。塗膜の厚さは、めっき時間および/またはテンプレートナノ構造の表面荷重密度を調整することによって制御可能である。一般に、塗膜の厚さは、2−30nmの範囲、またはより典型的には、5−20nmの範囲であることが可能である。特定の好適な実施形態では、銀ナノワイヤ(直径30−80nm)は、約10−20nmの厚さの金の薄層でめっき可能である。
【0045】
エッチングから生じる中空ナノ構造66(図2)は、塗膜の厚さ「d」の実質的に等しい壁厚さを有する。塗膜58は、テンプレートナノ構造よりも薄いため、テンプレートナノ構造よりも、中空ナノ構造66の表面から散乱される光は少なくなる。
【0046】
概して、「テンプレートナノ構造」とも呼ばれる第1の種類の金属のナノ構造は、その寸法および組成に関する所望の仕様に従って最初に調製可能である。同時係属米国特許出願第11/504,822号により詳細に論じるように、ナノ構造は、化学的および生物学的に調製可能である。現在、溶液相中の化学的合成は、商業的に関連する規模でナノ構造を提供することが可能である。ナノワイヤをテンプレートとして使用する場合、「テンプレートナノワイヤ」は、制御可能な寸法で合成可能である。例えば、高アスペクト比(約100以上)を有する実質的に均一な銀ナノワイヤは、高収率(>95%)で、溶液相合成において化学的に調製可能である。本出願の譲受人であるCambrios Technologies Corporationへの同時係属米国特許出願第11/766,552号を参照されたく、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。銅、ニッケル、および他の金属ナノワイヤも、テンプレートとして使用可能である。典型的には、テンプレートナノワイヤは、約1−50μmの長さ、および20−500nmの直径を有する。
【0047】
典型的には、テンプレートナノ構造は、基板上の蒸着に適切な組成物に調合される。本明細書において使用する際に、蒸着され、膜に形成可能であるナノ構造(例えば、ナノワイヤ、ナノチューブ、めっきナノワイヤ、またはそれらの組み合わせを含む)の任意の組成物は、概して、「インク組成物」、「インク蒸着」、または「インク」と呼ばれる。典型的には、インク組成物は、ナノ構造の分散および/または基板上のナノ構造の固定化を促進する薬剤を含む。これらの薬剤には、界面活性剤、粘度調整剤、およびその同等物が含まれる。インク組成物の調合に関する詳細な説明は、同時係属米国特許出願第11/504,822号に記載されており、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0048】
「めっき金属」とも呼ばれるめっきされる金属は、その導電率、電気化学電位、反射率、化学安定性等に基づいて選択される。例えば、金は、金塗膜ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造(例えば、銀ナノワイヤ)上にめっき可能である。テンプレートナノ構造のエッチングは、本明細書に示すような金ナノチューブを産生し、中実ナノ構造と比べて光散乱を低下させることが可能である。テンプレートナノ構造上にめっき可能な他の適切な金属として、例えば、パラジウム、ニッケル、および白金が含まれる。
【0049】
めっきステップは、例えば、電気めっき、無電解めっき、または金属間変位によって実行可能である。電気めっき中、基板上に最初に蒸着されるテンプレートナノワイヤは、その上にめっき金属が電気化学的に蒸着可能である作用電極(すなわち、陰極)として使用可能である。典型的には、めっき金属は、めっき浴においてそのイオン型にあり、これは、テンプレートナノワイヤおよび対極(例えば、陽極)の両方に接触する。電流が印加されると、めっき金属のイオンは、陰極に移動し、テンプレートナノワイヤの表面上に蒸着中に、元素金属に還元される。代替として、めっき金属は、電流下で金属イオンに溶解する犠牲電極であることが可能である。
【0050】
無電解めっきでは、電極および電流のいずれも必要としない。代わりに、還元剤を使用して、めっき金属(イオン型)をその元素型に変換する。例えば、テンプレートナノワイヤをめっき液中に浸漬することが可能であり、めっき液は、そのイオン型のめっき金属および還元剤を含む。無電解めっきに適切な還元剤は、当技術分野において既知であり、ホルムアルデヒド、有機硼素剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン)、およびその同等物が含まれるが、これらに限定されない。イオンめっき金属の適切な混合を含むめっき液、適切な還元剤、および安定剤も、Stapleton Technologies,Inc.(Long Beach,CA)等の業者から市販されている。例えば、Stapleton(登録商標) Micro 291は、銀、ニッケル、銅等のめっき金属に適切な商業用の金めっき液である。
【0051】
テンプレートナノ構造を形成する金属およびめっき金属の相対活性に応じて、直接または自発的金属間変位は、さらに別のめっき方法論を提供する。金属間変位反応では、反応性の高い金属は、反応性の低い金属のイオン型を置換することが可能である。したがって、テンプレートナノワイヤが反応性の高い金属から作製される場合、テンプレートナノワイヤが、反応性の低い金属のイオンに接触すると、反応性の低い金属は、元素金属に変換され、一方、反応性の高い金属は、イオンに変換される。例えば、銀ナノワイヤをテンプレートとして使用する場合、薄層の金は、銀ナノワイヤと、1価塩(例えば、亜硫酸アンモニウム金)および3価塩(例えば、4塩化金酸)を含む金塩とを組み合わせることによって、各テンプレートナノワイヤ上にめっき可能である。1価金塩は、1:1の比率で銀原子を置換するため、典型的には好適であるが、3価金塩は、1金原子につき3つの銀原子を置換する。銀ナノワイヤは、浸食する(すなわち、銀イオンに変換する)が、金被膜は、残りの銀ナノワイヤ上に形成される。変位反応の進展は、銀ナノワイヤが金によって部分的または完全に置換可能であるように、制御可能である。
【0052】
選択エッチングは、第2の種類の金属の金属塗膜をエッチングせずに、第1の種類の金属のテンプレートナノ構造を除去する。エッチングは、エッチング液により化学的に実行可能である。一方の金属を区別してエッチングし、他方の金属を残す限り、エッチング液に関して特に制限しない。例えば、銀ナノワイヤテンプレートは、任意の銀エッチング液により除去可能であり、銀エッチング液には、硝酸(HNO)、過硫酸アンモニウム((NH8)、およびその同等物が含まれるが、これらに限定されない。任意により、最初に銀を酸化銀に変換するために、酸化剤も提示可能であり、酸化銀は、硝酸によってさらに溶解される。例示的な酸化剤は、過マンガン酸カリウム(KMnO)である。
【0053】
化学エッチングの代替として、電解エッチングを使用して、テンプレートナノ構造を除去することが可能である。電解エッチング中、テンプレートナノ構造は、陽極にされ、電解質に接触する。対極(すなわち、陰極)も、電解質に浸漬される。選択エッチングは、電極に印加する電圧を制御することによって達成される。電圧は、第1の種類の金属(テンプレートナノ構造用)の酸化電位より高く、また、第2の種類の金属(めっき金属用)の酸化電位よりも低くなくてはならない。このような電圧において、テンプレートナノ構造は、犠牲電極として選択的にエッチング可能であるが、めっき金属は影響を受けない。例えば、金塗膜銀ナノワイヤから銀をエッチングする場合、印加電圧は、典型的には約0.8Vであり、これは、銀を酸化するための電気化学電位よりも高いが、金を酸化するための電気化学電位よりも低い。結果として、銀ナノワイヤだけがエッチングされる。
【0054】
めっきおよびエッチングの種々の方法に関する上記説明に基づいて、めっきおよびエッチングに関する任意の合理的な組み合わせが実行可能であることを認識されたい。例えば、テンプレートナノ構造を、電気めっきおよび化学的エッチングすることが可能であるか、または電気めっきおよび電解エッチングすることが可能であるか、または無電解めっきおよび電解エッチングすること等が可能である。
【0055】
図3Aは、中空ナノ構造から構成される導電性膜、具体的には、ナノチューブを形成する上記プロセスを要約する。図示するように、テンプレートナノワイヤ54を、最初に、溶液相中で形成し、次いで、インクに調合し、基板62上に蒸着して、導電性網、すなわち「テンプレート網」70に形成する。テンプレートナノワイヤの分散、配向、および表面荷重密度(すなわち、単位面積当たりのナノワイヤの数)を制御することによって、テンプレート網70は、特定の電気伝導率ならびに光透過率および反射率を含む光透過性を達成することが可能である。次いで、テンプレートナノワイヤ54を、第2の金属の層58でめっきし、めっきナノワイヤ60を形成する。その後、テンプレートナノワイヤを、エッチングによって除去し、中空ナノ構造(すなわち、ナノチューブ66)を形成する。
【0056】
めっきプロセスおよびエッチングプロセスの後、テンプレート網70は、めっきナノワイヤ74の網に変形し、最終的に、めっき金属の中空ナノ構造から構成される新しい導電性膜78に変形する。有利には、テンプレートナノ構造により設定される一般的な分散、配向、および荷重密度は、最終導電性網78が、実質的に不変の光透過性により形成可能であるように保存される。しかしながら、結果として生じる中空ナノ構造の壁厚さは、概して、テンプレートナノ構造の直径より薄く作製されるため、光散乱は、大幅に低減可能である。実施例に示すように、ナノチューブから形成される網のコントラスト比は、ナノワイヤから形成される網よりも高い桁であることが可能である(例えば、実施例6参照)。
