説明

高分子分散剤及び分散化用溶液

【課題】水を含む溶媒に対する被可溶化物、被乳化物又は被分散物の濃度を高くするか、乳化又は分散状態を均一化できる高分子分散剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレートを重合した重量平均分子量2000〜1000000の水溶性重合体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子分散剤及び分散化用溶液に関する。更に詳しくは、各種化合物又は素材を可溶化、乳化又は分散させる作用を有し、洗剤、塗料、化工品、医薬品等の分野において利用することが可能な、可溶化剤、乳化剤及び分散剤として用いることができる高分子分散剤及び分散化用溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
水に不溶性の有機化合物、無機化合物を水又は水を含む溶媒中に均一に分散するために分散剤として界面活性剤を用いることはよく知られている。界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系など化学構造の異なる種類のものがある。これら界面活性剤は、有機・無機の材質や液体・固体の形状を問わず材料の界面に層を形成して、かかる層により媒体中で相溶化、媒体中での凝集抑制、化合物を分散安定させる等の共通した性質を有している。
このような界面活性剤の中で生体安全性がより高く、広く安定した界面活性能を発揮するものに高分子分散剤があり、洗浄剤、化粧品、医薬品、食品添加剤、工業薬品など幅広く利用されている。
高分子分散剤としては、従来、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールあるいはこれらの誘導体が知られている。しかしながら、例えばポリ(メタ)アクリル酸のようなポリカルボン酸では、1価の金属イオンや2価以上の金属イオンの共存により水中で界面活性能が低下すること、水以外の良溶媒が少ないこと、ポリマー及びその水溶液の着色が大きく光照射条件下になるとさらに黄変してしまうこと等の欠点があった。また、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンは、界面活性能が十分でないことや、光により着色し易いと共に、機械的処理や加熱処理による着色変化が大きいという課題があった。
これらに対し、ポリエチレングリコールやこれらの誘導体は、水溶液状態、ドライ状態や光処理においても大きな変色は見られず、水のみならず有機溶媒への溶解性も高いという優位性があることが知られている。しかしながら、これらは、分子量が低いため長期にわたる安定性において分散性の低下が生じ分離し易く、更には、乾燥や析出時に白化し易い、あるいは密度差が大きいものの分散性が不十分であるという外観上に問題があった。
これらを解決するため、例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコール鎖を有するアクリル系モノマーからなる重合体を分散剤として用いる技術が開示されている。しかし、この技術では高分子化の面では改良されているものの逆に親水性が低下し、水をはじめ溶媒への溶解性が著しく低下し、使用する方法がかえって限定されるという欠点があった。また、前記高分子界面活性剤では、被可溶化物、被乳化物、被分散物の性質によっては、可溶化力、乳化力、分散力が不十分であるという問題がある。
【0003】
ところで、最近、特許文献2等において、ウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレートという新たなモノマーが開発されている。また、特許文献3には、これをコンタクトレンズに利用することが知られている。
更に、特許文献4には、ウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレートと疎水性単量体との共重合体が、防曇性を示し、防曇剤として使用できることが知られている。しかし、これらのウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレートの重合体が、可溶化作用、乳化作用及び分散作用を示すことについては知られていない。
【特許文献1】欧州特許出願第1323789号明細書
【特許文献2】特開2006−151953号公報
【特許文献3】特開2007−86389号公報
【特許文献4】特開2006−306995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、水を含む溶媒に対する被可溶化物、被乳化物又は被分散物の濃度を、被可溶化物、被乳化物又は被分散物を単独で用いた場合の濃度に比較して高くするか、若しくは乳化状態又は分散状態に均一化でき、見かけ上の前記濃度を向上させる性質を有する可溶化剤、乳化剤及び分散剤として利用可能な高分子分散剤及び該分散剤を用いた分散化用溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討した結果、親水性単量体の重合体、及び特定の親水性単量体と疎水性単量体とを含む単量体組成物を重合してなる重合体が優れた可溶化剤、乳化剤及び分散剤となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、式(1)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート、並びに必要により疎水性単量体を含む単量体組成物を重合した、重量平均分子量2000〜1000000の水溶性重合体を含む高分子分散剤が提供される。
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは0〜4の整数、mは1〜4の整数である。R3は−(CH2)x−、xは1〜4の整数である。)
また本発明によれば、上記高分子分散剤0.05〜70質量%と水を含む溶媒30〜99.95質量%とを含む分散化用溶液が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子分散剤は、特定の水溶性重合体を含むので、溶解しにくい被可溶化物、乳化しにくい被乳化物、分散しにくい被分散物を、従来に比して多量に可溶化、乳化又は分散させることができる。従って、本発明の高分子分散剤は、医薬品、配合品、塗料、合成樹脂用分散剤、化粧品、インキ等の各種分野での可溶化、乳化及び分散成分として好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の分散剤及び分散化用溶液は、分散作用のみならず、可溶化作用又は乳化作用を有するものである。ここで、可溶化とは、被可溶化物を溶媒に溶解させた際に、透明若しくは半透明の均一溶液が得られることを意味する。また、乳化とは、液状の被乳化物と溶媒とを乳化させた際に、被乳化物が均一に分散されて乳濁液が得られることを意味する。更に、分散とは、固体状の被分散物が、溶媒中に均一に分散されることを意味する。
