説明

高伸び率を有する塗膜を形成可能なエポキシ樹脂組成物、防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材、並びに基材の防食方法

【課題】高可撓性(高伸び率)を有する塗膜を安価に形成可能なエポキシ樹脂組成物、塗料組成物、重防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂(a1)およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、エポキシ樹脂用硬化剤(b1)を含む硬化剤成分とを含有する第1のエポキシ樹脂組成物。上記エポキシ樹脂(a1)または、エポキシ樹脂(a1)とフェノール変性炭化水素樹脂(a3)とを含む主剤成分と、高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、を含有する第2のエポキシ樹脂組成物。上記エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/またはフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、を含有する第3のエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高伸び率を有する塗膜を形成可能なエポキシ樹脂組成物、防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材、並びに基材の防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶および陸上・海洋鋼構造物等の基材表面には、防食塗装が施されているが、形成された防食塗膜は、経時的に硬化、乾燥が進行して可撓性(伸び率)が低下し、その塗膜は脆くなり、物性が低下して、やがて部分的な鋼材の応力歪みに追随し得なくなって、塗膜にはクラックが生じやすくなる。
【0003】
そして生じた塗膜のクラックから発錆して鋼板などの基材は腐食し、船舶あるいは陸上・海洋構造物への浸水、崩壊など、種々の問題が発生する。特に、近年の造船業界では、タンカー損壊時の海洋汚染防止の見地から船体を二重構造にするダブルハル化(double hull)が進行しつつあり、これに伴う船体重量の増加を抑えるために、ハイテン鋼(high-tensile-strength steel、高張力鋼)が多用され、板厚の薄い鋼板が使用されている。
【0004】
このような原油タンカー、プロダクトキャリヤー、ケミカルタンカー等のウオーターバラストタンクなど、船舶や陸上、海洋の構造物では、ハイテン鋼の応力歪みにより、鋼板の溶接接合部である溶接シーム部(lap seam weld)、あるいは、鋼板等のT継手部の溶
接において溶接線の交差による熱的影響を避けるために一方の鋼板に設ける扇型の切欠であるスカラップ部(scallop)などに塗膜のクラックが発生し、鋼板が腐食するケースが
しばしば報告され、この対策が重要な課題となっている。
【0005】
また、船舶の1種であるバラ積貨物船(バルクキャリアー)、鉱石・石炭運搬船などでは、積荷の上げ下ろしの際にブルドーザーなどの重機を用いることがある。この際に、貨物倉(カーゴホールド)のタンクトップ部鋼板に大きなダメージであるへこみや突出等の変形が生じて、カーゴホールド下部のウォーターバラストタンクに塗装されている防食塗膜にクラックが生じ、鋼板が腐食することがある。
【0006】
本発明者らは、鋼板等にこのようなへこみや突出などが生じた場合に、その表裏面などに塗設されている塗膜が基材鋼板の変形にスムーズに追随して伸縮あるいは屈曲して、該塗膜にクラック等が生じないような、高可撓性(高伸び率)の防食塗膜を得るべく鋭意研究を重ねたところ、驚くべきことに、(イ):エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂および/または液状炭化水素樹脂を含む主剤成分と、エポキシ樹脂用硬化剤からなる硬化剤成分とを含有するエポキシ樹脂組成物からなる塗膜(防食塗膜)、あるいは、(ロ):上記エポキシ樹脂を含む主剤と、高弾性付与性アミン系硬化剤を含む硬化剤成分とを含有するエポキシ樹脂組成物からなる塗膜(防食塗膜)、(ハ):エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂および/または液状炭化水素樹脂を含む主剤成分と、高弾性付与性アミン系硬化剤を含む硬化剤成分とを含有するエポキシ樹脂組成物からなる塗膜(防食塗膜)などによれば、上記問題点を一挙に解決できることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
なお、(1):特開平9−263713号公報には、タールを含まず、特にバラストタンク等の船舶内部の塗装に有用な防食塗料として、(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)水酸基含有石油樹脂からなり、この水酸基含有石油樹脂成分(C)を硬化樹脂固形分100重量部に対して20〜500重量部で含有する防食塗料組成物が
開示されている。上記水酸基含有石油樹脂(C)としては、水酸基を含有し、常温で固体状の石油樹脂で、その軟化点が50〜150℃のものが好ましいと記載されている。
【0008】
また、該防食塗料組成物によれば、硬化樹脂と石油樹脂との相溶性が良好で、安全衛生上問題がなく、防食性、耐水性、付着性が良好で、明色の塗膜を形成できる旨記載されている。しかしながら、該公報(1)に記載の防食塗料組成物からなる塗膜では、経時的に乾燥が進むにつれて可撓性(伸び率)が低下して、物性も低下するという問題点があった。
【0009】
また、(2):特公昭59−2468号公報には、(i)エポキシ樹脂のエポキシ基1当
量に対して、ポリサルファイド樹脂のメルカプタン基を0.03〜0.06当量の割合で付加させたポリサルファイド付加エポキシ樹脂と、(ii)硬化剤とよりなるエポキシ樹脂防食塗料組成物が記載されている。該硬化剤(ii)としては、脂肪族ポリアミン、複素環状ジアミン、アミンアダクト樹脂、変性ポリアミン、変性ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、芳香族ポリアミンなどが挙げられている。
【0010】
しかしながら、該エポキシ樹脂防食塗料組成物からなる塗膜は、経時的に塗膜の可撓性(伸び率)が低下してしまい不十分であり、また該塗料は製造コストも高いとの問題点があった。
【特許文献1】特開平9−263713号公報
【特許文献2】特公昭59−2468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、高可撓性(高伸び率)を有する塗膜を形成可能なエポキシ樹脂組成物、防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材、並びに基材の防食方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(以下、まとめて第1の組成物とも言う。)は、(A-i)エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/または液状炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、(B-i)エポキシ樹脂用硬化剤(b1)を含む硬化剤成分と、を含有することを特徴としている。
【0013】
上記本発明においては、上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)を含むことが好ましく、さらに好ましくは、上記エポキシ樹脂(a1)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、上記液状炭化水素樹脂(a3)が、液状フェノール変性炭化水素樹脂であることが望ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を10〜100重量部(全量)の量で含んでいてもよいが、好ましくは10〜99.9重量部、さらに好ましくは10〜98重量部、特に好ましくは40〜80重量部の量で、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を0〜50重量部でもよいが、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に好ましくは5〜40重量部の量で、および液状炭化水素樹脂(a3)を0〜70重量部、好ましくは5〜30重量部の量で含むことが望ましい。
【0015】
上記本発明においては、上記主剤成分(A-i)100重量部に対して、硬化剤成分(B-i)が5〜200重量部で含まれていることが好ましい。本発明に係る第2のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(以下、まとめて第2の組成物とも言う。)は、(A-ii
)エポキシ樹脂(a1)または、エポキシ樹脂(a1)と液状炭化水素樹脂(a3)とを含む主剤と、(B-ii)高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、を
含有することを特徴としている。
【0016】
このような第2の組成物では、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)が、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンであることが好ましい。本発明に係る上記第2の組成物では、上記硬化剤成分(B-ii)が、さらに、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)以外の汎用アミン系硬化剤(b1-2)を含むことが好ましく、さらには、上記高弾性
付与性アミン系硬化剤(b1-1)が、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の高弾性付与性アミン系硬化剤であり、上記汎用アミン系硬化剤(b1-2)が、ポリアミドアミン、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、フェノルカミンアダクトからなる群から選ばれた少なくとも1種の汎用アミン系硬化剤であることが望ましい。
【0017】
本発明に係る第2の組成物では、上記主剤(A-ii)100重量部に対して、硬化剤成
分(B-ii)が5〜200重量部の量で含まれていることが好ましい。本発明に係る第3
のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(以下、まとめて第3の組成物とも言う。)は、(A-iii)エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/または液状炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、(B-iii)高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、を含有することを特徴としている。
【0018】
本発明に係る第3の組成物では、上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)を含むことが好ましく、さらには、上記エポキシ樹脂(a1)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、上記液状炭化水素樹脂(a3)が、液状フェノール変性炭化水素樹脂であることが望ましい。
【0019】