【0057】
図3Bは、最初に溶液相中でテンプレートナノ構造をめっきし、その後、膜形成およびエッチングすることによって、中空ナノ構造から構成される導電性膜を調製するための別の実施形態を示す。したがって、本プロセスは、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、めっきテンプレートナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっきテンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップであって、中空ナノ構造は導電性網を形成するステップとを含む。
【0058】
図3Bでは、ナノワイヤおよびナノチューブは、例示的なナノ構造として示される。図示するように、テンプレートナノワイヤ54を、最初に、溶液中で形成およびめっきする。めっきナノワイヤ60をインクに調合し、基板62上に蒸着して導電性膜74になる。その後、導電性膜74のめっきナノワイヤ60をエッチングして、ナノチューブ66から構成される最終導電性膜78を形成することが可能である。実施例10も参照されたい。
【0059】
図3Cは、最初に溶液相中で中空ナノ構造を形成し、その後、膜形成することによって、中空ナノ構造から構成される導電性膜を調製するためのさらなる実施形態を示す。したがって、本プロセスは、第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成するステップと、めっきテンプレートナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきするステップと、めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、テンプレートナノ構造をエッチングするステップと、導電性網を形成するために、中空ナノ構造を基板上に蒸着するステップとを含む。
【0060】
図3Cでは、ナノワイヤおよびナノチューブは、例示的なナノ構造として示される。図示するように、テンプレートナノワイヤ54を、例えば、無電解めっきおよび化学エッチングによって、最初に、溶液中で形成およびめっきする。実施例11も参照されたい。ナノ構造の凝集を防止するリガンドを、均一なめっきプロセスおよびエッチングプロセスを促進するために使用することが可能である。このようなリガンドには、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチド、およびタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)が含まれ、これらは、めっきプロセスおよびエッチングプロセスの種々の段階においてナノ構造を分散させる。めっき金属の中空ナノ構造は、インク組成物への調合前に分離可能である(例えば、ろ過によって、およびめっき液の除去によって)。次いで、網状ナノチューブ66を備える最終導電性網78を形成するために、インク組成物を基板62上に蒸着および固定化する。本実施形態によると、中空ナノ構造は、その寸法および幾何学的形状に関する特定の仕様を満たすように調製可能である。次いで、エンドユーザは、インク組成物をカスタマイズすることが可能であり、最終膜の光学的特性および電気的特性を制御することが可能である。
【0061】
特定の実施形態では、ナノ構造(例えば、金ナノチューブ等の中空ナノ構造、または銀ナノワイヤもしくはめっき銀ナノワイヤ等の金属ナノワイヤ)のインク分散は、粘性、付着、およびナノワイヤ分散を制御するために、添加剤および結合剤を含み得る。適切な添加剤および結合剤の例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2−ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、トリプロピレングリコール(TPG)、およびキサンタンガム(XG)、ならびにエトキシレート、アルコキシレート、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシド、およびその共重合体等の界面活性剤、ならびにスルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、フルオロ界面活性剤(例えば、DuPont社のZonyl(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
一例において、「インク」には、0.0025重量%から0.1重量%までの界面活性剤(例えば、Zonyl(登録商標)FSO−100では、好適な範囲は0.0025重量%から0.05重量%まで)、0.02重量%から4重量%までの粘度調整剤(例えば、HPMCでは、好適な範囲は0.02重量%から0.5重量%まで)、94.5重量%から99.0重量%までの溶媒、および0.05重量%から1.4重量%までの金属ナノ構造(例えば、金ナノチューブ等の中空ナノ構造、または銀ナノワイヤもしくはめっき銀ナノワイヤ等の金属ナノワイヤ)が含まれる。適切な界面活性剤の代表的な例として、Zonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FSH、Zonyl(登録商標)FFA、トリトン(x100、x114、x45)、ダイノール(604、607)、n−ドデシルb−D−マルトシド、およびノベックが挙げられる。適切な粘度調整剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な溶媒の例として、水およびイソプロパノールが挙げられる。
【0063】
上記に開示される濃度からインク分散の濃度を変更したい場合、溶媒の割合を増減することが可能である。しかしながら、好適な実施形態では、残りの成分の相対比率は、同一のままであることが可能である。具体的には、界面活性剤と粘度調整剤との比率は、好ましくは、約80から約0.01までの範囲であり、粘度調整剤と金属ナノ構造との比率は、好ましくは、約5から約0.000625までの範囲であり、金属ナノ構造と界面活性剤との比率は、好ましくは、約560から約5までの範囲である。分散の成分の比率は、基板および使用する用途の方法に応じて修正してもよい。ナノ構造分散の好適な粘度は、約1cPから100cPまでの間である。
【0064】
ナノ構造の寸法および荷重密度に応じて、導電性網は、光学的に透明であることが可能である。典型的には、透明導電体の光学的透明性および明瞭性は、光透過性およびヘーズを含むパラメータによって定量的に定義可能である。「光透過性」は、媒体を介して透過する入射光の割合を指す。入射光は、約400nmから700nmまでの間の波長を有する可視光を指す。種々の実施形態では、透明導電体の光透過性は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。ヘーズは、光拡散の指標である。これは、入射光から分離し、かつ透過中に散乱した光の量の割合を指す(すなわち、透過ヘーズ)。主に媒体の特性である光透過性とは違って、ヘーズは、しばしば産生に関し、典型的には、表面粗さおよび埋め込み粒子または媒体中の成分不均質によって引き起こされる。種々の実施形態では、透明導電体のヘーズは、10%以下、8%以下、5%以下、または1%以下である。典型的には、ヘーズ値が高いほど、コントラスト比は低くなる。種々の実施形態では、透明導電体のコントラスト比は、750を上回る、1,000を上回る、2,000を上回る、3,000を上回る、4,000を上回る、または5,000を上回る。
【0065】
中空ナノ構造により形成される導電性膜は、化学的および熱的に安定している。実施例12において実証されるように、導電性膜の光学的特性および電気的特性は、熱および化学物質への長期暴露後に、実質的に不変であった。導電性膜が、熱または化学物質等の外部要因へ暴露される場合に、その抵抗率が30%を超えて、または5%を超えて、またはより好ましくは、1%を超えて変動しない場合に、導電性膜は安定であると考えられる。したがって、特定の実施形態は、中空ナノ構造を備える透明導電体膜を提供し、透明導電体膜は、85%より高い光透過性、1%より低いヘーズ、および1500Ω/□より低い抵抗率を有し、抵抗率は、熱または化学剤への暴露時に1%を超えて変化しない。
【0066】
図2に示すようなテンプレートナノワイヤの除去の代替として、またはそれに付加的に、別の実施形態は、テンプレートナノワイヤを黒色化し、その後、めっきステップを行なうプロセスについて説明する。より具体的には、酸化により導電性ナノ構造を鈍化または黒色化することによって、反射率を低減することが可能である。したがって、本プロセスは、導電性網を形成するために、第1の種類の金属材料の複数のテンプレートナノ構造を基板上に蒸着するステップと、第2の種類の金属の塗膜を各テンプレートナノ構造上にめっきするステップと、第1の種類の金属のテンプレートナノ構造を酸化するステップとを含む。