本発明の高分子分散剤は、例えば、樹脂、薬物、顔料、発光材料、無機材料をそれ単独で溶媒に溶解、乳化又は分散させた場合に比べて、溶解度や、乳化又は分散状態を更に向上させることが可能な剤であって、前記式(1)で表される親水性単量体であるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート、更に必要により疎水性単量体を含む単量体組成物を重合してなる水溶性重合体を有効成分として含む。
【0008】
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。重合速度の点では水素原子であることが好ましく、得られる重合体の耐熱性の点からはメチル基であることが好ましい。R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−で示される基であり、nは0〜4の整数、mは1〜4の整数である。R2は、具体的に−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2−のいずれかである。
3は、−(CH2)x−で示される基であり、xは1〜4の整数である。R3は具体的に−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−のいずれかである。入手のし易さからR2は−CH2CH2−、R3は−CH2−であることが好ましい。
【0009】
式(1)で示される単量体としては、例えば、グリセロール−1−アクリロイルオキシエチルウレタン、グリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシメチルウレタン、3,4−ジヒドロキシブチル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、5,6−ジヒドロキシヘキシル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンが挙げられ、合成のし易さからグリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンが好ましく挙げられる。これらは使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
【0010】
本発明において、単量体組成物に必要により配合できる疎水性単量体としては、式(2)で表される疎水性単量体が好ましく挙げられる。
【化3】

式中、R4は水素原子又はメチル基を、R5はエステル基、エーテル基又はアミド基を、R6は炭素数1〜18の炭化水素基又はフッ化アルキル基を示す。
【0011】
上記疎水性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アコニット酸、イタコン酸、メタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びこれらの各種金属塩;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びこれらの各種四級塩;2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸モノグリセロール、N−(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)アクルアミド、ビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、アクリロイルモルホリン、マレイン酸イミド、酢酸ビニル、無水マレイン酸;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、アミノスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の各種モノアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の反応性官能基含有(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルブチルウレタン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルウレタン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルウレタン等のウレタン変性(メタ)アクリレート;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジエチルフマレート、ジエチルマレート、アクリロニトリル、ビニルベンジルアミン等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。以上の疎水性単量体のうち、良好な共重合性や、重合体の耐久性から(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0012】
式(1)で表される親水性単量体と式(2)で表される疎水性単量体との組合わせとしては、例えば、グリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンとブチルメタクリレートとの組合わせが最も好ましい。この中で、酢酸ビニル、無水マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレートを用いた場合は、重合後に加水分解、または親水性が付与されるような開環反応を行い、親水性を向上させることもできる。またグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシランを用いた場合は重合後に疎水性が付与されるような反応を行い、疎水性を向上させることもできる。
【0013】
