説明

高分子化合物を用いた組成物、ブロック高分子化合物、記録材料及び画像形成方法

【課題】インク組成物やトナー組成物において色材や固形物の分散性を良好にする組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)または該下記式(1)中の−COOR基が−COOM基で置き換えられた繰り返し単位構造を有する高分子化合物と、溶媒またはバインダー樹脂とを含有する組成物。


(Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基または芳香族環構造を表す。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機能材料として有用な新規な高分子化合物を用いた組成物、ブロック高分子化合物、記録材料及び画像形成方法に関する。特に好ましくは、それらの化合物を溶媒または分散媒とともに用いた記録材料、さらには色材とともに用いたインク組成物、トナー組成物、またそれらの組成物を使用した各種画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、色材を溶解したり、分散したりしてインク組成物やトナー組成物が調整されている。これには各種高分子材料が好ましく用いられており、例えばスチリル、アクリル、メタクリル系の高分子化合物が用いられている。溶剤や水を基材とする色材組成物においては、好ましくはイオン性官能基を有する高分子材料を利用することで顔料等の色材の分散性を向上するという試みも一般的に行なわれている。
【0003】
また、一方でポリビニルエーテル主鎖を有する高分子化合物も柔軟性高分子鎖をもつ高分子材料として知られているが、該高分子化合物の繰り返し単位中にイオン性官能基を導入することはほとんど行なわれていない。わずかに下記の非特許文献1、2に記載されているカルボン酸及びそのエステルがその可能性のあるものとして記載されているのみであり、またその化合物の安定性もより安定なものが求められており、それを使用した組成物としてもより分散性能や安定性の高いものが求められているのが現状である。
【非特許文献1】“ジャーナル オブ ポリマー サイエンス パートA ポリマーケミストリー”27巻、3303頁〜3314頁(1989年)
【非特許文献2】“ピュア アプライド ケミストリー”A36巻、3号 449頁−460頁(1999年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インク組成物やトナー組成物において色材や固形物の分散性を良好にする為に好適な高分子化合物およびブロック高分子化合物を提供することを目的とするものである。
【0005】
また、本発明は、上記の高分子化合物を用いたインク組成物、トナー組成物等の記録材料を使用した画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術および課題について鋭意検討した結果、下記に示す本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
または下記一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物と溶媒またはバインダー樹脂とを含有することを特徴とする組成物である。
【0011】
前記組成物が溶媒を含有し、前記高分子化合物が該溶媒中でミセル状態を形成しているのが好ましい。
また、本発明は、上記の組成物と色材とを含有する記録材料である。
【0012】
また、本発明は、上記の記録材料を用いる記録方法であって、前記組成物に、水素イオンまたは金属カチオンを接触することにより、該組成物を増粘する工程を含む記録方法である。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物である。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
また、本発明は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物である。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
前記ブロック高分子化合物が両親媒性のブロック高分子化合物であるのが好ましい。
【0018】
前記ブロック高分子化合物がポリビニルエーテル主鎖を有し、pKaが4.50以下である有機酸あるいは有機酸塩の繰り返し単位構造を有するのが好ましい。
ポリビニルエーテル繰り返し単位構造からなるブロック高分子化合物であって、該ブロック高分子化合物の繰り返し単位中に、カルボン酸エステル、カルボン酸およびカルボン酸塩から選ばれた少なくとも1種を有するのが好ましい。
【0019】
また、本発明は、上記の前記ブロック高分子化合物と、バインダー樹脂、ならびに色材を含有するトナー組成物である記録材料である。
また、本発明は、上記の前記ブロック高分子化合物、溶媒、ならびに色材を含有するインク組成物である記録材料である。
【0020】
また、本発明は、上記の記録材料を用いる画像形成方法であって、インクジェット記録により前記インク組成物を被記録媒体上に付与することを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組成物により、色材や固形物の分散性を良好にしたインク組成物やトナー組成物を提供することができる。
また、本発明の組成物は、電子写真、インクジェット等の画像形成方法に好ましく用いられる。
【0022】
また、本発明のブロック高分子化合物は、溶媒または分散媒とともに前記本発明の組成物として配合することにより、インク組成物、トナー組成物等の組成物および記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
(第1の発明に含まれる高分子化合物)
本発明の第1の組成物中に含まれる、下記一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物について詳しく説明する。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
【0026】
一般式(1)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
mは好ましくは1から10までである。
【0027】
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。nは好ましくは1から5までの整数である。Rのアルキル基としては、炭素原子数1から10までのアルキル基が好ましい。また、Rの芳香族環構造としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)で表される繰り返し単位構造は、以下の一般式(6)で表される単位構造であることが好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、Aはエチレン、プロピレンを表し、mは0から5を表す。mが2以上のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレンを表し、Dはフェニレン、またはナフチレンを表す。nは1から5までの整数を表し、nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは水素原子、アルキル基、フェニル基を表す。)
【0031】
一般式(1)で表される繰り返し単位構造は、末端が芳香族カルボン酸誘導体である。芳香族カルボン酸の酸性度は脂肪族カルボン酸の酸性度と異なるため、ビニルエーテル繰り返し単位構造を有する高分子化合物として酸性度の異なる、様々な機能性高分子材料含有組成物を提供できる点で極めて有用である。
【0032】
一般式(1)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、以下に示す単位構造が挙げられる。
【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
(Phは、1,4−フェニルまたは1,3−フェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、Pyrは2,5−ピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
【0041】
上記の一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、例えば、該当する置換基を有するビニルエーテル化合物を重合することにより得られる。重合は主にカチオン重合で行なわれることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3 、AlCl3 、TiCl4 、SnCl4 、FeCl3 、RAlCl2 、R1.5 AlCl1.5 (Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などがあげられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤をビニルエーテル化合物と共存させることにより重合反応が進行し、高分子化合物を合成することができる。
【0042】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の数平均分子量は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。また、本発明の高分子化合物は単一の繰り返し単位構造からなるホモポリマーであっても良いし、複数の繰り返し単位構造からなる共重合ポリマーであっても良い。
【0043】
共重合ポリマーの場合、好ましくは一般式(1)で表される繰り返し単位構造が1mol%以上含有される。さらに好ましくは3mol%以上である。1mol%未満の場合、一般式(1)で表される繰り返し単位構造による、分散機能等の機能性が十分でない場合がある。また、共重合ポリマーの場合、ポリビニルエーテル繰り返し単位構造の含有率は50mol%以上が好ましく、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0044】
(第2の発明に含まれる高分子化合物)
本発明の第2の組成物中に含有される、下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物について詳しく説明する。
【0045】
【化14】

