説明

高周波部品

【課題】 高周波部品のグランド電極と高周波部品を実装するマザーボードのグランド電極との間の浮遊容量による影響の少ない高周波部品を得る。
【解決手段】 高周波部品10は、セラミックス層の積層体からなる基体12を含む。基体12の外面に、外部電極14a〜14hを形成する。基体12の最下層のセラミックス層16の外面側にグランド電極18を形成し、外部電極に接続する。グランド電極18上に、基体12を構成するセラミックス層より薄いオーバーコート層20を形成する。オーバーコート層20は、セラミックス層と同じ材料で形成したペーストをセラミックスグリーンシート上に形成したグランド電極用パターンの上に塗布し、焼成することによって形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は高周波部品に関し、特にたとえば、移動体通信機などにおいて送受信を切り換えるために用いられる高周波スイッチのような積層型の高周波部品に関する。
【0002】
【従来の技術】図6は、この発明の背景となる高周波部品の一例を示す斜視図である。高周波部品1は、複数のセラミックス層を積層して得られる基体2を含む。そして、基体2の側面には、セラミックス層に形成された内部電極に接続される複数の外部電極3a〜3hが形成される。基体2を構成するセラミックス層のうち、最下層のセラミックス層4の一方面側には、図7に示すように、グランド電極5が形成される。このグランド電極5上に他のセラミックス層が積層され、これらのセラミックス層に必要な内部電極が形成される。そして、グランド電極5が外部電極3c,3e,3g,3hに接続され、他の内部電極の中の必要なものが外部電極3a〜3hのいずれかに接続される。そして、外部電極3a〜3hが、マザーボードなどに形成される外部回路に接続される。
【0003】高周波部品1がマザーボード上に実装されるとき、最下層のセラミックス層4がマザーボード側となるように実装される。この高周波部品1をマザーボードに実装する際、グランド電極5に接続された外部電極3c,3e,3g,3hは、マザーボード上に形成されたグランド電極に接続される。したがって、高周波部品1のグランド電極5とマザーボードに形成されたグランド電極とが同電位となり、高周波部品1においては、グランド電極5の電位が基準電位となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高周波領域においては、外部電極にインダクタンス成分が発生し、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極とが短絡された状態とはならず、図8に示すように、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極とがインダクタンス成分を介して接続された状態となる。そのため、実際には、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極とは同電位とならず、2つのグランド電極間に浮遊容量が発生する。このような浮遊容量が、高周波部品の特性に影響を与える。
【0005】それゆえに、この発明の主たる目的は、高周波部品のグランド電極と高周波部品を実装するマザーボードのグランド電極との間の浮遊容量による影響の少ない高周波部品を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、複数のセラミックス層を積層して得られる基体と、基体の外面に形成される外部電極とを含む高周波部品において、最下層のセラミックス層の外面側において外部電極に接続されるグランド電極が形成され、グランド電極上にセラミックス層より薄いオーバーコート層が形成された、高周波部品である。このような高周波部品において、オーバーコート層は、セラミックス層と同じ材料からなるペーストを塗布して焼成することにより形成されたものであることが好ましい。
【0007】高周波部品がセラミックス層より薄いオーバーコート層で覆われていることにより、高周波部品をマザーボードに実装したとき、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極との間隔が小さくなる。そのため、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極との間の外部電極が短くなり、この部分に発生するインダクタンス成分が小さくなる。それにより、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極との間の電位差が小さくなり、ほぼ同電位となって、これらのグランド電極の間の浮遊容量が高周波部品の特性に影響を与えにくくなる。このように、高周波部品のグランド電極上に薄いオーバーコート層を形成するためには、セラミックス層と同じ材料からなるペーストを薄く塗布し、焼成することにより形成することができる。また、セラミックス層と同じ材料からなるペーストを用いることにより、同時焼成によって、セラミックス層とオーバーコート層とを形成することができる。
【0008】この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の高周波部品の一例を示す斜視図である。高周波部品10は、基体12を含む。基体12は、複数のセラミックス層の積層体として形成される。基体12の側面には、後述のグランド電極および内部電極に接続される複数の外部電極14a〜14hが形成される。外部電極14a〜14cと外部電極14d〜14fとは、基体12の一方の対向側面に形成され、外部電極14gと外部電極14hとは、基体12の他方の対向側面に形成される。基体12を構成するセラミックス層のうちの最下層のセラミックス層16には、図2に示すように、グランド電極18が形成される。このグランド電極18は、最下層のセラミックス層16の外面側に形成される。そして、グランド電極18は、外部電極14b,14f,14g,14hに接続される。
【0010】グランド電極18上には、図3に示すように、薄いオーバーコート層20が形成される。さらに、グランド電極18が形成されていない他のセラミックス層には、必要な内部電極が形成される。必要な内部電極としては、たとえば高周波部品10がコンデンサであれば、互いに対向するコンデンサ電極が形成される。また、高周波部品10がインダクタであれば、たとえば螺旋状のコイル電極が形成され、これらの内部電極のうちの必要なものが外部電極14a〜14hのいずれかに接続される。そして、外部電極14a〜14hが、マザーボードなどに形成される外部回路に接続される。
