説明

高度に多孔質の急速崩壊性固体剤形および粉末の調製および凍結乾燥工程を含むその製造方法

本発明は、急速崩壊性の固体剤形の製造方法に関するものであって、混合固体粉末形態の中の一つ以上の構造構築成分を、ブリスターパックまたは型の孔に用量を投入し、残りの成分を水に溶解し、粉末に投入して加え、湿った可塑性の物質を形成し、−20℃未満に凍らせ、高真空において水を昇華させることを特徴とする製造方法に関する。このようにして、凍結乾燥工程の結果から通常得られるものと同様な、多孔構造を有する固体剤形が得られるが、しかし本工程はごく少量の水しか必要とせず、すなわち時間とエネルギーがかなり少なくなることを意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的凍結乾燥による高度に多孔質の急速崩壊性剤形の経済的な製造方法および得られる剤形に関する。
【0002】
背景技術
錠剤製造技術は、包装と取り扱いができるように丈夫であって、かつ予想される様式で崩壊し得る、活性成分を含む組成物を作ることを含む。
【0003】
急速溶解および急速崩壊性錠剤は、経口摂取される薬剤の分野において特に重要である。多くの人々は、錠剤、カプセルまたは他の従来の固体剤形を飲み込みたくないおよび/または飲み込むことが出来ない。これは特に小児または老人用の医薬の場合に当てはまる。
【0004】
このような人々に対する適切なアプローチの一つは、発泡性の錠剤あるいは顆粒の使用である。しかしながら、発泡性錠剤の使用は、その薬剤の投与の前の調製工程や、水および適当な混合用の容器を必要とする。更に、発泡性錠剤の製造および安定性にはしばしば問題がある。別の可能性は、口腔を通じての吸収が可能である薬剤を含むチューインガムまたはチューイング錠剤の使用である(米国特許第5,225,197号)。そのような送達システムに固有の実質的な不都合は、多くの活性薬剤は頬からの吸収には適しておらず、また多くの人々は、歯列矯正器、歯の治療等のためにガムや錠剤を噛むことが出来ないことである。更に、ガムは調製するのが困難である。
【0005】
口腔において唾液と接触して急速に崩壊する医薬剤形を得るために、二つの主要技術が現在用いられている。これらの方法は、M. Sugimoto, K. Matsubara, Y. KoidaおよびM. Kobayashi, Pharm. Dev. Technol. 6 (4), 487-493 (2001)に要約されている:
【0006】
(1)活性成分を水溶性の希釈液と混合し、打錠機上で、低〜中圧縮力で圧縮する。これはより従来的なアプローチであって、要求される引っ張り強さおよび適切な崩壊時間を有する錠剤が得られないことが非常に多い。より最近の方法は、加圧によって得られる錠剤中にマイクロカプセルに封入された薬剤成分を導入することを含む、OraSolv(商標)技術である(米国特許第5,178,878号)。その錠剤は、通常のブリスターパックに対しては機械的抵抗力が不十分であることから、特別な剥ぎ取りブリスターパックに包装されなければならない。急速溶解性錠剤は、適応した硬化条件下で適切な結晶糖構造を用いて製造された(米国特許第5,866,163号)。更に圧縮した急速溶解性剤形で、活性成分ならびに非方向性圧縮充填剤および滑沢剤より構成されるマトリックスを含むものが、米国特許第6,221,392号に開示されている。
【0007】
(2)活性成分と適当な賦形剤を用いて懸濁液を調製する。その懸濁液をブリスターパックに分注し、凍結乾燥する(米国特許第4,371,516号)。この方法により、通常、多孔質の構造を持ち、妥当な引っ張り強さと崩壊時間を有する錠剤を得ることができるが、しかし時間を要し、コストの高い凍結乾燥工程を必要とする。Zydis(登録商標)Technologyの名で販売されている対応する工程は米国特許第4,642,903号および欧州特許295242によって保護されている。この技術の特定の形態は、例えば米国特許第5,976,577;6,156,359;6,413,549;6,423,342;6,509,040および6,709,669号によって保護されている。
【0008】
