説明

高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを含む水性塗料

本発明は、ジアルキルカーボネートもしくはジアリールカーボネートまたはホスゲン、ジホスゲンもしくはトリホスゲンおよび脂肪族、脂肪族/芳香族もしくは芳香族ジオールもしくはポリール系高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを含有する水性塗料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ベースコートであって、ジアルキルもしくはジアリールカーボネート系またはホスゲン、ジホスゲンもしくはトリホスゲン系および脂肪族、脂肪族/芳香族もしくは芳香族ジオールもしくはポリオール系高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを含む材料に関する。
【0002】
欧州特許第01124907号は、ベースコート上でのクリヤーコートの湿潤性を改良するポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドについて記載している。
【0003】
独国特許出願公開第19904330号は、およそ900の数平均分子量を有するポリプロピレングリコールの使用について言及している。この添加剤の使用に関連して、正の塗布特性について記載している。
【0004】
独国特許出願公開第3707388号は、層状ケイ酸塩の保護コロイドとして、平均モル質量900のポリプロピレンオキシドについて記載しており、これは、水性ベースコートのレオロジー添加剤としての使用法がある。
【0005】
ポリカーボネートは、慣例的に、アルコールまたはフェノールとホスゲンの反応またはアルコールまたはフェノールとジアルキルまたはジアリールカーボネートのエステル交換により得られる。産業的に重要であるものは、例えば、ビスフェノールから製造される芳香族ポリカーボネートであり、これらの市場規模の点から、現在、脂肪族ポリカーボネートの役割は小さい。これらの点において、さらにBecker/Braun,Kunststoff−Handbuch vol.3/1,"Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester",Carl−Hanser−Verlag,Munich 1992,pages 118−119および"Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry",6th Edition,2000 Electronic Release,Verlag Wiley−VCHを参照。
【0006】
一般に、参照文献に記載の芳香族または脂肪族ポリカーボネートは直鎖状であり、または低い分岐度のみで構成されている。
【0007】
定義された構成の高官能性ポリカーボネートは、知られてから間もない。
【0008】
国際特許出願第2005/026234号は、超分岐ポリカーボネートの製造およびさらに一般的な被覆材料ならびにさらにより具体的にはプリント用インクにおけるそれらの使用について記載している。
【0009】
しかし、水性ベースコートについては述べられていない。
【0010】
国際特許出願第2006/089940号明細書は、超分岐、高分岐または超分岐ポリカーボネートおよびさらに一般的な、粉末被覆材料におけるそれらの使用について記載している。
【0011】
しかし、その中で水性ベースコートについて述べられていない。
【0012】
整理番号061142139および出願日2006年5月19日の未発表の欧州特許出願は、超分岐、高分岐または超分岐ポリカーボネートの粉末被覆材料について記載している。
【0013】
しかし、その中で水性ベースコートについて述べられていない。
【0014】
S.P.RannardおよびN.J.Davisは、J.Am.Chem.Soc.2000,122,11729において、ホスゲン類似体化合物としてカルボニルビスイミダゾールをビスヒドロキシエチルアミノ−2−プロパノールと反応させることによる完全分岐した樹状ポリカーボネートの製造について記載している。
【0015】
完全デンドリマーを形成する合成は、多段階の手順となり、それゆえ、これはコストがかかり、ゆえに産業規模に移すには適切ではない。
【0016】
D.H.BoltonおよびK.L.Wooleyは、Macromolecules 1997,30,1890において、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタンをカルボニルビスイミダゾールと反応させることによる、高剛性、高分子量、超分岐芳香族ポリカーボネートの製造について記載している。
【0017】
さらに、国際特許出願98/50453号に従い超分岐ポリカーボネートを製造することができる。その中に記載の方法に従い、再度トリオールをカルボニルビスイミダゾールと反応させる。最初の生成物はイミダゾリドであり、次いで、さらに分子間反応させ、ポリカーボネートを形成する。上述の方法において、ポリカーボネートは無色または淡黄色のゴム状生成物として得ることができる。
【0018】
Scheelらは、Macromol.Symp.2004,120,101において、トリエタノールアミンおよびカルボニルビスイミダゾール系ポリカーボネートの製造について記載しているが、この製造では熱不安定性生成物となる。
【0019】
上記の高分岐または超分岐ポリカーボネートを得る合成は、以下の点で不利である:
a)超分岐生成物は、高融解性、ゴム状または熱不安定性であり、それにより次に可能な加工についてかなり制限する。
b)反応中に放出されるイミダゾールを反応混合物から除去しなければならず、これはコストがかかり、実施が不都合である。
c)常に、反応生成物は末端にイミダゾリル基を含む。これらの基は不安定であり、ヒドロキシル基に、例えば二次的なステップを介して変換しなければならない。
d)カルボニルジイミダゾールは、比較的高価な化学物質であり、これは原料コストをかなり増加させる。
【0020】
本発明の目的は、改良された特性および/または改良された光学的品質を有する水性ベースコートを製造することであった。具体的に湿潤性の改良に関連する。
【0021】
本目的は、少なくとも1種の高官能性、高分岐または超分岐の未架橋ポリカーボネートを含む水性ベースコートを用いることにより実現される。
【0022】
本発明は、さらに、水性ベースコートの添加剤として高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの使用を提供する。それゆえ、本発明の1つの主題を形成するものは、水性ベースコートおよびクリヤーコートの多重被覆仕上げ、好ましくは二重被覆仕上げに関してぬれ限界を低下させる高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの使用である。
【0023】
使用に関して、高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートをその塗布前に水性ベースコートに、好ましくはその固体量に対して0.1質量%〜15質量%の割合で添加する。
【0024】
本発明のさらなる主題を形成するものは、1種以上の結合剤および適宜、顔料ならびにさらに適宜、充填剤、架橋剤、有機溶剤および/または塗料に慣用の添加剤を含み、さらに、1種以上の高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートをその固体量に対して0.1質量%〜15質量%の割合で含む水性下塗り組成物である。
【0025】
このために使用される高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートは、室温(23℃)で固体または液体であり、一般に、ガラス転移温度は−70〜50℃、好ましくは−70〜20℃およびより好ましくは−50〜10℃である。
【0026】
ガラス転移温度TgをASTM規格3418/82におけるDSC(示差走査熱量計)法により、好ましくは10℃/分の加熱率で測定する。
【0027】
通常、DIN規格53240のパート2による超分岐ポリカーボネートのOH価は、100mgKOH/g以上、好ましくは150mgKOH/mg以上である。
【0028】
ISO規格3219による175℃の融解状態のポリカーボネートの粘性は、0〜20000mPas、好ましくは0〜15000mPasである。
【0029】
通常、質量平均分子量Mwは、1000〜150000、好ましくは2000〜120000g/molであり、数平均分子量Mnは、500〜50000、好ましくは500〜40000g/molである。
【0030】
ポリカーボネートは、特に湿潤性を改良する補助剤として本発明の水性ベースコートにおいて有利な効果を呈する。
【0031】
本発明において、超分岐ポリカーボネートは、ヒドロキシルおよびカーボネートまたはカルバモイルクロリド基を含有する未架橋巨大分子を意味し、これは、構造的および分子的にともに不均一であってよい。一方で、これらをデンドリマーと同じように中心分子から出発して合成することができるが、分岐鎖の鎖長は均一ではない。一方で、これらもまた、官能性、分岐側鎖基のある直状の構成であってよく、または2つの極端な組み合わせとして直状および分岐部分を含むことができる。樹状および超分岐ポリマーの定義において、さらにP.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,No.14,2499を参照。
【0032】
本発明に関する「高分岐」および「超分岐」は、分岐度(DB)を意味し、すなわち、樹状結合の平均数+分子当たりの末端基の平均数を樹状結合の平均数、直状結合の平均数および末端基の平均数の合計で除し、100を乗じたものが、10%〜99.9%、好ましくは20%〜99%、より好ましくは20%〜95%である。
【0033】
本発明に関する「樹状」は、分岐度が99.9%〜100%であることを意味する。「分岐度」の定義において、H.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30を参照。
【0034】
未架橋であることはポリカーボネートの重要な特徴である。本明細書において「未架橋」は、架橋の有効度が15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であることを意味し、ポリマーの不溶性画分を介して決定される。
【0035】
ポリマーの不溶性画分を、ゲル透過クロマトグラフィーで使用する同じ溶剤を用いて、すなわち、その溶剤がポリマーによく溶解するかに応じて、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミドおよびヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択され、残留物を一定質量に乾燥し、残った残留物を計量することによる、ソックスレー装置の4時間抽出により決定した。
【0036】
好ましくは、高官能性、高分岐または超分岐、未架橋ポリカーボネートを得るために使用される方法は、
a)1種以上の縮合生成物(K)を、
a1)一般式RO[(CO)O]nRの少なくとも1種の有機カーボネート(A)と少なくとも3個のOH基を含有する少なくとも1種の脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族アルコール(B1)を、アルコールのROHを排除しつつ反応させ、独立してそれぞれRは炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族炭化水素基であり、さらにR基が互いに結合して環、好ましくは5〜6員環を形成してよく、nは1〜5の整数であり、
または
a2)ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを前記脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族アルコール(B1)と塩化水素を放出しつつ反応させる
ことによるどちらかで製造するステップ、および
b)縮合生成物(K)を分子間反応させ、高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを得る
ステップを含み、
反応混合物中のOH基対ホスゲンまたはカーボネートの割合は、縮合生成物(K)が、平均して1個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基および1個より多くのOH基、または1個のOH基および1個より多くのカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらかを含有するように選択する。
【0037】
次に、方法の詳細について説明する。
【0038】
使用される出発材料は、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲン、これらのうち好ましくはホスゲンでありうるが、有機カーボネート(A)を使用することが好ましい。
【0039】
一般式RO[(CO)O]nRの有機カーボネート(A)出発材料のR基は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族、芳香族/脂肪族(芳香脂肪族)または芳香族炭化水素基である。さらにR基2個を互いに結合させ、環を形成することができる。R基2個は、同一または異なっていてよく、これらは同一であることが好ましい。Rは、それぞれ炭素原子1〜5個を有する脂肪族炭化水素基およびより好ましくは直鎖または分岐鎖アルキル基あるいは置換または非置換フェニル基である。
【0040】
Rは、直鎖または分岐鎖、好ましくは直鎖、(シクロ)脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族、好ましくは(シクロ)脂肪族または芳香族、より好ましくは炭素原子を1〜20個、好ましくは炭素原子1〜12個、より好ましくは1〜6個および非常に好ましくは1〜4個有する脂肪族炭化水素基である。
【0041】
その例は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、フェニル、o−もしくはp−トリルまたはナフチルである。メチル、エチル、n−ブチルおよびフェニルが好ましい。
【0042】
R基は同一または異なっていてよく、これらは同一であることが好ましい。
【0043】
さらにR基は互いに結合し、環を形成することができる。この種の二価のR基の例は、1,2−エチレン、1,2−プロピレンおよび1,3−プロピレンである。
【0044】
一般に、nは1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2の整数である。
【0045】
カーボネートは、好ましくは一般式RO(CO)ORの単一のカーボネートであってよく、この場合、つまり、nは1である。
【0046】
ジアルキルまたはジアリールカーボネートを、例えば、脂肪族、芳香脂肪族または芳香族アルコール、好ましくはモノアルコールとホスゲンの反応から製造することができる。さらに、これらはまた、希金属、酸素またはNOxの存在下においてCOを用いてアルコールまたはフェノールの酸化的カルボニル化により製造することができる。ジアリールまたはジアルキルカーボネートの製造方法において、さらに、"Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry",6th Edition,2000 Electronic Release,Wiley−VCHを参照。
【0047】
本発明において、カーボネートを製造した様式は、重要ではない。
【0048】
適切なカーボネートの例として、脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族カーボネート、例えば、エチレンカーボネート、1,2もしくは1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネートまたはジドデシルカーボネートがある。
【0049】
