説明

高分子系ハイブリッド有機金属含有ガラス

水性の重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物であって、高分子ハイブリッドナノ結晶が該組成物内で自己組織化されていてもよい。該組成物を支持体に塗布して高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を形成したり、或いは、乾燥後処理して高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス粉末を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、水性高分子系ハイブリッド有機/無機ガラス組成物及び該組成物から形成される高分子系ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜に関するもので、高分子系ハイブリッドナノ結晶が該組成物中で自己組織化されていてもよく、また、該塗膜中に一体化されていてもよい。
(発明の概要)
態様の一つにおいて、重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物の作成は、水性酸性コロイドを形成し、該水性酸性コロイドを処理して水性のアルカリ性コロイドを形成し、該水性のアルカリ性コロイドを処理して該コロイドから塩化物イオンを取り除き、水性のアルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを形成し、過酸化物系溶液を前記水性のアルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドと混合して金属過酸化物懸濁液を形成し、該金属過酸化物懸濁液を処理して重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を形成することを含む。水性酸性コロイドは、有機モノマー、ケイ素含有化合物及び有機金属化合物を含有する。アルカリ性コロイドは非晶質金属水酸化物を含有する。重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を支持体に塗布して重合させ、支持体上に高分子系の共有結合を有する高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を形成することができる。
別の態様では、重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物がシロキシ基と有機部位と非晶質金属水酸化物とを有する水性懸濁液を含有し、該懸濁液が重合して硬度約0.1〜約7GPa又は約2.5〜約7GPaの高分子ハイブリッド有機金属含有ガラスを形成することができる。該懸濁液が更にペルオキシ基及び/又はナノ粒子を含む実施形態もある。重合では、支持体表面に縮合物を形成することを含む。
【0002】
もう一つの態様は、高分子系ポリマーマトリックスを含む材料である。このマトリックスは金属原子、有機部位、酸素、ケイ素を含み、これらが共有結合して硬度約0.1〜約7GPa又は約2.5〜約7GPaの塗膜を形成する。該マトリックスが更にナノ粒子を含む実施形態もある。
他の実施形態は以下の1つ以上の特徴を包含することができる。酸性コロイドの形成、該酸性コロイドの処理、アルカリ性コロイドの形成、該アルカリ性コロイドの処理、アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドの形成、金属過酸化物懸濁液の形成、又はこれらの組み合わせの工程において、コロイド、懸濁液又はコロイドもしくは懸濁液形成に使用する前駆体を加熱してもよい。たとえば、酸性コロイドの作成工程において、有機モノマー、有機金属化合物又はこれらの混合物を含有する酸性溶液の加熱を含んでもよい。加熱は、室温より高い温度で、大気圧、大気圧以上又は大気圧以下で行ってもよい。場合によっては、オートクレーブ処理で加熱してもよい。アルカリ性コロイドの処理工程はコロイドの冷却を含んでもよく、例えば、大気圧、大気圧以上又は大気圧以下で冷却してもよい。コロイドの冷却はコロイドをオートクレーブ処理してもよい。実施形態によっては、金属過酸化物懸濁液の処理工程が、自己組織化したナノ結晶を懸濁液中に形成することを含んでもよい。
また、実施形態によっては、水性のアルカリ性コロイドを処理してコロイドから塩化物イオンを除去する工程が、実質的にすべての塩化物イオンをコロイドから除去することを含む。例えば、水性のアルカリ性コロイドを処理して塩化物イオンをコロイドから除去する工程は、上澄み液中の塩化物イオン濃度が約2ppm未満又は約1ppm未満になるまで、コロイドの真空濾過及び/又は遠心分離を行いコロイドを元に戻す作業を繰り返し行えばよい。コロイドを元の状態に戻す際、イオン交換樹脂の存在下で行う場合もある。
【0003】
重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を支持体に塗布し、重合させて支持体上に高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を形成することができる。支持体が多数のナノ粒子を含む場合もある。重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を、粒子(例えばナノ粒子)上に噴霧乾燥後重合させて、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラスで被覆した粒子を形成することができる。また、重合性ハイブリッド有機金属含有ガラスを噴霧乾燥(例えば高温で)後、処理して高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス粒子を形成する場合もある。高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス粒子及びその被覆粒子は、様々な用途での使用に向け加工することができる(例えば、粉末又はナノ粉末を形成するための粉砕、分級等)。ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物の重合は、組成物を大気中、室温及び大気圧下で乾燥させてもよいし、或いは、熱もしくは圧力の印加、又は、可視線もしくは紫外線などを照射して組成物を硬化してもよい。
【0004】
実施形態によっては、酸性コロイド、アルカリ性コロイド、金属過酸化物懸濁液又は重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物に1種以上の添加剤を混合してもよい。例えば、酸性コロイド又はアルカリ性コロイドの作成又は処理工程では、酸性コロイド、アルカリ性コロイド又はこれらの1種以上の前駆体(例えば、酸性有機モノマー溶液前駆体)に添加剤を混合することができる。アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドの作成工程は、アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド又はその前駆体に添加剤を混合することができる。金属過酸化物懸濁液の作成又は処理工程では、金属過酸化物懸濁液又はその前駆体に添加剤を混合することができる。重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物の作成又は処理工程では、重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物又はその前駆体に添加剤を混合することができる。添加剤は、組成物又は塗膜の所望特性(例えば自己清浄性、光触媒性、抗菌性、疎水性/親水性、導電性等)の付与又は向上の目的で選択すればよい。添加剤としては、例えば、有機モノマー、ケイ素含有化合物、有機金属化合物、湿潤剤、硬化剤、蛋白質(酵素等)又はナノ粒子があげられる。一例として、リソスタフィン及びリゾチームからなる群から選択される1種以上の蛋白質(即ち酵素)が添加剤として挙げられる。ナノ粒子は、例えばナノ構造炭素が挙げられる。高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜で被覆した支持体、ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を含む塊状材料、及びハイブリッド有機金属含有ガラス組成物又は高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を含む装置が実施形態に含まれる。
