説明

高品質核酸のセルフリー生合成及びその使用

本発明は,改良されたセルフリーの応用方法であって,治療に用いることができる品質の大量の核酸を生成する方法及び合成された核酸を研究,治療及びその他の用途に使用する方法を提供する。これらの方法は,様々な最先端の手順を組み合わせ,治療目的の核酸を手ごろな価格で合成できるように用途を調整している。本発明は,インビトロでローリングサークル型増幅,高いフィデリティーを持つポリメラーゼ,高親和性のプライマー,及び特定の用途のために設計された合理化された鋳型を組み合わせる。発現を目的とする場合,真核生物のプロモーター,目的とする遺伝子のコード配列,及び真核生物の終止配列を含む発現カセットが鋳型に含まれている。増幅に続き,その使用目的に応じてコンカテマーが処理され,この処理には,短い発現カセット(SECs)を生成するための制限酵素による切断,SECを環状化(CNAs)するライゲーション工程,及び/又はsCNAsを生成するスーパーコイル化工程が含まれる。最終産物に含まれる細菌エンドトキシンはほとんど検出不能なレベルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高品質核酸の合成方法,及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子導入,遺伝子治療及びDNAワクチン接種におけるDNAに基づく治療法の開発により,純度,有効性,効能及び安全性に関して厳密な品質基準を満たすDNAの大規模な生産に対する需要が高まってきた。標的組織における遺伝子発現の効能及び持続期間は比較的低いため,通常多くのDNAがそのような用途に必要とされていた。
【0003】
現在の技術状態は,バクテリア培養液中のプラスミドの増殖及び高額な精製技術に依存して,治療に利用可能な品質の核酸を生成している。バクテリア及び他の細胞源からの典型的なプラスミド精製手順には,フェノール,臭化エチジウム及び塩化セシウムを含む有機化合物,変異原物質及び毒性化合物及びリゾチーム,プロテイナーゼK,リボヌクレアーゼA(RNaseA)等の酵素を用いる方法がある。これら全てはDNAに基づく治療法において夾雑物として投与された場合,健康被害をもたらす可能性を含んでいる。このような手順にはまた,意図しない汚染性トランスポゾン及びその他の外来性エピソーマルDNAがプラスミドに混入する危険性を孕んでいる(Haapa, S.,Nuc.Ac.Res.,27(13): 2777−84, 1999)。また宿主細胞核酸,その他の細胞タンパク及びエンドトキシンの残留物が混入する可能性もある。このような不純物はDNA取り込みの効率を低減させるだけでなく,量依存的な毒性につながる。これらの不純物を除去するため,一般に受け入れられている精製方法は,アニオン交換,アフィニティー,及び分子サイズ排除等の複数のクロマトグラフィー手順を利用している。これらの手順は費用がかかるものである。
【0004】
米国特許第5,561,064号(‘064)は,薬理学的に許容されるレベルのプラスミドをバクテリア培養液から得るための試みを示した。この特許はバクテリア細胞を溶解するためにポリエチレングリコールを用い,一連のクロマトグラフィーによる分離を利用して有毒な化学物質を付加することなく遺伝子治療に適用可能な,より純度の高いDNAを生産する方法について述べたものである。この方法は精製時に付加的な要素は加えられないが,有毒となる可能性がある細胞環境中においてのプラスミド生産に依存したものである。
【0005】
対照的に,セルフリー核酸増幅は,合理化された生産と単純化した精製法により,顕著な費用削減を提供することができ,バクテリアによってプラスミドを合成した場合に伴う不純物を除去することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のようなインビトロ(in vitro)増幅は,1980年中盤から研究にうまく利用されている。PCRは迅速かつコストが低い。しかしながら,PCRは急速な温度サイクリングに依存しており,大規模の増幅には実用的ではない。
【0006】
インビトロの定温増幅技術が知られているが,主として核酸複製の機構を研究するために利用されてきた。1984年に,BlancoとSalasは,ファージ由来の(phage)Phi29 DNAポリメラーゼを単離した。それは,高度に逐次前進性の(processive)鎖置換ポリメラーゼである。Phi29 DNAポリメラーゼは,Phi29ゲノムの完全長である70キロベース超の長さのDNA鎖を確実に複製することができる(Blanco,L. and Salas,M.,PNAS 81(17):5325−5329,1984)。効率的なインビトロでの定温DNA増幅のためには,Phi29ポリメラーゼは端末タンパク質として二本鎖DNA結合タンパク及び一本鎖DNA結合タンパク(SSB)を必要とする(Blanco, L. et al.,PNAS 91:12198−202, 1994)。
【0007】
米国特許第5,001,050号(‘050)は,DNA塩基配列決定,DNA増幅,及び10キロベースを超えるDNA合成におけるPhi29DNAポリメラーゼの使用を主張するものである。米国特許第5,198,543号(‘543)及び第5,576,204号(‘204)はシークエンス反応改善のためのエキソヌクレアーゼ欠損型Phi29ポリメラーゼを含め,この酵素の改良型を請求している。しかしながら,これら改良されたポリメラーゼはフィデリティ(fidelity)が低く,シークエンス反応のみに有効であった。
【0008】
本質的に,プラスミド及び数種のウイルスDNAを含め,環状DNA分子の複製は頻繁にローリングサイクル増幅(RCA)によって起きるが,ここにおいて環状DNA鋳型は直列反復の長いコンカテマー(concatamer)へと複製される。コンカテマーは次に切断されタンパク膜中へとパッケージされる(Dean, F.B. et al., Genome Res. 11: 1095−99, 2001)。RCAを用いて,複数の研究室がDNA塩基配列決定,クローニング,ライブラリ構築,及びスクリーニングを含め様々な目的に用いられるDNA増幅法を開発した(Inoue−Nagata, et al., J. Virological Methods 116: 209−211,2003)。
【0009】
米国特許第5,654,033号,第6,210,884号,第6,316,229号,第6,344,329号,及び第6,797,474号(それぞれ‘033,‘884,‘229,‘329,及び‘474)はRCA法に関するが,特定のサンプルにおける標的メッセージのコピー数の同定など,研究用途のみに限定されていた。この方法は始めにDNAサンプルを環状鋳型に変換し,制御された(controlled)サイクル増幅によってもともとのメッセージの相対的な量を同定するものである。その他の応用例は,このような定量的増幅と標的遺伝子の突然変異遺伝子(mutant allele)の検出を組み合わせたものである。
【0010】
米国特許第6,280,949号及び第6,124,120号は,ランダムプライマーを用いた全ゲノム増幅におけるRCAの応用を教示している。いくつかの実施例では,ゲノムの特異的領域を増幅させるため,ランダムプライマーと特異的プライマーを組み合わせて用いている。
【0011】
米国特許第6,329,150号は新規に合成されたDNA上で入れ子になるよう設計されたプライマーを用い,既に増幅された産物の二次的な合成を起こす改良RCA法を教示している。この方法によって,増幅は幾何学級数的に起こり,PCRに代わって多数の標的を同時に検出する定温の代替法が提供される。米国特許第6,255,082号は長い末端リピートをこれらの入れ子状の(nested)増幅を容易にするため利用する方法を教示している。これらの特許はサンプルにおける特定の配列の存在を速やかに同定するためRCAを改良している。
【0012】
米国特許第6,642,034号は複数のプライマー及び鎖置換DNAポリメラーゼを用いた増幅の一般的方法を教示している。この方法は標的配列の同定,全ゲノムの増幅,標的配列あるいは変異の検出,アドレスタグの合成及び検出,及びオリゴヌクレオチドの合成に利用される。
【0013】
その他のRCAの応用には,配列決定,クローニング,マッピング,遺伝子型決定,プローブ作製,及び診断スクリーニングがある。米国特許出願公開第2003/0207267号では3’,5’−エキソヌクレアーゼ活性を持つ異なるDNAポリメラーゼにより,複数のプライマーを用いて標的サークルを同時に増幅し,増幅効率を改善する例が挙げられている。
【0014】
現在まで,その他のポリメラーゼの利用も時折取り上げられたものの,ほとんどのRCA技術はPhi29 DNAポリメラーゼの利用に重点を置いていた。これはPhi29ポリメラーゼの生産効率が高いために核酸の長いコンカテマーを短時間に合成することができ,また鎖置換活性があるため接触したあらゆる二次プライマーを置換しつつ,連続的に新規核酸配列合成できることが理由に挙げられる。加えて,大量の高いフィデリティーをもつ核酸を温度サイクリングなしに比較的短期間で生産できる。Phi29ポリメラーゼはエラー比率が4×10−6と非常に低い。(Esteban, J.A., et al., J. Biol. Chem.,268(4):2719−2726,1993)。
【0015】
ほとんどのRCA技術はPhi29ポリメラーゼを使用しているにも関わらず,米国特許第6,576,448号及び第6,235,502号はRCA法におけるバクテリアDNAポリメラーゼIII(Pol III)の使用を開示している。Pol IIIはDNA合成効率を上昇させる(一秒あたり約700−800ヌクレオチド)クランプ様の活性を持つことが報告されており,ヘリカーゼあるいは安定化タンパク質を付加することで最適化可能である。バクテリアDNAポリメラーゼI(Pol I)もまた100bp以下の小さい鋳型増幅のRCA法において利用されている(Fire and Xu, PNAS 92:4641−45,1995)。Pol Iは主に一本鎖鋳型を用い,極端に短い二本鎖鋳型にしばしば伴う立体障害なく,小さい環状鋳型がすぐに形成される。米国特許第5,614,365号はT7DNAポリメラーゼの配列を含み,効率が500−倍まで上昇する改良Pol Iを開示している。このポリメラーゼはデオキシヌクレオチド及びダイデオキシヌクレオチドを区別する能力が減少しており,シークエンシング反応への利用に好適である。
【0016】
一般的に,RCA反応は一本鎖あるいは二本鎖核酸鋳型を用いることができる。Phi29DNAポリメラーゼは一本鎖あるいは二本鎖鋳型を用いることができるが,Pol Iが利用できるのは一本鎖鋳型のみである。加えて,Phi29ポリメラーゼはRNAあるいはDNA鋳型を用いることができる。それゆえ,Phi29ポリメラーゼはRCA法及び他の増幅法においてより適用範囲が広い。
【0017】
米国特許第6,368,802号,第6,096,880号及び第5,714,320号はRCA法で適切なポリメラーゼ及び小さい一本鎖環状DNA鋳型を用いRNAあるいはDNAオリゴヌクレオチド(28−74ヌクレオチド長)を合成する例を挙げている。このように合成されたDNAオリゴヌクレオチドは細胞内における発現に必要とされる遺伝的情報を欠いている。
【0018】
Moreno Sらは最小限の,免疫原生として同定可能な遺伝子発現ベクター(MIDGE)をDNAワクチン生産のために開発した(Vaccine,22: 1709−1716, 2004)。これらのベクターは真核生物の遺伝子発現及び免疫反応の誘導に最小限の配列のみを含む。加えて,直鎖上の発現カセット末端は,その寿命及び発現効率を向上させるために,ヘアピン状に改変することが可能である。この方法は大きな進歩を意味するものの,バクテリア培養液からプラスミドを精製した後不必要なバクテリア配列の除去を行わなければならず,手間のかかる工程を含むものである。MIDGE工程は前駆体としてやはりバクテリア由来のプラスミドに依存している。
【0019】
同様に,Chen, Z.Y.らはバクテリア配列をベクターから除去するミニサークルを開発した。彼らはシスに結合されたバクテリア配列が真核生物の発現を抑制できることを示した(Human Gene Ther. 16: 126−131, 2005)。彼らはまた,バクテリアの遺伝物質を全く連結していない直鎖状発現カセットは,バクテリアプラスミド骨格に連結された発現カセットを有する共有結合により閉鎖された環状プラスミドに比べ10−100倍高効率で発現することを示した。バクテリアフリーの発現カセットの発現はトランスフェクションの後90日間まで継続する。
【0020】