nが1以上であるカーボネートの例として、ジアルキルジカーボネート、例えば、ジ(tert−ブチル)ジカーボネートまたはジアルキルトリカーボネート、例えば、ジ(tert−ブチル)トリカーボネートがある。
【0050】
脂肪族カーボネート、とりわけ、基が炭素原子1〜5個を含むもの、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートなどを使用することが好ましい。好ましい一芳香族カーボネートは、ジフェニルカーボネートである。
【0051】
有機カーボネートを、少なくとも3個のOH基を含有する少なくとも1種の脂肪族または芳香族アルコール(B1)または1個より多くの異なるアルコール混合物と反応させる。
【0052】
アルコール(B1)は、分岐または未分岐、置換または非置換であり、炭素原子3〜26個を有しうる。好ましくは(シクロ)脂肪族、より好ましくは脂肪族アルコールである。
【0053】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例として、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリット、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ビス(トリメチロールプロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フロログルシノール、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジメチルベンゼン、フロログルシド、ヘキサヒドロキシベンゼン、1,3,5−ベンゼントリメタノール、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、糖、例えば、グルコース、例えば、糖誘導体、例えば、ソルビトール、マンニトール、ジグリセリン、トレイトール、エリトリット、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルト、3個以上の官能基を有し、3個以上の官能基およびエチレンオキシド、プロピレンオキシドもしくはブチレンオキシドまたはその混合物を有するアルコール系ポリエーテルオール、あるいはポリエステロールがある。
【0054】
少なくとも3個のOH基を含有する前記アルコールをまた、適宜、アルコキシル化することができる。すなわち、これらを、ヒドロキシル基当たり1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個および非常に好ましくは1〜5個の分子のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはイソブチレンオキシドと反応させることができる。
【0055】
これに関して、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリットおよびエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド系のそのポリエーテルオールが特に好ましい。
【0056】
さらに、これらの多官能性アルコールを二官能性アルコール(B2)との混合物として使用することができ、ただし、使用される全てのアルコールの平均OH官能基は、合わせて2個以上である。2個のOH基を有する適切な化合物の例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−および1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−または1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)トルエン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドもしくはその混合物系二官能性ポリエーテルポリオール、162〜2000のモル質量を有するポリテトラヒドロフラン、ジオールおよびジカルボン酸系ポリカプロラクトンまたはポリエステロールがある。
【0057】
ジオールは、ポリカーボネートの特性を微調整して使用する。二官能性アルコールを使用する場合、二官能性アルコール(B2)対少なくとも三官能性アルコール(B1)の比は、所望のポリカーボネートの特性において当業者により設定される。概して、1種および複数種のアルコール(B2)量は、全てのアルコール(B1)および(B2)を合わせた合計量に対して0〜39.9mol%である。好ましくは、その量は、0〜35mol%、より好ましくは0〜25mol%および非常に好ましくは0〜10mol%である。
【0058】
本明細書において、アルコール(B1)および(B2)を合わせて(B)として表す。
【0059】
一般に、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンとアルコールまたはアルコール混合物の反応は塩化水素を排除し、高官能性、高分岐ポリカーボネートを得るカーボネートとアルコールまたはアルコール混合物の反応はカルボネート分子から単官能性アルコールまたはフェノールを排除する。
【0060】
上記方法により形成された高官能性、高分岐ポリカーボネートを反応後終了させ、すなわち、さらにヒドロキシル基で、およびカーボネート基またはカルバモイルクロリド基で修飾しない。これらは、種々の溶剤に容易に溶解する。
【0061】
このような溶剤の例は、芳香族および/または(シクロ)脂肪族炭化水素およびその混合物、ハロゲン化炭化水素、ケトン、エステルおよびエーテルである。
【0062】
芳香族炭化水素、(シクロ)脂肪族炭化水素、アルキルアルカノエート、ケトン、アルコキシル化アルキルアルカノエートおよびその混合物が好ましい。
【0063】
モノまたはポリアルキル化ベンゼンおよびナフタレン、ケトン、アルキルアルカノエートおよびアルコキシル化アルキルアルカノエートならびにさらにその混合物が特に好ましい。
【0064】
好ましい芳香族炭化水素混合物は、大部分に芳香族C7〜C14炭化水素を含み、110〜300℃の沸点を含むことができるもの、より好ましくは、トルエン、o−、m−またはp−キシレン、トリメチルベンゼン異性体、テトラメチルベンゼン異性体、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロナフタレンおよびそれらを含む混合物である。
【0065】
その例は、ExxonMobil Chemical製Solvesso(登録商標)グレード、とりわけ、Solvesso(登録商標)100(CAS番号64742−95−6、大部分がC9およびC10芳香族、沸点約154〜178℃)、150(沸点約182〜207℃)および200(CAS番号64742−94−5)およびさらにShell製Shellsol(登録商標)グレードである。パラフィン、シクロパラフィンおよび芳香族化合物から作製される炭化水素混合物はまた、標示名Kristalloel(例えば、Kristalloel30、沸点約158〜198℃またはKristalloel60:CAS番号64742−82−1)、ホワイトスピリット(同様に、例えばCAS番号64742−82−1)またはソルベントナフタ(軽量:沸点約155〜180℃;質量:沸点約225〜300℃)で市販されている。一般に、この種の炭化水素混合物の芳香族化合物量は、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上および非常に好ましくは99質量%以上である。特にナフタレン量が少ない炭化水素混合物を使用することが実用的でありうる。
【0066】
一般に、脂肪族炭化水素量は、5質量%以下、好ましくは2.5質量%以下およびより好ましくは1質量%以下である。
【0067】
ハロゲン化炭化水素は、例えば、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンまたはその異性体混合物である。
【0068】
エステルは、例えば、n−ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテートおよび2−メトキシエチルアセテートである。
【0069】
エステルは、例えば、THF、ジオキサンおよびエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはトリプロピレングリコールのジメチル、ジエチルまたはジ−n−ブチルエーテルである。
【0070】
ケトンは、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたはシクロヘプタノンである。
【0071】
(シクロ)脂肪族炭化水素は、例えば、デカリン、アルキル化デカリンおよび直鎖もしくは分岐鎖アルカンおよび/またはシクロアルカンの異性体混合物である。
【0072】
さらにn−ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−ブタノン、イソブチルメチルケトンおよびその混合物、特に上記の芳香族炭化水素混合物が好ましい。
【0073】
この種の混合物は、体積比5:1〜1:5、好ましくは体積比4:1〜1:4、より好ましくは体積比3:1〜1:3および非常に特に好ましくは体積比2:1〜1:2で作製することができる。
【0074】
好ましい溶剤は、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、イソブチルメチルケトン、2−ブタノン、Solvesso(登録商標)グレードおよびキシレンである。
【0075】
さらにカーボネートに適切なものは、例えば、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであってよい。
【0076】
ポリカーボネートは、水溶性または水分散性がより好ましい。
【0077】
本発明に関して、高官能性ポリカーボネートは、ポリマー骨格を形成するカーボネート基を加える生成物を意味し、少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の官能基を末端または側鎖に加える。官能基は、カーボネート基またはカルバモイルクロリド基および/またはOH基である。おもに、末端または側鎖の官能基数に上限はないが、非常に多数の官能基を有する生成物は、不必要な特性、例えば、高粘性または不良溶解性などを呈しうる。一般に、高官能性ポリカーボネートは、500個以下の末端または側鎖の官能基、好ましくは100個以下の末端または側鎖の官能基を有する。
【0078】
高官能性ポリカーボネートの製造において、OH含有化合物対ホスゲンまたはカーボネート(A)の比を、得られた最も単純な縮合生成物(以下、縮合生成物(K)と呼ぶ)が平均して1個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基および1個より多くのOH基、または1個のOH基および1個より多くのカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらか、好ましくは、平均して1個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基および少なくとも2個のOH基、または1個のOH基および少なくとも2個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらかを含むように設定することが必要である。
【0079】
ポリカーボネートの特性を微調整することにおいて、少なくとも1個の二価カルボニル反応性化合物(A1)を使用することがさらに実用的でありうる。これは、2個のカーボネートおよび/またはカルボキシル基を含有する化合物を意味する。
【0080】
これに関して、カルボキシル基は、カルボン酸、カルボニルクロリド、カルボン酸無水物またはカルボン酸エステル、好ましくはカルボン酸無水物またはカルボン酸エステルおよびより好ましくはカルボン酸エステルであってよい。
【0081】
このような二価の化合物(A1)を使用する場合、(A1)対カーボネートおよび/またはホスゲン(A)の比は、所望のポリカーボネート特性によって、当業者により設定される。概して、1個または複数個の二価の化合物(A1)量は、全てのカーボネート/ホスゲン(A)および化合物(A1)を合わせた合計量に対して0〜40mol%である。好ましくは、その量は0〜35mol%、より好ましくは0〜25mol%および非常に好ましくは0〜10mol%である。
【0082】
化合物(A1)の例は、ジオールのジカーボネートまたはジカルバモイルクロリドであり、これらの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,1−ジメチル−エタン−1,2−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルネンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−オクタン−1,3−ジオール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールである。
【0083】
これらの化合物を、例えば、前記ジオールと例えば、過剰量の上記に引用したカーボネートRO(CO)ORまたはクロロ炭酸エステルと反応させることにより製造することができ、そうして、このように得られたジカーボネートをRO(CO)−基により両側鎖で置換する。さらに、ジオールと最初にホスゲンを反応させてジオールの当該クロロ炭酸エステルを得、次いでこれらのエステルとアルコールを反応させることが可能である。
【0084】
さらなる化合物(A1)は、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルエステル、より好ましくはメチル、エチルまたはn−ブチルエステルである。
【0085】
この種のジカルボン酸の例は、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはテトラヒドロフタル酸、スベリン酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル無水物、二量体の脂肪酸、その異性体およびその水素化生成物である。
【0086】
縮合生成物(K)の最も単純な構造式は、例えば、カーボネート(A)とジアルコールまたはポリアルコール(B)の反応を使用して説明すると、配置XYmまたはYmXを生成し、Xはカーボネートまたはカルバモイル基であり、Yはヒドロキシル基であり、mは一般に1以上〜6、好ましくは1以上〜4、より好ましくは1以上〜3の整数である。単一基として得られた反応基は、一般に「フォーカル基(fokale Gruppe)」として以下に示す。
【0087】
この場合、例えば、カーボネートおよび二価アルコールからの最も単純な縮合生成物(K)の製造において、モル反応比は1:1であり、この時、結果は平均してXY型の分子であり、一般式(I)に図示する。
【0088】
【化1】

【0089】
モル反応比1:1のカーボネートおよび三価アルコールからの縮合生成物(K)の製造の場合、結果は平均してXY2型の分子であり、一般式(II)に図示する。ここでのフォーカル基はカーボネート基である。
【0090】
【化2】

【0091】
また、モル反応比1:1のカーボネートおよび四価アルコールからの縮合生成物(K)の製造の場合、結果は平均してXY3型の分子であり、一般式(III)に図示する。ここでのフォーカル基はカーボネート基である。
【0092】
【化3】

【0093】
式(I)〜(III)において、Rは最初に定義した通りであり、R1は脂肪族または芳香族基である。
【0094】
縮合生成物(K)はまた、例えば、カーボネートおよび三価アルコールから製造することができ、一般式(IV)に図示し、この場合、モル基準の反応比は2:1である。ここでの結果は平均してX2Y型の分子であり、ここでのフォーカル基はOH基である。一般式(IV)において、RおよびR1の定義は、上記の式(I)〜(III)と同じである。
【0095】
【化4】

【0096】