本願明細書記載の重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物は、選択した化学特性及び物理特性とともに、組成物のガラス様性状に関連した所望の硬度を有する塗膜が得られるように作ることができる。塗膜の厚さは、組成や塗布プロセスをはじめとする要因で決めることができ、その厚みは、ナノメートル範囲の単分子膜から、例えば、積層による多層膜で形成された所望の厚みにまでいたる。重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物は支持体材料と合体させて、選択した化学特性及び物理特性を塊状の支持体材料に付与することもある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を支持体上に形成するプロセスにおける工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、図1のプロセスの一部分の工程をより詳細に示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1のプロセスの一部分の工程をより詳細に示すフローチャートである。
【図4A】図4Aは、図1のプロセスの一部分の工程をより詳細に示すフローチャートである。
【図4B】図4Bは、図1のプロセスの一部分の工程をより詳細に示すフローチャートである。
【図5】図5は、図1のプロセスの一部分の工程をより詳細に示すフローチャートである。
【0006】
(詳細な説明)
図1を参照すると、手順100には、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を支持体表面に形成する際の工程が含まれる。工程102では、水性酸性オルガノ/シロキシ/金属コロイドが形成される。工程102で形成された水性酸性オルガノ/シロキシ/金属コロイドは、工程104で処理され、非晶質の水性アルカリ性オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドが形成される。工程106では、非晶質の水性アルカリ性オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを過酸化物系溶液と混合して処理することにより、重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物が形成される。工程108で重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物を表面塗布し、工程110で重合性組成物を固化させ、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を支持体表面に形成する。
【0007】
手順100の工程102〜110を、図2〜図5で更に詳細に説明する。工程110で形成する塗膜における所望の物理特性及び化学特性に照らし、図2〜図5に示した1つ以上の選択工程を省略してもよい。即ち、図2〜図5に示した1つ以上の工程は任意であってもよい。任意工程の例として、工程210、408、412、414及び418が挙げられる。図2〜図5に示す工程の順番を変えることや、工程を組み合わせて実行し、得られる生成物を一緒にすることもできる。例えば、図2を参照すると、工程202で形成され工程212に続く生成物を、工程202〜210の生成物と工程214で混合してもよい。
図2〜図5において、加熱を含む工程は、昇温(例えば室温以上)で、大気圧、大気圧以上又は大気圧以下で加熱又はオートクレーブ処理を行ってもよい。冷却を含む工程は、降温(室温以下で凝固点より高い温度)で、大気圧、大気圧以上又は大気圧以下でオートクレーブ処理を行うことができる。オートクレーブ処理及びオートクレーブ処理における温度や圧力を選択することにより、工程110で形成される高分子塗膜の分子量及び枝分かれ量を増減することができる。例えば、高温でのオートクレーブ処理は、低温でのオートクレーブ処理に比べて、低分子量で枝分かれ(例えば架橋)が多い高分子塗膜を形成する。一方、高圧下でのオートクレーブ処理は、低圧下でのオートクレーブ処理に比べて、高分子量で枝分かれが少ない高分子塗膜を形成する。
【0008】
図2を参照すると、手順200は、工程102の水性酸性オルガノ/シロキシ/金属コロイドを形成する際の工程を含む。工程202では、水溶性の有機(炭素含有)モノマーと酸とを混合して、酸性の水溶液を形成する。
前記水溶性の有機化合物は、アルカン(RH)、アルケン(R2C=CR2)、アルキン(RC≡CR)、アルコール(ROH)、アルデヒド(RCHO)、カルボキサミド(RCONR2)、アミン(例えば、第一アミン(RNH2)、第二アミン(R2NH)、第三アミン(R3N))、第四アンモニウムイオン(R4N+)、アゾ化合物(ジイミド)(RN2R)、炭酸エステル(ROCOOR)、カルボキシレート(RCOO-)、カルボン酸(RCOOH)、シアネート(ROCN)、チオシアネート(RSCN)、エーテル(ROR)、エステル(RCOOR)、イミン(例えば、第一ケトイミン(RC(=NH)R)、第二ケトイミン(RC(=NR)R)、第一アルジミン(RC(=NH)H)、第二アルジミン(RC(=NR)H))、イソシアニド(RNC)、イソシアネート(RNCO)、イソチオシアネート(RNCS)、ケトン(RCOR)、ニトロ化合物(RNO2)、ベンゼン誘導体(RC6H5)、ホスフィン化合物(R3P)、リン酸ホスホジエステル(HOPO(OR)2)、ホスホン酸(RP(=O)(OH)2)、ホスフェート(ROP(=O)(OH)2)、ピリジン誘導体(RC5H4N)、スルフィド(RSR)、スルホン(RSO2R)、スルホン酸(RSO3H)、スルホキシド、スルフィニル(RSOR)及びチオールスルフヒドリル(RSH)が挙げられるが、これらのRはそれぞれ独立して有機部位であり、ヒドロキシル基又はハロゲン(例えば塩素)等の1種以上の同じ又は異なる官能基を含んでいてもよい。水溶性有機モノマーの例として、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロピオン酸、ネオペンチルグリコール、及び、2,2,ビス(ヒドロキシメチル)-プロピオン酸が挙げられる。
【0009】
工程202で使用する酸として、例えば、ハロゲン化水素(HCl、HBr、HI)、ハロゲンオキソ酸、次亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸並びに臭素及びヨウ素の相当化合物、硫酸(H2SO4)、フルオロ硫酸、硝酸(HNO3)、リン酸(H3PO4)、フルオロアンチモン酸(HSbF6)、フルオロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)、クロム酸(H2CrO4)等の無機酸、スルホン酸(例えばメタンスルホン酸(メシル酸、MeSO3H)、エタンスルホン酸(エシル酸、EtSO3H)、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸、PhSO3H)、p−トルエンスルホン酸(トシル酸、CH3C6H4SO3H)、トリフルオロメタンスルホン酸(トシル酸、CF3SO3H))、カルボン酸(例えば酢酸CH3COOH、氷酢酸、クエン酸(3-ヒドロキシペンタン二酸)、ギ酸(メタン酸、HCOOH)、グルコン酸(C6H12O7及びHOCH2(CHOH)4COOH、2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキサン酸の16種の立体異性体の一つ)、乳酸(2-ヒドロキシプロパン酸、C3H6O3)、シュウ酸(C2O2(OH)2又はHOOCCOOH)、酒石酸(2,3-ジヒドロキシコハク酸)、アスコルビン酸等のカルボン酸のビニローグ)、並びにメルドラム酸(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン)等が挙げられる。酸のモル濃度は、約5M〜約10Mの範囲から選択することができる。酸の質量の約0.01〜約50%の量で、有機モノマーを混合することができる。一例として、有機モノマーを酸の質量の約5%の量で添加する。水性有機モノマー溶液のpH値は1未満がよい。場合に応じ、工程202には、増圧又は減圧下で有機モノマー溶液をオートクレーブ処理することを含む。
【0010】
工程204において、有機モノマー溶液を塩基と混合する。中和及びアルカリ化で使用することができる塩基の例としては、NH4OH、KOH、Ba(OH)2、CsOH、NaOH、Sr(OH)2、Ca(OH)2、LiOH、RbOH、Mg(OH)2及びAl(OH)3等の水酸化物又はそれらの混合物が挙げられる。また、NaHCO3やCaCO3等の非水酸化物系塩基も使用できる。塩基は、固体の状態(例えば、有機モノマー溶液の質量に対して約0.01〜約25%の量で)又は液体の状態(例えば溶液として)で添加することができる。塩基を添加した後も溶液が酸性のままである場合もある。