このグループはこの工程を米国特許出願公開第2004−0214329号に記述しており,環状発現カセット,それらから合成される治療用組成物,及び標的細胞に環状発現カセットを導入する方法を教示している。加えて,この応用は発現カセットに隣接するattB及びattP配列を利用し組み換えによるバクテリア配列の除去を容易にしている。通常条件におけるバクテリア培養に続いて,リコンビナーゼをコードする誘導カセットを有するバクテリアにおいては,リコンビナーゼの合成が誘導され,充分量のプラスミドが合成された後attB及びattP部位における組み換えが誘導される。細胞内組み換えは二つの独立したミニサークルを作り出す。一方は発現カセットを有し,他方はバクテリアの遺伝物質を有する。バクテリア遺伝子の夾雑を最小限にするために合理化された方法ではあるが,この方法はやはりバクテリア培養中でのプラスミド合成に依存している。
【0021】
DNAを用いた治療への適用は安全性及び効果基準を厳密に順守することが必要である(Prazeres, D.M., et al., Trends Biotechnol 17(4):169−173, 1999)。大規模設備で生成されたプラスミドDNAは夾雑なゲノムDNA(<10ng/投与量),宿主タンパク質(<10ng/投与量),RNA(0.8%アガロースゲルで検出されない)及びエンドトキシン(<1ユニット/kg体重,あるいは<0.1EU/μgプラスミド)が含まれていないことが必要である。加えて,プラスミドは無菌状態であるべきで,より効率よく発現されるスーパーコイル状であることが望ましい。その他最終調製物から除去される必要がある夾雑物には,臭化エチジウム,クロロホルム,フェノール,リゾチーム,プロテイナーゼK,RNaseA等の精製試薬及び精製カラムから浸出する可能性があるアニオン交換体由来の第4級アミン等の夾雑物が含まれる。
【0022】
これらの純度基準は主に大規模でしばしば高額な精製技術をバクテリアに産生されたプラスミドに利用することで対応されてきた。先述の通り,一般的に受け入れられている精製方法は主に複数のクロマトグラフィー法を用い,アニオン交換,アフィニティー,及びサイズ除去クロマトグラフィー精製の段階の組合わせを含む。治療に用いることができる品質のプラスミドをバクテリアから合成するために必要な精製方法には,特別な装置,高価なレジン,大規模な設備と長い時間が必要であるという点は重要である。現在非GMP(研究品質)のプラスミドDNAにかかる費用は最終産物1グラムあたり30,000−150,000ドルであり,GMP品質のDNAにかかる費用はおおよそ2−3倍高い。つまり,バクテリアにより合成されたプラスミドDNAから治療に用いるDNAを生合成することは非常にコストが高くなりうる。
【0023】
セルフリー増幅の利用に焦点を当てた方法では,多数のバクテリア夾雑物への曝露を回避することが可能であることから,著しいコスト及び時間の削減を提供し得る。セルフリー系に存在するものはすべて明確に区別することができる。高品質の試薬及び酵素のみを用いれば,この系には微量の夾雑物しか存在しない。このように,最終精製は透析,限外ろ過及び/又はゲルろ過,等の単純な方法を用いることが可能であり,精製に必要な反応混合物は少量でよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
現在まで,RCA系は核酸のセルフリー合成を遺伝治療用,DNAワクチンあるいはその他の治療への応用に適合させていなかった。対照的に,ほとんどの文献はRCA系の有用性が,配列決定,ゲノム増幅,ゲノム解析,標識,クローニング,PCR型の応用,ライブラリの構築及びその他の解析への応用を含め,厳密に診断あるいは研究目的に限定されると示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一つの側面はインビトロのRCA系を最適化し,合理化された発現カセット,高度に特異的あるいは無作為のプライマー,高いフィデリティを持つポリメラーゼ,及び最小限の緩衝系を用い核酸大量調整(例えば>1mg)を行うセルフリー系を構築することに関する。この系では核酸の大量合成を,小さい容量で,短期間に最小限でかつ費用のかからない精製方法で行うことが可能である。このように,この系は,治療に利用できる高品質な核酸を,あらゆる基礎解析あるいは研究目的のため,さらに重要なことには治療上の使用のために合成可能である。
【0026】
本発明は治療,診療,診断,及び研究に用いられる高品質の核酸を安価に大量合成する目的でいくつかの技術を組み合わせている。本発明の方法は同程度の容量のバクテリア培養液で合成されるものと比較して250−300倍の核酸を合成することができる。本発明において,使用された試薬に最小限含まれるものを除いて,エンドトキシンの混入源は存在しない。さらなる有利な点として,研究用の小さいフラスコで発酵様の大量合成が可能である点,必要な試薬が最小限の数である点,比較的短い期間で大量合成が行える点,及び合理化された精製方法が含まれる。併せて,これらの利点は治療に利用する高品質核酸の大量合成を安価に行う方法となる。
【0027】
本発明の一つの実施形態においては,プラスミド選択及び複製にバクテリアにおいて必要とされる典型的な遺伝的配列を欠損する改変されたプラスミドが鋳型として用いられる。あらゆる環状核酸の鋳型を利用することが可能である。本発明の実施態様にしたがって,目的とする遺伝子近傍に宿主での発現及び発現産物の生成に必要な遺伝子要素が存在する環状発現カセットが鋳型となりうる。
【0028】
通常のプラスミドも本発明の方法を用いて複製可能であるが,余分な遺伝子配列を含まない合理化された鋳型は様々な利益を与える。目的とする配列の発現を抑制する可能性がある外来配列を除去する。より小さな構成(construct)はよりコンパクトであり,標的細胞により効率よく組み込まれ,トランスフェクション効率がより高くなる。また,より少ない材料でより大量の発現カセットを生成できること,最終産物のフィデリティが統計的に向上すること,及び大規模な精製を行う必要が無いことから,より費用効率が高いといえる。
【0029】
無作為プライマーあるいは配列特異的プライマーを用いることが可能であるが,大規模増幅においては配列特異的プライマーがより効率的で経済的である。プライマーの大きさは4から20ヌクレオチド超までの範囲をとることができ,親和性の向上,安定性及び長期保存のため改変された塩基及び/又は骨格を含むことができる。一つの実施態様においては,ホスホロチオエート末端改変を含む特異的プライマーを大量の(1ml中に約1.5mg)核酸を合成するために用いることができる。
【0030】
増幅工程には,緩衝液及び温度条件をポリメラーゼの特異的な要求に対応するように調節すれば,増幅反応にはあらゆるポリメラーゼを用いることができる。例えば,高温taq様のポリメラーゼを用いる際に必須の変性及びアニーリング段階が含まれる。しかしながら,本発明の好ましい実施態様は,Phi29 DNAポリメラーゼのような逐次前進性の鎖置換性ポリメラーゼを用いており,熱サイクリングなしに効率的に鋳型を増幅させるものである。好ましい実施態様は,Phi29あるいはPhi29様ポリメラーゼを用いるものであるが,Pol I及びPol III,T7 DNAポリメラーゼのような他のポリメラーゼ,及びその派生物も用いることができる。本発明はまた,効率及び/又はフィデリティを改善するよう設計された,その他の改変されたポリメラーゼあるいはキメラポリメラーゼも用いることができる。
【0031】
増幅に続き,核酸産物は意図する使用を容易にするように更なる処理を加えることができる。検出,同定あるいは配列決定を含む研究目的には,通常はコンカテマーの短い直鎖状ユニット(送達(delivery)ユニット)のみが要求され,これは制限酵素による切断あるいはせん断もしくは特異的,光解離性ヌクレオチドにおいて誘発される切断のように物理的あるいは化学的方法によって得られる。細胞へのトランスフェクションは様々な形態において成されるが,高効率の取り込みは一般的に環状あるいはスーパーコイル化された核酸によって得られる。一つの実施態様は,増幅に続くDNAリガーゼを用いたライゲーション工程を含み,環状核酸(CNAs)を形成する。別の実施形態では,リコンビナーゼあるいは同様な酵素を用いて送達ユニットを円形にして環状核酸とする。また別の実施態様は,DNAジャイレース(gyrase)を用いた環状産物をスーパーコイル化しスーパーコイル化CNA(sCNA)を形成する付加的な段階を含む。
【0032】
産物の真核細胞における発現を意図する場合,培養の場合においても治療利用の場合においても,細胞による取り込みが重大である。トランスフェクションは環状,スーパーコイル化されたCNAあるいは直鎖ユニットの内部塩基及び/又は末端の改変により安定化された特別に設計された直鎖状核酸を用いて成される。このような改変に含まれるのは,クレノーフラグメント様酵素を用いた挿入による末端の平滑化;適切に改変された塩基を用いた直鎖末端のホスホロチオエート化;インビボ(in vivo)で直鎖の安定化あるいは分解を最小にする,増幅工程あるいはそれに続くコンカテマー切断工程中における他の改変された塩基の取り込み;及び速やかな取り込み及び/又は細胞への取り込み後長期間にわたるカセット発現を容易にする,安定化配列を含む発現カセットの設計である(Kay, M.A. et al., Molec. Ther. 3(3): 403−410, Mar. 2001)。
【0033】
セルフリー増幅工程に続く改変あるいは処理の程度は,産物の使用目的による。最終的に処理された産物は,その後試薬,夾雑物,及び/又はあらゆる異なる形状の産物を除去するため精製される。産物の異なる形状には,直鎖断片,開環状核酸,単量体,二量体,三量体等からなる共有結合的に閉環状となった核酸,及びスーパーコイル化した環状核酸を含む。目的の形状は特異的な適用に依存し上記の形状に変えることができる。使用する試薬の数及び必要とされる純度に応じて,産物に対しクロマトグラフィー,限外ろ過,透析,核酸沈殿,あるいは本分野で知られるその他の適切な方法を行う。ゲルろ過及び/又は透析を含むこれらの実施態様は治療利用のための高品質産物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施態様は大量の高品質核酸を生産するための方法及び装置に関する。本発明の方法は治療上有用な,夾雑物が最小限である核酸産物を生産するため,ローリングサークル増幅法(RCA)に基づくセルフリー系を用いる(図2)。
【0035】
本発明に関連して用いられる「核酸」,「オリゴ」,あるいは「オリゴヌクレオチド」とは,DNAあるいはRNA,あるいはその類似物(例えばホスホロチオエート類似物)でありうる。核酸あるいはオリゴヌクレオチドは,改変された塩基,骨格,及び/又は末端を含んでもよい。合成骨格は,核酸に対し安定性及び/又はその他の有利な点を与えるホスホロチオエート(Pt),ペプチド核酸(PCA),構造的に固定された核酸(LNA),キシロース核酸(XNA),あるいはその類似物を含んでもよい。
【0036】
図2に示すように,本発明のある実施態様に係る方法はRCAに基づくものである。この工程は環状鋳型からコンカテマーを合成するためにポリメラーゼを用いる。コンカテマーは少なくとも一つの欠損のない発現カセットを含むより小さいフラグメントへと処理される。合成された産物は短い直鎖状ユニットとして利用されるか,あるいは環状化された核酸(CNAs)あるいはスーパーコイルの環状核酸(sCNAs)へとさらに処理される。
【0037】
本発明の方法はDNAあるいはRNAの鋳型から開始できる。RNA鋳型から開始したものはcDNA鋳型を合成するため,トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素のような逆転写酵素を含む。図2に示すように,本発明の方法で用いられる環状の鋳型を調製するために,当該技術分野において知られているあらゆる方法を用いることができる。これらの方法のうちいくつかを図1を参照しつつ詳細に記述する。
【0038】
いくつかのポリメラーゼに対し,鋳型を安定化し増幅効率を改善するために一本鎖結合タンパクを利用することができる。誤りを修復するために増幅反応に付加的な酵素を含めることもできる。変異スプライシングタンパク(MutS)のようなタンパクを介したエラー修正酵素もまたポリメラーゼの全体のフィデリティを効果的に改善し増幅反応中あるいは反応後に用いることができる(Carr, P. et al., Nuc Ac Res 32(20): el62, 2004)。
【0039】