前記単量体組成物において、式(1)で表される親水性単量体の含有割合は、該組成物中の全不飽和単量体基準で、通常10〜100質量%、特に30〜100質量%の範囲が好ましい。10質量%未満では得られる重合体の水を含む溶媒への溶解性が低くなる恐れがある。
前記単量体組成物において、疎水性単量体の含有割合は、該組成物中の全不飽和単量体基準で、通常0〜90質量%、特に0〜70質量%の範囲が好ましい。90質量%を超えると、得られる重合体の水を含む溶媒への溶解性が低くなる恐れがある。
【0014】
本発明の有効成分は、前記単量体組成物を重合してなる水溶性重合体である。該重合体の重量平均分子量は、通常2000〜1000000、好ましくは2000〜500000である。重量平均分子量が2000未満では、可溶化性、乳化性及び分散性が十分得られず、1000000を超えると水を含む溶媒に溶解した場合に粘度が高くなり操作性が著しく低下するため適さない。
【0015】
前記水溶性重合体は、前記単量体組成物を、公知の溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の方法を用いて、必要に応じて重合系を不活性ガス、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウムで置換ないし雰囲気下にし、重合温度0〜100℃、重合時間1〜48時間の条件でラジカル重合させる方法により調製することができる。
重合にあたっては重合開始剤を用いることができる。該重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略記する)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(商品名「パーブチルND」、日本油脂(株)社製、以下P-NDと略記する)又はこれらの混合物が挙げられる。重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いても良い。
重合開始剤の使用量は、単量体組成物100質量部に対して0.01〜5.0質量部が好ましい。重合体の精製は、再沈澱法、透析法、限外濾過法等の一般的な精製法により行うことができる。
【0016】
本発明の高分子分散剤において、可溶化される被可溶化物又は乳化させる被乳化物としては、例えば、インドメタシン、シコニン、ヒドロコルチゾン、エリスロマイシン、アドレアマイシン、エイコサペンタエン酸エチル(EPE-E)、α−トコフェロール、プロスタグランジン類、生理活性ペプチド、ビタミン類、テトラサイクリン、デキサメタゾン、ジクロフェナミド、ヘレニエン、ジヨードステアリン酸カルシウム、メタゾラミド等の薬剤;大豆油、オリーブ油、サフラワー油、ゴマ油、硬化牛脂、ナタネ硬化油等の油脂が挙げられる。
本発明の高分子分散剤によって分散される被分散物としては、例えば、フタロシアニン、ローダミンB等の有機粉体;金属酸化物、セラミック、セメント、カーボンやクレイ、アパタイト等の無機粉体が挙げられる。
【0017】
本発明の分散化用溶液は、上記高分子分散剤としての水溶性重合体0.05〜70質量%と、水を含む溶媒30〜99.95質量%とを含む。水溶性重合体が0.05質量%未満では、所望の可溶化性、乳化性又は分散性が得られない恐れがあり、70質量%を超える場合には、水を含む溶媒に対する溶解性が低下する恐れがある。
水以外の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒、他の各種極性溶媒が挙げられる。取り扱いの点からメタノールが好ましく挙げられる。水以外の溶媒を加える場合には、分散化用溶液の水を含む溶媒の割合のうちの好ましくは20〜90質量%を置換することができる。
【0018】
本発明の分散化用溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、粘度調節剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤等各種添加剤を適宜含有させることもできる。
【0019】
本発明の分散化用溶液を用いて、有機・無機材料を系中に可溶化、乳化又は分散させる方法としては、例えば、スクリューやタービン羽を有する攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の高速攪拌機、ボールミル、ロール等のせん断力の強い混練機等の混合する方法や、透析、超音波処理等の方法が挙げられ、系の配合状態によって選択される。使用する分散化用溶液の量としては、例えば、配合系全体に対して通常0.1〜30質量%の範囲が好ましい。混合温度は配合条件に合わせて、例えば、室温〜200℃の範囲で選択できる。混合時間は、系の規模や温度にもよるが可溶化、乳化又は分散状態に合わせ任意に決定することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1 (R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールの合成
2,3−イソプロピリデングリセロールは、M. Renoll, M. S. Newman, Org. Syn. Coll. 3, 502(1955)に従い、以下の合成方法により製造した。
カルシウム管、冷却管及びディーン−スターク(Dean−Stark)トラップを装着したナス型フラスコに、グリセリン100g、アセトン300mL、p−トルエンスルホン酸1水和物3g及び石油エーテル300mLを加え、50℃に設定したオイルバス中で加熱還流させた。12時間後、生成水分量約23mLで、新たに水分が生成しなくなったことを確認した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、酢酸ナトリウム3gを加え、更に30分間攪拌した後、エバポレータにより石油エーテル及びアセトンを留去した。得られた粗生成物を、バス温度70℃、留分温度60℃、減圧度5mmHgの条件で減圧蒸留することにより、収量130.6g、収率91%で、無色透明液体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3);1.3−1.5ppm,d,CH3(6H)1.9ppm,s,OH(1H)3.5−4.3ppm,m,CH2CHCH2(5H)
【0021】
製造例2 (R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンの合成