工程206では、工程204による有機モノマー溶液を約500℃までの温度で加熱する。例えば、溶液を約150℃で加熱することができる。場合によって、約2〜約8時間にわたり溶液を加熱する。
工程208では、1種以上の添加剤(例えば、ケイ素含有モノマー、有機モノマー、硬化剤、又はそれらの混合物)を、加熱した有機モノマー溶液と混合する。添加剤の総質量は、工程208で形成された混合物の約0.01〜約15質量%を占めてもよい。場合によって、例えば、工程206から得られた有機モノマー溶液と混合する添加剤の総質量は、工程208で形成される混合物の約2.5〜約5質量%である。
【0011】
工程208で添加されるケイ素含有モノマー又は化合物としては、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)-アミン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、シルセスキオキサン、シロキサン、ジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ジシリルメチレン、ジシリルエチレン、シルフェニレン等のジポダール(dipodal)シラン、金属シラノレート(metal silanolates)、シラザン((RO)3Si-CH2CH2CH2Xで、式中、XがF、Cl、C≡N、NH2、SH、アセテート−アルケンハイブリッド又はエポキシドであり、Rは有機部位である)及びジシラザン等が挙げられる。好適なシランは、1種以上のアリル、アルキル(alkynl)、フェニル、ヒドロキシル、フェノキシ、アセトキシ基、又は、環式基もしくは複素環基(例えば、三量体、四量体、五量体を含む)、ハロゲン、ケトン、アジド及びイソシアネートを含む置換基を有していてもよい。好適なシラザンは、例えば、1,3-ジ-n-プロピルテトラメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラメチルジシラザンが挙げられる。ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジエトキシジシロキサン、テトラエトキシシラン、ヘキサクロロジシロキサン及びオクタクロロトリシロキサンをはじめとする好適なケイ素含有モノマーのなかには、水溶液に可溶な低分子量の環状化合物を形成するものがある。他の好適なケイ素含有化合物としては、ベリリウムアルミニウムケイ酸塩、リチウムアルミニウムケイ酸塩、アルミニウムケイ酸塩、トリメチルシラノール酸リチウム、ビス(トリメチルシリル)テルリド、トリメチルシリルトリメチルゲルマニウム等のシラン酸金属(metal silanoates)が挙げられる。
【0012】
工程208で添加される有機モノマーとしては、工程202で記載したモノマー類、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル又は他の水溶性有機モノマーが挙げられる。工程208で添加される硬化剤としては、例えば、シラザン、ジシラザンや、例えば、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタニウム及び/又はジルコニウム化合物等の他のケイ素含有化合物が挙げられる。また、水酸化カルシウムも硬化剤としての機能が可能である。
場合によって、工程208での添加前に1種以上のケイ素含有モノマーを過酸化物系溶液と混合してもよい。過酸化物系溶液としては、例えば、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、3-クロロペルオキシ安息香酸ペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、[ジオキシビス(1-メチルプロピリデン)]ビスヒドロペルオキシド、(1-メチルプロピリデン)ビスヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸、又はこれらの混合物が挙げられる。過酸化物系溶液は、過酸化物が水溶液中約35〜約50質量%であるとよい。ケイ素含有モノマーと混合する過酸化物系溶液の量は、例えば、ケイ素含有モノマーの質量に対して約0.1%〜約200%が好ましい。
実施形態によっては、工程204で形成した溶液に1種以上の添加剤を室温で混合した後、工程210で加熱してもよい(即ち、工程206と工程208の順番を逆にしてもよい)。
【0013】
工程210では、工程208で形成した混合物を加熱して、水性の酸性コロイドを形成する。加熱は、例えば混合物の還流でもよい。還流開始後、混合物を約150〜約500℃で約2〜約10時間にわたり加熱すればよい。また、加熱工程が増圧又は減圧下でのオートクレーブ処理を含んでもよい。加熱後、混合物を攪拌するとよい。例えば、加熱後約8〜約72時間攪拌するとよい。この間、混合物は室温まで冷却させるとよい。
工程212では、1種以上の有機金属化合物、1種以上の塩化物塩又はこれらの混合物を、工程210で形成されたコロイドに添加する。工程212で添加する有機金属化合物としては、例えば、亜鉛、タングステン、チタン、タンタル、スズ、モリブデン、マグネシウム、リチウム、ランタン、インジウム、ハフニウム、ガリウム、鉄、銅、ホウ素、ビスマス、アンチモン、バリウム、ジルコニウム、亜鉛、イットリウム、バナジウム、スズ、銀、白金、パラジウム、サマリウム、プラセオジム、ニッケル、ネオジム、マンガン、マグネシウム、リチウム、ランタン、インジウム、ホルミウム、ハフニウム、ガリウム、ガドリニウム、鉄、ユーロピウム、エルビウム、ジスプロシウム、銅、コバルト、クロム、セシウム、セリウム、アルミニウム、バリウム、ベリリウム、カドミウム、カルシウム、イリジウム、ヒ素、ゲルマニウム、金、ルテチウム、ニオブ、カリウム、レニウム、ロジウム、ルビジウム、ルテニウム、スカンジウム、セレン、ケイ素、ストロンチウム、テルル、テルビウム、ツリウム、トリウム、イッテルビウム、イットリウム等の金属の、メトキシド、エトキシド、メトキシエトキシド、ブトキシド、イソプロポキシド、ペントキシド等の金属アルコキシド、並びに、ペンタジオネート、プロピオネート、アセテート、水酸化物、水和物、ステアレート、オキサレート、サルフェート、カーボネート及び/又はアセチルアセトネートなどが挙げられる。有機金属化合物の一例は、銀ペンタジオネート(silver pentadionate)である。
【0014】
工程212で添加する塩化物塩としては、SiCl4、TiCl4、GeCl4、VCl4、GaCl4、ZrCl4、SnCl4、TeCl4、HfCl4、ReCl4、IrCl4、PtCl4等の四塩化塩、又は、例えばNa2PtCl6、CCl3CO2Na、Na2PdCl4、NaAuCl4、NaAlCl4、ClNaO3、MgCl2、AlCl3、POCl3、PCl5、PCl3、KCl、MgKCl3、LiCl・KCl、CaCl2、FeCl2、MnCl2、Co(ClO4)2、NiCl2、Cl2Cu、ZnCl2、GaCl3、SrCl2、YCl3、MoCl3、MoCl5、RuCl3、RhCl3、PdCl2、AsCl3、AgClO4、CdCl2、SbCl5、SbCl3、BaCl2、CsCl、LaCl3、CeCl3、PrCl3、SmCl3、GdCl3、TbCl3、HoCl3、ErCl3、TmCl3、YbCl3、LuCl3、WCl6、ReCl5、ReCl3、OsCl3、IrCl3、PtCl2、AuCl、AuCl3、Hg2Cl2、HgCl2、HgClO4、Hg(ClO4)2、TlCl3、PbCl2、BiCl3、GeCl3、HfCl2O、Al2Cl6、BiOCl、[Cr(H2O)4Cl2]Cl2・2H2O、CoCl2、DyCl3・6H2O、EuCl2、EuCl3・6H2O、NH4AuCl4・xH2O、HAuCl4・xH2O、KAuCl4、NaAuCl4・xH2O、InCl3、(NH4)3IrCl6、K2IrCl6、MgCl2・6H2O、NdCl3、(NH4)2OsCl6、(NH4)2PdCl6、Pd(NH3)2Cl2、[Pd(NH3)]4Cl2・H2O、(NH4)2PtCl6、Pt(NH3)2Cl2、Pt(NH3)2Cl2、[Pt(NH3)4]Cl2・xH2O、[Pt(NH3)4][PtCl4]、K2PtCl4、KClO4、K2ReCl6、(NH4)3RhCl6、[RhCl(CO)((C6H5)3P)2]、[RhCl(C6H5)3P)3]、[Rh(NH3)5Cl]Cl2、K3RhCl6、RbCl、RbClO4、(NH4)2RuCl6、[RuCl2((C6H5)3P)3]、{Ru(NH3)6}Cl2、K2RuCl6、ScCl3・xH2O、AgCl、NaCl、TlCl、SnCl2等の他の塩化物塩、及びこれらの更なる水付加物が挙げられる。有機金属化合物/塩化物塩は、工程210で形成されるコロイドの質量に対し約0.1〜約20%の範囲の量で添加するとよい。
【0015】
