説明

高周波スイッチ

【課題】スイッチの操作面前方にて使用者の手や指が接近または横断する移動方向を精度良く識別し、負荷を駆動するスイッチを提供する。
【解決手段】電波ビームを複数の方向へ放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し、検知信号として外部に出力するセンシング11手段と、前記検知信号に基づいて、前記被検知体が前記センシング手段11の前方を横断する移動方向を算出し、識別信号として外部に出力する動作方向識別手段31と、前記識別信号に基づいて、直接または間接的に負荷を駆動するための駆動信号を出力する負荷駆動手段41と、負荷の駆動を操作する操作面52とを有する高周波スイッチであって、複数の方向へ放射される電波ビームは全て、前記操作面52に対し鉛直方向から所定の方向へ傾けて放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が負荷を駆動するためのスイッチ技術に関し、特に、電波ビームを利用したスイッチ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋込型の配線器具として使用されるスイッチにおいて、電波ビームを利用したドップラーセンサを内蔵し、スイッチに接近する使用者の手や指の動きを検出して負荷を駆動するスイッチが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−164774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術記載のスイッチは、内蔵したドップラーセンサによりスイッチ前方へ電波ビームを放射し、スイッチの操作面に接近する使用者の手や指の動きに対し出力されたアナログ的な検知信号に基づいて負荷を駆動制御している。
しかしながら、スイッチ操作は用途に応じて様々であり、機械的に接点を接触させるスイッチについても押しボタン式とスライド式があるように使用者の手や指がセンサに接近したことを検知し負荷を駆動制御するスイッチだけでは全ての用途に対して対応できない。例えば、水栓機器においては上下左右にレバーを操作し水栓から吐水される水の温度や流量を切り替えているが、使用者が慣れ親しんだ操作をスイッチ操作で行おうとした場合、使用者の手や指がセンサ前方を横断する移動方向を識別し負荷を駆動する必要がある。
一方、被検知体の移動速度が一定のときドップラーセンサから出力される検知信号について、センサ前方から被検知体が接近する動作とセンサ前方を被検知体が横断する動作とを比較したとき、前者は、常に同じ周波数の検知信号が出力され、被検知体の移動速度が速いほど周波数が高く、逆に被検知体の動きが遅くなり停止状態に近づくほど周波数が低い検知信号が出力される。検知信号の振幅電圧は周波数の高低に依存し、周波数が高いと大きくなり周波数が低いと小さくなる。しかし、後者は図12に示すように被検知体の移動速度に関係なくセンサの中心に近づくほど低い周波数の検知信号が出力されるため、被検知体がセンサ前方を横断する移動速度が速くても、センサの中心部では周波数が極端に低い検知信号が出力される。
従って、電波ビームが放射される放射面に対し鉛直方向に電波ビームを放射するドップラーセンサを略平坦な操作面の背後に複数、並べて配置し、操作面に対し鉛直方向に複数の電波ビームを切り替えながら放射するスイッチだと、各ドップラーセンサから出力される検知信号の周波数や電圧振幅値に基づいて、スイッチ前方における被検知体が横断する移動方向を、正確に識別することは困難であり、誤検知により使用者が意図しない負荷が駆動する可能性がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、スイッチの操作面前方にて使用者の手や指が接近または横断する移動方向を精度良く識別し、負荷を駆動するスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、電波ビームを複数の方向へ放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し、検知信号として外部に出力するセンシング手段と、前記検知信号に基づいて、前記被検知体が前記センシング手段の前方を横断する移動方向を算出し、識別信号として外部に出力する動作方向識別手段と、前記識別信号に基づいて、直接または間接的に負荷を駆動するための駆動信号を出力する負荷駆動手段と、負荷の駆動を操作する操作面とを有する高周波スイッチであって、複数の方向へ放射される電波ビームは全て、前記操作面に対し鉛直方向から所定の方向へ傾けて放射されることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明は、複数の方向へ放射される電波ビームは、前記操作面の中心点を基準とし略対称となる方向に放射されることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために請求項3記載の発明は、前記センシング手段は、電波ビームを繰り返し、複数の方向へ所定の切替順序および切替速度にて放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し順次、検知信号として外部に出力するドップラーセンサであることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために請求項4記載の発明は、前記センシング手段は、送信波を発生する発振器と、前記送信波が直接、供給される給電素子と、該給電素子が励振することにより励起される複数の無給電素子と、複数の前記無給電素子に各々、接続され高周波信号の通過または遮断を選択できる複数の切替スイッチと、複数の前記切替スイッチの切替順序および切替速度を制御する電波方向制御回路と、前記送信波と前方に放射された前記送信波が前記被検知体に衝突し反射して戻ってきた反射波との周波数の差分を抽出する検波器とを備え、複数の前記無給電素子は、前記給電素子を中心として略対称な位置に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチの操作面前方にて使用者の手や指が接近または横断する移動方向を精度良く識別し、負荷を駆動するスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明における高周波スイッチについて説明する。