二官能性化合物、例えば、ジカーボネートまたはジオールをさらに構成成分に添加する場合、これは、例えば、一般式(V)に図示するように鎖の延長を生成する。また、結果は平均してXY2型の分子であり、フォーカル基はカーボネート基である。
【0097】
【化5】

【0098】
式(V)において、R2は脂肪族または芳香族基であり、一方、RおよびR1を上記のように定義する。
【0099】
合成に1個より多くの縮合生成物(K)を使用することも可能である。この場合、一方で1個より多くのアルコールおよび/または1個より多くのカーボネートを使用することが可能である。さらに、使用するアルコールおよびカーボネートまたはホスゲンの割合の選択により、様々な構造の様々な縮合生成物の混合物を得ることが可能である。これは、例えば、カーボネートと三価アルコールの反応を例にとることができる。出発生成物を(II)に図示したように1:1の比で使用する場合、XY2分子が得られる。出発生成物を、(IV)に図示したように2:1の比で使用する場合、結果はX2Y分子である。1:1〜2:1の比でXY2およびX2Y分子の混合物が得られる。
【0100】
縮合生成物(K)を形成する(A)と(B)の反応の典型的な反応条件は、以下に記載する。
【0101】
一般に、構成成分(A)および(B)の化学量論は、得られた縮合生成物(K)が、平均して1個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基および1個より多くのOH基、または1個のOH基および2個以上カーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらかを含有するように選択する。1つ目の場合、これは、カーボネート基1mol:OH基>2molの化学量論、例えば、1:2.1〜8、好ましくは1:2.2〜6、より好ましくは1:2.5〜4および非常に好ましくは1:2.8〜3.5の化学量論により実現する。
【0102】
2つ目の場合、カーボネート基1mol以上:OH基<1molの化学量論、例えば、1:0.1〜0.48、好ましくは1:0.15〜0.45、より好ましくは1:0.25〜0.4および非常に好ましくは1:0.28〜0.35の化学量論により実現する。
【0103】
温度によって、アルコールと当該カルボニル構成成分の反応が十分となるはずである。ホスゲンとの反応において、一般に、温度は−20℃〜120℃、好ましくは0〜100℃およびより好ましくは20〜80℃である。カーボネートを使用する場合、温度は60〜180℃、好ましくは80〜160℃、より好ましくは100〜160℃および非常に好ましくは120〜140℃であるものとする。
【0104】
適切な溶剤は、上記に既に記載のものである。好ましい実施形態は、溶剤を含まずに反応を実施する。
【0105】
個々の構成成分を添加する順序は、一般に重要性が低い。概して、最初に2つの反応パートナーの過剰構成成分を入れ、不足構成成分を添加することが実用的である。別法として、同様に2つの構成成分を互いに混合後、反応が開始し、次いでこの混合物を必要条件の反応温度に加熱することが可能である。
【0106】
式(I)〜(V)の例示的に記載した単純な縮合生成物(K)は分子間で反応し、以下で重縮合生成物(P)と呼ばれる高官能性重縮合生成物を形成することが好ましい。縮合生成物(K)を得、かつ重縮合生成物(P)を得る反応は、通常、0〜300℃、好ましくは0〜250℃、より好ましくは60〜200℃および非常に好ましくは60〜160℃にて、バルク(溶剤を含まない)または溶液で行われる。これに関して、一般に、各反応剤に対して不活性であるいくつかの溶剤を使用することが可能である。有機溶剤、例えば、上記に挙げたものなど、およびより好ましくはデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはソルベントナフタを使用することが好ましい。
【0107】
好ましい一実施形態において、縮合反応をバルクで実施する。反応中に遊離する単官能性アルコールまたはフェノールのROHを、反応を促進するために反応平衡から除去することができ、このような除去は、例えば、蒸留手段により、適宜、減圧下において行う。
【0108】
さらに、アルコールまたはフェノールの分離を、反応混合物に反応条件(すなわち、揮散)下において実質的に不活性である、例えば、窒素、蒸気、二酸化炭素などのガス流を通すことにより、または混合物に、例えば、大気または希薄空気などの酸素含有ガスを通すことにより補助することができる。
【0109】
蒸留による除去が目的の場合、概して、カーボネートを使用することが望ましく、これは、反応中、周囲圧下において沸点が140℃以下のアルコールまたはフェノールのROHを放出する。
【0110】
反応を促進するために、さらに、触媒または触媒混合物を添加することが可能である。適切な触媒は、エステル化またはエステル交換反応を触媒する化合物であり、例として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属カーボネート、アルカリ金属炭酸水素、好ましくはナトリウムのもの、カリウムのもの、もしくはセシウムのもの、第3級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、オルガノアルミニウム、オルガノスズ、オルガノ亜鉛、オルガノチタン、オルガノジルコニウムまたはオルガノビスマス化合物およびさらに、独国特許第10138216号または独国特許第10147712号に記載のように、二重金属シアン化物(DMC)触媒として知られる種類の触媒がある。
【0111】
水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾールまたは1,2−ジメチルイミダゾール、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、スズジオクタエート、ジルコニウムアセチルアセトネートまたはその混合物を使用することが好ましい。
【0112】
一般に、触媒を、使用されるアルコールまたはアルコール混合物に対して50〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppmで添加する。
【0113】
さらに、適切な触媒の添加および/または適切な温度の選択のどちらかで分子間重縮合反応を制御することも可能である。さらに、ポリマー(P)の平均分子量を出発構成成分の組成物を介して、および滞留時間を介して調節することができる。
【0114】
高温で製造された縮合生成物(K)および重縮合生成物(P)は、室温にて、通常、相対的に長時間、例えば、少なくとも6週間安定し、濁度、析出物および/または粘性のいくらかの増加を示すことはない。
【0115】
縮合生成物(K)の性質から、縮合反応は、分岐するが、架橋しない様々な構造を有する重縮合生成物(P)を生じうることが可能である。さらに、理想的には、重縮合生成物(P)は、カーボネートもしくはカルバモイルクロリドフォーカル基および1個より多くのOH基、または1個のOHフォーカル基および1個より多くのカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらかを含有する。反応基の数は、使用される縮合生成物(K)の性質および重縮合度に左右される。
【0116】
例えば、一般式(II)の縮合生成物(K)は、3回の分子間縮合により反応し、2つの異なる重縮合生成物(P)を形成し、これらは、一般式(VI)および(VII)で再生される。
【0117】
【化6】

式(VI)および(VII)のRおよびR1は、上記に定義される通りである。
【0118】
分子間重縮合反応を終了するために、種々の可能な方法がある。例として、温度を、反応が定常となり、生成物(K)または重縮合生成物(P)が保存上安定する範囲まで低下させることができる。一般に、これは60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下および非常に好ましくは室温の場合である。
【0119】
さらに、触媒を、塩基性触媒の場合、例えば、酸性構成成分であるルイス酸など、または有機もしくは無機プロトン酸を添加することにより非活性化することができる。
【0120】
さらなる可能な方法として、予備冷却した溶剤で希釈することにより反応を停止する。これは、溶剤を添加することにより反応混合物の粘性を適応させる必要がある場合に特に好ましい。
【0121】
さらなる実施形態において、縮合生成物(K)の分子間反応により所望の重縮合度を有する重縮合生成物(P)を得るとすぐ、(P)のフォーカル基に対して反応性である基を有する生成物を生成物(P)に添加することにより、反応を停止することができる。
【0122】
例えば、カーボネートまたはカルバモイルフォーカル基の場合、モノ、ジまたはポリアミンなどを添加することができる。
【0123】
ヒドロキシルフォーカル基の場合、生成物(P)を、例えば、モノ、ジまたはポリイソシアネート、エポキシド基を含む化合物またはOH基と反応する酸誘導体に添加することができる。
【0124】
一般に、高官能性ポリカーボネートを、0.1hPa〜2MPa、好ましくは1hPa〜500kPaにおいて、リアクターまたはリアクターカスケードで製造し、このリアクターまたはリアクターカスケードをバッチ式、半バッチ式または連続的に作動させる。
【0125】
上記の反応条件の設定の結果として、および適宜、適切な溶剤の選択の結果として、生成物をさらに精製することなく、さらに次の製造に加工することができる。
【0126】
必要な場合、反応混合物を、例えば、活性化炭素または金属酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシウムオキシド、ジルコニウムオキシド、酸化ホウ素またはその混合物、例えば、0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%を用いて、例えば10〜100℃、好ましくは20〜80℃およびより好ましくは30〜60℃にて処理することにより脱色させることができる。
【0127】
適宜、存在するいくつかの析出物を除去するために反応混合物を濾過することも可能である。
【0128】
さらに好ましい実施形態において、生成物を揮散させ、すなわち、低分子量の揮発性化合物を遊離する。このために、所望の変換度に達した後、触媒を場合により非活性化し、低分子量の揮発性構成物質、例えば、モノアルコール、フェノール、カーボネート、塩化水素または揮発性オリゴマーもしくは環状化合物を、適宜、ガス、好ましくは窒素、二酸化炭素もしくは空気を適宜、減圧下において導入しながら、蒸留により除去することができる。
【0129】
さらに好ましい実施形態において、ポリカーボネートは、反応によって既に保持された官能基だけでなく、追加の官能基もまた保持することができる。この場合、官能基化は、分子量の増加中、または続いて、すなわち、実際の重縮合の終了後に行うことができる。
【0130】
分子量の増加前または増加中に、ヒドロキシルまたはカーボネート基を加え、さらなる官能基または官能性元素を有する構成成分を添加し、次いで、カーボネートまたはカルバモイルクロリドおよびヒドロキシル基と異なる、無作為に分布した官能基を有するポリカーボネートポリマーを得る。
【0131】
この種の効果を、例えば、重縮合中に化合物を添加することにより実現することができ、これらの化合物は、ヒドロキシル、カーボネートまたはカルバモイルクロリド基に加えて、さらなる官能基または官能性元素、例えば、メルカプト基、第1級、第2級もしくは第3級アミノ基、エーテル基、カルボン酸基もしくはその誘導体、スルホン酸基もしくはその誘導体、ホスホン酸基もしくはその誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基または長鎖アルキル基を担持する。
【0132】
カーバメート基による修飾において、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノールもしくはアンモニアの高アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはイソホロンジアミンを使用することが可能である。
【0133】
メルカプト基を用いた修飾において、メルカプトエタノールなどを使用することが可能である。第3級アミノ基を、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミンまたはN,N−ジメチルエタノールアミンの取り込みにより生成することができる。エーテル基を、例えば、縮合中に1個より多くの官能基を有するポリエーテルオールを取り込むことにより生成することができる。ジカルボン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸エステル、例えば、ジメチルテレフタレートもしくはトリカルボン酸エステルを添加することにより、エステル基を生成することが可能である。長鎖アルカノールまたはアルカンジオールとの反応は、長鎖アルキル基の取り込みを可能にする。アルキルまたはアリールジイソシアネートとの反応は、アルキル、アリールおよびウレタン基を含有するポリカーボネートを生成し、一方、第1級または第2級アミンの添加は、ウレタンまたは尿素基の取り込みを生じる。
【0134】
続く官能基化を、さらなる方法のステップ(ステップc)で得られた高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを適切な官能基化剤と反応させることにより得ることができ、この官能基化剤は、ポリカーボネートのOHおよび/またはカーボネートまたはカルバモイルクロリド基と反応することができる。
【0135】
ヒドロキシル基を含む高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを、例えば、酸性基またはイソシアネート基を含む分子を添加することにより修飾することができる。酸性基などを含むポリカーボネートを、無水物基を含む化合物と反応させることにより得ることができる。
【0136】
さらに、ヒドロキシル基を含む高官能性ポリカーボネートはまた、アルキレンオキシド−エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドなどとの反応により、高官能性ポリカーボネート−ポリエーテルポリオールに変換することができる。
【0137】
これは、例えば、水中での溶解性を高めるため、または水中で乳化性を生成するために実用的でありうる。これらにおいて、ヒドロキシル基を少なくとも1個のアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドならびにより好ましくはエチレンオキシドと反応させる。このために、各ヒドロキシル基において、アルキレンオキシド1〜200個、好ましくは2〜200個、より好ましくは5〜100個、非常に好ましくは10〜100個および特に20〜50個を使用する。
【0138】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリカーボネートを少なくとも部分的に少なくとも1種の単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させる。これは、水溶液の乳化性を改良する。
【0139】
単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、適切な出発分子とポリアルキレンオキシドの反応生成物である。
【0140】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールを製造するために適切な出発分子は、チオール化合物である、一般式、
5−O−H
のモノヒドロキシ化合物
または、一般式、
67N−H
の第2級モノアミンである。
[式中、
互いに独立したR5、R6およびR7は、互いに独立してそれぞれ、C1−C18アルキル、適宜、1個または複数個の酸素および/または硫黄原子により、および/または1個または複数個の置換または非置換イミノ基により中断されたC2−C18アルキル、C6−C12アリール、酸素、窒素および/または硫黄原子を含有するC5−C12シクロアルキシルもしくは5〜6員の複素環であり、またはR6およびR7はともに不飽和、飽和または芳香族環を形成し、これは適宜、1個または複数個の酸素および/または硫黄原子により、および/または1個または複数個の置換または非置換イミノ基により中断され、前記基は、それぞれ官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることが可能である]である。
