説明

高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法

【課題】高分解能処理に要する演算負荷を削減し、演算器およびメモリのリソースを有効に活用する。
【解決手段】受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出し、信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成部20と、共分散行列から所望信号の到来角度を算出する高分解能測角処理部23とを備え、所定時刻後における到来角度を予測する角度予測部24と、所定時刻後の共分散行列を予測する共分散行列予測部26と、生成された共分散行列と予測された共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定部21と、2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、高分解能処理を行わずに角度予測部で予測された到来角度を出力し、2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、高分解能測角処理部に高分解能処理を行わせることで到来角度を算出させて出力する処理選択部22とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信素子で受信した信号から共分散行列を生成し、受信信号の到来角度、受信信号の源との距離、または相対速度といった所望の諸元を高分解能処理によって算出する高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の受信素子から構成される受信装置をもつ信号処理装置において、空間方向に複数のビームを形成することで、到来する波の各ビーム方向成分ごとの信号処理が可能となる。しかし、この場合、空間分解能は、形成するビームの幅によって決まり、分解能を上げるためにはビームの幅を狭くする必要がある。このビームの幅を狭くするためには、受信素子間の距離を広げる方法がある。
【0003】
ここで、所望信号の到来角度、信号源までの距離、または相対速度を高い分解能で算出する方法として、MUSIC(Multiple Signal Classification:例えば、非特許文献1参照)やESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques:例えば、非特許文献2参照)といった高分解能処理アルゴリズムが知られている。
【0004】
これらのような高分解能処理アルゴリズムを用いると、受信信号に異なる発生源からの複数の波の情報が混在する、多重波環境となる場合においても、複数の波を分離することができる。MUSICやESPRITによる処理は、超分解能処理とも呼ばれている。
【0005】
しかしながら、高分解能処理は、固有値展開や逆行列算出といった処理負荷の大きい行列演算を伴う。そのため、制限時間の短いリアルタイム処理が必要であるような、または、できるだけ演算リソースを小さくする必要があるような信号処理装置においては、処理量の削減が課題になる。
【0006】
この課題に対し、多重波環境である場合にのみ高分解能処理を行い、それ以外の場合には別の演算を行うことで、所望の諸元を算出する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】R. O. Schmidt, “Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation”, IEEE Trans, vol.AP-34, No.3, pp.276-280, March, 1986
【非特許文献2】R. Roy and T. Kailath, “ESPRIT - Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques”, IEEE Trans, vol.ASSP-37, pp.894-995, Jul. 1989
【特許文献1】特開2006-091029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、高分解能処理の回数は減る可能性があるものの、別の種類の処理が必要である。また、高分解能処理が必要となる場合の処理量は、削減することができない。