尚、以下実施例における図面の基板の厚みやパターン寸法は説明の都合上、実際の形状とは異なる。
図1は、本発明における高周波スイッチの第1実施形態を示す、ブロック図である。
【0012】
本発明の高周波スイッチは、検知エリア内における手や指、或いは足等の被検知体の動きを認識するためのセンシング手段として、電波ビームを繰り返し、複数の方向へ所定の切替順序および切替速度にて放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し順次、検知信号として外部に出力するドップラーセンサ11と、ドップラーセンサ11から出力された検知信号に基づいて、被検知体がドップラーセンサ11の前方を横断する移動方向を算出し、識別信号として外部に出力する動作方向識別手段31と、動作方向識別手段31から出力された識別信号に基づいて、直接または間接的に負荷を駆動するための駆動信号を出力する負荷駆動手段41とを備え、ドップラーセンサ11から電波ビームが放射される放射面の前方に所定の間隔を設け、且つ放射面と平行に図示しない操作面52が配置される。
【0013】
ドップラーセンサ11は、電波ビームとして前方に放射される送信波を発生する発振器12と、送信波が直接、供給される給電素子2と、給電素子2が励振することにより励起される複数の無給電素子3a、3bと、複数の無給電素子3a、3bに各々、接続され高周波信号の通過または遮断を選択できる複数の切替スイッチ8a、8bと、複数の切替スイッチ8a、8bの切替順序および切替速度を制御する電波方向制御回路21と、送信波と前方に放射された送信波が被検知体に衝突し反射して戻ってきた反射波との周波数の差分を抽出する検波器14とを備え、複数の無給電素子3a、3bに各々、接続された切替スイッチ8a、8bを適宜、切り替えることにより、電波ビームを複数の方向へ放射することができる。また、ドップラーセンサ11は電波ビームを利用しているため陶器や樹脂を透過する性質を有しているため、放射面の前方に配置される図示しない操作面52の材質が陶器や樹脂であれば、ほぼ同じ電波ビームの放射形態にて前方に電波ビームを放射できる。また、本発明の高周波スイッチは非接触にて操作が可能なためドップラーセンサ11の放射面自体を操作面52として使用することもできる。以下、実施例において操作面52について説明を省略するが、電波ビームの放射面は操作面52の背後にあり、電波ビームの放射形態に殆ど影響を与えないことを前提としている。
【0014】
動作方向識別手段31は、複数の方向へ電波ビームが放射され、1巡する毎に、ドップラーセンサ11から出力された検知信号に基づいて、各放射方向における被検知体からの反射強度の順位を算出し、順位信号として外部に出力する第1演算部32と、順位信号に基づいて、被検知体の移動方向を算出し、識別信号として外部に出力する第2演算部34とを備え、検知エリア内における被検知体の移動方向を識別することができる。
【0015】
負荷駆動手段41は、予め識別信号に対し動作させる負荷を設定する負荷設定手段32と、動作方向識別手段31から出力された識別信号と負荷設定手段32の設定に基づいて駆動信号を出力する負荷駆動回路33とを備え、検知エリア内における被検知体の移動方向に応じて、負荷を駆動するための駆動信号を有線または無線にて出力することができる。
【0016】
図2は、本発明における高周波スイッチの第1実施形態を示す、(a)正面図および(b)側面図である。
図2に示す高周波スイッチは、ドップラーセンサ11と動作方向識別手段31とを一体化して備えており、基板1aの一方の表面には発振器12と検波器14と検知信号を増幅する図示しない信号増幅回路を配置し、金属ケース15によりシールドしている。発振器12(電界効果トランジスタと誘電体共振器を利用し送信波を生成)にて生成された送信波は給電孔5を介し基板1aの他方の表面に形成された給電素子2に供給される。給電孔5はインピーダンスが50Ωとなる給電素子2の内部(L1<L2)に設けられているため、給電素子2のみが基板1a表面に形成された場合、給電素子2から放射される電波ビームは基板1a面(以下、放射面)に対し鉛直方向、且つ励振方向側の直径が長い楕円形状として前方に放射される。給電素子2は使用周波数の約半波長(λg/2:λg…基板1aを伝搬する高周波信号(送信波)の波長である。また、真空中における高周波信号の電波の波長をλ、基板1aの比誘電率をεrとすると、λ=εr1/2・λgである。)の長さLを少なくとも一辺にもつ矩形状の薄膜電極である。