【0141】
好ましくは、互いに独立したR5、R6およびR7は、C1−C4アルキル、すなわち、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、より好ましくは、R5、R6およびR7はメチルである。
【0142】
適切な一価出発分子の例は、飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール;不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えば、フェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシナミルアルコール;第2級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン、複素環式第2級アミン、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾールおよびさらにアミノアルコール、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチル−アミノエタノール、2−ジイソプロピルアミノエタノール、2−ジブチルアミノエタノール、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノールまたは1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノールであってよい。
【0143】
アミンから出発して製造されるポリエーテルの例は、Jeffamine(登録商標)Mシリーズとして知られる生成物であり、これは、アミノ官能基を含有するメチルキャップしたポリアルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド(PO)/エチレンオキシド(EO)比およそ9:1およびモル質量およそ600のM−600(XTJ−505)、PO/EO比3:19、モル質量およそ1000のM−1000(XTJ−506)、PO/EO比29:6、モル質量およそ2000のM−2005(XTJ−507)またはPO/EO比10:31、モル質量およそ2000のM−2070である。
【0144】
アルコキシル化反応に適切なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシランおよび/またはスチレンオキシドであり、これらをアルコキシル化反応に任意の順序でまたは混合物として使用することができる。
【0145】
好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびその混合物であり、エチレンオキシドが特に好ましい。
【0146】
好ましいポリエーテルアルコールは、出発分子として上記の種類の飽和脂肪族または脂環式アルコールを使用して製造されるポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール系のものである。アルキル基内に炭素原子1〜4個を有する飽和脂肪族アルコールを使用して製造されたポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール系のものが非常に特に好ましい。メタノールから出発して製造されるポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールが特に好ましい。
【0147】
一般に、一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、平均して分子当たり少なくとも2個のアルキレンオキシド単位、好ましくは5個のエチレンオキシド単位、より好ましくは少なくとも7個、非常に好ましくは少なくとも10個および特に少なくとも15個を含有する。
【0148】
一般に、一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、平均して分子当たり最大50個のアルキレンオキシド単位、好ましくはエチレンオキシド単位、好ましくは最大45個、より好ましくは最大40個および非常に好ましくは最大30個を含有する。
【0149】
一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールのモル質量は、好ましくは最大4000、より好ましくは2000g/mol以下、非常に好ましくは500以上および特に1000±200g/molである。
【0150】
それゆえ、好ましいポリエーテルアルコールは、次式、
5−O−[−Xi−]k−H
[式中、
5は上記の通りであり、
kは、5〜40、好ましくは7〜45およびより好ましくは10〜40の整数であり、kに対してi=1のXiは、それぞれ他から独立して、−CH2−CH2−O−、CH2−CH(CH3)−O−、CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH3)2−O−、−C(CH3)2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−および−CHPh−CH2−O−からなる群、好ましくは−CH2−CH2−O−、−CH2−CH(CH3)−O−および−CH(CH3)−CH2−O−ならびにより好ましくは−CH2−CH2−O−からなる群から選択することができ、式中、Phはフェニルであり、Vinはビニルである]の化合物である。
【0151】
ポリカーボネートの反応を実施するために、ポリカーボネート(K)および/または(P)を40〜180℃、好ましくは50〜150℃にて互いに反応させ、カーボネートまたはカルバモイルクロリド/OH当量比1:1〜100:1、好ましくは1:1〜50:1、より好ましくは1.5:1〜20:1を得る。
【0152】
方法の大きな利点にその経済性がある。縮合生成物(K)または重縮合生成物(P)を形成する反応、および他の官能基または元素でポリカーボネートを形成する(K)または(P)の反応は、ともに1つの反応装置で行うことができ、これは技術的および経済的にともに有利である。
【0153】
方法により形成された高官能性、高分岐ポリカーボネートを、ヒドロキシル基により、および/またはカーボネートまたはカルバモイルクロリド基により反応後、すなわち、さらに修飾することなく終了する。これらは、種々の溶剤、例えば、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、エチルアセテート、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシエチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートに容易に溶解する。
【0154】
高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを、水性ベースコートの固体量に対して0.1質量%〜15質量%、好ましくは0.2質量%〜10質量%、より好ましくは0.3質量%〜8質量%、非常に好ましくは0.4質量%〜5質量%およびより好ましくは0.5質量%〜3質量%の割合で使用する。
【0155】
本発明の水性ベースコートは、塗料に慣用の溶剤を例えば、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下の割合で含むことができる。
【0156】
当該溶剤は、塗料に慣用の溶剤であり、例えば、結合剤またはポリカーボネートの製造物に由来し、または個別に添加することができる。このような溶剤の例は、一価または多価アルコール、例えば、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール;グリコールエーテルまたはグリコールエステルであり、例として、ジエチレングリコールジC1−C8アルキルエーテル、ジプロピレングリコールジ−C1−C8アルキルエーテル、エトキシプロパノール、ブチルグリコール;グリコール、例えば、エチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールおよびこれらの二量体または三量体、N−アルキルピロリドン、例えば、N−メチルピロリドンなど、ならびにさらにケトン、例えばメチルエチルケトン、アセトンおよびシクロヘキサノン;芳香族または脂肪族炭化水素、例えば、トルエンおよびキシレンまたは直鎖または分岐鎖の脂肪族C6−C12炭化水素がある。
【0157】
本発明の水性ベースコートは、固体量を、例えば10質量%〜50質量%有し、エフェクト水性ベースコートにおいて、その値は、例えば、15質量%〜30質量%が好ましく、固体有色水性ベースコートにおいて、より高値の20質量%〜45質量%などが好ましい。
【0158】
顔料対結合剤の比の算出において、着色顔料、エフェクト顔料および/または充填剤の質量割合の合計が、完全な水性ベースコートの固体結合剤、固体ペースト樹脂および固体架橋剤の質量割合の合計に関連する。
【0159】
超分岐ポリカーボネートに加えて本発明の水性ベースコートは、少なくとも1種の結合剤(O)および少なくとも1種の架橋剤(V)をさらに含む。場合により、水性ベースコートは、追加の添加剤(F)および/または有色ならびに/あるいはエフェクト顔料(G)をさらに含むことができる。
【0160】
水性ベースコートは、イオン性または非イオン性安定性結合剤系を含むことが適切である。これらの系は、陰イオン性および/または非イオン性で安定していることが好ましい。
【0161】
陰イオン性安定化は、結合剤の少なくとも部分的中和されたカルボキシル基により実現することが好ましく、一方、非イオン性安定化は、結合剤の側鎖または末端ポリアルキレンオキシド単位、とりわけ、ポリエチレンオキシド単位により実現することが好ましい。
【0162】
水性ベースコートは、物理的に自然に乾燥し、または共有結合を形成し架橋することができる。共有結合を形成して架橋する水性ベースコートの場合、当該系は、自己架橋または外部架橋系であってよい。後者の場合、これらは1構成成分または多構成成分の水性ベースコートであってよい。
【0163】
本発明の水性ベースコートは、1種以上の典型的な皮膜形成結合剤を含む。結合剤が自己架橋または自己乾燥しない場合、これらはまた、適宜、架橋剤を含むことができる。結合剤構成成分だけでなく、架橋剤構成成分もまた、存在する場合、いかなる制限も受けない。
【0164】
使用することができる皮膜形成結合剤の例として、典型的なポリエステル、ポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレート樹脂がある。架橋剤の選択は、存在する場合重要ではなく、当業者が詳しい様式において結合剤の官能性により導かれ、すなわち、架橋剤を結合剤の官能性に相補的である反応性官能基を呈するように選択する。
【0165】
結合剤と架橋剤との間のこのような相補的な官能基の例として以下のものがある:カルボキシル/エポキシド、ヒドロキシル/メチロールエーテルおよび/またはメチロール(好ましくはアミノ樹脂の架橋活性基としてメチロールエーテルおよび/またはメチロール)、ヒドロキシル/遊離イソシアネート、ヒドロキシル/ブロックイソシアネート、(メタ)アクリロイル/CH−酸性基がある。これらが互いに適合する場合、さらに、2つ以上のこのような相補的官能基が水性ベースコート中に互いに並行して存在することが可能である。適宜、水性ベースコートに存在する架橋剤は、個々に、または混合して存在することができる。
【0166】
本発明における使用において、結合剤および架橋剤の適切な相補的反応性官能基の例を、以下の概要に組み込む。概要において、変数R8は、非環式または環式脂肪族基、芳香族および/または芳香族−脂肪族(芳香脂肪族)基を表し、変数R9およびR10は、同一または異なる脂肪族基を表し、または互いに結合して脂肪族またはヘテロ脂肪族環を形成する。
【0167】
概要:相補的反応性官能基の例
【表1】

【0168】
とりわけ、本発明の水性ベースコートの使用に適切な相補的反応性官能基は、
一方にカルボキシル基ともう一方にエポキシド基および/またはβ−ヒドロキシアルキルアミド基ならびに、さらに
一方にヒドロキシル基ともう一方にブロックおよび非ブロックイソシアネート基またはウレタンあるいはアルコキシメチルアミノ基である。
【0169】
適切な結合剤構成成分(O)は、例えば、適宜、他のヒドロキシルまたはアミノ含有結合剤と合わせて、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチリル(メタ)アクリレート、直鎖もしくは分岐鎖ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、メラミン樹脂または尿素−ホルムアルデヒド樹脂、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル官能基に対して反応性である架橋化合物と合わせて、例えば、イソシアネート、ブロックイソシアネート、エポキシドおよび/またはアミノ樹脂など、好ましくはイソシアネート、エポキシドまたはアミノ樹脂、より好ましくはイソシアネートまたはエポキシドならびに非常に好ましくはイソシアネートをともに含む。
【0170】
結合剤(O)として、いくつか所望のオリゴマーまたはポリマー樹脂を使用することが可能である。オリゴマーは、これらの分子内に少なくとも2〜15個のモノマー単位を含む樹脂を意味する。本発明において、ポリマーは、これらの分子内に少なくとも10個の繰り返しモノマー単位を含む樹脂である。これらの語句に関するさらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,"Oligomers",page 425を参照する。
【0171】
適切な構成物質(O)の例は、エチレン性不飽和モノマーのランダム、交互および/またはブロック、直鎖および/もしくは分岐鎖および/または櫛型(コ)ポリマー、あるいは重付加樹脂および/または重縮合樹脂である。これらの語句のさらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,page 457,"Polyaddition" and "Polyaddition resins(polyadducts)",およびさらに、page 463 and 464,"Polycondensates","Polycondensation"および "Polycondensation resins" およびさらにpage 73 and 74 "Binders"を参照する。
【0172】
適切な(コ)ポリマーの例は、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは部分的に加水分解したポリビニルエステル、とりわけ(メタ)アクリレートコポリマー、特にビニル芳香族のものである。
【0173】
適切な重付加樹脂および/または重縮合樹脂の例は、ポリエステル、アルキド、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、ポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタンまたはポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタン、とりわけ、ポリエステル−ポリウレタンである。
【0174】
構成物質(O)は、非架橋もしくは物理的に架橋による熱可塑性の、熱による自己架橋または外部架橋することができる。さらに、これらは、熱により、および/または化学線により硬化することができる。熱硬化および化学線を用いた硬化を組み合わせた適用はまた、当業者により二重硬化と呼ばれる。
【0175】