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、高分解能処理に要する演算負荷を削減し、演算器およびメモリのリソースを有効に活用することのできる高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高分解能信号処理装置は、受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出する所望信号成分検出部と、所望信号成分検出部で検出された信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成部と、共分散行列生成部で生成された共分散行列を入力として高分解能に所望信号の到来角度を算出する高分解能測角処理部とを備え、高分解能で到来する信号の角度を算出する高分解能信号処理装置であって、所定時刻における所望信号の到来角度に基づいて、所定時刻後における所望信号の到来角度を予測する角度予測部と、角度予測部で予測された到来角度をもとに所定時刻後に共分散行列生成部によって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測部と、所定時刻後において共分散行列生成部で生成された共分散行列と、所定時刻において共分散行列予測部で予測された所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定部と、所定時刻後において、共分散行列一致判定部で2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、高分解能測角処理部による高分解能処理を行わずに角度予測部で予測された所定時刻後における到来角度を出力し、2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、所定時刻後において共分散行列生成部で生成された共分散行列に基づいて高分解能測角処理部に高分解能処理を行わせることで所定時刻後における所望信号の到来角度を算出させて出力する処理選択部とをさらに備えるものである。
【0011】
また、本発明に係る高分解能信号処理方法は、受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出し、信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成ステップと、生成された共分散行列を入力として高分解能に所望信号の到来角度、到来する信号の発生源までの距離、あるいは到来する信号の発生源の自機との相対速度を算出する高分解能処理ステップとを備え、高分解能で到来角度、距離、または相対速度を算出する高分解能信号処理方法であって、所定時刻における所望信号の到来角度、距離、または相対速度に基づいて、所定時刻後における所望信号の到来角度、距離、または相対速度を予測する予測ステップと、予測された到来角度、距離、または相対速度をもとに所定時刻後に共分散行列生成ステップによって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測ステップと、所定時刻後において共分散行列生成ステップで生成された共分散行列と、所定時刻において共分散行列予測ステップで予測された所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定ステップと、所定時刻後において、共分散行列一致判定ステップで2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、高分解能処理ステップによる高分解能処理を行わずに予測ステップで予測された所定時刻後における到来角度、距離、または相対速度を出力し、2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、所定時刻後において共分散行列生成ステップで生成された共分散行列に基づいて高分解能処理を行うことで所定時刻後における所望信号の到来角度、距離、または相対速度を算出し出力する処理選択ステップとをさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予測共分散行列と実測共分散行列との一致判定処理に応じて、高分解能処理の実施の有無を選択的に切り替える構成を備えることにより、高分解能処理に要する演算負荷を削減し、演算器およびメモリのリソースを有効に活用することのできる高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における高分解能信号処理装置の構成図である。図1における高分解能信号処理装置は、送信部11、送信アンテナ12、受信アレーアンテナ13、受信部14、A/D変換器15、時間フーリエ変換部16、空間フーリエ変換部17、ピーク検出部18、速度算出部19、共分散行列生成部20、共分散行列一致判定部21、処理選択部22、高分解能処理部23、目標物位置予測部24、予測データ記憶部25、および共分散行列予測部26で構成される。
【0015】
さらに、送信部11は、発振器11a、周波数逓倍器11b、低雑音増幅器11cを含んでいる。また、受信部14は、低雑音増幅器14a、バンドパスフィルター14b、ミキサ14cを含んでいる。
【0016】
ここで、送信部11〜速度算出部19は、所望信号成分検出部に相当する。また、高分解能処理部23は、高分解能測角処理部、高分解能測距処理部、および高分解能測速度処理部の総称に相当し、角度、距離、相対速度を高分解能で求める機能を有している。さらに、目標物位置予測部24は、角度予測部、距離予測部、および速度予測部の総称に相当し、所定時刻の測定結果に基づいて所定時刻後の角度、距離、相対速度といった所望の諸元を予測する機能を有している。
【0017】