目的の用途に応じて,本発明の方法で用いるDNAポリメラーゼには,原核生物,菌類,ウイルス,バクテリオファージ,植物あるいは真核生物のあらゆる既知のDNAポリメラーゼを用いることが可能であり,核酸分子の合成が可能なホロ酵素及びあらゆる機能的なホロ酵素の一部あるいは改変されたポリメラーゼを含んでもよい。有用なDNAポリメラーゼとしては,バクテリオファージphi29 DNAポリメラーゼ,他のphi29様ポリメラーゼ(例えば,ファージM2 DNAポリメラーゼ,ファージB 103 DNAポリメラーゼ,あるいはファージ GA−1 DNAポリメラーゼ),ファージphi−PRD1ポリメラーゼ,VENT DNAポリメラーゼ,DEEP VENT DNAポリメラーゼ,KlenTaq DNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼI,DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント,DNAポリメラーゼIIIホロ酵素,T5 DNAポリメラーゼ,T4 DNAポリメラーゼホロ酵素,T7 DNAポリメラーゼ,Bstポリメラーゼ,rBst DNAポリメラーゼ,N29 DNAポリメラーゼ,TopoTaq DNAポリメラーゼ,及びThermoPhiTMDNAポリメラーゼがある。本発明の好ましい実施態様は,Phi29ポリメラーゼ,Phi29様ポリメラーゼ,あるいは他のフィデリティの高いポリメラーゼ(例えば,ハイブリッド融合ポリメラーゼ)を用いる。
【0040】
本発明の好ましい実施態様は,フィデリティの高い塩基取り込み条件でDNA増幅を行うため鎖置換ポリメラーゼを用いる。本発明に関連して,フィデリティの高い「DNAポリメラーゼ」とは,推奨される条件において,エラー取り込み率が一般的に用いられるVent DNAポリメラーゼ,KlenTaq DNAポリメラーゼ,あるいはT7 DNAポリメラーゼのような熱安定的なPCRポリメラーゼに関連した値(1.5×10−5−5.7×10−5)に等しいかあるいはそれよりも低いものを指す。付加的な酵素は誤った取り込みを最小限にするために反応に付与することができ,ポリメラーゼ反応の期間中あるいは反応後に効果的にポリメラーゼのフィデリティを向上させるMuts等のタンパクを介したエラー修正酵素を含む(Carr, P. et al, Nuc Ac Res 32(20): el62, 2004)。
【0041】
同様に,フィデリティの高い「RNAポリメラーゼ」は,エラー取り込み率が一般的なRNAポリメラーゼ(Promega Technical Information)のものに等しいあるいはそれよりも低い。本発明に有用なRNAポリメラーゼとしては,T7 RNAポリメラーゼ,SP6 RNAポリメラーゼ,T3 RNAポリメラーゼ,及びそれらの改変体あるいはキメラ体が含まれる。
【0042】
増幅反応中において,環状鋳型はデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs),リボヌクレオシド三リン酸(NTPs),あるいは改変された対応物の存在下でポリメラーゼによって鋳型の直列反復からなる長いコンカテマーを形成しながら複製される。コンカテマーは続いて制限酵素による切断あるいは物理的なせん断によって,「短い発現カセット」(SECs)と呼ばれる小さな断片へと切断される。SECは目的とする配列及び任意的に真核生物の発現配列(あるいはカセット)を含む。好ましい実施態様においては少なくとも一つの真核生物発現カセットを含むSECを用いる。従来のバクテリアにより合成されたプラスミドと異なり,本発明のSECは対象とする真核生物配列を近傍に持つ目的とする配列のみからなり,バクテリアの遺伝物質を含まない。
【0043】
「短い発現カセット」としては,標的細胞により認識される真核生物のプロモーター;欠損のない遺伝子,遺伝子断片,あるいは目的とする特異的な配列(SOI)といった目的とする配列;及び転写終結配列がある。短い発現カセットはライゲーション(例えば,CANの合成)を容易にするため,あるいは直鎖状の断片を安定化するための付加的な配列を近傍に置くことが可能である。発現カセットは,望ましい近傍配列と共に,「送達ユニット」(DU)をなし,バクテリア培養液中で生産されるプラスミドの選択と複製のみに利用されていた不要な遺伝物質を含まない。真核細胞において意味を持たないバクテリアの遺伝物質を最小にすることで,高濃度の高品質で生理活性を持つDNA分子を生産することが可能となる。合成された核酸は典型的なプラスミドよりも小さく,細胞により効率よく導入され,また遺伝子導入に際して細胞内でより効率よく発現される。
【0044】
酵素的あるいは化学的方法を用いて,ポリマー化のエラーによるミスマッチのヌクレオチドを含むDUを除去することにより,最終産物の均一性を改善することができる。この目的を達成するために,例えば,変異を検出するために用いられる酵素(例えば,レゾルベース,T4 エンドヌクレアーゼ VII,あるいはT7 エンドヌクレアーゼ I)あるいは遺伝子突然変異あるいは遺伝子多型を検出するために用いられる,あるいは点突然変異のハイスループットスクリーニング(例えば,TILLING)に用いられる他の酵素を用いることができる。
【0045】
先述の通り,本発明の方法に使用する環状鋳型を調製するためあらゆる方法を用いることができる。図1は目的とする配列(SECあるいはDU)を少なくとも一つ含む有用な環状鋳型を合成するため,一般的に用いられる三つの方法を示す。一つの方法は既存のプラスミドの酵素による改変を含み,これにより真核細胞の発現カセットを含むDUがプラスミドから制限エンドヌクレアーゼで選択的に切り出される。DUはインビボにおけるSOIの発現を抑制する可能性がある複製起点あるいは抗生物質耐性メディエーター等の選択マーカー遺伝子を含まない。
【0046】
本発明の好ましい実施形態は,欠損のない真核細胞発現カセットであってカセットの両端に近傍の配列を有するものを含む鋳型を用い(図1),直鎖SECをCNAへと環状化することを可能にしている。鋳型は,プラスミド,ミニサークルDNAなど環状の鋳型に変換されるものであれば,あらゆる一本鎖核酸あるいは二本鎖核酸(DNAあるいはRNA)であってよい。パドロック・プローブを用いる場合と同様に,前もってライゲーション反応を行ってもよい(Baner, J., et al, Nuc Ac Res 26(22): 5073−78, 1998)。
【0047】
ポリメラーゼ反応を最適化するため,使用するポリメラーゼによっては二本鎖鋳型は初めに変性させる必要がある。そのような反応においては,フォワード鎖及びリバース鎖の両方を同時に同じ反応で増幅することができる。次のプロセシングには制限エンドヌクレアーゼ,リガーゼ,及び/又はジャイレースの添加が必要となる。その後に治療への応用に用いられるDUを得るために産物の精製が行われる。
【0048】
鋳型を作製するための第二の方法はより大きなDNA鋳型からのPCR増幅を含み,特異的な発現カセット近傍に位置する特異的なオリゴヌクレオチドを用いて環状化するための相対的に短いDUを生成する。
【0049】
図1に示す第三の方法は,オリゴヌクレオチド(オリゴ)の化学合成を含み,一本鎖核酸あるいは相補鎖を合成した後,環状化によりDUあるいは発現カセットを含む鋳型を生成する。
【0050】
増幅時において,鋳型は溶液中に懸濁させても,染色体あるいはタンパク(米国特許第5,854,033号)のような担体あるいはガラスまたはポリスチレンビーズのような固体の担体に結合させてもよい。
【0051】
本発明の実施形態に係る別の方法を図3に示す。図3に示されるように,二本鎖鋳型のどちらの鎖も一本鎖DUのコンカテマーを合成するために適切に設計されたプライマーを用いて別々に増幅される。別々に増幅されたコンカテマーは個々に特異的な制限酵素切断部位を含むオリゴと混合され制限酵素により切断される。これら断片の一時的に二本鎖となった末端は連結され環状の一本鎖産物となる(Dahl, F., et al., PNAS 101(13): 4548−53, 2004)。この方法の利点は,各反応において合成される一本鎖環が連結され単一種類の単量体二本鎖環を形成し,そのため同一反応中に合成されるその他の多量体型から単量体を精製する必要性を避けることができることにある。その後単量体環はDNAジャイレースあるいは同様の酵素によりスーパーコイル化し,発現カセットの取り込み及び発現効率を改善させることができる。
【0052】
多数の実施態様において,特異的に指定の部位に結合するプライマーを有する環状の二本鎖DNA鋳型を用い,コンカテマー合成を開始させている。プライマーは安定性を向上させるため「核酸」のあらゆる異なる変形物で構成することができ,使用するDNAポリメラーゼのアニーリング温度により規定される様々な長さのものを用いることができる。プライマー配列は無作為配列あるいは特異的配列で構成され,特異的配列改変を含むよう設計すること,あるいは増幅された配列の操作あるいは解析を容易にする目的で鋳型に非相補的な標識あるいは検出配列を含めることができる。例えば,一実施態様においては,無作為のヘキサマーを用いて,プロセシング及び細胞へのトランスフェクションに際し望ましい効果を生み出すDUを効率的に増幅している。別の実施形態では,特異的に設計されたプライマーを用い,イニシエーション部位と一定の間隔を空けること,及び増幅反応条件を最適化するように親和性をコントロールされたプライマーを用いることにより,RCA反応をコントロールすることを可能にしている。テトラマー程度の短い配列特異的なプライマーが特異的DUを効率的に増幅するために用いられる。
【0053】
ほとんどの用途において,本発明において用いられたようにポリメラーゼ,制限エンドヌクレアーゼ,リガーゼ,及び他の酵素はその酵素の可溶性の形態をとる。しかしながら,制限酵素反応,ライゲーション及びスーパーコイル化反応を含む固相増幅反応あるいは固相プロセシング反応も増幅工程を合理化するために用いることができる。加えて,フィデリティ,効率,及びプロセシングあるいは最終産物を改善する目的で設計された異なる酵素(特にポリメラーゼ)の最適領域からなる融合タンパクを用いることができる。バクテリア,菌類,植物,昆虫,あるいは動物細胞において発現された一つあるいはそれ以上のアフィニティー標識(例えば,6XHis,S−Tag,カルモジュリン結合ペプチド,タンパクA等)を含む酵素のリコンビナント型も利用可能である。標識された酵素を用いる利点は,アフィニティークロマトグラフィーにより最終産物から酵素をすぐに除去できる点にある。精製に続いて,標識部分を介して固相マトリクスに固定され,回収された酵素は次の酵素反応に利用できる。
【0054】
増幅に続き,コンカテマーは少なくとも一つのDUを含む短い発現カセット(SECs)へと切断される。ここにおいて単一SECはDUの複数コピーから構成され送達と発現を最適化するように設計することができる。直鎖状SECは標的細胞による取り込みを容易にするため直鎖状断片として,環状化された断片として(CNAs),あるいはスーパーコイル化した環状断片(sCNAs)として直接投与できる。このように,増幅後のプロセシングは使用目的により異なる。
【0055】
SECのプロセシングは以下の一つあるいはそれ以上を含むことができる。その他の物理的あるいは酵素を用いた方法による更なるSECの切断;クレノーを利用する場合のような酵素による切断,あるいは化学的方法によるSEC末端の付加あるいはプロセシング;環状化されたCNAを合成するためSEC両端の分子内ライゲーション;II型トポイソメラーゼを含むジャイレース様酵素を用いたCNAのスーパーコイル化;いずれかの形態のSECに対し分子内塩基あるいは末端を改変するための酵素的あるいは化学的処理;二つあるいはそれ以上のSECの連結;あるいは機能的複合体を生成するためSECを特異的リガンドに結合させること。本発明に関して定義される用語リガンドには,DNA,RNA,PNA,LNAあるいはそれらの改変を含む核酸;標的化及び細胞による取り込みを容易にする,あるいは治療的効果を増すためのペプチド;酵素的に活性のある及び/又は物理的に機能的なポリペプチド;タンパクの機能を認識,結合及び改変する核酸であるアプタマー;蛍光,磁気,及び放射線標識された要素を含む生物物理学的な標識;及び核酸の安定化,あるいは産物の目的の細胞あるいは組織への標的化を容易にするポリマーが含まれる。
【0056】
本発明により合成されたDNAを用いて投与に成功し得る治療的用途は,抗体産生あるいは遺伝子サイレンシング等いくつかのDNA療法に向けた方法を含む。例えば,インフルエンザあるいはHIVウイルス等の病原体により引き起こされる疾患の予防あるいは治療のために設計された適切な発現カセットの投与が成功すると抗体がインビボで合成される。例えば,真核生物のプロモーター制御下にあるインフルエンザヘムアグルチニンタンパクをコードする配列は,インフルエンザAウイルスに感染した動物の液性及び細胞性免疫反応を誘発するために用いることができる。同様に,切断されたヒト免疫不全症ウイルス(HIV)エンベロープタンパクをコードする配列を発現させると,マウスにおいてHIVに対する効果的な免疫反応を引き起こすことができる。