【0067】
図4は、テンプレートナノ構造をめっきし、その後、テンプレートナノ構造を酸化して、第1の種類の金属の複合ナノ構造を形成する上記プロセスを図式的に示し、その酸化物および第2の種類の金属ナノワイヤは、代表的なナノ構造として示されるが、本プロセスが全ての形状および構造のナノ構造に適用されることを理解されたい。簡略化および明確化のために、示されるナノワイヤは1つだけである。めっきステップは、テンプレートナノワイヤ54がめっき金属の層58で塗膜される図2と実質的に同一の方式で実行される。その後、テンプレートナノワイヤ54を酸化する。結果として、テンプレートナノワイヤ54の少なくとも表面は、金属酸化物層(すなわち、酸化ナノワイヤ82)の存在により黒色化または鈍化される。結果として生じる複合ナノワイヤ86は、めっきおよび黒色化の組み合わせの影響により、テンプレートナノワイヤ110よりも反射率が低下し、散乱が少なくなる。
【0068】
テンプレートナノワイヤの酸化は、当技術分野において既知の方法により実行可能である。典型的には、ナノ構造は、気体相または溶液相中で酸化可能である。必要であれば、酸化を加速させるために、上昇温度で酸化を実行することが可能である。気相酸化を伴う方法には、例えば、UVオゾン処理、酸素プラズマ、空気中加熱、およびマイクロ波誘導を介する加熱が含まれる。溶液相で作用する酸化剤には、例えば、KMnO、過酸化水素、およびその同等物が含まれる。
【0069】
特定の実施形態では、反射率および光散乱の低減には、めっきおよび酸化のステップの後に形成される複合ナノ構造の電気伝導率の潜在的低下とのバランスが必要とされる。典型的には、金属酸化物は、純金属ほど導電性ではないため、暴露時間および/または酸化剤の強度を制御することによって、酸化の程度を制御することが望ましい。具体的には、めっき金属が、テンプレートナノ構造を形成する第1の種類の金属ほど導電性ではない場合、大部分のテンプレートナノ構造を保存すること(表面的な酸化のみによる)によって、複合ナノ構造の全体の導電率を改善することが可能である。
【0070】
一般に、本明細書に説明するナノ構造(ナノワイヤ、ナノチューブ、またはめっきナノワイヤを含む)を酸化して、光反射率および光散乱を低減することが可能である。
【0071】
(追加の処理:)
他の実施形態では、上記プロセスに対する追加の処理および修正を、偏光解消のさらなる低減または最終導電性膜の特定の物理的特徴の向上のために実行することが可能である。
【0072】
(1.高度に整列したナノワイヤ)
高度に整列した異方性ナノ構造により形成される透明導電性膜によって、異方特性がもたらされ得る。例えば、その長手方向軸に沿って実質的に配向されるナノワイヤは、ナノワイヤ整列の方向に沿って方向性導電率を有する導電性膜を形成することが可能である。任意により、このような導電性膜は、ワイヤグリッド偏光子として機能することが可能である。本出願の譲受人であるCambrios Technologies Corporationへの同時係属米国特許出願第11/871,721号を参照されたく、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
要約すると、図5は、ワイヤグリッド偏光子140として機能する導電性膜138を図式的に示す。図示するように、偏光子140は、表面148を有する基板144を備える。ナノワイヤ152の配列は、表面148に平行に配置される。実質的に全てのナノワイヤ152は、さらに、各ナノワイヤ152の長手方向軸152’に平行である主軸156に沿って配向する。簡略化および明確化のために、ナノワイヤは、接続されずに図示される。しかしながら、ナノワイヤが、それらのそれぞれの遠位端と接触を形成して、導電性網を形成することを理解されたい。加えて、他の異方性ナノ構造、例えば、ナノチューブは、導電性網を形成するように、同様に配向可能である。本明細書において使用する際、「配向」または「整列」は、実質的に全ての異方性ナノ構造のそれぞれの長手方向軸が、所定の方向に平行であるようにする操作を指す。「実質的に全て」は、異方性ナノ構造の少なくとも80%が、同一の所定の方向の10°以内に配置されることを指す。より典型的には、異方性ナノ構造の少なくとも90%は、同一の所定の方向の10°以内に配向される。
【0074】
図示するように、入射非偏光電磁波(例えば、光)160は、2つの直交偏光状態、すなわち、水平振動成分160aおよび垂直振動成分160によって表される。成分160aおよび160bは、両方とも光伝搬164の方向に直角である。波160は、導電性膜138に入り、水平振動成分160aのみが透過する。各ナノワイヤ152の長手方向軸152’に水平である垂直振動成分160bは、各ナノワイヤの長さを横切って移動できない。結果として、導電性膜138を透過する代わりに、垂直振動成分160bは、ナノワイヤによって吸収または反射される。言い換えると、偏光子140は、主軸156、すなわちナノワイヤ配向方向に直角である偏光方向170を有する。
【0075】
したがって、ランダムに配向されるナノワイヤ(すなわち、等方性導電性膜)を有する導電性網に比べ、高度に整列するナノワイヤ網は、方向偏光解消を有し、すなわち、偏光解消の程度は、高度に整列するナノワイヤ網の偏光方向と、衝突偏光の偏光方向との間の相対角度に応じて変動可能である。
【0076】
導電性膜の偏光方向を、衝突偏光の方向に平行に配置することによって、偏光解消を低減することが可能である。図5Aおよび図5Bは、1対の偏光子の間に位置する導電性膜138のコントラスト比を評価するためのシステムを図式的に示す。図6Aは、交差透過軸(18’および26’)を有する1組の偏光子から出射する偏光を検出することによって、Tの測定を示す。図6Aでは、導電性膜138は、ナノワイヤ152が第1の偏光子18の透過軸18’に対して90°、および第2の偏光子26の透過軸26’に対して0°で実質的に存在するように配向される。したがって、導電性膜138は、18’に沿って偏光される衝突偏光30に平行であるその偏光方向170を有する。透過すると考えられる垂直偏光成分(すなわち、18’および170に垂直である)が少ないために、Tが低下することから、導電性膜138により引き起こされる偏光解消の程度は、等方性導電性膜に比べて低い。
【0077】
図6Bは、平行透過軸(18’および26”)を有する1組の偏光子から出射する偏光を検出することによる、Tの測定を示す。図6Bでは、導電性膜138は、第1の偏光子18の透過軸18’ならびに第2の偏光子26の透過軸26’に対して90°に実質的に存在するように配向される。図6Aと同様に、導電性膜138は、18’に沿って偏光される衝突偏光30に平行であるその偏光方向170を有する。図6Aに関連して論じたように、透過すると考えられる垂直偏光成分(すなわち、18’および70に垂直である)が少ないために、偏光42(すなわち、26”に沿った偏光成分)およびTの割合が高くなることから、導電性膜138により引き起こされる偏光解消の程度は、等方性導電性膜に比べて低い。
【0078】
まとめると、Tの増加およびTの減少により、公式(1)に従うコントラスト比が高くなる。図示するように、高度に整列する異方性ナノ構造を有する導電性膜は、偏光解消の低減およびコントラスト比の増加のために、衝突光と相対する特定の方向に配置可能である。したがって、種々の実施形態では、偏光解消を低減する方法は、実質的に全ての異方性ナノ構造が、それらのそれぞれの長手方向軸に沿って整列させられるように、長手方向軸を有する異方性ナノ構造を配向するステップをさらに含む。
【0079】
異方性ナノ構造の整列は、例えば、機械的に付与されるせん断力または流動誘起のせん断力によって達成可能である。より詳細な説明は、例えば、同時係属米国特許出願第11/871,721号に記載されている。
【0080】
図7に示す別の実施形態では、異方性ナノ構造(例えば、ナノワイヤ)は、2つの直交方向において実質的に配置され、すなわち、ナノワイヤ180の約50%は、第1の方向180aに配向され、ナノワイヤ184の残りの50%は、第1の方向184aに直角で配向される。このようなナノワイヤの分散は、高度に効率的な網188を形成し、この網では、ナノワイヤの接続性は、統計的に最適化される。ランダムに配向されるナノワイヤの網に比べると、同一のレベルの接続性および電気伝導率を産生するのに必要なナノワイヤの数は少ない。ナノワイヤの数が少なくなると、散乱、ヘーズ、偏光解消を大幅に低減することが可能であり、このうちの全ては、光路におけるナノ構造の数に関連する。したがって、種々の実施形態では、上述のように、偏光解消を低減する方法は、第1の集団の異方性ナノ構造を、実質的に第1の方向に沿って配向するステップと、第2の集団の異方性ナノ構造を実質的に第2の方向に沿って配向するステップとをさらに含み、第1の方向および第2の方向は、相互に直交する。
【0081】
配向は、典型的には、蒸着および導電性膜の形成の一部として行なうことが可能である。同時係属米国特許出願第11/871,721号を参照されたい。上述のように、異方性ナノ構造を導電性膜に配向することによって、異方性ナノ構造の偏光解消のさらなる低減ならびに反射率の低減が提供される。特定の実施形態では、ナノワイヤは、めっき前に基板上に蒸着および配向される。他の実施形態では、異方性ナノ構造は、基板上に蒸着および配向される前に、めっきおよびエッチング可能である(例えば、無電解めっきおよび化学エッチングにおいて)。