【0046】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
【0047】
一般式(2)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
【0048】
mは好ましくは1から10までである。
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。
【0049】
Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。
nは好ましくは1か5までの整数である。
【0050】
Mの具体例としては、例えば一価の金属カチオンとしてはナトリウム、カリウム、リチウム等が、多価の金属カチオンとしてはマグネシウム、カルシウム、ニッケル、鉄等が挙げられる。Mが多価の金属カチオンの場合には、MはアニオンのCOO- の2個以上と対イオンを形成している。
【0051】
一般式(2)で表される繰り返し単位構造は、以下の一般式(7)で表される単位構造であることが好ましい。
【0052】
【化15】

【0053】
(式中、Aはエチレン、プロピレンを表し、mは0から5を表す。mが2以上のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレンを表し、Dはフェニレン、またはナフチレンを表す。nは1から5までの整数を表し、nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
【0054】
本発明の一般式(2)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、相当する前記一般式(1)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の末端エステル部分をアルカリ加水分解することにより得ることができる。酸で加水分解したのちアルカリ処理をすることによって得ることもできるが、前者のほうが好ましい。
【0055】
一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、以下に示す単位構造が挙げられる。
【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
(Phは、1,4−フェニルまたは1,3−フェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、Pyrは2,5−ピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
【0064】
本発明の一般式(2)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の数平均分子量は200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。本発明の高分子化合物は単一の繰り返し単位構造からなるホモポリマーであっても良いし、複数の繰り返し単位構造からなる共重合ポリマーであっても良い。
【0065】
共重合ポリマーの場合、好ましくは一般式(2)で表される繰り返し単位構造が1mol%以上含有される。さらに好ましくは3mol%以上である。1mol%未満の場合、一般式(2)で表される繰り返し単位構造による、分散機能等の機能性が十分でない場合がある。また、共重合ポリマーの場合、ポリビニルエーテル繰り返し単位構造の含有率は50mol%以上が好ましく、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0066】
(第1および第2の発明の組成物)
本発明は、前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物に溶媒またはバインダー樹脂を含有してなる組成物である。
【0067】
本発明の組成物は、上記の高分子化合物と色材や有用な所定の機能を奏する機能物質を含有することが好ましく、該高分子化合物は色材や機能物質等を良好に分散するのに好適に用いることができる。その色材や機能物質は粒状固体である場合が好ましい。粒状固体には、顔料、金属、除草剤、殺虫剤、または生体材料、例えば薬等を用いることができる。
【0068】
本発明の組成中に用いられる機能物質は、高分子化合物そのものに機能がある場合もあり無くても良い場合もあるが、通常本発明の組成物の重量に対して、0.1〜50重量%が好ましい。また、溶解性の物質であってもよく、染料や分子性触媒等も用いることができる。
【0069】
また、本発明の組成物中に含有される前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、本発明の組成物の重量に対して、0.5〜90重量%が好ましい。さらに好ましくは1重量%以上60重量%以下、もっと好ましくは2重量%以上50重量%以下である。0.5重量%未満のときは、分散安定性が良くない場合があり、70重量%を越えると粘性が高くなりすぎる場合がある。
【0070】
さらに、本発明の組成物は、溶媒またはバインダー樹脂を含有する。溶媒又はバインダー樹脂は、1重量%以上98重量%以下含有される。好ましくは10重量%以上96重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以上95重量%以下である。1重量%未満では機能物質または高分子化合物の分散安定性が不充分な場合があり、98重量%を越える場合機能物質または高分子化合物の機能性が十分発揮されない場合がある。
【0071】
(ブロック高分子化合物)
本発明の組成物中に含有される前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、ブロック高分子化合物であることが好ましい。
【0072】
上記の一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物の好ましい性質としては、両親媒性であることがあげられる。疎水性ブロックセグメントと親水性ブロックセグメントをあわせ持つことで両親媒性を発現することが可能である。本発明のブロック高分子化合物が両親媒性であるとき、水性溶媒中でミセル状態を形成することが可能である。この場合後述する例である記録材料において好ましい性質を発現することが可能である。
【0073】
また、分散安定性向上、包接性向上のためにはブロックポリマーの分子運動性がよりフレキシブルであることが機能性物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。さらには後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、一般にガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。上記した繰り返し単位構造例の場合、ほとんどそのガラス転移温度は−20℃くらいか、それ以下である。
【0074】
本発明の組成物は、上記の高分子化合物と色材や有用な所定の機能を奏する機能物質を含有し、該ブロック高分子化合物は色材や機能物質等を良好に分散するのに好適に用いることができる。その色材や機能物質は液体、固体である場合が好ましく、溶解性の物質であってもよい。例えばオイル、顔料、金属、除草剤、殺虫剤、生体材料、薬、染料や分子性触媒等も用いることができる。
【0075】
また、本発明の別の発明は、ポリビニルエーテル繰り返し単位構造からなるブロックポリマーの繰り返し単位が、カルボン酸エステルまたはカルボン酸またはカルボン酸塩であるブロックポリマーに、溶媒または分散媒、色材を含有してなることを特徴とする組成物である。カルボン酸エステルまたはカルボン酸またはカルボン酸塩を有する繰り返し単位は一般式(1)または(2)が好ましく用いられるが、その他の構造であってもよい。
【0076】
その他の構造の例としては、
【0077】
【化23】