凍結乾燥工程の有効性は、使用の活性物質の物理化学的パラメータに常に依存する。凍結乾燥工程を、室温あるいは高温での通常の乾燥、またマイクロ波放射による乾燥によって置き換えることは、国際特許出願WO97/38679に開示されているが、同様に時間とエネルギー消費が大きく、またそのような条件に耐え得る活性物質のみに制限されてしまう。これらの短所を克服する便利な方法が、欧州特許申請EP03405901.4に記載されている。
【0009】
発明の概要
本発明は、急速崩壊性の固体剤形の製造方法であって、混合固体粉末形態の中の一つ以上の構造構築成分を、ブリスターパックまたは型の孔に投入し、残りの成分を水に溶解して、粉末に投入して加え、湿った可塑性の物質を形成させ、−20℃未満に凍らせ、高真空において水を昇華させることを特徴とする製造方法に関する。このようにして、凍結乾燥工程の結果から通常得られるものと同様な、多孔構造を有する固体剤形が得られるが、しかし本工程はごく少量の水しか必要としない、すなわち時間とエネルギーがかなり少なくなることを意味する。本発明は更にそのような方法によって得られる剤形に関する。特に、本発明は経口用の急速崩壊性薬剤剤形に関する。
【0010】
発明の詳細な説明
急速崩壊性の固体剤形の調製に用いられる、煩雑、高価で、エネルギー多消費である標準的な凍結乾燥工程と対照的に、本発明は、固体で高度に多孔質の急速崩壊性剤形の製作のために、高度に経済的な工程と新規な合理的な凍結乾燥技術を用いる。
【0011】
本発明の方法において、構造構築成分は固体粉末の形態で適用される。場合により錠剤充填剤および他の賦形剤を含んでいる構造構築成分は、より詳しく後述するように、要求される製品形状と引っ張り強さを提供する化合物である。活性成分の全部または一部もまた固体粉末形態で提供されてもよい。水に溶解される残りの化合物は、後述する結合剤を含み、場合によっては他の賦形剤、特に分子的に分散した形態で存在しなければならないものを含んでもよい。例えば活性成分は、水に溶解してもよい。
【0012】
凍結工程は通常の方式で行われる。温度は−20℃未満であり、例えば−20℃〜−50℃の間で、例えば−30℃前後である。水は、例えば6.11mbar(6.11×10−8Pa)未満の減圧下で、例えば約1mbar〜0.01mbar(1×10−8〜1×10−10Pa)の高真空において昇華される。
【0013】
本発明の方法における任意の更なる工程は、ブリスターパックの密閉または得られた製品を型から適当な包装へ移す工程を含む。
【0014】
特定の応用は、工程が経口急速崩壊性剤形に適用される医薬の分野においてなされる。この工程において、分子的に分散した形態で組み込まれなければならない活性成分または特定の成分のみが凍結乾燥される。得られる新規経口剤形は、医薬錠剤様ディスク型もしくはシーツ型または他の型の錠剤で、口にいれた時、急速に水を取り込み、直ちに崩壊し、それ故容易に消化される、高度に多孔質形態のものである。
【0015】
同じ手順は更に、獣医薬、食品または技術的応用に用いられる他の剤形に応用してもよい。急速崩壊性剤形は、それが応用される多くの異なった分野においても重要である。例えば、それらは織物の洗浄、あるいは食器洗い器に用いてもよく、洗剤および適切な添加剤を含んでもよい。他の応用としては例えば、漂白錠剤、浄化錠剤、浄水錠剤、義歯洗浄錠剤、および例えばコーヒー器、湯用ポット、シャワーノズル等熱水使用機器の脱カルシウムである。
【0016】
急速崩壊性剤形の別の特定の応用は、食品分野においては、例えばコーヒー、茶、ココアもしくは粉ミルク、グレイビー、スープまたは他の飲料であり、錠剤を冷水または湯に溶解して元の食品を再構成する、あるいは水なしに口に直接入れる食用エネルギー源の錠剤であり、例えばランニングあるいは自転車競技および同様なスポーツのような連続活動期間中に摂食され消化される迅速エネルギー提供物である。
【0017】
製造のための新工程は、少ない水量しか必要とせず、しかも標準的な凍結乾燥に比べて、生物薬学的または技術的短所がないままである、標的化し短縮した部分的凍結乾燥工程を用いる。例えば、標準的な凍結乾燥工程においては、凍結乾燥される溶液または懸濁液は、通常固体約10%(w/w)と水90%、または極端な場合は固体を20%までと水80%を含んでいるが、実際、本手順によれば80%(w/w)未満の水、例えば20%〜70%の範囲、好ましくは30%〜40%の範囲の水を用いる。この結果、この工程はかなりのエネルギー量と時間の節約をもたらす。標準的な凍結乾燥工程においては、例えば米国特許第4,371,516号に記載されているものにおいては、全ての成分は水溶液または水に分散されて供給され、その後水は昇華する。しかしながら、本発明は、構造構築成分および、場合により活性成分は、固体粉末の形態で用いられ、したがって水溶液でも水に分散したものでもないので、かなり少ない水しか使用しない。