本発明に係る上記第3の組成物では、上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)の固形分(非揮発性の塗膜形成要素、以下同様)合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を10〜100重量部の量で含んでいてもよいが、好ましくは10〜99.9重量部、さらに好ましくは10〜98重量部、特に好ましくは40〜80重量部の量で、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を0〜50重量部でもよいが、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に好ましくは5〜40重量部の量で、および液状炭化水素樹脂(a3)を0〜70重量部、好ましくは5〜30重量部の量で含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係る第3の組成物では、上記主剤成分(A-iii)100重量部に対して、硬化剤成分(B-iii)が5〜200重量部の量で含まれていることが好ましい。本発明に係る塗膜は、上記のエポキシ樹脂組成物からなる防食塗料組成物から形成されており、高伸び率を有する塗膜である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る被覆基材は、上記の塗膜で基材表面が被覆されていることを特徴としている。本発明に係る基材の防食方法は、基材表面を、上記の塗膜で被覆することを特徴とし
ている。本発明によれば、高可撓性(高伸び率)を有する塗膜を形成可能なエポキシ樹脂組成物、防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材、並びに基材の防食方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る高可撓性(高伸び率)を有する塗膜を形成可能なエポキシ樹脂組成物、防食塗料組成物、その塗膜、その塗膜で被覆された基材、並びに基材の防食方法について具体的に説明する。
<第1のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物>
本発明に係る第1のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(これらをまとめて第1の組成物、第1の発明などとも言う。)には、(A-i)エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/または液状炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、(B-i)エポキシ樹脂用硬化剤(b1)を含む硬化剤成分と、が含有されている。なお、この主剤成分(A-i)や、硬化剤成分(B-i)には、これら以外に、後述するような各種成分が含まれていてもよい。
【0023】
この第1の組成物は、安価で高可撓性を有するという特徴を有している。
[主剤成分(A-i)]
このような第1の本発明においては、上記主剤成分(A-i)として、エポキシ樹脂(a1)とウレタン変性エポキシ樹脂(a2)と液状炭化水素樹脂(a3)を含んでいてもよく、エポキシ樹脂(a1)とウレタン変性エポキシ樹脂(a2)とを含んでいてもよく、エポキシ樹脂(a1)と液状炭化水素樹脂(a3)を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の好ましい態様では、上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)を含むことが好ましい。さらに好ましくは、上記エポキシ樹脂(a1)が、下記ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、上記液状炭化水素樹脂(a3)が、後述する液状フェノール変性炭化水素樹脂であることが望ましい。
【0025】
以下、主剤成分(A-i)に含まれるエポキシ樹脂(a1)、さらにはウレタン変性エポキシ樹脂(a2)、液状炭化水素樹脂(a3)について順次説明する。
<エポキシ樹脂(a1)>
上記主剤成分(A-i)に含まれるエポキシ樹脂(a1)としては、本願出願人が先に提案した特開平11−343454号公報、 特開平10−259351号公報などに記載
の非タール系エポキシ樹脂を用いることができる。
【0026】
該エポキシ樹脂(a1)としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーあるいはオリゴマー、およびそのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーあるいはオリゴマーが挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールAタイプ、Fタイプのエポキシ樹脂が好ましく、特にビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が好ましく用いられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いると、密着力の優れた塗膜を形成することができる。
【0027】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールAエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプ);エピクロルヒドリン−ビスフェノールADエポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとビスフェノールF(4,4'-メチ
レンビスフェノール)とが縮重合反応した構造のエポキシノボラック樹脂;3,4-エポ
キシフェノキシ-3',4'-エポキシフェニルカルボキシメタン等が縮重合反応した脂環式エポキシ樹脂;エピクロルヒドリン−ビスフェノールAエポキシ樹脂中のベンゼン環に結合している水素原子の少なくとも1部が臭素置換された構造の臭素化エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと脂肪族2価アルコールとが反応した構造の脂肪族エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとトリ(ヒドロキシフェニル)メタンとが縮重合反応した構造の多官能性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0028】
特に好ましく用いられる、ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂としては、上記例示も含めて、たとえばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAプロピレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどの縮重合物が挙げられる。
【0029】
本発明においては、このようなエポキシ樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このように2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いる場合には、エポキシ樹脂の上記分子量、エポキシ当量は、何れもその平均値で示す。このようなエポキシ樹脂のうちでは、常温(15〜25℃の温度、以下同様。)で液状〜固体のものが好ましく、また、そのエポキシ当量が150〜1000g/equiv、好ましくは150〜600g/equiv、特に好ましくは180〜500g/equivのものが望ましい。
【0030】
このようなエポキシ樹脂の平均分子量等は、得られる塗料の塗装硬化条件(例:常乾塗装あるいは焼付け塗装等)などにも依り、一概に決定されないが、その分子量が通常350〜20,000であり、粘度が12000〜15000cPs/25℃であり、エポキシ当量が上記範囲のものが用いられる。代表的な上記エポキシ樹脂としては、常温で液状のものでは、「エピコート(R)828,一般名:ビスフェノールAジグリシジルエーテ
ル」(シェル(株)製、エポキシ当量180〜190、粘度12,000〜15,000cPs/25℃)、「エポトート(R)YDF−170、一般名:ビスフェノールFジグリシジルエーテル」(東都化成(株)製、エポキシ当量160〜180、粘度2,000〜5,000cPs/25℃)、「フレップ(R)60」(東レチオコール(株)製、エポキシ当量約280、粘度約17,000cPs/25℃)、「エピコート(R)828X−90、一般名:ビスフェノールAジグリシジルエーテル・キシレン溶液」(828タイプエポキシ樹脂、シェル(株)製、エポキシ当量約210)、「エピコート(R)834X−85、一般名:ビスフェノールA型エポキシ・キシレン溶液」(834タイプエポキシ樹脂、シェル(株)製、エポキシ当量約282)、「エピコート(R)1001X−75、一般名:ビスフェノールA型エポキシ・キシレン溶液」(1001タイプエポキシ樹脂、シェル(株)製、エポキシ当量約633)、などを挙げることができ、常温で半固型状のものでは、「エポトート(R)YD−134、一般名:ビスフェノールA型エポキシ」(東都化成(株)製、エポキシ当量230〜270)などを挙げることができ、常温で固型状のものでは、「エピコート(R)1001、一般名:ビスフェノールA型エポキシ」(シェル(株)製、エポキシ当量450〜500)などを挙げることができる。本発明においては、これらエポキシ樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。なお、上記商品名の(R)は登録商標等を示す。
【0031】
本発明においては、上記のエポキシ樹脂と共に、例えば、エポキシ当量が上記範囲を超えるなど、上記以外のエポキシ樹脂を本発明の目的に反しない程度の少量で用いることができる。本発明においては、上記エポキシ樹脂(a1)は、主剤成分(A-i)中に、通常5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の量で含まれ、本発明の組成物中には通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0032】
また、主剤成分(A-i)中のエポキシ樹脂(a1)とウレタン変性エポキシ樹脂(a2)と液状炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部中に、エポキシ樹脂(a1)は、固形分として、10〜100重量部、好ましくは40〜80重量部の量で含まれていることが好ましい。このような量でエポキシ樹脂(a1)が含まれていると、得られるエポキシ樹脂組成物は、高伸び率を有する組成物なり、また得られる塗膜は、高可撓性を有し、耐クラック性が良好となる傾向がある。
<ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)>
ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)は、分子内にエポキシ基とウレタン結合とを有し、反応性を有し、しかも得られる塗膜に可撓性を付与できる樹脂で、このようなウレタン変性エポキシ樹脂としては、従来より公知のものを広く使用でき、例えば、特開平10−278172号公報、特開2001−11365号公報、特開2000−119623号公報等に記載のものを使用することができる。
【0033】