場合により、充填剤、顔料、金属及びナノ粒子をはじめとする添加剤を、工程202〜212のいずれか1つ以上の工程で添加してもよい。ナノ粒子としてはナノ構造炭素(例えば、単層、二層、多層ナノチューブ、ナノグラファイトプレートレット(nanographite platelets)、ナノ結晶ダイアモンド、超分散ダイアモンド、ナノグラファイトプレートレット)、ナノ結晶、ナノパウダー、ナノ繊維、シリカエアロゲル、炭素エアロゲル、ガラスフレーク、電子ドット、蛋白質(例えば酵素類)等が挙げられる。一例として、リソスタフィン及びリゾチームからなる群から選択される1種以上の蛋白質(即ち酵素類)が添加剤として挙げられる。該ナノ粒子は官能基が付加されていてもなくてもよく、形状、寸法又は組成もいかなるものでもよい。好適な官能基としては、例えば、ヒドロキシル基とハロゲン(塩素など)が挙げられる。
工程202〜212で添加可能なナノ粒子には、例えば、アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アンチモン、酸化アンチモン、アンチモンスズ酸化物、チタン酸バリウム、ベリリウム、酸化ビスマス、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、コバルト、酸化コバルト、銅、ジスプロシウム、酸化ジスプロシウム、エルビウム、酸化エルビウム、ユウロピウム、酸化ユウロピウム、ガドリニウム、酸化ガドリニウム、金、酸化ハフニウム、ホルミウム、インジウム、酸化インジウム、イリジウム、鉄コバルト、鉄、鉄ニッケル、酸化鉄、ランタン、酸化ランタン、酸化鉛、リチウムマンガン酸化物、リチウム、チタン酸リチウム、バナジン酸リチウム、ルテチウム、マグネシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、酸化モリブデン、ネオジム、酸化ネオジム、ニッケル、酸化ニッケル、ニッケルチタン、ニオブ、酸化ニオブ、パラジウム、白金、プラセオジム、酸化プラセオジム、レニウム、ルテニウム、サマリウム、酸化サマリウム、炭化ケイ素、ケイ素ナノ粒子、ケイ素ナノチューブ、窒化ケイ素、酸化ケイ素、銀、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、タンタル、酸化タンタル、テルビウム、酸化テルビウム、ツリウム、スズ、酸化スズ、炭化チタン、チタン、窒化チタン、酸化チタン、炭化タングステン、タングステン、酸化タングステン、酸化バナジウム、イッテルビウム、イットリア安定化ジルコニア、イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、及びこれらの混合物のナノ粒子が挙げられる。
【0016】
場合に応じ、ナノメートルから数ミクロンの範囲の大きさの粒子、例えば、多結晶質、単結晶、荷電造形粒子(shaped charge microparticles)又はこれらの混合物の粒子であって、これらは自己組織化ナノ粒子又は分散ナノ粒子を有していてもいなくてもよいハイブリッド高分子膜で被覆されていてもよく、これらの粒子を工程202〜212で添加することができる。これらの粒子としては、例えば、セレン化アンチモン、テルル化アンチモン、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、アンチモン化ガリウム、砒化ガリウム、アンチモン化ガリウム−インジウム、砒化ガリウム−インジウム、リン化ガリウム、テルル化ガリウム(II)、テルル化ガリウム(III)、テルル化ゲルマニウム、アンチモン化インジウム、砒化インジウム、リン化インジウム、砒化リン化インジウム、セレン化インジウム、硫化インジウム、テルル化インジウム、砒化ケイ素、リン化ケイ素、砒化スズ、セレン化スズ、テルル化スズ及びテルル化亜鉛が含まれる。
【0017】
工程212で得られたコロイドを工程214で加熱してもよい。コロイドは室温近辺から約100℃までの範囲の温度に加熱する場合がある。加熱工程が増圧又は減圧下のオートクレーブ処理を含んでもよい。例えば、工程202〜212のいずれか1つの工程において、添加の最中にコロイドを約45〜約60℃の範囲の温度に加熱し、最大約48時間混合を行い、工程102の水性酸性オルガノ/シロキシ/金属塩化物コロイドを得てもよい。また、加熱を停止したのち、混合を続けてもよい。また、約8時間まで加熱した後、コロイドを室温にもどし、室温で混合を行ってもよい。工程214におけるコロイドのpH値は1未満がよい。例えば、工程214におけるコロイドのpHは、約0.01〜約0.5又は約0.2〜約0.3の範囲がよい。
図2の工程は、重合性組成物又は高分子塗膜の所望の特性(例えば光学特性等)が得られるように、図示した以外の順番でおこなってもよいし、まとめておこなってもよい。例えば、工程202から得られた第1の酸性溶液を1種以上の金属塩化物塩、有機金属化合物、又はこれらの混合物と工程212で混合してもよく、別個のビヒクル(separate vehicle system)を工程202から工程210を通して調製してもよい。その後、工程210から得られたビヒクルを、工程202及び212の生成物と工程214で混合し、水性酸性オルガノ/シロキシ/金属塩化物ハイブリッドコロイドを得ることができる。
【0018】
図3を参照すると、手順300は、工程104の水性酸性オルガノ/シロキシ/金属塩化物ハイブリッドコロイドを処理して非晶質の水性オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを形成する際の工程を含む。工程302では、塩基を添加して酸性コロイドのpH値を上げる。pH値は、わずかに上げる(例えば、約0.2〜約0.3の範囲)ことも、より顕著に上げることもある(例えば、約7〜約14)。酸性コロイドのpH値は、例えばアンモニア水などの塩基を添加して上げればよい。アンモニア水の濃度は、例えば約2M〜約9Mの範囲がよい。塩基の添加に先立ち、酸性コロイドを室温にしておくとよい。工程214から得られるpH約0.01の酸性コロイドでは、濃度が約8M〜約9Mの範囲の約13質量%の塩基を添加して、コロイドのpHを約0.2〜約0.3の範囲に上げるとよい。pH値が約0.2〜約0.3の範囲の酸性コロイドでは、濃度が約8M〜約9Mの約1質量%の塩基の添加で、コロイドのpHは約7〜約11の範囲に上がる。
工程304では、例えば図2に関して記載したような1種以上の非ハロゲン置換(例えば、非塩素置換)ケイ素含有モノマー、1種以上の非ハロゲン置換有機モノマー、1種以上の非ハロゲン置換硬化剤、1種以上の非ハロゲン置換金属含有化合物、又はこれらの混合物を添加して、コロイドの固形分を上げるとよい。添加時、コロイドのpH値は酸性(例えば、約0.2〜約0.3)であってもよいし、わずかに酸性からアルカリ性(例えば、約6.5〜約14)、或いは、わずかに酸性又は中性からわずかにアルカリ性(例えば、約6.5〜約8又は約7〜約7.5)であってもよい。
【0019】
コロイドのpH値が約0.2〜0.3の範囲の時にケイ素含有モノマー及び/又は硬化剤が添加されると、攪拌下、自己発泡により示されるように水ガラスを形成する。ある場合は、工程304は、ケイ素含有モノマー及び/又は硬化剤の順次添加、その後のpH調整、更にpH値が約11になるまでケイ素含有モノマー及び/又は硬化剤を最終的に添加することを含む。所望の固形分に増加した後、コロイドのpHが約11〜約12.5又は約11〜約14の範囲になるように調整すればよい。
工程304における固形分と塩基の添加に続き、コロイドは工程306で処理を行ってもよい。工程306の処理は、室温〜約500℃の温度で最長約96時間にわたり混合、加熱、平衡化(equilibrating)を行うことができる。場合によっては加圧下で加熱する。一例として、コロイドを約150℃まで加熱した後、約8〜約72時間にわたり加熱をせずに攪拌する。攪拌しながら、コロイドを室温まで冷却してもよい。本願明細書で使用のごとく、攪拌は、混合又は分散のいずれの方法でもよく、キャビテーションも含まれる。工程306のアルカリ性コロイドの固形分(例えば、オルガノ/シロキシ/金属成分の質量)は、工程214に続く酸性コロイドの固形分を約10〜約200%超えることもある。
【0020】
工程308では、コロイドを処理して、コロイドから塩化物イオンを取り除く。この工程は、例えば、真空濾過、デカンテーション、遠心分離、流動層イオン交換及び他の物理的及び化学的方法をはじめとする様々な方法を用いて行うことができ、実質的に塩化物イオンを含まない非晶質固体を得る。