次に、図1の構成を有する高分解能信号処理装置の動作について説明する。本実施の形態1では、高分解能処理を用いて、受信信号に含まれる、送信波の目標物による反射波の到来角度、または、目標物までの距離を算出するレーダー装置に関して説明する。
【0018】
送信部11の内部において、周波数逓倍器11bは、発振器11aで生成された信号の周波数を逓倍し、送信波を生成する。生成された送信波は、低雑音増幅器11cにおいて強度を増幅され、送信アンテナ12を介してアンテナ前方に放出される。
【0019】
送信アンテナ12から放出された送信波は、送信波の進行方向前方に目標物がある場合、目標物によって反射される。そして、反射波は、受信アレーアンテナ13によって受信される。受信信号は、受信部14内の低雑音増幅器14aによって強度を増幅される。そして、受信信号は、バンドパスフィルター14bで周波数帯域制限される。その後、ミキサ14cによって送信波と混合されることで、受信波と送信波の周波数差をもつ周波数信号が生成される。さらに、生成された周波数信号は、A/D変換器15でディジタル信号に変換される。
【0020】
ディジタル化された信号は、時間フーリエ変換部16においてデータの時間次元でフーリエ変換され、受信信号の次元は、時間次元からドップラー周波数次元に変換される。
【0021】
空間フーリエ変換部17は、空間方向のフーリエ変換によって所望の数のビームを形成する。ビーム形成により、受信信号の積分効果を上げることができる。
【0022】
ピーク検出部18は、空間フーリエ変換後の信号の電力、または振幅強度に関して閾値処理を行い、ピークとなる信号を検出する。
【0023】
速度算出部19は、ピークのドップラー周波数から目標物の速度を算出する。
【0024】
共分散行列生成部20は、ピークとして検出されたドップラー周波数成分の信号を用いて、共分散行列を生成する。共分散行列は、検出された信号ピークの数だけ生成される。
【0025】
共分散行列一致判定部21は、共分散行列生成部20で生成された共分散行列(実測共分散行列)と、共分散行列予測部26で生成され、予測データ記憶部25に保存された共分散行列(予測共分散行列)とを比較し、実測共分散行列と予測共分散行列が一致するか否かを判定する。このとき、実測共分散行列のドップラー周波数と同じドップラー周波数をもつ予測共分散行列を用いる。
【0026】
2つの共分散行列の比較方法としては、実測共分散行列と予測共分散行列との差分をとり、差分行列Aのフロベニウスノルム│A│が、あらかじめ設定された値e以下の場合に一致とみなし、eを超える場合には不一致とみなす方法が考えられる。また、他の方法として、実測共分散行列と予測共分散行列との相関をとり、規格化相関係数Cが、1−e以上の場合に一致とみなす方法も考えられる。
【0027】
処理選択部22は、実測共分散行列と予測共分散行列とが一致すると判定されたピークに対しては、予測データ記憶部25に格納されている予測位置を結果として出力する。また、実測共分散行列と予測共分散行列とが不一致であると判定されたピークに対しては、高分解能処理部23に処理を移行させる。なお、計測開始後1回目の処理では、予測位置が存在しないので、高分解能処理部23に処理を移行させる。
【0028】
高分解能処理部23は、共分散行列生成部20で生成された実測共分散行列を入力として高分解能アルゴリズム(MUSICまたはESPRIT)によって距離と角度を求め、結果として出力する。
【0029】
目標物位置予測部24は、目標物の運動モデルを想定し、求めた目標物の位置および速度を用いて、所定時刻後での目標物の位置および速度(すなわち、距離、角度、速度)を予測する。想定する運動モデルとしては、等速直線運動や等加速度運動が考えられる。また、ここでの所定時刻後とは、所定間隔ごとの計算周期における、所定時刻から所定間隔経過後の時刻を意味している。
【0030】
目標物位置予測部24で予測された所定時刻後の目標物の位置と速度は、予測データ記憶部25に保存される。
【0031】
目標物の予測位置および速度から、所定時刻後に受信される反射波を予測できる。受信信号が予測されれば、生成される共分散行列を予測することができる。そこで、このような処理を行うために、共分散行列予測部26が設けられている。そして、共分散行列予測部26により予測された予測共分散行列は、予測データ記憶部25に保存される。
【0032】
以上のように、実施の形態1によれば、予測共分散行列と実測共分散行列との一致判定処理を行うことにより、2つの行列が一致すると判定される場合には、高分解能処理を行わず、目標物の運動モデルを想定して簡易的に算出した予測結果を採用する。そのため、高分解能処理の回数を削減し、処理の負荷を抑えることができる。一方、予測共分散行列と実測共分散行列とが一致しない場合には、高分解能処理を行うため、精度よく目標の距離や角度を算出することができる。この結果、高分解能処理に要する演算負荷を削減し、演算器およびメモリのリソースを有効に活用することのできる高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法を実現できる。
【0033】
実施の形態2.