基板1aの他方の表面には送信波が直接、供給される給電素子2と、給電素子2にて励起される給電素子2と略同一形状の複数の無給電素子3a、3bが給電素子2の励振方向と直交する端辺と対向する位置に各々、所定の間隔を空けて、給電素子2を基準とし略対称な位置に形成され、各無給電素子3a、3bの励振方向と直交し、且つ給電素子2と隣接しない端辺の略中央部には薄膜の伝送線路6a、6bの片端が各々、接続されている。そして、伝送線路6a、6bの他端には、基板1bに備えた電波方向制御回路21から制御線9a、9bに所定の電圧を印加することにより高周波信号(送信波)を通過または遮断する切替スイッチ8a、8bの入力端が各々、独立して接続されている。切替スイッチ8a、8bの出力端は、基板1a内部の略全面に形成された高周波信号のグランドとして作用する接地電極4に導通孔7a、7bを介し各々、接続されている。切替スイッチ8a、8bは、使用周波数において高周波信号を通過または遮断できる機能を保有していれば良く、ダイオードや電界効果トランジスタやバイポーラトランジスタ、トランジスタ等を複合し高機能化した半導体スイッチ(MMIC)、MEMSスイッチ等を使用できる。例えば、切替スイッチ8a、8bに電界効果トランジスタを用いた場合、各ドレイン端子を入力端とし所定の長さに設定された伝送線路6a、6bの片端に、各ソース端子を出力端として接地電極4に各々接続し、各ゲート端子を制御線9a、9bに接続する。そして、電波方向制御回路21からリード線16a、16bを介し制御線9a、9bに一定の直流電圧を印加すれば、各切替スイッチ8a、8bの入力端から出力端へ高周波信号を通過または遮断し、切替スイッチ8a、8bが一方の状態のときは各無給電素子3a、3bを導波器として、切替スイッチ8a、8bが他方の状態のときは各無給電素子3a、3bを反射器として各々、独立して作用させることができる。本発明の高周波スイッチは、無給電素子3aが導波器として作用するとき無給電素子3bは反射器として作用し、無給電素子3bが導波器として作用するとき無給電素子3aは反射器として作用するよう、電波方向制御回路21にて制御される。従って、無給電素子3a、3bは給電素子と略同形状ではあるが、伝送線路6a、6bの長さを所定の長さに設定し切替スイッチ8a、8bを適宜、切り替えることにより無給電素子3a、3bの何れか一方を導波器、他方を反射器として作用させることができ、放射面に対し鉛直方向から所定の放射方向φ1(図中、上方向)と、放射方向φ2(図中、下方向)に指向性利得が比較的高い、電波ビームを放射することができ、被検知体の動きが小さくても比較的高い電圧振幅値を得ることができ、移動方向を識別することができる。さらに、給電素子2を中心として略対称な位置に無給電素子3a、3bを配置しているため、電波ビームの放射方向φ1と放射方向φ2のゲインは略同一となるため、基板1bに備えた動作方向識別手段31にて各放射方向における被検知体からの反射強度の順位を算出すれば、被検知体の移動方向を容易に識別することが可能となる。給電素子2の略中心部を基準とし放射面に対し鉛直方向から傾いて放射される電波ビームの放射方向φ1、放射方向φ2とは、電波ビームの最大強度放射方向を指し、θ1およびθ2は放射面に対し鉛直方向から電波ビームが傾いている角度を指す。電波ビームの放射特性を考慮すると、θ1およびθ2が±5°の範囲は放射面に対し鉛直方向に電波ビームが放射されていると見なすことができる。
【0017】
基板1bに備えた電波方向制御回路21は、切替スイッチ8a、8bの切替順序および切替速度を制御するための図示しないCPU(中央演算処理装置)と図示しない切替駆動回路とから構成され、CPUには予め切替スイッチ8a、8bの切替順序および切替速度に応じた切替信号が制御線9a、9bに出力されるようプログラミングされている。
電波ビームを複数の方向に切り替えて放射し、被検知体が動作する方向に応じて複数の負荷を駆動する複合機能(例えば、水栓から水または湯を吐水させる、吐水する流量や温度を切替る)のスイッチとして使用する場合、電波ビームを複数の方向に切り替えて放射すると、電波ビームの同一放射方向においてドップラーセンサ11から連続的に検知信号を得ることができない。また、ドップラーセンサ11から放射される電波ビームは、赤外線を利用したセンサと比較すると検知範囲(半値角)が広いため、例えば、放射面の中心を基準として対称となる2方向に電波ビームを切り替えて放射させたとき、最大強度放射方向は対称となっても電波ビームが重複する範囲が発生する。さらに、メインビームの放射方向とは略対称となる方向にサイドローブ(不要放射)が発生する。その結果、一方の電波ビーム放射方向側にて被検知体が動作していたとしても、2つの電波ビームの放射方向にて被検知体が動作している検知信号が得られ、ドップラーセンサから被検知体までの距離が短くなるほど、検知信号の周波数だけで被検知体が動作する方向を識別すると誤検知する可能性が高くなる。従って、各放射方向における検知信号の周波数から被検知体の動く方向を精度良く識別することは困難である。
【0018】
そこで、切替スイッチ8a、8bを適宜、切り替え電波ビームの放射方向を制御する際、電波ビームの切替速度は1方向における電波ビームの放射時間により決定するが、使用者が負荷を駆動する意思があることを認識するため予め設定された被検知体が移動する最低移動速度と、ドップラーセンサの使用周波数に基づいて電波ビームの放射時間を設定することが望ましい。そうすれば、検知エリア内にて被検知体が動作する方向を各放射方向毎の電圧振幅値を比較することで容易に判別することができる。
特に、最低移動速度と使用周波数とから算出される検知信号の半周期から1周期にに要する時間に基づいて電波ビームの放射時間を設定すれば、小さい動き(動作時間が短い)でも精度良く判別できる。
【0019】
また、電波ビームを3方向や4方向と多数の方向に切り替えて放射し、被検知体が動作する方向を識別したい場合、各放射方向における放射時間が長くなると複数の方向へ電波ビームを放射し1巡したときの時間が長くなるため、被検知体の移動速度が速くなる、被検知体の移動距離が短くなるほど、被検知体が動作する方向を識別することが困難となる。従って、使用者が負荷を駆動する意思があることを認識するため予め設定された被検知体が移動する移動速度と移動距離から算出された移動時間を、複数の方向へ切替えて放射される電波ビームの放射方向数で割った時間に基づいて電波ビームの放射時間を設定すれば、被検知体の移動速度が速くなっても検知エリア内で被検知体が動作する方向を各放射方向毎の電圧振幅値を比較することで容易に判別することができる。