【0057】
本発明において増幅された核酸はインビボにおいて標的化遺伝子サイレンシングを触媒することも可能である。痛みを伴う水泡及び体の様々な部位の痛みを引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV),水痘(初期感染)及び帯状疱疹(再発時)を引き起こす帯状疱疹ウイルスは同じファミリーに属するウイルスであり,ウイルス感染を達成するためにはICP4及びICP47の発現を必要とする。培養細胞へのトランスフェクションに際して,ICP4あるいはICP47に特異的なアンチセンスオリゴを発現する増幅されたSECはインビボでこれらのタンパクの発現を調節し,ウイルスの更なる増殖を最小限に抑えることができる。アンチ−ICP4転写産物のインビボにおける発現はICP4遺伝子を抑制することができ,細胞内のICP4タンパク発現を妨げる。同様の効果は本法により生成されたICP47発現カセットの発現の後にも見られる。
【0058】
ICP47は主要組織適合複合体(MHC)提示経路を阻害するように機能し,これが宿主の免疫原生に対する攻撃をウイルスがしないようにするために重要となっている。ICP47の遺伝子産物は感染細胞表面における抗原提示に関わるトランスポータータンパクに結合して主要組織適合複合体(MHC)クラスI抗原提示経路を阻害する。結果として,HSV感染細胞は細胞傷害性Tリンパ球による免疫認識から遮蔽される。このように,ICP47はHSV感染において重要な役割を果たす。
【0059】
肺がん細胞株,A549に本発明に従って増幅されたICP47 SECをトランスフェクションした場合,効果的にアンチセンス配列が発現し,ウエスタンブロットによる解析によれば,ICP47タンパクの生成を阻害する。単純ヘルペスウイルスのゲノム中には,同様に抑制される感染細胞タンパクがさらに存在する。
【0060】
その他の遺伝子抑制の標的には,ライノウイルス,コロナウイルス,アデノウイルス,インフルエンザ及びパラインフルエンザウイルス等の呼吸器系ウイルスがある。これらは一般的な風邪,肺炎,喘息,及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む上気道及び下気道の感染を頻繁に伴う。ヒトライノウイルス(HRV)は大きさにして約7.2kb長でキャプシドコートタンパク,RNAポリメラーゼ及び二つのウイルスプロテアーゼをコードする単一オープンリーディングフレームを含む一本鎖RNAゲノムを持つ。感染に際し,ウイルスタンパクは効果的に数千のウイルス粒子を宿主の機構を用いて産生させ,最終的にこれらの粒子は細胞が溶解するときに放出される。
【0061】
大多数のライノウイルスは細胞間接着分子I(ICAM−1)を細胞に感染するためのレセプターとして利用している。ICAM−1のメッセージに対するアンチセンス鎖をコードする増幅されたSECを発現させると,効果的にインビボでのICAM−1タンパク発現を阻害でき,ウイルス感染を最小限にするために有用であることが分かる。その他の呼吸器系疾患に対する有用な方法には,ウイルス粒子の生成に必要となるウイルスプロテアーゼのように,感染を触媒する必須タンパクの活性を阻害することを目的としたアンチセンス様分子(アンチセンス,アプタマー,トリプレックス形成分子,及び同様の分子)のインビボでの発現が含まれる。その他の方法には,SECを用いた病原体により引き起こされる組織反応のメディエーター(例えば,ブラジキニン,プロスタグランジン,タチキニン,ヒスタミン,及び様々なサイトカイン)の阻害,あるいはこれらメディエーターにより引き起こされる生理学的な効果を達成する細胞レセプターの阻害が含まれる。
【0062】
本発明の治療的用途の他の標的には,ヒトパピローマウイルス(HPVs)により引き起こされる感染の調節が含まれる。この感染は初期には良性の,非癌性疣贅の症状を示すが,悪性増殖へと発展する症例もある。例えば,生殖器HPVは一患者から他者へと性交渉及び口腔あるいは肛門性交により感染する。子宮頸部ウイルス感染細胞は,初期の良性疣贅から悪性細胞前駆体へと移行し,最終的に癌腫へと発展する。子宮頸癌はおそらくウイルス感染が癌に至る最もよく知られた例の一つである。ヒト及び動物において,細胞分裂は主にRb及びp53によって制御されている。HPVのE6タンパク及びE7タンパクは,直接Rb及び/又はp53に結合し,これらのタンパクの腫瘍抑制効果を阻害し,感染細胞の無秩序な複製を引き起こす(Didelot, C. et al., Intl J Oncology 23:81−87, 2003)。ウイルスが開始段階のみに作用するのに対して,時間と共に無秩序に増殖したいくつかの細胞では遺伝的構造に修復不可能な永続的変化が起こる。E6及びE7を阻害するように設計されたアンチセンス様構成を発現させることでウイルス感染は無効にされる。
【0063】
その他のHPV感染は,それ自身男性及び女性において生殖器及び肛門あるいはその付近の疣贅として現れ,本発明により生成された核酸を用いた治療用アンチセンス様物質の発現の妥当な候補である。女性においては,子宮頸部にも目に見える疣贅が現れる。この型の生殖器疣贅は,専門的には尖圭コンジロームとして知られ,一般的に6番及び11番の二つのHPV型と関連している。これらの疣贅は癌に進行することは稀であり,「低リスク」のウイルスであると考えられている。その他の性交渉により伝播されるHPVは,男性及び女性において生殖器あるいは肛門癌と関連している。これらは「高リスク」HPV型と呼ばれ,HPV−16,HPV−18,HPV−31,HPV−45,及びその他の型を含む。高リスクHPV型は,通常目に見える疣贅には含まれないが,高リスクHPV及び低リスクHPVの両方が子宮頸部における異常細胞の増殖を誘発しうる。どちらの型のHPV感染も治療用のインビボにおけるアンチセンス様物質発現により効果的に調節することができる。
【0064】
本発明の増幅反応は,バクテリア配列を含む欠損のないプラスミド,あるいはこれらの配列を除去するために改変されたプラスミドを増幅する目的にも利用することができる。例えば,1)欠損しているが完全な酵素活性をもつRTをコードするマウスモロニー白血病ウイルス逆転写酵素(MoMuLV RT)遺伝子;2)MoMuLV RTによる逆転写開始に必須の近傍領域を含むプライマー結合部位(PBS);3)アンチセンス,アプタマー,DNAエンザイム,あるいはトリプレックス形成を誘導する配列を生成することを目的とした標的遺伝子コーディング配列;及び4)逆転写反応を終結させるために設計されたステムループ構造を含む一本鎖DNA発現ベクター,pssXEを,本発明に従って欠損のない発現カセットとして効率的に増幅できる。増幅された産物はトランスフェクションされ,哺乳類,ウイルス,及びバクテリア遺伝子を効果的に抑制するために利用できる。細胞内での発現において,トランスフェクションされたRTは内在性宿主tRNA(例えば,tRNA ProあるいはtRNA Val)をRNA転写物の3’末端に位置するプライマー結合部位(PBS)に結合するためのプライマーとして利用し,ssDNA合成を開始する。逆転写後,ssDNAはmRNA鋳型がRTのRNase HあるいはRNase H活性によって分解されると放出される。
【0065】
核酸(SEC)の送達は安定化緩衝液に溶解した裸の核酸の標的受容体への単純な投与によって達成できる。本発明の実施態様は,細胞への核酸の標的化及び送達を援助する送達ベクター(Dias,N. Molec Cancer Ther 1:347−355;2002)も利用できる。いくつかの実施態様においては,弱毒化されたウイルスベクター系,すなわちウイルスパッケージング系で免疫遺伝的タンパクの少ないあるいは無いもの(Srivastava, I.K. and Liu, M.A. Ann Intern Med. 138: 550−559, 2003)を利用している。その他の実施態様は,核酸を封入するあるいは静電気的相互作用により核酸を結合する,中性あるいはカチオン性リポソームの使用を含む。これらの実施態様は,送達された核酸がエンドソーム分画に隔離されることを防ぐ目的でヘルパー分子(例えば,クロロキンあるいは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン)を使用することができる。市販のリポソーマルベクターには,リポフェクチン,ユーフェクチン,サイトフェクチン及びリポフェクタミンがある。
【0066】
その他の送達方法には,物理的作用,レセプターあるいはトランスポーターを介した機構により原形質膜への浸透性を調節するカチオン性ペプチドへの核酸の共有結合が含まれる。このような結合は,細胞質に直接送達され,速やかに核へ送られ発現されるため,送達された核酸の効果を向上させる(Luo, D. and Saltzman, W.M. Nature Biotech 18: 33−37, 2000)。さらに他の実施形態では,細胞に核酸を送達するために治療用核酸と静電気的に相互作用するカチオン性ポリマーを用いる。カチオン性ポリマーには,例えば,ポリ−L−リジン(PLL),ポリエチレングリコール(PEG),PEGブロックPLLデンドリマー,ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー,ポリアルキルシアノ−アクリル酸ナノ粒子,及びポリエチレンイミン(PEI)及びその複合体(例えば,マンノース−PEI,トランスフェリン−PEI,直鎖PEI)が含まれる。
【0067】
エアロゾルによる送達は,気道上皮及び肺表面への非侵襲性の送達形式である。例えば,PEI及び核酸を含む処方は中和により高レベルの気道あるいは肺へのトランスフェクションを達成可能である。このPEI−核酸複合体の適用は,多くのカチオン性脂質製剤より高レベルの遺伝子発現が達成でき,気道上皮及び肺柔組織の細胞へのトランスフェクションは非常に高レベルの効率(ほぼ100%)を示す。加えて,PEIに基づく製剤の度重なるエアロゾル投与に伴う毒性は非常に低い。この送達方法が誘発する腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)及びインターロイキン1ベータ(IL−1B)は,PEI−核酸複合体の静脈内注射あるいはカチオン性リポソーム−核酸複合体のエアロゾル送達と比較して最小限のもののみである。
【0068】
バクテリアにより生成されたプラスミドDNAを用いる場合に頻繁に起こる問題は,バクテリアによって処理されたDNAに固有の非メチル化モチーフに宿主が曝露されることに由来する。非メチル化されたDNAは,CpGに触媒されるサイトカイン反応及び炎症性サイトカインを誘発するが,これは肺に対する毒性及び治療用途の効率低下に関連する深刻な問題である。結果的に,バクテリアによって生成されたDNAの使用は,今まで用いられてきた現行の遺伝子治療法の多くにとって大幅な妨げとなっていた。PEIによるCpG反応の遮蔽はPEI−遺伝子エアロゾルを介して送達された遺伝子の持続的発現を容易にし,したがって,治療に対する反応の持続が達成される。本発明のセルフリー増幅法により生成された核酸と組み合わせて利用する場合,PEIに基づくエアロゾルは肺及び気道上皮に対するDNA治療のための極めて効果的な送達系となり得る。
【0069】
いくつかの実施態様においては,長期放出系も用いている。ポリ(D,L−乳酸−co−グリコリド)(PLGA)ミクロスフェア及びポリ(エチレン−co−ビニル酢酸(EVAc)マトリックスといった生体適合放出制御性ポリマーは,生理活性のある核酸を数ヶ月に渡って制御,調節し予期できる形で放出させることができ,両成分は治療目的の使用が米国食品医薬品局により承認されている。
【0070】
物理的送達系もまた利用可能である。エレクトロポレーションは治療薬を皮膚細胞,角膜内皮細胞及び筋肉を含むその他の組織に送達するために効果的である。圧力による,あるいは水圧注入は哺乳類の系では50%の効率まで達成可能である。その他の方法には,植物を含む様々な細胞型におけるDNA−脂質複合体の超音波による噴霧が含まれ,植物においては粒子衝突も有用である。
【0071】
セルフリー増幅工程のスケールアップは,半自動化あるいは完全自動化されたプラットフォームによって行われ,ここにおいては,温度及び静置時間と共に,塩,酵素及び核酸の順次添加が最適効率を得るために厳密に制御される(図4)。一実施形態においては,各反応容量を比較的小さく(<1ml)保ったまま反応回数を増加させることによってスケールアップが達成され,これによりマルチウェルプレートを用いて標準プラットフォームあるいは特別に注文したプラットフォームを用いて鋳型を同時に増幅できる(図5A)。もう一つの方法では,大量(kg単位)の単一核酸産物を環境制御下において発酵槽様容器を用い一回の実行で産生するため,より大きな容量(例えば,10リットル)を必要とする(図5B)。より大きな収量の産物を得るためにはより大きな容量が用いられる。異なる限度容量をもつ複数のプラットフォームは,限られた空間に平衡して設置することができ,様々な増幅容量の要求を満たすより大きな生合成設備の一部として連携して機能することができる。