熱硬化性水性ベースコートおよび二重硬化水性ベースコートの自己架橋結合剤(O)は、反応性官能基を含み、この官能基は、これら自身の種類の基または相補的反応性官能基を用いて架橋反応を開始することができる。外部架橋結合剤は反応性官能基を含み、この官能基は、架橋剤に存在する相補的反応性官能基と架橋反応を開始することができる。本発明における使用に適切な相補的反応性官能基の例は、上記のものである。この場合、構成成分(O)および(V)を1つの化合物に結合する。
【0176】
上記の反応性官能基に関して、自己架橋および/または外部架橋の構成物質(O)の官能性は、極めて非常に多様であってよく、特に、それぞれに使用される架橋剤の標的架橋密度および/または官能性により導かれる。例として、カルボキシル含有構成物質(O)の場合、酸価は、好ましくは10〜100、より好ましくは15〜80、非常に好ましくは20〜75、非常に特に好ましくは25〜70および特に30〜65mgKOH/gである。またはヒドロキシル含有構成物質(O)の場合、OH価は、好ましくは15〜300、より好ましくは20〜250、非常に好ましくは25〜200、非常に特に好ましくは30〜150および特に35〜120mgKOH/gである。あるいは、エポキシド基を含有する構成物質(O)の場合、エポキシド当量は、好ましくは400〜2500、より好ましくは420〜2200、非常に好ましくは430〜2100、非常に特に好ましくは440〜2000および特に440〜1900である。
【0177】
上記の相補的官能基をポリマー化学の慣例および既知の方法において結合剤に取り込むことができる。これは、例えば、当該反応性官能基を担持するモノマーの取り込みにより、および/またはポリマー−類似反応を用いて行うことができる。
【0178】
反応性官能基を用いた適切なオレフィン性不飽和モノマーの例は、
c1)分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル、アミノ、アルコキシメチルアミノ、カーバメート、アロファネートまたはイミノ基を担持するモノマー、例えば、
酸でエステル化するアルキレングリコール由来であり、またはα、β−オレフィン性不飽和カルボン酸とアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを反応させることにより得ることができる、アクリル酸、メタクリル酸もしくは別のα、β−オレフィン性不飽和カルボン酸のヒドロキシルアルキルエステル、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル、この場合、ヒドロキシアルキル基が炭素原子最大20個を含み、例えば、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチルおよび4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリレート、エタクリレート、クロトネート、マレエート、フマレートまたはイタコネート;またはヒドロキシシクロアルキルエステル、例えば、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノールまたはメチルプロパンジオールモノアクリレート、モノメタクリレート、モノエタクリレート、モノクロトネート、モノマレエート、モノフマレートまたはモノイタコネート;環状エステルの反応生成物、例えば、ε−カプロラクトンなど、およびこれらのヒドロキシアルキルまたはヒドロキシシクロアルキルエステル、
オレフィン性不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、
ポリオール、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルもしくはジアリルエーテルまたはペンタエリトリットモノアリル、ジアリルもしくはトリアリルエーテル、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と分子当たり炭素原子5〜18個を有するα分岐鎖モノカルボン酸、特に、Versatic(登録商標)酸のグリシジルエステルの反応生成物、または反応生成物の代わりに、重合反応中または反応後に分子当たり炭素原子5〜18個を有するα分岐鎖モノカルボン酸、特にVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとこの時反応するアクリル酸および/またはメタクリル酸の当量、
アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アリルアミンまたはN−メチルイミノエチルアクリレート、
N,N−ジ(メトキシメチル)アミノエチルアクリレートもしくはメタクリレートまたはN,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピルアクリレートもしくはメタクリレート、
(メタ)アクリルアミド、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル−、N−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−および/またはN,N−ジ(エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、
アクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル、−プロピルまたは−ブチルカーバメートまたはアロファネート、カーバメート基を含む適切なモノマーのさらなる例は、米国特許第3479328号、米国特許第3674838号、米国特許第4126747号、米国特許第4279833号または米国特許第4340497号明細書に記載され、
c2)分子当たり少なくとも1個の酸性基を担持するモノマー、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸、
オレフィン性不飽和スルホン酸またはホスホン酸あるいはそれらの部分エステル、
モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルマレエート、スクシネートまたはフタレートあるいは
ビニル安息香酸(全て異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全て異性体)またはビニルべンゼンスルホン酸(全て異性体)、
c3)エポキシド基を含むモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のグリシジルエステルあるいはアリルグリシジルエーテルである。
【0179】
これらは、好ましい(メタ)アクリレートコポリマー、とりわけグリシジル基を含有するものを製造するために使用することが好ましい。
【0180】
上記の種類の高度多官能性モノマーを、一般に少量使用する。本発明において、高度多官能性モノマーの少量とは、コポリマー、特に(メタ)アクリレートコポリマーの架橋またはゲル化につながらない量であり、ただし、特に架橋ポリマー微粒子を生成する目的のある場合は除く。
【0181】
反応性官能基をポリエステルまたはポリエステル−ポリウレタンに入れるのに適切なモノマー単位の例は、2,2−ジメチロールエチル−または−プロピルアミンであり、これは、ケトンを用いてブロックし、得られたケトキシム基を、取り込み後に再度加水分解し、または2個のヒドロキシル基または2個の第1級および/または第2級アミノ基ならびにさらに少なくとも1個の酸性基、特に少なくとも1個のカルボキシル基および/または少なくとも1個のスルホン酸基を含む化合物、例えば、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジアミノ吉草酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエンスルホン酸または2,4−ジアミノジフェニルエーテルスルホン酸である。
【0182】
ポリマー−類似反応を介した反応性官能基を入れる一実施例は、クロロホルメート基を含む樹脂を生じる、ヒドロキシル基を含む樹脂とホスゲンの反応、およびカーバメート基を含む樹脂を得る、クロロホルメート基を含む樹脂とアンモニアおよび/または第1級および/または第2級アミンのポリマー−類似反応である。この種の適切な方法のさらなる実施例は、米国特許第4758632号、米国特許第4301257号または米国特許第2979514号明細書により公知である。
【0183】
化学線により、または二重硬化により架橋できる構成物質(O)は、平均して、化学線で活性化することができる、分子当たり少なくとも1回の結合を有する少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の基を含む。
【0184】
本発明において、化学線で活性化することができる結合は、化学線を照射された場合に反応性となり、その種類の他の活性化結合とともに重合反応および/または架橋反応を開始する結合であり、これらの反応はラジカルおよび/またはイオン機構に従い進む。適切な結合の例は、炭素−水素の単結合または炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−窒素、炭素−リンまたは炭素−ケイ素の単または二重結合である。これらのうち、炭素−炭素の二重結合が特に有利であり、それゆえ、使用することが非常に特に好ましい。簡潔に、以下で、これらを「二重結合」と呼ぶ。
【0185】
それにより、好ましい基は、1つの二重結合または2、3もしくは4個の二重結合を含む。1個より多くの二重結合を使用する場合、二重結合を共役することができる。二重結合を、特に各末端で、本明細書の当該基において単離することが有利である。本発明において、2個、特に1個の二重結合を使用することが特に有利である。
【0186】
化学線で活性化することができる、平均して1個より多くの基を分子当たりで使用する場合、基は、互いに構造的に異なり、または同一の構造である。
【0187】
これらが互いに構造的に異なる場合、本発明において、これは、使用される化学線で活性化することができる2、3、4またはそれ以上、さらにとりわけ2個の基が、2、3、4またはそれ以上、さらにとりわけ2個のモノマークラスに由来することを意味する。
【0188】
適切な基の例は、(メタ)アクリレート、エタクリレート、クロトネート、シンナメート、ビニルエーテル、ビニルエステル、ジシクロペンタジエニル、ノルボルネニル、イソプレニル、イソプロペニル、アリルまたはブテニル基、ジシクペンタジエニルエーテル、ノルボルネニルエーテル、イソプレニルエーテル、イソプロペニルエーテル、アリルエーテルまたはブテニルエーテル基、またはジシクペンタジエニルエステル、ノルボルネニルエステル、イソプレニルエステル、イソプロペニルエステル、アリルエステルまたはブテニルエステル基、さらにとりわけアクリレート基である。
【0189】
基は、ウレタン、尿素、アロファネート、エステル、エーテルおよび/またはアミド基により、さらにとりわけエステル基により構成物質(O)の各親構造に結合することが好ましい。典型的にこれは、慣例および既知のポリマー−類似反応、例えば、側鎖グリシジル基と上記の酸性基を含むオレフィン性不飽和モノマーの反応、側鎖ヒドロキシル基とこれらのモノマーのハロゲン化物の反応、ヒドロキシル基と二重結合を含むイソシアネート、例えば、ビニルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネートおよび/または1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−(1−メチルエテニル)ベンゼン(CYTEC製TMI(登録商標))の反応、またはイソシアネート基と上記のヒドロキシル基を含有するモノマーの反応を介して生じる。
【0190】
あるいは、加熱のみによる硬化性構成物質(O)と化学線のみによる硬化性構成物質(O)の混合物を使用することが可能である。
【0191】
適切な構成物質または結合剤(O)は、
米国特許第4268542号または米国特許第5379947号明細書および独国特許出願公開第2710421号、独国特許出願公開第19540977号、独国特許出願公開第19518392号、独国特許出願公開第19617086号、独国特許出願公開第19613547号、独国特許出願公開第19618657号、独国特許出願公開第19652813号、独国特許出願公開第19617086号、独国特許出願公開第19814471号、独国特許出願公開第19841842号もしくは独国特許出願公開第19841408号、独国特許第19908018号または独国特許第19908013号明細書あるいは欧州特許出願公開第0652264号明細書に記載され、熱および/または化学線により硬化性粉末透明被覆スラリーの使用について検討している全ての結合剤、
独国特許出願公開第19835296号、独国特許出願公開第19736083号または独国特許出願公開第19841842号明細書に記載され、二重硬化クリヤーコートの使用について検討している全ての結合剤、ならびに
独国特許出願公開第4222194号明細書の、BASF Lacke+Farben AG製品資料「Pulverlacke」、1990またはBASF Coatings AG社のパンフレット"Pulverlacke,Pulverlacke fuer industrielle Anwendungen",January,2000に記載され、熱による硬化性粉末クリヤーコートの使用を目的とした全ての結合剤、
欧州特許出願公開第0928800号、第0636669号、第0410242号、第0783534号、第0650978号、第0650979号、第0650985号、第0540884号、第0568967号、第0054505号または第0002866号明細書、独国特許出願公開第19709467号、第4203278号、第3316593号、第3836370号、第2436186号もしくは独国特許出願広告第2003579号明細書、国際特許出願第97/46549号もしくは第99/14254号明細書、または米国特許第5824373号、第4675234号、第4634602号、第4424252号、第4208313号、第4163810号、第4129488号、第4064161号もしくは第3974303号明細書に記載され、UV硬化性透明被覆および粉末クリヤーコートの使用を目的とする全ての結合剤
を含む。
【0192】
構成物質(O)の製造は、方法論的な特性はないが、代わりにポリマー化学の慣例および既知の方法により、例えば上記に引用した特許に詳細に記載されるように行う。
【0193】
(メタ)アクリレートコポリマー(O)に適切な製造方法のさらなる例は、欧州特許出願または欧州特許出願公開第0767185号明細書、独国特許出願広告第2214650号または独国特許出願広告第2749576号明細書および米国特許第4091048号、米国特許第3781379号、米国特許第5480493号、米国特許第5475073号もしくは米国特許第5534598号明細書または標準テキストのHouben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,4th edition,Volume 14/1,pages 24−255,1961に記載される。共重合に適切なリアクターは、慣例および既知の撹拌タンク、撹拌タンクカスケード、チューブリアクター、ループリアクターまたはテイラーリアクターを含み、例えば、独国特許出願広告第1071241号、欧州特許出願公開第0498583号もしくは独国特許出願公開第19828742号明細書またはK.Kataoka,Chemical Engineering Science,Volume 50,No9,1995,pages 1409−1416に記載される。
【0194】
ポリエステルおよびアルキド樹脂(O)の製造は、例えば、標準テキストのUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,3rd edition,Volume 14,Urban & Schwarzenberg,Munich,Berlin,1963,pages 80−89およびpages 99−105ならびにさらに以下の本"Resines Alkydes−Polyesters",J.Bourry,Paris,Verlag Dunod,1952,"Alkyd Resins"by C.R.Martens,Reinhold Publishing Corporation,New York,1961および"Alkyd Resin Technology",T.C.Patton,interscience Publishers,1962にさらに記載される。