【0082】
(2.さらなるめっき)
めっき金属の種類に応じて、上述の方法に従って調製される導電性膜は、その吸収特徴を変動させることが可能である。これは、膜の色として現れることが可能である。例えば、金塗膜は、典型的には、青色相を発する。金ナノチューブまたは金めっき黒色化銀ナノワイヤを、薄層のニッケル(例えば、10−20nmの厚さ)でさらにめっきする場合、青色は、中和される。したがって、導電性膜の光学的特徴(吸収および透過)は、適切な金属によるナノ構造のさらなるめっきにより微調整可能である。さらに、最終導電性膜の導電率および反射率も、さらなるめっきにより影響を受け得る。
【0083】
(3.導電性ポリマー膜)
特定の実施形態では、ナノ構造ベースの導電性膜は、透明導電性ポリマー膜とさらに組み合わせ可能である。ポリマー膜は、典型的には、金属ナノ構造よりも反射率が低い。加えて、導電性ポリマー膜は、ナノ構造間の空間を充填し、導電率を改善する。最終的に、ポリマー膜(典型的には、中間色)は、複合膜の吸収特徴を調整することが可能である。
【0084】
図8は、ナノ構造ベースの導電性網200を形成するステップ、塗膜210を形成するために導電性網200をめっきするステップ、および導電性ポリマー膜220を形成するステップを含む複合導電性膜の形成を図式的に示す。
【0085】
特定の実施形態では、導電性ポリマー膜は、ポリピロール膜である。ポリピロール膜は、電気化学的または化学的に生成可能である。好ましくは、電極(すなわち、陽極)としてナノ構造ベースの導電性網を使用して、ピロール単量体は、電気化学的に重合可能であり、導電性膜上に塗膜を形成可能である。
【0086】
また、導電性ポリマー膜は、当技術分野における既知の方法に従って、酸化剤の存在下で形成可能である。金層は、その上で重合を行なうシード層として機能する。
【0087】
他の適切な導電性ポリマーには、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリアニリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
(4.オーバーコート)
さらなる実施形態では、オーバーコートの不活性層が、ナノ構造ベースの導電性網を安定化および保護するために蒸着可能である。また、オーバーコートは、防幻特性および防反射特性等の好ましい光学的特性も提供することが可能であり、ナノ構造の反射率をさらに低減させる役割を果たす。
【0089】
したがって、一実施形態は、基板と、基板上の導電性網であって、複数の金属ナノ構造(例えば、ナノチューブ)を備える導電性網と、導電性網の上のオーバーコートとを備える透明導電体を提供する。
【0090】
本実施形態に従う透明導電体は、熱的および化学的に安定している。具体的には、本透明導電体は、金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)を備える透明導電性膜により塗膜されるカラーフィルタ(例えば、フラットパネルディスプレイ用)の調製等の機器の加工の典型的な条件である熱的処理および化学的処理に耐えることが可能である。
【0091】
典型的には、透明導電体は、熱的処理前後の透明導電体の表面抵抗率における差異が5%以下である場合に、熱的に安定していると考えられる。より具体的には、その差異は1%以下である。本明細書において説明する透明導電体(例えば、オーバーコートにより保護される金ナノチューブ)は、少なくとも250℃までの温度でベーキングする際に安定している。より典型的には、透明導電体は、少なくとも200℃、150℃、または100℃までの温度で安定している。透明導電体は、このような温度下での長期な熱的処理(少なくとも約1.5時間、1時間、または30分)の後において、表面抵抗率がほとんど変化しない(1%未満)。例えば、200℃で1.5時間までの間、ベーキングされる際に、透明導電体は安定しており、かつ表面抵抗率の変化は1%未満である。
【0092】
また、透明導電体は、カラーフィルタの塗膜等の機器加工に一般的に使用する特定の化学物質に暴露しても、化学的にも安定している。典型的には、透明導電体は、化学的処理前後の透明導電体の表面抵抗率における差異が5%以下である場合に、化学的に安定していると考えられる。より典型的には、差異は1%未満である。
【0093】
種々の実施形態では、透明導電体は、水酸化カリウム(KOH)の4%溶液に5分間暴露した時に安定している。表面抵抗率は、暴露後、ほとんど不変のままである(5%未満)。他の実施形態では、透明導電体は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の5%溶液に5分間まで暴露した時に安定している。膜の表面抵抗率における変化は1%未満である。
【0094】
上述の基剤よりも苛性である化学物質では、透明導電体は、長期暴露後であっても化学的に安定している。したがって、他の実施形態では、透明導電体は、イソプロピルアルコール(IPA)の5%溶液に30分間まで暴露した時に安定している。膜の表面抵抗率の変化は1%未満である。さらに他の実施形態では、透明導電体は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の5%溶液に30分間まで暴露した時に安定している。膜の表面抵抗率の変化は1%未満である。
【0095】
当業者は、本明細書に説明する透明導電体が、本明細書に定義するように、上記化学物質の任意の組み合わせにおいて、化学的にも安定していることを認識するであろう。
【0096】
オーバーコートは、ハードコート、反射防止層、保護膜、障壁層、およびその同等物のうちの1つ以上であることが可能であり、その全てについて、同時係属出願第11/871,767号および第11/504,822号において広範囲に説明される。
【0097】
適切なハードコートの例として、ポリアクリル酸、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシラン、シリコーン、ポリ(シリコアクリル)等の合成ポリマーが挙げられる。適切な防幻材料は、当技術分野において周知であり、シロキサン、ポリスチレン/PMMA混合物、ラッカー(例えば、酢酸ブチル/ニトロセルロース/ろう/アルキド樹脂)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリウレタン、ニトロセルロース、およびアクリレートが含まれるがこれらに限定されず、その全ては、コロイド状シリカまたはヒュームドシリカ等の光拡散材料を含み得る。保護膜の例として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン、ポリオレフィン、またはその同等物が挙げられるが、これらに限定されず、特に、PET、PC、PMMA、またはTACが好ましい。
【0098】
(高コントラスト透明導電体の用途)
上述のプロセスのうちのいずれかにより調製される高コントラスト透明導電体は、金属酸化物膜(例えば、ITO)を現在利用する全ての機器を含む多種多様の機器における透明電極、偏光子、カラーフィルタ等の機能性膜として使用可能である。適切な機器の例として、LCD等のフラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、カラーフラットパネルディスプレイ用のカラーフィルタ上の塗膜、タッチスクリーン、電磁シールド、電磁干渉、薄膜トランジスタに使用するもの等の静電放電(ESD)膜、機能性ガラス(例えば、エレクトロクロミック窓用)、ELランプおよび太陽電池を含む光電子機器、ならびにその同等物が挙げられる。加えて、本明細書における透明導電体は、フレキシブルディスプレイおよびタッチスクリーン等の可塑性機器に使用可能である。同時係属出願第11/871,767号を参照されたい。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
(銀ナノワイヤの合成)
ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下でエチレングリコール中に溶解された硝酸銀の還元によって、銀ナノワイヤを合成した。本方法は、例えば、Y.Sun、B.Gates、B.Mayers、およびY.Xiaの「Crystalline silver nanowires by soft solution processing」、Nanolett、(2002)、2(2)、165−168に説明されている。均一な銀ナノワイヤは、遠心分離または他の既知の方法によって選択的に分離可能である。
【0100】
代替として、適切なイオン添加剤(例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド)を上記反応混合物に添加することによって、均一な銀ナノワイヤを直接合成することが可能である。このように産生された銀ナノワイヤを、サイズ選択の分離ステップを行なわずに直接使用することが可能である。本合成は、本出願の譲受人であるCambrios Technologies Corporation名義の米国仮出願第60/815,627号においてより詳細に説明され、本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0101】