【0072】
小容量での大量の核酸生産には粘性の高い反応混合液に試薬を混合するという問題が生じる。本発明の反応槽には,硬質の前成形容器あるいは内蔵式のプラスチック袋のように可塑性のある容器が含まれる。好ましい実施態様においては,反応混合液と接触する反応槽及びすべての構成材は清潔で,滅菌されており核酸配列のいかなる夾雑も含まない。硬質前成形容器の内容物は好ましくは反応槽内部に含まれる装置により混合されるが,再循環装置を用いてもよい。可塑性のある反応層では,好ましくは蠕動様ポンプの利用を含む再循環機構により混合されるか,あるいは自動圧搾装置あるいは核酸産物のせん断を避ける低エネルギーパルス装置等の外部の機械装置により混合される。
【0073】
内部装置は,電気的に速度制御され自動で時間的な調節が行われるプロペラ様攪拌装置(図6A),あるいは反応槽の内径内で上から下まで連続している軸に固定された穴あきディスクを用いて制御された液体置換工程(図6B)を含む様々に異なる機構を利用できる。このディスクは,液体中で最適な混合を提供するよう,様々な速度で上昇及び下降される。これら混合チャンバーは共に小さいチューブが各混合装置の軸に装着され,混合槽の外部に分離して補充された様々な在庫溶液が蠕動ポンプを用いて正確に制御され順次反応混合液へと送達されるようになっている放出装置を装備してもよい。
【0074】
別の実施態様では,反応混合液の安定した継続的な流れがチャンバーからポンプ輸送で送り出されてから戻る系を実施している。例えば,チャンバーの底部に位置する送出口は,流動体の小さな流れが添加される試薬と混合され,同じ反応チャンバーの上部に位置する入口を通じて再び流れて戻り,完全に混合されるようにしている(図6C)。蠕動ポンプ及び吸気弁は再循環工程中様々な溶質及び酵素の分注を制御し監視する(図6C)。
【0075】
また別の実施態様では,DNA混合物の揺変性の性質を利用しており,ここにおいて,混合物は円筒状に伸長した形状をとる。揺変性化合物は,化合物に加えられたせん断力の度合いに応じて粘性を変化させられる。通常,せん断力が増大すると揺変性化合物の粘性は低下する。いったんせん断力が除去されると,このような化合物は本来の粘性へと戻り始める。この実施態様においては,粘性のある反応混合液を含む容器には等間隔に開けられた穴があり,ここから処理に必要な化学物質が投与される。そのため,直径の小さいシリンダーを介した粘性の高い反応混合液を伸長することにより,混合を達成するのに十分な長期間にわたって粘性を十分に変化させ,シリンダー及び粘性が低くなった反応混合液にゆっくりと注入される試薬との局所的な混合を促進させる。
【0076】
装置には,好ましくは一つあるいはそれ以上の関連する物理的及び生化学的パラメーターのインライン(inline)リアルタイムモニタリングを含み,産物の安定性を確認し品質管理及び品質保証を維持する。これらは治療用途が許容される産物に必要とされる,適正製造基準認定(cGMP)に必須である。これには粘性,核酸濃度,溶液の濁度,導電率,pH,温度,タンパク含有率,エンドトキシン,バイオバーデン及び/又は系の構成材に由来する化学夾雑物を監視するコンピューターあるいは同様の手段を含む。
【0077】
直鎖状SECを環状の形態に処理する工程には,分子間反応よりも分子内ライゲーション(自己接着)反応を起こしやすいライゲーション工程を必要とする。従来の最終増幅産物の希釈は分子内ライゲーションを起こしやすい分子比率を操作するために利用できる。しかしながら,好ましい実施態様においては,少量の反応混合液を酵素及び緩衝液を含むライゲーション混合物(cocktail)に混合させることで,全体の反応容量を最小限にしている。一実施態様においては,増幅された産物が図6Cに示すように非常にゆっくりとした,あるいは脈動するポンプ速度を利用して反応混合液の流れに添加される。その他の実施態様では,ライゲーション混合物を含む二番目の反応槽へと増幅された反応混合液を滴下して分注することで,大容量のライゲーション反応混合液を発生させることなく希釈を達成する(図7)。毎回新しく一定分量が分注される際に分子内ライゲーション工程を最適化するため,各分量の添加には十分な時間が与えられる。一度一定分量のライゲーションが完了すると,環状DNAは酵素の基質にはならず希釈混合液の一部となる。それから次の一定分量が分注され,このサイクルは増幅されたDNAが全て分注されライゲーションされるまで繰返される。この工程は,初期増幅反応の大幅な希釈なしに分子内ライゲーションを可能にし,複数の分注チャンバーを組み込むことで複数の一定分量のライゲーションを同時に行うこと,及び処理時間の最小化を可能とする。
【0078】
産物の最終的な精製は,反応工程中に透過性膜に基づく方法を利用し合理化できる。これらの膜は,産物を保持したままで,増幅されたDNA反応混合液中の低分子量分子(塩,取り込まれなかったプライマー,dNTP,NTP及び他の小分子)の拡散を許容する。その他の反応構成要素に対し増幅されたDNAの選択的な残留を可能にするため,血液透析工程を改変した方法が利用できる。一度反応が完了すると,増幅反応は反応槽から特異的な分子量を遮断する膜からなるフィルターへと送り込まれる。DNAはこれらの小さいキャピラリーの膜を通過して分子量の小さい試薬が反応液から拡散する時点で少なくとも部分的に精製される。精製されたDNAは続いて,貯蔵されるか,品質評価され,さらに/あるいは最終的な用途のために分注されるか,あるいは後の解析のために直接一定分量に分けられて(aliquoted)貯蔵される。その他の実施態様は,供給される液体から高分子量化合物を分離するための低圧膜分離工程からなる限外ろ過精製工程を利用し最終RCA産物の望ましい精製を達成する。
【0079】
最終産物は,従来の方法を用い大きさ,形状,夾雑,及び発現容量に関して解析される。ゲル電気泳動,配列決定,及び生化学的解析あるいはHPLC解析が通常行われる。最終産物の発現は,リン酸化カルシウム法,エレクトロポレーションあるいは関連した技法等,標準的技法を用いた適切な細胞へのトランスフェクションによって検定される。
【0080】
増幅された産物の治療用化合物としての投与には,局所投与,静脈内投与,筋内投与及び組織内投与,鼻腔投与,坐薬投与,オマヤレザバーのように移植された貯蔵装置及び/又はポンプ,点眼薬投与,薬剤の口腔投与,及び超音技術を利用した送達が含まれるが,これに限定されない。送達媒体には,例えば,リポソームを介した輸送媒体あるいはポリマーを介した輸送媒体,並びに各種カプセル媒体あるいはタンパク標的化媒体,及び呼吸器を介した投与に適したエアロゾル担体が含まれる。
【実施例1】
【0081】
実施例1−β−ガラクトシダーゼ(LacZ−DU)の合成及びセルフリー増幅
a)プラスミドに基づく鋳型 pSV−β−ガラクトシダーゼベクター(Promega Corp. Madison, WI, USA)をEcoR I及びPst Iにより部分的に切断した。CMVプロモーター,Lac ZのORF及びSV40小T抗原終結配列を含む約4.2kbの断片(Lac Z−DU)を単離し,T4 DNAポリメラーゼによって平滑末端処理し,pGEMTM−7Zf(+)(Promega Corp. Madison, WI, USA)のSma I切断部位にクローニングし,pGEM−LacZ−DUベクターを作製した。Lac Z−DUを続いてXba IによってpGEM−LacZ−DUから切除し,ゲル精製し,T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA, USA)を用いて製造業者の推奨に従って環状化した。
【0082】
b)PCRに基づく鋳型 LacZ−DUをpVAXTM200−GW/lacZベクター(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)からBamH Iエンドヌクレアーゼ認識部位を含むプライマー対,フォワード(5’−CGGGATCCGACTCTTCGCGATGTAC −3’)及びリバース(5’−CGGGATCCCAGCATGCCTGC−3’)を用いて増幅した。Lac Z−DUは各プライマー200ng,10ng pVAXTM200−GW/lacZベクター;0.2mM dNTP;1x ヘラクレス緩衝液及び2.5UヘラクレスTMポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA, USA)を含む50μlの反応液で増幅した。増幅はロボサイクラーグラジエント 40(Stratagene, La Jolla, CA, USA)において以下の条件で行った:94℃で2分;5サイクル(92℃で30秒,40℃で30秒,72℃で5分);25サイクル(92℃で30秒,55℃で30秒,72℃で5分)及び72℃で10分。約4.2kbの増幅産物をBamH Iで切断し,ゲル精製及びT4 DNAリガーゼによる環状化を行った。
【0083】
c)無作為ヘキサマーによる増幅 10mMのトリス塩酸pH8,10ngの環状LacZ−DU及び200pmolの無作為ヘキサマー(Integrated DNA Technologies, Inc. Coralville IA, USA)を含む反応液を95℃まで3分加熱し,室温まで冷却した。Phi29 DNAポリメラーゼ(10U, New England Biolabs, Beverly, MA, USA);0.2mMのdNTP及び100μg/mlのBDAを添加した。増幅は,30℃で,50mMのトリス塩酸(Tris−HCl)pH7.5;10mMの塩化マグネシウム(MgCl);10mMの硫酸アンモニウム((NHSO),4mMのDTT中で16時間行なった。増幅に続いてPhi29 DNAポリメラーゼを熱失活させ(65℃で5分),増幅したLacZ−DUコンカテマーをエタノール/塩沈殿し適切なエンドヌクレアーゼ(Xba IあるいはBamH I)にて製造業者の推奨に従い切断した。
【0084】
d)特異的プライマーによる増幅 先述と同様の条件を用い,規定された配列及び反対の相補鎖のプライマー二つを2788塩基対DUの選択的な増幅に利用した。規定されたプライマー対は各々200pmolの濃度で用い,以下の配列からなる。フォワードプライマー:5’−CTGCCAACAAGGTACTCG−3’;リバースプライマー:5’−AGCTGCTACTGGGTCTAG−3’である。増幅は先述と同様に行われ増幅反応の成功はゲル電気泳動によって評価された。
【0085】
e)配列の規定された単一ヘキサマーによる増幅 Lac Z−DUの8つの異なる部位(4つはリバースDNA鎖の464,1325,2579及び3911の位置;4つはフォワード鎖の750,2871,3239及び3260の位置)にアニールする400pmolのヘキサマー5’−GpGpApApApA−3’及び10ngの環状LacZ−DUを40mMのトリス塩酸pH8,10mMのMgCl中で95℃まで3分加熱し室温まで冷却した。Phi29 DNAポリメラーゼ(10U, New England Biolabs, Beverly, MA, USA);1mMのdNTP;5%のグリセロール;0.7Uの酵母由来無機ピロホスファターゼ(Sigma, St.Louis, MO, USA)及び100μg/mlのBSAを添加した。増幅反応は30℃で50mMのトリス塩酸pH7.5;10mMの塩化マグネシウム;10mMの硫酸アンモニウム,4mMのDTT中で16時間行った。増幅に続いてPhi29 DNAポリメラーゼを熱失活(65℃で10分)し,増幅されたLacZ−DUコンカテマーをエタノール/塩沈殿して酵素製造業者の推奨に従い適切なエンドヌクレアーゼ(Xba I)により切断した。エンドヌクレアーゼを熱失活(65℃で20分)した後,直鎖LacZ−DUの環状化を100fmolのDNA当たり約0.1ユニット/μlのT4 DNAリガーゼ(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)を含むライゲーション緩衝液(50mMのトリス塩酸pH7.6;5mMの塩化マグネシウム;1mMのATP;1mMのDTT;5%のPEG−8000)中,約22℃(あるいはやや低い温度)で16時間行った。続いて環状化LacZ−DUをエタノール/塩沈殿して10mMのトリス塩酸pH8に再懸濁した。
【0086】
f)エキソヌクレアーゼ耐性の配列が規定された単一ヘキサマーを用いた増幅 先述したものと同様の条件を用い,3’末端に二つのチオリン酸エステル結合を持つ規定されたヘキサマー(5’GpGpApApApA−3’)を用いてLacZ−DUを増幅した。