例えば、このウレタン変性エポキシ樹脂(a2)は、例えば、特開平10−278172号公報[0053]〜[0057]にも記載されているように、ウレタン変性のベースとなる上記エポキシ樹脂(a1)に、下記のイソシアネート化合物(すなわちイソシアネート基含有ウレタン反応物)を反応させることにより得ることができる。使用されるイソシアネート化合物(イソシアネート基含有ウレタン反応物)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族、または芳香族化合物、もしくは、それらの化合物(これらをまとめてポリイソシアネートとも言う。)を、多価アルコール(ポリオール)で部分反応せしめてなり、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基が残存する化合物が挙げられる。
【0034】
該ポリイソシアネートとしては、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートまたはp−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられ、また、上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。
【0035】
ウレタン変性エポキシ樹脂の調製において、エポキシ樹脂と該イソシアネート基含有ウレタン反応物は、エポキシ樹脂100重量部に対し、該イソシアネート基含有ウレタン反応物10〜100重量部の割合で反応させるのが充分な加工性を有し、しかも強靱な被膜が得られ、他の層(塗膜)との密着性に優れ、得られる樹脂の高分子化が適度の範囲となり、粘度も適度であり、皮膜形成時の塗装性も良好となるなどのため好ましい。エポキシ樹脂と該イソシアネート基含有ウレタン反応物との反応は、無触媒でも十分可能であるが、必要に応じて、公知の触媒、例えば、第3級アミン、有機化合物等を添加することもできる。
【0036】
また本発明では、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)としては、例えば、特開2001−11365号公報[0037]〜[0038]にも記載されているように、例えば、ユニットの炭素原子数が1〜4個のポリアルキレンポリオール(一分子中の水酸基の数は1〜4個)と上記ポリイソシアネートを反応させポリウレタンを得た後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の上記エポキシ樹脂(a1)とさらに反応させることにより得られる。
【0037】
例えば、分子量800のポリテトラメチレングリコールとトリレンジイソシアネートを1.5:1の当量比で反応させて得たポリウレタンとビスフェノールA型エポキシ樹脂と
を反応させたもの等が挙げられる。また、本発明では、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)により変性したウレタン変性エポキシ樹脂を用いてもよく、具体的には大日本インキ化学工業社製の「エピタン(R)E195」、旭電化工業社製の「アデカレジン(R)EPU78−11」等が挙げられる。このウレタン変性エポキシ樹脂は、例えば分子量300〜3000のポリオキシプロピレングリコール(PPG)に過剰量の上記ポリイソシアネートを反応させて末端に遊離のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、これに1分子中に少なくとも2個の水酸基を有するエポキシ樹脂を反応させることにより製造することができる。さらに本発明で使用できるウレタン変性エポキシ樹脂として、上市されているものでは、「アンカレツ(R)2364」/エアープロダクツ社製、「EPU(R)−80」および「EPU(R)−56」/旭電化工業(株)製などが好ましい。
【0038】
本発明では、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)のエポキシ当量は、100〜5000の範囲であることが好ましい。エポキシ当量がこのような範囲にあると、樹脂の分子量が適度であり、十分な強靱性を有する皮膜を形成することができ、加工性や後塗装密着性が良好であり、また、強靱な皮膜が得られる傾向がある。本発明においては、このようなウレタン変性エポキシ樹脂(a2)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このように2種以上のウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を組み合わせて用いる場合には、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)の上記分子量、エポキシ当量は、何れもその平均値で示す。
【0039】
このようなウレタン変性エポキシ樹脂(a2)のうちでは、常温(15〜25℃の温度)で固形〜液状のものが好ましく、また、そのエポキシ当量が200〜2000g/equiv
、好ましくは400〜1500g/equivのものが望ましい。このようなウレタン変性エポ
キシ樹脂(a2)の粘度は2000〜50000cPs/25℃であり、エポキシ当量が上記範囲のものが用いられる。
【0040】
本発明においては、上記ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)は、主剤成分(A-i)中に、通常2〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の量で含まれ、本発明の組成物中には通常2〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。また、主剤成分(A-i)中のエポキシ樹脂(a1)とウレタン変性エポキシ樹脂(a2)と液状炭化水素樹脂(a3)の固形分(非揮発性の塗膜形成要素)合計100重量部中に、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)は固形分として、好ましくは、0.1〜50重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に好ましくは5〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量でウレタン変性エポキシ樹脂(a2)が含まれていると、得られるエポキシ樹脂組成物は、高伸び率を有する組成物となり、また得られる塗膜は、高可撓性を有し、耐クラック性が良好な塗膜となる傾向がある。
<液状炭化水素樹脂(a3)>
液状炭化水素樹脂(液状の石油樹脂)(a3)としては、従来より公知のものを広く使用でき、ナフサを熱分解して得られる低沸点留分であって、主成分は脂肪族炭化水素の共重合体である。この液状炭化水素樹脂(a3)としては、例えば、特開平8−127758号公報[0005]欄等に記載されているような、脂環式炭化水素構造単位及び鎖式炭化水素構造単位からなる、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素樹脂を主成分とし、かつ液状のものを用いることができる。
【0041】
この脂肪族炭化水素樹脂としては、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン等の鎖式炭化水素、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素などを含む主に石油のC5留分を、フリーデルクラフツ触媒等の触媒を用いて重合して得られるオリゴマーで、常温で液状の樹脂や、これにさらに水素添加することにより得られる常温で液状の樹脂が好ましい。これら液状の脂肪族炭化水素樹脂としては、数
平均分子量が100〜1,000、さらには150〜500のものが好ましい。また、得られる組成物の粘度、タック、接着力等の点からは、水素添加されていない不飽和脂肪族液状炭化水素樹脂を用いるのが好ましい。これらの脂肪族液状炭化水素樹脂としては、例えば「マルカクリア(R)V、L、H」(丸善石油化学(株)製)等の市販品がある。また、本発明においては、液状炭化水素樹脂(a3)として、スチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン等の芳香族オレフィンを主に含むC9石油留分の重合物などの芳香族系石油樹脂またはそのフェノール変性物などの変性物、液状ポリブタジエン、エチレン系共重合樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂等)またはその変性物、合成ゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム等)であって、何れも液状のものを単独で使用してもよく、または液状〜固形のものを、上記脂肪族液状炭化水素樹脂などと併用することができる。また、本発明では、C5留分とC9留分を共重合させた共重合系石油樹脂、上記C5留分中のジエン類(シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエンなど)が一部環化重合した脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂に水素添加した樹脂、ジシクロペンタジエンを重合させた脂環族系石油樹脂などであって液状のものを単独で、または液状〜固形のものを、上記液状炭化水素樹脂と併用することができる。特に、本発明では、液状炭化水素樹脂(液状石油樹脂)(a3)としては、液状フェノール変性炭化水素樹脂が好ましく用いられる。
【0042】
フェノール変性炭化水素樹脂としては、例えば、特開平9−268209号公報[0014]〜[0015]、特開平7−196793号公報[0012]等にも記載されているように、石油の分解油留分に含まれるジオレフィン及びモノオレフィン類を、フェノール類(フェノール化合物)と共重合させたものが挙げられる。さらに詳しくは、該フェノール変性炭化水素樹脂は、分解油留分のうち、C5留分を原料にしたC5系(脂肪族系)石油樹脂、C9留分を原料にしたC9系(芳香族系)石油樹脂、C5・C9共重合石油樹脂、又はC5留分に含まれるシクロペンタジエンを熱二量化して得られるジシクロペンタジエンを原料にしたジシクロペンタジエン樹脂などに、フェノール類を付加させた石油樹脂(炭化水素樹脂)である。本発明で好ましく用いられるフェノール変性石油樹脂は、石油の分解油留分に含まれるスチレン、ビニルトルエン、クマロン、インデンなどを、フェノール類と付加重合させたものである。
【0043】
これらのうちでは、特に、石油の分解油留分に含まれるジオレフィン、モノオレフィンなどのC9留分を、フェノール化合物の存在下でカチオン重合して得られたフェノール変性C9系石油樹脂を使用するのが低価格であり、また、作業性の点で好ましい。フェノール変性炭化水素樹脂としては、水酸基価5〜60程度、好ましくは20〜60のものが望ましい。水酸基価がこれより小さいと接着性等の改質効果が低下し、また水酸基価がこれより大きくなると分子量が小さくなり作業性が低下する傾向があり、上記範囲では、接着性、作業性共に優れた組成物が得られる傾向がある。なお、フェノール変性C9系石油樹脂の水酸基価を前記範囲に調製するには、C9留分100重量部に対し、通常、フェノール化合物を5〜40重量部程度、好ましくは10〜30重量部の量で用いればよい。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノールなどが使用される。フェノール類の含有量は、フェノール変性樹脂中に5〜50重量%で、かつ分子当り平均1〜3個付加したものが好ましい。
【0044】
このフェノール類の含有量が5重量%未満では、硬化性が低下し、Tgも低く、靭性が低下する傾向があり、また50重量%を越えると、塗膜の吸水率が大きくなる傾向がある。このような液状炭化水素樹脂(a3)の平均分子量等は、得られる塗料の塗装硬化条件(例:常乾塗装あるいは焼付け塗装等)などにも依り、一概に決定されないが、その分子量が通常200〜1000であり、粘度が30〜10000(1万)cPs/25℃のものが用いられる。