【0078】
【化24】

【0079】
等が挙げられる。
本発明の組成物中に用いられる機能物質は、本発明の組成物の重量に対して、0.01から90質量%であり、好ましくは0.1〜50質量%である。
【0080】
また、本発明の組成中に含有される前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物は、本発明の組成物の重量に対して、0.2〜99質量%であり、好ましくは0.5〜70質量%である。カルボン酸エステルもしくはカルボン酸もしくはカルボン酸塩を有する繰り返し単位を有するブロック高分子化合物においてもこの量比は同等である。以下に関しても量比に関しては、それらのブロック高分子化合物は同等である。
【0081】
(第3の発明の記録材料)
本発明の第3は、以上説明した高分子化合物に、溶媒または分散媒、色材を含有して得られる組成物を含む記録材料である。
【0082】
記録材料としては、具体的には、バインダー樹脂等の分散媒、色材および前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有するトナー組成物が挙げられる。また、溶媒、色材および一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有するインク組成物が挙げられる。
【0083】
以下、本発明の好ましい一形態であるインク組成物について説明する。
本発明のインク組成物に含有される一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の含有量は、0.1wt%以上90wt%以下の範囲で用いられる。好ましくは1wt%以上80wt%以下である。インクジェットプリンター用としては、好ましくは1wt%以上30wt%以下で用いられる。
【0084】
次に、本発明のインク組成物に含有さる高分子化合物以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、水、水性溶媒、色材、添加剤等が含まれる。
[水]
本発明に含まれる水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。
【0085】
[水性溶媒]
水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を用いることができる。また、水性分散物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0086】
本発明のインク組成物において、上記水および水性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、20〜95重量%の範囲で用いるのが好ましい。さらに好ましくは30〜90重量%の範囲である。水及び水性溶媒の変わりに、トルエン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤が用いられても良い。
【0087】
[色材]
本発明のインク組成物には、顔料および染料等の色材が含有され、好ましくは顔料が用いられる。以下にインク組成物に使用されえる顔料および染料の具体例を示す。
【0088】
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いることができる。なお、上記に記した以外の色顔料や、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0089】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250、Raven5750、Raven7000、Raven5000 ULTRAII、Raven1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Black PearlsL、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0090】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
イエロー色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
また、本発明の組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがあり、市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等が挙げられる。
【0094】
本発明のインク組成物に用いられる顔料は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50wt%が好ましい。顔料の量が、0.1wt%未満となると、十分な画像濃度が得られなくなり、50wt%を超えると画像の定着性が悪化する場合がある。さらに好ましい範囲としては0.5wt%から30wt%の範囲である。
【0095】
また、本発明のインク組成物では染料も使用することができる。以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、又は分散染料の不溶性色素を用いることができる。
【0096】
例えば、脂溶性染料としてはC.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135;C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219;C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等が挙げられる。
【0097】
例えば、水溶性染料としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0098】
なお、これら上記の色材の例は、本発明のインクに対して好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。本発明のインク組成物に用いられる染料は、インクの重量に対して、0.1〜50重量%が好ましい。
【0099】
[添加剤]
本発明の組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。本発明の組成物は、ポリビニルエーテル構造を含むポリマーにより、顔料のような粒状固体を分散させる機能を有しているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
【0100】
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。
【0101】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等、疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
【0102】
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
【0103】
その他の添加剤としては、例えばインクとしての用途の場合、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤、インク内での黴の発生を防止する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
【0104】
本発明のインク組成物を調製するには、上記構成成分を混合し、均一に溶解又は分散することにより調製することができる。たとえば、構成成分の複数を混合し、サンドミルやボールミル、ホモジナイザー、ナノマーザー等により破砕、分散しインク母液を作成し、これに溶媒や添加剤を加え物性を調整することにより調整することができる。
【0105】
次に、本発明のトナー組成物について説明する。トナー組成物は、具体的には、バインダー樹脂等の分散媒、色材および前記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有する。
【0106】
本発明のトナー組成物に含有される一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の含有量は、0.1wt%以上50wt%以下の範囲で用いられる。好ましくは0.5wt%以上30wt%以下である。
【0107】
また、本発明の高分子化合物はバインダー樹脂そのものとしても使用可能であるし、スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等のバインダー樹脂とともに用いることも可能である。
【0108】
次に、本発明のトナー組成物に含有さる高分子化合物以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、バインダー樹脂、色材(顔料、染料)、帯電制御剤、離型剤、外添剤、磁性粒子等が含まれる。
【0109】
[トナー組成物の他の成分の加入]
バインダー樹脂としては、スチレンアクリル共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート等が例として挙げられる。バインダー樹脂の含有量は、好ましくは10wt%以上99wt%以下で用いられる。色材としては前記インク組成物の説明で記載した、顔料や染料が使用可能である。色材の含有量は、0.1wt%以上50wt%以下で用いられる。帯電制御剤としては、金属―アゾ錯体、トリフェニルメタン系染料、ニグロシン、アンモニウム塩等が例として挙げられる。帯電制御剤の含有量は0.1wt%以上30wt%以下で用いられる。他に離型剤としては、合成ワックス、天然ワックスが例として挙げられる。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機微粒子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂微粒子が例として挙げられる。磁性粒子としては例えばマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等が挙げられる。トナー組成物としては以上の成分を必ずしも全て含まなくても機能し得るし、また以上に記載されていない成分を含んでもよい。
【0110】
本発明のトナー組成物を調製する方法としては、例えば、以上に述べた構成成分を混合、溶融混煉し均一に混合した後、スピードミルやジェットミルで破砕して作製し、分球して所望のサイズのトナーを得る。このトナーに外添剤を加えミキサーで混合することにより調製することができる。
【0111】
本発明の第1および第2の組成物はインク組成物、トナー組成物の他に様々な組成物として利用することができるが、色材を含有する組成物の場合、本発明に特徴的に用いられる、本発明の第1の発明のブロック高分子に内包されていることが好ましい。代表的には色材の耐候性劣化を抑制する意味で好ましい。水溶性インクの場合、比較的簡単にブロック高分子が形成するミセルに脂溶性色材あるいは疎水性表面の色材粒子を内包させることができる。
【0112】
次に、本発明の組成物を増粘する方法について説明する。前記第1と第2の発明の組成物は、水素イオンまたは金属カチオンを接触することにより、粘度を増すことができる。典型的には、水溶液中で分散状態またはミセルを形成した前記第1の発明のポリマーと機能物質を有する組成物に、水素イオンまたは多価の金属カチオン(たとえば亜鉛やアルミニウム、カルシウム、バリウム、ニッケル等のカチオン)を接触し、分散状態またはミセル状粒子分散物を凝集させることにより増粘する。この場合、高分子ミセル状態を凝集させる方法が好ましい。用いられるポリマーはカルボン酸塩等のイオン化したものであるため、例えば十分な量の水素イオンもしくは金属カチオンを接触すれば、イオン性官能基が中和し、ミセル間の親和性が急激に増加し、同時に粘性が大幅に増加する。この方法の好ましい適用例としてはインク組成物である。インク組成物を被記録媒体上に付着させ定着させる場合に、インク特性を増粘したりすることで良好な定着性を付与することが可能である。上記の増粘方法は以下に説明する画像形成方法、画像形成装置に好ましく適用される。
【0113】
本発明の組成物を増粘させる方法としては、例えば水素イオンまたは多価の金属カチオンの溶液を接触させる方法、あらかじめ水素イオンまたは多価の金属カチオンを塗工した媒体に接触させる方法がある。接触あるいは添加する量は、高分子のイオン性基に対して0.01mol当量以上、100mol当量以下、好ましくは0.05当量以上、50mol当量以下が望ましい。
【0114】
また本発明の組成物は別に、刺激に対する応答性を有することができる。その刺激応答性によって、画像を形成する過程で刺激を与えることにより、インク特性を増粘したりすることで良好な定着性を付与することも可能である。その刺激は、温度変化、電磁波への暴露、pHの変化、濃度の変化等のなかから画像を形成する上で適当なものが選択されたり、組み合わされたりする。
【0115】
次に、本発明のトナー組成物またはインク組成物を用いる画像形成方法および画像形成装置について説明する。
【0116】
[画像形成方法および画像形成装置]
本発明のインク組成物は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法および装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。
【0117】
本発明の画像形成方法は、本発明の組成物により優れた画像形成を行なう方法である。本発明の画像形成方法は、好ましい一形態として、インク吐出部から本発明のインク組成物を吐出して被記録媒体上に付与することで記録を行う画像形成方法をあげることができる。画像形成はインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット法を用いる方法が好ましく用いられる。
【0118】
本発明のインクジェット用インク組成物を用いるインクジェットプリンタとしては、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等、様々なインクジェット記録装置に適用できる。
【0119】
以下このインクジェット記録装置について図1を参照して概略を説明する。但し、図1はあくまでも構成の一例であり、本願発明を限定するものではない。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【0120】
図1は、ヘッドを移動させて被記録媒体に記録をする場合を示した。図1において、製造装置の全体動作を制御するCPU50には、ヘッド70をXY方向に駆動するためのX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58がXモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を介して接続されている。CPUの指示に従い、Xモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を経て、このX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58が駆動され、ヘッド70の被記録媒体に対する位置が決定される。
【0121】
図1に示されるように、ヘッド70には、X方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58に加え、ヘッド駆動回路60が接続されており、CPU50がヘッド駆動回路60を制御し、ヘッド70の駆動、即ちインクジェット用インクの吐出等を行う。さらに、CPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダ62およびYエンコーダ64が接続されており、ヘッド70の位置情報が入力される。また、プログラムメモリ66内に制御プログラムも入力される。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダ62およびYエンコーダ64の位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、被記録媒体上の所望の位置にヘッドを配置してインクジェット用インクを吐出する。このようにして被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、複数のインクジェット用インクを装填可能な画像記録装置の場合、各インクジェット用インクに対して上記のような操作を所定回数行うことにより、被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
【0122】
また、インクジェット用インクを吐出した後、必要に応じて、ヘッド70を、ヘッドに付着した余剰のインクを除去するための除去手段(図示せず)の配置された位置に移動し、ヘッド70をワイピング等して清浄化することも可能である。清浄化の具体的方法は、従来の方法をそのまま使用することができる。
【0123】
描画が終了したら、図示しない被記録媒体の搬送機構により、描画済みの被記録媒体を新たな被記録媒体に置き換える。
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正または変形することが可能である。例えば、上記説明ではヘッド70をXY軸方向に移動させる例を示したが、ヘッド70は、X軸方向(またはY軸方向)のみに移動するようにし、被記録媒体をY軸方向(またはX軸方向)に移動させ、これらを連動させながら描画を行うものであってもよい。
【0124】
本発明は、インクジェット用インクの吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、上記熱エネルギーによりインクジェット用インクを吐出させるヘッドが優れた効果をもたらす。かかる方式によれば描画の高精細化が達成できる。本発明のインクジェット用インク組成物を使用することにより、更に優れた描画を行うことができる。
【0125】
上記の熱エネルギーを発生する手段を備えた装置の代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、米国特許第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体が保持され、流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長および収縮により吐出用開口を介して液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、米国特許第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
【0126】
ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によればインクジェット用インクの吐出を確実に効率よく行うことができる。
【0127】
さらに、本発明の画像形成装置で被記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのようなヘッドとしては、複数のヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0128】
加えて、シリアルタイプのものでも、装置本体に固定されたヘッド、または、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0129】
さらに、本発明の装置は、液滴除去手段を更に有していてもよい。このような手段を付与した場合、更に優れた吐出効果を実現できる。
また、本発明の装置の構成として、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定化できるので好ましい。これらを具体的に挙げれば、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子、または、これらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、インクの吐出とは別の、吐出を行なうための予備吐出手段などを挙げることができる。
【0130】
本発明に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
本発明の装置では、インクジェット用インクの吐出ヘッドの各吐出口から吐出されるインクの量が、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
【0131】
また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
【0132】
(第4の発明の化合物)
本発明の第4は、下記一般式(3)で表される重合性化合物である。以下,この重合性化合物について詳しく説明する。
【0133】
【化25】