工程310では、非晶質固体からコロイドの元の状態に戻し、水性アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドとする。コロイドに戻す作業は多数回(例えば、約10回まで)行ってもよい。元の状態に戻すには、水溶液と非晶質固体とを約2:1〜約4:1の質量比で混合すればよい。イオン(例えば、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン)を元に戻したコロイドから容易に除去するためには、前記水溶液は実質的にイオンを含まないことが好ましい(例えば、水溶液を作成するのに使用する水はイオンを除去することが好ましい)。該水溶液は塩基性がよく、その場合、コロイドに戻す作業を連続的に続けるなか、コロイドはアルカリ性のままである。例えば、水溶液がアンモニア水を含む場合がある。一例は、水溶液が約2質量%の水酸化アンモニウム(例えば約2〜約9MのNH4OH)を含む。また、水溶液が塩基を含む場合もある。一例は、塩基が水酸化カルシウムで、水溶液に添加する水酸化カルシウムの量が水溶液の質量に対して約0.001〜約3.5%である。
【0021】
2回目の遠心分離の後、元の状態に戻したコロイド状懸濁液は約2〜約5℃の温度に冷却してもよく、化学反応を起こして自己発泡する。2回目の遠心分離後の上澄み層の塩化物イオン濃度はおよそ5,000ppmがよい。
コロイドを遠心分離にかけて元の状態に戻すことを繰り返すことで非晶質固体の粒子径は小さくなる。また、遠心分離は、濾過やデカンテーション等の他の方法に比べ、イオンをより効果的に除去し、より均一なコロイドにすることが可能である。一例であるが、工程304で形成された750mLのコロイドを、4150rpmで約8〜約24時間、凝固点以上、沸点以下の温度で遠心分離にかける。遠心分離中、コロイドを約4℃に冷却した後、室温で平衡させる。得られた非晶質固体を分離して元の状態に戻し、さらに再度遠心分離を行い、合計10回まで続けて遠心分離工程を行う。遠心分離工程の時間は異なっていてもよい。1回目の遠心分離工程はその後の遠心分離工程より短くてもよい。例えば、1回目の遠心分離工程が約8時間で、その後の遠心分離工程が約24時間であることが好ましい。
遠心分離工程を連続することで、上澄み層の塩化物イオン濃度が約1ppm未満に減少することが好ましい。塩化物イオン濃度は、工程310においてイオン交換樹脂を使用することで更に減少させることができる。イオン交換樹脂は、約0.01〜約2質量%、又は、約0.5〜約0.75質量%の量で添加するとよい。工程310から得られるコロイドのpH値は、少なくとも約8、又は少なくとも約8.4である。
【0022】
図4A及び図4Bは工程106を更に詳細に示す。図4Aを参照すると、手順400Aは、工程310のアルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを処理して重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物を形成する際の工程を含む。
工程402は、工程310のアルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド中の固形分を調整することを含み、この固形分は約4質量%が好ましい。コロイド中に形成されるハイブリッドオルガノシロキシと高分子ハイブリッドナノ結晶との比は、約1:1が好ましい。固形分の調整とは、固形分を下げることもある(例えば、水の添加により)。例えば、添加する水の量はコロイドの質量の約10〜約250%がよい。図2に関連して説明した非ハロゲン含有有機モノマーを添加することにより固形分を上げてもよい。
工程404は、第1の過酸化物系溶液と工程402のアルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドとを混合してオルガノ/シロキシ/金属過酸化物懸濁液を形成することを含む。過酸化物系溶液としては、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、3-クロロペルオキシベンゾイックペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、[ジオキシビス(1-メチルプロピリデン)]ビスヒドロペルオキシド、(1-メチル-プロピリデン)ビスヒドロペルオキシド、過酢酸又はこれらの混合物が挙げられる。過酸化物系溶液の濃度は、例えば約25〜約50%の範囲が好ましい。過酸化物系溶液を添加する前のコロイドのpH値は、約6〜約10.5の範囲が好ましい。過酸化物系溶液を添加する前のコロイドの温度は、約1℃から室温の範囲が好ましい。過酸化物系溶液は、コロイドの質量に対して約0.1〜約200%の量でコロイドに直接添加してもよい。過酸化物系溶液の添加により発熱反応が起こり、オルガノ/シロキシ/金属過酸化物懸濁液が得られる。
【0023】
工程406では、オルガノ/シロキシ/金属過酸化物コロイド懸濁液を室温で平衡させる。平衡させた懸濁液のpH値は、約4〜約7.5の範囲又はほぼ中性が好ましい。系を安定化させ溶解させることにより、室温での平衡後は実質的に透明な懸濁液となる。
場合によって、2種以上の異なるオルガノ/シロキシ/金属過酸化物懸濁液を工程404で調製し、工程406で混合してもよい。この選択肢は、例えば、反応体によっては(例えば特定の金属塩とシラン又はシロキシ種)、一緒に混合することで有毒性を示す場合には好適である。一例であるが、第1の非ケイ素含有懸濁液を工程404で調製し、第2のケイ素含有懸濁液を工程404で調製する。その後、第1及び第2の懸濁液は、工程406の室温での平衡の前後又は最中に混合する。
図4Bを参照すると、手順400Bは、工程406のオルガノ/シロキシ/金属過酸化物コロイド懸濁液を処理して重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物を形成する付加的工程を含む。工程408は、第2の過酸化物系溶液と工程406の平衡させた懸濁液とを混合することを含む。過酸化物系溶液は、工程404に関して挙げた例から選択すればよい。過酸化物系溶液の濃度は、例えば、約25〜約50%が好ましい。過酸化物系溶液は、懸濁液の質量の約0.1〜約200%の量で懸濁液に直接添加すればよい。
【0024】
工程410では懸濁液の加熱を行う。懸濁液を室温程度〜約500℃の温度(例えば約150℃)に加熱すればよい。懸濁液は約1〜約10時間加熱すればよい。工程410の加熱は、懸濁液中の粒子が実質的に凝集しないように行う。場合により、工程410の加熱は、還流又はオートクレーブ処理が挙げられる。オートクレーブ処理は、大気圧又は大気圧以上又は大気圧以下でもよい。
工程412では金属過酸化物懸濁液の固形分を上昇させる。図2で説明したように、1種以上の非クロロ置換ケイ素含有モノマー、1種以上の非クロロ置換有機モノマー(例えば、工程202で説明したようなもの)、1種以上の 非クロロ置換硬化剤、1種以上の非クロロ置換金属含有(例えば、有機金属含有)化合物、又はこれらの混合物を添加することにより、懸濁液の固形分を上昇させることができる。工程412では、フッ素又はヨウ素含有物質を添加することが望ましい場合もある。固形物は、所望の結果を得るのに適した量で添加すればよい。場合に応じ、工程408から得られる過酸化物懸濁液の固形分質量の約100倍までの量で固形物の添加を追加すればよい。工程412で懸濁液を加熱する場合もある。
工程414は、任意であるが懸濁液のpH値を調整(上昇又は下降)する。例えば、塩基性溶液を懸濁液に添加してもよい。塩基性溶液として、濃度が約0.1〜約9Mの水酸化アンモニウムが挙げられる。懸濁液の質量の約0.1〜約10%の量で塩基性溶液を添加することができる。工程414で懸濁液を加熱する場合もある。
【0025】
図4Bに示したように、工程410、412及び414は1回以上繰り返してもよい。工程410〜414を1回以上繰り返すことにより懸濁液に固形物を順次添加することになり、固形分が上昇する。最終工程414(又は、工程412と414を省く場合は最終工程410)に続き、懸濁液を室温で平衡させてもよい。
工程416では、工程414(工程412及び414が行われない場合は、工程410)から得られた懸濁液を加熱する。加熱は、加圧下での還流又は増圧又は減圧下でのオートクレーブ処理でもよい。この加熱処理中、ナノ結晶が成長する。加圧下での加熱により、透明な重合性オルガノ/シロキシ組成物となり、組成物全体にわたって自己組織化したナノ結晶が分散する。工程416は、約500℃までの温度(例えば約150℃)で加熱すればよい。懸濁液は、約2〜約20時間にわたって加熱すればよい。懸濁液は、圧力約0〜約10psi、大気圧を超えて約100psiまでの加圧下で加熱すればよい。懸濁液は、約75,000psiまでの圧力で加熱する場合もある。得られた懸濁液は、pH値が約5〜10.5の範囲であるとよい。有機金属化合物を塩基と一緒に懸濁液に添加し、懸濁液のpHを調整する場合もある。例えば、懸濁液を約0.5時間、約4時間、約12時間、約20時間又は約24時間まで還流した後、添加剤を懸濁液と混合してもよい。
【0026】