【0195】
ポリウレタンおよび/またはアクリル化ポリウレタン(O)の製造は、例えば、欧州特許出願公開第0708788号、独国特許出願公開第4401544号または独国特許出願公開第19534361号にさらに記載される。
【0196】
とりわけ適切な構成物質(O)の例は、エポキシド基を含有する(メタ)アクリレートコポリマーであり、エポキシド当量は、好ましくは400〜2500、より好ましくは420〜2200、非常に好ましくは430〜2100、非常に特に好ましくは440〜2000および特に440〜1900であり、数平均分子量(ポリスチレン標準物質を使用するゲル透過クロマトグラフィーにより決定)は、好ましくは2000〜20000および特に3000〜10000およびガラス転移温度(Tg)は好ましくは30〜80、より好ましくは40〜70および特に40〜60℃(欧州特許出願公開第0299420号、独国特許出願広告2214650号、独国特許出願広告2749576号、米国特許第4091048(A)または米国特許第3781379号明細書に記載のように示差走査熱量計(DSC)により測定)である。
【0197】
好ましい適切な架橋剤(V)はポリイソシアネートである。
【0198】
ポリイソシアネートは、平均して分子当たり少なくとも2.0、好ましくは2.0以上および特に3.0以上のイソシアネート基を含む。おもに、イソシアネート基数の上限はなく、しかし、本発明において、数が15以下、好ましくは12、より好ましくは10、非常に好ましくは8.0および特に6.0である場合有利である。
【0199】
適切なポリイソシアネートの例は、イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーであり、ポリオールと過剰のジイソシアネートを反応させることにより製造でき、低粘性のものが好ましい。
【0200】
適切なジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(すなわち、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン)、5−イソシアナト−1−(2−イソシナト−1−エチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナト−1−(3−イソシアナト−1−プロピル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン、5−イソシアナト−(4−イソシアナト−1−ブチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナト−1−プロピル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナト−1−エチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナト−1−ブチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナト−シクロブタン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネートまたはHenkel製の商標名DDI1410で販売され、国際特許出願第97/49745号および国際特許出願97/49747号明細書に記載される二量体の脂肪酸由来のジイソシアネート、とりわけ、2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサンまたは1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(2−イソシアナト−1−エチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−イソシアナト−1−プロピル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(4−イソシアナト−1−ブチル)シクロヘキサンあるいは液体ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、これはtrans/trans量が最大30質量%、好ましくは25質量%および特に20質量%であり、独国特許出願公開第4414032号、英国特許出願公開第1220717号、独国特許出願公開第1618795号または独国特許出願公開第1793785号明細書に記載され、好ましくは、イソホロンジイソシアネート、5−イソシアナト−1−(2−イソシアナト−1−エチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナト−1−(3−イソシアナト−1−プロピル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナト−(4−イソシアナト−1−ブチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナト−1−プロピル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナト−1−エチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナト−1−ブチル)シクロヘキサンまたはHDI、とりわけHDIである。
【0201】
さらに、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、尿素、カルボジイミドおよび/またはウレトジオン基を含有するポリイソシアネートを使用してよく、上記のジイソシアネートから従来の様式において製造する。適切な製造方法およびポリイソシアネートの例は、例えば、カナダ特許第2163591号、米国特許第4419513号、米国特許第4454317号、欧州特許出願公開第0646608号、米国特許第4801675号、欧州特許出願公開第0183976号、独国特許出願公開第4015155号、欧州特許出願公開第0303150号、欧州特許出願公開第0496208号、欧州特許出願公開第0524500号、欧州特許出願公開第0566037号、米国特許出願公開第5258482号、米国特許出願公開第5290902号、欧州特許出願公開第0649806号、独国特許出願公開第4229183号または欧州特許出願公開第0531820号明細書より公知である。
【0202】
適切な架橋剤のさらなる例は、ブロックポリイソシアネートである。
【0203】
ブロックポリイソシアネートの製造に適切なブロック剤の例は、米国特許第4444954号または米国特許第5972189号より公知のブロック剤、例えば、
i)フェノール、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステルまたは2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、
ii)ラクタム、例えば、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムまたはβ−プロピオラクタム、
iii)活性メチレン化合物、例えば、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、メチルまたはエチルアセトアセテートまたはアセチルアセトン、
iv)アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、2−(−ヒドロキシエトキシ)フェノール、2−(ヒドロキシプロポキシ)フェノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノールまたはアセトシアノヒドリン、
v)メルカプタン、例えば、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノールまたはエチルチオフェノール、
vi)酸アミド、例えば、アセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトアミド、ステアルアミドまたはベンズアミド、
vii)イミド、例えば、スクシンイミド、フタルイミドまたはマレイミド、
viii)アミン、例えば、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンまたはブチルフェニルアミン、
ix)イミダゾール、例えば、イミダゾールまたは2−エチルイミダゾール、
x)尿素、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素または1,3−ジフェニル尿素、
xi)カルバメート、例えば、フェニルN−フェニルカルバメートまたは2−オキサゾリドン、
Xii)イミン、例えば、エチレンイミン、
Xiii)オキシム、例えば、アセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンソフェノンオキシムまたはクロロヘキサノンオキシム、
xiv)亜硫酸の塩、例えば、重亜硫酸ナトリウムまたは重亜硫酸カリウム、
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えば、ベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)またはアリルメタクリロヒドロキサメート、または
xvi)置換ピラゾール、ケトキシム、イミダゾールまたはトリアゾール、およびさらに、
これらのブロック剤の混合物、とりわけ、ジメチルピラゾールおよびトリアゾール、マロン酸エステルおよびアセト酢酸エステル、ジメチルピラゾールおよびスクシンイミドまたはブチルジグリコールおよびトリメチロールプロパンである。
【0204】
多価イソシアネートとして、分子当たりのイソシアネート基の平均官能基3〜6個、好ましくは3.5〜5個を有する脂肪族ポリイソシアネートの混合物を使用することが好ましい。イソシアネート量は、(コ)ポリマーのヒドロキシル基当たり1.2〜3、とりわけ、1.5〜2.5個のイソシアネート基が反応するように選択することが好ましく、残りのイソシアネート基をアミンとの反応により尿素基に変換する。
【0205】
特に適切なイソシアネート混合物で挙げることができる例は、ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)0.1質量%〜10質量%、とりわけ0.3質量%〜8質量%、トリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三官能性ビウレット)30質量%〜80質量%、とりわけ42質量%〜79質量%および官能基4〜10個を有するイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの当該高度多官能性ビウレット)20質量%〜60質量%、とりわけ、22質量%〜50質量%の混合物である。
【0206】
適切な架橋剤のさらなる例は、すべて既知の、例えば、ビスフェノールAまたはビスフェノールFに対して脂肪族および/もしくは脂環式ならびに/または芳香族の、低分子量オリゴマーおよびポリマーポリエポキシドである。適切なポリエポキシドの例として、Shell製Epikote(登録商標)、ナガセケミカル株式会社製Denacol(登録商標)、例えば、Denacol EX−411(ペンタエリトリットポリグリシジルエーテル)、Denacol EX−321(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)、Denacol EX−512(ポリグリセリンポリグリシジルエーテル)およびDenacol EX−521(ポリグセロールポリグリシジルエーテル)またはトリメリット酸のグリシジルエステルまたはトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)名で市販されているポリエポキシドがある。
【0207】
架橋剤として、さらに、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(TACT)を使用してよく、この場合、アルキル基が炭素原子1〜10個を含む。
【0208】
適切なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は、米国特許第4939213号、米国特許第5084541号または欧州特許出願公開第0624577号明細書に記載される。特にトリス(メトキシ−、トリス(n−ブトキシ−および/またはトリス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルアミノ)トリアジンを使用する。
【0209】
有利なものは、メチルブチル混合エステル、ブチル2−エチルヘキシル混合エステルおよびブチルエステルである。これらは、ポリマー融解物中で直鎖メチルエステルが良好に溶解し、さらに結晶化する傾向が少ないことについて有利である。
【0210】
さらに、アミノ樹脂、メラミン樹脂を、例えば、架橋剤として使用することが可能である。これに関して、透明色の上塗りまたはクリヤーコートに適切であるいくつかのアミノ樹脂またはこのようなアミノ樹脂の混合物を使用することが可能である。特に適切なものは慣例および既知のアミノ樹脂であり、これらのメチロールおよび/またはメトキシメチル基のいくつかはカーバメートまたはアロファネート基により脱官能基化されている。この種の架橋剤は、米国特許第4710542号および欧州特許第0245700(B1)明細書およびさらにB.Singhらによる論文、"Carbamylmethylated Melamines,Novel Crosslinkers for the Coatings Industry",Advanced Organic Coatings Science and Technology Series,1991,Volume 13,pages 193−207に記載されている。アミノ樹脂はまた、結合剤(O)として使用することができる。
【0211】
適切な架橋剤のさらなる例は、β−ヒドロキシアルキルアミド、例えば、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドまたはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−アジパミドである。
【0212】
さらに、カルボン酸、とりわけ、分子中に炭素原子3〜20個を有する飽和、直鎖、脂肪族ジカルボン酸、特に、ドデカン二酸を使用することが可能である。
【0213】
適切な架橋剤のさらなる例は、シロキサン、とりわけ、少なくとも1個のトリアルコキシ−またはジアルコキシ−シラン基を有するシロキサンである。
【0214】
使用される具体的な架橋剤は、水性ベースコートの結合剤に存在する相補的反応性官能基に左右される。
【0215】
本発明は、さらに自動車下塗り仕上げ用の硬化性水性ベースコート、建築構造、内装および外装両方の塗料、ドア、窓および家具の塗装、コイル被覆、容器被覆を含めた産業被覆および電気構成部品の含浸および/または被覆ならびにさらに、家庭用電気製品、ボイラーおよびラジエーターを含む家電製品の被覆の使用を提供する。
【0216】
自動車下塗り仕上げまたは自動車補修仕上げ、とりわけ自動車下塗り仕上げの使用が特に好ましい。
【0217】
硬化性水性ベースコートは、本明細書において、簡略して「水性ベースコート」と呼ぶ。
【0218】
水性ベースコートは、熱可塑性または熱硬化性ポリマーの硬化性前駆体物質であり、これは、液体、溶液および/または好ましくは分散液で好ましくは金属基質に塗布する。これは、典型的に、当業者がそれ自体既知である被覆装置を使用して行う。本明細書において、水性ベースコートの基本的な利点が2つ明らかである:完全または実質的に有機溶剤を含まず、かつ被覆方法に重ね塗りを繰り返すことが容易である。
【0219】