【0134】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレンを表す。Dは、芳香族環構造を表す。nは2から10までの整数を表す。それぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
一般式(3)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
【0135】
mは好ましくは1から10までである。
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。
【0136】
Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。
nは好ましくは1か5までの整数である。
【0137】
Rのアルキル基としては、炭素原子数1から10までのアルキル基が好ましい。また、Rの芳香族環構造としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0138】
一般式(3)で表される重合性化合物は、好ましくは以下の一般式(8)で表される化合物である。
【0139】
【化26】

【0140】
(式中、Aはエチレン、プロピレンを表し、mは0から5を表す。mが2以上のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレンを表し、Dはフェニレン、ナフチレンを表す。nは2から5までの整数を表し、それぞれのDは異なっていてもよい。Rは水素原子、アルキル基、フェニル基を表す。)
【0141】
本発明の一般式(3)で表される重合性化合物においては、複数の芳香族環を持ち、末端が芳香族カルボン酸誘導体であることが特徴である。複数の芳香族環を持つ末端芳香族カルボン酸誘導体は結晶性が高く、精密重合反応に用いるための純度向上が比較的好適に行ない得るという点で優れる。また、芳香族カルボン酸の酸性度は脂肪族カルボン酸の酸性度と異なるため、ビニルエーテル繰り返し単位構造を有する高分子化合物として酸性度の異なる、様々な機能性高分子材料を提供できる点で極めて有用である。
【0142】
一般式(3)で表される重合性化合物の具体的例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0143】
【化27】

【0144】
【化28】

【0145】
(Phは、1,4−フェニルまたは1,3−フェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、Pyrは2,5−ピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
一般式(3)で表される重合性化合物の合成方法の例としては、代表的には下記の反応式に示す様なエーテル化法によるものが挙げられる。
【0146】
【化29】