【0045】
このような常温で液状の炭化水素樹脂として、上市されているものとしては、「ネシレス(R)EPX−L、ネシレス(R)EPX−L2」(以上、NEVCIN社製/フェノール変性炭化水素樹脂)、「HILENOL(R)PL−1000S」(韓国KOLON
CHEMICAL社/C9系炭化水素樹脂)、キシレン樹脂の「ニカノール(R)Y−
51」(三菱ガス化学(株)製/キシレン樹脂)などが挙げられる。本発明においては、上記液状炭化水素樹脂(a3)は、主剤成分(A-i)中に、通常0〜70重量%、好ましくは5〜40重量%の量で含まれ、本発明の組成物中には通常0〜20重量%、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0046】
また、主剤成分(A-i)中のエポキシ樹脂(a1)とウレタン変性エポキシ樹脂(a2)と液状炭化水素樹脂(a3)の固形分(非揮発性の塗膜形成要素)合計100重量部中に、液状炭化水素樹脂(a3)は固形分として、0〜70重量部、好ましくは5〜30重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量で液状炭化水素樹脂(a3)が含まれていると、得られるエポキシ樹脂組成物は、高伸び率を有する組成物となり、また得られる塗膜は、高可撓性を有し、耐クラック性が良好となる傾向がある。
<主剤成分に配合可能なその他の成分>
主剤成分(A-i)には、上記主剤のエポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)、液状炭化水素樹脂(a3)などの他に、通常、塗料等に配合可能な各種成分が含まれていてもよい。例えば、非反応性の可撓性付与樹脂、反応性希釈剤、顔料成分(例:体質顔料、着色顔料、防錆顔料)、付着強化剤(例:シランカップリング剤)、上記以外の熱可塑性樹脂、可塑剤、無機脱水剤(安定剤)、溶剤、タレ止め・沈降防止剤、防汚剤、その他の塗膜形成成分などが配合されていてもよい。
(イ)非反応性の可撓性付与樹脂
本発明においては、主剤成分(A-i)に、さらに、非反応性の可撓性付与樹脂として、上記以外の石油樹脂である常温固形の石油樹脂、キシレン樹脂、クロマンインデン樹脂、インデンスチレン樹脂などを本発明の目的に反しない範囲で配合して用いてもよい。これらの非反応性の可撓性付与樹脂は、主剤成分(A-i)中に0〜50重量%、好ましくは5〜20重量%となるような量でブレンドして用いてもよい。また、主剤成分(A-i)には、経済性及び防食性などの観点からタールを添加してもよく、その場合、このタールは、主剤成分(A-i)中に通常、0〜50重量%、好ましくは5〜40重量%となるような量でブレンドして用いてもよい。
【0047】
上記非反応性可撓性付与樹脂として上市されているものとしては、常温固形の石油系樹脂である、「ネオポリマー(R)−E−100」、「ネオポリマー(R)K−2」、「ネオポリマー(R)K3」(以上は、日本石油化学(株)製/C9系炭化水素樹脂)、「HILENOL(R) PL−400」(韓国KOLONCHEMICAL社/C9系炭化
水素樹脂)などが挙げられる。これらの樹脂は、他の樹脂との相溶性が良い。本発明では、可撓性(高伸び率)をより考慮すれば、固形より液状の石油樹脂を添加するとその効果が大きいが、防食性、塗膜表面状態などを考慮して、数種の石油系樹脂を混合して使用してもよい。
(ロ)反応性希釈剤
応性希釈剤は、低温での硬化促進作用の向上にも寄与でき、このような反応性希釈剤としては、具体的には、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1〜10、好ましくは1〜5、例:ブチルグリシジルエーテル)、バーサティック酸(Versatic acid)グリシジルエステル[R123C−COO−Gl
y、R1+R2+R3=C8〜C10のアルキル基、Gly:グリシジル基]、α-オレフィ
ンエポキサイド(CH3-(CH2n-Gly、n=11〜13、Gly:グリシジル基)
、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH26-O-Gly、Gly:同上)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-CH2-C(
CH32-CH2-O-Gly、Gly:同上)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(CH3-CH2-C(CH2-O-Gly)3、Gly:同上)、アルキルフェノールグリシジルエーテル[アルキル基の炭素数1〜10、好ましくは1〜5、例:メチルフェノールグリシジルエーテル、エチルフェノールグリシジルエーテル、プロピルフェノールグリシジルエーテル]等が挙げられる。これらの反応性希釈剤のうちでは、エポキシ基を含有するものが好ましく、さらには、上記アルキルフェノールグリシジルエーテルが低粘度であり、希釈効果を発揮でき、塗料のハイソリッド化(すなわち、塗料中の固形分濃度が高く、低溶剤含量となり、少ない塗装回数で塗膜の厚膜化を図ることができること)を図ることができ、低公害化を図ることができるため好ましい。これら反応性希釈剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
このような反応性希釈剤としては、「NC−513」(アルキレイティッドフェノールグリシジルエーテル、カードライト社製)が、特に低粘度であり、希釈効果があり、塗料等のハイソリッド化に寄与できるため好ましい。このような反応性希釈剤は、主剤成分(A-i)中に、通常、0.1〜8重量%の量で含有され、また本発明の組成物中には、0.1〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。
(ハ)顔料成分
顔料成分としては、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等が挙げられ、有機系、無機系の何れでもよく、有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等があげられる。無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、黄色ベンガラ、バライト粉、シリカ、タンカル、タルク、白亜、酸化鉄粉、マイカ、硫酸バリウム等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO、酸化亜鉛)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等があげられる。上記マイカのうちで、そのアスペクト比が30〜90の高アスペクト比マイカが塗膜の耐膨れ性の向上、クリープ性の減少の観点から好ましく、このような高アスペクト比マイカとしては、「スゾライトマイカ(R)200HK」(クラレ(株)製、アスペクト比:40〜60)等が用いられる。
【0049】
なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。特に顔料成分の1種である高アスペクト比マイカは、主剤成分(A-i)100重量部中に、通常5〜10重量部の量で用いられると、耐水防食性、耐屈曲性などが向上した塗膜が得られる傾向があるため望ましい。
【0050】
またこのマイカを含めた上記各種顔料の配合量は、その用途によっても異なり一概に決定されないが、通常、合計で、主剤成分(A-i)中に、10〜75重量%の量で含まれることが多い。また、主剤成分(A-i)中の固形分100重量部中に、15〜75重量部程度の量で含有され、また本発明の組成物中には、10〜70重量%の量で含有されることが多い。また、乾燥塗膜中の顔料容量%(PVC)は、例えば、20〜50%、さらには30〜40%となるように調整することが望ましい。
(ニ)付着強化剤
付着強化剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0051】
これら付着強化剤のうちで、シランカップリング剤は、通常、同一分子内に2種の官能基を有し、無機質基材に対する接着力向上に寄与でき、例えば、式:X−Si(OR)3
[X:有機質と反応性の官能基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、またはこれらの基を含有する炭化水素基等の基を示し、この炭化水素基にはエーテル結合等が存在していてもよい。)またはアルキル基を示し、ROは、加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基)を示す。]で表される。このようなシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、「KBM(R)403」(γ-グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0052】
このような付着強化剤を配合する場合には、該付着強化剤は、主剤成分(A-i)中に、0.01〜1.0重量%の量で含有され、また、本発明の組成物中には、必要により、0.01〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の量で含有されていることが望ましい。このような量で付着強化剤を主剤成分(A-i)等の中に含む塗料を用いると、付着性、耐膨れ性、耐クリープ性などに優れた塗膜が得られる傾向がある。
(ホ)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のアクリル系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(塩ビ共重合体);スチレン系樹脂;尿素アルデヒド縮合系樹脂;ケトン系樹脂等を挙げることができる。このような熱可塑性樹脂は、主剤成分(A-i)中に、0〜40重量%の量で含有されていてもよく、また、本発明の組成物中には、0〜35重量%の量で含有されていてもよい。
(ヘ)タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等があげられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン(R)305」、「ディスパ
ロン(R)4200-20」等の他、「ディスパロン(R)A630-20X」、伊藤精油(株)製の「
ASAT(R)−250F」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0053】
タレ止め・沈降防止剤は、この主剤成分(A-i)中に、例えば、0.1〜10重量%の量で含有されていてもよく、また本発明の組成物中には、例えば、0.1〜10重量%の量で含有されていてもよい。
(ト)溶剤
溶剤としては、ケトン類[(例:メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK))、アルコール類(例:ブタノール、メトキシプロパノール、イソプロピルアルコール(IPA))、芳香族炭化水素類(例:キシレン、トルエン)、エチレンジクロライド、アクリロニトリル、エーテル類(例:メチルターシャリブチルエーテル(MTBE)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))、エステル累(例:酢酸ブチル)等が挙げられる。これら溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0054】