【0018】
医薬への応用に関しては、得られる製品は、小ディスク、棒状またはシーツ状の形態が好ましい。また、これらの製品は、圧縮によって得られる通常の意味での錠剤の形態ではないが、錠剤と呼ぶこともできる。口腔経由の経口適用について、例えば湿った舌の上に置いた時、これらは唾液から水分を急速に吸収し柔らかくなり、直ちに崩壊するか、または容易に噛みもしくは舌で潰される。標準的な経口剤形を摂ることに問題がある患者にとって、特に小児と高齢の患者にとって、医薬成分が液体を加えずに摂取直後に溶解することは歓迎すべき簡易化である。もし完全に溶解しない場合は、容易に飲み込める、ペースト状の物質が存在する。この点において、本発明の製品は本質的には、よく知られているZydis(登録商標)技術あるいは関連した工程に従って調製された医薬の経口剤形と異ならない。
【0019】
本新規製造工程は、既知の古典的凍結乾燥工程に大きく依存する。新技術の特徴的な面として、要求される剤形に形成されるべき物質の総量は、二つの部分に分離し、一つの部分は液体部分で、もう一つは固体部分で、別々に投入する。更に詳述すれば、手順は次の工程よりなる:最初に、生物薬学的あるいは技術的な理由で溶解し凍結乾燥する必要はないが固体の粉末状の形態で導入することができる、製剤中の成分を選択する。これらの成分をよく混合する。固体として取り扱うのに適した薬学的経口剤形成分には、特に構造成分、例えばマニトールまたはキシリトールのような糖アルコール、サッカロース、グルコース、乳糖、果糖等のような糖である。充填剤または賦形剤として用いられる他の成分を取り入れる場合もあり、例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整用の塩および/または緩衝液であり、その例としてはグリシン、デンプン、リン酸二カルシウム、微結晶セルロース、芳香化合物、染色物質と色素、固体緩衝剤および類似化合物であることができる。充填剤は多孔質構造を構築可能で、急速な崩壊を支援することが出来、非吸湿性であることが好ましい。更に、この固体粉末混合物は活性成分を含んでもよい場合があり、それは、もしこの混合物が水相に完全には溶解しない場合、または生物薬学的理由で溶解した形態で取り入れるのはよくない場合、例えば活性成分の活性を延長したい場合である。
【0020】
液体部分は、活性成分と結合剤を主成分として含む水溶液より成る。結合剤は、良好な結合性を示し、また凍結乾燥物の構造的安定性を支持する通常の錠剤結合剤の中から、その目的に適合する適切な結合剤が選択される。その例としては、加水分解または非加水分解ゼラチン、ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標))、セルロースエーテル、プレゼラチン化デンプン等である。更に、少量の他の賦形剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整用の塩および/または緩衝液を溶解してもよく、もし生物薬学的または技術的側面から意味がある場合は、特に界面活性剤、湿潤剤を溶解してもよい。最適化された、必要とする水の減少量はそれぞれの場合について、予備試験で決定される。その目的のために、製剤の固体部分を用いた実験を行い、それに液体部分の増加量を加え、均質な可塑性で完全に湿らせた成形可能な物質をもたらすための液体の最小量を決定する。
【0021】
非医薬応用に関して、構造成分、結合剤および他の賦形剤の選択は、もちろん想定される使用に適応するが、同じ原則に従っており、つまり例えば水の総量を最小限にするように、溶解された形態で提供される成分の量を制限している。
【0022】
本発明の方法において、固体部分は、固体剤形成分(工程において昇華される水を含めて)を総重量の少なくとも30%を含み、好ましくは50%を越え、最も好ましくは75%を越える量を含む。要求される水の量が少なければ少ないほど、工程の最終工程における昇華時間とエネルギーの節約は大きくなる。