工程418では、組成物を意図する用途に合うように調整すればよい。例えば、組成物を塗布する支持体を鑑み、懸濁液のpH値を調整すればよい。任意であるが、1種以上の 有機モノマー、1種以上のケイ素含有モノマー、粉末、硬化剤、湿潤剤又はそれらの混合物(例えば、図2で記載したもの)を工程418で添加してもよい。湿潤剤を使用して支持体上の組成物の疎水性又は湿潤性を改良し、より薄い組成物膜を支持体に塗布することができる。薄膜化することで黄色く見えることを抑えモアレ模様を抑えることができ、さらに、所望の属性を得る量で硬化時間が短縮できる。好適な湿潤剤は限定されないが、ポリエチレンオキサイドシラン、イソプロピルアルコール、極性(親水性)非イオン性エチレングリコール官能化シランが挙げられる。工程418で、約0.1〜約10,000質量%の固形分を組成物に添加することができる。最終組成物又は塗膜の所望の属性を引き出し、向上できるように添加剤を選択すればよい。工程418では、工程416から得られる組成物を別の組成物に添加して所望の特性を有する水性系を形成することもできる。
図5を参照すると、手順500は、手順400Bで形成した組成物の支持体への塗布(工程108)と、支持体上の該層の固化(工程110)を説明するものである。工程502は、工程416又は工程418から得られた透明の重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物を支持体に塗布する。塗布は、噴霧、原子層堆積、化学蒸着、物理的蒸着等が挙げられる。組成物を加熱して気体状にして支持体に塗布する場合もある。組成物を塗布する前に支持体を加熱してもよい。組成物を支持体上に焼結させる場合もある。
【0027】
工程504では、組成物の実質的に連続した層が支持体上に形成される。塗膜はシーラントとして支持体を環境から保護する目的で使用することもできるし、或いは、シーラント上の付加的な塗膜として使用することもできる。本願明細書記載の組成物と一緒に使用できるものの例として、多孔質もしくは非多孔質の透明、半透明、不透明な支持体が挙げられ、例えば、金属、合金、ガラス(例えば光学ガラスや工業用ガラス)、ポリマー材料(例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、布、建築材料(例えばコンクリートやビニル系誘導体)、窯業製品、増量剤、充填剤、繊維材料、電子部品、カーボン、グラファイト、窯業製品、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、樹脂材料、無機材料、有機材料、ゴム、木材、紙、廃棄物、皮膚、毛髪、とりわけ手術用のスチール、医療装置の未処理スチール、グラスファイバー、セメント及び光ファイバーなどである。
【0028】
工程506では、組成物を固化して支持体上に高分子塗膜を形成する。組成物の固化は、水性担体とオルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物の縮合物とを含む重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を提供し、該組成物を支持体表面に塗布し、水性担体を除去して高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を支持体表面に形成する。組成物は周囲条件下で固化し、実質的に透明な高分子塗膜を形成することができる。例えば、塗膜を室温及び大気圧下、空気中で乾燥させることにより周囲硬化(ambient curing)できる。周囲条件下で、塗膜は数時間(例えば約5時間未満)以内で指触乾燥状態となり、約7〜10日での硬化が可能である。硬化した塗膜の硬度は、少なくとも約0.1GPa又は少なくとも2.5GPa(例えばポリカーボネートの弾性率(0.48GPa)〜ガラスの弾性率(7GPa)の範囲)又は約0.1GPa〜7GPaの範囲又は約2.5GPa〜約7GPaの範囲である。また、組成物は加熱して固化させ、支持体上に高分子塗膜を形成することもできる。重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を噴霧乾燥させ(例えば高温で)、高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス粉末を形成する場合がある。可視線又は紫外線を用いてハイブリッド有機金属含有ガラス組成物の重合を容易にすることもできる。高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜は、硬化後に処理を行い(例えば電磁線、熱、圧力などを用いる)、塗膜の化学的及び/又は物理的特性を変える場合もある。
【0029】
工程506で形成される塗膜は、ナノメートル単位の単分子層の厚みにすることができる。塗膜厚みが約2〜10nm、約3〜8nm、又は約4〜6nmの実施形態がある。他の用途では、塗膜厚みを約10nm〜約1μmとすることもできる。例えば、塗膜厚みは、約10〜約800nm、約100〜約600nm、又は約200〜約500nmとすることができる。これらの塗膜は連続的で、共有結合、架橋した高分子の膜が硬化したもので、不連続な凝集粒子は肉眼では見られない。工程418で形成される組成物の粘度を調整して、更に厚みのある層又は塗膜、例えば、ミクロン単位又はそれより厚く形成する実施形態もある。1種以上の組成物を繰り返し塗布することにより、所望の厚みを有し、同一又は異なる機能性を持った所望の層数(積層)の塗膜にすることが可能である。一例であるが、工程418で形成される組成物を支持体と被膜との間の中間層、又は、支持体上の二層間の中間層として使用する。中間層は接着層として機能し、被膜間密着性を付与することができる。
本願明細書記載のオルガノ-シロキシペルオキシ-金属-ヒドロキシナノ結晶構造又は高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜は、有機ガラスポリマーとして熱に反応し、砕けたり付着力を失うことはなく、むしろ、例えば1000℃に至る高温でも透明性や塗膜形成能が変わらない。このような塗膜は1時間でも水中でボイルすることができ、なおも塗膜付着性や硬度を保つことができる。
【0030】
高分子塗膜は本質的に有機でもあり無機でもあり、親水性と疎水性のいずれの特性も有する。即ち、塗膜中のハイブリッドナノ結晶が親水性を付与し、重合したオルガノ/シロキシ網状構造が疎水性を付与する。この塗膜が二重の特性を有することにより、塗膜の厚み全体ではなく、塗膜の表面に近い部位(例えば表面から1ナノメートルから数ナノメートルの範囲)を光反応性にできる。重合したオルガノ/シロキシ網状構造の疎水性により、塗膜の厚み方向全体に水が浸透しないようにし、塗膜中に異物(例えば埃)がとどまらないようにしたり、表面から水をシートオフ(sheet off)することができる。図2〜図5に示すプロセスに包含された添加剤によっては、重合後のオルガノ/シロキシ網状構造が親水性の場合もある。本願明細書記載の組成物は、臨界表面張力を高い値から低い値まで広範囲な値になるよう処方することができ、超親水性、超疎水性、撥油性の塗膜にすることができる。高分子塗膜が超疎水性で実質的にハイブリッドナノ結晶を有していない場合もある。これらの超破水性塗膜はきわめて硬くすることができ、光触媒活性をほとんど示さないか全く示さない。
【0031】
図1〜5に示したプロセス及び化学反応を実行させ、様々な組成物及び塗膜を生成することができる。ナノ結晶が、オルガノシロキシマトリックス中で自己組織化しうる場合もある。ナノ結晶は、チタン(例えば鋭錐石)、スズ、ジルコニウム、ケイ素、バナジウム、コバルト等の金属や半導体の酸化物、又はこれらのハイブリッドもしくは混合物を含むことができる。高分子ハイブリッド系ナノ結晶がオルガノシロキシマトリックス内で自己組織化する場合がある。ナノ粒子の混合物がオルガノシロキシハイブリッドポリマーマトリックス内に分散することも可能であり、自己組織化ナノ結晶又はマトリックス内で成長した高分子ハイブリッドナノ結晶を有していてもいなくてもよい。自己組織化ナノ結晶(例えば、ハイブリッド系又は単独)、添加ナノ結晶(例えば分散した結晶)及び高分子ハイブリッドナノ結晶をはじめとするナノ結晶が存在しない状態の、オルガノシロキシポリマーマトリックスを形成してもよい。
また、工程504及び工程506で示すように、工程402で形成した非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド懸濁液組成物を、ある表面に直接塗布して該表面に塗膜を形成する実施形態もある。或いは、工程402で形成した非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド懸濁液組成物は、後から使用するために室温で保存したり、乾燥して粉末状にしたり、蒸発させて気体を形成することも、工程504に示すように表面に塗布することもでき、水分を取り除き(例えば噴霧乾燥を行う)粉末状にして回収し、ナノ粉末又はナノ複合粉体にして使用する実施形態もある。