上記溶剤の配合量には特に制限はないが、塗工性などを考慮すると、通常、主剤成分(A-i)中に、通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の量で含まれ、また本発明の組成物中には合計で約5〜50重量%の量で含まれていることが望ましい。本発明においては、上記各種配合成分のうちで、シランカップリング剤に代表される付着強化剤、熱可塑性樹脂、顔料などは、上記のように主剤成分(A-i)に含有されていてもよく、また、下記硬化剤成分(B-i)に含有されていてもよく、あるいは主剤成分(A-i)と硬化剤成分(B-i)の両者に含有されていてもよい。
[硬化剤成分(B-i)]
本発明に係る第1の組成物に、上記主剤成分(A-i)と共に用いられる硬化剤成分(B-i)としては、エポキシ樹脂用硬化剤(b1)が挙げられる。
【0055】
このエポキシ樹脂用硬化剤(b1)としては、フェノール樹脂系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤等、従来よりエポキシ樹脂用に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体的には、上記フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられる。
【0056】
ポリアミン系硬化剤としては、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などの何れでもよい。脂肪族系ポリアミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、その他の脂肪族系ポリアミン類などが挙げられ、より具体的には、上記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:H2N−R1−NH2(R1:炭素数1〜10の炭化水素基側鎖を1個または複数個有していてもよい主鎖炭素数1〜12の二価炭化水素基)で表され、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等が用いられる。上記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:H2N−(Cm2mNH)nH(m:1〜10の整
数、n:2〜10、好ましくは2〜6の整数)で表され、より具体的には、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0057】
その他の脂肪族系ポリアミン類としては、特公昭49−48480号公報第24欄などに記載されているような、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2−アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3−ビス(2'−アミノエチルアミノ)プロパン、トリエ
チレン−ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3−アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン[H2N(CH2nNH(CH2nNH2、n=6]、等が挙げられる。
【0058】
脂環族系のポリアミン類としては、より具体的には、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4'−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4'−イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)等が挙げられ
る。
【0059】
芳香族系のポリアミン類としては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物、その他の芳香族系ポリアミン類などが挙げられる。
【0060】
この芳香族系ポリアミン類として、より具体的には、例えば、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、p−キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2'−
ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,4'−ジアミノヒ゛フェニル、2,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4、4'−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等が挙げられる。
【0061】
複素環系のポリアミン類としては、より具体的には、N−メチルピペラジン[CH3-N(CH2CH22NH]、モルホリン[HN(CH2CH22O]、1,4−ビス−(8-
アミノプロピル)-ピペラジン、ピペラジン−1,4−ジアザシクロヘプタン、1−(2'−アミノエチルピペラジン)、1−[2'−(2"−アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11−ジアザシクロエイコサン、1,15−ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0062】
その他、本発明で使用可能なアミン化合物としては、例えば、特公昭49−48480号公報第12頁24欄第43行〜第14頁第28欄第25行に記載の芳香族系のアミン類(アミン化合物)を使用することもできる。
【0063】
その他、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。さらには、これらのポリアミン類の変性物、例えば、ポリアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ化合物(例:マンニッヒ変性ポリアミドアミン)、ミカエル付加物、ケチミン、アルジミンなどが挙げられる。
【0064】
ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらの硬化剤成分(B-i)は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
上記ポリアミン系硬化剤として上市されているものとしては、例えば、脂肪族ポリアミンの「ACIハードナー(R)K−39」/PTIジャパン社=IBPTRジャパン社製)、ポリアミドアミンの「PA−66、PA−29」/大竹明新化学(株)製)、マンニッヒ変性ポリアミドアミンの「アデカハードナー(R)EH−342W3」/旭電化工業(株)製)、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミンの「サンマイド(R)CX−1154」/三和化学(株)製)、フェノルカミンアダクトの「カードライト(R)NC556X80」/カードライト社)、等が挙げられる。これら硬化剤成分はN.V.50〜100%に調製され、その時のE型粘度計で測定した粘度は100〜100000cPs(好ましくは500〜10000cPs)の範囲にあると、取扱い性、塗工性に優れるため好ましい。
【0065】
このような第1の発明においては、この硬化剤成分(B-i)と前記主剤成分(A-i)とは、その当量比(アミン当量/エポキシ当量)が、0.3〜1.5、好ましくは0.5〜1.0となるような量で用いることが望ましい。また、上記第1の本発明においては、前記主剤成分(A-i)100重量部に対して、上記硬化剤成分(B-i)が5〜200重量部、好ましくは10〜40重量部の量で含まれていることが好ましい。
【0066】
このような量で主剤(A-i)に対して、硬化剤成分(B-i)が含まれていると、得られる組成物は高伸び率を有する組成物となり、硬化塗膜は高可撓性を有し、耐クラック性が良好な塗膜となる傾向がある。
<硬化剤成分に添加可能なその他の成分
なお、本発明においては、この硬化剤成分(B-i)には、任意成分として、例えば、硬化速度の調整、特に促進に寄与できる硬化促進剤が含有されていてもよい。また、この硬化剤成分(B-i)には、上記各種配合成分のうちで、主剤成分(A-i)にも配合可能な成分例えば、シランカップリング剤に代表される付着強化剤、熱可塑性樹脂、顔料、溶剤などが含有されていてもよい。硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類が挙げられる。
【0067】
具体的には、例えば、トリエタノールアミン(N(C25OH)3)、ジアルキルアミ
ノエタノール{[CH3(CH2n]2NCH2OH、n:繰返し数}、トリエチレンジアミ
ン[1,4−ジアザシクロ(2,2,2)オクタン]、2,4,6−トリ(ジメチルアミ
ノメチル)フェノール[C65−CH2N(CH32、商品名「バーサミン(R)EH30」、ヘンケル白水(株)製]、商品名「アンカミン(R)K−54」(エアープロダクツ
社製)等が挙げられる。これら硬化促進剤は、本発明の組成物中に、必要により、0.1〜2.0重量%の量で配合される。本発明で用いられる硬化剤成分(B-i)にも、上記主剤成分(A-i)の場合と同様な溶剤が、通常含まれていることが多い。
【0068】
上記溶剤の配合量には、特に制限はないが、塗工性などを考慮すると、通常、硬化剤成分(B-i)中に、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で含まれ、また本発明の組成物中には合計で、上述したように、約5〜50重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0069】
本発明の組成物すなわち、硬化性エポキシ樹脂組成物、塗料組成物、重防食塗料組成物等の組成物を得るには、上記主剤成分(A-i)を、通常60〜90重量%の量で、硬化剤成分(B-i)を、残部量すなわち、10〜40重量%((A-i)+(B-i)=100重量%)の量で、例えば、15〜40℃の温度下に配合し攪拌・混合等すればよい。
<第2のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物>
本発明に係る第2のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(これらをまとめて第2の組成物、第2の発明などとも言う。)には、(A-ii)上記エポキシ樹脂(a1)を含
む主剤成分と、(B-ii)高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、
が含有されている。この第2の組成物は、前記第1の組成物あるいは後記第3の組成物に比して、安価で適度な可撓性を有するという特徴を有している。
【0070】
この第2の組成物では、上記第1の組成物において、主剤成分として、第1の組成物における主剤成分のうちの1つであるエポキシ樹脂(a1)を必須成分として用い、また硬化剤成分として、上記第1の組成物における硬化剤に変えて、あるいは上記第1の組成物における硬化剤と共に、下記の高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を用いる点以外は、第1の組成物と同様である。従って、例えば、主剤成分(A-ii)としては、前記第1
の組成物における主剤成分中のエポキシ樹脂(a1)と同様のもの、すなわち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。また主剤成分(A-ii)と硬化剤成分(
B-ii)との配合比なども前記第1の組成物の場合と同様であり、添加・配合可能なその
他の成分、量、調製法などについても前記第1の組成物の場合と同様である。
【0071】