【0023】
本発明の工程において得られた、高度に多孔質の急速崩壊性固体剤形を図1に図式的に示す。空白の(白色)円は、液体の形態(液体部分)で加えられた成分によって共に結合された粉末化合物(固体部分)の元の粒子を表し、液体部分は円の間の点を付した部分である。溶解された成分を含む液体部分を固体調整粉末に加えると、液体は固体の残存空間に入り、等しく分布する。冷却と蒸発の際、凍結乾燥はこの(点を付した)空間でのみ起こり、一方溶解されない固体部分(白色)は直接関与せず、凍結乾燥工程において共に接着される。固体粉末成分はモルタルで共に接着されたレンガで、頑丈な「レンガ構造」を形成すると見なすことができるようにマトリックスが形成される。このレンガ構造はフィルムに覆われたエアロゲル様のネットワーク構造に相当し、固体「レンガ」は直径0.025mm〜2mmの範囲、特に0.1mm〜1.5mmの範囲である。この固体剤形を適用するにあたり、例えば医薬経口剤形を湿った舌に触れさせると、水(唾液)は凍結乾燥した網目構造の中空の空間に入り、元の液体部分の成分をほとんど瞬間的に溶解する。その結果、マトリックスの元の固体粉末部の成分は解放され、「レンガ構造」は崩壊する。そこで粉末粒子はその標準的溶解度に相当する溶解速度で溶解される。
【0024】
図2は凍結乾燥したロペラミドの顕微鏡図を示し、1ユニットは0.01562mmを表し、10ユニットごとに数字を付けてある(すなわち、10ユニットは0.1562mmである);上の図において、ロペラミドは、EP295 242に記載されたZydis(登録商標)技術で製造され、均一に分布した固体が生ずる;下の図においては、本発明の方法で実施例1において製造されたロペラミドであり、図1の模式図に相当する、固体材料の塊(「レンガ」)を示している。
【0025】
充填、投入、包装のための適当な器、例えばブリスターパックに包装する際、下部箔に孔を形成して準備し、これらの孔に(ブリスターパックの下部)、固体部分と液体部分のそれぞれの正確に測った量を加え、合わせる。これはブリスター箔の孔において直接行ってもよいし、または他の適当な成形器具の中で行ってもよい。その後、そのようにして形成された可塑性で湿った物質の一回分用量を標準的な凍結乾燥装置、例えば標準Zydis(登録商標)技術に用いられる装置に導入し−20℃〜−50℃で凍結する。凍結した中間体を更に凍結乾燥装置の高真空部に移し、そこで残存水を昇華により完全にまたはほとんど完全に除く。
【0026】
部分凍結乾燥軽減のこの新工程は、総質量の内で部分的な凍結乾燥しか必要とせず、そこには、液体の形で導入しなければならない生物薬学的または技術的理由が存在する。製剤の他の成分は、通常主部分を代表するが、固体粉末の形でのみ導入するとされている。本工程は、少量の水の存在下で直ちに崩壊し、それ故、もし即時に摂取されるように設計され、または急速に水に溶解し、すなわち容易に摂取および嚥下する事ができるのであれば、充分に頑丈な高度に多孔質の剤形の製造のための、より合理的な工程である。剤形の製造を、開始から終了までを一つの装置を用いて一工程で行い、出荷準備のできた最終包装製品を提供するので、この手順は封じ込め(コンテインメント)工程と称することができる。
【0027】
活性成分は、特に医薬であるが、しかしまた例えばビタミン、ミネラルまたは食餌補助剤であってもよい。医薬としては、特に制限はなく、制酸剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗生物質、緩下剤、食欲抑制剤、抗喘息剤、利尿剤、整腸剤、抗偏頭痛剤、抗不整脈剤、鎮痙剤、鎮静剤、抗活動亢進剤、精神安定剤、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、ベータ遮断剤、冠拡張剤、気管支拡張剤、筋弛緩剤、抗凝固剤、抗癲癇剤、抗嘔吐剤、血圧降下剤、交感神経様作用薬、去痰剤、経口抗糖尿病剤、ホルモンおよびこれらの組み合わせであることができる。
【0028】
この新工程のための活性医薬成分は、純粋な形でまたは特定の前処理された形で、固体の状態に、溶解、部分的溶解または混合してもよい。活性成分は、光学異性体、異なった結晶修飾、特に、穀粒サイズまたは特定の形状で存在してもよい。前処理された活性成分とは、例えばコーティングされた活性成分であり、例を挙げれば、ミクロまたはナノカプセル封入された、または例えば酸不安定化合物により特定の機能を達成するために埋め込まれた、もしくは長時間にわたる生物学的利用能を制御するための遅延剤形態をとっている活性成分である。