【0147】
(Xはハロゲンを表す。)
【0148】
(第5の発明の高分子化合物)
次に、本発明の第5は、下記一般式(4)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物である。以下,この高分子化合物について詳しく説明する。
【0149】
【化30】

【0150】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレンを表す。Dは芳香族環構造を表す。nは2から10までの整数を表す。それぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
【0151】
一般式(4)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
【0152】
mは好ましくは1から10までである。
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。
【0153】
Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。
nは好ましくは2から5までの整数である。
【0154】
Rのアルキル基としては、炭素原子数1から10までのアルキル基が好ましい。また、Rの芳香族環構造としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0155】
一般式(4)で表される繰り返し単位構造は、好ましくは以下の一般式(9)で表される単位構造をあげることができる。
【0156】
【化31】

【0157】
(式中、Aはエチレン、プロピレンを表し、mは0から5を表す。mが2以上のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレンを表し、Dはフェニレン、またはナフチレンを表す。nは2から5までの整数を表す。Rは水素、アルキル基、フェニル基を表す。)
【0158】
本発明の一般式(4)において、複数の芳香族環を持ち、末端が芳香族カルボン酸誘導体であることが特徴である。複数の芳香族環を持つ芳香族カルボン酸の酸性度は脂肪族カルボン酸の酸性度と異なるため、ビニルエーテル繰り返し単位構造を有する高分子化合物として酸性度の異なる、様々な機能性高分子材料を提供できる点で極めて有用である。さらに複数の芳香族環構造を有するため、その部分の結晶性あるいはその部分同士の親和性が極めて高いため、自己組織性に基づいた特徴ある機能を発現することも可能である。
【0159】
一般式(4)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、以下に示す単位構造が挙げられる。
【0160】
【化32】

【0161】
【化33】

【0162】
【化34】

【0163】
【化35】

【0164】
【化36】

【0165】
【化37】

【0166】
【化38】

【0167】
(Phは、1,4−フェニルまたは1,3−フェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、Pyrは2,5−ピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
【0168】
上記の一般式(4)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、好ましく、前記一般式(3)で表される重合性化合物を重合することにより得ることができる。重合は主にカチオン重合で行なわれることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3 、AlCl3 、TiCl4 、SnCl4 、FeCl3 、RAlCl2 、R1.5 AlCl1.5 (Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などがあげられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤を一般式(3)で表される重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、高分子化合物を合成することができる。
【0169】
本発明の一般式(4)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の数平均分子量は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。また、本発明の高分子化合物は単一の繰り返し単位構造からなるホモポリマーであっても良いし、複数の繰り返し単位構造からなる共重合ポリマーであっても良い。
【0170】
共重合ポリマーの場合、好ましくは一般式(4)で表される繰り返し単位構造が1mol%以上含有されており、さらに好ましくは3mol%以上である。1mol%未満の場合、一般式(4)で表される繰り返し単位構造の持つ、分散機能等の機能性が十分に発揮されない場合がある。また、共重合ポリマーの場合、その主鎖はポリビニルエーテル繰り返し単位構造が50mol%以上含有されていることが好ましく、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0171】
(第6の発明の高分子化合物)
さらに、本発明の第6は、下記一般式(5)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物である。
【0172】
【化39】

【0173】
(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレンを表す。Dは芳香族環構造を表す。nは2から10までの整数を表す。それぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
【0174】
一般式(5)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
mは好ましくは1から10までである。
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。
【0175】
Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。
nは好ましくは2から5までの整数である。
【0176】
Mの具体例としては、例えば一価の金属カチオンとしてはナトリウム、カリウム、リチウム等が、多価の金属カチオンとしてはマグネシウム、カルシウム、ニッケル、鉄等が挙げられる。Mが多価の金属カチオンの場合には、MはアニオンのCOO- の2個以上と対イオンを形成している。
【0177】
一般式(5)で表される繰り返し単位構造は、好ましくは以下の一般式(10)で表される単位構造をあげることができる。
【0178】
【化40】

【0179】
(式中、Aはエチレン、プロピレンを表し、mは0から5を表す。mが2以上のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレンを表し、Dはフェニレン、またはナフチレンを表す。nは2から5までの整数を表す。それぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価のカチオンを表す。)
【0180】
本発明の一般式(5)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、相当する前記一般式(4)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の末端エステル部分をアルカリ加水分解することにより得ることができる。酸で加水分解したのちアルカリ処理をすることによって得ることもできるが、前者のほうが好ましい。
【0181】
一般式(5)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、以下に示す単位構造が挙げられる。
【0182】
【化41】

【0183】
【化42】

【0184】
【化43】

【0185】
【化44】

【0186】
【化45】

【0187】
【化46】

【0188】
【化47】

【0189】
(Phは、1,4−フェニルまたは1,3−フェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、Pyrは2,5−ピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
【0190】
本発明の一般式(5)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の数平均分子量は200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。本発明の高分子化合物は単一の繰り返し単位構造からなるホモポリマーであっても良いし、複数の繰り返し単位構造からなる共重合ポリマーであっても良い。
【0191】
共重合ポリマーの場合、好ましくは一般式(5)で表される繰り返し単位構造が1mol%以上含有されており、さらに好ましくは3mol%以上である。1mol%未満の場合、一般式(5)で表される繰り返し単位構造の持つ、分散機能等の機能性が十分に発揮されない場合がある。また、共重合ポリマーの場合、その主鎖はポリビニルエーテル繰り返し単位構造が50mol%以上含有されていることが好ましく、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0192】
以上述べてきた、本発明の第5、第6の発明の高分子化合物は本発明の第一の発明の組成物中に好ましく用いられる例である。
【0193】
(第7の発明のブロック高分子化合物)
本発明の第7は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物である。
【0194】
本発明のブロック高分子に含まれる繰り返し単位構造の一般式(1)において、Aの炭素原子数、m、ならびにnの好ましい範囲および,A、B、D、Rにおける具体例は、第1の発明の高分子化合物における一般式(1)中のそれらと同じである。
【0195】
すなわち、一般式(1)中、Aの炭素原子数は、好ましくは2から10までである。Aのアルキレン基の置換基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等が挙げられる。
【0196】
mは好ましくは1から10までである。
Bのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。
【0197】
Dは、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレンである。
nは好ましくは1か5までの整数である。
【0198】
Rのアルキル基としては、炭素原子数1から10までのアルキル基が好ましい。また、Rの芳香族環構造としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0199】
第1の発明であげた前記一般式(6)で表される単位構造は、本発明のブロック高分子に含まれる好ましい単位構造でもある。
また、第1の発明であげた一般式(1)で表される繰り返し単位構造の具体的例は、本発明のブロック高分子における繰り返し単位構造の具体例でもある。
【0200】
本発明のブロック高分子化合物も、好ましく、前期一般式(3)で表される重合性化合物を重合することにより得ることができる。重合は主にカチオン重合で行なわれることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3 、AlCl3 、TiCl4 、SnCl4 、FeCl3 、RAlCl2 、R1.5 AlCl1.5 (Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などがあげられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤を前記一般式(3)で表される重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、高分子化合物を合成することができる。
【0201】
本発明にさらに好ましく用いられる重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等でリビング重合を行うこともできる。
【0202】
上記第7の本発明であるブロック高分子化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロックセグメントを有し、かつ少なくとも一つの前記ブロックセグメントと異なる構造のブロックセグメントを有する高分子化合物である。
【0203】
一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロックセグメントと異なるブロックセグメントを構成する繰り返し単位構造としては、好ましくは、以下の一般式(11)で表される繰り返し単位構造が挙げられる。
【0204】
【化48】