以下、この第2の組成物の特徴あるいは上記第1の組成物との相違点について説明する。
この第2の組成物では、高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)としては、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテル(アルキレングリコール数は2〜10、好ましくは2〜5,アルキレン基はC1〜C10、好ましくはC1〜C5,アルキル基はC1〜C10、好ましくはC1〜C5)またはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンなどが挙げられる。これらの高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)のうちでは、上記モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンが好ましく用いられる。
【0072】
このようなモノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンとしては、例えば、ジエチレングリコールジアミノプロピルエーテル(「アンカミン(R)1922」/エアープロダクツ社)、ジエチレングリコールジアミノプロピルエーテルをダイマー酸で変性したポリアミドアミン(「アンカマイド(R)910」/エアープロダクツ社)等が挙げられる。本発明に係る第2の組成物では、上記硬化剤成分(B-ii)には、上記高弾性付与性アミン系
硬化剤(b1-1)に加えて、さらに、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)以外の汎用のアミン系硬化剤(b1-2)すなわち上記第1の発明におけるアミン系硬化剤(B-i
)を含むことが好ましい。
【0073】
本発明のさらに好ましい態様では、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)として、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の高弾性付与性アミン系硬化剤を用い、上記汎用アミン系硬化剤(b1-2)、すなわち、前記第1の発明におけるエポキシ樹脂用硬化剤(b1)としては、ポリアミドアミン、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、フェノルカミンアダクトからなる群から選ばれた少なくとも1種の汎用アミン系硬化剤を用いることが望ましい。
【0074】
このように硬化剤成分(B-ii)として、高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)と、
それ以外の汎用のアミン系硬化剤(b1-2)(すなわち硬化剤(B-i))とを組み合わせて用いる場合には、高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を1重量部に対して、それ以外の汎用のアミン系硬化剤(b1-2)は、0.1〜10重量部の量で用いることが好ましい。このような量比で、高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)と、それ以外の汎用のアミン系硬化剤(b1-2)とを併用すると、(得られる塗膜は防食性に優れ、適度の可撓性(塗膜の伸び率)と耐屈曲性とを有し、しかも経済的に低コストなどとなる傾向がある。
【0075】
本発明において、上記硬化剤成分(B-ii)を調製するには、成分(b1-1)と成分(b1-2)とを、成分(b1-1)100重量部に対して、成分(b1-2)を、通常5〜200重量部
、好ましくは20〜100重量部の量で、15〜40℃の温度下に攪拌・混合等すればよい。
【0076】
また、この第2の組成物においても、前記第1の組成物における主剤成分と硬化剤成分の配合比と同様に、上記主剤成分(A-ii)100重量部に対して、硬化剤成分(B-ii)が5〜200重量部の量で含まれていることが好ましい。
<第3のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物>
本発明に係る第3のエポキシ樹脂組成物および防食塗料組成物(以下、まとめて第3の組成物、第3の発明などとも言う。)には、(A-iii)上記エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/または液状炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、(B-iii)上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、が含有されている。この第3の組成物は、前記第1の組成物あるいは第2の組成物に比して、特に、高伸び率を有し、耐クラック性が優れるという特徴を有している。
【0077】
この第3の組成物では、前記第1の組成物において、硬化剤成分(B-iii)として、上記第2の組成物における硬化剤と同様の高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を用いる点以外は、第1の組成物と同様である。従って、例えば、主剤成分(A-iii)としては、前記第1の組成物における主剤成分(A-i)と同様のものが用いられ、また主剤成分(A-iii)と硬化剤成分(B-iii)との配合比なども前記第1の組成物の場合と同様であり、添加・配合可能なその他の成分、調製法などについても前記第1の組成物の場合と同様である。
【0078】
以下、この第3の組成物の特徴あるいは上記第1あるいは第2の組成物との相違点について説明する。
本発明に係る第3の組成物においても、前記第1の組成物の場合と同様に、上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)を含むことが好ましく、さらには、上記エポキシ樹脂(a1)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、上記液状炭化水素樹脂(a3)が、液状フェノール変性炭化水素樹脂であることが望ましい。
【0079】
本発明に係る第3の組成物では、前記第1の組成物における主剤成分と同様に、上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を10〜100重量部、好ましくは40〜80重量部の量で、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を2〜50重量部、好ましくは5〜30重量部の量で、および液状炭化水素樹脂(a3)を0〜70重量部、好ましくは5〜20重量部の量で含むことが好ましい。
【0080】
また、この第3の組成物においても、前記第1の組成物における主剤成分と硬化剤成分の配合比と同様に、上記主剤成分(A-iii)100重量部に対して、硬化剤成分(B-iii)が5〜200重量部の量で含まれていることが好ましい。
<組成物の調製、塗膜、被覆基材、防食方法など>
上記のような本発明の組成物すなわち、硬化性エポキシ樹脂組成物、塗料組成物、防食塗料組成物等の組成物を得るには、上記主剤成分(A-i)、(A-ii)あるいは(A-iii
)100重量部に対して、硬化剤成分(B-i)、(B-ii)あるいは(B-iii)を、通常
、5〜200重量部、好ましくは10〜40重量部の量で、例えば、15〜40℃の温度下に配合し攪拌・混合等すればよい。
【0081】
なお、上記各発明の主剤成分(A-i)、(A-ii)あるいは(A-iii)を総称して主剤
成分(A)等とも言うことがあり、また各発明の硬化剤成分(B-i)、(B-ii)あるい
は(B-iii)を総称して硬化剤成分(B)等とも言うことがある。
【0082】
このような本発明に係る組成物によれば、サンドブラス基材鋼板、無機系・有機系ジンクショッププライマー処理鋼板などとの付着性、破断伸び率、破断値、初期物性(付着性、屈曲性、耐衝撃性および鉛筆硬度)、防食性試験(温度差試験、塩水浸漬、電気防食、ソルトスプレー、高温高湿の各試験)の各特性がバランス良く優れた塗膜を形成可能である。すなわち、本発明に係る塗膜は、上記のエポキシ樹脂組成物からなる防食塗料組成物から形成されており、高可撓性、高伸び率を有し、基板等の応力歪みに良好に追随できる。
【0083】
また、本発明に係る被覆基材は、上記のように、本発明の塗膜で基材表面が被覆されている。従って、該被覆基材では、鋼板等の基材の応力歪みに追随して塗膜が変形でき、塗膜にクラックが発生し難く、塗膜は、高可撓性、高伸び率を有し、該被覆基材は、防食性に優れている。
【0084】
本発明に係る基材の防食方法は、基材表面を、上記の塗膜で被覆することを特徴としている。本発明の防食方法などによれば、高可撓性(高伸び率)を有し、基板等の応力歪みに追随できる塗膜を基材表面に低コストで、環境への安全性に優れた塗膜を形成可能である。
【0085】
さらに付言すれば、本発明の組成物は、上記したような優れた性能の塗膜を基材表面に形成できるため、陸上金属製タンクの内外表面、コンクリート製地下排水槽、陸上、地中、あるいは海中パイプラインなどの上塗り塗装としても使用できるが、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、浮き子、ブイ)、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜などの各種基材の表面等に塗布、硬化させて、より好適に使用できる。本発明の組成物は、重防食塗料として好適であり、特に船舶タンク用(例:バラストタンク用、カーゴオイルタンク用)、船舶外板用、デッキ用、カーゴホールド用、水中構造物用などの用途に好適に用いられる。
【0086】
また、本発明の組成物は、それ自体を型内などに流し込んで反応硬化させ、船具、漁具
(例:浮き)などの防食性の各種成形体として用いることもできる。本発明の上記組成物は、例えば塗布されて、乾燥・硬化するとき、主剤成分(A)中に含まれるエポキシ樹脂中のエポキシ基が開環して、エポキシ酸素(O)は水酸基(−OH)となり、またエポキシ基を形成していた分子末端の炭素は硬化剤中のアミノ基「−NH2」などと反応して、
「-NH−」結合などにて硬化剤と結合しているのであろうと推測される。
[発明の効果]
(a) 本発明の組成物によれば、船舶および陸上・海洋鋼構造物などの鋼板の応力・歪に充分追随できるような可撓性を有する二液型のエポキシ系重防食塗料を提供できる。
【0087】
(b)また、本発明の組成物を用いることにより、得られる塗膜にクラックが生じ難くな
る。
(c) また本発明によれば、用途により、可撓性を任意に調整でき、しかもこの本発明の組成物は、既存のエポキシ系重防食塗料をベースにして、これに特定の成分を配合することにより、高可撓性を有する塗膜を簡単に得ることができるため、既存の防食塗料の防食性能を損なわず、安価な防食塗料を提供できる。
【0088】
(d) 本発明の組成物によれば、得られる塗膜は、優れた可撓性(柔軟性)があるため、非鉄金属用塗料、非金属用塗料などとしての利用も期待できる。
(e) また本発明の組成物は、DNV(ノルウエー船級協会)発行の「CorrosionProtection of ships(July 1996)のGuideline No.8 Appendix 2」に記載されている、「船舶のウォーターバラストタンクには、(得られる塗膜の)引張伸び率が4%以上の防食塗料を使用するように」との要求にも、充分に対応できる。
【0089】
(f) 従来の防食用塗料(例:タールエポキシ樹脂塗料、ピュアエポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、ハイソリッドエポキシ樹脂塗料、無溶剤型エポキシ樹脂塗料など)は、初期硬化(室温20℃×7〜10日)では充分な可撓性(引張試験による伸び率2〜15%、耐屈折性JIS K−5400、8.1など)を示すが、完全硬化(室温20℃×