【0029】
この新技術と共に用いられる賦形剤は、従前の経口剤形の調製からも知られている賦形剤であり、例えば圧縮錠剤用には、糖アルコール、糖、セルロース粉末、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース等のような充填剤および構造成分、またゼラチン、ポビドン、可溶性セルロースエーテル等のような、凍結乾燥物の頑丈な構造の形成を支持する適切な結合能力と性質を有する結合剤であることができる。結合剤は、ブリスターから取り出した時および取り扱う間、その品物が破損しないような充分な固さを製剤に与えるために、主として用いられる。更にここで考慮される賦形剤はまたデンプンおよびスーパー崩壊剤のような通常の崩壊剤であり、親水化剤、溶解促進剤、芳香化合物および甘味剤である。
【0030】
本明細書での「錠剤」という表現は、経口剤形のある特定のサイズまたは形態に制限されない。錠剤は、古典的な皿型、また他の球形、楕円体、棒形、顆粒、塊、角の丸い立方体または適当な型から得られる特定の形のような多くの異なった形状をとってもよい。サイズは、直径約1.5mmまたは長径が1.5mmまで拡張しているいわゆる微小錠剤またはペレットであり、約20mm、好ましくは2〜10mmの範囲まで変化してもよい。例えば水に溶かす食品を含む「錠剤」としての非医薬の使用、獣医薬の使用または技術的工程での使用のための化学物質を含む「錠剤」は、サイズを、例えばゴルフボールのサイズまで、かなりの大きさにすることもできる。
【0031】
本発明の方法の記述から容易に理解できるように、この手順にかかる時間とエネルギー消費は、凍結乾燥により除かれる水の量がかなり多い標準的凍結乾燥工程よりも、少ない。一方、錠剤様経口剤形は、通常の標準的な凍結乾燥工程の結果と同様な多孔性構造を有するものを得ることができる。
【0032】
そのようにして製造された経口剤形は、直ちに輸送と使用に適した容器に包装することができ、容器としては、例えば錠剤成分の性質およびその引っ張り強さに応じて、通常のまたは剥離式のブリスターパックであることができる。
【0033】
用いられた特定の製造工程の結果、本発明の剤形は、通常200〜1000mg/ml、好ましくは300〜900mg/ml、より好ましくは600〜900mg/mlまたは400〜800mg/mlの密度を有する。この密度は、通常の錠剤(1000mg/mlを超える密度を有する)のような圧縮剤形の密度よりもずっと小さい。その並外れて低い密度の結果、本発明の剤形は、その成分の混合物に圧縮力をかけた場合よりも急速に崩壊する。
【0034】
以下の実施例によって本発明を示すが、本発明の範囲を制限しない。
【0035】
実施例
実施例1:ロペラミド急速崩壊性錠剤、標準活性成分
炭酸水素ナトリウム(1.0kg)およびペパーミントエッセンス粉末(0.01kg)を均質になるまで分量ずつ攪拌しながらミキサーでマンニトール(244.38kg)と混合して、第一部分を粉末として得る。ゼラチン(0.6kg)を、少し熱を加えて水(50kg)に溶解する。アスパルテーム(0.01kg)を溶液に加え、次いで塩酸ロペラミド(4.0kg)を加えて、第二部分を溶液として得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末(第一部分)の正確に秤量した分量をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に秤量した溶液(第二部分)の分量を加える。孔を充填したブリスター箔をブリスターパック装置の凍結部へ移動させ、−20℃〜−50℃の範囲の温度で凍結させる。凍結後、水を高真空中で蒸発(昇華)させる。充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一つの分量の重量は125mgである。最後にブリスターパックをカバー箔で密封して、更に標準的な手法で適切なパッキングに包装する。
【0036】
実施例2;イブプロフェン急速崩壊錠剤、難溶性活性成分