【0087】
g)配列の規定された単一ペンタマーを用いた増幅 先述したものと同様の条件を用い,配列が規定されたペンタマー(5’GpGpApApA−3’)を用いてLacZ−DUを増幅した。このペンタマーは,LacZ−DU中の19の異なる部位,8つはリバース鎖の465,889,1326,1695,2580,3666及び3912の位置;11箇所はフォワード鎖の80,119,191,602,750,912,2871,3239,3606,3815の位置にアニールする。
【0088】
h)エキソヌクレアーゼ耐性の配列が規定された単一ペンタマーを用いた増幅 先述したものと同様の条件を用い,二つの3’末端にチオリン酸エステル結合を持つ配列が規定されたペンタマー(5’GpGpApApA−3’)を用いてLacZ−DUを増幅した。
【0089】
i)ポリメラーゼ混合物を用いた増幅 1−e節で説明したとおりの条件を用い,Phi29 DNAポリメラーゼ及びT4 DNAポリメラーゼが比率10:3から3:10(Phi29酵素ユニット:T4酵素ユニット)の範囲で存在する条件下においてLacZ−プラスミドを増幅した。その他の鋳型,すなわち,Luciferase DUについても最適な増幅条件が有効であることが示された。
【実施例2】
【0090】
実施例2−ルシフェラーゼ(Luc−DU)の合成及びセルフリー増幅
pGL3ベクター(Promega Corp. Madison, WI, USA)をSal I及びXho Iで切断した。SV40プロモーター,ルシフェラーゼORF及びSV40小T抗原終結配列を含む約2.17kbの断片(Luc−DU)を単離し,精製し,T4 DNAリガーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて製造業者の推奨に従って再環状化した。
【0091】
a)セルフリー増幅 ヘキサマー5’−ApApTpTpGpC−3’及び5’−ApGpCpApApT−3’を各々400pmolと反応液25μlあたり10ngの環状Luc−DUを含む反応液を95℃まで3分,40mMのトリス塩酸pH8;10mMの塩化マグネシウム中で加熱し,室温まで冷却した。Phi29 DNAポリメラーゼ(10U,New England Biolabs, Beverly, MA, USA);1mMのdNTP(25/25/25/25);5%のグリセロール;0.7Uの酵母由来無機ピロホスファターゼ(Sigma, St.Louis, MO, USA)及び100μg/mlのBSAを添加した。増幅反応は25μl反応液において30℃で50mMのトリス塩酸pH7.5;10mMの塩化マグネシウム;10mMの硫酸アンモニウム,4mMのDTT中で16時間行った。増幅に続いて,Phi29 DNAポリメラーゼを熱失活(65℃で10分)し,増幅されたLuc−DUコンカテマーをエタノール/塩沈殿して酵素製造業者の推奨に従いエンドヌクレアーゼ(BamH I)により切断した。エンドヌクレアーゼを熱失活(65℃で20分)した後,直鎖Luc−DUの環状化をDNAの1μgあたり0.1ユニット/μlのT4 DNAリガーゼ(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)を含むライゲーション緩衝液(50mMのトリス塩酸pH7.6;5mMの塩化マグネシウム;1mMのATP;1mMのDTT;5%のPEG−8000)中にて14℃で12から16時間行った。環状化Luc−DUをエタノール/塩沈殿して10mMのトリス塩酸pH8.0に再懸濁した。
【実施例3】
【0092】
実施例3−増幅されたDNAのヒト細胞における発現
ヒトA549肺癌腫細胞(ATC)を,熱失活した10%のウシ胎児血清(Hyclone, Logan, UT, USA),100U/mlのペニシリン,100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)を補完したDulbecco‘s modified Eagle’s medium(DMEM; Invitrogen Carlsbad, CA, USA)で培養し,37℃,5%二酸化炭素環境中に静置した。
【0093】
a)DNAトランスフェクション トランスフェクション前日,A549細胞を6ウェルプレートに1×10細胞/mlの濃度で播いた。GenePORTER 2トランスフェクション試薬(Gene Therapy System, San Diego, CA, USA)を製造業者の示す使用法に従い細胞へのトランスフェクションに用いた。簡潔に説明すると,セルフリー増幅されたDUあるいは元のプラスミドDNA(Promega Corp. Madison, WI, USA)を50μlのDNA希釈緩衝液B中において2μgのキャリアーpssXE DNA(Chen and McMicken, Gene Ther 10:1776−1780, 2003)と混合し,5分間室温で静置した。DNA溶液は,50μlの血清/抗生物質なしのDMEMにてあらかじめ希釈された7μlのGenePORTER 2試薬と混合し,室温にてさらに5分静置した。その間,A549細胞をPBSにて洗浄し0.9mlの血清/抗生物質なしのDMEMを上層し,続いてDNA/GenePORTER溶液を加えた。4時間通常の生育環境にて静置した後,細胞をPBSにて洗浄しトランスフェクション培地を10μl/mlのBooster 3(Gene Therapy System, San Diego, CA, USA)を添加した通常の増殖培地に置換した。LacZをレポーターとして用いた実験においては,50−100ngのLacZ−DU(約4.2kb)を用いたトランスフェクションを100ngの元のpGEM−LacZ−DUプラスミド(約7.2kb)を用いたトランスフェクションと比較した。ルシフェラーゼ酵素をレポーターとして用いた他の実施例においては,249ngのLuc−DU(約2.17kb)を570ngの元のpGL3ベクター(5.01kb; Promega Corp.)と比較した。
【0094】
b)トランスフェクションされた細胞でのβ−ガラクトシダーゼ活性の検出 トランスフェクションから24時間後,A549細胞をPBSで洗浄(rinse)し,200/250mlの0.1Mリン酸緩衝液pH7.5;0.02%のトライトンX−100中で室温にて一時間溶解した。続いて細胞残屑を10−13,000rpm,5分の遠心によって除去した。細胞溶解液の合計タンパク濃度は280nmの吸光度あるいは改良型ブラッドフォード解析によって検定した。合計タンパク量のうち50μgを0.01Mのリン酸緩衝液pH7.5;0.1Mの塩化マグネシウム,45mMのβ−メルカプトエタノール及び0.01mMの(p−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピロニダーゼ)と1ml反応液中にて混合した。1−16時間37℃で静置した後,410nmの吸光度を測定した。
【0095】
c)トランスフェクションされた細胞のルシフェラーゼ活性の検定 トランスフェクションから24時間後,細胞を先述のとおり処理した。続いて細胞溶解物を等しい合計タンパク量を反映するよう調整し等量の2x Bright−GloTM基質(Promega Corp.)と混合した。光放出を速やかにTurner Biosystem 20/20ルミノメーターで記録した。
【実施例4】
【0096】
実施例4−増幅条件
a)増幅緩衝液
グリセロール濃度−各々10ngのLuc−DU鋳型を用いる二つの増幅反応を実施例2で説明したように準備した。一方は,グリセロール添加を省き水で置換した。増幅に続き,DNAをエタノール/塩沈殿し260nm及び280nmの波長における吸光度測定に先駆けて適切な制限酵素で切断した。グリセロール濃度が4%w/v以下(Phi29 DNAポリメラーゼ及び無機ピロホスファターゼストック溶液からの繰り越し)においては増幅効率に5.65%の上昇が見られた。
【0097】
分子スポンジの添加:各々10ngのLuc−DU鋳型を用いる二つの増幅反応を実施例2で説明したたように準備した。一方には,5%w/vのPEG−8000を添加した。増幅に続き,DNAをエタノール/塩沈殿し260nm及び280nmの波長における吸光度測定に先駆けて適切な制限酵素で切断した。増幅収量に対しいかなる明確な効果も見られなかった。
【0098】
b)鋳型濃度 1.156nMから29nMの濃度範囲を持つLuc−DU鋳型を含む増幅反応液を実施例2で説明したように調製した。増幅に続き,DNAをエタノール/塩沈殿し260nm及び280nmの波長における吸光度測定に先駆けて適切な制限酵素で切断した。核酸濃度は波長260nm及び280nmにおける吸光度測定によって決定した。上述の増幅条件下で578nMの鋳型を用いたとき670倍の増幅が見られた。
【0099】
c)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)濃度 578nMのDUを含む増幅反応液を実施例2で説明したように調製した。濃度1mMから9mMの範囲でdATP,dCTP,cGTP及びdTTP(25/25/25/25の比率)を含む反応を検査した。増幅に続き,DNAを適切な制限酵素で切断し核酸濃度を吸光度測定により決定した。上述の増幅条件下で6mMのdNTP存在下で増幅は約3000倍となった。
【0100】
d)鋳型に対するdNTP比率のカスタマイズ(customization) 578nMのLuc−DU鋳型を含む増幅反応を本質的に実施例2で説明したとおり行った。dATP,dCTP,dGTP及びdTTPを各々増幅混合液に最終濃度9nMとなるように添加した。全体に対する各dNTPの比率はルシフェラーゼ鋳型DNAユニットの組成を反映するように,すなわち27.2%A,22.3%C,24.2%G及び26.3%Tを含むように調節した。増幅に続き,DNAをエタノール/塩沈殿し適切な制限酵素で切断した。核酸濃度は波長260nm及び280nmにおける吸光度測定によって決定した。上述の増幅条件下で578nMの鋳型を用いたとき約2,780倍の増幅が記録された。
【0101】
e)Phi29 DNAポリメラーゼ濃度 増幅反応液を上述のとおり調製し,9mMのdNTP存在下で578nMのDNA鋳型に対し1から20Uの範囲にわたる様々なPhi29 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)濃度を検査した。増幅に続いて,DNAを適切な制限酵素で切断し核酸濃度を吸光度測定により決定した。578nMの鋳型に対し1UのPhi29 DNAポリメラーゼが290倍の増幅を起こすために十分であり,20UのPhi29 DNAポリメラーゼは10ngの鋳型DNAを3,985倍に増幅した。
【0102】
f)配列の規定されたエキソヌクレアーゼ耐性ヘキサマー濃度 増幅反応液を上述のとおり調製し,800pmolまでの様々な濃度の配列が規定されたエキソヌクレアーゼ耐性ヘキサマーを検査した。増幅に続いてDNAを適切な制限酵素で切断し核酸濃度を吸光度測定により決定した。プライマー濃度を初期実験条件(実施例2)から2倍に増加させると増幅収率が1.25倍に増加した。
【0103】
g)一段階増幅制限酵素反応 578nMのLuc−DU鋳型を含む増幅反応液を実施例2で説明したように調製した。増幅に続き,Phi29 DNAポリメラーゼを65℃で20分間反応させて熱失活し,6UのBamH I酵素を直接反応液に添加した。37℃で2時間反応させた後,酵素を熱失活しDNAをエタノール/塩沈殿した。DNA切断効率は上述のとおりアガロースゲル電気泳動により評価した。
【0104】
h)様々な温度条件 先述(実施例1)のように設定された条件において,LacZ−プラスミドの増幅を25℃から34℃の様々な温度にて実施した。最適温度はDNA収量及び品質によって決定した。DNA収量は吸光度測定法により決定し,DNA品質は完全長LacZ遺伝子(3046bp)をレポーターとして改良型クンケル法(Nelson, J.R. et al., BioTechniques 32:S44−S47, 2002に記載された(Kunkel T.A; JBC 260:5787−5796, 1985))を用いたエラー率によって評価した。32℃で行なわれた増幅反応により,3300倍以上の増幅及び1.22×10−6のエラー率(報告されているPhi29 DNAポリメラーゼのエラー率から2.5倍の低下)となった。
【0105】
i)様々な反応回数による増幅 実施例1で説明した条件を用い,LacZ−プラスミドの増幅を32℃において1から16時間にわたる様々な期間(反応回数)で行った。各時点においてDNAポリメラーゼを65℃で20分間反応させて熱失活しDNAを適切量の制限エンドヌクレアーゼを直接反応液に添加し切断した。最適な反応時間はDNA収量及び品質によって決定した。最適な反応時間では,3800倍以上の増幅がポリマー化エラー率1.7×10−6で得られた。