本実施の形態2では、先の実施の形態1の構成に対して、リアルタイム処理コントロール部(図示せず)をさらに備えている場合について説明する。このリアルタイム処理コントロール部は、全ての実測共分散行列に基づく高分解能処理部23での高分解能処理が、リアルタイム処理の制限時間以内に処理できない場合には、途中で処理を中断する機能を有する。この場合には、目標物位置予測部24による予測結果を出力することとなる。また、計測開始後1回目の処理では、予測結果が存在しないので、高分解能処理を必ず実行するものとする。
【0034】
さらに、このリアルタイム処理コントロール部は、先の実施の形態1で示した一連の処理をリアルタイム処理の制限時間以内で処理できた場合には、一致判定したことにより高分解能処理が行われなかったピークについても、高分解能処理部23により高分解能処理を行わせるようにする機能を有する。その際、高分解能処理部23は、予測データ記憶部25に保存された予測共分散行列を高分解能処理の入力とする。ただし、この場合にも、高分解能処理が、リアルタイム処理の制限時間以内に処理できない場合には、途中で処理を中断することとなる。
【0035】
以上のように、実施の形態2によれば、先の実施の形態1の効果に加え、リアルタイム処理コントロール機能をさらに備えることにより、リアルタイム処理が可能な範囲内で高分解能処理を実行することで、演算リソースを有効に活用しつつ、リアルタイム処理を実現することができる高分解能信号処理装置および高分解能信号処理方法を実現できる。
【0036】
実施の形態3.
図2は、本発明の実施の形態3における高分解能信号処理装置の構成図である。図1における高分解能信号処理装置は、参照信号発生部10、受信アレーアンテナ13、受信部14、A/D変換器15、時間フーリエ変換部16、空間フーリエ変換部17、ピーク検出部18、共分散行列生成部20、共分散行列一致判定部21、処理選択部22、高分解能処理部23、予測データ記憶部25、共分散行列予測部26、算出結果記憶部27、および追尾処理部28で構成される。さらに、受信部14は、低雑音増幅器14a、バンドパスフィルター14b、ミキサ14cを含んでいる。
【0037】
ここで、参照信号発生部10〜ピーク検出部18は、所望信号成分検出部に相当する。また、高分解能処理部23は、高分解能測角処理部、高分解能測距処理部、および高分解能測速度処理部の総称に相当し、角度、距離、相対速度を高分解能で求める機能を有している。さらに、追尾処理部28は、角度予測部、距離予測部、および速度予測部の総称に相当し、所定時刻の測定結果に基づいて所定時刻後の角度、距離、相対速度といった所望の諸元を予測する機能を有している。
【0038】
次に、図2の構成を有する高分解能信号処理装置の動作について説明する。本実施の形態3では、自機から送信波を放出せずに、到来波を受信する装置に関するものであり、高分解能処理を用いて波の到来角度を算出する装置に関して説明する。
【0039】
受信アレーアンテナ13によって受信された信号は、受信部14内の低雑音増幅器14aによって強度を増幅される。そして、受信信号は、バンドパスフィルター14bで周波数帯域制限される。その後、ミキサ14cにおいて参照信号発生部10の参照信号との混合によりダウンコンバートされ、A/D変換器15でディジタル信号に変換される。
【0040】
ディジタル化された信号は、時間フーリエ変換部16においてデータの時間次元でフーリエ変換され、受信信号の次元は、時間次元から周波数次元に変換される。
【0041】
空間フーリエ変換部17、ピーク検出部18、共分散行列生成部20、共分散行列一致判定部21は、先の実施の形態1で説明したものと同様の処理を行う。
【0042】
処理選択部22は、実測共分散行列と予測共分散行列とが一致すると判定されたピークに対しては、予測データ記憶部25に格納されている予測到来角度を結果として算出結果記憶部27に保存する。また、実測共分散行列と予測共分散行列とが不一致であると判定されたピークに対しては、高分解能処理部23に処理を移行させる。なお、計測開始後1回目の処理では、予測到来角度が存在しないので、高分解能処理部23に処理を移行させる。
【0043】
高分解能処理部23は、共分散行列生成部20で生成された実測共分散行列を入力として高分解能アルゴリズム(MUSICまたはESPRIT)によって信号の到来角度を求め、算出結果記憶部27に保存する。
【0044】
追尾処理部28は、算出結果記憶部27に保存される測角結果を用いた追尾処理によって、所定時刻後の信号到来角度を予測する。そして、追尾処理部28により予測された信号到来角度は、予測データ記憶部25に保存される。
【0045】
共分散行列予測部26は、予測データ記憶部25に保存された予測角度をもとに、所定時刻後の処理によって生成されるであろう共分散行列を予測し、予測データ記憶部25に保存する。
【0046】
以上のように。実施の形態3によれば、測角結果を保存する記憶部を備え、保存されたデータを用いて追尾処理することにより、所定時刻後の角度を予測するので、共分散行列の予測精度を上げることが可能である。
【0047】