イブプロフェン(20.0kg)およびオレンジエッセンス粉末(0.3kg)を均質になるまで分量ずつ攪拌しながらミキサーでマンニトール(171.6kg)と混合して、第一部分を粉末として得る。加水分解したゼラチン(3.0kg)、アスパルテーム(0.1kg)およびマンニトール(5.0kg)を、少し熱を加えて水(50kg)に溶解し第二部分を溶液として得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末(第一部分)の正確に秤量した分量をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に秤量した溶液(第二部分)の分量を加える。各錠剤の成分の正確な量を含む、湿った可塑性の物質が得られる。それぞれの孔が充填されたブリスター箔を、実施例1に記載したように更に処理し、重量200mgの、充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量を得る。
【0037】
実施例3;アセチルサリチル酸急速崩壊錠剤、安定化しコートを施した活性成分
アセチルサリチル酸(300.0kg)を、エタノール中に無水クエン酸(30.0kg)を溶解したエタノール溶液と混合することにより安定化し、蒸発乾燥する。その後安定化したアセチルサリチル酸結晶を、流動床反応器中で標準的手順に従って、エタノールエチルセルロース水溶液(8%、125.0kg)でコーティングを施し、乾燥させ、製品約340kgを得る。この製品を、マンニトール(537.0kg)、サッカリンナトリウム(甘味剤、1.0kg)およびラズベリー風味粉末と撹拌しつつミキサーでよく混合し、第一部分を粉末として得る。ポリビニルピロリドン(8.0kg)とマンニトール(10.0kg)を、少し熱を加えて脱イオン水(180kg)に溶解し第二部分を溶液として得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末(第一部分)の正確に秤量した分量をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に秤量した溶液(第二部分)の分量を加える。各錠剤の成分の正確な量を含む、湿った可塑性の物質が得られる。孔が充填されたブリスター箔を、実施例1に記載したように更に処理し、重量300mgの、充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量を得る。
【0038】
実施例4:5−アミノサリチル酸急速崩壊錠剤、活性成分を含む事前形成ペレット
サッカロース粉末(75kg)、コーンスターチ(8kg)およびデンプングリコール酸ナトリウム(Vivistar P(登録商標)、2.5kg)を、均質になるまでよく混合する。前もってコーティングを施した5−アミノサリチル酸(100kg)のペレットを、混合粉末に均一分布させ、第一部分の固体を得る。ゼラチン(3kg)、マンニトール(11kg)およびカラメル風味剤(0.5kg)を、少し熱を加えて水(約60kg)に溶解し第二部分を溶液として得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末の正確に秤量した分量(第一部分、1.855g)をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に秤量した室温にまで冷却した溶液(第二部分、0.745g)の分量を加える。充填された孔が、完全に湿った物質を含んでいるブリスター箔を−30℃で凍結させる。次の工程で、水を高真空で昇華させ、ブリスターパックをカバー箔で密閉する。乾燥錠剤の一回分量は充分な引っ張り強さを有し、2.0gの製品を含む。
【0039】
実施例5:脱カルシウム剤
ヘキサメタリン酸ナトリウム(980g)、ピロリン酸四ナトリウム(6.0g)、ポリアクリル酸(0.5g)およびメタリン酸ナトリウム(3.5g)を、撹拌しながらミキサーで均質になるまで混合し、第一部分を粉末として得る。炭酸ナトリウム(10.0g)を水(100g)に溶解し、第二部分の液体を得る。粉末(第一部分)を最初に秤量し、ブリスターパックの下の箔の孔に投入する。それから、第一部分の粉末の各分量を、秤量した投入量の第二部分の液体で完全に湿らせる。孔が充填されたブリスター箔を、実施例1に記載したように更に処理し、脱カルシウムのために水に急速に溶解するのに適した、重量1gの充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量を得る。