以下の例において、30nmから80nmまでの幅および約8μm−25μmの長さを有する銀ナノワイヤを使用した。典型的には、より良好な光学的特性(高透過性および低ヘーズ)は、高アスペクト比ワイヤ(すなわち、より長くかつ細い)により達成可能である。
【0102】
(実施例2)
(ナノワイヤベースの導電性膜の調製)
ナノワイヤは、基板上の蒸着および任意の配向の前にインク組成物に調合可能である。
【0103】
典型的なインク組成物には、0.0025重量%から0.1重量%までの界面活性剤(例えば、Zonyl(登録商標)FSO−100では、好適な範囲は0.0025重量%から0.05重量%まで)、0.02重量%から4重量%までの粘度調整剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMCでは、好適な範囲は0.02重量%から0.5重量%まで)、94.5重量%から99.0重量%までの溶媒、および0.05重量%から1.4重量%までの金属ナノワイヤが含まれる。適切な界面活性剤の代表的な例として、Zonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FSH、トリトン(x100、x114、x45)、ダイノール(604、607)、n−ドデシルb−D−マルトシド、およびノベックが挙げられる。適切な粘度調整剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な溶媒の例として、水およびイソプロパノールが挙げられる。
【0104】
インク組成物は、基板上に形成される最終導電性膜の荷重密度の指標であるナノワイヤの所望の濃度に基づいて調製可能である。
【0105】
基板は、その上にナノワイヤが蒸着される任意の材料であることが可能である。基板は、剛性または可塑性であることが可能である。好ましくは、基板は、光学的に透明であり、すなわち、材料の光透過性は、可視領域(400nm−700nm)において少なくとも80%である。
【0106】
剛性基板の例として、ガラス、ポリカーボネート、アクリル、およびその同等物が挙げられる。具体的には、無アルカリガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、低アルカリガラス、およびゼロ膨脹ガラス−セラミック等の特殊ガラスを使用することが可能である。特殊ガラスは、特に、液晶ディスプレイ(LCD)を含む薄型パネルディスプレイシステムに適切である。
【0107】
可塑性基板の例として、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、直鎖、分岐、および環状ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリル、およびその同等物)、セルロースエステル塩基(例えば、セルローストリアセテート、酢酸セルロース)、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン、ポリイミド、シリコーン、および他の従来のポリマー膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
インク組成物は、例えば、同時係属米国特許出願第11/504,822号に説明する方法に従って、基板上に蒸着可能である。
【0109】
具体的な例として、銀ナノワイヤの水分散液、すなわち、インク組成物を最初に調製した。銀ナノワイヤの幅は、約35nmから45nmまでであり、長さは、約10μmであった。インク組成物は、0.2重量%の銀ナノワイヤ、0.4重量%のHPMC、および0.025重量%のトリトンx100を含む。次いで、60秒間500rpmの速度で、ガラス上にインクをスピンコートし、その後、90秒間50℃でポストベーキングし、90秒間180℃でポストベーキングした。塗膜の抵抗率は、約20オーム/スクエアであり、透過性は96%(参照としてガラスを使用)、ヘーズは3.3%であった。当業者が理解するように、他の蒸着技法を用いることが可能であり、例えば、狭いチャネルにより測定される沈降流動、ダイ流動、傾斜上の流動、スリットコーティング、およびその同等物が挙げられる。さらに、流体の粘度およびせん断挙動ならびにナノワイヤ間の相互作用が、蒸着されるナノワイヤの分散および相互接続性に影響を及ぼし得ることを理解されたい。
【0110】
(実施例3)
(透明導電体の光学的特性および電気的特性の評価)
本明細書に説明する方法に従い調製される複合透明導電体を評価して、その光学的特性および電気的特性を確立した。
【0111】
ASTM D1003における方法論に従って、光透過性データを入手した。BYK Gardner社のHaze−gard Plusを使用して、ヘーズを測定した。別途指定のない限り、光透過性およびヘーズは、ガラス基板の存在下で測定される。Fluke 175 True RMS Multimeterまたは非接触式抵抗計、Delcom社のmodel 717B導電率モニタを使用して、表面抵抗率を測定した。
【0112】
ナノワイヤの相互接続性および基板の面積範囲は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観測可能である。
【0113】
(実施例4)
(コントラスト比の評価)
図9は、透明導電体のコントラスト比を評価するためのシステムを示す。図示するように、透明導電体試料250は、固定偏光子254と回転偏光子258との間に位置する。開口部(約20nm)266を有するマスク262は、透明導電体試料250と回転偏光子258との間に位置する。光源270は、非偏光入射光を提供する。検出器274は、回転偏光子から約600mm離隔して配置され、開口部266から出射するTおよびをT検出する。
【0114】
を測定するために、回転偏光子258は、最初に、その透過軸が、固定偏光子254の透過軸と平行整列するように配置される(図1Bも参照)。初期位置から小角度間隔で回転偏光子258を変動させることによって多数の透過性測定を行ない、確実に最高Tを入手することが可能である。
【0115】
を測定するために、回転偏光子258は、最初に、その透過軸が、固定偏光子254の透過軸に対して垂直または直角であるように配置される(図1Aも参照)。初期位置から小角度間隔で回転偏光子258を変動させることによって多数の透過性測定を行ない、確実に最低Tを入手することが可能である。
【0116】
図10は、透明導電体試料のコントラスト比を定性的に評価するために、直接可視化を示す。図示するように、透明導電体試料290は、第1の偏光子294と第2の偏光子298との間に配置される。2つの偏光子の透過軸の相対位置は、片方または両方の偏光子を回転させることによって調整可能である。光源300は、第1の偏光子294の底面204から非偏光を指向する。第2の偏光子298の上面308からの出射光は、直接調査することが可能である。コントラスト比が高い試料は、より暗く見える。
【0117】
(実施例5)
(金めっきおよび酸化)
実施例2に説明する方法に従って、導電性膜の3つの試料を調製した。表面密度のレベルが減少する銀ナノワイヤから試料番号1−3を形成した。各試料は、1組の同等に調製されたガラススライドであって、同一密度を有し、かつ銀ナノワイヤから形成される導電性膜により塗膜されるガラススライドを含んだ。各スライド上の銀ナノワイヤを、特定の時間、金の層で電気化学的にめっきし、その後、下層銀ナノワイヤを酸化した。
【0118】
実施例3に記載の方法に従って、透過性(T%)、ヘーズ(H%)、および抵抗率(Ω)を含む試料の光学的特性および電気的特性を測定した。実施例4に記載の方法に従ってコントラスト比を評価し、公式(1)に従って計算した。
【0119】
(金めっき:)
Princeton Applied Research(Princeton,NJ)の263ポテンショスタット/ガルバノスタットを、全ての電気化学実験において使用した。1インチx1インチの銀箔を、対極として使用した。銀ナノワイヤに塗膜されたガラススライドは、作用電極であった。金めっき液、つまりTechnic 40 GOLD STRIKE RTU(登録商標)に両電極を浸漬した。電極に電流(1mA/in)を印加し、2秒から120秒間めっきを行なった。次いで、蒸着膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させた。
【0120】
めっき時間の関数として、透過性(T%)、ヘーズ(H%)、および抵抗率(Ω)を試料毎に測定した。めっき時間がゼロで示される場合、裸ナノワイヤ膜を測定した。これらのデータを表1−表3に示し、表1−表3は試料1−3にそれぞれ対応する。
【0121】
表1−表3に示すように、金塗膜の厚さを判断するめっき時間は、金めっき導電性膜の光透過性に軽度に影響を及ぼした。めっきが進むにつれて、透過性のわずかな減少(最大で約20%)が全試料において認められた。また、めっきが進むにつれて、試料は、ヘーズの増加および抵抗率の低下を示した。
【0122】
(酸化:)