【0020】
被検知体の移動速度に対してドップラーセンサから出力される検知信号の周期(周波数)は、V=C÷(2×Fs×T)より決定される。Vは被検知体の移動速度[メートル/秒]、Cは光速[300×10メートル/秒]、Fsは送信波の周波数[ヘルツ]、Tは検知信号の周期[秒]である。図3に示すグラフは、送信波の周波数が10.5GHz(移動体検知センサとして屋内での使用が国内で認められている周波数)と、24.0GHz(移動体検知センサとして屋内・屋外での使用が国内で認められている周波数)における被検知体の移動速度とドップラーセンサから出力される検知信号の周期との関係を示しているが、送信波の周波数が高くなるほど移動速度に対して検知信号の周期が短くなることがわかる。即ち、電波ビームを複数の方向へ切り替えて放射し被検知体の移動方向を検出する場合、送信波の周波数を高くするほど、被検知体の移動速度や移動距離の影響を受けなくなる。
【0021】
電波方向制御回路21から常時、切替信号を出力する必要は無く、検知エリア内に被検知体が進入したことをドップラーセンサ11または別の検知手段により検知してから切替信号の出力を開始しても良い。そうすれば、省電力にて移動方向を識別できるスイッチを提供できる。
【0022】
基板1bに備えた動作方向識別手段31は、ドップラーセンサ11から出力された検知信号を増幅する図示しない信号増幅回路と信号増幅回路にて増幅された検知信号に基づいて、検知エリア内における被検知体の移動方向を識別し負荷駆動手段に識別信号を出力するためのCPUとから構成されている。
ドップラーセンサ11から出力された検知信号を増幅する際、図示しない信号増幅回路(オペアンプ等)の増幅率を大きくし過ぎると検知信号の電圧ピーク値が電源電圧範囲内にて振り切れ、検知信号がサイン波から矩形波に変化してしまう。そうすると、各放射方向における検知信号の周波数から被検知体の動く方向を精度良く識別することが困難となる。従って、図4に示すように被検知体が検知エリアに存在しないときの検知信号の電圧値レベルは、被検知体が検知エリアの前方にて移動状態にあるときの検知信号がスイングする最大電圧範囲Vsの略中央値V0に設定することが望ましい。そうすれば、各放射方向における検知信号の電圧振幅値から被検知体の動く方向を精度良く識別することができる。
【0023】
増幅された検知信号は図示しないCPUのアナログ電圧をデジタル電圧に変換する機能を有したAD変換機能ポートに入力される。検知エリアにおける被検知体の連続した動きに対し、複数の方向へ電波ビームを放射しドップラーセンサ11から出力された検知信号の電圧振幅値が所定の閾値を超えたとき、第1演算部32にて電波ビームの放射方向が1巡する毎に、検知信号の電圧振幅値に基づいて、各放射方向における被検知体からの反射強度の比較を開始し、順位を算出する。
被検知体が手や指などの丸みを帯びた立体形状の場合、ドップラーセンサ11から出力される検知信号は必ずしも電圧のプラス方向側とマイナス方向側に対称的なサイン波形として出力されない。従って、電波ビームの各放射方向毎に電圧値を比較する場合は、電圧振幅値で比較することが好ましい。さらに、検知信号の電圧振幅値は移動速度(周波数)に依存し増加減することを考慮すると、図4に示すように検知信号の略中央値をV0とすると、V0を基準として電圧振幅値を算出することが望ましい。V0よりも高い電圧にてピークが得られた点をVp、V0よりも低い電圧にてピークが得られた点をVbとすると、振幅電圧値は(Vp−V0)−(V0−Vb)から算出すれば良い。そうすれば、電波ビームの放射方向が1巡する毎に各放射方向における被検知体からの反射強度の比較を行い、検知エリア内にて被検知体が動作する方向を容易に認識することができる。また、VpがV0よりも低い場合やVbがV0よりも高い場合、VpやVbはV0に置換して電圧振幅値を算出すれば、周波数が低くても被検知体の動きが連続であるか否かを容易に認識することができる。
【0024】
複数の方向へ電波ビームを放射しドップラーセンサ11から出力された検知信号の電圧振幅値が所定の閾値を超えてから、全ての放射方向において検知信号の電圧振幅値が所定の閾値を下回るまでの間、第1演算部にて算出された順位の算出結果を記憶手段34に連続的に記憶する。このとき、反射強度が最も高い放射方向、検知エリア内にて被検知体が動作する方向となる。記憶手段34として、CPUに内蔵しているRAM(Random Access Memory)もしくはCPUとは別に配置し高速動作でデータの読み書きを電気的に行なうRAMを使用することができるが、電波ビームを放射し1巡する毎に順位を算出し、その結果だけを記憶手段34に記憶するため、記憶容量が少なくCPUに内蔵されたRAMで対応できる。従って、高周波スイッチの製造コスト削減、コンパクト化を図ることができる。
【0025】
複数の方向へ電波ビームを放射し1巡したとき、ドップラーセンサ11から出力された検知信号のうち少なくとも1つの電圧振幅値が所定の閾値を超えたとき、反射強度の最も高い放射方向がドップラーセンサ11の放射面、即ち操作面52に被検知体が接近する方向である。例えば、図2に示す高周波スイッチにおいて電波ビームを放射方向φ1と放射方向φ2へと順次、切り替えて繰り返し放射しているとき、放射方向φ1にて検知信号の電圧振幅値が所定の閾値を超え、且つ被検知体からの反射強度が放射方向φ2よりも高い場合、放射方向φ1が被検知体の接近する方向となる。従って、第2演算部33では放射方向φ1を基準として、記憶手段に記憶された放射方向φ1と放射方向φ2の順位の変化から、被検知体の移動方向を容易に識別することができる。ここでいう、被検知体の移動方向とは、高周波スイッチの操作面52に対し被検知体が略平行に横断する移動方向、さらには操作面52に対し被検知体が接近する移動方向とを指し、即ち、被検知体が操作面52に対し上方向から下方向に移動したのか、下方向から上方向に移動したのか、それとも被検知体が操作面52に対し上方向から接近してきただけなのか、下方向から接近してきただけなのか、を識別することができる。