【0040】
実施例6:ペパーミントエッセンス
標準ペパーミント抽出物(1.5kg)およびマンニトール(1.5kg)を撹拌器で均質になるまで混合して第一部分を粉末として得る。サッカロース(0.3kg)を結合剤として水(0.6kg)に溶解し、第二部分の液体を得る。秤量した量で、個体粉末(第一部分)を、ブリスターパックの下の箔の孔に投入し、第二部分の秤量した投入量で均一に湿らせる。孔が充填されたブリスター箔を、実施例1に記載したように更に処理し、ペパーミントティーを調製するための、湯に急速に溶解するのに適した、重量3gの充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量を得る。
【0041】
実施例7:フロセミド
クエン酸(30.0kg)をマンニトール(100.0kg)およびコロイダルシリカ(0.5kg)と均質に混合し、粉末として第一部分を得る。フロセミドナトリウム(50.0kg)を、ポビドン30(1.5kg)、アスパルテーム(0.05)およびマンニトール(17.95kg)と共に水(約70.0〜80.0kg)に懸濁し、可能な限り溶解し、第二部分の液体を得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末(第一部分)の正確に秤量した分量をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に測定した溶液(第二部分)の分量を加える。孔を充填したブリスター箔をブリスターパック装置の凍結部へ移動させ、−20℃〜−50℃の間の温度で凍結する。凍結後、水を高真空中で蒸発(昇華)させる。充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量の重量は100mgである。薬剤フロセミドナトリウムの一回分量は1錠当たり25mgである。最後にブリスターパックをカバー箔で密封して、更に、標準的な手法で適切なパッキングに包装する。
【0042】
実施例8:フルルビプロフェン
炭酸ナトリウム(30.0kg)をマンニトール(50.0kg)およびコロイダルシリカ(0.3kg)と均質に混合し、粉末として第一部分を得る。フルルビプロフェン酸(10.0kg)を、加水分解されたゼラチン(1.5kg)、サッカリンナトリウム(0.05)およびマンニトール(28.15kg)を水(約40.0kg)に溶解した溶液に懸濁し、第二部分の液体を得る。凍結乾燥に適したブリスターパック装置中で、粉末(第一部分)の正確に秤量した分量をブリスターパックの下の箔の孔に投入する。第二工程として正確に秤量した溶液(第二部分)の分量を加える。孔を充填したブリスター箔をブリスターパック装置の凍結部へ移動させ、−20℃〜−50℃の範囲の温度で凍結する。凍結後、水を高真空中で蒸発(昇華)させる。充分な引っ張り強さを有する乾燥錠剤の一回分量の重量は70mgである。フルルビプロフェン酸の一回分量は1錠当たり5mgである。最後にブリスターパックをカバー箔で密封して、更に標準的な手法で適切なパッキングに包装する。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
急速崩壊性の固体剤形の製造方法であって、
混合固体粉末形態の中の一つ以上の構造構築成分を、ブリスターパックまたは型の孔に投入し、残りの成分を水に溶解して、粉末に投入して加え、湿った可塑性の物質を形成し、−20℃未満に凍らせ、高真空において水を昇華させることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
薬学活性成分を含む固体経口剤形の製造のための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
食品を含む固体剤形の製造のための、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
構造構築成分が、糖アルコールまたは糖を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