【0011】このような高周波部品10を作製するために、セラミックスグリーンシートが準備される。セラミックスグリーンシートの材料は、高周波部品10の種類によって異なるが、たとえばコンデンサであれば誘電体セラミックス材料が用いられ、インダクタであれば磁性体セラミックス材料が用いられる。これらのセラミックスグリーンシート上に、内部電極の形状となるように、電極ペーストなどによって電極パターンが形成される。電極パターンが形成されたセラミックスグリーンシートは積層圧着される。さらに、最下層のセラミックスグリーンシートの外面側には、グランド電極用の電極パターンが形成される。このグランド電極用の電極パターン上に、セラミックスグリーンシートと同じ材料で形成されたペーストが薄く塗布される。このようにして得られた積層体が焼成され、グランド電極18および内部電極が形成された基体12が得られる。そして、基体12の側面に、外部電極用の電極ペーストを塗布し、焼き付けることによって、外部電極14が形成される。
【0012】この高周波部品10では、グランド電極用の電極パターン上にペーストを薄く塗布し、焼成することによってオーバーコート層20を形成しているため、図4に示すように、オーバーコート層20の厚みを数μmと薄くすることができる。それに対して、最下層のセラミックスグリーンシート上にグランド電極用の電極パターンを形成して積層後に焼成し、セラミックス層16の内面側にグランド電極18を形成した場合、図5に示すように、グランド電極18上に形成されるセラミックス層16の厚みは数10μmと厚くなる。
【0013】したがって、高周波部品10をマザーボードに実装したとき、図5に示すようなセラミックス層16の内面側にグランド電極18を形成した高周波部品に比べて、図4に示すようなグランド電極18上に薄いオーバーコート層20を形成した高周波部品10のほうが、高周波部品10のグランド電極18とマザーボードのグランド電極との間の間隔が小さくなる。そのため、高周波部品10のグランド電極18とマザーボードのグランド電極との間の外部電極14の長さが短くなる。それにより、高周波部品10のグランド電極18とマザーボードのグランド電極との間において、外部電極14に発生するインダクタンス成分が小さく、2つのグランド電極はほぼ同電位となる。そのため、高周波部品10のグランド電極18とマザーボードのグランド電極との間の浮遊容量は、高周波部品10の特性にほとんど影響しなくなる。したがって、この高周波部品10では、マザーボードに実装したときに、所定の特性を発揮されることができる。
【0014】また、この高周波部品10では、最下層のセラミックス層16の外面側にグランド電極18が形成されているため、従来のようなセラミックス層の内面側にグランド電極を形成した高周波部品に比べて、セラミックス層の数を減らすことができる。そのため、高周波部品10の低背化および低コスト化を図ることができる。さらに、グランド電極18上にオーバーコート層20が形成されているため、高周波部品10のグランド電極18とマザーボード上の配線とが接触せず、マザーボード上の配線のレイアウトが制限されない。また、オーバーコート層20を形成するために、基体12のセラミックス層と同じ成分のペーストを用いることにより、同時焼成により、セラミックス層とオーバーコート層20とを形成することができ、製造工程の簡略化が可能である。
【0015】なお、高周波部品10としては、コンデンサやインダクタのみでなく、これらの複合部品、またはこれらと抵抗との複合部品であってもよい。つまり、基体12の内部にコンデンサ電極とコイル電極とが形成されたLC部品のようなものであってもよく、グランド電極を有する高周波部品であれば、この発明を適用することが可能である。
【0016】
【発明の効果】この発明によれば、高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極との間の浮遊容量の影響が少なく、所定の特性を発揮することができる高周波部品を得ることができる。しかも、低背化および低コスト化が可能で、マザーボードの配線のレイアウトを制限することもない。さらに、基体のセラミックス層と同じ材料のペーストを用いて、グランド電極を覆うオーバーコート層を形成することにより、基体のセラミックス層とオーバーコート層とを同時焼成で形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の高周波部品の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す高周波部品の最下層のセラミックス層の外面側にグランド電極を形成した状態を示す図解図である。
【図3】図2に示すグランド電極上にオーバーコート層を形成した状態を示す図解図である。
【図4】図1に示す高周波部品のグランド電極の位置関係を示す図解図である。
【図5】図4に示す高周波部品と比較するために、最下層のセラミックス層の内面側にグランド電極を形成したときグランド電極の位置関係を示す図解図である。
【図6】従来の高周波部品の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す従来の高周波部品のグランド電極を示す分解斜視図である。
【図8】高周波部品のグランド電極とマザーボードのグランド電極との間の等価回路を示す図解図である。
【符号の説明】
10 高周波部品
12 基体
14 外部電極
16 最下層のセラミックス層
18 グランド電極
20 オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のセラミックス層を積層して得られる基体と、前記基体の外面に形成される外部電極とを含む高周波部品において、最下層の前記セラミックス層の外面側において前記外部電極に接続されるグランド電極が形成され、前記グランド電極上に前記セラミックス層より薄いオーバーコート層が形成されたことを特徴とする、高周波部品。
【請求項2】 前記オーバーコート層は、前記セラミックス層と同じ材料からなるペーストを塗布して焼成することにより形成された、請求項1に記載の高周波部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−267130(P2001−267130A)
【公開日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−80557(P2000−80557)
【出願日】平成12年3月22日(2000.3.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】