そして、第2演算部33から出力された識別信号に基づいて、負荷駆動手段41から直接または間接的に負荷を駆動するための駆動信号を有線または無線にて出力する。
【0026】
また、被検知体の動きが操作面52に対し接近しているのか、それとも離遠しているのかを識別したい場合、複数の検波器4a、4bを備え、複数の検知信号をドップラセンサ11から取り出せば、同一方向においてもその位相関係により被検知体が操作面52に対して接近しているのか、それとも離遠しているのかを容易に識別することができる。
また、図2に示す高周波スイッチは、電波ビームを上下の2方向に切替えて放射しているため上下方向の1軸だけの識別だが、電波ビームを上下左右の4方向に切替えて放射すれば、2軸にて被検知体の移動方向を識別できる。
【0027】
以上、本発明の高周波スイッチは、スイッチの操作面前方にて使用者の手や指が接近または横断する移動方向を精度良く識別し、負荷を駆動するスイッチを提供することができる。
また、使用者が非接触にて操作できることは勿論だが、使用者の手や指が操作面52に触れていても、その移動方向を識別し負荷を駆動することができる。
【0028】
本実施例のドップラーセンサ11は、給電素子2と無給電素子3a、3bから放射される電波ビームを空間にて結合させ電波ビームを傾ける、いわゆる空間ビーム形成方式を採用しているが、基板1aの他方の表面(放射面)に電力均等分配回路となる伝送線路にて互いに接続された複数の給電素子を形成し、各給電素子の給電点に接続される伝送線路の長さを切替スイッチ(SPDTスイッチ等)により切替えて電波ビームを傾ける、いわゆるフェーズドアレイ方式を採用することもできる。但し、電波ビームの制御性や量産性(製造コスト)等を考慮すると、空間ビーム形成方式を採用したドップラーセンサの方が好ましい。また、空間ビーム形成方式は、比較的電波ビームの半値角が広い状態で放射面に対し鉛直方向から所定の方向へ傾けることができるため、手や指の横断する動きをセンシングする場合、電波ビームの放射方向をレーダのように細かく切り替えなくても簡単な切替えにて手や指の連続した動きを検出することができる。
【0029】
また、給電素子と複数の無給電素子の形状は採用する偏波方式により任意に決定すれば良く、例えば、垂直偏波を採用する場合は略正方形状、円偏波を利用する場合は略正方形の角部を旋回方向に応じてカットすれば良い。
【0030】
本実施例のドップラーセンサ11は、放射面側に複数の切替スイッチ8a、8bを配置したが、放射面とは反対側に配置しても良い。発振器12や検波器14の省スペース化もしくは小型モジュール化を図り、切替スイッチ8a、8bを同一面に配置すれば、放射面に立体的に突出する部品が無くなりフラットにすることができるため、操作面52の背後に設置しやすく製造時の取扱いが容易となる。
【0031】
本実施例のドップラーセンサ11は、基板1a内部に接地電極4を形成した積層基板1aの一方の表面にアンテナ13として作用する薄膜電極と、他方の表面に発振器12および検波器14を配置しているが、アンテナ13として作用する基板と、発振器12および検波器14を配置する基板とを別体にしても良い。そうすれば、アンテナ13の基板1を取り替えるだけで容易に検知エリアを変更することができる。
【0032】
本発明の高周波スイッチは、ドップラーセンサ11と電波方向制御回路21と動作方向識別手段31とを一体化して備えているため、電波方向制御回路21と動作方向識別手段31の説明にて前述したCPUを兼用することができる。また、高周波スイッチに印加する電源電圧および負荷駆動手段41から出力される駆動信号用の配線が高周波スイッチから外部に引き出されるだけなので、余計な配線(例えば、切替スイッチを切り替えるための配線)を外部に引き出す必要が無く取り扱いが容易である。
【0033】
本発明の高周波スイッチは、電波ビームを複数の方向に切替えて放射し被検知体が接近または横断する移動方向を識別し、負荷を駆動するスイッチだが、図11−(a)に示すように放射面52に対し鉛直方向に電波ビームを放射する複数のドップラーセンサ11a、11bを操作面52の背後に所定の角度だけ傾けて配置した高周波スイッチ、図11−(b)に示すように放射面52に対し鉛直方向から所定の方向に電波ビームを傾けて放射する複数のドップラーセンサ11a、11bを操作面52の背後に平行に配置した高周波スイッチ等、操作面に対し複数の方向へ放射される電波ビームが全て、鉛直方向から所定の方向に傾けて放射されていれば、操作面の前方にて被検知体が横断する方向を識別することができる。また、複数の方向へ放射される電波ビームが略対称となる方向に放射されると、さらに精度良く横断する方向を識別し、負荷を駆動することができる。
【0034】
本実施例では、ドップラーセンサ11から出力された検知信号を比較し易いように、信号を増幅する信号増幅回路、必要な周波数成分のみを抽出するフィルタ回路について詳細は記載していないが、必要に応じてドップラーセンサ11や動作方向識別手段31に備えれば良い。
【0035】
高周波スイッチの操作面52の前方を被検知体が一定の移動速度で横断する動作に対しドップラーセンサ11から出力される検知信号は図12に示すように被検知体の移動速度に関係なく操作面52の中心に近づくほど低い周波数の検知信号が出力される現象が生じる。また、操作面52の中心部前方付近は電波ビームが重複する領域でもあるため、この領域を被検知体の移動方向の算出に使用すると誤検知する可能性がある。従って、被検知体が操作面52の前方を横断する方向を識別するスイッチとして、動作の始点または動作の終点と認識する検知領域を操作面52の中心に設定することは好ましくない。