Princeton Applied Research(Princeton,NJ)の263ポテンショスタット/ガルバノスタットを、全ての電気化学実験において使用した。1インチx1インチの白金箔を、対極として使用した。作用電極は、金−銀ナノワイヤに塗膜されたガラススライドであった。電解質は、0.1M硫酸ナトリウムであった。SCE(飽和カロメル電極)に対し0Vから0.8Vまでの電位を掃引することによって銀酸化を実行し、その走査速度は20mV/sであった。次いで、酸化膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させた。
【0123】
金めっき膜に比べ、酸化膜では、光透過性が実質的に不変であることが認められた。しかしながら、酸化によって、大部分の膜においてヘーズ値が大幅に低下し、コントラスト比が増加した。コントラスト比における大部分の劇的な増加が、試料1(10秒の金めっきを受けた膜)において認められ、この場合、コントラスト比(CR=7794)は、裸銀ナノワイヤ試料(CR=〜100)に比べて約80倍増加し、めっきを含まない酸化ナノワイヤ試料(CR=130)に比べて60倍増加した。
【0124】
さらに、抵抗率が、金塗膜の厚さと、ナノワイヤから形成される初期膜のワイヤ密度とに関連することが認められた。酸化ステップによって、最大厚さの金めっきの膜を除くほぼ全ての膜において、導電率の減少(すなわち、抵抗率の増加)が引き起こされた。本結果は、酸化銀が銀よりも導電率が低いという事実に一致した。下層銀ナノワイヤは、金めっきの厚さが最大である膜において酸化から絶縁され、これらの膜における導電率は、実質的に不変であった。
【0125】
表に示すように、導電性膜は、めっきおよび酸化の後に高コントラスト比を達成可能であった。特定の状況では、コントラスト比の増加は、導電率のわずかな損失を犠牲にして達成されなければならない。しかしながら、導電率およびコントラスト比のバランスは、パラメータの最適な組が到達されるように固定可能であった。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

(実施例6)
(金ナノチューブ−無電解めっきおよび化学エッチング)
本明細書に説明する方法に従って、銀ナノワイヤを調製し、ガラススライド上の薄膜に形成した。薄膜の銀ナノワイヤを、無電解めっきまたは溶液相めっきによって、金の薄層でさらにめっきし、その後、化学エッチングを行なった(図3Aも参照)。
【0129】
Stapleton社の金めっきシステムを使用して、無電解めっきを実行した。3−10マイクロインチ/分(76nm−254nm/分)で適切な基板上に金をめっきするように、Microgold(登録商標)291(Stapleton Technologies Corp.)を調整可能であった。めっき時間は、異なる濃度のめっき液で表されるめっきシステム毎に2分であった。所定のめっき時間(例えば、2分)では、めっき液が希釈されるほど、めっきされた金が薄くなった。
【0130】
金めっき銀ナノワイヤ(すなわち、「金めっき膜」)により形成された膜が、裸銀ナノワイヤ膜よりも導電率が低いことが認められた。任意により、金めっき膜におけるヘーズ値および透過性値は、裸銀ナノワイヤ膜に比べて実質的に不変であった(表4参照)。
【0131】
その後、10ppmのKMnO、1%のNaNO、および1%のHNOの存在下で、金めっき膜を溶液相中で2分間エッチングし、金ナノチューブから構成される最終膜を生成した。
【0132】
光透過性は、エッチングにより大きな影響を受けなかったが、ヘーズ値は、テンプレート銀ナノワイヤを除去するエッチング後の最終膜において大幅に低下した。ヘーズ値の低下は、反射率および光散乱の減少を示し、この事象は、コントラスト比の増加をももたらす。
【0133】
加えて、表4は、金塗膜の厚さ(すなわち、金ナノチューブの壁の厚さ)とコントラスト比との相関を示す。金塗膜が薄くなるにつれて(より希釈されためっき液でめっきされる)、コントラスト比の高い膜が得られたという傾向が明らかである。
【0134】
最終膜は、導電率の低下を呈し、これは、コントラスト比の増加のための犠牲であると考えられる。また、本結果は、金が、概して、銀よりも導電率が低いという事実と一致した。
【0135】
【表4】

(実施例7)
(エッチング対酸化)
実施例2に従って、2つの銀ナノワイヤ膜を調製した。実施例5に説明する方法に従って、20秒間、膜を電気めっきして、同一の金塗膜を達成した。一方の膜は、電解エッチングを受けて、テンプレート銀ナノワイヤを除去し、他方の膜は、酸化して、テンプレート銀ナノワイヤを黒色化した。
【0136】
電解エッチング中、Princeton Applied Research(Princeton,NJ)の263ポテンショスタット/ガルバノスタットを使用した。1インチx1インチの白金箔を、対極として使用した。金−銀ナノワイヤにより塗膜されたガラススライドを、作用電極として使用した。電解質は、5%のHNOを含む5%のNaNOであった。20mV/sの走査速度で、0Vから0.8Vの電位とSCE(飽和カロメル電極)とを掃引することによって銀エッチングを実行した。次いで、エッチングされた膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させた。
【0137】
実施例5に説明する方法で、酸化を実行した。
【0138】
本結果を表5に示す。電解エッチングおよび酸化は、最終膜における電気的特性および光学的特性に対して、実質的に同一の影響を及ぼした。両方によって、裸銀ナノワイヤ膜(CR=〜100)に比べて20倍を超えてコントラスト比が増加する。
【表5】

【0139】
(実施例8)
(電解エッチングおよび化学エッチング)
実施例2に従って、2つの銀ナノワイヤ膜を調製した。実施例5に説明する方法に従って、20秒間、膜を電気めっきして、同一の金塗膜を達成した。一方の膜は、電解エッチングを受けて、テンプレート銀ナノワイヤを除去し、他方の膜は、化学エッチングを受けた。
【0140】
実施例7に説明する方法に従って、電解エッチングを実行した。
【0141】
化学エッチングでは、異なる時間、膜をエッチング液に暴露し、エッチング時間の関数として、透過ヘーズ、抵抗率、およびコントラスト比を評価した。
【0142】
表6に示すように、電解エッチングおよび化学エッチングの両方は、反射銀ナノワイヤを除去することによって、コントラスト比を大幅に改善することが可能である。2分の化学エッチングによって、裸銀ナノワイヤ膜のコントラスト比(CR=〜100)に比べて40倍を超えてコントラスト比が増加した。また、電解エッチングによって、コントラスト比が増加したが、その程度は小さい。
【0143】
【表6】

(実施例9)
(追加の処理−オーバーコート)
光学的に透明なオーバーコートを、銀ナノワイヤの金めっきおよびエッチングにより調製された金ナノチューブから形成される導電性膜上に蒸着した。追加のオーバーコートは、保護層として機能し、金属ワイヤと下部の基板との間の付着を増加させる。1つのオーバーコート材料は、光学的に透明なUV硬化性ハードコート、すなわち、AC HC−5619(Addison Clear Wave社による)であった。表7は、ハードコートAC HC−5619を含む金管試料の光学的特性および電気的特性を示す。オーバーコートが、塗膜に影響を及ぼさないことが認められた。
【0144】
【表7】

(実施例10)
(金塗膜銀ナノワイヤに基づく膜形成の後のエッチング)
無電解めっきプロセスにしたがって、金塗膜銀ナノワイヤを溶液相中で調製した。金塗膜銀ナノワイヤをインク組成物に調合して、ガラス上に蒸着し、導電性膜を形成した。さらに、導電性膜をエッチングして、金めっき銀ナノワイヤを金ナノチューブに変換した(図3Bも参照)。
【0145】
(無電解めっき:)
50ppmの金めっき液(Microgold(登録商標)291)、1000ppmのポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、および3000pppmのNHOHを含む溶液中の銀ナノワイヤ(100ppm)を金で塗膜した。金塗膜の厚さは、めっき液の濃度およびめっき時間を調整することによって制御可能である(実施例6も参照)。
【0146】
(膜形成:)
金塗膜銀ナノワイヤは、一晩で沈殿することが可能であり、上澄み液を除去した。結果として生じた堆積物を、水中の1000ppmのPVPおよび300ppmのNHで再び溶媒和した。この溶媒交換の後、フィルタ(例えば、0.8μmの篩)により分散をフィルタリングした。フィルタに残る金塗膜銀ナノワイヤ残滓を、脱イオン水で再び溶媒和した。本プロセスを、数回繰り返すことが可能である。
【0147】
0.12%の金塗膜銀ナノワイヤ、0.4%のHPMC、および0.025%のトリトンx100を脱イオン水中に分散することによってインク組成物を調合した。500rpmの速度で30秒間、Eagle2000ガラス(150x150mm)上にインク組成物をスピンコートし、膜を形成した。金塗膜銀ナノワイヤの濃度は、膜の抵抗率を制御するために調整可能である。
【0148】
50℃で90秒間、次いで、180℃で90秒間、膜をポストベーキングした。
【0149】
(無電解エッチング:)
1%の(NHおよび0.3%のNHOH中で一分間、銀エッチングを実行して、金塗膜銀ナノワイヤを金ナノチューブに変換した。最終のエッチング膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させ、その後、180℃で90秒間ベーキングした。任意により、オーバーコートをさらに塗膜し、最終膜上に硬化することが可能である(実施例9も参照)。