ナス型フラスコに、製造例1で合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール6.60g及びピリジン1mLを加え、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート7.37g(昭和電工株式会社製)を秤取って、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。室温、遮光下において、メタクリロイルオキシエチルイソシアナートをゆっくりと滴下した。50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、ピリジン及び過剰の2,3−イソプロピリデングリセロールを減圧留去することにより、収量12.7g、収率93%で、白色固体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3);1.3−1.5ppm,d,CH3(6H)1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H)3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2NHCH2CHCH2(9H)5.1ppm,s,NH(1H)5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0022】
製造例3 グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの合成
スクリュー管に、マグネチックスターラ、製造例2において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタン1.0g、メタノール3.9mL及び4Nの塩酸100μLを加え、室温下30分間攪拌反応させたところ、懸濁液が透明溶液となった。更に60分間攪拌反応させた後、減圧乾燥により無色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。収量は、852mg、収率は99%であった。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(D2O);1.8ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H)3.3−4.2ppm,m,OCH2CH2NHCH2CHCH2(9H)5.6,6.0ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0023】
製造例4 (R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの合成
ナス型フラスコに、製造例1において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール6.60g及びトリエチルアミン1mlを加え、メタクリロイルオキシエチルオキシエチルイソシアナート9.04g(昭和電工社製)を秤取って、滴下ロート及びカル
シウム管を装着した。室温、遮光下において、メタクリロイルオキシエチルイソシアナートをゆっくりと滴下した。50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、トリエチルアミン及び過剰の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを減圧留去することにより、収量13.5g、収率90%で、白色固体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)1.3−1.5ppm,d,CH3(6H)1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H)3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2NHCH2CHCH2(13H)5.1ppm,s,NH(1H)5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0024】
製造例5 グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンの合成
スクリュー管に、マグネチックスターラ、製造例4において合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン1.0g、メタノール3.9ml及び4N塩酸100μLを加え、室温下30分間攪拌反応させたところ、懸濁液が透明溶液となった。更に60分間攪拌反応させた後、減圧乾燥により収量835mg(収率96%)で色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンを得た。1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)1.9ppm,s,CH2=CH(CH3)(3H)3.4−4.4ppm,m,OCH2CH2OCH2CH2NHCH2CHCH2(13H)5.1ppm,s,NH(1H)5.6,6.1ppm,s,CH2=C(CH3)(2H)
【0025】
実施例1
製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン10g、メタノール/水混合溶媒(4/1 v/v)50mL及びAIBN0.4gを4つ口フラスコ中に秤取り、還流器付き攪拌機により均一に混合して、窒素ガスで試験管内を置換した後に、60℃で24時間反応させた。24時間後、反応溶液を透析膜(商品名スペクトラ/ポア7(フナコシ(株)製)、分画分子量1000)にとり、1Lの水中で、3時間毎に水を交換して12時間透析操作を行った。この溶液を300mlのナス型フラスコに取り、凍結乾燥することにより収量8.9g、収率89%で、ポリグリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン(以下重合体Aとする)を得た。
得られた重合体Aは容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液を下記条件においてGPCを用いて分子量を測定した。その結果、得られた重合体Aの重量平均分子量は、約98000であった。
(GPC条件)