【0036】
電波ビームを複数の方向へ放射したとき、複数の電波ビームが重複する領域を連続動作検知エリア、それ以外の領域を位置検知エリアとすると、図2に示す給電素子2を中心として対称な方向に電波ビームを放射する高周波スイッチの場合、電波ビームが重複しない領域(図中白抜きの部分)、ここでいう位置検知エリア1または位置検知エリア2の何れか一方を被検知体の動作の始点とし、他方を被検知他体の動作の終点とすることが望ましい。一方、電波ビームが重複する領域(図中黒塗りの領域)、ここでいう連続動作検知エリアは、操作面52前方の被検知体の動きが連続であることを認識できる。給電素子2の前方、即ち操作面52の中心部前方の領域を横断する被検知体の動きが連続した動きであれば、移動速度に関係なく操作面52前方を被検知体が横断する動作して容易に識別し、負荷を駆動することができる。
【0037】
位置検知エリアと連続動作検知エリアの設定は、用途や操作仕様に応じて決定すれば良く、位置検知エリアは検知強度が第一の閾値以上の領域であるとすると、連続動作検知エリアは、検知強度が第一の閾値以下で、且つ第二の閾値以上とする。ここでいう検知強度とは、赤外線や電波を正面に放射する強度、または赤外線や電波を正面に放射し被検知体に衝突し反射して戻ってくる反射強度(反射電力)を指す。本実施例では、電波ビームを複数の方向に切替えて放射し被検知体の移動方向を識別する高周波スイッチを例に挙げて説明するが、放射面に対し鉛直方向に電波ビームを放射する複数のドップラーセンサを操作面の背後に所定の角度だけ傾けて配置した高周波スイッチ、放射面に対し鉛直方向から所定の方向に電波ビームを傾けて放射する複数のドップラーセンサを操作面の背後に平行に配置した高周波スイッチ、あるいは赤外線を前方に照射し被検知体に衝突し戻ってきた反射電力により被検知体の有無を検出する複数の赤外線センサを操作面の背後に平行に配置したスイッチ、前方に存在する被検知体の熱により被検知体の有無を検出する複数の焦電センサを操作面の背後に平行に配置したスイッチ等、スイッチの操作面前方にて被検知体が接近または横断する移動方向を識別して負荷を駆動するスイッチ装置に適用することができる。
【0038】
例えば、電波ビームを対称な2方向へ切り替えて放射し被検知体に衝突し反射して戻ってくる反射強度で位置検知エリアと連続動作検知エリアを設定する場合、反射強度が第一の閾値以上のときを『1』、第一の閾値以下で、且つ第二の閾値以上のときを『2』、第二の閾値以下のときを『0』とし、電波ビームの放射方向毎に検知信号の反射強度(電圧振幅値)の変化(放射方向φ1,放射方向φ2)として取得したとき、(1,0)⇒(1,2)⇒(2,2)⇒(2,1)⇒(0,1)と、必ず(2,2)または(2,0)または(0,2)の何れか1つが取得できるよう第1閾値と第2閾値を設定すれば、複数の位置検知エリアが重複する領域に連続動作検知エリアを設定することができる。連続動作検知エリアは検知信号の電圧振幅値が小さくなるため、移動方向の判定に使用すると誤検知する可能性があるため、連続動作検知エリアのみの検知情報、前述した例でいうと、(2,2)または(2,0)または(0,2)の何れかが、検知エリア内にて動作する被検知体の動きに対して、最初または最後に得られた場合は駆動信号を出力しないことが望ましい。
【0039】
図5は、本発明における高周波スイッチの第2実施形態を示す、正面図である。
以下、前述した実施例と重複する部分の記載については説明を省略する。
図5に示す高周波スイッチは、図2に示した高周波スイッチに対し、ドップラーセンサ11に備えた無給電素子3a、3bの配置が異なる。基板1aの他方の表面には送信波が直接、供給される給電素子2と、給電素子2にて励起される給電素子2と略同一形状の複数の無給電素子3a、3bが給電素子2の励振方向と平行する端辺と対向する位置に各々、所定の間隔を空けて、給電素子2を基準とし略対称な位置に形成されている。複数の切替スイッチ8a、8bを適宜、切り替え無給電素子3a、3bの何れか一方を導波器、他方を反射器として作用させることで、電波ビームを放射面に対し鉛直方向から所定の放射方向φ3(図中、左方向)と、所定の放射方向φ4(図中、右方向)に切替えて放射することができる。放射方向φ3、φ4に放射される電波ビームは指向性利得に優れ、且つ半値角が比較的広いため、被検知体の動きが励振方向側の幅方向でバラついても比較的高い電圧振幅値を得ることができる。
【0040】
図6は、図2に示した高周波スイッチと図5で示した高周波スイッチについて電波ビームの最大強度放射方向を比較した上面視図である。いずれも電波ビームは操作面52に対し鉛直方向から傾いて放射されているが、図2に示した高周波スイッチの方が大きく傾いている(放射方向φ1、放射方向φ2)。これは給電素子2に対して複数の無給電素子3a、3bが配置される場所に関係する。給電素子のみが基板表面に形成された場合、給電素子から放射される電波ビームは放射面に対し鉛直方向に放射される。その放射形状は励振方向側の直径が長い楕円形状となり、励振方向と平行する方向の半値角は励振方向と直交する方向の半値角よりも広い。この電波ビームの放射形状が基準となり、給電素子2の周囲に配置された複数の無給電素子3a、3bの励振状態を切り替えて電波ビームを傾けているため、図2に示した高周波スイッチの方が大きく傾くことになる。
高周波スイッチの操作面52対し接近する被検知体の動きを検知する場合、図5に示した高周波スイッチの方が傾き角度が少ないため、使用者が操作面52に指や手を接近させる自然な動きに対応し負荷を駆動できる。逆に、図2に示した高周波スイッチは操作面52の前方にて使用者が手や指を横断させる自然な動きに対応し負荷を駆動できる。