なお、上述した実施の形態1〜3において、参照信号発生部10、送信部11、送信アンテナ12、受信アレーアンテナ13、受信部14、A/D変換器15の各構成要素は、電波領域での使用を意識したものとして示した。しかしながら、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、代わりに光や赤外線などのいわゆるカメラや、他の周波数の電磁波観測装置を用いてもよく、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における高分解能信号処理装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態3における高分解能信号処理装置の構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 参照信号発生部、11 送信部、11a 発信器、11b 周波数逓倍器、11c 低雑音増幅器、12 送信アンテナ、13 受信アレーアンテナ、14 受信部、14a 低雑音増幅器、14b バンドパスフィルター、14c ミキサ、15 A/D変換器、16 時間フーリエ変換部、17 空間フーリエ変換部、18 ピーク検出部、19 速度算出部、20 共分散行列生成部、21 共分散行列一致判定部、22 処理選択部、23 高分解能処理部(高分解能測角処理部、高分解能測距処理部、高分解能測速度処理部)、24 目標物位置予測部(角度予測部、距離予測部、および速度予測部)、25 予測データ記憶部、26 共分散行列予測部、27 算出結果記憶部、28 追尾処理部(角度予測部、距離予測部、および速度予測部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出する所望信号成分検出部と、
前記所望信号成分検出部で検出された前記信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成部と、
前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列を入力として高分解能に所望信号の到来角度を算出する高分解能測角処理部と
を備え、高分解能で到来する信号の角度を算出する高分解能信号処理装置であって、
所定時刻における前記所望信号の到来角度に基づいて、所定時刻後における前記所望信号の到来角度を予測する角度予測部と、
前記角度予測部で予測された前記到来角度をもとに前記所定時刻後に前記共分散行列生成部によって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測部と、
所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された共分散行列と、前記所定時刻において前記共分散行列予測部で予測された前記所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定部と、
所定時刻後において、前記共分散行列一致判定部で2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、前記高分解能測角処理部による高分解能処理を行わずに前記角度予測部で予測された前記所定時刻後における前記到来角度を出力し、前記2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、前記所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列に基づいて前記高分解能測角処理部に高分解能処理を行わせることで前記所定時刻後における前記所望信号の到来角度を算出させて出力する処理選択部と
をさらに備えることを特徴とする高分解能信号処理装置。
【請求項2】
受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出する所望信号成分検出部と、
前記所望信号成分検出部で検出された前記信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成部と、
前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列を入力として高分解能に到来する信号の発生源までの距離を算出する高分解能測距処理部と
を備え、高分解能で到来する信号の発生源までの距離を算出する高分解能信号処理装置であって、
所定時刻における前記所望信号の発生源までの距離に基づいて、所定時刻後における所望信号の発生源までの距離を予測する距離予測部と、
前記距離予測部で予測された前記距離をもとに前記所定時刻後に前記共分散行列生成部によって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測部と、
所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された共分散行列と、前記所定時刻において前記共分散行列予測部で予測された前記所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定部と、
所定時刻後において、前記共分散行列一致判定部で2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、前記高分解能測距処理部による高分解能処理を行わずに前記距離予測部で予測された前記所定時刻後における前記所望信号の発生源までの距離を出力し、前記2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、前記所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列に基づいて前記高分解能測距処理部に高分解能処理を行わせることで前記所定時刻後における前記所望信号の発生源までの距離を算出させて出力する処理選択部と