【0205】
(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−(CH(R2 )−CH(R3 )−O)p −R4 および−(CH2m −(O)n −R4 から選ばれ、芳香族環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0206】
pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。
2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子もしくはCH3 である。
4 は水素原子、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CO−CH=CH2 または−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR7 であり、R4 が水素原子以外の場合、炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香族環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0207】
7 は水素原子または炭素数1から4のアルキル基である。
Phはフェニル基、Pyrはピリジル基を表わす。)
【0208】
さらに具体的には以下の繰り返し単位構造が例として挙げられる。
【0209】
【化49】

【0210】
本発明のブロック高分子化合物中に含有される一般式(1)で表される繰り返し単位構造の含有量は、高分子化合物全体に対して0.01〜99.5mol%、好ましくは1〜95mol%の範囲が望ましい。0.01mol%未満では高分子に働くべき相互作用が不充分の場合があり、99.5mol%を越えると逆に相互作用が働きすぎて機能が不充分の場合が有り好ましくない。また、一般式(1)で表される繰り返し単位構造以外の単位構造の含有量は、高分子化合物全体に対して0.5〜99.99mol%、好ましくは5〜99mol%の範囲が望ましい。
【0211】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。
【0212】
(第8の発明のブロック高分子化合物)
本発明の第8は、前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物である。
【0213】
なお、本発明のブロック高分子に含まれる繰り返し単位構造の一般式(2)において、A、m、B、D、n、Mの好ましい範囲および具体例は第2の発明における繰り返し単位構造と同じである。
【0214】
第2の発明であげた前記一般式(7)で表される単位構造は、本発明のブロック高分子に含まれる好ましい単位構造でもある。
また、第2の発明であげた一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体的例は、本発明のブロック高分子における繰り返し単位構造の具体例でもある。
【0215】
本発明の一般式(2)の繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物は、相当する前記一般式(1)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の末端エステル部分をアルカリ加水分解することにより得ることができる。酸で加水分解したのちアルカリ処理をすることによって得ることもできるが、前者のほうが好ましい。また、アルカリ加水分解したのち、カチオンを交換することによっても得られる。
【0216】
上記第8の本発明である高分子化合物は、ブロックセグメントを有し、かつ少なくとも一つの前記ブロックセグメントと異なる構造のブロックセグメントを有する高分子化合物である。一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロックセグメントと異なるブロックセグメントを構成する繰り返し単位構造としては、好ましくは、前記一般式(11)で表した繰り返し単位構造が挙げられる。
【0217】
本発明のブロック高分子化合物中に含有される一般式(2)で表される繰り返し単位構造の含有量は、高分子化合物全体に対して0.01〜99.5mol%、好ましくは1〜95mol%の範囲が望ましい。0.01mol%未満では高分子に働くべき相互作用が不充分の場合があり、99.5mol%を越えると逆に相互作用が働きすぎて機能が不充分の場合が有り好ましくない。また、一般式(2)で表される繰り返し単位構造以外の単位構造の含有量は、高分子化合物全体に対して0.5〜99.99mol%、好ましくは5〜99mol%の範囲が望ましい。
【0218】
本発明の一般式(2)の繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物の数平均分子量(Mn)は200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。
【0219】
上記第7と第8の本発明のブロック高分子化合物の好ましい性質としては、両親媒性であることがあげられる。疎水性ブロックセグメントと親水性ブロックセグメントをあわせ持つことで両親媒性を発現することが可能である。本発明のブロック高分子化合物が両親媒性であるとき、水性溶媒中でミセル状態を形成することが可能である。この場合後述する例である記録材料において好ましい性質を発現することが可能である。
【0220】
また、分散安定性向上、包接性向上のためにはブロックポリマーの分子運動性がよりフレキシブルであることが機能性物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。さらには後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、一般にガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。上記した繰り返し単位構造例の場合、ほとんどそのガラス転移温度は−20℃くらいか、それ以下である。
【0221】
本発明の第5と第6の発明の高分子化合物、および第7と第8のブロック高分子化合物は本発明の第一の発明の組成物の成分として好ましく用いられる。
また、ブロック高分子化合物の各セグメントは単一の繰り返し単位からなるものでもよく、複数の繰り返し単位構造からなるものでもよい。また、本発明のブロック高分子化合物はジブロックポリマー、トリブロックポリマー、テトラブロックポリマーあるいはそれ以上のブロック数からなるポリマーであっても良く、さらにはそれらブロックポリマーが他のポリマーにグラフト結合したポリマーであっても良い。
【0222】
(第9の発明のブロック高分子化合物)
本発明のブロック高分子化合物は、特徴的に芳香族カルボン酸構造を有するものである。芳香族カルボン酸は石炭酸、脂肪族カルボン酸等に比較して、酸性度が高い。すなわち酸性度を表す尺度であるpKaが比較して小さいということが特徴としてある。このことは、有機酸そのものとしての解離度が高いということと、アルカリ塩となったときの解離度も高いということを意味しており、ブロックポリマーとしての高い両親媒性、機能物質の高い分散性能及びその分散安定性を実現することが可能である。
【0223】
本発明のブロックポリマーはpKaが4.5以下、好ましくは4.3以下の有機酸、そのアルカリ塩を使用することができ、その高い解離度によって従来以上のブロックポリマーとしての高い両親媒性、機能物質の高い分散性能及びその分散安定性を実現することが可能である。なお、pKaは酸の電離指数を示し、例えば水中における該当物質の濃度と水素イオン濃度を測定することにより下記の式から算出することができる。本発明の場合、ポリマーのケースを扱うことになるが、濃度としては、高分子のモル数ではなく、酸官能基のユニットモル数を濃度として用いる。ユニットモル数は酸塩基の滴定あるいはNMRによる分析等により定量することができる。
【0224】
希薄水溶液条件下で、酸解離定数Ka=[H3+][B-]/[BH]である。ここでBHが有機酸を表し、B-は有機酸の共役塩基を表す。pKaはpKa=−logKaである。
【0225】
また、pKaの測定方法は、例えばpHメーターを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出することができる。
【実施例】
【0226】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
【0227】
【化50】