【0150】
平均して、最終膜(金ナノチューブから構成される)のへーズは0.15%、透過性は89.8%、抵抗率は1086Ω/□、およびコントラスト比は5542であった。
【0151】
(実施例11)
(ナノチューブ形成の後の膜形成)
最初に、無電解めっきプロセスに従って金を銀ナノワイヤ上に塗膜し、その後、銀ナノワイヤをエッチングすることによって、金ナノチューブを溶液相中に調製した。結果として生じた金ナノチューブをインク組成物に調合し、導電性膜に鋳造した(図3Cも参照)。
【0152】
(無電解めっき:)
50ppmの金めっき液(Microgold(登録商標)291)、1000ppmのポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、および3000pppmのNHOHを含む溶液中の銀ナノワイヤ(100ppm)を、金で塗膜した。金塗膜の厚さは、めっき液の濃度およびめっき時間を調整することによって制御可能である(実施例6も参照)。
【0153】
(無電解エッチング:)
金塗膜銀ナノワイヤは、一晩で沈殿することが可能であり、上澄み液を除去した。結果として生じた堆積物を、水中の1000ppmのPVPおよび300ppmのNHで再び溶媒和した。この溶媒交換の後、フィルタ(例えば、0.8μmの篩)により分散をフィルタリングした。フィルタに残る金塗膜銀ナノワイヤ残滓を1%の(NHを含むエッチング液に再び溶媒和した。溶液相中において金ナノチューブを形成した。ろ過および再溶媒和のいくつかの周期によって、エッチング液溶媒を脱イオン水と交換した。
【0154】
(膜形成:)
0.2%の金ナノチューブ、0.4%のHPMC、および0.025%のトリトンx100を脱イオン水中に分散することによってインク組成物を調合した。500rpmの速度で30秒間、Eagle2000ガラス(150x150mm)上にインク組成物をスピンコートし、膜を形成した。金塗膜銀ナノワイヤの濃度は、膜の抵抗率を制御するために調整可能である。
【0155】
膜を空気乾燥し、次いで、180℃で90秒間ベーキングした。任意により、オーバーコートにより膜をさらに塗膜することが可能である(実施例9も参照)。
【0156】
平均して、最終膜(金ナノチューブから構成される)のへイズは0.31%、透過性は89.1%、抵抗率は699Ω/□、およびコントラスト比は5005であった。
【0157】
(実施例12)
(金ナノチューブ膜の化学的安定性および熱的安定性)
本明細書において調製されるような金ナノチューブから構成される導電性膜は、熱的安定性および化学的安定性を呈した。導電性膜の光学的特性および電気的特性は、熱的処理および化学的処理を受ける際に影響を受けなかった。本例では、熱的処理および化学的処理は、金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)を備える透明導電性膜により塗膜されるカラーフィルタ(例えば、フラットパネルディスプレイ用)の調製のための典型的な条件である。
【0158】
表8は、透明導電性膜(ACWオーバーコートを含む)が、230℃で長期ベーキングの後に安定であったことを示す。実施例10に従って、金ナノチューブの網によって透明導電性膜を形成した。平均の金ナノチューブの寸法は、長さが約10μm、外径が約60nm、内径が約40nm、壁厚さが約10nmである。図示するように、抵抗率における割合変化は1%未満であった。また、光学的特性は、未処理の膜と比べて変化しなかった。
【0159】
【表8】

金ナノチューブの温度安定性が、その壁の厚さに依存することがさらに認められた。典型的には、壁が厚いほど、良好な温度安定性が可能になる。しかしながら、壁が厚いほど、コントラスト比の低下ももたらし得る。図示するように、ナノチューブの壁厚さを制御して(例えば、めっき時間を調整することによって)、安定性およびコントラスト比を含む最適化組のパラメータに到達することが可能である。
【0160】
表9は、金ナノチューブから形成される透明導電性膜(ACWオーバーコートを含む)が、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、イソプロピルアルコール(IPA)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含む多数の化学物質に浸漬した後に安定していたことを示す。実施例2および6に従って、金ナノチューブの網によって透明導電性膜を形成した。平均の金ナノチューブの寸法は、長さが約10μm、外径が約60nm、内径が約40nm、壁厚さが約10nmである。図示するように、膜の抵抗率は、化学物質への暴露後に大幅に変化しなかった。
【0161】
【表9】

(実施例13)
(パラジウムナノチューブ)
最初に、パラジウムを銀ナノワイヤ導電性網上にめっきして、その後、下層銀ナノワイヤをエッチングすることによって、パラジウムナノチューブを形成した。
【0162】
(めっき:)
Princeton Applied Research(Princeton,NJ)の263ポテンショスタット/ガルバノスタットを、パラジウム(Pd)めっき実験において使用した。1インチx1インチの白金メッシュを、対極として使用した。銀ナノワイヤに塗膜されたガラススライドは、作用電極であった。パラジウムめっき液、つまりTechnic PALLASPEED VHS RTU(登録商標)に両電極を浸漬した。電極に電流(2mA/in)を印加し、10秒から20秒間めっきを行なった。次いで、蒸着膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させた。
【0163】
(化学エッチング:)
10ppmのKMnO、1%のNaNO、および1%のHNOを含むエッチング混合液を使用し、エッチングを1分間実行した。エッチングの後、パラジウムナノチューブを備える最終膜を、脱イオン水で念入りに洗い流し、空気中で乾燥させた。
【0164】
(結果:)
めっき後ならびにエッチング後に、透過性(T%)、ヘーズ(H%)、および抵抗率(Ω)を含む試料の光学的特性および電気的特性を測定した。実施例4に説明する方法に従って、最終膜のコントラスト比を評価し、公式(1)に従って計算した。結果を表10に示す。
【0165】
【表10】

表に示すように、パラジウムが、概して、銀よりも導電率が低いため、パラジウムナノチューブから形成される膜は、裸銀ナノワイヤから形成される膜よりも高い抵抗率を示し、典型的には、約100のコントラスト比を示す。
【0166】
金ナノチューブのように、パラジウムナノチューブは、めっきを10秒間実行する場合に、4000まで高いコントラスト比を有する導電性膜を形成することが可能である。めっき時間が長くなる場合(例えば、20秒)、厚い膜の形成のためにめっきするパラジウムが多くなった。膜厚さの結果、コントラスト比は低下した。したがって、めっき時間を調整することによって、最終膜のコントラスト比を最適化するために、厚さを調整することが可能である。
【0167】
(実施例14)
(銀ナノワイヤ/ポリピロール膜)
酸化剤としての役割を果たす硝酸銀の存在下で、ピロール単量体を化学的にめっき(無電解)した。
【0168】
表11に示すように、金塗膜が無い場合、ポリピロール膜単独では、裸銀ナノワイヤ膜のコントラスト比に比べて、複合膜のコントラスト比を大幅に改善しなかった。
【0169】
【表11】

本明細書で参照されるおよび/または出願データシートに列挙される上記米国特許、米国特許出願公表、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許公報の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0170】
本発明の具体的な実施形態について例示目的のために本明細書において説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の修正を加えてもよいことを、上記説明から理解されたい。したがって、本発明は、添付の請求項によって限定される場合を除き限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電体であって、
基板と、
該基板上の導電性網であって、複数の金属ナノ構造を備える、導電性網と
を備え、該透明導電体は、1000を超えるコントラスト比を有する、透明導電体。
【請求項2】
前記金属ナノ構造は、金属ナノワイヤ、金属ナノチューブ、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項3】
前記コントラスト比は、3000を超える、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項4】
前記コントラスト比は、5000を超える、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項5】
85%を超える光透過性を有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項6】
90%を超える光透過性を有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項7】