【0106】
j)より低い酵素及び鋳型濃度での増幅 実施例1で説明した条件を用い,LacZ−プラスミド及びルシフェラーゼ−DUを,全量の酵素(Phi29 DNAポリメラーゼ,T4 DNAポリメラーゼ及び無機ピロホスファターゼを含む)濃度の半分量及び289nMのDNA鋳型を含む反応液中で増幅した。増幅反応は32℃で16時間行った。ポリメラーゼの熱失活及びそれに続く増幅産物のエンドヌクレアーゼ切断の後,上述のとおりDNA収量及び品質を決定した。初期実験条件(実施例1)から酵素及び鋳型濃度を半量にすると,5000倍以上の増幅がポリマー化エラー率7.7×10−7(報告されているPhi29 DNAポリメラーゼのエラー率から約4倍の低下)で得られた。
【0107】
k)RCAにおけるコンカテマー形成の除去あるいは低減 実施例1で説明した条件を用い,LacZ−プラスミドをDNAポリメラーゼに加え2Uのメチル化感受性SexAIエンドヌクレアーゼを含む反応液中で増幅した。反応は32℃で16時間行った。増幅及び切断に続き,合成されたDNAのアガロースゲル電気泳動による解析により分離した(discreet)直鎖DNAユニットが確認された。
【実施例5】
【0108】
実施例5−分子内ライゲーションの条件
a)T4 DNAリガーゼ セルフリー増幅されたDNAを制限酵素にて切断し,先述の酵素の熱失活及びDNAのエタノール/塩沈殿を行った後,直鎖DUの分子内ライゲーション(セルフライゲーション)を,それぞれ1xライゲーション緩衝液(5%のPEG−8000;50mMのトリス塩酸pH7.5;10mMの塩化マグネシウム;1mMのDTT;1mMのATP)中に700fmolのDNAを含む,138μl及び690μlの反応液で行った。様々な量のT4 DNAリガーゼ(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)を添加し(0.6−1.5U),14℃で少なくとも一時間ライゲーションを行った。先述のDNA対するライゲーション効率はアガロースゲル電気泳動により視覚的に決定された。690μl反応液中のfmolのDNA当たり290μUのT4 DNAリガーゼが単量体環状DUの合成を促すために十分であると判断された。
【0109】
b)その他のDNAリガーゼ DNAを適切な制限酵素で直鎖化し先述の酵素を熱失活した後,直鎖DUの分子内ライゲーション(セルフライゲーション)を行った。ライゲーションはE.coli DNAリガーゼ(NEB)あるいはTaq DNAリガーゼ(NEB)を用い,製造業者の推奨に従いそれぞれ14℃及び45℃にて行った。ライゲーション効率はアガロースゲル電気泳動により視覚的に決定され,T4 DNAリガーゼ産物と比較した。
【実施例6】
【0110】
実施例6−二本鎖環状DNAの濃縮
T4 DNAによるライゲーション産物をエタノール/塩沈殿し,製造業者の推奨に従い5UのATP依存性DNaseを含有する20μlのPlasmid SafeTMDNase緩衝液(Epicenter)に再懸濁した。37℃で30分静置した後,DNase酵素を65℃で20分間反応させて熱失活した。反応効率はアガロースゲル電気泳動によって視覚的に決定し,適切な制限酵素によって再度直鎖状に切断できる環状dsDNAのみが存在することを確認した。
【実施例7】
【0111】
実施例7−増幅されたDNAのマウスにおける発現
直鎖状のもの,ホスホロチオ酸化された直鎖状のもの,環状のもの,Plasmid−SafeTMATP−依存性DNase(Epicenter, Madison, Wisconsin)処理された環状のものを含む様々な形状のLuc−DUが調整された。1μgの様々な形状のLuc−DUをマウス当たり200μlの最終容量,N:P比率15:1でPBS中にてMAA−PEIと複合体を形成させた。各群は5匹のBALB/cマウスからなり,マウスに対し単一形式のMAA−PEI−Luc−DUを尾部静脈から麻酔無しに投与した。マウス肺を投与から24時間後に回収し,ルシフェラーゼ活性測定用緩衝液にホモジナイズした。ルシフェラーゼ遺伝子発現はPromegaのBright−GloTMキットを用い,製造業者の取扱説明書に従い測定した。
【0112】
【表1】

【0113】
DNAにMAA−PEIを複合させないその他の実験において,ルシフェラーゼ酵素に対する発現カセットをより強いプロモーターに置換し,先述の実験を繰り返した。結果を以下の表にまとめる。
【0114】
【表2】

【0115】
“裸の”DNAを用いた実験も行った。この実験においては,ルシフェラーゼ遺伝子を発現する様々なDNA15μgを,担体を添加することなしに皮内投与によってマウスに導入した。投与部位としては尾の上部及び中間部を選択した。投与から24時間後,実験動物を殺し,尾の上部及び中間部を解剖してホモジナイズし,先述のとおりルシフェラーゼ活性を評価した。これらの実験の結果を以下にまとめる。
【0116】
【表3】

【実施例8】
【0117】
実施例8−マウスにおけるHIV−1タンパクgpl60に対する遺伝的免疫付与
ヒト免疫不全症ウイルス(HIV−1)エンベロープタンパクgpl60の改変型(gpl45ΔCFl;Chakrabarti et al., J. Virol. 2002; 76: 5357−68; Kong et al., J. Virol. 2003; 77: 12764−72)を発現する真核生物カセットを鋳型として用い,直鎖状gpl45ΔCFl−DU発現カセットを実施例2で説明したとおり大量生成した。
【0118】
すべての動物実験は動物研究に対する施設内倫理委員会(Baylor College of Medicine; BCM)による承認を受けた。gpl45ΔCFlタンパクを発現するスーパーコイル化したプラスミドDNA及びセルフリー増幅された直鎖状DNA(プラスミド骨格の配列を含まない)を生理食塩水に希釈し,BALB/cマウスの前脛骨筋に投与した。各マウスは0日目,14日目及び28日目に各脚に50μgの投与を受けた。血液サンプルは14日目(2週間),28日目(4週間),42日目(6週間)及び56日目(8週間)に回収した。生理食塩水のみを投与したコントロール群に加え,各DNA型に対し5匹のマウスからなる群を用いた。各血液サンプル由来の血清を酵素免疫測定法(ELIZA)に用い,gpl60に対するIgG抗体力価を評価した。簡潔に説明すると,96ウェルマイクロ力価測定プレートを,50mMのカルボン酸緩衝液pH9.5中に12.5ng/μLの精製リコンビナントHIV−1IIIBgpl60(Advanced Biotechnologies Inc.)を含む溶液でコートした。ウェルを続いて0.05%のTween20を含むPBS(PBS−T)にて洗浄し,PBS−Tに3%BSAを含む溶液でブロックした。系列希釈したマウス抗血清100μl(3%BSA中)をプレートに上層し4℃で一晩静置した。プレートをPBS−Tにて洗浄し,1:10,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ヤギ抗マウス二次抗体(Pierce)100μlで満たした。十分な洗浄後,3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Sigma)50μlを添加し比色分析反応を0.5規定硫酸(HSO)にて停止した。最適な濃度測定は460nmにて測定した。
【実施例9】
【0119】
実施例9−増幅産物の精製
最終的な形状(直鎖状,環状あるいはその他)に一度処理されると,増幅産物はセファクリルSF−1000(GEHC)によるゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製される。簡潔に説明すると,DNAは1.7m×1.5cmのEconoカラム(Bio−Rad)に加えられ,10mMのトリス塩酸pH8,150mMの塩化ナトリウム,5mMのEDTAにて流出速度1mL/3.6分で溶出した。各溶出画分に含まれるDNAをアガロースゲル電気泳動によって測定し,望ましい画分を回収した。続いて画分をCentriplus 300カートリッジ(Millipore Corp.)を用い製造業者の推奨に従って濃縮した。
【0120】
別の方法として,FPLCあるいはHPLC系に装着したQセファロースカラムを用いたアニオン交換クロマトグラフィーを利用できる。低塩緩衝液(LSB;10mMのトリス塩酸 pH8)に溶解したDNAをカラムに上層する。カラムを10倍容量のLSBで洗浄する。DNAはレジンからカラムの20倍容量の10−100%直線低濃度勾配を持つ溶出緩衝液(EB;LSB及び3M塩化ナトリウム)により溶出した。溶出液を254nmにおいて測定し,DNAを含むピークのみを回収した。続いてMillipore社のPellicon II UF膜を用いた限界ろ過により脱塩を行った。DNAの品質/完全性(integrity)をアガロースゲル電気泳動にて解析した。
【実施例10】
【0121】
実施例10−セルフリー増幅されたDNAの品質評価
各産物ロットには,個別の識別番号を割り当て,DNA濃度,純度及び信頼性を決定するため一連の検査を行った。DNA濃度は260nmにおける吸光度によって決定した。DNA純度は複数の方法により決定した。吸光度A260/280比,リアルタイムPCR(ゲノムDNAの夾雑),HPLC(RNAの夾雑),マイクロ−BCA検定(タンパク含有量,Pierceキット)及びLAL検定(エンドトキシン含有量,Cambrexキット)により決定した。加えてバイオバーデン検査を行い最終産物の無菌性を確認した。各検定の都度,薬品業者が定めた仕様に従う必要があった。
【0122】
【表4】

【実施例11】
【0123】
実施例11−ウサギにおけるB型肝炎ウイルスに対する遺伝的免疫付与
B型肝炎ウイルス小表面抗原(HBs(S); Davis et al., 1993; Human Mol. Gen. 2: 1847−1851.)を鋳型として利用し,直鎖HBs(S)−DU発現カセットを実施例2で説明したように大量生成した。3匹の雌NZアルビノウサギからなる群を0日目,28日目,及び56日目において各回の合計投与量400μgのプラスミドあるいはセルフリー増幅された同等量の直鎖DNAを両側(後肢)筋内投与することにより免疫付与した。各サンプル由来の血清を0日目,28日目,42日目,56日目及び63日目に回収し,確立されたELIZA法により解析し液性免疫反応の程度を決定した。図9はHBs(S)スーパーコイル化プラスミドあるいはセルフリ−HBVs(S)−DU直鎖DNAで免疫付与したウサギ3匹に由来する血清の,28日目及び63日目(0日目で正規化した)のELIZA解析吸光度を示す。
【実施例12】
【0124】
実施例12−マウスにおけるインフルエンザHINIウイルスに対する遺伝的免疫付与
各実験につきBALB/cマウスを5匹ずつ用いた。すべての動物実験は動物研究に関する施設内倫理委員会(Baylor College of Medicine; BCM)の承認を受けた。インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(A/PR8;HINI)をBCMの呼吸器病原体研究ユニットより入手した。DNAによる免疫付与はPBS中の50μg全核酸を用い,上述のとおり行った。ウイルス系統A/PR8/34(HA)由来のインフルエンザヘムアグルチニンのオープンリーディングフレームをpCAG−HA−WPREプラスミド(Garg et al, 2004, J. Immunol. 173(l):550−8)より単離し,pCMV−MCS(Stratagene)にサブクローニングしてpCMV−HAを作製した。プラスミド骨格を除いたCMV−HA発現カセットを実施例2で説明したように増幅した。動物には3回,0週目,2週目及び6週目において投与した。5つの異なる実験を実施した。1)マウスを50μgのpCMV−HAにより免疫付与した。2)マウスを50μgのHA−DUにより免疫付与した。3)マウスを25μgのHA−DU及び25μgのあらゆる発現カセットの骨格を除いたプラスミドDNA(エンプティーベクター,pEV)の混合物により免疫付与した。4)マウスを16.7μgのHA−DU及び二つのサイトカイン発現プラスミド,すなわち16.7μgのpCMVi−GMCSF及び16.7μgのpCAGGSIL12(Orson et al., 2005, Protection against influenza infection by cytokine enhanced aerosol genetic immunization (In Press))の混合物により免疫付与した。5)マウスを16.7μgのpCMV−HA及び上述の二つのサイトカイン発現プラスミドの混合物により免疫付与した。