【0032】
透明な重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物が0.005〜10%の安定した固形物として水中に分散されたものを乾燥、処理して、直径が約100nm未満のナノ複合粉体を形成することもできる。このナノ粉末又はナノ複合粉体を別のハイブリッド有機金属含有ガラス組成物(例えば、工程202〜工程212及び/又は工程304、工程402、工程412もしくは工程418で)又は他の分散液と混合して、熱硬化性樹脂、熱可塑性押出品、有機増量剤分散体等の機械的特性、物理的特性及び/又は化学的特性を改良することができる。組成物中又はオルガノ/シロキシ/ナノ結晶ビヒクル系中には容易に分散されない粒子状支持体に、オルガノ/シロキシ/ナノ結晶複合粉体を結合させて、粒子状支持体の分散を容易にすることができる。例えば、熱硬化性樹脂系又は熱可塑性樹脂系に容易に分散されない粒子に、オルガノ/シロキシ/ナノ結晶複合粉体を結合させ、該系への粒子の分散を容易にする場合もある。
非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド(例えば、工程302、工程304、工程310及び工程402から)及び重合性オルガノ/シロキシ/ナノ結晶組成物(例えば、工程406、工程416及び工程502から)は、塗膜、シール材、超臨界流体、不均質又は均質分散液及び/又は粉体として使用することができる。組成物は、支持体に塗布したり、支持体に一体化させたり、支持体に結合させることができる。この組成物を液体中に均一又は不均一に分散させてもよい。超臨界流体組成物の場合、他の超臨界流体組成物に分散させてもよい。
【0033】
選択したハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を用いて支持体を処理し、触媒特性、光触媒特性、自己清浄性、抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、腐食防止性、防汚性、半導体性、導電性、絶縁性、電磁気性、透明性、光学性、発光性(emissive)、難燃性、圧電性、耐火性、耐摩耗性又はこれらの組み合わせを改善したり、支持体に付与することができる。本願明細書に記載した疎水性シロキシナノ薄膜塗膜を用いることで、ポリマー支持体、金属支持体及びセメント質支持体がそのガラス表面を通って微生物やウイルスの混入で汚染されることを防止できる。こうした塗膜により、塗布後の支持体が酸化剤に触れないので、塗布したポリマー支持体は、その後の崩壊が抑えられる。
ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜の組成及び厚みは、絶縁及び誘電特性(高誘電率、低誘電率)、帯電防止性、赤外吸収、摩擦係数の選択(低摩擦係数又は高摩擦係数)、導電性、屈折率、透明性、反応性等の特性に関して好適な値が得られるように選択できる。このような塗膜は、熱硬化性-熱可塑性強化材、増量剤分散体、水素吸蔵、電気化学分野及び超伝導分野、感光性写真材料の調製、紫外線吸収といった分野で使用できる。
【0034】
本願明細書記載の組成物から形成した塗膜は、空気/水の修復浄化用途、生物医学用途、電気用途、及び表面学において役立つはずである。他の用途としては、中性子吸収材料を放射性汚染部位に付与することにより放射性汚染を制御、阻止するのに適した塗膜も挙げられる。また、本願明細書で使用の組成物を使用して、電界効果トランジスタや電極で使用可能な透明で導電性のあるフィルムを形成することができる。本願明細書に記載した固化後のマトリックス材料は、高誘電率ゲート材料、コンデンサ、高熱伝導性塗膜、赤外線を通す塗膜、発光導電性を示す塗膜、触媒特性及び/又は光還元性を有するフィルム、難燃性を有する粉末又はフィルムとして、フィルムコンデンサの誘電体として、また、低漏洩電圧性が求められるLSI回路のゲート絶縁膜、不透明乳剤、反射防止及び/又は干渉特性を有する粉体、高誘電率膜、耐熱及び耐熱衝撃向上剤として使用することができる。これらの膜は、電子部品用セラミックス(electronic ceramics)、サーミスタ、バリスタ、サーメット、抵抗加熱素子、セラミック釉薬、エナメル、増量剤、磁気装置、セラミックコンデンサ、ガラス質層、着色ガラス、腐食成分や紫外線の浸透を阻止する遮断層、セメント、肥料及びガス浄化分野においても有用である。
【0035】
本願明細書記載の高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物は、色素増感型太陽電池、スーパーキャパシター薄膜、電気部品、光学素子、電子光学素子、音響光学素子、レーザー光学素子、光・電子デバイス、ガス検知装置、触媒装置、電気化学的超伝導装置、セラミックス、コンデンサ、薄膜コンデンサ、ハイブリッド回路、半導体部品、不均一触媒担体、マイクロセンサー(例えばMEMS技術用)、粒子検出器、ディーラム(ダイナミックランダムアクセスメモリ)のような記憶装置内のメモリセルとして、又は、高周波数用途における受動素子として使用される金属-絶縁体-金属、又は、金属-絶縁体-半導体といった連続層を有する電子デバイス用ナノフィルム、電気化学装置及びディスプレイ、電池、耐火性薄膜るつぼ内張り、集積回路の抵抗素子、スパッターターゲット、導電性インク、ディスプレイ用途(例えばフラットパネル、プラズマ、エレクトロルミネッセント、エレクトロクロミック、電界放出など)及び気体透過無機膜として使用できる。
本願明細書記載の組成物は、れんが、増量剤、モルタル、耐火物、研磨材、接着剤、セメント、スラグアジャスター、セラミックス(誘電性、強誘電性及び導電性セラミックス)、アルミニウム系化学物質、難燃剤、充填剤、溶接用フラックス、吸着剤、接着剤、洗剤用ゼオライト、変換器(例えばラウドスピーカーやマイクロホン向け)、ガラス製品、X線増感紙、燐光物質、様々な蛍光化合物の原料、原子反応における吸収材料、磁気バブル材料、スクリーン感度増幅材料、半導体電子機器、圧電共振器及び圧電変換器、ゲート酸化膜用添加剤として使用できる。
【0036】
本願明細書記載の組成物に銀等の成分を合体させて塗膜の生体静力学的効力を向上させることができる。ナノ薄膜シロキシ層はナノ薄膜ガラス遮断層として使用でき、薄膜下の支持体が熱湯、酸素プラズマ、オゾン、過酸化物、酸化物、有機酸及び酸化炎に曝されないようにする。この軽量なナノ薄膜シロキシ層は、耐汚染性、耐引掻性をはじめとする靱性ならびに可撓性を付与するので、ロール状及び成形包装での保存が可能である。ナノ薄膜シロキシ層は気体や水分を実質的に透過させることなく、ポリマー支持体への良好な接着性を示す。
本願明細書記載のシロキシ塗膜は、様々な金属支持体が陽極及び陰極の電気化学的移動に影響されないように処方することができ、その結果、異種金属接触腐食、濃淡電池腐食、酸素濃淡電池腐食、糸状腐食、金属イオン濃淡電池腐食、活性/不動腐食電池、粒界腐食、剥離腐食及び金属水銀腐食(metallic mercury corrosion)をはじめとする腐食に必要な電気化学的回路を阻害する。
本発明の様々な態様に対する更なる改良及び別の実施形態については、本明細書を鑑みれば当該分野の当業者には明らかであろう。従って、本明細書は例示にすぎないと考えるべきで、当該分野の当業者に本発明を実施する概括的な方法を教示することを目的としている。本願明細書に示し記載した形態は実施形態の一例として理解すべきものと解釈される。本発明の本明細書をもとにすれば当該分野の当業者にとってはすべて明らかであるように、成分及び材料は本願明細書に例示及び記載したものと替えることができ、部分及びプロセスを逆にすることができ、本発明の特定の特徴については個々に利用することができる。後述の請求項に記載のごとく、本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲で、本願明細書記載の要素においては変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機モノマーとケイ素含有化合物と有機金属化合物とを含む水性酸性コロイドを形成する工程と、
(b)前記水性酸性コロイドを処理して、水性アルカリ性コロイドを形成する工程と、
(c)前記水性アルカリ性コロイドを処理して、前記コロイドから塩化物イオンを除去し、水性アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを形成する工程と、
(d)前記水性アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドと過酸化物系溶液とを混合して金属過酸化物を含む懸濁液を形成する工程と、