1ヶ月〜3ヶ月、室温20℃×7日+80℃×4時間など)後は、伸び率は低下して、最終的には1%前後まで低下する。また、それに比例して耐屈曲性も低下する。すなわち、従来の防食塗膜は経時的に脆くなり、鋼板の応力、歪みに追随できなくなる傾向があった。
【0090】
これに対して、本発明に係る組成物では、
(イ):既存のエポキシ系防食用塗料におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量150〜1000)をベースとする主剤側に、特殊な可撓性付与樹脂であるウレタン変性エポキシ樹脂および/または液状炭化水素樹脂を添加するか、
(ロ):汎用の防食塗料用アミン系硬化剤側に、得られる塗膜に高弾力性付与可能な特殊なアミン系硬化剤を添加するか、あるいは、
(ハ):上記(イ)と(ロ)との組み合わせで構成されており、
このような本発明の(塗料、防食塗料)組成物によれば、既存の防食用塗料の良好な防食性を損なわず、その組み合わせと添加量の調整を行うだけで、完全硬化後にも充分な可撓性(引張試験による破断伸び率1%〜80%、実用的な範囲では4〜20%)を保持でき、充分な耐屈曲性を有する防食性良好な塗膜を形成可能であり、しかも該組成物は安価であり、従って得られる塗膜も安価であり、経済性に優れる。
[実施例]
以下、本発明に係るエポキシ樹脂組成物、塗料組成物、防食塗料組成物、その塗膜などについて、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何ら制限されるものではない。
【0091】
なお、以下の実施例、比較例で用いた試験方法などは以下の通り。また、実施例、比較
例などにおいて、各成分の配合組成等は、その趣旨に反しない限り、重量部表示である。(1)引張試験
破断伸び率(%)と破断値(kgf/cm2)の測定「JIS K−7113」に準拠し、試験片の破断伸び率を測定した。試験片としては、20mm×10mmのフリーフィルムを下記のようにして作成して、テンシロン(Tansilon)試験機を使用し、破断伸び率(%)とそのときの破断値(kgf/cm2)を測定した。
【0092】
試験片は、テフロン(登録商標)シートまたは剥離紙に、エアースプレーまたはアプリケーターにて、均一な膜厚(DFT200μm)になるように塗装して作成した。この塗装された試験片を1日間室温乾燥(20℃)し、規定の大きさに切断して、フリーフィルムを作成した。
【0093】
さらに、これらのフリーフィルムを(a)室温(20℃)で14日間自然乾燥する場合、(b)室温(20℃)で1ヶ月間自然乾燥する場合、(c)室温(20℃)で7日間自然乾燥後に、さらに80℃で4時間強制乾燥(完全硬化)する場合の3態様で乾燥させた。得られた各乾燥試験片について、破断伸び率と破断値を測定した。
(2)初期物性と評価
(イ)塗膜外観の試験方法と評価基準
試験方法としては、まず、サンドブラスト鋼板(70mm×150mm×2.3mm(厚)、大佑機材(株)製)と、これと同一寸法のサンドブラスト鋼板に耐熱無機ジンクショッププライマー「セラベスト(商品名)、中国塗料(株)製」を、DFT(乾燥塗膜厚)にて15μmとなるように塗装して、屋外曝露状態で1週間以上(14日間)乾燥させた試験片素材(W/B)を準備した。これらの試験片素材に各供試試験片をエアースプレーで乾燥膜厚が180〜200μmになるように塗装して、室温(20℃)で7日間乾燥させ、供試試験片とした。(*1)
<評価基準>
4:良好、
3:実用レベル、
2:やや劣る、
1:不良。
(ロ)[付着性]
(a)碁盤目試験の試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、上記(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0094】
試験方法は、「JIS K−5400 8.5.2」の「碁盤目テープ法」に準拠して、2mm幅で25個の升目を作成し、付着試験の残存升目の数を表記した。
<評価基準>
4:切り傷1本毎が細くて両端が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目一目に剥がれがなく、欠損部の面積は全正方形面積の5%以内である。
【0095】
3:切り傷の両側と交点とに剥がれがあって、欠損部の面積は全正方形面積の5〜15%である。
2:切り傷の剥がれの幅が広く、欠損部の面積は全正方形面積の15〜35%である。
【0096】
1:切り傷の剥がれの幅は「評価:2」よりも広く、欠損部の面積は全正方形面積の35%以上である。
(b)ナイフ試験の試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、上記(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0097】
試験方法は、JIS K−5400 8.5.3の「Xカットテープ法」に準じて実施し
た。
<評価基準>
4:剥がれが全くない。(良好)
3:交点に剥がれが無く、Xカット部に僅かに剥がれがある。(実用レベル)
2:Xカット部の交点から何れかの方向に、3mm以内の剥がれがある。(やや劣る)
1:テープを貼ったXカット部の大部分に剥がれがある。(不良)
(c)プルオフ試験の試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、上記(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0098】
試験方法は、JIS K−5400 8.7の「付着強さ」に準じて実施した。 モトフ
ジ社製のプルオフゲージによる引張強度試験で、剥離部位および剥離面積%により下記の通り評価した。
評価基準
【0099】
【表1】

【0100】
(d)綜合評価
4:良好、
3:実用レベル、
2:やや劣る、
1:不良。
(ハ)屈曲性
JIS K−5400 8.1に準拠し、10mmの心棒を用いて試験した。
<評価方法>
4:ルーペで見ても全くクラックが無い。
【0101】
3:ルーペで見ると僅かに微小クラックが認められる。
2:肉眼で小さなクラックが認められる。
1:大きなクラックが認められ、その数も多い。
(ニ)耐衝撃性
試験片の作成方法は、上記(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0102】
JIS K−5400 8.3.2に準拠(デュポン式、1kg×50cm)。
<評価方法>
4:撃芯の当たり部(直径約5mm)からの剥がれ幅が1mm以内。
【0103】
3:撃芯の当たり部(直径約5mm)からの剥がれ幅が1mmを超え〜2mm以内。
2:撃芯の当たり部(直径約5mm)からの剥がれ幅が2mmを超え〜5mm以内。
1:撃芯の当たり部(直径約5mm)からの剥がれ幅が5mmを超える。
(ホ)鉛筆硬度の試験方法と評価基準
「JISK−5400 8.4」に準拠し、ブリキ板にアプリケーターで250μm(
乾燥膜厚)となるように塗装し、20℃で7日間あるいは、20℃で3ヶ月間(30日)乾燥させ、塗膜の硬さを、鉛筆の芯で引っかいて調べ、鉛筆の濃度記号で表した。
(3)防食性
(イ)温度差試験と塗膜外観評価方法と評価基準
試験片の作成方法は、前述の(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0104】
試験方法は、「JIS K 5400 8.23」に準拠した。
供試試験片で、供試塗膜面が50℃の温水に、裏面が20℃の水に接するように30℃の温度差を与え、6日後の塗膜外観と付着性を評価した。
<評価基準>
4 :良好。
【0105】
3 :実用レベル。
2 :やや劣る。
1 :不良。
(ロ)耐塩水性の試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、前述の(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0106】
試験方法は、「JIS K 5400 8.23」に準拠した。
浸漬期間は、40℃の塩水×3ヶ月。評価基準は、(3)の(イ)と同じ。
(ハ)電気防食性の試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、前述の(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0107】
試験方法は、「ASTM G−8」に準拠した。
浸漬期間は、40℃の塩水×3ヶ月。評価基準は、(3)の(イ)と同じ。
(ニ)ソルトスプレーの試験方法と評価基準
試験方法としては、「磨き軟鋼板(70mm×150mm×1mm(厚))、大佑機材(株)製」をキシレンで充分脱脂した試験片素材に各供試塗料をエアースプレーでその乾燥膜厚が180〜200μm厚となるように塗装して、室温(20℃)で7日間乾燥させ、供試試験片とした。(*2)
試験方法は、「JIS K−5400 9.1」に準拠した。浸漬条件は、35℃/5%塩水×2000時間。
【0108】
評価基準は、(3)の(イ)と同じ。
(ホ)高温高湿試験方法と評価基準
試験片の作成方法は、前述の(2)の(イ)の(*1)と同じ。
【0109】
試験方法は、「JIS K−5400 9.2」に準拠した。試験条件は、50℃/95%RH以上×3ヶ月。
評価基準は、(3)の(イ)と同じ。下記の実施例、比較例で用いた各成分を以下に示す。
(1)「エピコート828X−90」
(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、シェル(株)製)、一般名:♯828タイプベース(ハイソリッド型):ハイソリッド(ソルベントレス型)でボリュームソリッドが高く70%以上。
(2)「エピコート834X−85」
(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールAエポキシ、シェル(株)製)、一般名:♯834/♯1001エポキシタイプベース:通常の溶剤型塗料でボリュームソリッドは約50
〜70%。
(3)「エピコート1001X−75」
(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールA型エポキシ、大竹明新化学(株)製)、一般名:♯1001エポキシタイプベース:通常の溶剤型塗料でボリュームソリッドは約50〜70%。
(4)「Ancarez2364」
ウレタン変性エポキシ樹脂、AIR PRODUCTS社製、エポキシ当量470、粘度
23000〜35000cPs/25℃。
(5)「NeciresEPX−L」
石油樹脂、NEVCIN社製、分子量290、フェノール変性芳香族炭化水素樹脂。
(6)「ネオポリマーK2」
C9系石油樹脂、日石化学(株)製。
(7)「KBM403」
(シランカップリング剤、信越化学工業(株)製)
(8)「F−2タルク」
(タルク、富士タルク(株)製)
(9)「チオナRCL−575」
(二酸化チタン、SCM社製)
(10)「カーボンブラックMA−100」
(カーボンブラック、三菱化学(株)製)
(11)「スゾライトマイカ200HK」
(高アスペクト比マイカ、アスペクト比50、クラレ(株)製)
(12)「ASAT−250F」
(タレ止め剤、伊藤製油(株)製)
(13)「ラッカマイドTD966」
(ポリアミドアミン、大日本インキ化学工業(株)製)
(14)「アデカハードナーEH342W3」
(MXDAマンニッヒ変性ポリアミドポリアミン、旭電化工業(株)製)
(15)「サンマイドCX1154」
(一部フェノルカミン変性MXDAマンニッヒポリアミン、三和化学(株)製)