【0125】
免疫付与の8週間後,血清サンプルを各動物から回収し,ウイルス中和力価解析を行った。免疫付与実験において回収された血清を熱失活し(56℃で30分),標準化されたマイクロ中和試験を用いて中和効率をインビトロで評価した。簡潔に説明すると,血清サンプルを96ウェル丸底型組織培養プレート(Falcon 3077)2つを一式とし,MEMを希釈液に用い1:2に系列希釈した。その後約100メジアンの50%組織培養感染量(TCID50)のA/PR8ウイルスを各ウェルに添加した。検査ウイルスの逆滴定もこの時点で行った。血清及びウイルスを含むプレートを37℃にて90分間静置し,後に丸底型プレートの内容物を単層のMadin Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を含む新しいプレートに移した。37℃にて一晩静置した後,各ウェルの培地を除去し2μg/mlのWorthingtonトリプシン(Worthington Biochemical Corp., カタログ番号 32C5468),ペニシリン及びストレプトマイシンを含み,血清を含まないMEMで置換した。4日後,洗浄しPBS中に再懸濁した0.5%トリ血球細胞懸濁液(rbc)を各ウェルに添加した。血清コントロールウェル中のrbcが堅固なボタンを形成した時点で,各ウェルのヘムアグルチニン化パターンを読み取り記録した。rbcの堅固なボタンが見られるウェルはFV陰性と考えられ,拡散したヘムアグルチニン化パターンが記録されたウェルはウイルスに対し陽性であると考えられた。図10は,様々な遺伝的免疫付与実験に対しウイルス複製が阻害される限界希釈率として記録したウイルス中和力価を示す。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は高品質核酸の合成方法及びその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は有用な鋳型を作成する多様な機構を示す。例えば,鋳型はプラスミド改変,PCR増幅,化学合成,あるいはcDNA合成によって生成される。
【図2】図2は本発明の一実施態様に関するRCA法に基づく増幅工程を示す。この工程は環状の鋳型からコンカテマーを合成するためにポリメラーゼを用いる。コンカテマーは少なくとも一つの欠損のない発現カセットを含む小さいフラグメントに処理される。合成された産物は短い直鎖状ユニット,環状化された核酸(CNAs),あるいはスーパーコイル化された環状核酸(sCNAs)として用いることができる。
【図3】図3は本発明のその他の実施態様に関する方法を示す。この方法は二本鎖鋳型のフォワード鎖(A)及びリバース鎖(B)を別々に増幅する。二つの分離した反応槽において,各鎖を増幅し環状化して一本鎖環を形成する。各槽においては鎖特異的なプライマーを用いて一つの鎖のみが増幅される。その後,制限酵素切断部位の配列(OR1あるいはOR2)からなる二番目のオリゴヌクレオチドを一本鎖におけるあらかじめ設計された部位にアニール化させ,短い断片の二本鎖鋳型が形成され制限酵素による切断が可能となる。切断に続き,変性させる前に,二本鎖末端をDNAリガーゼにより環状化する。ライゲーションに続き,オリゴヌクレオチドを変性させ一本鎖環を形成させ,次に相補的な一本鎖環と結合させて単量体のみを含む二本鎖環を形成させる。本方法は二量体,三量体及び他の多量体副産物の形成を最小にする。
【図4】図4は本発明の一実施態様に関するRCA工程のスケールアップを示す。この工程は鋳型,プライマー,緩衝液要素及び酵素の,指定時間における段階的な添加及び指定温度への変化を含む。これにより産物の大量生成を短期間に行う効率的な方法を提供できる。ライゲーションに先駆けて反応容量を希釈することにより単量体環状産物の生成が優勢となる。
【図5】図5は自動化された増幅装置の設計を示す。(A)は多数の1ml以下の容量からなる個々の反応により多数の異なる鋳型を同時に増幅するために用いられるモデルを示す。(B)は大量の単一DNA産物合成を可能にする単一の槽の利用を示す。(1)反応パラメーターをコントロールするためにプログラム可能なコンピューターへのアクセス部;(2)反応パラメーターを評価し調整するためのモニター:(3)酵素,緩衝液,及び他の構成物を含むストック溶液のための温度調節されたチャンバー;(4)反応槽に試薬を添加するための分注口;(5)温度調節された反応槽;(6)多数のウェルを持つディスペンサー;(7)多数のウェルをもつ反応槽プレート;(8)多数のウェルをもつプレートのための温度調節されたチャンバーである。
【図6】図6は粘性のある反応混合液を混合するための様々な方法を概略的に示したものである。(A)プロペラ様混合槽;(B)孔の開いたディスクによる混合槽;(C)蠕動ポンプを用いた再循環混合槽である。(C)においては,(1)は(2)に保持された試薬を目盛測定により添加するための調節可能な自動化制御部及び引き込み口である。(1)の調節可能な制御部により試薬と反応混合液を制御して混合することができ,送出口の反対側に位置するチャンバーに試薬の加えられた反応混合液を戻すことにより反応混合液を全体的に混合することができる。試薬なしに連続的なポンプによる送り込みを行うことで完全な混合が容易となる。
【図7】図7は分子内ライゲーションの工程を示す。槽(B)におけるDNA増幅及び切断の後,反応混合液をゆっくりとライゲーション混合液を含む二番目の槽(A)に加える。槽(A)にDNAをゆっくりと加えることによりDNAが十分に希釈され単量体CNA形成が容易となる。
【図8】図8は本発明の一実施態様に従って合成されたプラスミド,短い発現カセット(合成DNA,synDNA),及びコントロール溶液により免疫付与したBalb/cマウスにおいて生産されたgpl60に対するIgG抗体の力価を示す。
【図9】図9は本発明の一実施態様に従って調製されたB型肝炎ウイルス表面小抗原(small surface antigen)(HBs(S))の配列を含むプラスミドあるいは合成DNA(発現カセット)を用い,ウサギに免疫付与した結果を示す。これらの結果は本発明の合成発現カセットがウサギにおいて免疫反応を誘導するために効果的であることを明確に示す。
【図10】図10はBALBcマウスのインフルエンザH1N1ウイルスに対する免疫付与の結果を示す。図はウイルス中和力価を様々な遺伝子による免疫付与実験に対しウイルス複製が阻害される最終希釈率として記録したものを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鋳型−プライマーの複合体を形成させるため,反応液中の環状鋳型を少なくとも鋳型の一方の鎖に相補的な一つあるいはそれ以上のプライマーと結合させる工程と,
(b)前記環状鋳型のタンデムユニットを含むコンカテマーを合成するため,前記鋳型−プライマーの複合体を少なくとも一つのフィデリティの高い核酸ポリメラーゼと培養する工程と,
(c)前記コンカテマーを,目的とする配列を持つ送達ユニットを少なくとも一つ含む小さいフラグメントに切断する工程と,
を含む高品質核酸をセルフリー系で生産するための方法。
【請求項2】
(d)前記小さいフラグメントの末端を挿入あるいは除去する工程,小さい環状フラグメントを得るために前記小さいフラグメントの端部をライゲーションする工程,及び前記小さい環状フラグメントをスーパーコイル化する工程のうち,一つあるいはそれ以上の工程をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
改変された末端及び/又は改変された内部塩基を得るために,前記小さいフラグメント又は前記小さい環状フラグメントを改変する工程をさらに含む,請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
前記小さいフラグメントあるいは前記小さい環状フラグメントをペプチドと共役させる工程をさらに含む,請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記送達ユニットが一つあるいはそれ以上の発現カセットを含む,請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記フィデリティの高い核酸ポリメラーゼがPhi29 DNAポリメラーゼあるいはその派生物である,請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記フィデリティの高い核酸ポリメラーゼが,DNAポリメラーゼI,DNAポリメラーゼIII,T3 DNAポリメラーゼ,T4 DNAポリメラーゼ,T5 DNAポリメラーゼ,T7 DNAポリメラーゼ,及びそれらの派生物から選択されるものである,請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コンカテマーの切断を,制限酵素を用いることにより行う,請求項1−7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかに記載の方法により調製された前記送達ユニットを含む組成物。
【請求項10】
請求項1−8のいずれかに記載の方法により調製された前記送達ユニットの,ヒト,動物あるいは植物の疾病又は遺伝的疾患の予防用あるいは治療用の薬剤製造のための使用。
【請求項11】
前記疾病が,HIV,インフルエンザウイルス,パラインフルエンザウイルス,アデノウイルス,コロナウイルス,単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,パピローマウイルス,及びライノウイルスのいずれかにより引き起こされる,請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記疾病が,バクテリア,ミコバクテリア,真正細菌,あるいは真菌により引き起こされる,請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ヒトあるいは動物の免疫付与における,請求項1−8に記載の方法により調整された前記送達ユニットあるいは請求項9の組成物の使用。
【請求項14】
直接投与(direction injection),エアロゾル,リポソーム,あるいはウイルス由来の粒子により前記送達ユニットあるいは前記組成物が送達される,請求項13の使用。
【請求項15】
少なくとも一つの注入口及び注出口を持ち,連続的にcGMP品質を確証可能な反応槽と,
前記注入口に装着され,少なくとも一つの外部要素を外部の保持チャンバーから前記反応槽に供給する入力装置と,
前記入力装置に連結された少なくとも一つの外部保持チャンバーと,
前記外部保持チャンバーから前記入力装置を介して前記反応槽へと外部要素をポンプ輸送する手段と,
前記反応槽の注出口に装着された出力(export)装置と,
前記出力装置に連結された少なくとも一つの受け入れチャンバーと,
前記反応槽の温度を制御する手段と,
前記反応槽中の反応混合液(mixture)の進行を監視及び制御する手段と,
前記反応混合液を混合する手段と,
を含む高品質核酸を産生するための装置。
【請求項16】
前記反応槽が,可塑性の素材で形成されて槽外に前記混合装置が装備されたもの,又は,固めた形成材で形成されて槽中に前記混合装置が装備されたものである,請求項15の装置。
【請求項17】
前記ポンプが蠕動式ポンプを含む,請求項15又は16の装置。
【請求項18】
前記入力装置が,前記反応槽を通して前記反応混合液の循環を容易にするために前記出力装置と連結可能である,請求項15,16又は17の装置。
【請求項19】
前記反応槽が第二の注入口及び第二の注出口をさらに含み,前記反応混合液をポンプ輸送する手段を有する循環装置が前記第二の注入口を前記第二の注出口に連結する,請求項15,16又は17の装置。
【請求項20】
前記循環装置が,少なくとも一つの外部要素を外部の保持チャンバーから前記循環装置内に含まれる前記反応混合液に添加する手段を含む,請求項18の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−522628(P2008−522628A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545717(P2007−545717)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/045028
【国際公開番号】WO2006/063355
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(505448730)サイトジェニックス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】