95%を超える光透過性を有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項8】
1000Ω/□未満の表面抵抗率を有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項9】
500Ω/□未満の表面抵抗率を有する、請求項8に記載の透明導電体。
【請求項10】
100Ω/□未満の表面抵抗率を有する、請求項8に記載の透明導電体。
【請求項11】
前記導電性層の前記表面抵抗率は、50Ω/□と400Ω/□との間にある、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項12】
前記透明導電体は、5%未満のヘーズを有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項13】
前記透明導電体は、1%未満のヘーズを有する、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項14】
前記ナノ構造は、金ナノチューブである、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項15】
前記ナノ構造は、合金または2種類の金属からなるナノチューブである、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項16】
前記ナノ構造は、金/銀合金または2種類の金属からなるナノチューブである、請求項15に記載の透明導電体。
【請求項17】
前記ナノ構造は、酸化ナノチューブまたは酸化ナノワイヤである、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項18】
前記導電性網の上にオーバーコートをさらに備える、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項19】
少なくとも100℃まで、1時間までの間、前記透明導電体をベーキングすることによって、該透明導電体の前記表面抵抗率は1%未満だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項20】
少なくとも200℃まで、1.5時間までの間、前記透明導電体をベーキングすることによって、該透明導電体の前記表面抵抗率は1%未満だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項21】
KOHの4%溶液に5分間までの間、前記透明導電体を暴露することによって、前記膜の前記表面抵抗率は5%以下だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項22】
TMAHの5%溶液に5分間までの間、前記透明導電体を暴露することによって、前記膜の前記表面抵抗率は1%未満だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項23】
IPAに30分間までの間、前記透明導電体を暴露することによって、前記膜の前記表面抵抗率は1%未満だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項24】
NMPに30分間までの間、前記透明導電体を暴露することによって、前記膜の前記表面抵抗率は1%未満だけ変化する、請求項18に記載の透明導電体。
【請求項25】
溶媒と、
粘度調整剤と、
界面活性剤と、
ナノチューブの重量パーセントが0.05%から1.4%までの複数の金属ナノチューブと
を含む、組成物。
【請求項26】
前記溶媒は、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、または芳香族溶媒である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記粘度調整剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記界面活性剤は、Zonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FFA、Zonyl(登録商標)FSH、トリトン、ダイノール、n−ドデシルβ−D−マルトシド、またはNovek(登録商標)である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
溶媒と、
粘度調整剤と、
界面活性剤と、
該界面活性剤と該粘度調整剤との比率が、約80から約0.01までの範囲にある、複数の金属ナノチューブと
を含む、組成物。
【請求項30】
前記粘度調整剤と前記金属ナノチューブとの比率は、約5から約0.000625までの範囲にある、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記金属ナノチューブと前記界面活性剤との比率は、約560から約5までの範囲にある、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
1cPから100cPまでの間の粘度を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
第1の種類の金属材料のテンプレートナノ構造を形成することと、
めっきテンプレートナノ構造を形成するために、該テンプレートナノ構造の各々を、第2の種類の金属材料のめっき金属でめっきすることと、
該めっき金属の中空ナノ構造を形成するために、該テンプレートナノ構造をエッチングすることと、
導電性網を形成するために、該中空ナノ構造を基板上に蒸着することと
を含む、プロセス。
【請求項34】
蒸着後、実質的に全ての前記中空ナノ構造を、それらのそれぞれの長手方向軸に沿って整列させることをさらに含む、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記蒸着することは、前記中空ナノ構造の第1の集団を第1の方向に沿って蒸着および配向することと、該中空ナノ構造の第2の集団を第2の方向に沿って蒸着および配向することとを含み、該第1の方向と該第2の方向とは相互に直交している、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記めっきすることは、電気めっき、無電解めっき、または金属−金属置換によって実行される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項37】
前記エッチングすることは、電気化学的または化学的に実行される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項38】
前記めっきすることは、無電解めっきによって実行され、前記エッチングすることは、溶液相中で化学的に実行される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項39】
前記導電性網は、1000を超えるコントラスト比を有する、請求項33に記載のプロセス。
【請求項40】
前記導電性網は、500Ω/□以下の表面抵抗率を有する、請求項33に記載のプロセス。
【請求項41】
前記導電性網は、光学的に透明である、請求項33に記載のプロセス。
【請求項42】
前記テンプレートナノ構造は、異方性ナノ構造である、請求項33に記載のプロセス。
【請求項43】
前記中空ナノ構造は、前記テンプレートナノ構造の直径より小さい壁厚さを有する、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記テンプレートナノ構造は、金属ナノワイヤである、請求項42に記載のプロセス。
【請求項45】
前記テンプレートナノ構造は、銀ナノワイヤである、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記銀ナノワイヤは、約30−80nmの直径を有する、請求項44に記載のプロセス。
【請求項47】
前記めっき金属は、金、パラジウム、ニッケル、または白金である、請求項44に記載のプロセス。
【請求項48】
前記めっき金属は、金であり、前記中空ナノ構造は、金ナノチューブである、請求項47に記載のプロセス。
【請求項49】
前記ナノチューブは、10−20nmの厚さを有する、請求項47に記載のプロセス。
【請求項50】
前記導電性網上にオーバーコートを形成することをさらに含む、請求項33に記載のプロセス。
【請求項51】
請求項33のプロセスによって形成される透明導電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−525527(P2010−525527A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504303(P2010−504303)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060938
【国際公開番号】WO2009/017852
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508041046)カンブリオス テクノロジーズ コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】