ポリカーボネートに加えて、硬化性水性ベースコートは、場合により、水性ベースコートの少なくとも1種の官能性構成物質(F)を含む。水性ベースコートは、さらに、結合剤として少なくとも1種のオリゴマーおよびポリマー構成物質(O)および少なくとも1種の架橋剤(V)を含む。
【0220】
適切な官能性構成物質(F)は、(O)または(V)において明記された物質を除いた、被覆材料に典型的な全ての構成物質およびさらに超分岐ポリカーボネートを含む。
【0221】
本発明の水性ベースコートは、典型的な被覆量、例えば、その固体に対して0.1質量〜5質量%の官能性構成物質(F)を含むことができる。
【0222】
適切な、塗料に慣用の構成物質(F)の例は、有機および無機の、透明または不透明充填剤および/もしくはナノ粒子および/または補助剤ならびに/あるいは添加剤、例えば、UV吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、脱揮発剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、架橋触媒、熱不安定性ラジカル開始剤、光開始剤、熱硬化性反応性希釈剤、化学線で硬化可能な反応性希釈剤、粘着促進剤、流動調整剤、皮膜形成補助剤、難燃剤、腐食抑制剤、自由流動助剤、ワックスおよび/またはマット剤である。構成物質(F)を個別に、または混合物として使用することができる。
【0223】
本発明において、化学線は、電磁放射、例えば、近赤外線、可視光線、UV線またはX線、とりわけ、UV線または電子ビームなどの微粒子放射線を意味する。
【0224】
適切な有機および無機充填剤の例は、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸、例えば、タルク、マイカまたはカオリン、シリカ、酸化物、例えば、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムあるいは有機充填剤、例えば、プラスチック粉末、とりわけ、ポリアミドまたはポリアクリロニトリルのものである。さらに詳細には、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Tieme Verlag,1998,pages 250ff.,"Fillers"を参照する。
【0225】
目的が水性ベースコートから作製される被覆の引っ掻き抵抗性を改良する場合、マイカおよびタルクを使用することが好ましい。
【0226】
さらに、プレートレット成形の無機充填剤、例えば、タルクまたはマイカと非プレートレット成形の無機充填剤、例えばチョーク、ドロマイト、硫酸カルシウムまたは硫酸バリウムの混合物を使用することが有利であり、それは、これが粘性およびレオロジーを非常に効率よく調節できるためである。
【0227】
適切な透明充填剤の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム系のもの、さらにとりわけこの系のナノ粒子である。
【0228】
さらに適切な構成物質(F)は、補助剤および/または添加剤、例えば、UV吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、脱揮発剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、架橋触媒、熱不安定性ラジカル開始剤、光開始剤、熱硬化性反応性希釈剤、化学線で硬化可能な反応性希釈剤、粘着促進剤、流動調整剤、皮膜形成補助剤、難燃剤、腐食抑制剤、自由流動助剤、ワックスおよび/またはマット剤を含み、これらは、個々に、または混合物として使用することができる。
【0229】
適切な熱性硬化性反応性希釈剤の例は、独国特許出願公開第19809643号、独国特許出願公開第19840605号または独国特許出願公開第19805421号明細書に記載のように、ジエチルオクタンジオールの位置異性体またはヒドロキシル含有超分岐化合物またはデンドリマーである。
【0230】
化学線で硬化可能な適切な反応性希釈剤の例は、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Tieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,pages 491"Reactive diluents"の冒頭に記載されたものである。
【0231】
適切な熱不安定性ラジカル開始剤の例は、有機ペルオキシド、有機アゾ化合物またはC−C−開裂開始剤、例えば、ジアルキルペルオキシド、ペルオキソカルボン酸、ペルオキソジカルボネート、ペルオキシドエステル、ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、アゾジニトリルまたはベンズピナコールシリルエーテルである。
【0232】
適切な架橋触媒の例は、ビスマスラクテート、シトレート、エチルヘキサノエートまたはジメチロールプロピオネート、ジブチルスズジラウレート、リチウムデカノエートまたは亜鉛オクトエート、アミンブロック有機スルホン酸、第4級アンモニウム化合物、アミン、イミダゾールおよびイミダゾール誘導体、例えば、2−スチリルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよび2−ブチルイミダゾール、これらは、べルギー特許第756693号に記載され、あるいはホスホニウム触媒、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート−酢酸複合体、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムブロミドおよびテトラブチルホスホニウムアセテート−酢酸複合体であり、これらは、米国特許第3477990号または米国特許第3341580号明細書に記載される。
【0233】
適切な光開始剤の例は、Roempp Chemie Lexikon,9th,expanded and revised edition,Georg Thieme Verlag Stuttgart,Vol.4,1991またはRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Tieme Verlag,Stuttgart,1998,pages 444−446に記載されている。
【0234】
適切な抗酸化剤の例は、ヒドラジンおよびリン化合物である。
【0235】
適切な光安定剤の例は、HALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサルアニリドである。
【0236】
適切なラジカル捕捉剤および重合阻害剤の例は、有機ホスフィトまたは2,6−ジ−tert−ブチルフェノール誘導体である。
【0237】
適切な脱揮発剤の例は、ジアザジシクロウンデカンまたはベンゾインである。
【0238】
上記に引用した官能性構成物質(F)およびさらに追加の官能性構成物質(F)のさらなる例は、テキスト"Lackadditive"[Additives for Coatings]Johan Bieleman,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1988に詳細が記載されている。
【0239】
このような追加の添加剤の例は、消泡剤、湿潤剤、粘着促進剤、触媒、流動調整剤、抗クレーター剤、光安定剤および増粘剤、例えば、イオンおよび/または関連基を有する合成ポリマーなど、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、疎水性に修飾されたエトキシル化ポリウレタンまたはポリアクリレート、架橋または非架橋ポリマー微粒子である。
本発明の水性ベースコートは、さらに、少なくとも1種の顔料(G)を含み、例として、有色および/またはエフェクト顔料、蛍光顔料、導電性顔料および/または磁気遮蔽顔料、金属粉末または溶解性有機染料を含むことができる。
【0240】
着色無機または有機顔料および増量剤の例は、二酸化チタン、微粉化二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、微粉化マイカ、タルク、カオリン、チョーク、層状ケイ酸塩、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料およびペリレン顔料である。
【0241】
エフェクト顔料の例は、アルミニウム、銅または他の金属の金属顔料、例えば、干渉顔料、例えば、酸化金属被覆金属顔料などであり、例として、二酸化チタン被覆アルミニウム、被覆マイカ、例えば、二酸化チタン被覆マイカ、グラファイトエフェクト顔料、プレートレット形成の酸化鉄、プレートレット形成の銅フタロシアニン顔料がある。一般に、エフェクト顔料を、市販の慣例の水性または非水性ペーストの形態で入れ、適宜、好ましくは水希釈性有機溶剤および添加剤と混合後、剪断しながら水性結合剤と混合する。粉末形態のエフェクト顔料をまず、好ましくは水希釈性有機溶剤および添加剤でペーストに加工することができる。
【0242】
適切なエフェクト顔料の例は、金属粉顔料、例えば、市販の慣例のアルミニウム青銅、独国特許出願公開第3636183号に従いクロム化されたアルミニウム青銅および市販の慣例のステンレス鋼青銅ならびにさらに非金属エフェクト顔料、例えば、真珠光沢顔料および干渉顔料、薄赤色〜茶褐色の色合いを有する酸化鉄系プレートレット成形のエフェクト顔料または液晶エフェクト顔料などである。さらなる詳細には、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Tieme Verlag,1998,pages 176,"Effect pigments"およびpages 380 and 381"metal oxide−mica pigments"−"metal pigments"および独国特許出願公開第3636156号、独国特許出願公開第3718446号、独国特許出願公開第3719804号、独国特許出願公開第3930601号、欧州特許出願公開第0068311号、欧州特許出願公開第0264843号、欧州特許出願公開第0265820号、欧州特許出願公開第0283852号、欧州特許出願公開第0293746号、欧州特許出願公開第0417567号、米国特許第4828826号または米国特許第5244649号明細書を参照する。
【0243】
適切な無機有色顔料の例は、白色顔料、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、亜硫酸亜鉛またはリトポン;黒色顔料、例えば、カーボンブラック、マンガン鉄ブラックまたはスピネルブラック;有彩色顔料、例えば、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーンまたはウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトおよびマンガンバイオレット、赤酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッドまたはウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄、混合褐色、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ;あるいは黄酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、亜硫酸カドミウム、亜硫酸亜鉛カドミウム、クロムイエローまたはビスマスバナデートである。
【0244】
適切な有機有色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジサゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクロドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0245】
さらなる詳細は、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Tieme Verlag,1988,pages 180−181"Iron blue pigments"−"Black iron oxide",pages 451−453"Pigments"−"Pigment volume concentration",page 563"Thioindigo pigments",page 567"Titanium dioxide pigments",pages 400−467,"Naturally occurring pigments",page 459"Polycyclic pigments",page 52,"Azomethine pigments","Azo pigments"およびpage 379,"Metal complex pigments"を参照する。
【0246】
蛍光顔料(昼光蛍光顔料)の例は、ビス(アゾメチン)顔料である。
【0247】
適切な導電性顔料の例は、二酸化チタン/酸化スズ顔料である。
【0248】
磁気遮蔽顔料の例は、酸化鉄または二酸化クロム系顔料である。
【0249】
適切な金属粉末の例は、アルミニウム、亜鉛、銅、青銅または黄銅の金属および金属合金の粉末である。
【0250】
適切な溶解性有機染料は、水性ベースコートおよびそれから作製される被覆からほとんど移動しない、または移動傾向のない耐光性有機染料である。
【0251】
移動傾向を当業者の一般的な技術知識に基づいて推定し、かつ/または着色試験の一部として単純な予備的距離試験などにより決定することができる。
【0252】
水性ベースコートにおいて、顔料(G)または官能性構成物質(F)(存在する場合)対結合剤の質量比は、例えば0.05:1〜3:1であり、エフェクト水性ベースコートにおいて、例えば0.1:1〜0.6:1が好ましく、固体有色水性ベースコートにおいて、より高い、例えば0.1:1〜2.5:1が好ましく、各場合、固体量に対する。
【0253】
有色顔料および/または充填剤を、例えば水性結合剤の一部分で粉末化することができる。粉砕はまた、好ましくは特定の水希釈性ペースト樹脂で行うことができる。粉砕は、当業者が既知の典型的な組立装置で行うことができる。その後、水性結合剤または水性ペースト樹脂の残りを使用して、完全な有色顔料分散液を作製する。
【0254】
高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの取り込みは、水性ベースコートの製造のいくつかのステージで行うことができ、例えば遡及的に添加した補正剤の形態で、例えば別の完全な水性ベースコートに対する添加剤としてのみ含む。一般に、高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの安定した取り込みは、特別なコストがかからず、または混合作業を複雑にすることなくなされる。適宜、分散剤を必要としうる。
【0255】
本発明の水性ベースコートは、とりわけ被覆する基質、例えば、プラスチック表面、ガラス、セラミック、皮革、鉱物建築材料、例えば、セメント成形および繊維セメントスラブと、とりわけ木材およびMDF、ならびにより具体的には、被覆金属を含む金属において適切である。
【0256】
本発明の水性ベースコートに適切な基質の例は、熱可塑性ポリマー、より具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フッ化ポリビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレンコポリマー(A−EPDM)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルまたはその混和物である。
【0257】
さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタル、ポリアクリロニトリル、ポリアセタル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂またはポリウレタン、ブロックコポリマーあるいはそのグラフトコポリマーおよびこれらの混和物を挙げることができる。
【0258】