(e)前記金属過酸化物懸濁液を処理して、重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を形成する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記水性酸性コロイドを形成する工程が、前記有機モノマー、前記有機金属化合物又はこれらの混合物を含む酸性溶液を加熱することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水性酸性コロイドを処理する工程が、前記水性酸性コロイドへの塩基の添加及び/又は前記コロイドの加熱及び/又は前記金属過酸化物懸濁液を第2の過酸化物系溶液と混合することを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記水性アルカリ性コロイドを処理する工程が、前記水性アルカリ性コロイドを加熱することを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記金属過酸化物懸濁液を処理する工程が、前記懸濁液を加熱することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
加熱の際、室温以上の温度で、大気圧又は大気圧以下又は大気圧以上で加熱することを含む、請求項2〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
加熱がオートクレーブ処理を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記水性アルカリ性コロイドを処理する工程が、前記水性アルカリ性コロイドを冷却することを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記水性アルカリ性コロイドの冷却の際、前記水性アルカリ性コロイドを大気圧又は大気圧以下又は大気圧以上で冷却することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
冷却の際、室温以下及びコロイドの凝固点以上の温度に冷却することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
冷却がオートクレーブ処理を含む、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記金属過酸化物懸濁液を処理する工程が、自己組織化ナノ結晶を懸濁液中に形成することを含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を支持体に塗布し、前記組成物を重合させて高分子ハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜を前記支持体上に形成する工程を更に含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記支持体が多数の粒子を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記塗布された粒子を処理する工程を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物の重合工程が、前記組成物を室温において大気中で乾燥させることを含む、請求項13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記酸性コロイドを形成する工程が、前記酸性コロイド又はその前駆体と第1の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記酸性コロイドを処理する工程が、前記酸性コロイド又はその前駆体と第2の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリ性コロイドを形成する工程が、前記アルカリ性コロイド又はその前駆体と第3の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記アルカリ性コロイドを処理する工程が、前記アルカリ性コロイド又はその前駆体と第4の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイドを形成する工程が、前記アルカリ非晶質オルガノ/シロキシ/金属水酸化物コロイド又はその前駆体と第5の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記金属過酸化物懸濁液を処理する工程が、前記金属過酸化物懸濁液又はその前駆体と第6の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物を形成する工程が、前記重合性ハイブリッド有機金属含有ガラス組成物又はその前駆体と第7の添加剤とを混合することを含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記第1〜第7の添加剤のいずれか1つが、有機モノマー、ケイ素含有化合物、有機金属含有化合物、湿潤剤、硬化剤、蛋白質又は酵素、及びナノ粒子からなる群から独立して選択される、請求項17〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記第1〜第7の添加剤のいずれか1つがナノ粒子であり、前記ナノ粒子がナノ構造炭素を含み、及び/又は、前記第1〜第7の添加剤のいずれか1つが、リソスタフィン及びリゾチームからなる群から選択される酵素又は酵素の混合物である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記水性アルカリ性コロイドを処理して前記コロイドから塩化物イオンを除去する工程が、前記コロイドから前記塩化物イオンを実質的にすべて除去することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記水性アルカリ性コロイドを処理して前記コロイドから塩化物イオンを除去する工程が、真空濾過、デカンテーション、遠心分離、流動層脱イオンから選択される方法を含み、上澄み層中の塩化物イオン濃度が約2ppm未満になるまで繰り返しコロイドを元の状態に戻すことを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記コロイドを元の状態に戻す際、イオン交換樹脂の存在下で前記コロイドを元の状態に戻す、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記水性酸性コロイドが更に金属塩化物を含む、請求項1〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
請求項13記載の重合したハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜で被覆された支持体。
【請求項31】
前記重合したハイブリッド有機金属含有ガラス塗膜が、前記支持体と別の層との間の中間層、又は、前記支持体上の2層間の中間層である、請求項30記載の被覆支持体。
【請求項32】
支持体上の高分子塗膜であって、前記塗膜が請求項13記載の方法で形成されている高分子塗膜。
【請求項33】
前記塗膜が被膜間密着層である、請求項32記載の高分子塗膜。
【請求項34】
シロキシ基と有機部位と非晶質金属水酸化物とを含有する水性懸濁液を含み、前記懸濁液が重合して硬度約0.1〜7GPaの高分子ハイブリッド有機金属含有ガラスを形成する、組成物。
【請求項35】
前記懸濁液が更にペルオキシ基、ナノ粒子、酵素又はこれらの混合物を含む、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
前記高分子ハイブリッド有機金属含有ガラスが支持体表面上に形成された縮合物である、請求項34又は35記載の組成物。
【請求項37】
高分子系ポリマーマトリックスを含む材料であって、前記マトリックス中、金属原子、有機部位、酸素及びケイ素が共有結合し、硬度約0.1〜7GPaの塗膜を形成する材料。
【請求項38】
前記マトリックスが更にナノ粒子又は酵素を含有する、請求項37記載の材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−513019(P2013−513019A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543256(P2012−543256)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059521
【国際公開番号】WO2011/072045
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512151137)エンヴォント リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】