【0228】
2−クロロエチルビニルエーテル0.42モル、エタノール300ml中、炭酸カリウム0.8モル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル0.42モル、テトラブチルアンモニウムアイオダイド4gを窒素雰囲気下40時間加熱還流した。反応液をろ過し、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーを行ったのち、メタノールで再結晶をし、ガスクロマトグラフィーによる純度99.9%の
【0229】
【化51】

【0230】
を収率32%で得た。
本実施例の化合物を水中でpKaを測定したところ、4.38であった。
【0231】
実施例2
<高分子化合物の合成>
実施例1で得られた重合性化合物0.1モル、水0.001モル、エチルアルミニウムダイクロライド0.005モルを無水トルエン中でカチオン重合した。
【0232】
20時間後反応を終了し、メチレンクロライドと水を加え、水洗、希塩酸で洗浄、アルカリ洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し高分子化合物(ポリマー)を得た。排除体積クロマトグラフィーによる数平均分子量は4100であった。
【0233】
実施例3
【0234】
【化52】

【0235】
実施例1の2−クロロエチルビニルエーテルを、CH2 =CHOCH2 CH2 OCH2 CH2 OTs(Tsはトシル基を表す。)に変え同様に合成を行ない、
【0236】
【化53】

を得た(収率21%)。
【0237】
実施例4
【0238】
【化54】

【0239】
実施例1の4−ヒドロキシ安息香酸エチルを、4−(4‘−ヒドロキシフェニル)安息香酸エチルに変え同様に合成を行い、
【0240】
【化55】

【0241】
を収率22%で得た。
実施例3、4で得られたそれぞれの重合性化合物を用いて、実施例2と同様に重合し、それぞれ高分子化合物を得た。排除体積クロマトグラフィーによる数平均分子量はそれぞれ1800、3400であった。
【0242】
実施例5
<高分子化合物の合成>
実施例2で合成した高分子化合物(ポリマー)を5規定水酸化ナトリウム水溶液と共に40時間室温(23℃)で撹拌し、エステルを加水分解した。5規定塩酸で中和し、塩化メチレンで抽出、乾燥した後、溶媒を留去し、フリーのカルボン酸ポリマーを得た。等量の1規定水酸化ナトリウムで中和し、水を留去し、カルボン酸ナトリウム塩のポリマーを得た。
【0243】
実施例6
<インク組成物の製造>
顔料(商品名モーグルL、キャボット社製)3重量部、実施例2の高分子化合物5重量部、およびジエチレングリコール15重量部をイオン交換水77重量部に加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。1μmのフィルターを通して加圧濾過し、インク組成物を調製した。顔料の分散性は良好であった。
【0244】
実施例7
<インク組成物の製造>
顔料(商品名モーグルL、キャボット社製)3重量部、実施例5のカルボン酸ナトリウム高分子化合物3重量部、およびジエチレングリコール15重量部、イオン交換水79重量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。lμmのフィルターを通して加圧濾過し、インク組成物を調製した。顔料の分散性は良好であった。
【0245】
実施例8
<印字試験>
実施例7で調製したインク組成物を用いて、インクジェット記録を行なった。キヤノン(株)製バブルジェット(登録商標)プリンタ(商品名 BJF800)のインクタンクにこのインク組成物を充填し、前記インクジェットプリンタを用いて普通紙に記録したところ、きれいに黒字の印字ができた。
【0246】
実施例9
<トナー組成物の製造>
実施例5で得られたカルボン酸ナトリウムポリマーの前駆体であるフリーのカルボン酸ポリマーを使用して以下のようにトナー組成物を作成した。
【0247】
ポリエステル樹脂(ビスフェノールA、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ジエチレングリコールをモル比で20:38:10:5:27で合成)100重量部、マグネタイト(Fe34 )70重量部、前述したフリーのカルボン酸ポリマー3重量部、トリフェニルメタン系染料2重量部、低分子量ポリプロピレン3重量部を予備混合した後、ルーダーで溶融混錬した。これを冷却後、スピードミルで粗砕後ジェットミルで微粉砕し、さらにジグザグ分級機を用いて分級し、体積平均径11μmのトナーを得た。
【0248】
このトナー100重量部にアミノ変性シリコンオイル(25℃における粘度100cp、アミン当量800)で処理された正荷電性疎水性乾式シリカ0.4重量部および平均粒径0.2μmの球状PVDF粒子0.2重量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合して正帯電性トナー組成物を得た。このトナー組成物を使用し、キヤノン社製複写機NP−3525で印刷を行なったところ、きれいに印字できた。
【0249】
<ブロック高分子化合物の合成、組成物の製造>
以下の実施例10〜18においては、実施例1で得た重合性化合物をモノマーBと呼ぶ。
【0250】
実施例10
イソブチルビニルエーテル(IBVE:Aブロック成分)と上記モノマーB(Bブロック成分)からなるABブロック高分子の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、12mmol(ミリモル)のIBVE、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、およびトルエン11mlを加え、反応系をさらに冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)0.2mmolを加え重合を開始し、ABブロックポリマーのA成分を合成した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分(IBVE)の重合完了を確認した。
【0251】
次いで10mmolのモノマーB(Bブロック成分)のトルエン溶液を添加して、重合を続行した。20時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるジブロックポリマーを得た。重合比はA/B=100/28であった。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=30700、Mw/Mn=1.38であった。
【0252】
実施例11
実施例10で得られたブロック高分子化合物をジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解し、Bブロック成分が加水分解され、ナトリウム塩化されたジブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0253】
さらに水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してB成分がフリーのカルボン酸になったジブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
上記ブロックポリマーのカルボン酸部のpKaを水中で測定したところ、4.29であった。
【0254】
実施例12
実施例10で得られたブロックポリマーのA成分にIBVEの変わりに、2−エトキシエチルビニルエーテルを用いて、同様にブロックポリマーを合成した。重合比はA/B=100/29であった。Mn=28700、Mw/Mn=1.45であった。
【0255】
実施例13
黒色顔料(商品名モーグルL、キャボット社製)3質量部、実施例11で得られたナトリウム塩型ブロック高分子化合物4質量部、およびジエチレングリコール15質量部をイオン交換水78質量部に加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。1μmのフィルターを通して加圧濾過し、インク組成物を調製した。顔料の分散性は良好であった。
【0256】
実施例14
実施例13で調製したインク組成物を用いて、インクジェット記録を行なった。インクジェットプリンタ(商品名BJF800、キヤノン(株)製バブルジェット(登録商標))のインクタンクに実施例13のインク組成物を充填し、前記インクジェットプリンタを用いて普通紙に記録したところ、黒字の記録ができた。
【0257】
実施例15
実施例11で得られたフリーのカルボン酸ポリマーを使用して以下のようにトナー組成物を作成した。
【0258】
ポリエステル樹脂(ビスフェノールA、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ジエチレングリコールをモル比で20:38:10:5:27で合成)100質量部、マグネタイト(Fe34 )70質量部、実施例11で得られたフリーのカルボン酸ポリマー3質量部、トリフェニルメタン系染料2質量部、低分子量ポリプロピレン3質量部を予備混合した後、ルーダーで溶融混錬した。これを冷却後、スピードミルで粗砕後ジェットミルで微粉砕し、さらにジグザグ分級機を用いて分級し、体積平均径11μmのトナーを得た。
【0259】
このトナー100質量部にアミノ変性シリコンオイル(25℃における粘度100cp、アミン当量800)で処理された正荷電性疎水性乾式シリカ0.4質量部および平均粒径0.2μmの球状PVDF粒子0.2質量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合して正帯電性トナー組成物を得た。このトナー組成物を使用し、複写機(商品名 NP−3525、キヤノン社製)で印刷を行なったところ、黒色の印字ができた。
【0260】
実施例16
実施例11で得たカルボン酸塩型のブロックポリマー26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名、アルドリッチ社製)10質量部をジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。10日間放置したが、オイルブルーは分離沈殿しなかった。
【0261】
また、実施例12で得られたブロックポリマーを実施例11と同様に加水分解してカルボン酸塩型のブロックポリマーを得、前記と同様にブロックポリマー26質量部と脂溶性染料オイルブルーN(商品名、アルドリッチ社製)10質量部をジメチルフォルムアミドに共溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。後者の疎水セグメントであるポリ2―エトキシエチルビニルエーテルセグメントは低温で親水化することが知られているが、0℃に冷却したところ、脂溶性染料オイルブルーが相分離し、析出してきた。このことによりオイルブルーが高分子ミセル中に内包されていたことがわかった。
【0262】
実施例17
実施例16で調整した脂溶性染料内包ミセルの分散液に2N塩酸を加えpHを3にしたところ、組成物の粘度は0.250Pa・s(250cps)となり、大きく増粘した。実施例8で行なった印字試験を、塩酸を噴霧した普通紙に対して行なったところきれいに印字できた。さらにラインマーカーで強くこすったが、青色のインクは尾引かず、良好な定着性を持ち耐水性が良好なことがわかった。
【0263】
実施例18
モノマーBを下記構造のモノマーに変えて、実施例10と同様にジブロック高分子を合成した。
【0264】
【化56】