好ましくはABS、AES、AMMA、ASA、EP、EPS、EVA、EVAL、HDPE、LDPE、MABS、MBS、MF、PA、PA6、PA66、PAN、PB、PBT、PBTP、PC、PE、PEC、PEEK、PEI、PEK、PEP、PES、PET、PETP、PF、PI、PIB、PMMA、POM、PP、PPS、PS、PSU、PUR、PVAC、PVAL、PVC、PVDC、PVP、SAN、SB、SMS、UF、UPプラスチック(DIN規格7728に従った略語)および脂肪族ポリケトンを挙げることができる。
【0259】
特に好ましい基質は、ポリオレフィン、例えば、PP(ポリプロピレン)であり、これは、場合によりアイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチックであってよく、場合により未配向であってよく、または1軸もしくは2軸延伸により配向していてよく、SAN(スチレン−アクリロニトリルコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)ならびにさらにこれらの物理的混合物(混和物)である。PP、SAN、ABS、ASAおよびさらにABSまたはASAとPAもしくはPBTまたはPCの混和物が特に好ましい。ポリオレフィン、PMMAおよびPVCが非常に特に好ましい。
【0260】
とりわけASA、より具体的には独国特許第19651350号のものおよび混和物ASA/PCが好ましい。同様に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)または耐衝撃改質性PMMAが好ましい。
【0261】
本発明の水性ベースコートを用いた被覆にさらに好ましい基質は金属であり、これは適宜、プライマーで前処理していてよい。
【0262】
当該金属は、おもにいかなる種類のものであってよい。しかし、より具体的には、当該金属または合金は、典型的に構造物の金属材料として使用され、腐食を防止する必要があるものである。
【0263】
当該表面は、より具体的には、鉄、鋼鉄、Zn、Zn合金、AlまたはAl合金のものである。これらは、全体が前記金属および/または合金からなる物質の表面であってよい。あるいは、物体はこれらの金属で被覆したのみであってよく、これら自体が他の種類の金属、例えば他の物質、合金、ポリマーまたは組成物などからなりうる。当該表面は、亜鉛メッキした鉄または剛鉄に鋳型成形したものであってよい。本発明の好ましい一実施形態において、当該表面は剛鉄のものである。
【0264】
ZnまたはAl合金は、当業者に公知である。所望の最終使用に応じて、当業者は、合金する構成成分の性質および量を選択する。亜鉛合金の典型的な構成成分は、より具体的にはAl、Pb、Si、Mg、Sn、CuまたはCdを含む。典型的なアルミニウム合金の構成成分は、特にMg、Mn、Si、Zn、Cr、Zr、CuまたはTiを含む。当該Al/Zn合金を合金することができ、この場合AlおよびZnがおよそ等量で存在する。この種の合金で被覆した剛鉄は市販されている。剛鉄には、当業者に公知の典型的な合金構成成分を含むことができる。
【0265】
さらに、本発明の水性ベースコートを使用して、スズメッキした鉄/剛鉄(ブリキ)を処理することが考えられる。
【0266】
本発明の水性ベースコートは、さらに基質、例えば木材、紙、織物、皮革、不織布、プラスチック表面、ガラス、セラミック、鉱物建築材料、例えば、セメント成形および繊維セメントスラブまたは被覆金属を含む金属、好ましくはプラスチックまたは金属のもの、より具体的には皮膜またはホイルの形態ならびにより好ましくは金属を被覆するのに適切である。
【0267】
より具体的には、水性ベースコートを、パイプ(パイプライン)、あらゆる種類のワイヤー製品、内部および外部区分のフランジおよび金具、壁取り付け式形洋服タンスおよびベッドフレーム、フェンス支柱、庭園家具、交通障壁、研究装置、ワイヤー格子、食器洗浄機の挿入部分、買い物カゴ、機械部品、電気機械、ローター、固定子、電気コイル、絶縁計、ボイラー、ブレーキシリンダー、化学プラントまたは道路標識の被覆を作製するために使用する。
【0268】
被覆において、典型的な手法は、本発明の水性ベースコートで従来の被覆を実施後、存在する溶剤を除去するために乾燥および硬化を実施することである。
【0269】
基質の被覆は、当業者に公知の典型的な方法に従って行い、この場合、少なくとも1種の水性ベースコートを所望の厚さで標的基質に塗布し、揮発性物質を除去する。この作業は、所望の場合、1回または複数回繰り返すことができる。基質への塗布は、既知の方法、例えば注入、噴霧、ナイフ被覆、はけ塗り、圧延、ローラー被覆および特に静電噴霧または圧縮空気噴霧により行うことができる。一般に、被覆厚さは約3〜1000g/m2および好ましくは10〜200g/m2である。
【0270】
本発明の修飾された有色および/またはエフェクト水性ベースコートには、多重被覆仕上げ、より具体的には修飾用下塗り/透明二重被覆仕上げの作製および一般に多重被覆仕上げにおける使用がありうる。
【0271】
本発明の水性ベースコートは、自動車部門における多重被覆仕上げ、より具体的には有色および/またはエフェクト多重被覆仕上げ、好ましくは二重被覆仕上げを作製するのに適切である。これらは、自動車下塗り仕上げおよび自動車補修仕上げに適切であるが、さらに他の領域、例えばプラスチックの塗装、より具体的には自動車部品の塗装に使用することができる。
【0272】
それにより、本発明はまた、多重被覆仕上げ、好ましくは二重被覆仕上げを本発明の水性ベースコートおよびクリヤーコートの塗布により作製する方法を提供する。本発明の水性ベースコートを広範囲の様々な基質に塗布することができる。一般に、当該基質は金属性またはプラスチックである。多くの場合、これらを事前に被覆しており、すなわち、例えば、プラスチックプライマーを用いたプラスチック基質を提供することができ、一般に、金属性基質は、電気泳動などにより塗布された下地被覆を有し、さらに、1種以上の追加の塗装被覆、例えば、サーフェーサー被覆などを有することができる。本発明の水性ベースコートは、乾燥皮膜厚さ8〜50μmで噴霧により塗布することが好ましく、エフェクト水性ベースコートにおいて、乾燥皮膜厚さは、例えば10〜25μmが好ましく、一方、固体有色水性ベースコートは、例えば、より厚い10〜40μmである。
【0273】
塗布は、ウェット・オン・ウェット塗装により行なうことが好ましく、すなわち、20〜60℃で相をフラッシュオフ後、例えば水性下塗り皮膜を、好ましくは30〜60μmの乾燥皮膜厚さで従来の透明材料を用いて重ね塗りし、例えば20〜150℃で透明被覆皮膜と合わせて乾燥または架橋する。水性被覆および透明被覆を含む多重被覆仕上げが乾燥する条件は、使用される透明被覆系により規定されている。再仕上げにおいて、例えば20〜80℃が好ましい。下塗り仕上げにおいては、100℃以上、例えば110℃以上が好ましい。
【0274】
従来技術で、透明被覆の表面上に見られることもあるベール状乳白色被覆の形成は、本発明の水性ベースコートを使用して作製される多重被覆仕上げにおいて、濃い色合いの場合でも見ることができない。
【0275】
おもに、全ての既知のクリヤーコートまたは透明に着色された被覆組成物は、クリヤーコートとしての適切性を有する。これに関して、溶剤由来の1構成成分(1K)または2構成成分(2K)のクリヤーコート、水希釈性1Kまたは2Kのクリヤーコート、粉末被覆材料または水性粉末透明被覆スラリーを使用することが可能である。本発明の水性ベースコートから作製された下塗り皮膜を重ね塗りするには、2Kポリウレタンクリヤーコートを使用することが好ましい。従来の有色および/またはエフェクト水性ベースコートに、本発明の高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの使用することにより、特に、ぬれ限界の顕著な低下を実現することが可能である。
【0276】
以下の実施例を参照して、本発明を説明する。
【0277】
超分岐ポリカーボネート:
一般的作業手順:
使用される多官能性ポリオールは、出発分子としてトリメチロールプロパン(TMP)またはグリセリン(Glyc)系エトキシレートまたはプロポキシレートであり、これらの組成物は、エチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)を用いたグラフト率において、統計的に平均して第1表に明記した値前後に変動する。
触媒としての多官能性ポリオール、ジエチルカーボネートおよびカリウムカーボネートまたは水酸化カリウム(ポリオール量に対する量、質量ppm)を第1表のバッチ量に従い、撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備えた三ツ首フラスコに入れ、混合物を140℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。反応時間が経過すると、放出されたエタノールによる蒸発冷却が開始することにより、反応混合物の温度が低下した。次いで、還流冷却器を下降冷却器に切り替え、当量の触媒に対して、リン酸1当量を添加し、エタノールを蒸留して除去し、反応混合物の温度をゆっくり160℃に上昇させた。蒸留により除去したアルコールを冷却した丸底フラスコに回収して計量し、理論的に考えられる完全変換の割合として、このようにして変換を決定した(第1表を参照)。
続いて、なお存在するモノマーの残量を除去するために、乾燥窒素を1時間、160℃にて反応混合物に通した。その後、反応混合物を室温に冷却した。
【0278】
検出器として屈折計を使用してゲル透過クロマトグラフィーによりポリカーボネートを分析した。使用する移動相はジメチルアセトアミドであり、分子量の決定に使用する標準物質は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。
【0279】
第1表:ポリカーボネート、出発材料および最終生成物
【表2】

【0280】
適用例:
水性ベースコートに本発明のポリカーボネートを使用:
実施例10
透明被覆皮膜厚さに関して、下塗りにおける透明被覆(CC)のぬれ限界を決定するために、市販製品のBlack Magic(登録商標)を試験した。
【0281】
この市販製品と実施例5(第1表)のポリカーボネート(PC)0.5%の混和物に同様にこの試験を行った。
【0282】
得られた結果を以下に示す:
Black Magic(登録商標)のぬれ限界:CC皮膜厚さ21μm
Black Magic(登録商標)+0.5%PCのぬれ限界:CC皮膜厚さ13μm
実施例11
透明被覆皮膜厚さに関して、下塗りにおける透明被覆のぬれ限界を決定するために、市販製品Sunset Red(登録商標)を試験した。
【0283】
この市販製品と実施例5(第1表)のポリカーボネート(PC)0.5%の混和物に同様にこの試験を行った。
【0284】
得られた結果を以下に示す:
Sunset Red(登録商標)のぬれ限界:CC皮膜厚さ17μm
Sunset Red(登録商標)+0.5%PCのぬれ限界:CC皮膜厚さ14μm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の高官能性、高分岐または超分岐の、未架橋ポリカーボネートを含む水性ベースコート。
【請求項2】
前記ポリカーボネートの割合が0.1質量%〜15質量%である、請求項1に記載の水性ベースコート。
【請求項3】
1種以上の結合剤、および適宜、顔料ならびにさらに、適宜、充填剤、架橋剤、有機溶剤および/または塗料に慣用の添加剤を含む、請求項1または2に記載の水性ベースコート。
【請求項4】
前記ポリカーボネートを
a)1種以上の縮合生成物(K)を、
a1)一般式RO[(CO)O]nRの少なくとも1種の有機カーボネート(A)と少なくとも3個のOH基を含有する少なくとも1種の脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族アルコール(B1)を、アルコールのROHを排除しつつ反応させ、その際、Rは、独立してそれぞれ炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族炭化水素基であり、さらにR基が互いに結合して環、好ましくは5〜6員環を形成してよく、nは1〜5の整数であり、
または
a2)ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを前記脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族アルコール(B1)と塩化水素を放出しつつ反応させる
ことによるどちらかで製造するステップと、
b)縮合生成物(K)を分子間反応させ、高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートを得るステップと
を含む方法により得て、
反応混合物中のOH基対ホスゲンまたはカーボネートの割合は、縮合生成物(K)が平均して、1個のカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基および1個より多くのOH基、または1個のOH基および1個より多くのカーボネートもしくはカルバモイルクロリド基のどちらかを含有するように選択する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項5】
前記アルコール(B1)がヒドロキシル基当たり1〜30個の分子のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはイソブチレンオキシドと反応されている、請求項4に記載の水性ベースコート。
【請求項6】
前記アルコール(B1)がグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオールおよびペンタエリトリットからなる基から選択される、請求項4または5に記載の水性ベースコート。
【請求項7】
前記ポリカーボネートが少なくとも部分的に少なくとも1種の単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項8】
固体量10質量%〜50質量%を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性ベースコート。
【請求項9】
水性ベースコートにおける添加剤としての高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの使用。
【請求項10】
水性のベースコートおよびクリヤーコートを用いた多重被覆仕上げに関してぬれ限界を低下させるための高官能性、高分岐または超分岐ポリカーボネートの使用。
【請求項11】
自動車下塗り仕上げ、自動車補修仕上げ、建築構造、内装および外装の塗装、ドア、窓および家具の塗装、産業被覆、コイル被覆、容器被覆、および電気構成部品の含浸および/または被覆、家庭用電気製品、ボイラーおよびラジエーターを含む家電製品、パイプ(パイプライン)、ワイヤー製品、フランジおよび金具、壁取り付け式洋服タンス、ベッドフレーム、フェンス支柱、庭園家具、交通障壁、研究装置、ワイヤー格子、食器洗浄機の挿入部分、買い物カゴ、機械部品、電気機械、ローター、固定子、電気コイル、絶縁計、ボイラー、ブレーキシリンダー、化学プラントまたは道路標識の被覆における、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性ベースコートの使用。
【請求項12】
プラスチック、ガラス、セラミック、皮革、鉱物建築材料、セメント成形および繊維セメントスラブ、木材、MDF、金属及び被覆金属を被覆する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性ベースコートの使用。

【公表番号】特表2009−543909(P2009−543909A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519890(P2009−519890)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055796
【国際公開番号】WO2008/009516
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】