【0041】
図7は、本発明における高周波スイッチの第3実施形態を示す、正面図である。図8は、同、タイミングチャートである。
図7に示す高周波スイッチは、図2に示した高周波スイッチに対し、ドップラーセンサ11に備えたアンテナ13が異なる。基板1aの他方の表面には給電素子2を中心として給電素子2の端辺と各無給電素子3a〜3dの端辺の一部とが対向するよう斜め方向、且つ対称な位置に複数の無給電素子3a〜3dが形成されている。各無給電素子3a〜3dに接続された伝送線路6a〜6dの長さを調節し、切替スイッチ8a〜8bの状態を適宜、切り替えたときに各無給電素子3a〜3dは独立して導波器またはゲインが0dBと殆ど電波ビームが放射されない反射器として作用する。ここでは図示しない電波方向制御回路21により、無給電素子3a、3bを導波器、無給電素子3c、3dを反射器として作用させ電波ビームをφ1放射方向(図中左方向)へ、無給電素子3b、3cを導波器、無給電素子3a、3dを反射器として作用させ電波ビームをφ2放射方向(図中下方向)へ、無給電素子3c、3dを導波器、無給電素子3a、3bを反射器として作用させ電波ビームをφ3放射方向(図中右方向)へ、無給電素子3a、3dを導波器、無給電素子3b、3cを反射器として作用させ電波ビームをφ4放射方向(図中上方向)へ、電波ビームを順次、切替えて放射する。このとき、φ1放射方向とφ3放射方向とが略対称、φ2放射方向とφ4放射方向とが略対称な方向となる。
【0042】
図8は、図7に示した高周波スイッチの前方における被被検知体の動きに対し、ドップラーセンサ11から出力された検知信号に基づいて、動作方向識別手段にて移動方向を識別するタイミングチャートである。
高周波スイッチの前方から被検知体が接近したときドップラーセンサ11から出力された検知信号aに対し、動作方向識別手段に備えた第1演算部では検知信号aの電圧振幅値が所定の閾値を超えてから下回るまでの間、電波ビームが1巡する毎に、被検知体からの反射強度(電圧振幅値)の大きさに基づき順位を算出している。そして、第2演算部では最初(動作の始点)となる(n+1)巡目に被検知体からの反射強度が最も大きかったφ1放射方向を基準として、(n+2)巡目、(n+3)巡目は被検知体の動きが連続であることを認識し、最後(動作の終点)となった(n+4)巡目にφ1放射方向と、略対称な放射方向となるφ3放射方向とで被検知体からの反射強度を比較し、反射強度の大きい放射方向がφ1放射方向であることから、被検知体は図中左方向側から高周波スイッチに接近したが前方を横断するまでには至らなかったことを識別する。
同様に、高周波スイッチの前方を被検知体が横断したときドップラーセンサ11から出力された検知信号bに対し、第1演算部で順位を算出して第2演算部で最初となる(n+1)巡目に被検知体からの反射強度が最も大きかったφ1放射方向を基準として、最後となった(n+4)巡目にφ1放射方向と、略対称な放射方向となるφ3放射方向とで被検知体からの反射強度を比較し、反射強度の大きい放射方向がφ3放射方向であることから、被検知体は図中左方向側から図中右方向側へ高周波スイッチの前方を横断したことを識別する。
また、(n+2)巡目と(n+3)巡目で、φ1放射方向とφ3放射方向にて被検知体からの反射強度の大きさが反転するが、2つの放射方向にて反射強度が所定の閾値(段落0037にて前述した第1閾値以上)以上であれば、この時点で被検知体は図中左方向側から図中右方向側へ高周波スイッチの前方を横断したことを識別することも可能である。
このように第2演算部にて識別された移動方向に基づいて、負荷駆動手段31から駆動信号が出力される。
【0043】
高周波スイッチの操作面に被検知体が接近する方向を識別し、被検知体が接近する方向に応じて複数の負荷を駆動する(例えば、水栓から水または湯を吐水させる)場合、例えば、左右方向に電波ビームを放射する高周波スイッチの操作面に対し、左方向に放射される電波ビームの最大強度放射方向と対向するように左手を接近させる、右方向に放射される電波ビームの最大強度放射方向と対向するように右手を接近させれば、誤検知することなく接近方向を識別することができる。しかしながら、左方向に放射される電波ビームに対して右手を接近させようとすると、右方向に放射される電波ビームと交錯する状態が生じるため、検知エリア内に進入した方向だけで接近方向を識別しようとすると誤検知する可能性がある。従って、正確に接近方向を検出しようとすると、特に操作面から被検知体までの距離が近い場合、操作面前方に接近する手の動きと操作面前方を横断する手の動きとを識別する必要がある。
本発明によれば、操作面の前方から接近する被検知体の動きと操作面の前方を横断する被検知体の動きとを識別することができるため、手の差し出す方向に影響を受けず、操作面に接近する手の接近方向を精度良く識別し、負荷を駆動することができる。
【0044】
本発明の高周波スイッチは、スイッチの操作面前方にて被検知体が接近または横断する移動方向を精度良く識別し負荷を駆動することができるが、動作方向識別手段31は被検知体の移動方向に対し識別した結果を全て識別信号として出力する必要は無く、被検知体の移動方向に対し予め動作する負荷を設定する負荷設定手段42の設定状態に応じて必要な識別信号だけを出力すれば良い。
また、負荷設定手段42においても、動作方向識別手段31から出力された識別信号に対して必ず駆動信号を出力する必要は無く、負荷の駆動状態に応じて駆動信号を出力すれば良い。
また、負荷設定手段42は、動作方向識別手段31から出力された接近方向の識別信号を受け付けて駆動信号を出力する期間と、横断方向の識別信号を受け付けて駆動信号を出力する期間とを異ならせる、同一の識別信号を受け付けても負荷の駆動状態に応じて動作させる負荷を異ならせる等、用途や使用勝手に応じて自由に設定することができる。