【0265】
これを用いて実施例13と同様にインク組成物を調製し、実施例8と同様にインクジェットによって印字したところきれいに印字できた。
【0266】
比較例1
スチレン、アクリル酸ナトリウムの共重合ポリマー(重合比100/30、数平均分子量33000)を用いて、実施例13と同様にインク組成物を調製した。これを用いて実施例8と同様のBJF800のインクタンクに充填し、印字を行なおうとしたが、吐出せず、印字できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明の組成物は、色材や固形物の分散性が良好であるので、インク組成物、トナー組成物等の組成物および記録材料とし、電子写真、インクジェット等の画像形成方法に利用することができる。
【0268】
また、本発明のブロック高分子化合物は、溶媒または分散媒とともに配合することによりインク組成物やトナー組成物等の組成物および記録材料とし、電子写真、インクジェット等の画像形成方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0270】
20 インクジェット装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
または下記一般式(2)
【化2】

(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物と溶媒またはバインダー樹脂とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物が溶媒を含有し、前記高分子化合物が該溶媒中でミセル状態を形成する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物と色材とを含有する記録材料。
【請求項4】
請求項3に記載の記録材料を用いる記録方法であって、前記組成物に、水素イオンまたは金属カチオンを接触することにより、該組成物を増粘する工程を含む記録方法。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物。
【化3】

(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香族環構造を表す。)
【請求項6】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有するブロック高分子化合物。
【化4】

(式中、Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが2以上のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは1から10までの整数を表す。nが2以上のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Mは一価または多価の金属カチオンを表す。)
【請求項7】
前記ブロック高分子化合物が両親媒性のブロック高分子化合物である請求項5または6に記載のブロック高分子化合物。
【請求項8】
ポリビニルエーテル主鎖であり、pKaが4.50以下である有機酸あるいは有機酸塩の繰り返し単位構造を有する請求項5または6に記載のブロック高分子化合物。
【請求項9】
ポリビニルエーテル繰り返し単位構造からなるブロック高分子化合物であって、該ブロック高分子化合物の繰り返し単位中に、カルボン酸エステル、カルボン酸およびカルボン酸塩から選ばれた少なくとも1種を有する請求項5または6に記載のブロック高分子化合物。
【請求項10】
請求項5または6に記載の前記ブロック高分子化合物と、バインダー樹脂、ならびに色材を含有するトナー組成物である記録材料。
【請求項11】
請求項5または6に記載の前記ブロック高分子化合物、溶媒、ならびに色材を含有するインク組成物である記録材料。
【請求項12】
請求項11に記載の記録材料を用いる画像形成方法であって、インクジェット記録により前記インク組成物を被記録媒体上に付与することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−144005(P2006−144005A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313510(P2005−313510)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【分割の表示】特願2003−100164(P2003−100164)の分割
【原出願日】平成15年4月3日(2003.4.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】