溶離液:20mM燐酸緩衝液、カラム:TSKgelG4000PWXL+TSKgelG2500PWXL、検出器:RI、送液速度:0.6ml/分、カラム槽温度:40℃、標準物質:ポリエチレンオキシド
【0026】
実施例2
製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、単量体組成物としての、製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン6g及び市販モノマーのブチルメタクリレート4gの混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量210000のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンとメチルメタクリレートの共重合体(以下、重合体Bとする)9.1gを得た。
【0027】
実施例3
製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、単量体組成物としての、製造例5で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタン4g及び市販モノマーのステアリルメタクリレート6gの混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、重量平均分子量58000のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルオキシエチルウレタンとステアリルメタクリレートの共重合体(以下、重合体Cとする)9.2gを得た。
【0028】
実施例4 実施例1の重合体Aによる可溶化
水/エタノール混合溶液(1/4 v/v)1gに実施例1で調製した重合体Aを0.5g溶解し、さらにインドメタシン0.01gを加えて溶解した後、透析膜(スペクトラム・メディカル・インダストリーズ社製、商品名「Spectra/por 6」(Mw CO. 8000)を用い、666mlの精製水を20回交換して透析を行った。その後、透析処理した溶液をアセチルセルロース製メンブランフィルター(0.45μm)で濾過した。この際、液の状態を目視で観察して評価した。重合体の種類;被可溶化物、被乳化物又は被分散物の種類;可溶化等の方法(透析又は超音波)、並びに評価結果を表1に示す。
【0029】
実施例5 実施例1の重合体Aによる可溶化
水1gに実施例1で調製した重合体Aを0.5g溶解し、さらにシコニン0.01gを加えてプローブタイプの超音波照射器(スペクトラム・メディカル・インダストリーズ社製、商品名「ASTRASON,XL2020,Heart Systems」)を用い、10分間超音波照射して、得られた液体をアセチルセルロース製メンブランフィルター(0.45μm)で濾過した。この際、液の状態を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例6〜18
表1に示す重合体からなる高分子分散剤と、表1に示す被可溶化物、被乳化物、被分散物との組成を用いて、実施例4の方法(透析法)あるいは実施例5の方法(超音波法)で液を調製した。但し、表1中に添加溶媒の記載がある実施例6等は、水/エタノールに加えて表1に示す溶媒のピリジン(PYと略す)を添加して液を調製した。更に、PYを加えた実施例6等では、メンブランフィルターによる濾過を行わなかった。この際、液の状態を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、2−ヒドロキシメチルメタクリレート(HEMA和光純薬工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行い、重合体(重合体Dと略す)を得た。得られた重合体Dを用いて、実施例4と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例2
製造例3で得たグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、N,N−ジメチルアクリルアミドを用いた以外は、実施例1と同様に重合を行い、重合体(重合体Eと略す)を得た。得られた重合体Eを用いて、実施例4と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
比較例3〜5
実施例4の重合体に代え、市販品のポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K90)(比較例3、重合体Fとする)、ポリアクリル酸(和光純薬工業社製)(比較例4、重合体Gとする)、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、ゴーセノールKH−20)(比較例5、重合体Hとする)を用い、実施例4と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
尚、表1中、IDMはインドメタシン、SKNはシコニン、PCはフタロシアニン、OOはオリーブ油、SOは大豆油のそれぞれ略号である。
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果より、本発明の高分子分散剤は、優れた可溶化作用、乳化作用及び分散作用を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレートを含む単量体組成物を重合した、重量平均分子量2000〜1000000の水溶性重合体を含む高分子分散剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は−(CH2CH2O)n(CH2)m−を示す。ここで、nは0〜4の整数、mは1〜4の整数である。R3は−(CH2)x−、xは1〜4の整数である。)
【請求項2】
単量体組成物が、疎水性単量体を含む請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高分子分散剤0.05〜70質量%と水を含む溶媒30〜99.95質量%とを含む分散化用溶液。

【公開番号】特開2009−136749(P2009−136749A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314677(P2007−314677)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】