(16)「Ancamide 910」
(ポリアミドアミン、AIR PRODUCTS社製)
(17)「ACI Hardener K−39」
(脂肪族ポリアミン,PTIジャパン(株)製)
(18)「Ankamine K−54」
(3級アミン、AIR PRODUCTS社製)
(19)プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、溶剤、ダイセル化学工業(株)製)
[実施例1]
<主剤成分の調製>
「エピコート828X−90」(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールA型エポキシ、シェル(株)製)0重量部と、
「エピコート834X−85」(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールA型エポキシ、粘度:2000〜4000cPs、シェル(株)製)11.3重量部と、
「エピコート1001X−75」(エポキシ樹脂の種類:ビスフェノールA型エポキシ、シェル(株)製)7.4重量部と、
「Ancarez2364」(ウレタン変性エポキシ樹脂、AIR PRODUCTS
社製、エポキシ当量470、粘度23000〜35000cPs/25℃)0重量部と、
「NeciresEPX−L」(石油樹脂、NEVCIN社製、分子量290、フェノール変性芳香族炭化水素樹脂)0重量部と、
「ネオポリマーK2」(石油樹脂、日石化学(株)製)10.8重量部と、
「KBM403」(シランカップリング剤、信越化学工業(株)製)0.5重量部と、
「F−2タルク」(タルク、富士タルク(株)製)41.7重量部と、
「チオナRCL−575」(二酸化チタン、SCM社製)5.9重量部と、
「カーボンブラックMA−100」(カーボンブラック、三菱化学(株)製)0.05重量部と、
「スゾライトマイカ200HK」(高アスペクト比マイカ、アスペクト比50、クラレ(株)製)0重量部と、
「ASAT−250F」(タレ止め剤、伊藤製油(株)製)2.0重量部と、
溶剤のキシレン13.4重量部と、
メチルイソブチルケトン(MIBK)5.0重量部と、
メチルエチルケトン(MEK)1.0重量部と、
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)0重量部と、
ノルマルブタノール(n−BuOH)1.0重量部との配合物(合計100重量部)と、を混合・攪拌して主剤成分を調製した。
<硬化剤成分の調製>
「ラッカマイドTD966」(ポリアミドアミン、大竹明新化学(株)製)0重量部と、
「アデカハードナーEH342W3」(MXDAマンニッヒ変性ポリアミドポリアミン、旭電化工業(株)製)0重量部と、
「サンマイドCX1154」(一部フェノルカミン変性MXDAマンニッヒポリアミン、三和化学(株)製)0重量部と、
「Ancamide 910」(ポリアミドアミン、AIR PRODUCTS社製)8.5重量部と、
「ACI Hardener K−39」(脂肪族ポリアミン,PTIジャパン(株)製)0重量部と、
「Ankamine K−54」(3級アミン、AIR PRODUCTS社製)0.4重量部と、
ノルマルブタノール(n−BuOH)0重量部と、
イソブタノール(i−BuOH)1.2重量部と、
キシレン2.1重量部と、
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、溶剤、ダイセル化学工業(株)製)0重量部と、
メチルイソブチルケトン(MIBK)0重量部との配合物(合計12.2重量部)とを、混合・攪拌して硬化剤成分を調製した。
<硬化性エポキシ樹脂組成物(塗料組成物、防汚塗料組成物)の調製>
上記主剤成分100重量部と、上記硬化剤成分12.2重量部とを混合して硬化性エポキシ樹脂組成物(塗料組成物、防汚塗料組成物)を調製した。
【0110】
該組成物を用いて、上記条件で各種試験を行った。配合組成を表2〜3に示す。また、結果を表5〜8に示す。さらに、主な使用原料の商品名、一般名および製造元(あるいは販売元)を表4に示す。
[実施例2〜12,比較例1〜2]
実施例1において、成分組成およびその配合量をそれぞれ表2〜3に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、試験を行った。配合組成を表2〜3に示す。また、結果を表5〜8に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
【表7】

【0117】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-i)エポキシ樹脂(a1)およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、
(B-i)エポキシ樹脂用硬化剤(b1)を含む硬化剤成分と
を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
上記エポキシ樹脂(a1)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を10〜99.9重量部、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を0.1〜50重量部およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を0〜70重量部の量で含む請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
上記主剤成分(A-i)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を40〜80重量部、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を5〜40重量部およびフェノール変性炭化水素樹脂(a3)を5〜30重量部の量で含む請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
上記主剤成分(A-i)100重量部に対して、硬化剤成分(B-i)が5〜200重量部である請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(A-ii)エポキシ樹脂(a1)または、エポキシ樹脂(a1)とフェノール変性炭化
水素樹脂(a3)とを含む主剤と、
(B-ii)高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、
を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)が、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンである請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
上記硬化剤成分(B-ii)が、さらに、上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)以
外の汎用アミン系硬化剤(b1-2)を含む、請求項7または8に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
上記高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)が、モノまたはポリアルキレングリコールのジアミノアルキルエーテルまたはさらにそれをポリカルボン酸で変性したポリアミドアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の高弾性付与性アミン系硬化剤であり、
上記汎用アミン系硬化剤(b1-2)が、ポリアミドアミン、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、フェノルカミンアダクトからなる群から選ばれた少なくとも1種の汎用アミン系硬化剤である請求項7〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
上記主剤(A-ii)100重量部に対して、硬化剤成分(B-ii)が5〜200重量部で
ある請求項7〜10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
(A-iii)エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および/または液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む主剤成分と、
(B-iii)高弾性付与性アミン系硬化剤(b1-1)を含む硬化剤成分と、
を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)を含む請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
上記エポキシ樹脂(a1)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項12または13に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を10〜99.9重量部、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を0.1〜50重量部、および液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)を0〜70重量部の量で含む請求項12〜14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
上記主剤成分(A-iii)が、エポキシ樹脂(a1)、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)および液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)の固形分合計100重量部に対して、エポキシ樹脂(a1)を40〜80重量部、ウレタン変性エポキシ樹脂(a2)を5〜40重量部および液状フェノール変性炭化水素樹脂(a3)を5〜30重量部の量で含む請求項12〜14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
上記主剤成分(A-iii)100重量部に対して、硬化剤成分(B-iii)が5〜200重量部である請求項12〜16のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物からなる防食塗料組成物。
【請求項19】
上記防食塗料組成物の用途が、船舶のウォーターバラストタンク用である請求項18に記載の防食塗料組成物。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物からなる防食塗料組成物から形成された高伸び率を有する塗膜。
【請求項21】
請求項20に記載の塗膜で基材表面が被覆された被覆基材。
【請求項22】
基材表面を、請求項20に記載の塗膜で被覆することを特徴とする防食方法。

【公開番号】特開2006−342360(P2006−342360A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224424(P2006−224424)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願2001−374711(P2001−374711)の分割
【原出願日】平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】