をさらに備えることを特徴とする高分解能信号処理装置。
【請求項3】
受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出する所望信号成分検出部と、
前記所望信号成分検出部で検出された前記信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成部と、
前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列を入力として高分解能に到来する信号の発生源の自機との相対速度を算出する高分解能測速度処理部と
を備え、高分解能で到来する信号の発生源の自機との相対速度を算出する高分解能信号処理装置であって、
所定時刻における前記所望信号の発生源の自機との相対速度に基づいて、所定時刻後における所望信号の発生源の自機との相対速度を予測する速度予測部と、
前記速度予測部で予測された前記相対速度をもとに前記所定時刻後に前記共分散行列生成部によって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測部と、
所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された共分散行列と、前記所定時刻において前記共分散行列予測部で予測された前記所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定部と、
所定時刻後において、前記共分散行列一致判定部で2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、前記高分解能測速度処理部による高分解能処理を行わずに前記速度予測部で予測された前記所定時刻後における前記相対速度を出力し、前記2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、前記所定時刻後において前記共分散行列生成部で生成された前記共分散行列に基づいて前記高分解能測速度処理部に高分解能処理を行わせることで前記所定時刻後における前記所望信号の発生源の自機との相対速度を算出させて出力する処理選択部と
をさらに備えることを特徴とする高分解能信号処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高分解能信号処理装置において、
リアルタイム処理の制限時間以内に前記共分散行列生成部で生成された全ての共分散行列に対して高分解能処理が完了できなかった場合には、処理を途中で打ち切り、一方、前記共分散行列一致判定部で一致判定されたことにより、高分解能処理を行わずに制限時間内に全ての処理が完了した場合には、高分解能処理されなかった共分散行列の高分解能処理を前記リアルタイム処理の制限時間以内の残り時間で行わせるリアルタイム処理コントロール部をさらに備えることを特徴とする高分解能信号処理装置。
【請求項5】
受信信号をフーリエ変換し周波数次元で所望の信号成分を検出し、前記信号成分を用いて共分散行列を生成する共分散行列生成ステップと、
生成された前記共分散行列を入力として高分解能に所望信号の到来角度、到来する信号の発生源までの距離、あるいは到来する信号の発生源の自機との相対速度を算出する高分解能処理ステップと
を備え、高分解能で前記到来角度、前記距離、または前記相対速度を算出する高分解能信号処理方法であって、
所定時刻における前記所望信号の前記到来角度、前記距離、または前記相対速度に基づいて、所定時刻後における前記所望信号の到来角度、距離、または相対速度を予測する予測ステップと、
予測された前記到来角度、前記距離、または前記相対速度をもとに前記所定時刻後に前記共分散行列生成ステップによって生成されるであろう共分散行列を予測する共分散行列予測ステップと、
所定時刻後において前記共分散行列生成ステップで生成された共分散行列と、前記所定時刻において前記共分散行列予測ステップで予測された前記所定時刻後の共分散行列との一致判定を行う共分散行列一致判定ステップと、
所定時刻後において、前記共分散行列一致判定ステップで2つの共分散行列が一致すると判定された場合には、前記高分解能処理ステップによる高分解能処理を行わずに前記予測ステップで予測された前記所定時刻後における前記到来角度、前記距離、または前記相対速度を出力し、前記2つの共分散行列が不一致と判定された場合には、前記所定時刻後において前記共分散行列生成ステップで生成された前記共分散行列に基づいて高分解能処理を行うことで前記所定時刻後における前記所望信号の到来角度、距離、または相対速度を算出し出力する処理選択ステップと
をさらに備えることを特徴とする高分解能信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−66179(P2010−66179A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234124(P2008−234124)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】