構造構築成分が、更に充填剤または他の賦形剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水に溶解した成分が、結合剤を含む、請求項2、4または5に記載の方法。
【請求項7】
結合剤が、加水分解されたもしくは加水分解されていないゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテルまたはプレゼラチン化デンプンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
活性成分が、制酸剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗生物質、緩下剤、食欲抑制剤、抗喘息剤、利尿剤、整腸剤、抗偏頭痛剤、抗不整脈剤、鎮痙剤、鎮静剤、抗活動亢進剤、精神安定剤、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、ベータ遮断剤、冠拡張剤、気管支拡張剤、筋弛緩剤、抗凝固剤、抗癲癇剤、抗嘔吐剤、血圧降下剤、交感神経様作用薬、去痰剤、経口抗糖尿病剤、ホルモンおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項2、4、5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
活性成分が、ロペラミド、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、5−アミノサリチル酸、フロセミドおよびフルビプロフェンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
活性成分が、前処理された形態である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
固体粉末が、製造工程において昇華される水を含む固体剤形成分の総重量の少なくとも30%(w/w)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
固体粉末が、製造工程において昇華される水を含む固体剤形成分の総重量の少なくとも50%(w/w)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固体粉末が、製造工程において昇華される水を含む固体剤形成分の総重量の少なくとも75%(w/w)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
使用される水の量が、総重量の20%〜70%(w/w)の範囲にある、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
使用される水の量が、総重量の30%〜40%(w/w)の範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって調製された、経口用急速崩壊性固体剤形。
【請求項17】
固体粉末成分が、0.025mm〜2mmの範囲にある直径を有するマトリックスより成る、請求項16に記載の急速崩壊性固体剤形。
【請求項18】
固体粉末成分が、0.1mm〜1.5mmの範囲にある直径を有するマトリックスより成る、請求項16に記載の急速崩壊性固体剤形。
【請求項19】
密度が、200〜1000mg/mlである、請求項16に記載の急速崩壊性固体剤形。
【請求項20】
密度が、300〜900mg/mlである、請求項16に記載の急速崩壊性固体剤形。
【請求項21】
密度が、400〜800mg/mlである、請求項16に記載の急速崩壊性固体剤形。

【公表番号】特表2008−517979(P2008−517979A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538424(P2007−538424)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055591
【国際公開番号】WO2006/045830
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506207783)パンテック・アーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC AG
【Fターム(参考)】