【0045】
一般的に、操作面52に接近する動作はボタンを押す動作に似ているため負荷のデジタル(ON/OFF)操作に適用し、操作面52前方を横断する動作はボリュウム等をスライドさせる動作に似ているため負荷のアナログ(可変)操作に適用すると、使用者の使い慣れた操作感覚と合致しやすくなり操作性が向上する。
例えば、水栓機器に高周波スイッチ51を設置し、お湯と水を選択(デジタル的要素)するときは操作面52に手や指が接近する動作、吐水流量の調整(アナログ的要素)をするときは操作面52前方を手や指が縦断する動作とした場合、図9に示すように電波ビームを上下左右の4方向に切り替えて放射する高周波スイッチ51を筐体61に収納し、手や指の接近方向を識別してお湯または水の吐水を開始するため駆動信号を出力する電波ビームの放射方向は操作面に対し左右方向(放射方向φ1、φ3)、手や指の縦断方向を識別して吐水流量を増加減少させるための駆動信号を出力する電波ビームの放射方向は操作面52に対し上下方向(放射方向φ2、φ4)と、デジタル的要素とアナログ的要素を選択する手指の動作を完全に分離するよう負荷設定手段42に予め設定すると、操作の混乱を招くことも無く操作性が向上する。そして、図10に示す制御フローチャートに基づいて、負荷駆動手段から出力される駆動信号のタイミングを制御すれば、使用勝手に優れた水栓機器を提供できる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明における高周波スイッチの第1実施形態を示す、ブロック図である。
【図2】同、(a)正面図および(b)側面図である。
【図3】被検知体の移動速度とドップラーセンサから出力される検知信号周期との関係を示すグラフである。
【図4】ドップラーセンサから出力される検知信号の模式図である。
【図5】本発明における高周波スイッチの第2実施形態を示す、正面図である。
【図6】本発明における高周波スイッチについて、電波ビームの最大強度放射方向を比較した上面視図である。
【図7】本発明における高周波スイッチの第3実施形態を示す、正面図である。
【図8】同、タイミングチャートである。
【図9】本発明における高周波スイッチを備えた水栓機器の操作部を示す、正面図である。
【図10】同、制御フローチャートである。
【図11】本発明における高周波スイッチの第4実施形態を示す、上面視図である。
【図12】スイッチ中心からの距離とスイッチから見た移動速度との関係を示す、(a)説明図および(b)グラフである。
【符号の説明】
【0048】
1a、1b 基板
2a、2b、2c、2d 給電素子
3a、3b、3c、3d 無給電素子
4 接地電極
5 給電孔
6a、6b、6c、6d 伝送線路
7a、7b、7c、7d 導通孔
8a、8b、8c、8d 切替スイッチ
9a、9b、9c、9d 制御線
11、11a、11b ドップラーセンサ
12 発振器
13 アンテナ
14、14a、14b 検波器
15 金属ケース
16 リード線
21 電波方向制御回路
31 動作方向識別手段
32 第1演算部
33 第2演算部
34 記憶手段
41 負荷駆動手段
42 負荷設定手段
43 負荷駆動回路
51 高周波スイッチ
52 操作面
61 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波ビームを複数の方向へ放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し、検知信号として外部に出力するセンシング手段と、
前記検知信号に基づいて、前記被検知体が前記センシング手段の前方を横断する移動方向を算出し、識別信号として外部に出力する動作方向識別手段と、
前記識別信号に基づいて、直接または間接的に負荷を駆動するための駆動信号を出力する負荷駆動手段と、
負荷の駆動を操作する操作面と、
を有する高周波スイッチであって、
複数の方向へ放射される電波ビームは全て、前記操作面に対し鉛直方向から所定の方向へ傾けて放射されることを特徴とする高周波スイッチ。
【請求項2】
複数の方向へ放射される電波ビームは、前記操作面の中心点を基準とし略対称となる方向に放射されることを特徴とする請求項1記載の高周波スイッチ。
【請求項3】
前記センシング手段は、電波ビームを繰り返し、複数の方向へ所定の切替順序および切替速度にて放射し、各放射方向毎に被検知体の動きを周波数に換算し順次、検知信号として外部に出力するドップラーセンサであることを特徴とする請求項1乃至2何れか1項記載の高周波スイッチ。
【請求項4】
前記センシング手段は、送信波を発生する発振器と、前記送信波が直接、供給される給電素子と、該給電素子が励振することにより励起される複数の無給電素子と、複数の前記無給電素子に各々、接続され高周波信号の通過または遮断を選択できる複数の切替スイッチと、複数の前記切替スイッチの切替順序および切替速度を制御する電波方向制御回路と、前記送信波と前方に放射された前記送信波が前記被検知体に衝突し反射して戻ってきた反射波との周波数の差分を抽出する検波器とを備え、
複数の前記無給電素子は、前記給電素子を中心として略対称な位置に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の高周波スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−158427(P2009−158427A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338489(P2007−338489)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】